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JP2011128389A - 液晶表示装置 - Google Patents

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JP2011128389A JP2009287064A JP2009287064A JP2011128389A JP 2011128389 A JP2011128389 A JP 2011128389A JP 2009287064 A JP2009287064 A JP 2009287064A JP 2009287064 A JP2009287064 A JP 2009287064A JP 2011128389 A JP2011128389 A JP 2011128389A
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Abstract

【課題】正面コントラストが高いTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置の提供。
【解決手段】フロント側偏光子、リア側偏光子、液晶層、該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置されるリア側位相差領域、及び前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に配置されるフロント側位相差領域を有するTN、ECB又はOCB型の液晶表示装置であって、前記リア側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、及び|Rth(550)|≦140nmを満足する第1の位相差層から構成され、並びに前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えたアレイ基板であるリア側基板とフロント側基板とに挟持されていることを特徴とするTN、ECB又はOCB型の液晶表示装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、正面コントラストが改善された、TN(Twisted Nematic)型、ECB(Electrically Controlled Birefringence)型、又はOCB(Optically Compensated Bend)型の液晶表示装置に関する。
近年、種々のモードの液晶表示装置について、表示画像の法線方向におけるコントラスト(以下、「正面コントラスト(正面CR)」という)が急激に向上している。TN型、ECB型及びOCB型液晶表示装置も同様である。これは、カラーフィルタの形成に用いられる顔料の粒径が微細化されたこと、ブラックマトリックスが細線化したこと、及びTFTアレイが改善したこと等、によるものである。正面CRは、カタログにも記載されるような、液晶表示装置の性能を如実に表す指標である。そのため、わずかでも正面CRを改善するため、液晶表示装置に関する様々な部材の改良が検討されており、学会発表、論文及び特許公開公報等によって種々提案されている。TN型、ECB型及びOCB型液晶表示装置についても、今後、益々、正面CRの向上が進むであろう。
例えば、透過率を上げるための一手段として、カラーフィルタ・オン・アレイ(COA)構造がある(例えば、特許文献1、2及び3)。COA構造によれば、開口率を大きくすることができるので、白表示時の透過率を上げることができる。現在、環境問題に対する関心が高く、COA構造を採用して透過率を改善することは消費電力の軽減に寄与するものであり、環境の観点でも好ましい。
ところで、正面CRは、白表示時及び黒表示時の2つの透過率(白輝度及び黒輝度)によって決定されるので、透過率を上昇するだけでは達成できない。白表示時の透過率を上昇できても、同時に黒表示時の透過率も上昇してしまうのでは、高CR化を達成することはできない。白表示時の透過率を改善可能な構造を採用して正面CRを高めるためには、その構造を採用することによる黒透過率の上昇を抑制することが重要である。
一方、液晶表示装置については、正面CRが高いことのみならず、斜め方向のCR(以下、「視野角CR」という場合がある)も高いことが重要である。TN型又はOCB型液晶表示装置については、液晶セルを中心として、フロント側とリア側にそれぞれ等しい位相差フィルムを対称的に配置し、光学補償を達成している(例えば、特許文献4)。
従来、これらの位相差フィルムが正面CRに与える影響としては、主に、位相差フィルムの軸ズレ及びヘイズによって正面CRが低下するという観点から検討がなされ、これらの影響を軽減するための技術が種々提案されている。
特開2005−99499号公報 特開2005−258004号公報 特開2005−3733号公報 特許第2587398号公報
本発明者が、TN型、ECB型及びOCB型液晶表示装置にCOA構造を採用することによって正面CRを改善することを試みたところ、正面CRの改善が達成できないことがわかった。さらに検討した結果、その原因は、視野角補償のための位相差フィルムが存在することが一因であることがわかった。特に、リア側に大きな位相差を有する位相差フィルムが配置されたTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置において、COA構造を採用すると、正面CRが改善されないばかりか、むしろ低下することがわかった。位相差フィルムを有するTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置において、COA構造を採用することの問題点については、本発明者が知る限りでは、従来なんら知られていなかったといえる。
即ち、本発明は、従来知られていなかった、位相差フィルムを有するTN型、ECB型及びOCB型液晶表示装置において、COA構造を採用することの問題点を解決することを課題とする。具体的には、本発明は、正面コントラストが改善された、COA構造のTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置を提供することを課題とする。
上記した通り、本発明者が検討した結果、COA構造を採用すると、開口率が拡大されるので白表示時の透過率は上昇するが、一方で黒表示時の光漏れも高くなってしまうことがわかった。特に、リア側に位相差が大きな位相差フィルムが配置されているTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置に、COA構造を採用すると、正面CRが改善されないばかりか、COA構造を採用していないものより正面CRがむしろ低下してしまうことがわかった。本発明者は、この問題を解決するために、種々検討した結果、リア側に配置される位相差フィルムの合計のRthが所定の範囲であると、COA構造を採用したTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置の正面CRを格段に改善できるとの知見を得、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたリア側位相差領域(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という);及び
前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたフロント側位相差領域(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)を有するTN、ECB又はOCB型の液晶表示装置であって、
前記リア側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、及び下記式(I)
(I): |Rth(550)|≦140nm
但し、Rth(λ)は、波長λnmにおける厚み方向のレターデーション(nm)を意味する;を満足する第1の位相差層から構成され;並びに
前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えたアレイ基板であるリア側基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板であるフロント側基板とに挟持されていることを特徴とするTN、ECB又はOCB型の液晶表示装置。
[2] フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたリア側位相差領域(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という);及び
前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたフロント側位相差領域(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)を有する液晶表示装置であって、
前記リア側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、下記式(II)
(II):|Rth(550)|≦100nm
を満足する第1の位相差層と、
傾斜方位と法線とを含む面内(入射面)において、該法線から傾斜方位に+40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR2[+40°]と、該法線に対して逆に40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR2[−40°](但し、R2[−40°]<R2[+40°]とする)の比が、下記式(III)
(III):1<R2[+40°]/R2[−40°]
但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する;を満足する第2の位相差層とから構成され;並びに
前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えたアレイ基板であるリア側基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板であるフロント側基板とに挟持されていることを特徴とする液晶表示装置。
[3] 前記第2の位相差層が、下記式(IIIa)
(IIIa):3≦R2[+40°]/R2[−40°]
を満足することを特徴とする[2]の液晶表示装置。
[4] 前記第1の位相差層が、下記式(IV)
(IV):0≦Re(550)≦500nm
を満足することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの液晶表示装置。
[5] 前記フロント側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、下記式(V)及び(VI)
(V):0≦Re(550)≦500nm
(VI):−100nm≦Rth(550)≦1000nm
を満足する第3の位相差層から構成されることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[6] 前記フロント側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、下記式(V)及び(VI)
(V):0≦Re(550)≦500nm
(VI):−100nm≦Rth(550)≦1000nm
を満足する第3の位相差層と、
傾斜方位と法線とを含む面内(入射面)において、該法線から傾斜方位に+40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR4[+40°]と、該法線に対して逆に40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR4[−40°](但し、R4[−40°]<R4[+40°]とする)の比が、下記式(VII)
(VII):1<R4[+40°]/R4[−40°]
但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する;を満足する第4の位相差層とから構成されることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの液晶表示装置。
[7] 前記第4の位相差層が、下記式(VIIa)
(VIIa):3≦R4[+40°]/R4[−40°]
を満足することを特徴とする[6]の液晶表示装置。
[8] 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間のツイスト角45°〜135°で配向するTN型液晶表示装置であり;
前記第3の位相差層が、下記式(Va)及び(VIa)
(Va): 0≦Re(550)≦400nm
(VIa): −100nm≦Rth(550)≦300nm
を満足することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの液晶表示装置。
[9] 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間のツイスト角90°で配向するTN型液晶表示装置であり;
前記第3の位相差層が、下記式(Vb)及び(VIb)
(Vb): 0≦Re(550)≦300nm
(VIb): 50nm≦Rth(550)≦300nm
を満足することを特徴とする[8]の液晶表示装置。
[10] 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間のツイスト角0°〜45°で配向する液晶表示装置であり;
前記第3の位相差層が、下記式(Vc)及び(VIc)
(Vc): 70nm<Re(550)≦400nm
(VIc): −100nm≦Rth(550)≦250nm
を満足することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの液晶表示装置。
[11] 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間でベンド配向する液晶表示装置であり;
前記第3の位相差層が、下記式(Vd)及び(VId)
(Vd): 0≦Re(550)≦100nm
(VId): 200nm≦Rth(550)≦1000nm
を満足することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの液晶表示装置。
[12] 前記アレイ基板が、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有するアレイ基板であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれかの液晶表示装置。
本発明によれば、正面コントラストが高い、COA構造のTN型、ECB型及びOCB型液晶表示装置を提供することができる。
本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図である。 本発明の作用を説明するために用いた模式図である。 参照のために用いた、従来の一般的な液晶セルの作用を説明するために用いた模式図である。 第2及び第4の位相差層の光学特性を説明するために用いた模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション、Re及びRth)
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルム等のサンプルが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
Figure 2011128389
注記:上記のR[(]は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、本明細書では、Re(450)、Re(550)、Re(650)、Rth(450)、Rth(550)、Rth(650)等のRe(λ)及びRth(λ)の値は、測定装置により、3以上の異なる波長(例としてλ=479.2、546.3、632.8、745.3nm)についてRe及びRthをそれぞれ測定し、それらの値から算出するものとする。具体的には、それらの測定値をコーシーの式(第3項まで、Re=A+B/λ2+C/λ4)にて近似して、値A、B及びCをそれぞれ求める。以上より波長λにおけるRe、Rthをプロットし直し、そこから各波長λのRe(λ)およびRth(λ)をそれぞれ求めることができる。
本明細書において、位相差フィルム等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、位相差領域、位相差フィルム、及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
本明細書において、液晶層や位相差層等の光学部材の光学的軸の角度(例えば「45°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、液晶表示装置の技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±5°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。また、TN型、ECB型及びOCB型液晶表示装置においては、通常、液晶層にはプレチルトがあり、プレチルトはおおよそ10°未満である。本明細書における、「液晶層」が「基板面と平行」とは、プレチルトによる傾斜は許容される誤差に含まれるものとする。
本明細書において、位相差フィルムとは、液晶セルと偏光子の間に配置された自己支持性のある膜を意味する。(レターデーションの大小は関係ない。)なお、位相差膜、位相差層、位相差フィルムは同義である。位相差領域は液晶セルと偏光子の間に配置された1
層または2層以上の位相差フィルムの総称である。
また、本明細書では、「フロント側」とは表示面側を意味し、「リア側」とはバックライト側を意味する。また、本明細書で「正面」とは、表示面に対する法線方向を意味し、「正面コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいい、「視野角コントラスト(CR)」は、表示面の法線方向から傾斜した斜め方向(例えば、表示面に対して、方位角方向45度、極角方向60度で定義される方向)において測定される白輝度及び黒輝度から算出されるコントラストをいうものとする。
本発明は、COA構造を有するTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置に関する。本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図を図1に示す。
図1に示す本発明のTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置は、フロント側偏光子26、リア側偏光子24、フロント側偏光子26とリア側偏光子24との間に配置される液晶層10、液晶層10とリア側偏光子24との間に配置されるカラーフィルタ層12、リア側偏光子24とカラーフィルタ層12との間に配置されるリア側位相差領域20、及びフロント側偏光子26と液晶層10との間に配置されるフロント側位相差領域22を有する。図1に示すTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置が有する液晶セルLCは、液晶層10が、フロント側基板18とリア側基板16とによって挟持され、アレイ部材14及びカラーフィルタ層12が同一の基板、リア側基板16、上に配置されている、COA構造の液晶セルである。また液晶セルLCは、ブラックマトリックス(図示せず)を有していてもよく、その位置はリア側基板16上であっても、フロント側基板18上であってもよい。
液晶層10は、電圧無印加時にリア側基板16、及びフロント側基板18の面に平行に配向し、ねじれ配向の有無(即ちねじれ角の範囲)によって、TN型、ECB型、及びOCB型のそれぞれに分類される。例えば、電圧無印加時に基板に対して平行に、且つねじれ配向している、具体的にはねじれ角が45〜135°程度(一般的には90°程度)で配向している態様は、TN型の態様であり、電圧無印加時に基板に対して平行に、且つねじれ配向していない、具体的にはねじれ角45°未満で配向している態様は、ECB型の態様である。また、電圧無印加時に基板面に平行に且つベンド配向している態様は、OCB型の態様である。
本発明のTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置では、液晶セルLCのリア側に位置するリア側位相差領域20が、低位相差であることに一つの特徴がある。
従来の液晶表示装置では、フロント側位相差領域の位相差及びリア側位相差領域の位相差については、視野角補償に必要な位相差が、それぞれ等しく割り当てられるのが一般的であった。しかし、近年、液晶セルについては、カラーフィルタ層のみを例にとっても、RGB着色層の形成に利用される顔料の粒子径の微細化が進み、液晶セル中で生じる光の多重散乱が顕著に減少され、高コントラスト化が進んでいる。本発明者が鋭意検討した結果、かかる高コントラストの液晶セルでは、液晶セルに入射した際の偏光状態が散乱によって失われず、正面方向のコントラストに影響を与えることがわかった。なお、正面コントラストは黒表示時の光漏れに大きく依存する。黒表示時の輝度が低いほど、正面コントラストは高くなる。液晶セル外に配置される位相差フィルム等の位相差が、正面CRに与える影響については、本発明者が知る限りでは、従来なんら検討されていなかったと言える。
通常、TN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置のバックライトユニットからは、指向性をもった光がリア側偏光子に入射するが、斜め方向から入射した光は、リア側の位相差フィルム等が配置されたリア側位相差領域のレタデーション(以後、Retリア)によって楕円偏光化される。その後、この楕円偏光化された光が、液晶セルに入射するが、本発明者が鋭意検討したところ、この楕円偏光化された光が、液晶セル中の各部材(液晶、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ基板の構造、対向基板の突起構造、対向基板上の共通電極にスリットなど)に入射すると、各部材における散乱や回折などの光学現象によって、正面に散乱されてしまい、その結果、正面CRが低下するとの知見が得られた。即ち、Retリアと液晶セルの各部材の光学現象との関係によって、正面CRの低下量が決まることを、本発明者は見出した。この知見に基づき、さらに検討した結果、COA構造の液晶セルを有するTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置では、液晶セルに入射する前に光が通過するリア側位相差領域(図1中では20)が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる態様(以下、「第1の態様」という場合がある)では、下記式(I)
(I): |Rth(550)|≦140nm
を満足することにより、また、他の態様として、リア側位相差領域(図1中では20)が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層、並びにレターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持つ第2の位相差層からなる態様(以下、「第2の態様」という場合がある)では、第1の位相差層が下記式(II)、第2の位相差層が下記式(III)、
(II):|Rth(550)|≦100nm
(III):1<R2[+40°]/R2[−40°]
(但し、R2[+40°]>R2[−40°]とする)
を満足することにより、顕著に正面CRが改善されることを見出した。
光が液晶セルに入射する前に通過するリア側位相差領域全体の位相差が、第1の態様では、上記式(I)、又は第2の態様では、上記式(II)及び(III)を満足する限り、斜め方向から入射した光が、その後、液晶セル中のアレイ部材及びカラーフィルタ層で拡散もしくは回折等されて、法線方向に進む光となっても、黒表示時の正面方向の光漏れを過度に上昇させることなく、非COA構造の液晶セルを配置した一般的な構成のTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置と比較して、正面CRを格段に改善することができる。
なお、式(III)(後述する式(VII)についても同様である)は、その傾斜方位と法線を含む面内において、前記法線から傾斜方位側へ40°傾いた方向(入射方向1)から測定した、波長550nmのレターデーションR[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向(入射方向2)から測定したR[−40°]とから求められる。この光学特性は、光学的に異方性のポリマーフィルム1枚又は2枚以上からなる前記第1の位相差層では達成し得ない特性である。
ここで、本明細書において、「位相差層からθ°傾いた方向」とは、法線方向から傾斜方位にθ°だけ、層面方向に傾斜した方向と定義される。即ち、層面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、層面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
図4は、R[+40°]及びR[−40°]を測定する際の、位相差層の傾斜方位、入射面、及び入射方向の関係の一例を示す模式図である。R[+40°]及びR[−40°]の測定は、入射方向1及び2のいずれであってもよく、R[+40°]>R[−40°]の関係を満足するように決定する。
本明細書において、位相差層のR[0°]=Re、R[+40°]及びR[−40°]は、位相差層の下記傾斜方位と法線を含む面内において、該法線方向から測定した(傾斜角度0°での)波長550nmにおけるレターデーション値、該法線に対して傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した(傾斜角度40度での)レターデーション値、及び該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向から測定した(傾斜角度−40度での)レターデーション値を意味する。また、本明細書では、R2[+40°]及びR2[−40°]中の数字「2」は、第2の位相差層の特性であることを示すために付記している。すなわち、R2[+40°]及びR2[−40°]は、第2の位相差層のR[+40°]及びR[−40°]を示す。
同様に、後述するR4[+40°]及びR4[−40°]中の数字「4」は、第4の位相差層の特性であることを示すために付記しており、R4[+40°]及びR4[−40°]は、第4の位相差層のR[+40°]及びR[−40°]を示す。
ここで、傾斜方位は、以下の方法で決定する。
(1)位相差層の面内の遅相軸方位を0°、位相差層の面内の進相軸方位を90°とし、0°〜90°の間で0.1°刻みで仮傾斜方位を設定する。
(2)各仮傾斜方位と位相差層の法線を含む面内においてR[+40°]とR[−40°]を測定し、|R[+40°]−R[−40°]|を求める。
(3)|R[+40°]−R[−40°]|が最大となる方位を傾斜方位と決定する。
本明細書において、位相差層のRthは傾斜方位において、KOBRA21ADH、又は、WRが算出したものである。
また、Re、R[+40°]及びR[−40°]のバラツキは、以下の方法により測定することができる。位相差層(例えばフィルム)の中央部の互いに2mm以上離れた任意の10点以上の位置でサンプリングを行い、上記方法でRe、R[+40°]及びR[−40°]を測定し、その最大値と最小値の差を、Re、R[+40°]及びR[−40°]のバラツキとする。また、本発明では上記10点の平均値をRe、R[+40°]、R[−40°]とする。
さらに、遅相軸及び前述のRthのバラツキも同様に測定される。
R[+40°]/R[−40°]は、レターデーションの極角依存性の非対称性の程度を示していて、この比が大きいほど、レターデーションの極角依存性の非対称性の程度も大きいことを意味する。本発明では、第2の位相差層として、レターデーションの極角依存性の非対称性の程度が大きな部材を用いることが好ましく、前記第2の位相差層が、
3≦R2[+40°]/R2[−40°]
を満足しているのが好ましく、
5≦R2[+40°]/R2[−40°]
を満足しているのがより好ましい。
図1に示す本発明の液晶表示装置が、従来の液晶表示装置と比較して、正面CRが改善される理由は、図2及び図3に示す通りにまとめられる。図2は、図1に示す本発明の液晶表示装置、図3は、従来の非COA構造の液晶セルを有する液晶表示装置の、それぞれのリア側位相差領域(図1中では20)の位相差が大きくなった場合に、COA構造液晶セルLC及び非COA構造液晶セルLC'のそれぞれの中に配置されている各部材が正面CR方向に与える影響の傾向、及びその影響の強弱をまとめたものである。なお、図2(b)及び図3(b)中、「↑」は正面CRを高める作用を示し、「↓」は正面CRを低下させる作用を示す。矢印の本数はその作用の強弱の目安であって、本数が多いほど作用が強いことを示す。なお、図2及び図3中では、説明を簡略化するために、CF部材(カラーフィルターとブラックマトリックス)、液晶層、及びアレイ部材(TFTアレイ)の3つに着目して説明する。
本発明の液晶表示装置では、リア側偏光子と液晶層との間に、リア側基板としてカラーフィルタ・オン・アレイ(COA)基板が配置されていることが一つの特徴である。
なお、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、TFTアレイでの光学現象による、黒表示時の光漏れの入射偏光状態依存性は、すべて同じ傾向を示すが、ブラックマトリックスの寄与は相対的に小さいため、本発明の液晶表示装置におけるブラックマトリックスの位置は、液晶セル内のいずれでもよいが、リア側偏光子と液晶層の間に位置することが好ましい。
図3(b)にまとめる通り、従来の一般的な構造の液晶表示措置では、正面CRに対する影響が大きい、CF部材及びアレイ部材それぞれと、Retリアとの関係が互いに逆であるため、即ち、Retリアが小さくなると、アレイ部材による光学現象が正面CRを高める方向に作用するが、一方、CF部材による光学現象は正面CRを低める方向に作用するため、互いの作用が相殺されてしまい、正面CRへの影響として認識されていなかった。
一方、本発明の一例である図2(a)の液晶セルでは、図2(b)にまとめる通り、正面CRに対する影響が大きい、CF部材及びアレイ部材それぞれと、Retリアとの関係が互いに等しく、即ち、Retリアが小さくなると、CF部材及びアレイ部材による光学現象はいずれも、正面CRを高める方向に作用するので、Retリアが大きくなると、CF部材及びアレイ部材の双方の光学現象により、正面CRが改善される。その結果、図3(a)に示す、通常構造の液晶セルLC'と比較して、本発明の液晶表示装置では、正面CRが格段に改善される。
液晶セル内の各部材の光学現象が、その配置によって、正面CRに与える影響の傾向が逆転する理由は以下の通りである。
アレイ部材およびCF部材で起こる散乱の程度は、アレイ部材およびCF部材で散乱が起こる直前の入射偏光の楕円率によって主に決定され、楕円率が小さい入射偏光ほど、当該部材に入射することによる散乱の程度は小さくなる。散乱量が小さければ、黒表示時の光漏れを少なくでき、その結果、正面CRは高くなる。液晶層に入射する前に光が入射する部材、例えば、図3(a)中のアレイ部材54では、Retリアが小さいほど、アレイ部材54に入射する偏光の楕円率が小さくなるので、アレイ部材54による光学現象は、正面CRを高める方向に作用する。しかし、液晶層を通過した後に光が入射する部材では、Retリアだけでなく液晶のΔnd(λ)(dは液晶層の厚さ(nm)、Δn(λ)は液晶層の波長λにおける複屈折率であり、Δnd(λ)はΔn(λ)とdの積のことである。)も、入射偏光の楕円率に影響する。TN型では、液晶層のΔnd(550)は300〜500nm程度、ECB型では、液晶層のΔnd(550)は250〜350nm程度、及びOCB型では、液晶層のΔnd(550)は500〜1300nm程度なので、結果的に、Retリアが小さいほど、液晶層を通過した後、部材に入射する偏光の楕円率が大きくなる。よって、液晶層に入射した後に光が入射する部材、例えば、図3(a)中のカラーフィルタ52では、Retリアが小さいほど、液晶層を通過後に入射する偏光の楕円率が大きくなるので、これらの部材による光学現象はいずれも、正面CRを低める方向に作用する。
即ち、図3(a)の従来の一般的な構成の液晶セルLC'では、Retリアを小さくしても、アレイ部材54の光学現象による作用が、CF部材52の光学現象による作用により打ち消されてしまい、正面CRを大きく改善することはできない。
一方、本発明に係る、図2(a)の液晶セルLCでは、Retリアを小さくすると、カラーフィルタ12及びアレイ部材14の光学現象が、いずれも正面CRを高める方向に作用するので、従来の液晶表示装置と比較して、格段に正面CRを改善することができる。
なお、表中、アレイ部材の作用の程度を3つの「↑」で、及びCF部材の作用の程度を2つの「↑」で示しているが、例えば、液晶層の散乱による作用の程度は相対的に小さく、1つの「↑」で示される程度であろう。また、液晶層による散乱の作用は、図2及び図3に示すいずれの態様でも、斜め入射光の楕円偏光率が小さいほど正面CRを低下させる方向に作用し、即ち、Retリアが小さいほど、正面CRを低下させる方向に作用する。
Retリアが正面CRに与える影響は、低い正面CRの液晶表示装置ではほとんど無視できる程度である。しかし、近年提供されている、高い正面CR(例えば、正面CRが1000以上)の液晶表示装置について、さらなる正面CRの改善を図るためには、この影響を無視することはできない。本発明は、正面CRが1000以上の液晶表示装置について、正面CRをさらに改善するのに特に有用である。
本発明の正面CRの改善効果は、上記した通り、COA構造の液晶セルを採用して開口率を増加したことによる効果ではなく、COA構造の液晶セルのリア側位相差領域を低位相差とすることで、液晶セル内に入射した偏光の散乱を軽減し、その結果、正面黒輝度を低下させたことによるものである。本発明の効果は、液晶セル内に入射した偏光が内部の各部材で散乱された後も、その偏光状態をほぼ維持すると仮定すると、ポアンカレ球上の偏光の軌跡によっても説明することができる。一方で、従来は、偏光が散乱すると、その偏光状態を維持するとは考えられていなかったので、液晶セル内の散乱による正面CRの低下を解決している本発明の効果が、ポアンカレ球上の偏光の軌跡によって説明できることは、予期せぬことであった。
また、COA構造の液晶セルのリア側位相差領域を低位相差にすることは、正面方向CRのみならず、斜め方向のコントラスト(以下、「視野角CR」という場合がある)の改善にも寄与する。例えば、COA構造の液晶セルを採用しても、従来技術の様に、リア側位相差領域が高位相差であると、正面CRも視野角CRも改善されない。即ち、本発明のこの視野角CRの改善効果も液晶セルへの入射偏光によって変動する光漏れを軽減することによってもたらされる効果であり、COA構造の液晶セルを採用し、開口率を増加させることのみによっては得られない効果である。
また、後述するフロント側位相差領域によって、視野角CRの改善効果とは区別されるものである。
本発明の視野角CR改善効果も、正面CR改善効果と同様、液晶セル内に入射した偏光が内部の各部材で散乱された後も、その偏光状態をほぼ維持すると仮定すると、ポアンカレ球上の偏光の軌跡によっても説明することができる。
本発明者が鋭意検討した結果、COA構造の液晶セルに入射する前に光が通過するリア側位相差領域(図1中では20)が、
光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の態様では、下記式(I)
(I): |Rth(550)|≦140nm
を満足することにより、また、他の態様として、リア側位相差領域(図1中では20)が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層、並びにレターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持つ第2の位相差層からなる第2の態様では、第1の位相差層が下記式(II)、第2の位相差層が下記式(III)、
(II):|Rth(550)|≦100nm
(III):1<R2[+40°]/R2[−40°]
(但し、R2[+40°]>R2[−40°]とする)
を満足することにより、驚くべきことに、上記問題点を解決し得ることがわかった。光がCOA構造の液晶セルLCに入射する前に通過するリア側位相差領域全体の位相差が、第1の態様では、上記式(I)を満足する限り、並びに第2の態様では、上記式(II)及び式(III)を満足する限り、斜め方向から入射した光が、その後、液晶セル中のアレイ部材14及びカラーフィルタ層12で散乱もしくは回折等されて、法線方向に進む光となっても、並びに液晶層中の液晶分子の揺らぎの影響を受けても、黒表示時の正面方向の光漏れを過度に上昇させることなく、非COA構造の液晶セルを採用したTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置と比較して、正面CRを格段に改善することができる。本発明の効果は、COA構造を採用して開口率を拡大することのみによっては得られない効果であり、COA構造を採用するとともに、リア側位相差領域が第1の態様では、上記式(I)を満足し、並びに第2の態様では、上記式(II)及び(III)を満足することによってはじめて得られる効果である。
図1で図示していない他の部材(例えば、ブラックマトリックス)についても、前述のカラーフィルタ層およびアレイ部材と同様である。すなわち、光が液晶層に入射する前に通過する部材では、上記表の非COA構造のアレイ部材と同様になり、液晶層に入射した後に通過する部材では、上記表の非COA構造のカラーフィルタ部材と同様になる。
なお、前述のように、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、アレイ部材での光学現象による、黒表示時の光漏れの入射偏光状態依存性は、すべて同じ傾向を示すが、ブラックマトリックスの寄与は相対的に小さいため、COA構造の液晶表示装置におけるブラックマトリックスの位置は、液晶セル内のいずれでもよいが、高い正面CRを得るためには、リア側偏光子と液晶層の間に位置することが好ましい。
液晶層10の厚さdと波長λにおける複屈折率Δnの積であるΔn・d(λ)(Δnd(λ))は、一般的には、TN型液晶表示装置の態様では、300〜500nm程度になり、好ましくは、380〜450nm程度である。また、一般的に、TN型液晶表示装置では、主には、基板間の液晶層のツイスト角は90°であるが、ツイスト角を、90°よりも増減させたTNモード液晶セルも種々提案されており、図1の液晶表示装置でも、フロント側及びリア側基板18、16間の、液晶層10のツイスト角を、45〜135°程度に設定することができる。
他の態様として、ECB型液晶表示装置では、液晶層10は、フロント側及びリア側基板18、16間で、45°以下のツイスト角で配向し、Δnd(λ)は250〜350nm程度(より好ましくは、280〜320nm程度)である。OCB型液晶表示装置では、液晶層10は、フロント側及びリア側基板18、16間でベンド配向し、Δnd(λ)は500〜1300nm程度(より好ましくは800〜1300nm程度)である。
液晶層10は、RGBのサブピクセル領域間で、厚みが互いに異なるマルチギャップの液晶層であってもよい。例えば、カラーフィルタの厚みを一様ではなく、Rサブピクセル、Gサブピクセル、及びBサブピクセルの厚みを変えて、マルチギャップの液晶層とすることができる。一例は、Rサブピクセルに対応する液晶層のΔnd(R)、Gサブピクセルに対応する液晶層のΔnd(G)、及びBサブピクセルに対応する液晶層のΔnd(B)が、Δnd(B)<Δnd(G)<Δnd(R)の関係を満足する構成である。この例によれば、広い視野角にわたって、コントラスト及び色再現性の高いカラー画像を表示することができる。
一方、液晶材料として、Δn(λ)に波長依存性があり、R光に対するΔn(R)、G光に対するΔn(G)、及びB光に対するΔn(B)が、Δn(B)<Δn(G)<Δn(R)の関係を満足する液晶材料を利用することにより、カラーフィルタの厚みが一様であっても、同様の効果が得られる。
図1に示す液晶表示装置は、ノーマリホワイトモードであり、一対のフロント側偏光子26及びリア側偏光子24は、それぞれの吸収軸(図示せず)を実質的に互いに直交させて配置されている。フロント側位相差領域22及びリア側位相差領域20をフロント側偏光子26及びリア側偏光子24にそれぞれ接触させて貼り合せ、その保護フィルムとしても利用することもできる。即ち、当該態様では、図1中の偏光板PL1及びPL2を製造して、それを液晶セルLCに貼合して、液晶表示装置を製造することができる。
図1に示す液晶表示装置は、上記式(I) を満足する光学的に異方性の1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層から構成されるリア側位相差領域20、又は上記式(II)を満足する光学的に異方性の1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層とともに、上記式(III)を満足する第2の位相差層から構成されるリア側位相差領域を有する。
図1中のリア側位相差領域20は、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。リア側位相差領域20が単層構造の態様は、第1の態様であり、即ち、当該単層が、式(I)を満足する必要がある。2層以上の積層体の態様は、第1及び第2の態様のいずれにもなり得、第1の態様では、積層体が全体として前記式(I)を満足する必要があり;並びに第2の態様では、積層体を構成している一層もしくは二層が全体で式(II)を満足し、且つそれ以外の他の層が式(III)を満足する必要がある。
また、より高い正面CRを得るためには、図1中のリア側位相差領域20として配置されるフィルムのヘイズは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株)製)により、JIS K−6714に従って測定する。
前記第1及び第2の態様の一例では、光学的に異方性の1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層は、下記式(IV)
(IV): 0≦Re(550)≦500nm
を満足する。光学的に異方性の1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層のReが高くても、第1の位相差層のRthが、第1の態様では前記式(I)を満足し、及び第2の態様では前記式(II)を満足する限り、本発明の効果を得ることができる。
図1中のフロント側位相差領域22も、単層構造であっても、2層以上からなる積層体であってもよい。フロント側位相差領域22が、視野角CRの改善に寄与する位相差を有すると、本発明の効果、即ち正面CRの改善のみならず、視野角CRの改善も達成できるので好ましい。液晶セルLCの液晶層のΔnd(λ)は、上記した通り、一般的には、TN型では、300〜500nm程度、ECB型では、250〜350nm程度、及びOCB型では、500〜1300nm程度であるが、フロント側位相差領域22のレターデーションの好ましい範囲は、リア側位相差領域20のレターデーション及び液晶層のΔnd(λ)の値、液晶セルのモードに応じて変動する。斜めCR改善のため、液晶層のΔnd(λ)に対する、フロント側位相差領域とリア側位相差領域の、好ましい組み合わせについては、種々の公報に記載がある。
この観点では、フロント側位相差領域22は、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、下記式(V)及び(VI)、
(V):0≦Re(550)≦500nm
(VI):−100nm≦Rth(550)≦1000nm
を満足する第3の位相差層であるのが好ましい。
また、他の態様として、フロント側位相差領域22が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる、上記式(V)及び(VI)を満足する第3の位相差層、並びにレターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持つ下記式(VII)、
(VII):1<R4[+40°]/R4[−40°]
(但し、R4[+40°]>R4[−40°]とする)
を満足する第4の位相差層から構成されるのが好ましい。
上記式(V)及び(VI)を満足する光学的に異方性の1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第3の位相差層、または前記第3の位相差層に加えて上記式(VII)を満足する第4の位相差層から構成されるフロント側位相差領域を具備することで、フロント側位相差領域を利用して、視野角に依存してコントラストが低下するのを抑制し、コントラスト等の表示特性の視野角依存性を軽減し、視野角特性を改善できるので好ましい。
前記第4の位相差層は、レターデーションの極角依存性の非対称性の程度が大きな部材を用いることが好ましく、前記第4の位相差層が、
3≦R4[+40°]/R4[−40°]
を満足しているのが好ましく、
5≦R4[+40°]/R4[−40°]
を満足しているのがより好ましい。
本発明の態様として、上記した通り、
リア側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり上記式(I)を満足する第1の態様;及び
リア側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり上記式(II)を満足する第1の位相差層と、レターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持ち、上記式(III)を満足する第2の位相差層からなる第2の態様;
が挙げられる。
第1の態様には、フロント側位相差領域が、上記第3の位相差層のみからなる態様、及びフロント側位相差領域が、上記第3の位相差層と、上記第4の位相差層とからなる態様が含まれ;並びに
第2の態様には、フロント側位相差領域が、上記第3の位相差層のみからなる態様、及びフロント側位相差領域が、上記第3の位相差層と、上記第4の位相差層とからなる態様が含まれる。
本発明に利用される上記第1の位相差層、及び上記第3の位相差層は、光学的1軸性又は2軸性の1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、それぞれ上記特性を満足する。上記特性は、例えば、1枚又は2枚以上の延伸又は未延伸ポリマーフィルムなどにより達成可能である。延伸倍率やポリマー材料を選択することで、1枚又は2枚以上で上記特性を満足する1軸性又は2軸性のポリマーフィルムを作製することができる。
本発明に利用される上記第2の位相差層、及び上記第4の位相差層に要求される上記光学特性は、硬化性液晶組成物を所望の配向状態にした後、硬化させて形成される位相差層によっても達成可能である。具体的には、ディスコティック液晶組成物を、いわゆるハイブリッド配向状態、に固定して形成される位相差層が挙げられる。第2の位相差層、及び第4の位相差層に利用可能な硬化性液晶組成物からなる位相差層の製造方法については、後述する。又は、第2の位相差層、及び第4の位相差層に要求される上記光学特性は、正の固有複屈折性の非晶性熱可塑性樹脂を、フィルム状に溶融押出しし、その後、周速が互いに異なるロール間を通過させて形成されるフィルムによって達成可能である。このポリマーフィルムの製造方法についても、後述する。
液晶表示装置の光学的軸関係について、好ましい態様について説明する。
図1に示す液晶表示装置がTN型液晶表示装置である態様では、フロント側基板18の対向面に形成された配向膜の配向処理方向(通常はラビング軸)は、液晶表示装置の画面の左右方向に対し、表示面側(図面上側)から見て左回りに45°回転した方向にあり、リア側基板16の対向面に形成された配向膜の配向処理方向は、液晶表示装置の画面の左右方向に対し、観察者側(図面上側)から見て右回りに45°回転した方向にあるのが好ましい。電圧無印加時には、配向膜界面近傍の液晶分子は、その配向処理方向に長軸方向を一致させて配向するので、実質的に90°の捩れ角でツイスト配向している。
リア側偏光子24は、その吸収軸を、リア側基板16の対向面上に形成された配向膜の配向処理方向と平行にして配置され、及び、リア側位相差領域20である又はその一部である第1の位相差層は、その面内遅相軸を、リア側偏光子24の吸収軸と実質的に直交にして配置されるのが好ましい。但し、リア側偏光子24の吸収軸とリア側位相差領域20を形成する第1の位相差層の面内遅相軸が実質的に平行であっても、同様の効果が得られる。また、リア側位相差領域20が第2の位相差層を含む第2の態様では、第2の位相差層の主軸の傾斜方位と、リア側基板16の対向面上に形成された配向膜の配向処理方向とは、平行又は直交にして配置されているのが好ましい。
また、フロント側偏光子26は、その吸収軸を、フロント側基板18の対向面上に形成された配向膜の配向処理方向と平行にして配置され、及び、フロント側位相差領域22である又はその一部である第3の位相差層は、その面内遅相軸を、フロント側偏光子26の吸収軸と実質的に直交にして配置されるのが好ましい。但し、フロント側偏光子26の吸収軸とフロント側位相差領域22を形成する第3の位相差層の面内遅相軸が実質的に平行であっても、同様の効果が得られる。また、フロント側位相差領域22が第4の位相差層を含む態様では、第4の位相差層の主軸の傾斜方位と、フロント側基板18の対向面上に形成された配向膜の配向処理方向とは、平行又は直交にして配置されているのが好ましい。この関係で配置すると、視野角が拡大するので好ましい。
リア側位相差領域20が第2の位相差層を含み、第2の位相差層が、硬化性液晶組成物からなる層である態様では、第1の位相差層である1枚又は2枚以上のポリマーフィルムを支持体として、その上に、前記硬化性液晶組成物を塗布して、第2の位相差層に要求される光学特性を満足する位相差層を形成することができる。作製された積層体を、保護膜として偏光子(図1中、リア側偏光子24)に貼り合せた偏光板PL1を液晶表示装置に組み込むこともできる。
同様に、フロント側位相差領域22が第4の位相差層を含み、第4の位相差層が、硬化性液晶組成物からなる層である態様では、第3の位相差層である1枚又は2枚以上のポリマーフィルムを支持体として、その上に、前記硬化性液晶組成物を塗布して、第4の位相差層に要求される光学特性を満足する位相差層を形成することができる。作製された積層体を、保護膜として偏光子(図1中、フロント側偏光子26)に貼り合せた偏光板PL2を液晶表示装置に組み込むこともできる。
図1に示す液晶表示装置がECB型、又はOCB型液晶表示装置である態様では、フロント側基板18及びリア側基板16のそれぞれの内面に施される配向処理の方向が、互いに平行又は反平行であり、実質的に交差していない、即ち、電界無印加時に、液晶層10が、実質的にねじれ配向していないのが好ましい。ECB型の態様では、ラビング方向はフロント側基板18及びリア側基板16で180°異なり、OCB型の態様では、フロント側基板18及びリア側基板16で同一である。例えば、液晶セルLCがECB型である態様では、液晶層10は、フロント側基板18及びリア側基板16間で、45°以下のツイスト角で配向しており、Δnd(λ)は、前述のように250〜350nm程度(より好ましくは、280〜320nm程度)である。一方、液晶セルLCがOCB型である態様では、液晶層10は、フロント側基板18及びリア側基板16間でベンド配向し、Δnd(λ)は、前述のように500〜1300nm程度(より好ましくは800〜1300nm程度)である。
ECB型、又はOCB型液晶表示装置は、フロント側偏光子26及びリア側偏光子24は、その吸収軸を互いに直交にして配置されるとともに、吸収軸を、より近い位置に配置される液晶セル基板18及び16のそれぞれの内面に施された配向処理方向(一般的にはラビング方向)に対して、45°にして配置される。リア側位相差領域20が第2の位相差層を含む態様では、第2の位相差層の主軸の傾斜方位と、リア側基板16の対向面上に形成された配向膜の配向処理方向とは、平行又は直交にして配置されているのが好ましい。また、フロント側位相差領域22が第4の位相差層を含む態様では、第4の位相差層の主軸の傾斜方位と、フロント側基板18の対向面上に形成された配向膜の配向処理方向とは、平行又は直交にして配置されているのが好ましい。
TN型液晶表示装置では、前記フロント側位相差領域である又は一部である第3の位相差層のRe(550)及びRth(550)は、下記式(Va)及び(VIa)、
(Va): 0≦Re(550)≦400nm
(VIa): −100nm≦Rth(550)≦300nm
を満足するのが好ましい。特に、TN型液晶セルLCの基板間のツイスト角が90°である態様では、第3の位相差層のRe(550)及びRth(550)は、下記式(Vb)及び(VIb)、
(Vb):0≦Re(550)≦300nm
(VIb):50nm≦Rth(550)≦300nm
を満足するのが好ましく、下記式、
0nm≦Re(550)≦200nm
50nm≦Rth(550)≦250nm
を満足するのがより好ましく、下記式、
100nm≦Re(550)≦150nm
130nm≦Rth(550)≦150nm
を満足するのがさらに好ましい。
一方、TN型液晶セルLCの基板間のツイスト角が45°程度である態様では、第3の位相差層のRe(550)及びRth(550)は、下記式(Ve)及び(VIe)、
(Ve):30nm≦Re(550)≦400nm
(VIe):−100nm≦Rth(550)≦300nm
を満足するのが好ましく、
150nm≦Re(550)≦230nm
40nm≦Rth(550)≦150nm
を満足するのがより好ましい。
液晶セルLCの液晶層10が、電圧無印加時において基板面に平行に且つ基板間のツイスト角0°〜45°で配向するECB型液晶表示装置の態様では、前記フロント側位相差領域である又は一部である第3の位相差層のRe(550)及びRth(550)は、下記式(Vc)及び(VIc)、
(Vc): 70nm<Re(550)≦400nm
(VIc): −100nm≦Rth(550)≦250nm
を満足するのが好ましく、下記式
150nm≦Re(550)≦200nm
50nm≦Rth(550)≦100nm
を満足するのがより好ましい。
また、液晶セルLCの液晶層10が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間でベンド配向するOCBモードの態様では、前記フロント側位相差領域である又は一部である第3の位相差層のRe(550)及びRth(550)は、下記式(Vd)及び(VId)、
(Vd): 0≦Re(550)≦100nm
(VId): 200nm≦Rth(550)≦1000nm
を満足するのが好ましい。
再び図1において、図1中の液晶セルLCが有するCOA構造の「COA」とは、カラーフィルタ・オン・アレイの略であり、アクティブマトリクス基板上にカラーフィルタを形成した構造をCOA構造と言う。COA構造は、当初は、通常のTFT基板にカラーフィルムを形成するだけのものであったが、近年では、表示特性改良のため、画素電極をカラーフィルム上側に形成し、コンタクトホールとよばれる小穴を通じて、画素電極とTFTとを接続する構造が一般的となっている。本発明ではいずれの構造であってもよい。COA構造では、カラーフィルタ層の厚みは、従来型のカラーフィルム層(1〜2μm程度)より厚く、2〜4μm程度が一般的である。これは画素電極の端部と配線の間にできる寄生容量を抑制するためである。本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタ層も2〜4μm程度の厚みが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。また、COA構造の液晶セルの製造では、カラーフィルタ層上の画素電極をパターニングする必要があり、エッチング液や剥離液への耐性が要求される。この目的で、膜厚を厚めに調整したカラーフィルタ材料(着色感光性組成物)を用いるが、通常のカラーフィルタ材料で形成したカラーフィルタ層+オーバーコート層という2層構成をとることもある。本発明では、いずれの構成であってもよい。
なお、COA構造については、上記特許文献1及び2の他、特開2007−240544号公報、特開2004−163979号公報等にも記載があり、本発明においては、いずれの構成も採用することができる。
また、本発明の液晶表示装置が有するカラーフィルタは、通常の液晶表示装置が有するカラーフィルタと同様、基板の画素部位に複数の異なる色(例えば赤、緑、青の光の3原色、透明、黄色、シアンなど)を配列したカラーフィルタである。その作製方法は様々であり、例えば、着色のための材料(有機顔料、染料、カーボンブラックなど)を用い、カラーレジストと呼ばれる着色感光性組成物(無色の場合もある)を調製し、これを基板の上に塗布して層を形成し、フォトリソグラフィ法によりパターン形成するのが一般的である。前記着色感光性組成物を基板の上に塗布する方法も様々であり、例えば初期には、スピン・コーター法が採用され、省液の観点で、スリット&スピン型コーター法が採用され、現在では、スリット・コーター法が一般的に採用されている。その他にロールコーティング法、バーコーティング法、ダイコーティング法などがある。また近年では、フォトリソグラフィにより離画壁とよばれるパターンを形成した後に、インクジェット方式により画素の色を形成することも行なわれている。この他に、着色非感光性組成物と感光性ポジ型レジストを組み合わせた方法、印刷法、電着法、フィルム転写法によるものなどが知られている。本発明に利用するカラーフィルタは、いずれの方法で作製されたものであってもよい。
カラーフィルタ形成用の材料についても特に制限はない。着色材料として、染料、有機顔料、無機顔料等、いずれを用いることもできる。染料は、高コントラスト化の要求から検討されていたが、近年は有機顔料の分散技術が進歩し、ソルトミリング法などで微細に砕いたブレークダウン顔料や、ビルドアップ法による微細化顔料などが高コントラスト化に用いられている。本発明には、いずれの着色材料を用いてもよい。
図1において、リア側位相差領域20及びフロント側位相差領域22の全部又は一部は、それぞれリア側偏光子24及びフロント側偏光子26の保護フィルムとしても機能していてもよい。また、図1中では省略したが、リア側偏光子24は、そのバックライト28側の表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよく、同様に、フロント側偏光子は、その表示面側表面に、保護フィルム、防汚性フィルム、アンチリフレクションフィルム、アンチグレアフィルム、アンチスタチックフィルム等の機能性フィルムを有していてもよい。
本発明の正面コントラスト向上の効果は、バックライトからの出射光の角度プロファイルを調整することによって、更に改善することができる場合がある。具体的には、より集光性が強いバックライトを用いると正面コントラストの絶対値が増加するため、本発明で示された正面CR絶対値の増加分も大きくなる。集光性の指標は例えば正面における出射光強度I(0°)に対する極角45度における出射光強度I(45°)の比I(0°)/I(45°)で表され、この値が大きいほど集光性が強いバックライトということになる。集光性が高いバックライトとしては、拡散フィルムと液晶パネルとの間に、光集光機能を備えたプリズムフィルム(プリズム層)を設けることが望ましい。このプリズムフィルムは、導光板の光出射面から出射され、拡散フィルムで拡散された光を、高効率で液晶パネルの有効表示エリアに集光させるものである。一般的な直下型方式のバックライトが搭載された液晶表示装置は、例えば、上部に透明基板や偏光板に挟まれたカラーフィルタ、液晶層からなる液晶パネルと、その下面側にバックライトが設けられている。米国3M社の登録商標である輝度強調フィルム(Brightness Enhancement Film:BEF)が代表例である。BEFは、フィルム基材上に、断面三角形状の単位プリズムが一方向に周期的に配列されたフィルムであり、プリズムは光の波長に比較して大きいサイズ(ピッチ)である。BEFは、"軸外(off−axis)"からの光を集光し、この光を視聴者に向けて"軸上(on−axis)"に方向転換(redirect)または"リサイクル(recycle)"する。BEFに代表されるプリズムの反復的アレイ構造を有する輝度制御部材をディスプレイに採用する旨が開示されている特許文献としては、特公平1−37801号公報、特開平6−102506号公報、特表平10−506500号公報に例示されるように多数のものが知られている。
また、集光性を高めるために、レンズアレイシートを用いることも望ましい。レンズアレイシートは、所定のピッチで凸状に形成された単位レンズが複数個2次元に配列されてなるレンズ面を有する。そのレンズ面の反対側は平坦面になっていて、前記平坦面に、前記レンズの非集光面領域に光線を反射する光反射層が形成されているレンズアレイシートが好ましい。また、所定のピッチで形成された凸状のシリンドリカルレンズが複数個平行に配列されてなるレンチキュラーレンズ面と、そのレンズ面の反対側は平坦面になっていて、前記平坦面には、前記凸状のシリンドリカルレンズの非集光面領域に長手方向のストライプ状の光線を反射する光反射層が形成されているレンズアレイシートも好ましい。また、例えば、シリンドリカル状の曲面から構成される単位レンズを面内に一方向に配列したレンチキュラーレンズアレイシート、あるいは円形、矩形、六角形などの底面形状を有しドーム状の曲面から構成される単位レンズが面内に2次元配列されてなるレンズアレイシートなども使用することができる。これらのレンズアレイシートについては、特開平10−241434号、特開2001−201611号、特開2007−256575号、特開2006−106197号、特開2006−208930号、特開2007−213035号、及び特開2007−41172号等の各公報に記載があり、参照することができる。
本発明は、バックライトの出射光スペクトル、及びカラーフィルタの透過スペクトルを調整することによって、色再現域を広げたディスプレイの態様においても効果を奏する。具体的には、バックライトには赤色LED、緑色LED及び青色LEDを組み合わせて混色させた白色バックライトを用いることが望ましい。また、赤色LED、緑色LED及び青色LEDの出射光ピークの半値幅が小さいことが好ましい。LEDの場合には、CCFLに比べて半値波長幅が20nm程度と小さく、またピーク波長をR(赤)が610nm以上、G(緑)が530nm、B(青)が480nm以下とすることにより、光源自体の色純度を高くすることができる。
また、LEDのピーク波長以外において、カラーフィルタの分光透過率をできるだけ小さく抑制することにより、さらに色再現性を向上させ、NTSC比が100%の特性を有することが報告されている。例えば、特開2004−78102号公報に記載がある。赤色カラーフィルタは、緑色LED及び青色LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましく、緑色カラーフィルタは、青色LED及び赤LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましく、青カラーフィルタは、赤色LED及び緑色LEDのピーク位置における透過率が小さいことが望ましい。具体的にはこれら透過率がいずれも、0.1以下であることが望ましく、更に好ましくは0.03以下であり、更に好ましくは0.01以下である。これらのバックライトとカラーフィルタとの関係については、例えば特開2009−192661号公報に記載があり、参照することができる。
また、バックライトにレーザー光源を用いることも色再現域を広げるためには好ましい。赤、緑及び青色のレーザー光源のピーク波長が、それぞれ430〜480nm、520〜550nm、及び620〜660nmであることが好ましい。レーザー光源のバックライトについては、特開2009−14892号公報に記載があり、参照することができる。
以下、本発明のTN型、ECB型又はOCB型液晶表示装置に用いられる種々の部材について、詳細に説明する。
1.リア側位相差領域及びフロント側位相差領域
本発明では、リア側偏光子とTN型、ECB型又はOCB型液晶セル内のカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「リア側位相差領域」という。第1の態様では、リア側位相差領域は、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層から構成され、本態様では、第1の位相差層は、上記式(I)を満足する。また、第2の態様では、リア側位相差領域は、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第1の位相差層と、レターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持つ第2の位相差層とからなり、本態様では、第1の位相差層が上記式(II)を満足し、第2の位相差層が上記式(III)を満足する。上記式(IV)をさらに満足するのが好ましい。
前記第1の態様では、第1の位相差層は、上記式(I)及び(IV)を満足するのが好ましく、より好ましくは、
0nm≦Re(550)≦300nm、且つ|Rth(550)|≦140nm
を満足し、さらに好ましくは、
0nm≦Re(550)≦200nm、且つ|Rth(550)|≦120nm
を満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
0nm≦Re(550)≦120nm、且つ|Rth(550)|≦105nm
を満足する。
前記第2の態様では、前記リア側位相差領域は、第1の位相差層は、上記式(II)及び(IV)を満足するのが好ましく、より好ましくは、
0nm≦Re(550)≦300nm、且つ20nm<Rth(550)≦100nm
を満足し、さらに好ましくは、
0nm≦Re(550)≦200nm、且つ30nm≦Rth(550)≦95nm
を満足し、よりさらに好ましくは、下記式:
0nm≦Re(550)≦120nm、且つ40nm≦Rth(550)≦90nm
を満足する。
また、本発明では、フロント側偏光子とTN型、ECB型又はOCB型液晶セル内の液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を、「フロント側位相差領域」という。フロント側位相差領域は全体で、及びリア側位相差領域が有する位相差との関係で、視野角CRの改善に寄与する位相差を有することが好ましい。
具体的には、フロント側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなる第3の位相差層からなる態様では、視野角補償の観点では、上記式(V)及び(VI)を満足するのが好ましい。また、他の態様では、フロント側位相差領域が、第3の位相差層、並びにレターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持つ第4の位相差層からなり、視野角補償の観点では、第3の位相差層が上記式(V)及び(VI)、第4の位相差層が上記式(VII)を満足するのが好ましい。フロント側位相差領域を構成する第3の位相差層は、TN型液晶表示装置では、上記式(Va)及び(VIa)を満足するのが好ましく、特にツイスト角90°程度の態様では、上記式(Vb)及び(VIb)を満足するのが好ましく、特にツイスト角45°程度の態様では、上記式(Ve)及び(VIe)を満足するのが好ましい。また、ECB型液晶表示装置では、上記式(Vc)及び(VIc)を満足するのが好ましく、OCB型液晶表示装置では、上記式(Vd)及び(VId)を満足するのが好ましい。
1−1. リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層:
本発明において、前記リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層を構成する各層の材料については特に制限はない。式(I)又は(II)、及び(IV)を満足する第1の位相差層、又は式(V)及び(VI)を満足する第3の位相差層は、1枚又は2枚以上の二軸性フィルムによって構成することができるし、またCプレートとAプレートとの組合せ等、一軸性フィルムを2枚以上組合せることでも構成することができる。勿論、1枚以上の二軸性フィルムと、1枚以上の一軸性フィルムとを組み合わせることによっても構成することができる。低コスト化の観点から、前記リア側位相差領域及びフロント側位相差領域は、どちらかを1枚のフィルムで構成することが好ましく、どちらも1枚のフィルムで構成することがより好ましい。
上記いずれの態様においても、前記リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層の面内レターデーションReの波長分散は、可視光域において、波長が長波長になる程大きくなるという、いわゆる逆分散性を示すことが好ましい。即ち、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満足するのが好ましい。その理由は、位相差領域のReが逆波長分散性であると、可視光域の中心波長550nm程度で、光学特性を最適化すれば、可視光全域にわたって、最適化される傾向がある。Reが逆分散性であるのが最も好ましく、また波長によらず一定であるのも好ましい。また、前記リア側位相差領域のRthについても同様であり、可視光域において、Rthが逆波長分散性を示すか、波長によらず一定であるのが好ましい。より好ましくは逆波長分散性である。逆波長分散性又は波長によらず一定であることは、例えば、Rthについては、以下の2式
(Rth(450)(/(Rth(550)(≦1、及び
1≦(Rth(650)(/(Rth(550)(
を満足することと同義である。
より高い正面CRを得るためには、リア側及びフロント側位相差領域を構成する位相差フィルムのヘイズは、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。
なお、本明細書において、位相差フィルムのヘイズの測定方法は以下の通りである。位相差フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株)製)により、JIS K−6714に従って測定する。
前記リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層を構成する材料について特に制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー等を利用することができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または前記ポリマーを混合したポリマー等から1種又は2種以上のポリマーを選択し、主成分として用いてポリマーフィルムを作製し、上記特性を満足する組合せで、リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層の作製に利用することができる。
単層でもしくは複数層全体として、上記式(I)又は(II)、及び(IV)を満足する位相差フィルム、又は上記式(V)及び(VI)を満足する位相差フィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、アクリル系ポリマーフィルム、及び環状オレフィン系ポリマーフィルムが好ましい。
セルロースアシレート系フィルム:
本明細書では、「セルロースアシレート系フィルム」とは、セルロースアシレートを主成分(全成分の50質量%以上)として含有するフィルムをいう。当該フィルムの作製に用いられるセルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子を、アシル基に置換したものである。前記セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明において使用されるセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸および/または炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
前記セルロースアシレートの置換度については特に限定されないが、セルロースのアシル置換度が2.30〜3.00であることが望ましい。また、低いヘイズの位相差フィルムを得るためには、アシル置換度は低い方が好ましく、アシル置換度が2.30〜2.65であることが好ましく、2.35〜2.60であることがより好ましく、2.40〜2.60であることがさらに好ましい。一方、位相差フィルムが逆波長分散性を示すためには、アシル置換度は高い方が好ましく、具体的には、2.65〜3.00であることが好ましく、2.75〜3.00であることがより好ましく、2.80〜3.00であることがさらに好ましい。
前記セルロースアシレートは、セルロースアセテートであることが好ましいが、アセチル基に代えて、又はアセチル基とともに、アセチル基以外のアシル基で置換されていてもよい。中でも、アセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも一種のアシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、及びアセチル、プロピオニル及びブチリル基から選ばれる少なくとも二種のアシル基を有するセルロースアシレートがより好ましい。さらに、アセチル基と、プロピオニル及び/又はブチリル基とを有するセルロースアシレートが好ましく、アセチル基の置換度が1.0〜2.97で、プロピオニル及び/又はブチリル基の置換度が0.2〜2.5のセルロースアシレートがより好ましい。
また、前記セルロースアシレートは、200〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、250〜550の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明で用いられるセルロースアシレートは、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
また、フィルムの作製に利用可能なセルロースアシレートの例には、特開2006−184640号公報の[0019]〜[0025]に詳細な記載があるセルロースアシレートが含まれる。
前記セルロースアシレート系フィルムは、溶液キャスト法により製造することが好ましい。この方法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造することができる。上記添加剤を使用する場合は、添加剤はドープ調製のいずれのタイミングで添加してもよい。
リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層の作製には、レターデーション発現剤を使用してもよい。使用可能なレターデーション発現剤としては、円盤状化合物または棒状、正の複屈折性化合物からなるものを挙げることができる。前記円盤状化合物または棒状としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。前記棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。前記円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。
前記円盤状化合物はRthレターデーション発現性において前記棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
前記レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
前記レターデーション発現剤の例には、以下の(1)〜(3)の化合物が含まれる。
(1)円盤状化合物
前記円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。本発明に用いることができる前記円盤状化合物としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0038]〜[0046]に記載される化合物を挙げることができる。
前記円盤状化合物の例には、下記一般式(I)で表される化合物が含まれる。
Figure 2011128389
式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−又はS−であり;X2は、単結合、−NR5−、−O−又はS−であり;X3は、単結合、−NR6−、−O−又はS−である。また、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、芳香族環基又は複素
環基であり;R4、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル
基、アリール基又は複素環基である。
以下に前記一般式(I)で表される化合物の好ましい例(I−(1)〜IV−(10))を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
Figure 2011128389
(2)棒状化合物
本発明では前述の円盤状化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。本発明に用いることができる前記棒状化合物としては、例えば、特開2007−268898号公報の[0053]〜[0095]に記載される化合物を挙げることができる。
(3)正の複屈折性化合物
正の複屈折性化合物とは、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より大きくなるポリマーをいう。
このような正の複屈折性化合物としては、特に制限ないが、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミド等の固有複屈折値が正のポリマーを挙げることができ、ポリエーテルケトンおよびポリエステル系ポリマー等が好ましく、ポリエステル系ポリマーがより好ましい。
前記ポリエステル系ポリマーは、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸と炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸の混合物と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。本発明のポリエステル系ポリマーに使用されるジカルボン酸は、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸残基または炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸残基であることが好ましい。
好ましく用いられる炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
また炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸等がある。
これらの中でも好ましい脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であり、芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸である。特に好ましくは、脂肪族ジカルボン酸成分としてはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸であり、芳香族ジカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、である。
前述の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸のそれぞれの少なくとも一種類を組み合わせて用いられるが、その組み合わせは特に限定されるものではなく、それぞれの成分を数種類組み合わせても問題ない。
前記正の複屈折性化合物に利用されるジオールまたは芳香族環含有ジオールは、例えば、炭素数2〜20の脂肪族ジオール、炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールおよび炭素数6〜20の芳香族環含有ジオールから選ばれるものである。
炭素原子2〜20の脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールおよび脂環式ジオール類を挙げることができ、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールであり、特に好ましくはエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールである。
炭素数4〜20のアルキルエーテルジオールとしては、好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンエーテルグリコールおよびポリプロピレンエーテルグリコールならびにこれらの組み合わせが挙げられる。その平均重合度は、特に限定されないが好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜10であり、さらには2〜5であり、特に好ましくは2〜4である。これらの例としては、典型的に有用な市販のポリエーテルグリコール類としては、カーボワックス(Carbowax)レジン、プルロニックス(Pluronics) レジンおよびニアックス(Niax)レジンが挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ジオールとしては、特に限定されないがビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ヒドロキシベンゼン、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ヒドロキシベンゼン、1,4−ベンゼンジメタノールである。
前記正の複屈折性化合物は、末端がアルキル基あるいは芳香族基で封止された化合物であることが好ましい。これは、末端を疎水性官能基で保護することにより、高温高湿での経時劣化に対して有効であり、エステル基の加水分解を遅延させる役割を示すことが要因となっている。
前記正の複屈折性化合物の両末端がカルボン酸やOH基とならないように、モノアルコール残基やモノカルボン酸残基で保護することが好ましい。
この場合、モノアルコールとしては炭素数1〜30の置換、無置換のモノアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどの置換アルコールなどが挙げられる。
好ましく使用され得る末端封止用アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、オレイルアルコール、ベンジルアルコールであり、特にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ベンジルアルコールである。
また、モノカルボン酸残基で封止する場合は、モノカルボン酸残基として使用されるモノカルボン酸は、炭素数1〜30の置換、無置換のモノカルボン酸が好ましい。これらは、脂肪族モノカルボン酸でも芳香族環含有カルボン酸でもよい。好ましい脂肪族モノカルボン酸について記述すると、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、芳香族環含有モノカルボン酸としては、例えば安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−tert−アミル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上を使用することができる。
前記正の複屈折性化合物の合成は、常法により上記ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸
書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
以下に、前記正の複屈折性化合物の具体例を記すが、本発明で用いることができる正の複屈折性化合物はこれらに限定されるものではない。
Figure 2011128389
Figure 2011128389
表2および表3中、PAはフタル酸を、TPAはテレフタル酸を、IPAはイソフタル酸を、AAはアジピン酸を、SAはコハク酸を、2,6−NPAは2,6−ナフタレンジカルボン酸を、2,8−NPAは2,8−ナフタレンジカルボン酸を、1,5−NPAは1,5−ナフタレンジカルボン酸を、1,4−NPAは1,4−ナフタレンジカルボン酸を、1,8−NPAは1,8−ナフタレンジカルボン酸をそれぞれ示している。
このような前記正の複屈折性化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、4〜25質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。
前記リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層用のセルロースアシレート系フィルムには、前記レターデーション発現剤とともに、又はそれに代えて、その他の添加剤を添加していてもよい。その他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、可塑剤、波長分散調整剤、微粒子、光学特性調整剤などをあげることができ、いずれも公知の添加剤を用いることができる。
前記リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層用のセルロースアシレート系フィルムには、得られるフィルムの機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。本発明に用いることができる前記可塑剤としては、例えば、特開2008−181105号公報の[0067]に記載される化合物を挙げることができる。
アクリル系ポリマーフィルム:
アクリル系ポリマーフィルムは、(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種から誘導される繰り返し単位を有するアクリル系ポリマーを主成分とするフィルムである。当該アクリル系ポリマーフィルムの好ましい例は、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位とともに、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、及びグルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーである。このアクリル系ポリマーについては、特開2008−9378号公報に詳細な記載があり、参照することができる。
なお該アクリル系ポリマーフィルムには、アクリル系重合体以外の重合体として、セルロース系重合体を加えると、アクリル系とセルロース系の物性が相補的に作用して、所望の特性の材料となるので好ましい。セルロース系重合体の添加量は、5〜40質量%(重合体全体に対する割合)程度が好ましい。例えばアクリル系ポリマーフィルムは、透湿度が低いため、偏光板加工後の残留水分が抜けにくいが、セルロース系重合体を加えることで、適度な透湿度を与えることができる。具体的な例として、セルロースアシレート(表4記載のCTA)を10質量%加えたフィルム、及びセルロースアシレートプロピオネート(CAP482−20(イーストマンケミカル社製))を30質量%加えたフィルムが挙げられる。
環状オレフィン系ポリマーフィルム:
環状オレフィン系ポリマーフィルムの原料及びその製造方法、並びに該原料を用いたフィルムの製造方法については、特開2006−293342号公報の[0098]〜[0193]に詳細な記載があり、本発明において参照することができる。リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層を構成する位相差フィルムとして利用可能な環状オレフィン系ポリマーフィルムの例には、ノルボルネン系ポリマーフィルムが含まれ、市販のポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)などを用いることができる。
リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層用の位相差フィルムとして用いられる種々のポリマーフィルムは、種々の方法で製造することができる。例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などが挙げられる。これらのフィルム成形方法のうち、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法が特に好ましい。また、リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層用の位相差フィルムとして利用される種々のポリマーフィルムは、成形された後、延伸処理を経て製造されたフィルムであってもよい。フィルムの延伸は、1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。同時あるいは逐次2軸延伸処理を行うのが好ましい。大きな光学異方性を達成するためにはフィルムを高い延伸倍率で延伸することが必要である。例えば、フィルムの幅方向、及びフィルムの縦方向(流れ方向)に延伸することが好ましい。延伸倍率は、3〜100%程度であることが好ましい。延伸処理は、テンターを用いて実施できる。また、ロール間にて縦延伸を行ってもよい。
また、リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層は、液晶組成物を所望の配向状態とした後、その配向状態を固定して形成された層であってもよいし、又は当該層とともに、当該層を支持するポリマーフィルムを有する積層体であってもよい。後者の態様では、当該ポリマーフィルムを偏光子の保護フィルムとして利用することもできる。リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層の作製に利用可能な液晶の例には、棒状液晶、円盤状液晶、コレステリック液晶等、種々の液晶が含まれる。
前記溶液キャスト法として、共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法も用いることができる。共流延法および逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンドまたはドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でもよい)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
逐次流延法は、流延用支持体の上に先ず第1層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して、流延し、乾燥あるいは乾燥することなく、その上に第2層用の流延用ドープを流延用ギーサから押出して流延する要領で、必要なら第3層以上まで逐次ドープを流延・積層して、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
塗布法は、一般的には、コア層のフィルムを溶液製膜法によりフィルムに成形し、表層に塗布する塗布液を調製し、適当な塗布機を用いて、片面ずつまたは両面同時にフィルムに塗布液を塗布・乾燥して積層構造のフィルムを成形する方法である。
また、リア側位相差領域の第1の位相差層、及びフロント側位相差領域の第3の位相差層の厚みは、20μm以上、200μm以下とすることが製造適性の観点で好ましい。
1−2. リア側位相差領域の第2の位相差層、及びフロント側位相差領域の第4の位相差層:
本発明において、第2の位相差層及び第4の位相差層は、それぞれ上記式(III)及び(VII)の光学特性を満足し、即ち、層面の法線を含む少なくとも一つの入射面の入射光に対して、レターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持つ位相差層である。さらに、下記(1)〜(3)の全ての光学特性を満足する位相差層であることが好ましい。第2及び第4の位相差層の好ましい光学特性の態様は、前述のTN、ECB、OCBの各モード液晶表示装置について略同等である。
(1)波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、20nm〜120nmであり(さらに好ましくは、Re(550)は25〜50nmであり);
(2)第2及び第4の位相差層の傾斜方位と法線を含む面内において、前記法線から傾斜方位側へ40°傾いた方向から測定した、波長550nmのR[40°]が、0nm〜300nm(より好ましくは0〜190nm)であり;及び
(3)第2及び第4の位相差層の傾斜方位と法線を含む面内において、前記法線から傾斜方位側へ40°傾いた方向(入射方向1)から測定した、波長550nmのレターデーションR[+40°]と、該法線に対して傾斜方位とは反対側へ40°傾いた方向(入射方向2)から測定したR[−40°]とが、リア側位相差領域を構成する第2の位相差層では下記式(III)
1<R2[+40°]/R2[−40°] (III)
を満足し、フロント側位相差領域を構成する第4の位相差層では下記式(VII)
1<R4[+40°]/R4[−40°] (VII)
を満足する;のが好ましい。
なお、上記(2)の特性については、R[40°]は、R[+40°]及びR[−40°]の双方を意味し、R[40°]が、0nm〜300nmであるとは、R[+40°]及びR[−40°]の双方が0〜300nmの範囲内であることを意味する。
なお、たとえ層面の法線を含む少なくとも一つの入射面の入射光に対して、レターデーションの極角依存性が法線方向(極角0°)を中心に非対称性を持つ第2及び第4の位相差層を利用しても、光学特性が記式(I)又は(II)及び(IV)を満足しない第1及び第3の位相差層と組合せて使用しない限り、TN、ECB及びOCB型のいずれの液晶表示装置の光学補償に利用しても、本発明の顕著な正面コントラスト向上効果は得られない。
第2及び第4の位相差層の一例は、ディスコティック液晶分子を、いわゆるハイブリッド配向状態、で固定して形成される位相差層が挙げられる。ディスコティック液晶分子のハイブリッド配向を利用すると、R[+40°]/R[−40°]が、5〜20程度(より好ましくは8〜15程度)の第2及び第4の位相差層が得られる。ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と層面との角度が、層の深さ方向で、且つ配向膜面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で当該角度が変化しない領域を含んでいる。本明細書では、「ハイブリッド配向」には、当該角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少している配向状態も含むものとする。当該角度が連続的に変化しているハイブリッド配向が好ましい。
第2及び第4の位相差層の作製に使用可能な円盤状(ディスコティック)液晶化合物の例には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
円盤状液晶化合物の分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶化合物を含有する組成物から形成する位相差層は、最終的に位相差層に含まれる状態で液晶性を示す必要はない。例えば、熱や光で反応する基を有する低分子の円盤状液晶性分子を、加熱又は光照射により重合反応等させて、高分子量化すると、液晶性を失うが、かかる高分子量化された化合物を含む位相差層も、もちろん本発明に利用することができる。円盤状液晶化合物の好ましい例には、特開平8−50206号公報に記載されている化合物が含まれる。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
前記第2及び第4の位相差層の形成には、液晶化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等の添加剤を併用してもよい。これらの添加剤は、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上すること等、種々の目的で添加されるであろう。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
使用可能なポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
前記第2及び第4の位相差層は、液晶性化合物、及び必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の添加剤を含む塗布液を、支持体の表面上(好ましくは支持体表面に配向膜を形成し、該配向膜の表面)に塗布することで形成できる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、従来公知の方法により実施でき、前記の配向膜で記載の内容のものが挙げられる。
第2及び第4の位相差層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることがよりさらに好ましい。
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。配向状態の固定は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
第2及び第4の位相差層中の表面側(空気側)の液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に、位相差層の形成に用いる液晶性分子と共に使用する添加剤(例えば、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなど)の種類を選択することにより調整することができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
第2及び第4の位相差層の他の例は、主軸が厚み方向において傾斜しているフィルムである。ここで、フィルムの「主軸」とは、KOBRA 21ADH又はWRが算出した屈折率楕円体の主屈折率、nx、ny、nzにおけるフィルム厚さ方向の主屈折率nzをいう。また、「厚み方向において傾斜している」とは、フィルム面の法線方向に対して、フィルム面内の任意の方向を傾斜方位として、フィルム面方向に角度θt°(但し0°<θt<90°を満足する。以下、θtを「傾斜角」という)だけ傾斜していることを意味する。前記位相差層は、フィルム面法線方向に対して傾斜角度47°以下でR[+40°]/R[−40°]が5以上であるのが好ましく(より好ましくは傾斜角度9〜47°でR[+40°]/R[−40°]が8以上、また、さらに好ましいのは傾斜角度20〜47°でR[+40°]/R[−40°]が8〜15の範囲である)の方向に主軸を有するポリマーフィルム又は液晶組成物からなる層であるのが好ましい。また、TN、ECB及びOCBモードのいずれの態様においても、傾斜角度θtは、47°以下であるのがより好ましく、9〜47°であるのがさらに好ましく、20〜47°であるのがよりさらに好ましい。
なお、フィルムの主軸のフィルム面に対する傾斜角度は、以下の方法により測定することができる。なお、以下の測定方法において許容される誤差は、本発明に用いられるフィルムの主軸の傾斜角度についても許容されるであろう。
フィルムの主軸の傾斜角度は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの幅方向(TD方向)を傾斜軸とした測定を行い、傾斜角度40度での位相差及び傾斜角度−40度での位相差から、主軸の傾斜角度を測定する。なお、測定波長は550nmとする。
また、主軸の傾斜角のバラツキは、以下の方法により測定することができる。
フィルムの幅方向に10点及び、搬送方向10点に等間隔でサンプリングを行い、上記方法で主軸の傾斜角を測定し、その最大値と最小値の差を、主軸の傾斜角のバラツキとすることができる。
なお、遅相軸角度は、前記したReの測定によって決定することができ、そのバラツキも、フィルムの幅方向に10点及び、搬送方向10点に等間隔に測定を行った際の最大値と最小値の差で決定することができる。
前記態様の第2及び第4の位相差層は、例えば、以下の方法で製造することができる。
熱可塑性樹脂を含有する組成物のフィルム状の溶融物を、周速が互いに異なる2つのロール間を通過させること、及び所望によりさらに延伸すること、を含む方法により製造することができる。この方法により、上記(1)〜(3)の光学特性を満足するポリマーフィルムを安定的に及び簡易に製造することができる。より具体的には、溶融状態で周速が互いに異なる2つのロール間を通過させることにより、光学特性のバラツキが無く又は小さく、フィルム表面に接触傷などの欠陥を発生させずに、安定的に前記(1)〜(3)の光学特性を満足するポリマーフィルムを製造することができる。光学特性のバラツキが無い又は少ない点、及びフィルム表面に接触傷などの欠陥がない点で、下記方法で製造するフィルムは、特開平7−333437号公報や特開平6−222213号公報に記載されている、非溶融状態のフィルムを周速の異なるロール間を通過させて光軸を傾斜させたフィルムと相違する。
以下、この製造方法について詳細に説明する。
前記方法では、熱可塑性樹脂を含有する組成物(「熱可塑性樹脂組成物」という場合がある)を溶融押出しする。溶融押出しをする前に、熱可塑性樹脂組成物をペレット化するのが好ましい。ペレット化は前記熱可塑性樹脂組成物を乾燥した後、2軸混練押出機を用い150℃〜300℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを空気中あるいは水中で固化し裁断することにより作製できる。また、押出機による溶融後、水中に口金より直接押出しながらカットするアンダーウオーターカット法等によりペレット化することもできる。ペレット化に利用される押出機としては、単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは20rpm〜700rpmである。押出滞留時間は10秒〜10分、より好ましくは20秒〜5分である。
ペレットの大きさについては特に制限はないが、一般的には10mm3〜1000mm3程度であり、より好ましくは30mm3〜500mm3程度である。
溶融押出し前に、ペレット中の水分を減少させることが好ましい。好ましい乾燥温度は40〜200℃、さらに好ましくは60〜150℃である。これにより含水率を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.1質量%以下にすることがさらに好ましい。乾燥は空気中で行ってもよく、窒素中で行ってもよく、真空中で行ってもよい。
次に、乾燥したペレットを、押出機の供給口を介してシリンダー内に供給し、混練及び溶融させる。シリンダー内は、例えば、供給口側から順に、供給部、圧縮部、計量部とで構成される。押出機のスクリュー圧縮比は1.5〜4.5が好ましく、シリンダー内径に対するシリンダー長さの比(L/D)は20〜70が好ましく、シリンダー内径は30mm〜150mmが好ましい。押出温度は、熱可塑性樹脂の溶融温度に応じて決定されるが、一般的には、190〜300℃程度が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中の異物濾過のためブレーカープレート式の濾過やリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は1段で行ってもよく、多段濾過で行ってもよい。濾過精度は15μm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは10μm〜3μmである。濾材としてはステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成は、線材を編んだもの、金属繊維もしくは金属粉末を焼結したもの(焼結濾材)が使用でき、中でも焼結濾材が好ましい。
吐出量の変動を減少させ厚み精度を向上させるために、押出機とダイの間にギアポンプを設けることが好ましい。これによりダイ内の樹脂圧力変動巾を±1%以内にすることができる。ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。
前記の如く構成された押出機によって溶融され、必要に応じ濾過機、ギアポンプを経由して溶融樹脂がダイに連続的に送られる。ダイはTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。またダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためスタティックミキサーを入れることも好ましい。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜10倍がよく、好ましくは1.2〜5倍である。
ダイは5〜50mm間隔で厚み調整可能であることが好ましい。また下流のフィルム厚み、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも有効である。
単層製膜装置以外にも、多層製膜装置を用いて製造も可能である。
このようにして、樹脂が供給口から押出機に入ってからダイから出るまでの滞留時間は3分〜40分が好ましく、さらに好ましくは4分〜30分である。
次に、熱可塑性樹脂の溶融物をダイからフィルム状に押出し、2つのロール(例えば、タッチロール及びキャスティングロール)間を通過させ、冷却固化して(タッチロール法)、フィルムを得る。前記方法では、互いに異なる周速で回転している2つのロール間にフィルム状の溶融物を通過させることで、フィルムにせん断を与えて、前記関係式(III)を満足する(主軸が法線方向に対して傾斜した)ポリマーフィルムを作製することができる。直径の大きなロールを用いるとフィルムにかかるせん断が大きくなり、R[+40°]/R[−40°]の値が大きくなる(主軸の傾斜角度が大きくなる)傾向がある。直径が、350〜600nm(より好ましくは350〜500nm)の2つのロール(例えば、タッチングロールとキャスティングロール)を使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、フィルム状の溶融物とロールの接触面積が広くなり、せん断がかかる時間がより長くなるため、R[+40°]/R[−40°]の値が大きい(主軸がより大きな傾斜角度で傾斜した)フィルムを、しかもそのバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、本発明の方法では、2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。また、フィルムの噛み込み性も向上するので、より安定的に製造することができる。一方、フィルム状の溶融物の幅方向の温度分布が顕著であると、均一性を維持するのが困難になるので、前記方法では、ダイから溶融押出しされ2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物の幅方向の温度分布を軽減するのが好ましく、具体的には、幅方向の温度分布を5℃以内にするのが好ましい。温度分布を軽減するためには、溶融物のダイと2つのロールとの間の通路の少なくとも一部に、断熱機能又は熱反射機能のある部材を配置し、該溶融物を外気から遮蔽するのが好ましい。この様に、断熱部材を通路に配置して、外気から遮蔽することで、外部環境、例えば風、の影響を抑えることができ、フィルムの幅方向の温度分布を抑制することができる。フィルム状の溶融物の幅方向の温度分布は、±3℃以内がより好ましく、±1℃以内がよりさらに好ましい。この様に、ロール間を通過させる直前まで、フィルム状溶融物の幅方向の温度を均一にするバラツキを抑制することができる。
なお、フィルム状の溶融物の温度分布は、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができるが、特に非接触式の赤外温度計を用いて測定することができる。
よりバラツキをなくす方法として、フィルム状の溶融物がキャスティングロールに接触する際の密着性を上げる方法がある。具体的には、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法などの方法を組み合わせて、密着性を向上させることができる。このような密着向上法は、フィルム状の溶融物の全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。
また、供給された熱可塑性樹脂組成物の溶融物を2つのロール表面で連続的に挟圧してフィルム状に成形する従来の方法に加え、ロール間に圧力を5〜500MPaかけるのが好ましい。より好ましい圧力は、20〜300MPaであり、さらに好ましくは、25〜200MPaであり、特に好ましくは30〜150MPaである。
本発明では、2つのロールの材質は金属であることが好ましく、より好ましくはステンレスであり、表面をメッキ処理されたロールも好ましい。一方、ゴムロールやゴムでライニングした金属ロールは、表面の凹凸が大きく、フィルムの表面に傷が付き易いので、使用しないほうが好ましい。
タッチロールについては、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
フィルム状の溶融物を通過させる2つのロール(例えばキャスティングロールとタッチロール)以外に、キャスティングロールを1本以上使用して、フィルムを冷却するのが好ましい。タッチロールは、通常は最上流側(ダイに近い方)の最初のキャスティングロールにタッチさせるように配置する。一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。複数本あるキャスティングロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
また、タッチロールやキャスティングロールの表面は、算術平均高さRaが通常100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。
ここで、2つのロールの周速比とは、2つのロールの周速度の比率(第1のロールの周速度/第2のロールの周速度)を意味する。但し、第1のロールの周速度<第2のロールの周速度とする。2つのロールの周速差が大きいほど、即ち、上記周速比が小さいほど、得られるフィルムのR[+40°]/R[−40°]の値が大きくなる(主軸の傾斜角度は大きくなる)傾向があるが、一方、周速差が大きすぎると、得られるフィルムの表面に傷が付きやすくなる。具体的には、R[+40°]/R[−40°]の値が大きい(主軸の傾斜角度βが大きい、例えば、20°以上の)ポリマーフィルムを製造する際は、2つのロールの周速比は、0.55〜0.80とすることが好ましく、0.55〜0.74とすることがより好ましい。但し、傷が付かないよう、下記条件(i)〜(iii)を満足することが
好ましい。
(i) 2つのロールの少なくとも一方に接触する直前の熱可塑性樹脂組成物の溶融物の粘弾性が、損失弾性率>貯蔵弾性率を示す温度領域(具体的にはTg+50℃〜Tg+70℃以上(Tgは熱可塑性樹脂のガラス転移点))にする、
(ii) ダイから溶融押出しされたフィルム状の溶融物が、2つのロールの少なくとも一方に接触する直前まで、溶融物の幅方向の温度分布を±5℃以内にする、
(iii) 2つのロールとして、少なくとも表面が金属製のロールを使用する。
2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、光軸のバラツキを制御するためには、独立駆動であることが好ましい。本発明では、2つのロールが、互いに異なる周速で駆動されることは上記した通りであるが、さらに、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃に設定する。このような温度制御は、タッチロール内部に温調した液体、気体を通すことで達成することができる。
溶融物を延製膜した後、両端をトリミングすることが好ましい。トリミングで切り落とした部分は破砕し、再度原料として使用してもよい。
また片端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは3μm〜20μmである。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、より好ましくは3mm〜30mmである。押出し加工は室温〜300℃で実施できる。巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。材質はポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等、特に限定されない。
巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/幅である。
位相差層に要求される特性を満足するポリマーフィルムを製造するために、製膜した後、延伸及び/又は緩和処理を行ってもよい。例えば、以下の(a)〜(i)の組合せで各工程を実施することができる。
(a) 横延伸
(b) 横延伸→緩和処理
(c) 縦延伸→横延伸
(d) 縦延伸→横延伸→緩和処理
(e) 縦延伸→緩和処理→横延伸→緩和処理
(f) 横延伸→縦延伸→緩和処理
(g) 横延伸→緩和処理→縦延伸→緩和処理
(h) 縦延伸→横延伸→縦延伸
(i) 縦延伸→横延伸→縦延伸→緩和処理
これらの中で特に必要となるのが、(a)の横延伸工程である。
横延伸はテンターを用い実施することができる。即ちフィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所望の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。本明細書中、「延伸温度」(以下、「横延伸温度」とも言う)は、フィルム膜面温度によって特定する(本明細書中、横延伸以外の各延伸工程においても、延伸温度は、フィルム膜面温度によって特定する)。延伸温度が、Tg−40℃〜Tg+40℃となるように制御して行うことが好ましい。すなわち、前記横延伸工程の横延伸温度はTg−40℃〜Tg+40℃が好ましく、より好ましくはTg−20℃〜Tg+20℃、さらに好ましくはTg−10℃〜Tg+10℃である。ここで、横延伸工程における横延伸温度とは、延伸開始点から延伸終了点までの間の平均温度を意味する。
横延伸工程の延伸時間は、1秒〜10分が好ましく、より好ましくは2秒〜5分、さらに好ましくは5秒〜3分である。延伸温度および延伸時間を上記の範囲内に制御することにより、溶融挟圧工程で形成されるフィルム中に厚み方向の傾斜構造が緩和し難く、延伸後のフィルムの傾斜構造を大きく維持することができるとともに、本発明の好ましい範囲内のR[+40°]/R[−40°]を形成することができる。前記横延伸工程の延伸温度はテンター内に所望の温度の風を送ることで制御できる。
また、好ましい横延伸倍率は1.01〜4倍、より好ましく1.03〜3.5倍、さらに好ましくは1.1〜3.0倍である。横延伸倍率は1.51〜3.0倍であるのが特に好ましい。
前記横延伸は、テンター内でクリップを幅方向に拡幅する通常の横延伸方法に従って実行してもよいし、また同様に、クリップで把持して拡幅する下記の延伸方法に従って、実行することもできる。
(同時2軸延伸)
通常の横延伸方法と同様、横方向にクリップを拡幅するが、それと同時に縦方向に延伸、収縮する方法である。具体的には、実開昭55−93520号、特開昭63−247021号、特開平6−210726号、特開平6−278204号、特開2000−334832号、特開2004−106434号、特開2004−195712号、特開2006−142595号、特開2007−210306号、特開2005−22087号、特表2006−517608号、特開2007−210306号各公報に記載されていて、いずれの公報に記載の方法も参照することができる。
(斜め延伸)
通常の横延伸方法と同様、横方向にクリップを拡幅するが、左右のクリップの搬送速度を変えることで斜め方向に延伸する方法である。これによりMD方向から30°〜150°、より好ましくは40°〜140°、さらに好ましくは50°〜130°に延伸することができ、具体的には、特開2002−22944号、特開2002−86554号、特開2004−325561号、特開2008−23775号、特開2008−110573号、特開2000−9912号、特開2003−342384号、特開2004−20701号、特開2004−258508号、特開2006−224618号、特開2006−255892号、特開2008−221834号、特開2003−342384号、国際公開WO2003/102639号各公報に記載されていて、いずれの公報に記載の
方法も参照することができる。
このような延伸の前に予熱、延伸の後に熱固定を行うことで延伸後のRe、Rth分布を小さくし、ボーイングに伴う配向角のばらつきを小さくできる。予熱、熱固定はどちらか一方であってもよいが、両方行うのがより好ましい。これらの予熱、熱固定はクリップで把持して行うのが好ましく、即ち延伸と連続して行うのが好ましい。
予熱は延伸温度より1℃〜50℃程度高い温度で行うことができ、好ましく2℃〜40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以下高くすることが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。予熱の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは未延伸フィルムの幅の±10%を指す。
熱固定は延伸温度より1℃以上50℃以下低い温度で行うことができ、より好ましく2℃以上40℃以下、さらに好ましくは3℃以上30℃以上低くすることが好ましい。さらに好ましくは延伸温度以下でかつTg以下にするのが好ましい。好ましい予熱時間は1秒以上10分以下であり、より好ましくは5秒以上4分以下、さらに好ましくは10秒以上2分以下である。熱固定の際、テンターの幅はほぼ一定に保つことが好ましい。ここで「ほぼ」とは延伸終了後のテンター幅の0%(延伸後のテンター幅と同じ幅)〜−10%(延伸後のテンター幅より10%縮める=縮幅)を指す。延伸幅以上に拡幅すると、フィルム中に残留歪が発生しやすくRe、Rthの経時変動を増大し易く好ましくない。
このような予熱、熱固定により配向角やRe、Rthのバラツキを小さくできるのは次の理由による。
(i)フィルムは幅方向に延伸され、直交方向(長手方向)に細くなろうとする(ネッキング現象)。このため横延伸前後のフィルムが引っ張られ応力が発生する。しかし幅方向両端はチャックで固定されており応力により変形を受け難く、幅方向の中央部は変形を受け易い。この結果、ネッキングによる応力は弓(bow)状に変形しボーイングが発生する。これにより面内のRe、Rthむらや配向軸の分布が発生する。
(ii)これを抑制するために、予熱側(延伸前)の温度を高くし、熱処理(延伸後)の温度を低くすると、ネックインはより弾性率の低い高温側(予熱)で発生し、熱処理(延伸後)では発生し難くなる。この結果、延伸後のボーイングを抑制できる。
このような延伸によりさらに、Re、Rthの幅方向、長手方向のばらつきを、いずれも5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下にできる。さらに配向角を90°±5°以下または0°±5°以下とすることができ、より好ましくは90°±3°以下または0°±3°以下、さらに好ましくは90°±1°以下または0°±1°以下とすることができる。
高速延伸処理を行ってもよく、好ましくは20m/分以上、より好ましくは25m/分
以上、さらに好ましくは30m/分以上で延伸処理することができる。
位相差層として利用可能なフィルムは、正の固有複屈折性を示す熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂は非晶性であるのが好ましい。種々の樹脂の固有複屈折については、MSDS、樹脂スペック表、高分子データベース等に記載があるので、それを参照することができる。また、いずれの書籍等にも記載されていない場合は、プリズムカップリング法に従って、測定することができる。また、本発明では、「非晶性樹脂」とは、該樹脂を製膜したフィルムについての熱分析測定を行った場合に、結晶融解ピークがないものをいう。上記性質を満足する限り、樹脂の種類については特に制限はない。熱可塑性樹脂の例には、環状オレフィン共重合体類、セルロースアシレート類、ポリエステル類、及びポリカーボネート類が含まれる。溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン共重合体類、セルロースアシレート類を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。中でも、セルロースアシレート類、及び付加重合によって得られた環状オレフィン樹脂が好ましい。
前記環状オレフィン共重合体類の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られた樹脂が含まれる。開環重合及び付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合及びそれにより得られる樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合及びそれにより得られる樹脂としては、国際公開WO98第98/−14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98−/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィンの中でも付加重合のもののほうがより好ましい。市販品を用いてもよく、特に押し出し成形時に発生するゲルを抑制しやすい、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
前記セルロースアシレート類の例には、セルロース単位中の3個の水酸基の少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基及び芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基から選択される1種又は2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基及びプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
溶融押出し法によりフィルムを作製する場合は、用いるセルロースアシレートは、以下の式(S−1)及び(S−2)を満足することが好ましい。以下の式を満足するセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
式(S−1) 2.5≦X+Y≦3.0
式(S−2) 1.25≦Y≦3.0
式中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位の全ての水酸基の水素原子がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましく、
2.6≦X+Y≦2.95
2.0≦Y≦2.95
下記式を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
2.7≦X+Y≦2.95 2.3≦Y≦2.9
セルロースアシレート類の質量平均重合度及び数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、及び数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート類は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)及び(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
前記ポリエステル類の例には、環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂が挙げられ、特にジカルボン酸単位とジオール単位とを含みジオール単位中の1〜80モル%が環状アセタール骨格を有するジオール単位であるポリエステル樹脂が、複屈折が小さく本発明で好ましく使用される。
位相差層に利用されるポリマーフィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料のそれぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。また、前記ポリマーフィルムを液晶ディスプレイに用いた場合の正面コントラスト比特性を高めるには、上記熱可塑性樹脂を1種のみ用いることがより好ましい。なお、この態様における「1種のみを用いる」とは、「主原料となるポリマー材料を1種のみ用いる」ことを意味し、下記の1種以上の添加剤が添加されていても、本態様から排除されるものではない。
上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、及び光学調整剤が含まれる。
安定化剤:
本発明の光学フィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融する前に又は加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質及び揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ
AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。更に、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO−412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
紫外線吸収剤:
本発明の光学フィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
光安定化剤:
本発明の光学フィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これらの添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
可塑剤:
本発明の光学フィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明の光学フィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明の光学フィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
微粒子:
本発明の光学フィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることが更に好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
光学調整剤:
本発明の光学フィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
2. 偏光子
フロント側及びリア側に配置される偏光子については特に制限はない。通常用いられている直線偏光膜を利用することができる。直線偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜、もしくはバインダーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が好ましい。直線偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
3. 保護フィルム
フロント側偏光子及びリア側偏光子のそれぞれの両面には、保護フィルムが貼合されているのが好ましい。但し、液晶セル側に配置される保護フィルムは、それぞれリア側位相差領域及びフロント側位相差領域の一部を構成するものとし、前者については、上記式(I)又は(II)、及び(IV)を満足することが要求される。後者についても、フロント側位相差領域の一部を構成し、態様によっては、視野角CRの改善に寄与する光学特性を単独でまたは他の層とともに示すことが要求される。
フロント側偏光子及びリア側偏光子の外側に配置される保護フィルムについては、特に制限はない。種々のポリマーフィルムを使用することができる。上記フロント側位相差領域を構成可能なポリマーフィルムの例と同様である。例えば、セルロースアシレート類(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等のフィルム)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー、ポリプロピレン)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステル、又はポリスルホンを主成分とするフィルム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。市販のポリマーフィルム(セルロースアシレート類では、「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)、ノルボルネン系ポリマーでは、アートン(JSR製)、ゼオノア(日本ゼオン製)など)も使用することができる。
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
1.TN型液晶表示装置の作製と評価
(1) TN型の液晶セル1及び2の準備
図1及び図2に示す構成と同様のCOA構成のTN型の液晶セル1、及び図3に示す構成と同様の非COA構成のTN型の液晶セル2を作製した。液晶セル1と2は、カラーフィルタの位置が異なる以外は同様の方法で作製された液晶セルである。
なお、カラーフィルタは、着色感光性組成物に特開2009−144126号公報中に記載の実施例17、18及び19に記載の通り調製した組成物、並びに有機系現像液CD2000(富士フイルムエレクトロマテリアルズ社製)を用いて作製した。液晶層には、誘電異方性が正で、屈折率異方性Δn=0.0854(589nm、20°C)、Δε=+8.5程度の液晶(例えばメルク社製のMLC−9100)を使用した。また、上下基板の内面にはラビング処理が施され、電圧無印加時に、液晶層は、上下基板間でツイスト角90°でねじれ配向した。作製した液晶セル1および2のΔnd(550)は400nmであった。
リア側偏光板(図1中、PL1)として、偏光膜、及びその一方の表面に、光学補償フィルムを有する偏光板を用い、当該光学補償フィルム(図1中、リア側位相差領域20)を液晶セル側にして配置した。当該光学補償フィルムは、下記表に示す材料からなり、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムからなる光学補償フィルム、若しくは、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムの上に、硬化性ディスコティック液晶組成物からなり、下記表に示す光学特性を示す位相差層を形成した光学補償フィルムである。該ポリマーフィルムを、リア側位相差領域の第1の位相差層として、及び硬化性ディスコティック液晶組成物からなる位相差層、又は前記溶融押し出しにより形成した熱可塑性樹脂組成物からなる溶融傾斜位相差フィルムを、リア側位相差領域の第2の位相差層として配置した。なお、第2の位相差層中において、ディスコティック液晶分子がハイブリッド配向状態に固定されていること及び、前記溶融形成熱可塑性フィルムの主軸が傾斜していることを、光学特性の測定から確認した。また、第1の位相差層として利用したポリマーフィルムの光学特性は、ポリマーフィルムの材料、延伸条件、添加剤等を選択することで調整し、第2の位相差層の光学特性は、膜厚等により調整した。また、第1の位相差層として用いたポリマーフィルムに、面内遅相軸がある場合は、該面内遅相軸を、リア側偏光子(図1中、24)の吸収軸に直交もしくは平行とした。なお、偏光膜の他方の表面には、市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を貼合した。
フロント側偏光板(図1中、PL2)として、偏光膜、及びその一方の表面に、光学補償フィルムを有する偏光板を用い、当該光学補償フィルム(図1中、フロント側位相差領域22)を液晶セル側にして配置した。当該光学補償フィルムは、下記表に示す材料からなり、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムからなる光学補償フィルム、若しくは、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムの上に、硬化性ディスコティック液晶組成物からなり、下記表に示す光学特性を示す位相差層を形成した光学補償フィルムである。該ポリマーフィルムを、フロント側位相差領域の第3の位相差層として、及び硬化性ディスコティック液晶組成物からなる位相差層、又は前記溶融押し出しにより形成した熱可塑性樹脂組成物からなる溶融傾斜位相差フィルムを、フロント側位相差領域の第4の位相差層として配置した。なお、第4の位相差層中において、ディスコティック液晶分子がハイブリッド配向状態に固定されていること及び、前記溶融形成熱可塑性フィルムの主軸が傾斜していることを、光学特性の測定から確認した。また、第3の位相差層として利用したポリマーフィルムの光学特性は、ポリマーフィルムの材料、延伸条件、添加剤等を選択することで調整し、第4の位相差層の光学特性は、膜厚等により調整した。また、第3の位相差層として用いたポリマーフィルムに、面内遅相軸がある場合は、該面内遅相軸を、フロント側偏光子(図1中、26)の吸収軸に直交もしくは平行とした。なお、偏光膜の他方の表面には、市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を貼合した。
また、フロント側偏光子およびリア側偏光子を、液晶セルと貼り合わせる際には、液晶セルのフロント側およびリア側基板ラビング方向が、リア側位相差領域の第1の位相差層として用いたポリマーフィルムの面内遅相軸と略平行または略直交になるようにした。また、フロント側位相差領域の第3の位相差層として用いたポリマーフィルムに面内遅相軸がある場合も同様とした。フロント側偏光子およびリア側偏光子の吸収軸は液晶セル配向方向(フロント側基板、又はリア側基板のラビング方向)と略平行で、且つフロント側偏光子およびリア側偏光子の吸収軸の交差角は概略90°の直交ニコルとした。
(2) TN型の液晶表示装置の評価
作製した各液晶表示装置について、以下の評価を行った。
(2−1)正面コントラスト比
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、パネル法線方向の黒表示および白表示の輝度値を測定し、正面コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出した。
このとき、測定器とパネル間の距離は700mmに設定した。
続いて、正面コントラスト比を、基準形態での正面コントラスト比を基に、次の式で算出した。
正面コントラスト比=実施形態での正面コントラスト/基準形態での正面コントラスト
なお、各形態における基準形態は、下表に示す。
(2−2)コントラスト視野角特性
測定器(BM5A、TOPCON社製)を用いて、暗室において、黒表示および白表示の輝度値を測定し、コントラスト(白輝度/黒輝度)を算出した。上下左右方向における各液晶表示装置のコントラストが10を超える視野角を基準として、各液晶表示装置の同視野角をそれぞれ規格化して評価した。
「◎」は。上下左右の視野角(CR>10)の合計が240°以上、
「○」は、上下左右の視野角(CR>10)の合計が180°以上、240°未満、
「×」は、上下左右の視野角(CR>10)の合計が180°未満、
を意味する。
下記表に結果を示す。
なお、下記表中、「TAC」は、トリアセチルセルロースを意味するが、アセチル基の一部が、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、又はヘキサノイル基に置換されているセルロースアシレート類を用いることもできる。また、セルロースの一単位中の3つの水酸基の全ての水素原子がアセチル基等のアシル基で置換されたものの他、所定の割合で、水素原子が残留するセルロースアシレート類を用いることもできる。
また、下記表中、「ノルボルネン」は、環状オレフィン共重合体を意味し、Polyplastics社製の「TOPAS#6013」のペレットを用いたことを意味する。
また、下記表中、「DLC」は、硬化性ディスコティック液晶組成物からなる位相差層を意味し、「溶融傾斜」は、溶融押し出しにより形成した熱可塑性樹脂組成物からなる位相差フィルムを意味する。
これらの意味は、下記のいずれの表においても同様である。
Figure 2011128389
Figure 2011128389
上記結果から、上記式(I)を満足する位相差フィルムをリア側偏光子とCOA構造の液晶セルとの間に配置した第1の態様の実施例1〜4、11及び12のTN型液晶表示装置はいずれも、非COA構造の液晶セルを用いた以外は同一の構成の比較例のTN型液晶表示装置(比較例3、6〜8、17及び18)と比較して、正面CRが高いことが理解できる。
同様に、上記式(II)を満足する位相差フィルムと、上記式(III)を満足する位相差層(DLC組成物からなる層又は溶融傾斜法により作製した位相差フィルム)とをリア側偏光子とCOA構造の液晶セルとの間に配置した第2の態様の実施例5〜10、13及び14のTN型液晶表示装置はいずれも、非COA構造の液晶セルを用いた以外は同様の構成の比較例のTN型液晶表示装置(比較例11、14〜16、19及び20)と比較して、正面CRが高いことが理解できる。
さらに、比較例1及び2と、比較例4及び5とを参照すると、これらは液晶セルがCOA構造又は非COA構造の違いがある以外は同一の構成のTN型液晶表示装置であり、例えば実施例1と比較例3との関係と同様である。しかし、比較例1及び2では、リア側位相差領域のRth(550)が式(I)を満足していないため、正面CRが比較例4及び5と比較してむしろ低下している。
同様に、比較例9及び10と、比較例12及び13とを参照すると、これらは液晶セルがCOA構造又は非COA構造の違いがある以外は同一の構成のTN型液晶表示装置であり、例えば実施例5と比較例11との関係と同様である。しかし、比較例9及び10では、リア側位相差領域のRth(550)が式(II)を満足していないため、正面CRが比較例12及び13と比較してむしろ低下している。
このことから、本発明の効果は、COA構造を採用するとともに、第1の態様では、リア側位相差領域が、前記式(I)を満足することによってはじめて得られること;並び第2の態様では、リア側位相差領域が前記式(II)を満足する第1の位相差層と、前記式(III)を満足する第2の位相差層とからなることによってはじめて得られること;は明らかである。
2.ECB型液晶表示装置の作製と評価
(2) ECB型の液晶セル3及び4の準備
図1及び図2に示す構成と同様のCOA構成のECB型の液晶セル3、及び図3に示す構成と同様の非COA構成のECB型の液晶セル4を作製した。液晶セル3と4は、カラーフィルタの位置が異なる以外は同様の方法で作製された液晶セルである。なお、液晶セルのセルギャップは3.5μmとした。液晶層には、誘電異方性が正で、屈折率異方性Δn=0.0854(589nm、20°C)、Δε=+8.5程度の液晶(例えばメルク社製のMLC−9100)を使用した。また、上下基板の内面にはラビング処理が施され、電圧無印加時に、液晶層は、上下基板間でねじれのない、交差角0°で配向した。作製した液晶セル3および4のΔnd(550)は300nmであった。
リア側偏光板(図1中、PL1)として、偏光膜、及びその一方の表面に、光学補償フィルムを有する偏光板を用い、当該光学補償フィルム(図1中、リア側位相差領域20)を液晶セル側にして配置した。当該光学補償フィルムは、下記表に示す材料からなり、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムからなる光学補償フィルム、若しくは、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムの上に、硬化性ディスコティック液晶組成物からなり、下記表に示す光学特性を示す位相差層を形成した光学補償フィルムである。該ポリマーフィルムを、リア側位相差領域の第1の位相差層として、及び硬化性ディスコティック液晶組成物からなる位相差層及び、前記溶融押し出しにより形成した熱可塑性樹脂組成物からなる溶融傾斜位相差フィルムを、リア側位相差領域の第2の位相差層として配置した。なお、第2の位相差層中において、ディスコティック液晶分子がハイブリッド配向状態に固定されていること及び、前記溶融形成熱可塑性フィルムの主軸が傾斜していることを、光学特性の測定から確認した。また、第1の位相差層として利用したポリマーフィルムの光学特性は、ポリマーフィルムの材料、延伸条件、添加剤等を選択することで調整し、第2の位相差層の光学特性は、膜厚等により調整した。また、第1の位相差層として用いたポリマーフィルムに、面内遅相軸がある場合は、該面内遅相軸を、リア側偏光子(図1中、24)の吸収軸に直交もしくは平行とした。なお、偏光膜の他方の表面には、市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を貼合した。
フロント側偏光板(図1中、PL2)として、偏光膜、及びその一方の表面に、光学補償フィルムを有する偏光板を用い、当該光学補償フィルム(図1中、フロント側位相差領域22)を液晶セル側にして配置した。当該光学補償フィルムは、下記表に示す材料からなり、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムからなる光学補償フィルム、若しくは、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムの上に、硬化性ディスコティック液晶組成物からなり、下記表に示す光学特性を示す位相差層を形成した光学補償フィルムである。該ポリマーフィルムを、フロント側位相差領域の第3の位相差層として、及び硬化性ディスコティック液晶組成物からなる位相差層及び、前記溶融押し出しにより形成した熱可塑性樹脂組成物からなる溶融傾斜位相差フィルムを、フロント側位相差領域の第4の位相差層として配置した。なお、第4の位相差層中において、ディスコティック液晶分子がハイブリッド配向状態に固定されていること及び、前記溶融形成熱可塑性フィルムの主軸が傾斜していることを、光学特性の測定から確認した。また、第3の位相差層として利用したポリマーフィルムの光学特性は、ポリマーフィルムの材料、延伸条件、添加剤等を選択することで調整し、第4の位相差層の光学特性は、膜厚等により調整した。また、第3の位相差層として用いたポリマーフィルムに、面内遅相軸がある場合は、該面内遅相軸を、フロント側偏光子(図1中、26)の吸収軸に直交もしくは平行とした。なお、偏光膜の他方の表面には、市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を貼合した。
また、フロント側偏光子およびリア側偏光子を、液晶セルと貼り合わせる際には、液晶セルのフロント側およびリア側基板ラビング方向が、リア側位相差領域の第1の位相差層として用いたポリマーフィルムの面内遅相軸と略45°で交差するようにした。また、フロント側位相差領域の第3の位相差層として用いたポリマーフィルムに面内遅相軸がある場合も同様とした。フロント側偏光子およびリア側偏光子の吸収軸は液晶セル配向方向(フロント側基板、又はリア側基板のラビング方向)と略45°で交差し、且つフロント側偏光子およびリア側偏光子の吸収軸の交差角は概略90°の直交ニコルとした。
(2) ECB型の液晶表示装置の評価
TNモード液晶表示装置と同様にして、正面コントラスト比およびコントラスト視野角特性を評価した。下記表に結果を示す。なお、下記表中の「TAC」及び「ノルボルネン」の意味については、上述のとおりである。
Figure 2011128389
上記結果から、上記式(I)を満足する位相差フィルムをリア側偏光子とCOA構造の液晶セルとの間に配置した第1の態様の実施例20及び21のECB型液晶表示装置はいずれも、非COA構造の液晶セルを用いた以外は同一の構成の比較例のECB型液晶表示装置(比較例28及び29)と比較して、正面CRが高いことが理解できる。
同様に、上記式(II)を満足する位相差フィルムと、上記式(III)を満足する位相差層(DLC組成物からなる層又は溶融傾斜法により作製した位相差フィルム)とをリア側偏光子とCOA構造の液晶セルとの間に配置した第2の態様の実施例15〜19、22及び23のECB型液晶表示装置はいずれも、非COA構造の液晶セルを用いた以外は同様の構成の比較例のECB型液晶表示装置(比較例23、26、27、30及び31)と比較して、正面CRが高いことが理解できる。
さらに、比較例21及び22と、比較例24及び25とを参照すると、これらは液晶セルがCOA構造又は非COA構造の違いがある以外は同一の構成のECB型液晶表示装置であり、例えば実施例15と比較例23との関係と同様である。しかし、比較例21及び22では、リア側位相差領域のRth(550)が式(II)を満足していないため、正面CRが比較例24及び25と比較してむしろ低下している。
このことから、本発明の効果は、COA構造を採用するとともに、第1の態様では、リア側位相差領域が、前記式(I)を満足することによってはじめて得られること;並び第2の態様では、リア側位相差領域が前記式(II)を満足する第1の位相差層と、前記式(III)を満足する第2の位相差層とからなることによってはじめて得られること;は明らかである。
3.OCB型液晶表示装置の作製と評価
(1) OCB型の液晶セル5及び6の準備
図1及び図2に示す構成と同様のCOA構成のOCB型の液晶セル5、及び図3に示す構成と同様の非COA構成のOCB型の液晶セル6を作製した。液晶セル5と6は、カラーフィルタの位置が異なる以外は同様の方法で作製された液晶セルである。
なお、カラーフィルタは、着色感光性組成物に特開2009−144126号公報中に記載の実施例17、18及び19に記載の通り調製した組成物、並びに有機系現像液CD2000(富士フイルムエレクトロマテリアルズ社製)を用いて作製した。液晶セルのセルギャップは6.8μmとし、液晶層には、誘電異方性が正で、屈折率異方性Δn=0.1396(589nm、20°C)の液晶(例えばメルク社製のZLI1132)を使用して、ベンド配向の液晶セルを作製した。作製した液晶セル5および6のΔnd(550)は950nmであった。
リア側偏光板(図1中、PL1)として、偏光膜、及びその一方の表面に、光学補償フィルムを有する偏光板を用い、当該光学補償フィルム(図1中、リア側位相差領域20)を液晶セル側にして配置した。当該光学補償フィルムは、下記表に示す材料からなり、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムの上に、硬化性ディスコティック液晶組成物からなり、下記表に示す光学特性を示す位相差層を形成した光学補償フィルムである。該ポリマーフィルムを、リア側位相差領域の第1の位相差層として、及び硬化性ディスコティック液晶組成物からなる位相差層を、リア側位相差領域の第2の位相差層として配置した。なお、第2の位相差層中において、ディスコティック液晶分子がハイブリッド配向状態に固定されていることを、光学特性の測定から確認した。また、第1の位相差層として利用したポリマーフィルムの光学特性は、ポリマーフィルムの材料、延伸条件、添加剤等を選択することで調整し、第2の位相差層の光学特性は、膜厚等により調整した。また、第1の位相差層として用いたポリマーフィルムに、面内遅相軸がある場合は、該面内遅相軸を、リア側偏光子(図1中、24)の吸収軸に直交もしくは平行とした。なお、偏光膜の他方の表面には、市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を貼合した。
フロント側偏光板(図1中、PL2)として、偏光膜、及びその一方の表面に、光学補償フィルムを有する偏光板を用い、当該光学補償フィルム(図1中、フロント側位相差領域22)を液晶セル側にして配置した。当該光学補償フィルムは、下記表に示す材料からなり、下記表に示す光学特性を示すポリマーフィルムからなる光学補償フィルムである。該ポリマーフィルムを、フロント側位相差領域の第3の位相差層として配置した。第3の位相差層として利用したポリマーフィルムの光学特性は、ポリマーフィルムの材料、延伸条件、添加剤等を選択することで調整した。また、第3の位相差層として用いたポリマーフィルムに、面内遅相軸がある場合は、該面内遅相軸を、フロント側偏光子(図1中、26)の吸収軸に直交もしくは平行とした。なお、偏光膜の他方の表面には、市販のセルロースアシレート系フィルム、商品名 「フジタック TD80UL」(富士フイルム社製)を貼合した。
また、フロント側偏光子およびリア側偏光子を、液晶セルと貼り合わせる際には、液晶セルのフロント側およびリア側基板ラビング方向が、リア側位相差領域の第1の位相差層として用いたポリマーフィルムの面内遅相軸と略45°で交差するようにした。また、フロント側位相差領域の第3の位相差層として用いたポリマーフィルムに面内遅相軸がある場合も同様とした。フロント側偏光子およびリア側偏光子の吸収軸は液晶セル配向方向(フロント側基板、又はリア側基板のラビング方向)と略45°で交差し、且つフロント側偏光子およびリア側偏光子の吸収軸の交差角は概略90°の直交ニコルとした。
(2) OCB型の液晶表示装置の評価
TNモード液晶表示装置と同様にして、正面コントラスト比およびコントラスト視野角特性を評価した。下記表に結果を示す。なお、下記表中の「TAC」及び「ノルボルネン」の意味については、上述のとおりである。
Figure 2011128389
上記結果から、上記式(II)を満足する位相差フィルムと、上記式(III)を満足する位相差層(DLC組成物からなる層)とをリア側偏光子とCOA構造の液晶セルとの間に配置した本発明の実施例24のOCB型液晶表示装置は、非COA構造の液晶セルを用いた以外は同様の構成の比較例のOCB型液晶表示装置(比較例32)と比較して、正面CRが高いことが理解できる。
10 液晶層
12 カラーフィルタ層
14 アレイ部材
16 リア側基板
18 フロント側基板
20 リア側位相差領域
22 フロント側位相差領域
24 リア側偏光子
26 フロント側偏光子
28 バックライトユニット
LC COA構造の液晶セル
PL1 リア側偏光板
PL2 フロント側偏光板

Claims (12)

  1. フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたリア側位相差領域(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という);及び
    前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたフロント側位相差領域(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)を有するTN、ECB又はOCB型の液晶表示装置であって、
    前記リア側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、及び下記式(I)
    (I): |Rth(550)|≦140nm
    但し、Rth(λ)は、波長λnmにおける厚み方向のレターデーション(nm)を意味する;を満足する第1の位相差層から構成され;並びに
    前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えたアレイ基板であるリア側基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板であるフロント側基板とに挟持されていることを特徴とするTN、ECB又はOCB型の液晶表示装置。
  2. フロント側偏光子、リア側偏光子、フロント側偏光子とリア側偏光子との間に配置される液晶層、及び該液晶層とリア側偏光子との間に配置されるカラーフィルタ層を有し、前記リア側偏光子と前記カラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたリア側位相差領域(以下、リア側偏光子とカラーフィルタ層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「リア側位相差領域」という);及び
    前記フロント側偏光子と前記液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層から構成されたフロント側位相差領域(以下、フロント側偏光子と液晶層との間に配置される1層又は2層以上の位相差層の全体を「フロント側位相差領域」という)を有する液晶表示装置であって、
    前記リア側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、下記式(II)
    (II):|Rth(550)|≦100nm
    を満足する第1の位相差層と、
    傾斜方位と法線とを含む面内(入射面)において、該法線から傾斜方位に+40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR2[+40°]と、該法線に対して逆に40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR2[−40°](但し、R2[−40°]<R2[+40°]とする)の比が、下記式(III)
    (III):1<R2[+40°]/R2[−40°]
    但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する;を満足する第2の位相差層とから構成され;並びに
    前記液晶層が、前記カラーフィルタ層を備えたアレイ基板であるリア側基板と、前記アレイ基板に対向して配置された対向基板であるフロント側基板とに挟持されていることを特徴とする液晶表示装置。
  3. 前記第2の位相差層が、下記式(IIIa)
    (IIIa):3≦R2[+40°]/R2[−40°]
    を満足することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
  4. 前記第1の位相差層が、下記式(IV)
    (IV):0≦Re(550)≦500nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  5. 前記フロント側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、下記式(V)及び(VI)
    (V):0≦Re(550)≦500nm
    (VI):−100nm≦Rth(550)≦1000nm
    を満足する第3の位相差層から構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  6. 前記フロント側位相差領域が、光学的に異方性を有する1枚又は2枚以上のポリマーフィルムからなり、下記式(V)及び(VI)
    (V):0≦Re(550)≦500nm
    (VI):−100nm≦Rth(550)≦1000nm
    を満足する第3の位相差層と、
    傾斜方位と法線とを含む面内(入射面)において、該法線から傾斜方位に+40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR4[+40°]と、該法線に対して逆に40°傾いた方向から測定した波長550nmにおけるレターデーションR4[−40°](但し、R4[−40°]<R4[+40°]とする)の比が、下記式(VII)
    (VII):1<R4[+40°]/R4[−40°]
    但し、Re(λ)は、波長λnmにおける面内レターデーション(nm)を意味する;を満足する第4の位相差層とから構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  7. 前記第4の位相差層が、下記式(VIIa)
    (VIIa):3≦R4[+40°]/R4[−40°]
    を満足することを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。
  8. 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間のツイスト角45°〜135°で配向するTN型液晶表示装置であり;
    前記第3の位相差層が、下記式(Va)及び(VIa)
    (Va): 0≦Re(550)≦400nm
    (VIa): −100nm≦Rth(550)≦300nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  9. 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間のツイスト角90°で配向するTN型液晶表示装置であり;
    前記第3の位相差層が、下記式(Vb)及び(VIb)
    (Vb): 0≦Re(550)≦300nm
    (VIb): 50nm≦Rth(550)≦300nm
    を満足することを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。
  10. 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間のツイスト角0°〜45°で配向する液晶表示装置であり;
    前記第3の位相差層が、下記式(Vc)及び(VIc)
    (Vc): 70nm<Re(550)≦400nm
    (VIc): −100nm≦Rth(550)≦250nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  11. 前記液晶層が、電圧無印加時において基板面に平行に、且つ基板間でベンド配向する液晶表示装置であり;
    前記第3の位相差層が、下記式(Vd)及び(VId)
    (Vd): 0≦Re(550)≦100nm
    (VId): 200nm≦Rth(550)≦1000nm
    を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
  12. 前記アレイ基板が、前記カラーフィルタ層を備えた画素を区画するブラックマトリクスを有するアレイ基板であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
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