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JP2011111527A - 水性インク組成物および画像形成方法 - Google Patents

水性インク組成物および画像形成方法 Download PDF

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JP2011111527A
JP2011111527A JP2009268822A JP2009268822A JP2011111527A JP 2011111527 A JP2011111527 A JP 2011111527A JP 2009268822 A JP2009268822 A JP 2009268822A JP 2009268822 A JP2009268822 A JP 2009268822A JP 2011111527 A JP2011111527 A JP 2011111527A
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直孝 和地
Tomoyuki Ozeki
智之 大関
Atsushi Matsumoto
淳 松本
Takeo Igoshi
剛生 井腰
Keiichi Tateishi
桂一 立石
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Abstract

【課題】長期での吐出性に優れ、かつインクジェットヘッド部材の形状変形、撥液性低下の抑制可能な水性インク組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種を含む色材と、分散剤と、コロイダルシリカと、を含む水性インク組成物。

(一般式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y、Y、R11、およびR12は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、GおよびGは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、WおよびWはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク組成物および画像形成方法に関する。
インクジェットプリンタ用のインクとして、顔料系インクがある。顔料は、染料に比べて耐光性および耐水性に優れており、近年、耐光性および耐水性を改善する目的でインクジェットプリンタ用インク組成物の着色剤として利用されている。顔料は一般に水には不溶であるため、顔料を水系インク組成物に利用する場合には、顔料を水溶性樹脂などの分散剤と共に混合し、水に安定分散させた後にインク組成物として調製する必要がある。
しかしながら、上記の方法によっても、インク組成物の吐出性不良等の問題が生じる。
このような問題を解決するために、これまで多くの分散方法およびインクジェット画像形成用インク組成物が提案されている。
一方、普通紙に対して印字を行った場合に、高品位の印字が可能で、耐水性および耐光性に優れるとして、例えば、顔料およびコロイダルシリカを含むインクジェット用記録液が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、インクジェットプリンティング方法に用いるために特に適した水ベースインク組成物として、水性液体ビヒクル、着色剤及び約0.1〜約5重量%のシリカ粒子を含むインク組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平09−227812号公報 特開平05−117562号公報
しかしながら、長期でインクジェット法による画像形成を行うと、インク組成物等によりインクジェットヘッド部材が浸食し、その結果吐出が悪化したり、インク漏れが生じたりする場合がある。また、ノズルプレートの撥液性が低下し、インクの吐出方向が乱れ、印字画質が悪化するという問題があった。
本発明は、長期での吐出性に優れ、かつインクジェットヘッド部材の形状変形、撥液性低下の抑制可能な水性インク組成物、および、インクジェットヘッド部材の浸食等を抑えつつ、長期に亘って高画質な画像を形成することが可能な画像形成方法を提供することを課題とする。
本発明は、インクジェットヘッドのノズルプレートがシリコンや酸化シリコンで形成されている場合、インクとの接触の影響から撥液性膜の撥液性が低下する状況に対し、インク組成物にコロイダルシリカを含ませると撥液性膜の撥液性の低下防止に効果があり、その効果は浸食が強いと予想される特定のアゾ顔料をインク組成物中に用いた場合に、特に顕著であるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。また、インク吐出時における吐出性を損なうこともない。
<1> 下記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種を含む色材と、分散剤と、コロイダルシリカと、を含む水性インク組成物。
(一般式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y、Y、R11、およびR12は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、GおよびGは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、WおよびWはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
<2> 前記一般式(1)中のWおよびWは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、無置換アミノ基、または総炭素数3以下のアルキルアミノ基である上記<1>に記載の水性インク組成物。
<3> 前記一般式(1)中のGおよびGは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である上記<1>または<2>に記載の水性インク組成物。
<4> 前記一般式(1)中のZは、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である上記<1>〜<3>のいずれかに1項に記載の水性インク組成物。
<5> 25℃におけるpHが7.5以上10.0以下である上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<6> 前記コロイダルシリカは、体積平均粒子径が1〜25nmである上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<7> 前記コロイダルシリカの含有率が、水性インク組成物全質量に対して0.0005質量%以上0.5質量%以下である上記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<8> 前記色材を水性インク組成物全質量に対して0.3〜8質量%含む上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<9> 前記色材の体積平均粒子径は、150nm以下である上記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<10> 前記分散剤は、親水性の構成単位および疎水性の構成単位を含む共重合体である上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<11> 上記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の水性インク組成物を、記録媒体上にインクジェット法で吐出するインク吐出工程を含む画像形成方法。
<12> 前記インク吐出工程は、前記水性インク組成物を、表面の少なくとも1部が撥液処理されているノズルプレートから吐出する上記<11>に記載の画像形成方法。
<13> 前記インク吐出工程は、前記水性インク組成物が接する流路の少なくとも一部がSi及びSiOの少なくとも1つを含むインクジェットプリンタを用いて、前記水性インク組成物を吐出する上記<11>又は<12>に記載の画像形成方法。
本発明によれば、長期での吐出性に優れ、かつインクジェットヘッド部材の形状変形、撥液性低下の抑制可能な水性インク組成物、および、インクジェットヘッド部材の浸食等を抑えつつ、長期に亘って高画質な画像を形成することが可能な画像形成方法を提供することができる。
インクジェットヘッドの内部構造の一例を示す概略断面図である。 ノズルプレートの吐出口配列の一例を示す概略図である。
<水性インク組成物>
本発明の水性インク組成物(以下、単に「インク組成物」ということがある)は、以下に示す一般式(1)で表されるアゾ顔料(以下、「特定構造のアゾ顔料」ともいう。)およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種を含む色材と、分散剤の少なくとも1種と、コロイダルシリカの少なくとも1種と、を含み、必要に応じてその他の成分をさらに含んで構成される。
本発明のインク組成物は、上記構成とすることにより、特に、特定構造のアゾ顔料と、コロイダルシリカとを含むことにより、吐出性(吐出回復性)に優れ、インクジェットヘッド部材の形状変形(浸食)、撥液性の低下を抑制することが可能なものとなる。その結果、長期でのインクジェット法による画像形成を行っても、吐出が悪化したり、インク漏れが生じたりすることが極めて少なくなり、また、インクの吐出方向が乱れ、印字画質が悪化することも極めて少なくなる効果を奏する。
一般にインクジェットヘッドを構成する部材には、インクの吐出性能を維持するために撥液性が付与されている。この撥液性は、例えば、部材表面をフッ素系の表面処理剤を用いて処理することで付与することができる。またこのインクジェットヘッド部材の撥液性は、インクジェットヘッドを長時間にわたって使用した場合にインクとの接触により徐々に低下することが知られている。
一方、特に微細なノズル(吐出口)を精密に形成するためにシリコン等(SiやSiO等)を含んでノズルプレートを構成する場合がある。そのようなシリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドにおいては、インクとの接触により浸食し、プレート表面に撥液性の付与されている場合でも、インクの浸透、撥液性の低下が原因で浸食されることが知られている。この場合も、ノズルプレートの撥液性の低下がインク吐出性に影響を与える。
本発明の水性インク組成物は、インクと接するインクジェットヘッド部材に対して浸食のおそれのあるイエロー顔料を含みつつも、上記のように撥液性が付与されたり、シリコン等で形成されたノズルプレートを備えたインクジェットヘッドに使用した場合でも、インクジェットヘッド部材の撥液性や浸食の低下をより効果的に抑制することができる。
(コロイダルシリカ)
コロイダルシリカは、平均粒子径が数100nm以下のケイ素を含む無機酸化物の微粒子からなるコロイドである。主成分として二酸化ケイ素(その水和物を含む)を含み、少量成分としてアルミン酸塩を含んでいてもよい。少量成分として含まれることがあるアルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが挙げられる。
またコロイダルシリカには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。これらの無機塩類および有機塩類は、例えば、コロイドの安定化剤として作用する。
コロイダルシリカの分散媒としては特に制限はなく、水、有機溶剤、およびこれらの混合物のいずれであってもよい。前記有機溶剤は水溶性有機溶剤であっても非水溶性有機溶剤であってもよいが、水溶性有機溶剤であることが好ましい。具体的には例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール等を挙げることができる。水中に分散させたものは水性ゾル、有機溶媒に分散させたものをオルガノゾルと呼ばれる。
コロイダルシリカの製造方法には特に制限はなく、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、四塩化ケイ素の熱分解によるアエロジル合成や水ガラスから製造することができる。あるいは、アルコキシドの加水分解といった液相合成法(例えば、「繊維と工業」、Vol.60、No.7(2004)P376参照)などによっても製造することができる。
本発明におけるコロイダルシリカに含まれる粒子の平均粒子径としては特に制限はない。例えば、1nm〜100nmとすることができ、好ましくは1nm〜25nmであり、さらに好ましくは3nm〜25nmであり、特に好ましくは5nm〜20nmである。
平均粒子径が25nm以下であることで、インクジェットヘッドを構成する部材、例えば、基材、保護膜、撥液膜等に対するインクによるダメージ(例えば、撥液性の低下等)をより効果的に抑制することができる。即ち、インク組成物のインクヘッドアタック性を抑制することができる。これは例えば、平均粒子径が小さいことで、粒子の総表面積が大きくなり、インクジェットヘッドを構成する部材に対するダメージを、より効果的に抑制するためと考えることができる。また、さらに、インク組成物の吐出性、粒子による研磨剤効果の観点からも、粒子の平均粒子径は25nm以下であることが好ましい。また、1nm以上の平均粒子径であることで、生産性が向上し、また性能のバラツキの少ないコロイダルシリカを得ることができる。
本発明においてコロイダルシリカの平均粒子径は、体積平均粒子径で表される。体積平均粒子径は、分散粒子の一般的な測定である光散乱法、レーザ回折法などの手法により求めることができる。
本発明においては、光散乱法により求めた値を採用する。
またコロイダルシリカの形状は、インクの吐出性能を妨げない限り、特に限定されない。例えば、球状、長尺の形状、針状、数珠状のいずれであってもよい。中でも、インクの吐出性の観点から、球状であることが好ましい。
本発明に用いることができるコロイダルシリカは、上記製造方法で製造されたものであっても、市販品であってもよい。市販品の具体例としては例えば、 Ludox AM、Ludox AS、Ludox LS、Ludox TM、Ludox HSなど(以上、E.I.Du Pont de Nemouvs & Co製);スノーテックスS、スノーテックスXS、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスOなど(以上、日産化学社製);Syton C−30、SytonZOO など(以上、Mons anto Co製);Nalcoag−1060、Nalcoag−ID21〜64(以上、Nalco Chem Co製);メタノールゾル、IPAゾル、MEKゾル、およびトルエンゾル(以上、扶桑化学工業製);Cataloid−S、Cataloid−F120、Cataloid SI−350、Cataloid SI−500、Cataloid SI−30、Cataloid S−20L、Cataloid S−20H、CataloidS−30L、Cataloid S−30H、Cataloid SI−40、OSCAL−1432(イソプロピルアルコールゾル)など(以上、日揮触媒化成製);アデライト(旭電化社製);数珠状のコロイダルシリカとして、例えば、スノーテックスST−UP、同PS−S、同PS−M、同ST−OUP、同PS−SO、同PS−MO(以上、日産化学社製)などの商品名で市販されているものを挙げることができ、これらは容易に入手することができる。
上記市販のコロイダルシリカ分散液のpHは、酸性またはアルカリ性に調整されているものが多い。これは、コロイダルシリカの安定分散領域が酸性側またはアルカリ性側に存在するためであり、市販のコロイダルシリカ分散液をインク組成物中に添加する場合は、コロイダルシリカの安定分散領域のpHとインク組成物のpHとを考慮して添加する必要がある。
本発明のインク組成物におけるコロイダルシリカの含有量には特に制限はない。例えば、インク組成物総量の0.0001質量%〜10質量%とすることができ、0.0005質量%〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001質量%〜0.5質量%であり、さら好ましくは0.005質量%〜0.5質量%であり、特に好ましくは0.01質量%〜0.3質量%であり、最も好ましくは0.01質量%〜0.1質量%である。
インク組成物中の含有量が前記上限値以下であることで、インク組成物の吐出性(特に、長期保存後の吐出性)がより向上し、またシリカ粒子の研磨剤効果によるインクジェットヘッドへの影響をより効果的に抑制できる。また前記下限値以上であることで、インクジェットヘッド部材の撥液性の低下をより効果的に抑制できる。
さらに本発明のインク組成物は、インクジェットヘッド部材の撥液性低下抑制とインク吐出性の観点から、体積平均粒子径が1〜25nm(より好ましくは3nm〜25nm)のコロイダルシリカをインク組成物総量の0.005質量%〜0.5質量%含有することが好ましく、5nm〜20nmのコロイダルシリカをインク組成物総量の0.005質量%〜0.5質量%含有することがより好ましく、5nm〜20nmのコロイダルシリカをインク組成物総量の0.05質量%〜0.1質量%含有することが特に好ましい。
(色材)
本発明の水性インク組成物は、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種を含む色材を含む。
本発明に用いられる色材を構成するアゾ顔料は、代表的には一般式(1)で表される。また、前記アゾ顔料は一般式(1)で表される構造であっても、その互変異性体であってもよい。かかる特定構造のアゾ顔料であることで、耐光性と吐出安定性(特に吐出回復性)に優れるインク組成物を構成することができる。
以下、下記一般式(1)で表されるアゾ顔料について説明する。
一般式(1)で表される化合物は、その特異的な構造により分子間相互作用を形成しやすく、水または有機溶媒等に対する溶解性が低く、アゾ顔料とすることができる。
顔料は、水や有機溶媒等に分子分散状態で溶解させて使用する染料とは異なり、溶媒中に分子集合体等の固体粒子として微細に分散させて用いるものである。
一般式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y、Y、R11、およびR12は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、GおよびGは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、WおよびWはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す。
一般式(1)において、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表す。好ましい含窒素ヘテロ環を、置換位置を限定せずに例示すると、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環である。より好ましくは、6員含窒素ヘテロ環であり、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、s−トリアジン環が挙げられる。Zとして特に好ましくは、ピリミジン環に由来する2価の基である。
Zが6員含窒素ヘテロ環の場合、色素分子の分子内、分子間作用が、水素結合性、分子の平面性の点からもより向上しやすい点で好ましい。
尚、Zで表される5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基は、さらに縮環していてもよい。
およびYが置換基を表す場合の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基であり、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えば、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基等のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す)、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
およびYとして特に好ましくは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が最も好ましい。尚、YおよびYは同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)において、R11およびR12は水素原子または置換基を表す。R11およびR12が置換基を表す場合の置換基としては、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル)、炭素数7〜18の直鎖または分岐鎖アラルキル基(例えば、ベンジル)、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルケニル基(例えば、ビニル)、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルキニル基(例えば、エチニル)、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル)、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メチルスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−t−ブチルオキシカルボニルフェノキシ、3−メトキシカルボニルフェニルオキシ、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、アルキルスルホニルアミノ基およびアリールスルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルエンスルホニルアミノ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基および4級アンモニウム基)が挙げられる。
一般式(1)において、好ましいR11およびR12は、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基であり、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であり、更にメチル基またはt−ブチル基が好ましく、その中でも特にt−ブチル基が最も好ましい。
11およびR12を総炭素数の少ない(例えば、炭素数1〜4)直鎖アルキル基または分岐アルキル基にすることで、よりすぐれた色相、着色力、画像堅牢性を達成できる。
尚、R11およびR12は同一であっても異なっていてもよい。
およびGは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
またGおよびGがアルキル基を表す場合、総炭素数5以下のアルキル基であることが好ましく、総炭素数3以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基が最も好ましい。尚、GおよびGは同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)において、WおよびWはアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す。
およびWで表されるアルコキシ基としては、好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基が好ましく、特に炭素数1から5の置換もしくは無置換のアルコキシ基が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。
およびWで表されるアミノ基としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基の置換アミノ基を含み、好ましくは無置換アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基が挙げられ、その中でも無置換アミノ基、炭素数1から8の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から18の置換もしくは無置換のアニリノ基が好ましく、更に無置換アミノ基、炭素数1から4の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から12の置換もしくは無置換のアニリノ基が好ましく、例えば、無置換アミノ基(−NH)、メチルアミノ基(−NHCH)、ジメチルアミノ基{−N(CH}、アニリノ基(−NHPh)、N−メチル−アニリノ基{−N(CH)Ph}、ジフェニルアミノ基{−N(Ph)}等が挙げられる。
およびWで表されるアルキル基としては、それぞれ独立に直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
具体的には、アルキル基としては、好ましくは、炭素数1から30のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2―エチルヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が挙げられる。ビシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基、例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル基等が挙げられる。
およびWで表されるアリール基としては、好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基が挙げられ、その中でも、炭素数6から18の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、更に炭素数6から12の置換もしくは無置換のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
その中でも好ましいWおよびWは、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)またはアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基、フェニル基またはアルキル基が好ましく、更にアルコキシ基、アミノ基が好ましい。
より好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、無置換アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、WおよびWが総炭素数5以下のアルコキシ基、無置換アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基の場合、色素分子が分子内および分子間の少なくとも一方で水素結合を強固に形成しやすくなり、良好な色相、高い堅牢性(例えば、耐光、耐ガス、耐熱、耐水、耐薬品等)の点で好ましい。
色相、光堅牢性、耐溶剤性の点から特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、無置換アミノ基(−NH基)、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)またはエトキシ基(−OC基)が好ましく、良好な色相と光堅牢性向上の点からメトキシ基が特に好ましい。
尚、WおよびWは同一であっても異なっていてもよい。
本発明において、Z、Y、Y、R11、R12、G、G、W、およびWが、更に置換基を有する場合の置換基としては、下記の置換基を挙げることができる。
例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が例として挙げられる。
本発明におけるアゾ顔料は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体もその範囲に含むものである。一般式(1)は、化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示しているが、記載された構造以外の互変異性体であってもよく、複数の互変異性体を含有した混合物として用いてもよい。
例えば、一般式(1)で表されるアゾ顔料には、下記一般式(1’)で表されるアゾ−ヒドラゾンの互変異性体が考えられる。
本発明は、一般式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体である以下の一般式(1’)で表される化合物もその範囲に含むものである。
一般式(1’)中、R11、R12、W、W、Y、Y、G、GおよびZは、一般式(1)中のR11、R12、W、W、Y、Y、G、GおよびZとそれぞれ同義である。
尚、前記一般式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
本発明の一般式(1)で表されるアゾ顔料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ホ)の少なくとも1つを含むものである。
(イ)WおよびWはそれぞれ独立に、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基)、アミノ基(例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基)またはアリール基(例えば、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基)が好ましく、その中でもアルコシキ基、アミノ基またはアルキル基が好ましく、アルコキシ基、アミノ基がより好ましく、さらに好ましくは、総炭素数5以下のアルコキシ基、無置換アミノ基、総炭素数5以下のアルキルアミノ基であり、特に好ましくは、総炭素数3以下のアルコキシ基、無置換アミノ基、総炭素数3以下のアルキルアミノ基であり、その中でも特にメトキシ基(−OCH基)が最も好ましい。
(ロ)R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、または置換基(例えば、置換もしくは無置換の総炭素数1〜8のアシルアミノ基、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12のヘテロ環基)が好ましく、より好ましくは、総炭素数1〜8の直鎖アルキル基または分岐アルキル基であり、更にメチル基、i−プロピル基またはtert−ブチル基が好ましく、その中でも特にtert−ブチル基が最も好ましい。
(ハ)Zは、5〜8員の含窒素ヘテロ環基に由来する2価の基を表し、それらは更に縮環していてもよい。Zにおける含窒素ヘテロ環としては、5または6員の置換もしくは無置換の含窒素ヘテロ環、例えば、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアジアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環が好ましく、特に好ましくは、炭素数3から10の6員含窒素ヘテロ環基である。更に好ましいヘテロ環の例は、ピリジン環、ピリミジン環、s−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、より好ましくは、ピリジン環、ピリミジン環、s−トリアジン環、ピリダジン環、ピラジン環であり、更に好ましくは、ピリミジン環、s−トリアジン環であり、その中でも特にピリミジン環が最も好ましい。
(ニ)GおよびGはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、アリル基、エチニル基、プロパルギル基、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、更に水素原子、メチル基、フェニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基が好ましく、その中でもメチル基、2−ピリジル基、2,6−ピリミジニル基、2,5−ピラジニル基が好ましい。
またGおよびGで表されるアルキル基としては、総炭素数5以下のアルキル基がより好ましく、総炭素数3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
(ホ)YおよびYはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基)、アリール基(例えば、フェニル基)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)であり、好ましくは水素原子、メチル基、フェニル基、メチルチオ基であり、その中でも水素原子が特に好ましい。
本発明における上記一般式(1)で表されるアゾ顔料のうち、好ましくは下記一般式(2)で表されるアゾ顔料である。
上記一般式(2)中のG、G、R11、R12、W、W、YおよびYは、上記一般式(1)中のG、G、R11、R12、W、W、YおよびYとそれぞれ同義である。
11、X12は、それぞれ独立に上記一般式(1)中のZで表される含窒素ヘテロ環化合物に由来する2価の基(Het.)中のヘテロ原子を表す。
本発明において、上記一般式(1)で表されるアゾ顔料においては多数の互変異性体が考えられる。
また、本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料は、分子内水素結合または分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましい。本発明における一般式(1)で表されるアゾ顔料は、少なくとも1個以上の分子内交叉水素結合を形成する置換基を有することが好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有することがより好ましく、少なくとも3個以上の分子内水素結合を形成する置換基を有し、且つ、それらの水素結合の少なくとも2個が分子内交叉水素結合を形成する置換基を有する場合が特に好ましい。
一般式(1)で表されるアゾ顔料のうち、前述したように特に好ましいアゾ顔料の一般式の例としては、上記一般式(2)で表されるアゾ顔料を挙げることができる。
この構造が好ましい要因としては、一般式(2)で示すようにアゾ顔料構造に含有するヘテロ環を構成する窒素原子、水素原子およびヘテロ原子(アゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子とカルボニル基の酸素原子またはアミノ基の窒素原子)が少なくとも1個以上の分子内の交叉水素結合(分子内水素結合)を容易に形成し易いことが挙げられる。
これらの構造が好ましい要因としては、上記一般式(2)で示すように、アゾ顔料が含有するヘテロ環基を構成する窒素原子、アミノ基の水素原子およびヘテロ原子(例えば、アゾ基またはその互変異性体であるヒドラゾン基の窒素原子、カルボニル基の酸素原子またはアミノ基の窒素原子)が少なくとも4個以上の分子内水素結合を容易に形成し易く、且つ、少なくとも2個以上の分子内の交叉水素結合を容易に形成し易いことが挙げられる。
その結果、分子の平面性が上がり、更に分子内・分子間相互作用が向上し、例えば一般式(2)で表されるアゾ顔料の結晶性が高くなり(高次構造を形成し易くなり)、顔料としての要求性能である、光堅牢性、熱安定性、湿熱安定性、耐水性、耐ガス性およびまたは耐溶剤性が大幅に向上するため、最も好ましい例となる。
また、本発明におけるアゾ顔料においては、一般式(1)で表される化合物中に同位元素(例えば、H、H、13C、15N)を含有していてもよい。
以下に前記一般式(1)で表されるアゾ顔料の具体例として、Pig.−1〜Pig.−48を示すが、本発明に用いられるアゾ顔料は、下記の例に限定されるものではない。また、以下の具体例の構造は化学構造上取りうる数種の互変異性体の中から極限構造式の形で示されているが、記載された構造以外の互変異性体構造のものであってもよいことは言うまでもない。


本発明における一般式(1)で表されるアゾ顔料は、化学構造式が一般式(1)またはその互変異性体であれば良く、その結晶形態についても特に制限はない。例えば、多形(結晶多形)とも呼ばれるいかなる結晶形態のアゾ顔料であってもよい。
結晶多形は、同じ化学組成を有するが、結晶中におけるビルディングブロック(分子またはイオン)の配置が異なる結晶のことを言う。結晶多形においては、その結晶構造によって化学的および物理的性質が決定され、各結晶多形は、レオロジー、色相、および他の色特性によってそれぞれ区別することができる。また、異なる結晶多形は、X−Ray Diffraction(粉末X線回折測定結果)やX−Ray Analysis(X線結晶構造解析結果)によって確認することもできる。
本発明における一般式(1)で表されるアゾ顔料に結晶多形が存在する場合、その結晶型はどの多形であってもよく、また2種以上の多形の混合物であってもよいが、結晶型が単一のものを主成分とすることが好ましい。すなわち結晶多形の混入が少ないものが好ましく、単一の結晶型を有するアゾ顔料の含有量はアゾ顔料全体に対し70質量%〜100質量%、好ましくは80質量%〜100質量%、より好ましくは90質量%〜100質量%、更に好ましくは95質量%〜100質量%、特に好ましくは100質量%である。
単一の結晶型を有するアゾ顔料を主成分とすることで、色素分子の配列に対して規則性が向上し、分子内・分子間相互作用が強まり高次な3次元ネットワークを形成しやすくなる。その結果として色相の向上・光堅牢性・熱堅牢性・湿度堅牢性・酸化性ガス堅牢性および耐溶剤性等、顔料に要求される性能の点で好ましい。
アゾ顔料における結晶多形の混合比は、単結晶X線結晶構造解析、粉末X線回折(XRD)、結晶の顕微鏡写真(TEM)、IR(KBr法)等の固体の物理化学的測定値から確認できる。
本発明において、一般式(1)で表されるアゾ顔料が酸基を有する場合には、酸基の一部あるいは全部が塩型のものであってもよく、塩型の顔料と遊離酸型の顔料が混在していてもよい。上記の塩型の例としてNa、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、または有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換低級アルキルアミン、カルボキシ置換低級アルキルアミンおよび炭素数2〜4のアルキレンイミン単位を2〜10個有するポリアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
更に、本発明で使用するアゾ顔料の構造において、その1分子中に酸基が複数含まれる場合は、その複数の酸基は、それぞれ独立に塩型あるいは酸型であり、互いに異なるものであってもよい。
本発明において、前記一般式(1)で表されるアゾ顔料は、結晶中に水分子を含む水和物であっても良く、また結晶中に含まれる水分子の数にも特に制限はない。
次に上記一般式(1)で表されるアゾ顔料の製造方法の一例について説明する。例えば、下記一般式(A)で表されるヘテロ環アミンを酸性条件でジアゾニウム化し、下記一般式(B)で表される化合物とカップリング反応を行い、常法による後処理を行って上記一般式(1)で表されるアゾ顔料を製造することができる。
一般式(A)および(B)中、Wは一般式(1)におけるWおよびWと同義であり、Gは一般式(1)におけるGおよびGと同義であり、R11、R12、およびZは一般式(1)におけるR11、R12、およびZとそれぞれ同義である。
上記一般式(A)で表されるヘテロ環アミンは、一般的には公知慣用の方法、例えば、Helv.Chim.Acta,41,1958,1052〜1056やHelv.Chim.Acta,42,1959,349〜352等に記載の方法、および、それに準じた方法で製造することができる。
また、上記一般式(B)で表される化合物は、国際公開第06/082669号や特開2006−57076号公報に記載の方法、および、それに準じた方法で製造することができる。
上記一般式(A)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム化反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸、塩酸、メタンスルホン酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸、亜硝酸イソアミル等の試薬を15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。
カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記一般式(B)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは、25℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことができる。
このようにして反応させたものは、結晶が析出している場合もあるが、一般的には、反応液に水、あるいはアルコール系溶媒を添加し、結晶を析出させ、結晶を濾取することができる。また、反応液にアルコール系溶媒、水等を添加して結晶を析出させて、析出した結晶を濾取することができる。濾取した結晶を必要に応じて洗浄・乾燥して、一般式(1)で表されるアゾ顔料を得ることができる。
上記の製造方法によって、上記一般式(1)で表されるアゾ顔料は粗アゾ顔料(クルード)として得られるが、本発明における色材として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤および分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
本発明の一般式(1)で表されるアゾ顔料は後処理として溶媒加熱処理および/またはソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、またはこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、さらに無機または有機の酸または塩基を加えてもよい。溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃がさらに好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用できるが、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。
このような水溶性有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールまたはこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
本発明に使用される色材(例えば、前記アゾ顔料)の含有量は、インク組成物中、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.3〜8質量%であり、さらに好ましくは1〜8質量%である。なお、本発明に利用される顔料の配合量は、濃淡インク組成物等のインク組成物の種類に応じて適宜調整される。
また、本発明に使用されるアゾ顔料(色材)の体積平均粒子径は、インク組成物の安定性の観点から好ましくは150nm以下であり、より好ましくは120nm以下であることが好ましい。さらに、前記体積平均粒子径が150nm以下からなるアゾ顔料を用いると、本発明の効果を一段と向上できるためより好ましい。
尚、体積平均粒子径は、動的光散乱法を用いて通常の条件によって測定される。
(分散剤)
本発明の水性インク組成物は、分散剤の少なくとも1種を含むが、分散剤によって前記アゾ顔料が水性媒体中に分散されていることが好ましい。
本発明における分散剤としては特に制限はなく、通常用いられる分散剤を適宜選択して用いることができる。中でもインク組成物の分散安定性と吐出回復性の観点から、合成高分子化合物であることが好ましく、親水性の構成単位の少なくとも1種と疎水性の構成単位の少なくとも1種とを含む共重合体であることがより好ましい。尚、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体など、その形態に特に制限されない。
前記分散剤の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。
これらは、使用に際して1種単独でも、2種以上を混合して用いることができる。
前記分散剤が塩を形成している場合、塩を形成する塩基としては、ジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどが挙げられる。
このような塩は、例えば、前記塩基と、塩を形成する前の分散剤との中和反応によって得ることができる。この際、塩を形成するための化合物の使用量は、塩を形成する前の分散剤の中和当量に対して、例えば、0.7〜1.5当量とすることができる。特にインク組成物を記録媒体に印字した後のインクの記録媒体への定着性が向上する点から、中和当量に対して0.9〜1.2当量であることが好ましい。
これらの合成高分子化合物の重量平均分子量は、好ましくは1000〜50000であり、より好ましくは1000〜15000であり、さらに好ましくは3000〜10000である。また、合成高分子化合物の酸価は、50〜300であることが好ましく、より好ましくは70〜150である。さらに、合成高分子化合物はラジカル共重合、グループトランスファー重合等の公知の重合法によって製造される。
また、前記分散剤として、天然高分子化合物を用いることもできる。その具体例としては、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミンなどのタンパク質類、アラビアゴム、トラガントゴムなどの天然ゴム類、サポニンなどのグルコシド類、アルギン酸及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロシキエチルセエルロース、エチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。
また分散剤としては、市販のものを使用することができ、その具体例としては、BASFジャパン株式会社製、ジョンクリル61J(分子量10000、酸価195)、ジョンクリル68(分子量10000、酸価195)、ジョンクリル450(分子量10000〜20000、酸価100)、ジョンクリル550(分子量7500、酸価200)、ジョンクリル555(分子量5000、酸価200)、ジョンクリル586(分子量3100、酸価105)、ジョンクリル680(分子量3900、酸価215)、ジョンクリル682(分子量1600、酸価235)、ジョンクリル683(分子量7300、酸価150)、ジョンクリルB−36(分子量6800、酸価250)等が挙げられる。なお、分子量とは、重量平均分子量を示す。
本発明において、特に好ましい分散剤は、分散安定性等の点で、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の塩である。かかるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の塩は、基本的にはその構造中に少なくともスチレン骨格と(メタ)アクリル酸の塩の骨格を含んでなるものを示し、構造中に(メタ)アクリル酸エステル骨格等の他の不飽和基を有するモノマー由来の骨格を有していても構わない。かかるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の塩の共重合形態、製造法、酸価及び重量平均分子量それぞれについては、前述した合成高分子についての好適事項と同様である。
分散剤は、これを水中に添加してエマルションの形態等として使用することができる。
また分散剤の含有量は、インク組成物中、色材(好ましくは、前記アゾ顔料)100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜70質量部である。
本発明において色材(例えば、前記アゾ顔料)は、前記分散剤によって分散された色材分散液として用いられることが好ましい。色材分散液は、色材(例えば、前記アゾ顔料)と前記分散剤と水性媒体とを、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の適当な分散機で行なわれる。
また、色材分散液の調製に使用できる水性媒体としては、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物が挙げられる。ここで用いられる水は純水が好ましく、また、有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独でまた2種以上を混合して用いることができる。
有機溶媒の含有量は、本発明に係るインク組成物中、好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1.5〜20質量%の範囲である。
(水溶性有機溶剤)
本発明の水性インク組成物は、水系媒体を含むことが好ましい。水系媒体は少なくとも水を溶媒として含むが、水と水溶性有機溶剤の少なくとも1種とを含むことが好ましい。水溶性有機溶剤は湿潤剤あるいは浸透剤などの目的で用いることができる。
湿潤剤は、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。また湿潤剤は、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。
湿潤剤の具体的な例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの湿潤剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
湿潤剤として、特にグリセリンを用いると、グリセリンの高い水溶性及び水分蒸発抑制効果によってインク組成物が固化しにくくなるため、プリンタヘッドのノズル中での目詰まりを防止する効果がより大きくなるので好ましい。
湿潤剤の含有量は、本発明に係るインク組成物中、好ましくは0.05〜30質量%であり、更に好ましくは3〜25質量%である。
浸透剤は、インク組成物を記録媒体(例えば、印刷用紙等)により良く浸透させる目的で、好適に使用される。
浸透剤の具体的な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルの多価アルコールのアルキルエーテル類(グリコールエーテル);1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等のジオールが挙げられ、これらの浸透剤は1種単独で用いても、2種以上の混合物として用いてもよい。
本発明においては、浸透剤として、特に1,2−ヘキサンジオールやトリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いることが好ましい。
浸透剤の配合量は、本発明に係るインク組成物中、好ましくは0.1〜20質量%であり、更に好ましくは0.5〜15質量%である。
また、水溶性有機溶媒は、上記以外にも、粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶媒の具体的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
(界面活性剤)
本発明のインク組成物は、界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。かかる界面活性剤としては、下記の一般式(11)で表わされるアセチレングリコール系界面活性剤(例えば、オルフィンY、E1010及びSTG、並びにサーフィノール82、104、440、465及び485(何れも日信化学工業株式会社製)等)や、下記の一般式(12)で表されるポリシロキサン系化合物(例えば、ビッグケミー・ジャパン株式会社より市販されているシリコン系界面活性剤BYK−345、BYK−346、BYK−347、又はBYK−348)を使用することもできる。その他、アニオン性界面活性剤(例えばドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等)等を用いることができる。
一般式(11)中、0≦m+n≦50であって、R21〜R24はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表わす。
一般式(12)中、R31〜R37はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基であり、j、k及びgはそれぞれ独立して1以上の整数であり、EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、p及びqは0以上の整数であるが、但しp+qは1以上の整数であり、EO及びPOは、[ ]内においてその順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい。
これらの界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
界面活性剤の配合量は、本発明のインク組成物中、好ましくは0.01〜10質量%であり、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
(その他の添加剤)
本発明のインク組成物は、上記成分に加えて必要に応じてその他の添加剤を含むことができる。
本発明におけるその他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、インク組成物を調製後に直接添加してもよく、インク組成物の調製時に添加してもよい。具体的には特開2007−100071号公報の段落番号[0153]〜[0162]に記載のその他の添加剤などが挙げられる。
本発明のインク組成物の表面張力としては、紙等の記録媒体への浸透性の向上、記録媒体上でのドットの良好な広がり、及びカラーブリードの防止、乾燥性等の観点から、40mN/m以下であること好ましく、28〜35mN/mであることがより好ましい。
インク組成物の表面張力は、例えば、Face自動表面張力計「CPVP−Z」〔協和界面科学(株)製〕等の測定装置により測定することができる。
本発明のインク組成物の粘度としては、打滴安定性の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
インク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて20℃で測定することができる。
本発明のインク組成物のpHとしては、インク安定性の観点から、pH7.5以上10.0以下であることが好ましく、pH8以上9以下であることがより好ましい。尚、インク組成物のpHは25℃で通常用いられるpH測定装置(例えば、東亜ディーケーケー(株)製、マルチ水質計MM−60R)によって測定される。
またインク組成物のpHは、酸性化合物または塩基性化合物を用いて適宜調製することができる。酸性化合物または塩基性化合物としては通常用いられる化合物を特に制限なく用いることができる。
本発明のインク組成物は、上記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種を含む色材と、前記分散剤の少なくとも1種と、コロイダルシリカの少なくとも1種に加えて、必要に応じて水溶性有機溶剤の少なくとも1種と界面活性剤等とを混合して調製することができる。前記成分を混合して得られる液体組成物をインク組成物としてもよく、また、前記液体組成物に濾過、殺菌処理(例えば、熱処理)等の処理を行ってインク組成物としてもよい。
濾過の方法としては、例えば、メンブレンフィルタ(例えば、PVDF5μmフィルタ)を用いた濾過を挙げることができる。また殺菌処理としては、熱処理(例えば、60〜80℃で1〜4時間)を挙げることができる。
本発明においては、インク安定性の観点から、前記液体組成物を殺菌処理(好ましくは、熱処理)することが好ましい。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、前記本発明の水性インク組成物を、記録媒体上にインクジェット法で吐出するインク吐出工程を含んで構成され、必要に応じてその他の工程を含んでもよい。
即ち、本発明の画像形成方法は、本発明の水性インク組成物を用いてインクジェット法で吐出して画像を形成する工程を含むことにより、インクジェットヘッド部材の浸食等を抑えつつ、撥液性低下の抑制が可能であり、インク組成物の吐出性に優れることから、形成される画像は精細で良好となる。また、インク組成物を長期間保存、高温で経時した後であっても吐出安定性、吐出回復性に優れるため、長期に亘って高画質で良好な画像を形成することができる。
インク吐出工程では、既述の本発明の水性インク組成物を、記録媒体上にインクジェット法で付与する。本工程では、記録媒体上に選択的にインク組成物を付与でき、所望の可視画像を形成できる。本発明のインク組成物における各成分の詳細及び好ましい態様などの詳細については、既述した通りである。
インクジェット法を利用した画像の形成は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に、本発明のインク組成物を吐出することにより行なえる。
なお、本発明の画像形成方法には、その他の工程として、特開2003−306623号公報の段落番号[0093]〜[0105]に記載の工程が適用できる。
インクジェット法は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
インクジェット法により画像形成を行う際に使用するインクジェットヘッドは少なくともノズルプレートを備えていることが好ましく、該ノズルプレートは表面が撥液処理されていることがより好ましい態様である。
前記表面が撥液処理されているノズルプレートとは、ノズルプレートの表面が撥液処理されていればよく、該撥液処理がノズルプレートの表面の一部であっても、その全面であってもよく、特に限定されるものではない。
前記表面が撥液処理されているノズルプレートを用いて、ノズルプレートからインク組成物を吐出することにより、吐出性に優れ、かつインクジェットヘッド部材の撥液性低下の抑制されて、得られた画像は良好なものとなる。
インク吐出工程は、インク組成物が接する流路の少なくとも一部がケイ素(シリコン)及び二酸化ケイ素から選択される少なくとも1つの成分を含んで構成されるインクジェットプリンタを用いてインク組成物を吐出するインク吐出工程であることがインクとの接触による浸食に伴う形状変形の防止効果が顕著となる点で好ましい態様である。
インク組成物が接する流路の一部としては、インクが流通するインク流路が該当するが、特にこれに限定されるものではなく、インク組成物が接する部材の一部をいう。
以下、具体的に、表面が撥液処理されているノズルプレートを有するインクジェットヘッド、及び、インクが接する流路の一部がシリコンで形成されたノズルプレートの一例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1に示すように、インクジェットヘッド200は、吐出口(ノズル)を有するノズルプレート11と、ノズルプレートの吐出方向と反対側に設けられたインク供給ユニット20とを備えている。ノズルプレート11には、インクを吐出する複数の吐出口12が設けられている。
ノズルプレート11は、図2に示すように、32×64個の吐出口(ノズル)が2次元配列されて設けられている。本発明においては、このノズルプレートは一部または全てはシリコンで形成されていることが好ましい。ノズル口内及びインク吐出方向側の表面にはシリコンが露出した構造になっていてもよく、金属(シリコンを含む)の酸化物及び窒化物、並びに金属(シリコンを除く)の群から選ばれる少なくとも一種を含ませた膜により被覆されていることが好ましい。さらに、本発明においては、ノズルプレート表面には、フルオロカーボンを含む膜(以下、「フルオロカーボン膜」という。)として、C17SiClを用いてフッ化アルキルシランの蒸着膜(フッ化アルキルシランを含む撥液性膜)が化学気相蒸着法により形成されていることが好ましい。
フルオロカーボン膜は、例えば、フッ素樹脂のコーティング、化学気相蒸着法、フッ素系高分子等との共析メッキ、又はフッ素シラン処理、アミノシラン処理、フッ化炭素プラズマ重合膜等などの撥水処理法により形成することが可能である。
本発明における撥液処理としては、フッ化アルキルシランの撥液性膜を形成する方法が挙げられ、該方法としては、下記の方法が挙げられる。
第1の例として、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシランを基材と反応させて、撥水性の単分子膜や重合膜を形成する方法がある(特許第2500816号、特許第2525536号参照)。前記化学式において、CF(CF−がフルオロアルキル基であり、−SiClがトリクロロシリル基である。この方法では、活性水素が表面に存在する基材をフルオロアルキルトリクロロシランが溶解した溶液にさらし、クロロシリル基(−SiCl)と活性水素とを反応させて基材とSi−O結合を形成する。この結果、フルオロアルキル鎖はSi−Oを介して基材に固定される。ここで、フルオロアルキル鎖が膜に撥水性を付与する。膜の形成条件によって、撥水膜は単分子膜や重合膜となる。
第2の例として、CF(CFSi(OCHなどのフルオロアルキルアルコキシシランなどのフルオロアルキル鎖を含む化合物を含浸した多孔質性の基体を真空中で加熱し、前記化合物を蒸発させて基材表面を撥水性にする方法がある(特開平6−143586号公報参照)。この方法では、撥水膜と基材との密着性を高めるために、二酸化珪素などの中間層を設ける方法が提案されている。
第3の例として、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシランなどの化合物を用いて、基材表面にフルオロアルキルシランを化学気相蒸着法により形成する方法がある(特開2000−282240号公報参照)。
第4の例として、ジルコニアやアルミナなどの酸化物微粒子を基材表面に形成した後、その上にフルオロアルキルクロロシランやフルオロアルキルアルコキシシランなどを塗布する方法がある(特開平6−171094号公報参照)。
第5の例として、フルオロアルキルアルコキシシランに金属アルコキシドを加えた混合溶液を加水分解・脱水重合させた後に、この溶液を基材に塗布して焼成することにより、金属酸化物中フルオロアルキル鎖を有する分子が混合した撥水膜を形成する方法がある(特許第2687060号、特許第2874391号、特許第2729714号、特許第2555797号参照)。この方法は、フルオロアルキル鎖が膜に撥水性を付与し、金属酸化物が膜に高い機械的強度を付与するものである。
以上の形成方法の中でも、前記第3の例として挙げた化学気相蒸着法が好ましい。
前記化学気相蒸着法による場合、テフロン(登録商標)製などの密閉容器の中にフッ化アルキルシラン等のフルオロカーボン材料を入れた容器とシリコン基板を入れ、この密閉容器全体を電気炉中に置く等して昇温することでフッ化アルキルシラン等を蒸発させることにより、シリコン基板の表面にフッ化アルキルシラン等の分子が堆積し、化学気相蒸着することができる。このようにして、化学気相蒸着法により例えばフッ化アルキルシランの単分子膜をノズルプレート上に形成することができる。この場合、シリコン基板の蒸着面は親水化されていることが好ましい。具体的には、例えばシリコン基板の表面を紫外光(波長172nm)を用いて洗浄することで、有機不純物が除去されて清浄表面が得られる。このとき、シリコン表面は自然酸化してSiO膜で覆われているため、表面に直ちに大気中の水蒸気が吸着して表面がOH基で覆われ親水性の表面となる。
前記化学気相蒸着法の別の態様として下記の方法が挙げられる。
フッ化アルキルシランの撥液性膜は、例えば、低圧力でCF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン及び水蒸気をCVDリアクタの中に導入することによって、コーティングされていない基盤の外部表面上に堆積することができる。CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシランの分圧は、0.05〜1torr(6.67〜133.3Pa)の間(例えば0.1〜0.5torr(13.3〜66.5Pa))とすることができ、HOの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.1〜2torr)とすることができる。堆積温度は、室温と摂氏100度との間とすることができる。コーティングプロセスは、例えば、Applied Micro Structures, Inc.からのMolecular Vapor Deposition(MVD)TMマシンを用いて実施することができる。
前記撥液性膜は、フルオロカーボンとしてフッ化アルキルシランを用いて形成された膜であり、特に下記一般式(F)で表されるシランカップリング化合物を用いた場合が好ましい。
2n+1−C2m−Si−X ・・・一般式(F)
一般式(F)において、nは1以上の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表す。Xは、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、Xの一部がアルキル基で置換されていてもよい。
フッ化アルキルシランの例としては、C17SiCl、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン、CF(CFSi(OCHや、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシランなどのフルオロアルキルアルコキシシラン、等を挙げることができる。
本発明においては、一般式(F)で表されるシランカップリング化合物を化学気相蒸着法で成膜したフルオロカーボン膜が好ましい。
前記一般式(F)の中では、撥液性および撥液膜の耐久性の点で、nが1〜14の整数であって、mが0又は1〜5の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましく、更には、nが1〜12の整数であって、mが0又は1〜3の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましい。
撥液性膜の厚みとしては、特に制限はないが、0.2〜30nmの範囲が好ましく、0.4〜20nmの範囲がより好ましい。撥液性膜の厚みは、30nmを超える範囲でも特に問題はないが、30nm以下であると膜の均一性の点で有利であり、0.2nm以上であるとインクへの撥水性が良好である。
このノズルプレートにより高速シングルパス(記録媒体が1回通過)で1200dpiの高精細で高画質記録が可能である。すなわち、ノズルプレートの複数のノズルが2次元マトリックス状に配置されており、このノズルプレートに固定されたインク供給ユニットは多くのインクを高周波数で吐出(いわゆる高Dutyにて吐出)させることができる流路構成となっている。高精細とするために、半導体プロセスを利用しやすいシリコンが一部又は全てに使用されている。具体的には、ノズルプレートの全体もしくは一部がシリコンで形成される場合、シリコンとして例えば単結晶シリコン、ポリシリコンを用いることができる。シリコンで形成されたノズルプレートは、インクによる侵食が発生することが一般的に課題として認識されており、様々な保護膜によりインクによる浸漬を防止することが検討されてきた。しかしながら、保護膜に存在する膜の欠陥等を起因としてインクによる侵食を完全に防止することは極めて困難な課題であり、特に高速シングルパス方式のようにインク吐出の周波数が高く、フレッシュなインクが常に接しやすいほど、インクによるシリコンの侵食が進行しやすい。また高精細が要求される高速シングルパス方式では、インク侵食による吐出精度の悪化に対する要求レベルも高い。
本発明においては、吐出に使用するインク組成物に無機ケイ酸化合物を含有することにより、侵食されやすいシリコンの劣化を効果的に防止することができる。
このノズルプレートは、金属(シリコンを含む)の酸化物及び窒化物、並びに金属(シリコンを除く)の群から選ばれる少なくとも一種を含ませた膜形成により被覆されることができる。具体的には、ノズルプレートの全体もしくは一部がシリコンで形成される場合、例えば、シリコンとして単結晶シリコン、ポリシリコンを用いることができる。また、ノズルプレートの全体もしくは一部がシリコンで形成される場合、例えば、単結晶シリコン基板上に、酸化シリコン、酸化チタン、酸化クロム等の金属酸化物や窒化チタン、窒化シリコン等の金属窒化物、又はジルコニウム等の金属などの膜が設けられたものでもよい。酸化シリコンは、例えばシリコンで形成されたノズルプレートのシリコン表面の全部もしくは一部が酸化されて形成されたSiO膜でもよい。シリコン表面の全部もしくは一部には、酸化タンタル(好ましくは5酸化タンタル(Ta))やジルコニウム、クロム、チタン、ガラス等の膜が形成されたものでもよい。また、シリコンの一部をガラス(例:硼珪酸ガラス、感光性ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス)に代えて構成してもよい。五酸化タンタル等をはじめとする酸化タンタルからなる膜は、インクに対して非常に優れた耐インク性を有し、特にアルカリ性のインクに対して良好な耐侵食性が得られる。
前記SiO膜を形成する方法の一態様を述べる。例えば、コーティングされていないシリコン基板が設置された化学蒸着法(CVD)リアクタに、SiCl及び水蒸気を導入することによって、シリコン基板上にSiO膜を形成できる。CVDチャンバと真空ポンプとの間のバルブは、流体をくみ出しチャンバを空にした後、閉じられ、SiCl及びHOの蒸気がチャンバの中に導入される。SiClの分圧は、0.05〜40torr(6.67〜5.3×10Pa)の間(例えば0.1〜5torr(13.3〜666.5Pa))とすることができ、HOの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.2〜10torr)とすることができる。堆積温度は、一般には室温と摂氏100度との間である。また、他の態様として、シリコン基板上にスパッタリングすることによりSiO膜を形成することができる。SiO膜によってコーティングされるべき表面は、SiO膜を形成する前に(例えば、酸素プラズマを当てることによって)洗浄されることが好ましい。
図1において、インク供給ユニット20は、ノズルプレート11の複数の吐出口12のそれぞれとノズル連通路22を介して連通する複数の圧力室21と、複数の圧力室21のそれぞれにインクを供給する複数のインク供給流路23と、複数のインク供給流路23にインクを供給する共通液室25と、複数の圧力室21のそれぞれを変形する圧力発生手段30とを備えている。
インク供給流路23は、インク供給ユニット20とノズルプレート11との間に形成されており、共通液室25に供給されたインクが送液されるようになっている。このインク供給流路23には、圧力室21との間を繋ぐ供給調整路24の一端が接続されており、インク供給流路23から供給されるインク量を所要量に絞って圧力室21に送液することができる。供給調整路24は、インク供給流路23に複数設けられ、このインク供給流路23を介して圧力発生手段30に隣接して設けられた圧力室にインクが供給される。
このように、複数の吐出口にインクを多量に供給することが可能である
圧力発生手段30は、圧力室21側から振動板31、接着層32、下部電極33、圧電体層34、上部電極35を順に積み重ねて構成されたアクチュエータ(圧電素子)であり、外部から駆動信号を供給する電気配線が接続されて駆動されるようになっている。圧力室21の天面を構成している振動板(加圧板)31に圧電体層が電極と共に接合されており、電極に電圧印加することにより画像信号に応じてアクチュエータが変形し、インクがノズル連通路を介してノズルから吐出される。インクが吐出されると、共通液室25からインク供給流路23を通って新しいインクが圧力室21に供給される。
また、吐出口12の近傍には、循環絞り41が設けられており、常時インクが循環路42へ回収されるようになっている。これにより、非吐出時の吐出口近傍のインクの増粘を防止することができる。
インクジェット法としては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら画像形成を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて画像形成速度の高速化が実現できる。本発明の画像形成方法は、これらのいずれにも適用可能であるが、一般にダミージェットを行なわないライン方式に適用した場合に、吐出精度及び画像の耐擦過性の向上効果が大きい。
更には、本発明におけるインク吐出工程では、ライン方式による場合に、インク組成物を1種のみ用いるのみならず2種以上のインク組成物を用い、先に吐出するインク組成物(第n色目(n≧1)、例えば第2色目)とそれに続いて吐出するインク組成物(第n+1色目、例えば第3色目)との間の吐出(打滴)間隔を1秒以下にして好適に画像形成を行なうことができる。本発明においては、ライン方式で1秒以下の吐出間隔として、インク滴間の干渉で生じる滲みや色間混色を防止しつつ、従来以上の高速画像形成下で耐擦過性に優れ、ブロッキングの発生が抑えられた画像を得ることができる。また、色相および描画性(画像中の細線や微細部分の再現性)に優れた画像を得ることができる。
インクジェットヘッドから吐出されるインクの液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5〜6pl(ピコリットル)が好ましく、1〜5plがより好ましく、2〜4plが更に好ましい。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(イエロー顔料の合成)
[合成例1]
〜例示化合物(Pig.−1)の合成〜
例示化合物(Pig.−1)の合成スキームを下記に示す。
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、CDCl)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、CDCl)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
(3)中間体(c)の合成
ヒドラジン1水和物130mLにメタノール100mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン50.0g(336ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、50℃に加熱して4時間30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を43.1g(白色粉末、収率92%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.82(s,1H),7.55(s,2H),5.96(s,1H),4.12(s,4H)
(4)中間体(d)の合成
中間体(c)35.0g(0.25モル)、ピバロイルアセトニトリル68.8g(0.55モル)に水900mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液に1M塩酸水をpH3になるように滴下した後、50℃に加熱して8時間攪拌した。この反応液に8M水酸化カリウム水溶液を滴下してpH8に調整して、更に1M塩酸水を滴下してpH6に調整して析出した結晶をろ取、イソプロパノールでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)を83.0g(白色粉末、収率94%)で得た。得られた中間体(d)のNMR測定結果は以下の通りである。
H−NMR(300MHz、d−DMSO)8.73(s,1H),7.97(s,1H),6.88(s,4H),5.35(s,2H),1.22(s,18H)
(5)例示化合物(Pig.−1)の合成
濃硫酸4.1mLに酢酸18.5mLを加えて氷冷で攪拌し、40%ニトロシル硫酸3.85g(12.1ミリモル)を滴下した。この混合液に中間体(b)1.71g(11.0ミリモル)を徐々に添加(内温0℃以下)した後、0℃で2時間攪拌した。この反応液に尿素150mgを添加し、さらに0℃で15分攪拌して、ジアゾ液Aを調製した。
中間体(d)にメタノール50mLを加えて加熱溶解させた後、氷冷で攪拌した混合液に前記ジアゾ液Aをゆっくり滴下した(内温10℃以下)。この反応液を室温で2時間攪拌した後、析出した結晶をろ取、メタノールでかけ洗いして前記例示化合物(Pig.−1)の粗結晶を得た。さらに前記粗結晶に水を加えて攪拌した後、この懸濁液を水酸化ナトリウム水溶液でpH7に調整し、さらにジメチルアセトアミド20mLを加えて、80℃で2時間攪拌した。析出した結晶をろ取、さらにメタノールで懸濁洗浄し得られた結晶をろ取、乾燥して例示化合物(Pig.−1)を2.0g(黄色粉末、収率79%)で得た。
<実施例1>
(イエロー顔料分散体YD−1の調製)
イエロー顔料分散体YD−1を以下のようにして調製した。
イエローアゾ顔料である例示化合物(Pig.−1)10.0部に、スチレン−アクリル酸系高分子分散剤(BASFジャパン社製、「ジョンクリル68」、重量平均分子量10,000、酸価195mgKOH/g)4.0部、および、全量が100部となる量のイオン交換水を混合した後、該混合液をディゾルバーで均一になるまで攪拌して予備分散液を得た。得られた予備分散液をビーズミルで0.1mmφジルコニアビーズを用いて5時間分散処理した。分散後、ジルコニアビーズを取り除き、顔料分散液を得た。70℃3hrの殺菌処理を行なった後、顔料濃度が10%になるよう純水を加えて、イエロー顔料分散体YD−1を調製した。
(ウレタン変性ポリエステル樹脂の調製)
温度計および攪拌機をつけた加圧重合器に、3−メチルペンタンジオールとアジピン酸を脱水共重合して得られるアジペートジオール(数平均分子量2000)205.0部に、1,4−ブタンジオール8.5部、n−ブタノール3.8部、ジメチロールプロピオン酸48.5部、イソホロンジイソシアネート140.0部およびメチルエチルケトン265.5部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、7時間反応させてウレタン変性ポリエステル樹脂を得た。得られた溶液を室温まで冷却し、トリエチルアミン31.5部を加えた後、イオン交換水1400部を加え、メチルエチルケトンを減圧留去して25%ウレタン変性ポリエステル樹脂水溶液を得た。この樹脂の分子量は13500、酸価は67であった。
−イエロー顔料分散体の粒子径測定−
得られたイエロー顔料分散体について、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用い、動的光散乱法により体積平均粒径(Mv)を測定し、下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
A :Mvが90nm未満であった。
B :Mvが90nm以上、120nm未満であった。
C :Mvが120nm以上であった。
(水性インク組成物YI−1の調製)
上記で得られたイエロー顔料分散体YD−1、ウレタン変性ポリエステル樹脂を用い、以下のインク組成となるように各成分を混合して、水性インク組成物YI−1を調製した。pH(25℃)は、8.5であった。
<水性インク組成物YI−1の組成>
・前記イエロー顔料分散体YD−1 ・・・ 25.0部
・BYK347(ビックケミージャパン(株)製、界面活性剤)
・・・ 0.5部
・1,2−ヘキサンジオール ・・・ 10.0部
・グリセリン ・・・ 12.0部
・トリエタノールアミン ・・・ 1.0部
・25%ウレタン変性ポリエステル樹脂水溶液 ・・・1.0部
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・ 1.5部
(スノーテックスC、固形分濃度20%、日産化学工業(株)製)
・プロキセルXL−2 ・・・ 0.05部
(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製、防かび剤)
・ベンゾトリアゾール ・・・ 0.05部
・オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) ・・・ 1.0部
・イオン交換水 ・・・ 全量が100部となる残量
<実施例2〜6>
上記水性インク組成物YI−1の調製において、コロイダルシリカの種類と添加量を下記表1に示したようにそれぞれ変更した以外は上記と同様にして、イエローインクYI−2〜YI−6をそれぞれ調製した。
<実施例7〜24>
上記水性インク組成物YI−3の調製において、イエローアゾ顔料として例示化合物(Pig−1)の代わりに、下記表1に示したイエローアゾ顔料を用いた以外は実施例3と同様にして、水性インク組成物YI−8〜YI−24をそれぞれ調製した。
<比較例1>
上記水性インク組成物YI−3の調製において、コロイダルシリカを添加しなかった以外は実施例3と同様にして、水性インク組成物YI−25を調製した。
<評価>
上記で得られた水性インク組成物について、以下の評価を行った。
(撥液性評価)
〜撥液膜浸漬試験〜
2cm×2cmのシリコン板上にフッ化アルキルシラン化合物(C17SiCl)を用いて撥液膜(SAM膜)を形成した評価用の試験片を作製した。作製した試験片を用いて、以下のようにして撥液膜における水の接触角を測定し、水性インク組成物による撥液膜の撥液性に対する影響を評価した。
上記で調製した水性インク組成物30mlを、ポリプロピレン製の50ml広口ビン(アイボーイ広口ビン50ml(アズワン(株)製))にそれぞれ量りとった。次いで上記試験片を水性インク組成物中に浸漬し、60℃で72時間加熱経時した。試験片を取り出し、超純水で洗浄して、撥液膜表面の水の接触角を測定した。
水の接触角の測定には超純水を使用し、接触角測定装置(協和界面科学(株)製、DM−500)を用いて25℃、50RH%の環境下で常法により測定し、下記評価基準に従って評価した。
尚、水性インク組成物浸漬前の水の接触角は106.5度であり、評価Dは実用上問題があるレベルである。
った。
〜評価基準〜
AA: 80度以上。
A: 60度以上、80度未満。
B: 40度以上、60度未満。
C: 20度以上、40度未満。
D: 20度未満。
(吐出性評価)
図1に示したようなシリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを、ステージの移動方向がノズル配列方向に対して垂直方向になるように固定した。尚、シリコンノズルプレートには、下記の方法によりフッ化アルキルシラン化合物(C17SiCl)を用いて得られた撥液膜が予め設けられている。
次にこれに繋がる貯留タンクに上記で作製した水性インク組成物を詰め替えた。記録媒体として富士フイルム(株)製の画彩写真仕上げProを、ヘッドのノズル配列方向に対して垂直方向に移動するステージに貼り付けた。
次に、ステージを248mm/分で移動させ、インク滴量3.4pL、吐出周波数10kHz、ノズル配列方向×搬送方向75×1200dpiで96本のラインを搬送方向に対して平行に1ノズル当り2000発のインク滴を吐出して、印画サンプルを作製した。得られた印画サンプルを目視で観察して、すべてのノズルから水性インク組成物が吐出されていることを確認した。
水性インク組成物吐出後に、所定時間ヘッドをそのままの状態で放置した後、新しい記録媒体を貼り付けて、再び同様の条件で水性インク組成物を吐出して印画サンプルを作製した。得られた印画サンプルを目視で観察し、所定時間放置後に2000発吐出して96本のノズルすべてが吐出可能であった最大放置時間で吐出性(吐出回復性)を評価した。吐出不良が発生しない放置時間が長いほど吐出性が良好であると考えられ、以下のように評価基準を設定した。
尚、評価Dは実用上問題があるレベルである。評価結果を表2に示した。
〜評価基準〜
A:放置時間が45分以上であった。
B:放置時間が30以上45分未満であった。
C:放置時間が20分以上30分未満であった。
D:放置時間が20分未満であった。
〜シリコンノズルプレート上への酸化シリコン膜(撥液性膜)の形成〜
単結晶シリコンで形成されるシリコンノズルプレートは、そのインク吐出方向側の表面には、化学気相蒸着(CVD)法リアクタにSiCl及び水蒸気を導入することによって成膜された酸化シリコンの膜(SiO膜)が形成された。SiO膜の膜厚は、50nmである。さらに、酸素プラズマ処理を施した後にC17SiClを用いて化学気相蒸着法(CVD)を施すことにより、SiO膜に撥液膜が形成された。低圧力でC17SiCl及び水蒸気をCVDリアクタの中に導入することによって、撥液膜を製膜した。撥液性膜の厚みは10nmである。また、シリコンノズルプレートには、図2に示すように複数のノズルが2次元マトリクス状に配列されており、高精細にインク滴を吐出できるようになっている。

上記表1から明らかな通り、本発明の構成を有する実施例は、撥液性及び吐出性(吐出回復性)に良好であることが判る。
11・・・ノズルプレート 12・・・吐出口(ノズル)20・・・インク供給ユニット
21・・・圧力室 22・・・ノズル連通路 23・・・インク供給流路
24・・・供給調整路 25・・・共通液室
30・・・圧電素子(圧電アクチュエータ;圧力発生手段)
31・・・振動板 32・・・接着層 33・・・下部電極
34・・・圧電体層 35・・・上部電極
41・・・循環絞り 42・・・循環路
200・・・インクジェットヘッド

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)で表されるアゾ顔料およびその互変異性体ならびにそれらの塩および水和物の少なくとも1種を含む色材と、分散剤と、コロイダルシリカと、を含む水性インク組成物。

    (一般式(1)中、Zは5〜8員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基を表し、Y、Y、R11、およびR12は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表し、GおよびGは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、WおよびWはそれぞれ独立にアルコキシ基、アミノ基、アルキル基またはアリール基を表す。)
  2. 前記一般式(1)中のWおよびWは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルコキシ基、無置換アミノ基、または総炭素数3以下のアルキルアミノ基である請求項1に記載の水性インク組成物。
  3. 前記一般式(1)中のGおよびGは、それぞれ独立に総炭素数3以下のアルキル基である請求項1または請求項2に記載の水性インク組成物。
  4. 前記一般式(1)中のZは、6員の含窒素ヘテロ環に由来する2価の基である請求項1〜請求項3のいずれかに1項に記載の水性インク組成物。
  5. 25℃におけるpHが7.5以上10.0以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  6. 前記コロイダルシリカは、体積平均粒子径が1〜25nmである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  7. 前記コロイダルシリカの含有率が、水性インク組成物全質量に対して0.0005質量%以上0.5質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  8. 前記色材を水性インク組成物全質量に対して0.3〜8質量%含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  9. 前記色材の体積平均粒子径は、150nm以下である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  10. 前記分散剤は、親水性の構成単位および疎水性の構成単位を含む共重合体である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の水性インク組成物を、記録媒体上にインクジェット法で吐出するインク吐出工程を含む画像形成方法。
  12. 前記インク吐出工程は、前記水性インク組成物を、表面の少なくとも1部が撥液処理されているノズルプレートから吐出する請求項11に記載の画像形成方法。
  13. 前記インク吐出工程は、前記水性インク組成物が接する流路の少なくとも一部がSi及びSiOの少なくとも1つを含むインクジェットプリンタを用いて、前記水性インク組成物を吐出する請求項11又は請求項12に記載の画像形成方法。
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