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JP2011181648A - 放熱基板とその製造方法 - Google Patents

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JP2011181648A JP2010043921A JP2010043921A JP2011181648A JP 2011181648 A JP2011181648 A JP 2011181648A JP 2010043921 A JP2010043921 A JP 2010043921A JP 2010043921 A JP2010043921 A JP 2010043921A JP 2011181648 A JP2011181648 A JP 2011181648A
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Koji Shimoyama
浩司 下山
Tetsuya Tsumura
哲也 津村
Kimiharu Nishiyama
公治 西山
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Abstract

【課題】従来の放熱基板は、熱伝導性を高めるために無機フィラの含有量を増加した場合、伝熱層の表面が粗化しやすく、ここに埋め込んだリードフレームや配線基板との密着性が低下し、電気絶縁性に影響を与える可能性があった。
【解決手段】金属板108と、この金属板108上に設けられたシート状の、結晶性エポキシ樹脂を含む伝熱層102と、この伝熱層102に固定された、配線基板104と、リードフレーム103と、を有する放熱基板101であって、伝熱層102における無機フィラ126の含有率が、66Vol%以上、90Vol%以下であって、配線基板104もしくはリードフレーム103に隣接して凹部110を有している放熱基板101とすることで、無機フィラ126の含有量を増加した場合でも、伝熱層102の表面123の粗化を防止し、高精度位置決めと、優れた電気絶縁性を有する放熱基板101とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、放熱が要求される各種電子部品に用いられる放熱基板とその製造方法に関する。
電子機器の小型化のためにパワー系の半導体や、高機能半導体、発光素子等の発熱密度が向上している。このような電子部品の放熱用には、伝熱層を有する放熱基板が使われている。しかし、樹脂に無機フィラを添加して作製された従来の伝熱層には次の課題がある。伝熱層中の無機フィラの含有率を高くすると、熱伝導率は増加する。しかしながら、伝熱層の表面粗さが増加し、成形性が低下する。さらに伝熱層の表面や内部のボイド等が増加し、表面の光沢が下がり、電気的絶縁性が低下する。
こうした課題は、伝熱層における無機フィラの含有率を高めるほど、発生しやすい。これは伝熱層における樹脂成分の含有率が低下するためである。すなわち含有率が増加した無機フィラを樹脂で濡らし、固定することが難しくなるためである。次に図19を用いて、従来の伝熱層における無機フィラの体積分率と、その時の熱伝導率や表面粗さとの関係について説明する。
図19は、無機フィラの体積分率(単位はVol%)と、その時の熱伝導率(単位はW/m・K)、表面粗さRmax(単位はÅ)との関係を示したものである。
図19において、(1)は理論曲線(Bruggemanの式)、(2)は従来品のRmax、(3)はその時の光沢度(実測の20度光沢度は、ゼロであり、多くても5以下となる)を示す。
図19より、無機フィラの体積分率が60Vol%以上、更に66Vol%以上と表面粗さが増加することが判る。また70Vol%で、表面粗さRmaxが7500Å(0.75μm)を超える。そして無機フィラの体積分率が増加して、表面粗さRmaxが増加するほど、光沢度が急激に低下し、伝熱層の表面や内部にひびやクラック、ボイド等が発生しやすくなる。また無機フィラ自体の結着力が低下し、あるいは表面に露出した無機フィラが脱落しやすくなる。そのため、伝熱層表面への発熱部品等の密着性や固定性に課題が発生する。
図20を用いて、さらに詳しく説明する。図20(A)(B)は共に、伝熱層に含まれる無機フィラの含有率が高い場合における、従来の伝熱層の課題を模式的に説明する断面図である。
無機フィラの含有率が高くなるほど、図20に示すように、無機フィラ1と、熱硬化性樹脂2と、からなる伝熱層3の自由表面4の表面や内部には無数のボイド5が発生している。そしてボイド5により、自由表面4の表面粗さは急激に増加し、光沢度は低下する。なお自由表面4とは、他の個体と接していない、さらには研磨や切削等が行なわれていない自然な表面を意味する。
このように、自由表面4の表面粗さが増加し、さらに内部や表面にボイド5が発生すると、無機フィラ1の含有率を高めても伝熱層3の熱伝導率があまり増加しなくなる。また、発熱体(図示していない)との密着性が低下することにより熱伝導効率が低下する場合がある。さらに伝熱層3自体の成形性が低下する。あるいは伝熱層3自体が脆くなり、欠けやすくなる。
更に、図20(B)に示すように、この伝熱層3に、リードフレーム6や、基板7を埋め込んだ場合、これら伝熱層3とリードフレーム6との界面、あるいは基板7と伝熱層3との界面での密着性が低く、隙間8が発生しやすい。
そして隙間8、あるいは密着不足によって、リードフレーム6から伝熱層3への、あるいは基板7から伝熱層3への熱伝導性が低下し、更に電気絶縁性(例えば、高温時の漏れ電流)が低下する。
また伝熱層3に、リードフレーム6や基板7を埋め込む際の位置決め精度も低下するが、これは伝熱層3の流動性が低下するためである。
このような課題に対し、従来より、例えば伝熱層3に、ポリイミドフィルムのような絶縁性に優れ、光沢度の高い樹脂を使うことで、その密着性向上による放熱効果を高めることが提案されている。またその応用例として、金属コア基板が提案されている。
次に図21を用いて従来の金属コア基板について説明する。図21は従来の金属コア基板の断面図である。
図21は、従来の金属コア基板9の断面図である。図21において、金属板10の上には電気絶縁層11が形成されている。電気絶縁層11の上には銅箔12が積層されている。そしてこの上に、半田13を用いて、電子部品14や半導体15、端子16等が実装される。電気絶縁層11の熱伝導率が高いほど、電子部品14や半導体15からの熱を金属板10に伝えることができ、温度上昇を抑えることができる。電気絶縁層11としてはフィルム状の樹脂シートに無機フィラを添加した材料を用いることができるが、無機フィラの含有率を高めることは難しい(例えば、特許文献1)。
また熱伝導率を高める方法として、電気絶縁層11のフィラとして熱伝導率の高い材料を用いる、あるいはフィラの充填量を増加させるといった手法がよく用いられる。また、樹脂の熱伝導率を高めることも効果がある。このような構成を、図22(A)〜(C)を用いて説明する。例えば樹脂の熱伝導率を高める手段として、結晶性樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献2)。
図22(A)〜(C)は、従来の結晶性樹脂の説明図である。結晶性樹脂を用いることは、メソゲン基17を有するモノマー18を互いに重合させて、電気絶縁性でかつ優れた熱伝導性を得ようとすることを狙いとしている。結晶性樹脂を用いて高放熱性(あるいは高熱伝導性)を得るには、結晶性樹脂の結晶化率を高める必要がある。しかし結晶性樹脂において、その結晶化率を高めるほど、できあがった基板が硬くて脆い。すなわち曲がらずに折れてしまう、あるいは欠けやひびが入りやすい。そのため結晶性樹脂を用いて、電子部品を実装するための放熱基板を作製しても、その使用用途が大きく限られる。
このためメソゲン基を有するエポキシ樹脂を用いても、図20を用いて説明した課題を解決することは難しい。さらにエポキシ樹脂が結晶化するほど、図20を用いて説明した課題が発生しやすい可能性がある。さらには、無機フィラの含有率が66Vol%より低い領域からこうした課題が発生しやすくなる。
強度を向上させる方法として、網目構造をとりやすい硬化剤を配合する方法等も提案されている。しかしながら、結晶性エポキシ樹脂の場合、立体的な結合を作ることで、結晶性が阻害され、高い熱伝導率が得られない場合が多い。
さらに結晶性樹脂は金属板等に対する接着力が弱い。あるいは結晶化樹脂の内部や結晶化樹脂と金属板との界面に応力が集中しやすく、この応力によって結晶化樹脂と金属板との界面が剥離する場合がある。そのため、放熱基板を作製した場合、落下試験等の耐衝撃性に課題が残る場合がある。
特許第3255315号公報 特開平11−313162号公報
これら従来の放熱基板では、熱伝導性を高めるために無機フィラの含有量を増加した場合、伝熱層の表面が粗化しやすく、伝熱層と、伝熱層に埋め込んだリードフレームや配線基板との間の密着性が低下し、電気絶縁性に影響を与える可能性があった。また伝熱層にリードフレームや配線基板を、互いに高精度な位置情報を持った状態で高精度に埋設することが難しかった。
本発明は、上記した状況を考慮して成されたものである。すなわち、本発明は、無機フィラの含有量を増加した場合でも、伝熱層の表面の粗化を防止し電気絶縁性を高め、更に伝熱層に、各々が略平坦になるようにリードフレームや配線基板を、互いに高い位置精度を保った状態で埋め込んだ放熱基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、金属板と、この金属板上に設けられたシート状の、結晶性エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂と、無機フィラとからなる伝熱層と、この伝熱層に固定された、配線基板と、リードフレームと、を有する放熱基板であって、前記伝熱層における前記無機フィラの含有率が、66Vol%以上、90Vol%以下であって、前記伝熱層の表面には前記配線基板もしくは前記リードフレームのいずれか1つ以上に隣接する凹部を形成した放熱基板とする。
本発明によって、放熱基板の放熱、あるいは伝熱特性を大幅に向上させると共に、高温時での優れた電気絶縁性を有する放熱基板及びその製造方法を提供することによって、高温半導体(例えば、シリコン系以外のSiC系半導体等のパワーデバイス)の効率的な動作が実現でき、環境、省エネ、消費電力、炭酸ガスの削減等に貢献する。
更に、リードフレームや配線基板の位置決め、あるいは位置合わせにピン等を使うことで、放熱基板のパターン精度を高める。
(A)は、本発明の実施例1における放熱基板を斜めから見た様子を示す断面図、(B)は、伝熱層に埋め込まれた配線基板付近を拡大した断面図 (A)、(B)は、共に放熱基板を製造する様子を説明する断面図 未硬化組成物をシート状に成形する様子を説明する模式図 発明者らが試作した放熱基板の一部を示す写真を用いた模式図 図4を説明するための模式図 伝熱層の光沢の評価方法を説明する図 伝熱層の表面粗さの評価方法を説明する模式図 (A)は伝熱層の表面を拡大して説明する模式図、(B)は、伝熱層の対流の様子を模式的に説明する断面図 伝熱層の表面付近の断面を説明する模式図 (A)は、本実施例による伝熱層の表面の顕微鏡写真、(B)はその模式図 (A)は、その伝熱層の表面を3次元的に示す斜視図、(B)は、その模式図 (A)は従来例の伝熱層の表面の顕微鏡写真、(B)はその模式図 (A)は、その伝熱層の表面を3次元的に示す斜視図、(B)はその模式図 本実施例による伝熱層と従来例の伝熱層の漏れ電流の温度特性を電気特性の一例として示すグラフ 未硬化組成物に埋め込まれたリードフレームや配線基板の側面や底面で、熱硬化性樹脂が対流する様子を説明する断面図 (A)〜(D)は、配線基板と、位置決め用のピンとの位置関係について説明する上面図 (A)は、リードフレーム間にセラミック部材を挿入してなる放熱基板の上面図、(B)はその挿入部を拡大した断面図 伝熱層中の無機フィラの体積分率と熱伝導率との関係についての実験結果の一例を説明する図 無機フィラの体積分率と、その時の熱伝導率、表面粗さRmaxとの関係を示す図 (A)(B)は共に、無機フィラの含有率が高い場合における従来の伝熱層の課題を模式的に説明する断面図 従来の金属コア基板の断面図 (A)〜(C)は、従来の結晶性樹脂の説明図
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。なお各実施例において、先行する実施例と同じ構成をなすものには同一の符号を付し、詳細な説明を省略することがある。また本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1(A)は、本発明の実施例1における放熱基板を斜めから見た様子を示す断面図、図1(B)は、伝熱層に埋め込まれた配線基板付近を拡大した断面図である。
図1において、101は放熱基板、102は伝熱層、103はリードフレーム、104は配線基板、105は配線部、106は絶縁部、107はスルーホール、108は金属板、109は充填材、110は凹部である。凹部110は、リードフレーム103や配線基板104に接しているか、あるいは隣接して設けることで、これら部材間のズレ発生を抑制し、より正確な位置固定が可能となる。
放熱基板101は、少なくとも、シート状の伝熱層102と、この伝熱層102に埋め込まれ、固定された配線基板104と、リードフレーム103と、を有している。
そして配線基板104やリードフレーム103に隣接して、あるいは接するように、これらの周囲には、位置決め用の治具(図示していない)の痕跡等に相当する凹部110が形成されている。
なお図1(B)に示すように、凹部110に、エポキシ樹脂等の充填材109を後発的に充填することも有用である。こうすることで、凹部110における埃や塵の堆積を防止できる。
配線基板104としては、市販のガラエポ基板(ガラエポ基板とは、ガラス線にエポキシ樹脂を含浸させた絶縁部106と、銅箔からなる配線部105とを、スルーホール107等を介して層間接続したガラスエポキシ多層基板のことである)や、ハイブリッドIC(例えば、アルミナ等のセラミック板からなる絶縁部106の上に、銀や銅等の配線部105を設けたものであり、耐熱性、放熱性に優れている)等を用いることが望ましい。
例えば、図1における放熱基板101のリードフレーム103は、100Aを超える大電流に対応でき、更にヒートスプレッダとしての効果を有しているので、パワー半導体等(図示していない)の実装や放熱に好適である。
図1における、放熱基板101の伝熱層102に埋め込んだ配線基板104は、微細配線に対応できるため、パワー半導体(図示していない)の制御用の半導体や各種チップ部品等の高密度実装に好適である。例えば配線基板104にガラエポ基板を用いることで、制御回路の高密度実装に対応できる。また配線基板104に、アルミナ基板等のセラミック基板を用いることで、更に優れた放熱性が得られる。
更に詳しく説明する。なお伝熱層102の厚みを、0.6mm以上とすることで、強化絶縁を満足させることができる。ここで強化絶縁とは、二重絶縁によるものと同等以上の感電に対する保護を与える単一の絶縁を意味する。なお二重絶縁は、基礎絶縁と付加絶縁とで形成される絶縁である。このように強化絶縁を満足させることで、UL規格やIEC規格等で知られる製品の安全性を満足でき、放熱基板101の上に、一次側の電気回路(例えば、電源回路)を形成することができる。ULとはUnderwriter's Laboratolies Incorporated、IECとは国際電気標準会議を意味し、日本のJISに相当する。
なお、放熱基板101を、二次側回路に用いる場合、伝熱層102の厚みを、0.6mm未満とすることも可能である。なお二次側回路には、DC−DCコンバータ等のカー用電源も含む。なおDC−DCコンバータとは、DC入力からDC出力を作製する電力変換器である。
伝熱層102における無機フィラ126の含有率は、66Vol%以上90Vol%以下である。
なお、金属板108は、シート状の伝熱層102の一面に固定されているが、この形態に限定する必要は無い。すなわちシート状、あるいは棒状、あるいは板状の伝熱層102に、金属板108を埋め込むことも有用である。例えば、伝熱層102の片面に金属板108を埋め込む、あるいは伝熱層102の内部に金属板108を埋め込むことも有用である。
また金属板108に用いる金属材料は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、あるいはこれらの複合物(複合部材はこれら金属材料の合金やメッキ、蒸着物、クラッド材等も含む)とすることが有用である。これは金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムが、単独で、あるいは複合物とすることで、金属板108に有用な熱伝導性等に優れた特徴を有するためである。
なお伝熱層102の表面は、20度光沢が70以上の、いわゆるピアノブラック状の綺麗な光沢を有していることが好ましい。例えば、表面を漆黒の深みを有する滑らか表面とすることが望ましい。
なお伝熱層102の色は、黒色に限定する必要は無い。後述する図4等においては、発明者らがカーボンブラック等の黒色顔料を伝熱層102に添加したため黒色になっているだけである。例えば、赤色や青色、緑色等の顔料等を添加すれば、それぞれの色調で光沢を有する滑らかな表面が得られる。アルミナや酸化チタン等の白色顔料を添加することで、白色の綺麗な光沢面、あるいは白色のグランドピアノのような光沢面とすることができる。このように白色とすることで、実施例1の放熱基板101を、発光ダイオード(LED)等に代表される半導体発光素子の実装用基板として用いることができる。この場合、白色にした伝熱層102の光沢を有する表面が、LEDの光の反射板として機能するため、家庭用LED照明、あるいは車用ヘッドライトとして使うことができる。
なお伝熱層102の表面となる表面部自体を透明とすることは有用であるが、表面部を白色にする場合、無機フィラより粒径の小さな白色顔料を添加すればよい。
なお用途によっては、伝熱層102の表面の光沢が好ましくないことがある。このような場合、伝熱層102の一部の表面を研磨することで、表面の平面性(あるいは平滑性)を高められる。更に後述する図9等で説明するように、各実施例の伝熱層102において、その表面層は無機フィラ含有率が低く、研磨しやすいことも好適である。すなわち、伝熱層102の表面を、薄く研磨し(例えば、後述する図8(B)に示す表面層127を研磨除去し)、この上に発熱部品を熱伝導率の高い接着剤で固定することも有用である。
(実施例2)
次に実施例2として、図2(A)、(B)を用いて、図1に示した放熱基板101の製造方法の一例について説明する。
図2(A)、(B)は、共に放熱基板101を製造する様子を説明する断面図である。111は孔であり、金属板108を機器のシャーシ等にネジ止めするためのものである。112は金型であり、温度調整装置(図示していない)を用いて、温度調整できる。113は保護フィルムであり、金型112の表面に樹脂等が付着することを防止する。
ここで配線基板104は、市販のガラスエポキシ樹脂を使った樹脂基板や、セラミック基板を用いたハイブリッドIC等である。114は未硬化組成物であり、未硬化組成物114が熱硬化して、伝熱層102となる。115は矢印、116はピンであり、ピン116は配線基板104やリードフレーム103の位置決めに用いる。なおピン116の形状は丸棒状に限定する必要は無く、板状、L型、四角形、台形等、用途に応じて設計する。なおピン116は、金型112の表面から、突出した形状とすることで、配線基板104の端部と、位置合わせしやすくなる。またピン116だけを用いて、配線基板104の位置決めを行なう必要はない。配線基板104の一端をピン116に、他端をリードフレーム103等に接するようにすることで、配線基板104と、リードフレーム103とを、同時に位置決めすることができる。
なお複数のリードフレーム103を、周囲で一体化させた場合(あるいは額縁状の周囲部分から、内部に複数本のリードフレーム103を内側に突き出す形状とした場合)、リードフレーム103の位置決めは、周囲(あるいは額縁部分)で行なうことができるが、配線基板104の場合、浮島状態(すなわち、外部から独立した状態)であり、正確な位置決め固定が難しい場合がある。こうした場合、金型112に設けたピン116等を用いて、配線基板104の位置決めが容易となる。
図2(A)に示すように、金属板108の上に、未硬化組成物114を配置する。なお未硬化組成物114は、シート状であっても、ペレット状、あるいは丸棒状等であっても良い。
更に、その上に、配線基板104やリードフレーム103を配置し、金型112でこれらを加圧して、埋め込む。なお金型112を加熱することは、未硬化組成物114が低粘度化するので、埋め込みの工程において、好適である。
図2(B)は、未硬化組成物114の成形が終了した後の様子を示す断面図である。矢印115に示すように、配線基板104やリードフレーム103が埋め込まれた未硬化組成物114(図2(B)では、硬化済の伝熱層102として図示している)から金型112や保護フィルム113を取り除く。その後、未硬化組成物114を熱硬化させ、伝熱層102とする。なお未硬化組成物114の熱硬化は、金型112内で行なっても、あるいは金型112から取り出した状態で行なっても良い。
なおこの硬化の際、保護フィルム113は予め剥離しておく方がよい。こうすることで、伝熱層102の表面を、自由表面とし、未硬化組成物114中に含まれる熱硬化性樹脂が熱対流しやすくなる。その結果、効果的に表面部の20度光沢を70以上、あるいは表面粗さRaを3000Å(0.3μm)以下にすることができる。
以上のように、金属板108上に、結晶性エポキシ樹脂を含む未硬化状態の熱硬化性樹脂と、無機フィラとを含む未硬化組成物114と、リードフレーム103と、配線基板104とを配置する配置工程と、前記金属板108上で、前記未硬化組成物114を加熱し、前記リードフレーム103と、前記配線基板104とを埋め込む、埋め込み工程と、少なくとも前記未硬化組成物114を、前記結晶性エポキシ樹脂の結晶化温度以上まで加熱して、液体状態とし、前記無機フィラ126の隙間を対流させる対流工程と、前記未硬化組成物114を熱硬化させ、伝熱層102とする熱硬化工程と、を備える放熱基板101の製造方法によって、無機フィラ126の含有率が、66Vol%以上、90Vol%以下であっても、優れた絶縁性を有する放熱基板101を実現できる。またリードフレーム103もしくは前記配線基板104のいずれか1つ以上の位置決めにピン116を用いることで、リードフレーム103や配線基板104の各種、電子部品の実装性を高められる。
次に未硬化組成物114の予備成形について、図3を用いて説明する。
図3は、未硬化組成物114をシート状に成形する様子を説明する模式図である。117は成形装置である。例えば、未硬化組成物114は、混練装置(図示していない)から出すと同時に、成形装置117等を用いることで、シート状、丸棒状、ペレット状等の成形しやすい形状で成形することができる。
未硬化組成物114をシート状、丸棒状、あるいはペレット状等に予備成形することで、取扱いが容易になる。特にシート状であることが好ましい。このように、未硬化組成物114をシート状とすることで、未硬化組成物114自体の取扱いが容易になる。これは他に例えれば、積層基板を形成する際の中間体である、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させて形成されたプリプレグと同様である。また、未硬化組成物114をシート状とすることで、金属板108の表面へ貼り付けやすくなる。さらに金属板108が曲面状に曲がっている、あるいはL字型に折れている場合であっても、これら表面に略一定の厚みを保った状態で、未硬化組成物114を容易に貼り付けることができる。また金属板108の表面に貼り付けられたシート状の未硬化組成物114は、所定温度(例えば、150℃〜200℃。特に未硬化組成物中に添加した結晶性エポキシ樹脂の融点以上)に加熱されることで、その内部に含まれる熱硬化性樹脂が軟化、液状化する。そして、この液状化し、低粘度化した熱硬化性樹脂が、無機フィラ126の隙間を対流することで、下地となる金属板108との密着性を高め、内部や表面におけるボイドの発生を抑制する。
なお保護フィルム113としては、市販の表面をシリコン処理や撥水処理、離型処理したPET等の樹脂フィルムを用いることができる。
また予備成形した、未硬化組成物114の厚みは、0.02mm以上、5.00mm以下が望ましい。厚みが0.02mm未満の場合、未硬化組成物114にピンホールが発生する場合がある。また厚みが5.00mmを超えると、放熱基板101に用いた場合、放熱性に影響を与える場合がある。なお図3の成形装置117の成形部(例えば、加圧ロール)を加熱しておくことで、未硬化組成物114の成形性を高められ、できあがったシートの厚みバラツキも低減できる。そしてシート状に予備成形した未硬化組成物114の表面に、保護フィルム113を一種の保護シートとして残しておくことで、ゴミ等の汚れが付着したりすることを防止できる。
なお、未硬化組成物114はコーターを用いて金属板108に塗工したり、押出成型機で成形したりしてもよい。
また、粘度を調整するために溶剤を添加してもよい。あらかじめ溶剤に溶かした状態で混練してもよい。なお、製造方法は、上記に限定されるものではない。
(実施例3)
次に図4、図5を用いて、発明者らが試作した放熱基板101について説明する。
図4は、発明者らが試作した放熱基板の一部を示す写真である。図4において、金属板108には、市販のアルミ板(厚み1.0mm)を用いた。また伝熱層102は、カーボンブラックで黒色に着色している。リードフレーム103には、銅板を金型等で所定形状に打ち抜いたものを用いた。また配線基板104には、アルミナ基板を用いた市販のハイブリッドIC(約2cm角)を用いた。またアルミナ基板の周囲には、ブレークラインを設けた。このブレークラインを設けることで、ブレークラインに従って、正確な寸法でアルミナ基板を切断することができる。また、アルミナ基板上には、銀パラジウムからなる配線や、ガラスからなる絶縁層等を形成している。
図4における凹部110とは、配線基板104の位置出しに用いたピン116(ピン116は図示していない)の跡になる。なお凹部110に、絶縁樹脂等を充填材109として注入することは有用である。
図5は、図4を説明するための模式図である。図5において、金属板108に設けた孔111の周囲には、伝熱層102を設けていない。これは孔111に挿入するネジ(図示していない)によって、伝熱層102が挟まらないので、割れにくくなる。なお孔111の内壁にねじ山を形成しても良い。
なお、放熱基板101に取付ける発熱部品(図示していない)としては、例えばパワー半導体(パワートランジスタ、パワーFET、高出力LED、高出力レーザー)以外に、トランスやコイル、チョークコイル等の電子部品やLEDや半導体レーザー等の発光素子等であっても良い。
またこれら発熱体を、熱伝導性の接着剤等を用いて、リードフレーム103等をヒートスプレッダーに使うために貼り付けても良い。また発熱体から出たリード端子等をリードフレーム103に半田付けしても良い。なお半田(図示していない)として、鉛フリー半田や導電性ペースト等を用いてもよい。
また発熱部品(図示していない)を制御するための電子部品(図示していない)を、配線基板104上に実装することは有用である。
なお伝熱層102に埋め込まれた、配線基板104と、リードフレーム103との間の接続は、ジャンパー線、0Ωのチップ抵抗、あるいは、ボンディングワイヤー等を用いることは有用である(ジャンパー線等は図示していない)。
発熱基板に、パワー半導体、制御用半導体等を実装することで、発熱が課題となる回路となる、PDPテレビの電源回路(サステイン回路も含む)、乗用車のDC−DCコンバータ、太陽電池等のDC−ACコンバータ等が製造できる。なおDC−ACコンバータとは直流を交流に、DC−DCコンバータとは直流を直流に変換するコンバータのことである。
(実施例4)
実施例4では、伝熱層102の表面状態について、図6、図7を用いて説明する。118は光沢度計、119は光源、120はレンズ、121は受光部、122は点線、123は表面である。
なお伝熱層102の表面は、光沢を有する面、あるいは滑らかな面とすることは有用である。以下、図6を用いて伝熱層102の光沢について説明する。図6は、伝熱層102の光沢の評価方法を説明する図である。
光沢度計118の内部には、光源119が設けられている。光沢度計118はグロスメータと呼ばれることもある。光源119から出た光は、レンズ120を経て被測定物である伝熱層102の表面に照射される。この光は被測定物の表面で反射され、レンズ120を介して、受光部121に入射する。
光沢度としては例えば、JIS K 5600−4−7の鏡面光沢度を用いることができる。なお鏡面光沢度とは、規定した光源119及び受光部121の角度にて、鏡面方向に対象物から反射する光束と、屈折率1.567のガラスから鏡面方向に反射する光束の比である。被測定面に垂直な方向と光源119からの入射方向とのなす角度、および被測定面に垂直な方向と受光部121へ向かう方向とのなす角度は、たとえば、図6に示すように20°とすることができる。以下、上記角度を20°として測定したJIS K 5600−4−7の鏡面光沢度を20度光沢と称する。
また光沢度の測定は、表面123の形状や模様の有無等、表面の状況に影響を受けやすい場合がある。そのため、測定ポイント(いわゆるn数)を増加させて、最も光沢度の高い場所の測定値を採用する。これは、一番光沢度の高い場所が、最も他の影響を受けていない表面に相当するからである。
なお20度光沢の測定が難しい場合、60度光沢を採用してもよい。
伝熱層102の表面は70以上の20度光沢を有することが好ましい。さらに望ましくは80以上である。光沢度が70未満の場合、表面が粗面である場合がある。この場合、伝熱層102の上に、発熱部品を固定する場合、固定する発熱部品との密着性が低下し、放熱効率が低下することがある。また60度光沢で評価する場合も、70以上の光沢度が望ましく、さらに望ましくは80以上である。
次に伝熱層102の表面粗さについて図7を参照しながら説明する。図7は伝熱層102の表面粗さの評価方法を説明する模式図である。
表面粗さは、表面粗さ計124を矢印115で示すように、伝熱層102の表面を走査しながら測定する。なお表面粗さ計124には、接針式を用いることが望ましいが、非接触式を用いても可能である。例えば、レーザー式の表面粗さ計124を用いてもよい。このような光学式の表面粗さ計124を用いた場合、得られた結果が正しいかどうかの検討を行なうことが望ましい。
なお表面粗さの測定は、表面の形状や模様の有無等、表面の状況に影響を受けやすい場合がある。そのため、測定ポイント(いわゆるn数)を増加させて、最も表面粗さの小さい部分での表面粗さの測定値の値を採用する。これは、一番表面粗さの小さい部分が、最も他の影響を受けていない表面に相当するからである。
伝熱層102の表面の表面粗さRaは、3000Å以下(0.3μm以下)であることが好ましい。さらに望ましくは2000Å以下である。もしくはRmaxが15000Å以下(1.5μm以下)であることが好ましい。さらに望ましくは13000Å以下(1.3μm以下)である。ここで、表面粗さRaとは、算術平均粗さと呼ばれるものであり、改定後のJIS−B−06011894で定義されている。Rmaxとは、改定前のJIS−N−06011882で「最大高さ」と呼ばれ、改定後のJIS−B−06011894におけるRy(最大高さ)に相当する。
表面の表面粗さRaが3000Åを超える(0.3μmを超える)場合、あるいはRmaxが15000Åを超える(1.5μmを超える)場合、伝熱層102の上に、発熱部品を固定する場合、固定する発熱部品との密着性が低下し、放熱効率が低下することがある。
なお伝熱層102の表面の光沢度を70以上とする場合、あるいは表面粗さをRaで3000Å以下、あるいはRmaxz(あるいはRz)で15000Å以下(1.5μm以下)とするには、伝熱層102の表面に、樹脂を主体とした表面層を設けることが望ましい。そしてこの表面層を構成する樹脂は、伝熱層102に含有された無機フィラの隙間から、染み出した、あるいは対流してなる熱硬化性樹脂を主体とすることが望ましい。
更に図8(A)(B)を用いて、各実施例における伝熱層102の表面が滑らかになる理由について説明する。図8(A)は伝熱層102の表面123を拡大して説明する模式図、図8(B)は、伝熱層102の対流の様子を模式的に説明する断面図である。125は模様、126は無機フィラ、127は表面層、128は主要部、129は熱硬化性樹脂である。
前述のように、伝熱層102の表面は滑らかであり、内部に殆どボイドは残っていない。すなわち、伝熱層102を構成する無機フィラ126が熱硬化性樹脂129によって充分覆われている。その結果、厚み方向において無機フィラ126の粒子どうしの接触部分、あるいは無機フィラ126と熱硬化性樹脂129との界面、あるいは無機フィラ126の粒子どうしの間、あるいは熱硬化性樹脂129の内部に、殆ど気泡が残っていない。その結果として、漏れ電流も少なくなる。
図8(B)に示すように、伝熱層102の表面には細かい模様125が観察されることがある。模様125は例えばベナールセルに類似している。
図8(B)は、未硬化組成物114が、熱硬化して伝熱層102を構成する際に、熱硬化性樹脂129が対流(例えばベナール対流等の熱対流)する様子を説明する断面図である。
図8(B)における矢印115は、未硬化組成物114(伝熱層102として図示している部分に相当する)に含まれる熱硬化性樹脂129が、加熱時に急激に低粘度化し、無機フィラ126の隙間を対流する様子を模式的に示している。なお熱硬化性樹脂129として、結晶性エポキシ樹脂を用いることは有用である。結晶性エポキシ樹脂は、融点(あるいは結晶化温度)を超えると、極めて低粘度な液状に変化するため、熱対流しやすい。なお図8(B)は模式図であり、正確ではない。そのため、伝熱層102の表面123に、模様125やベナールセルが観察されない場合がある。
つぎにベナール対流について説明する。ベナール対流とは、1900年にフランスのベナール(Henri Bernard)が発見した現象である。この現象では、粘性の高い流動層の下面を加熱すると、加熱された流体は浮力によって上昇し、流体内部、さらにはその表面123に、細胞状の模様125(流体セル)が発生する。
次にベナール対流によって、伝熱層102の表面層127、表面123や、内部にボイドが発生しにくい、あるいは表層や内部に残っていたボイドがベナール対流等により消失するメカニズムについて説明する。
発明者らは、数百種類に渡る様々な未硬化組成物114について、さまざまな実験を行なった。すなわち未硬化組成物114を加熱し熱硬化するまで、その表面123を観察した。そして未硬化組成物114に含まれる硬化前の熱硬化性樹脂129が、含有率が66Vol%以上の無機フィラ126を主体とする伝熱層102を形成する際に、積極的にベナール対流することで、伝熱層102中のボイドが激減することを見出した。なお表面層127の流動性を高くする、あるいは熱硬化条件によっては、伝熱層102の表面123に、ベナール対流等の痕跡が見つけにくいことがある。
なお未硬化組成物114に含まれている、熱硬化する前の熱硬化性樹脂129には、結晶性エポキシ樹脂成分(結晶性エポキシモノマー等に代表される、熱硬化する前の状態の結晶性エポキシ樹脂)が含まれていることが望ましい。
そして硬化前の未硬化組成物114は、結晶性エポキシモノマー等に代表される、熱硬化する前の状態の結晶性エポキシ樹脂を含んでいる。熱硬化する前の結晶性エポキシ樹脂は、その結晶化温度未満(あるいは融点未満)では固体状態であるが、結晶化温度以上(あるいは融点以上)で水のような低粘度の液体状態となる。このように熱硬化する前の結晶化エポキシ樹脂(あるいは熱硬化によって、結晶性エポキシ樹脂を形成する樹脂部材)は結晶状態では安定した固体として存在するが、融点に達するとともに速やかに結晶状態が溶け、極めて低粘度の液体に変化する。
そのため未硬化組成物114に含まれる、硬化前の結晶性エポキシ樹脂は、未硬化組成物114の加熱途中に、結晶化温度を超え、水のような低粘度の液体状態となる。そして、この低粘度化した、液体状態の結晶性エポキシ樹脂成分(未硬化状態)が、加熱によっても粘度が低下しにくい非晶質のエポキシ樹脂成分を溶解する。こうして低粘度化した熱硬化性樹脂129(すなわち、硬化する前の熱硬化性樹脂129)は、その流動性を高め、内部で積極的にベナール対流、あるいはそれに類似した対流を発生させる。そして最後に、結晶性エポキシ樹脂となる成分や、非晶質エポキシ樹脂成分が、熱硬化し、対流が終息する。
そしてこのベナール等の対流によって、無機フィラ126の粒子がそれぞれ、互いにより安定した位置に移動し、互いに無機フィラ126どうしが緻密に密着し、充填密度が高くなる。更に無機フィラ126の粒子間の狭い隙間にも低粘度化した熱硬化性樹脂129は浸透し、各種部材の表面を積極的に濡らす。
このようにして無機フィラ126の表面や周囲に残った気泡やボイドも、このベナール対流等によって短時間に外部に排出させることができる。このようにベナール対流によってボイドが少なくなると共に、無機フィラ126の充填率が増加する。また伝熱層102の表面123が滑らかになる。
なお硬化前の結晶性エポキシ樹脂は、室温(例えば25℃)では、安定した固体として存在する。そのため秤量等の作業をしやすい。
一般的に、硬化前のエポキシ樹脂成分の分子量と粘度との間には相関関係がある。そのためエポキシ樹脂成分を低粘度化させるためには、一般的に分子量を小さくする。しかしながら、エポキシ樹脂成分の分子量を小さくすると、軟化点も低下するため、常温(例えば、20℃〜30℃)での取扱い性が低下する。また低粘度化させたエポキシ樹脂の硬化物のTg(ガラス転移温度)は、低下してしまう。そのため、硬化前であっても室温で固体である結晶性エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
以上のように、伝熱層102は、少なくとも熱硬化性樹脂129と、無機フィラ126と、からなる。そして無機フィラ126の含有率が66Vol%以上が望ましい。また表面123に、厚み20μm以下で、熱硬化性樹脂129を主体とした表面層127が設けられている。この構成により、伝熱層102の内部や表面123におけるボイドの発生を抑制することができる。また、伝熱層102における無機フィラ126の高充填化が可能となり、熱伝導性を高めることができる。さらに、伝熱層102の成形性や取り扱いの利便性を大幅に改善することができる。
なお熱対流を発生させた結果として、ベナールセルが発生することが望ましいが、表面123の細かい凸部がベナールセルかどうかの見分けが難しい場合もある。しかし少なくとも、熱伝導性材料を加熱した際に発生する対流に起因するものであれば、ベナールセルの一種である。
無機フィラ126としては、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種類を用いることが望ましい。このような熱伝導性の高い材料を無機フィラ126として用いることで、伝熱層102の熱伝導性をさらに高めることができる。また絶縁性等の観点からもこれらの材料が好ましい。また、これらの材料を組み合わせることも可能である。
また無機フィラ126の平均粒径は、0.1μm以上、100μm以下の範囲が望ましい。平均粒径が0.1μm未満の場合、比表面積が大きくなり、未硬化組成物114の混練が難しくなり、伝熱層102の成形性にも影響を与える場合がある。また100μmを超えると、伝熱層102の薄層化が難しくなり、放熱基板101としての放熱性に影響を与え、製品の小型化に影響を与える可能性がある。なお無機フィラ126の充填率を増加するために、異なる粒度分布を有する複数種の無機フィラ126を選び、これらを混合して使用してもよい。
図9は、伝熱層102の表面付近の断面を説明する模式図である。122は点線である。伝熱層102は、無機フィラ126の含有率の高い主要部128(例えば、無機フィラ126が自重で沈殿してなる部分)と、無機フィラ126の含有率の低い表面層127(例えば、上澄み部分)と、から構成されていることが判る。点線122は、主要部128と表面層127との境界部分を示すが、実際に境界や界面が存在する訳ではない。これは主要部128を構成する熱硬化性樹脂129が、対流して表面層127として内部より染み出したものであるからである。また界面が存在しないことによって、界面の存在に起因する課題が発生しないため、その信頼性が高くなる。
表面層127は、伝熱層102の表面に形成された、厚み20μm以下、望ましくは10μm以下、さらに望ましくは5μm以下の熱硬化性樹脂129を主体とした層状部分である。本実施例では、表面層127を伝熱層102の表面付近に積極的に設けている。なお表面層127の厚みが、20μmを超える場合、この上に固定する発熱部品への熱伝導を阻害する可能性がある。
また伝熱層102全体における無機フィラ126の含有率は、66Vol%以上、90Vol%以下が望ましい。Vol%は、体積の百分率を意味する。66Vol%未満の場合、成形性等は優れているが、熱伝導率が低い場合がある。
なお無機フィラ126の表面の98%以上を熱硬化性樹脂129で覆うことでその熱伝導率を、1W/m・K以上とすることができる。無機フィラ126の表面の98%未満しか熱硬化性樹脂129で覆われていない場合、熱伝導率が低くなる場合がある。あるいは所定の強度が得られない場合がある。
上記のように、無機フィラ126の表面の98%以上が熱硬化性樹脂129で覆われると共に、伝熱層102の表層に、熱硬化性樹脂129を主体とする表面層127が存在することが好ましい。これにより無機フィラ126と熱硬化性樹脂129との界面に沿って、電流が流れることを防止するため、耐電圧特性が低下しにくい。
また無機フィラ126の表面を覆う熱硬化性樹脂129の一部を、伝熱層102の表面に表面層127として設けることが好ましい。これにより、伝熱層102の曲げ強度を高めることができ、また伝熱層102を曲げても、クラックが発生しにくくなる。
なお、無機フィラ126と熱硬化性樹脂129の混合物を硬化させて、主要部128に相当する下地層を形成後、別に用意した熱硬化性樹脂129を薄く塗布して、硬化させ、表面層127に相当する樹脂層を形成することもできる。しかしながらこのようにして伝熱層102に似た構造を作製しても優れた放熱効果が発揮されない。また下地層と樹脂層との界面で剥離等が発生する可能性がある。
このように、主要部128に含まれるエポキシ樹脂(あるいは熱硬化性樹脂129等)と、表面層127に含まれるエポキシ樹脂(あるいは熱硬化性樹脂129等)とを、略同じ組成、あるいは略同じエポキシ樹脂組成とすることが望ましい。熱硬化性樹脂129に含まれるエポキシ樹脂を略同じ組成とすることで、図9の点線122に示すような部分に、応力が集中してクラック132等が発生するのを抑制することができる。
なお表面層127が、熱硬化時に無機フィラ126の隙間から染み出したものかどうかは、断面を走査型顕微鏡(SEM)や、顕微鏡を使ったFTIR等の分析装置で解析すれば判断することは容易である。このように無機フィラ126の隙間から熱硬化性樹脂129が染み出して、あるいは対流して表面層127が形成されていれば、無機フィラ126の隙間を充填する熱硬化性樹脂129と、表面層127を構成する熱硬化性樹脂129とが、実質的に同一材料となる。また互いの間に接続面あるいは界面が存在しない、あるいは分析しても見つからない。このように接続面あるいは界面が、通常の分析方法で検出できない状態を、以下染み出した状態として表現する。
なお表面層127における無機フィラ126の含有率は、40Vol%以下が望ましい。より望ましくは30Vol%以下、さらに望ましくは20Vol%以下である。このように、表面層127における無機フィラ126の含有率を低くし、熱硬化性樹脂129を主体とする。さらには伝熱層102の厚み方向に積極的に、無機フィラ126の濃度分布の勾配を設ける。例えば、表層側は無機フィラ126の含有率は小さく、内層側は無機フィラ126の含有率が66Vol%以上と高くなるようにする。このようにして表面層127に熱伝導性接着剤等で固定する発熱部品の固定性と、伝熱層102の熱伝導性とを共に高めることができる。
また伝熱層102や、伝熱層102を用いて作製した放熱基板101は、共に信頼性が高く、プレッシャークッカー試験にも対応できる。また放熱基板101を形成する金属板108側にプレッシャークッカーによる影響が発生した場合でも、伝熱層102側にはプレッシャークッカーによる影響が発生しにくくなる。これは伝熱層102の表面が表面層127で保護されているためであり、更に主要部128と金属板108との界面が、熱硬化性樹脂129で良く濡れるためである。なおプレッシャークッカー試験とは、樹脂封止された電子部品等の耐湿性の試験法の一つであり、IEC 68−2−66等で規格化されている。なおIECとは、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)の意味である。
(実施例5)
実施例5では、未硬化組成物114について説明する。
次に、未硬化組成物114を構成する部材である、結晶性エポキシ樹脂のモノマーおよび硬化剤について(一般式1)〜(式8)を用いて個別に説明する。
(一般式1)、(式3)〜(式8)は、結晶性エポキシモノマーの一例を示す構造式を示す。(一般式1)において、XはS(硫黄)もしくはO(酸素)、CH(メチレン基)、なし(単結合すなわち直接結合)である。またR1、R2、R3、R4はCH、H、t−Bu(3級ブチル基)等である。またR1〜R4は同じであってもよい。すなわち(式4)〜(式8)の化合物は(一般式1)の具体例である。このエポキシ基を有するモノマーを主剤ともいう。なお(一般式1)の構造を有していてもR1、R2、R3、R4の大きさによる立体障害によって結晶性でないエポキシモノマーもある。例えばXが単結合、R1、R2、R3、R4が全てCHの場合は非晶質になる。このようなエポキシモノマーは本発明における結晶性エポキシ樹脂には該当しない。
なお結晶性エポキシモノマーは、互いに自己配列することで、結晶性を発現させる。この自己配列には、(一般式1)や(式4)に示すようにフェニル基−フェニル基からなるメソゲン構造を活用することが有用である。
なお硬化後の熱硬化性樹脂129における結晶性エポキシ樹脂の結晶化状態を調べるには、サンプル表面の樹脂部分だけを壊すことなく極めて薄く切り出して偏光顕微鏡等で評価することが有用である。また示差走査熱量測定(DSC)も有用である。DSCを用いた場合、熱硬化性樹脂129に含まれる結晶性エポキシ樹脂の量は、重量%(あるいはwt%)で測定される。しかしながら、このデータを体積%(あるいはVol%)に変換することは有用である。これは、用いる結晶性エポキシモノマーの分子量が種類によって異なるからである。また未硬化状態において、結晶性エポキシ樹脂(結晶性エポキシモノマー)を抽出するには、遠心分離等の分離手法が有用である。
(式2)は、結晶性エポキシ樹脂の硬化に用いる硬化剤の構造式である。Xは、S(硫黄)、O(酸素)もしくは単結合である。(一般式1)や(式3)のモノマーと、(式2)の硬化剤を混合し、重合したものを結晶性エポキシ樹脂と呼んでもよい。
なお主剤と硬化剤の割合は、エポキシ当量から計算する。「エポキシ当量」とは、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1g当量あたりの「エポキシ樹脂」の重量(g数)である。例えば、分子構造が既知のエポキシ樹脂の場合、そのエポキシ樹脂の分子量を、1分子のそのエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数で除することで算出できる。また必要に応じて、塩酸−ジオキサン法等を用いる測定によって「エポキシ当量」を決定することができる。JIS K7236「エポキシ樹脂のエポキシ当量試験方法」を参考にすることは有用である。
また硬化剤として(式2)以外の硬化剤を使ってもよい。なお具体的な結晶性エポキシモノマーとしては、例えば(式3)〜(式8)に示したものを使うことができる。(式3)〜(式8)に示すモノマーの融点は50〜120℃程度で、さらに溶解粘度も低い。例えば、150℃における粘度は6〜20mPa・sである。そのため、無機フィラ126と混合し、分散させやすい。
次に主剤における結晶性エポキシモノマーの好ましい比率について説明する。主剤における結晶性エポキシモノマーの体積比率は、5Vol%以上、100Vol%以下の範囲内が望ましい。さらに望ましくは、10Vol%以上、93Vol%以下の範囲である。結晶性エポキシモノマーの割合が、5Vol%以上とすることで、伝熱層102の表面123を滑らかにすることができる。一方、5Vol%未満の場合、熱硬化時の低粘度化効果が得られない場合がある。また結晶性エポキシモノマーの割合が93Vol%を超える場合、熱硬化時に低粘度化しすぎて、滲んだり、伝熱層102としての形状の保持性に影響を与えたりする可能性がある。また主剤の全体に対して、結晶性エポキシモノマーは40Vol%以上含有されている事がさらに望ましい。この範囲であれば結晶性が発現しやすい。
なお上述のように、必要に応じて、他の添加物を加えることができる。例えば可塑剤、酸アミド類、エステル類、パラフィン類などの離型剤、ニトリルゴム、ブタジエンゴム等の応力緩和剤、リン酸エステル、メラミン等の有機系難燃剤、五酸化アンチモン、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、酸化錫、メタ硼酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機系難燃剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤、染料や顔料等の着色剤、ガラス繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイト繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維などの有機系繊維、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、他の各種の樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤等を配合することもできる。
なお、熱可塑樹脂を添加することで、結晶性エポキシ樹脂の耐衝撃性を向上させることができる。熱可塑樹脂の添加については結晶性エポキシ樹脂の構造に起因する制約がある。熱伝導率と耐衝撃性の両立を実現するためには、主剤と硬化剤の合計の100体積部に対して0.3体積部以上、5.0体積部以下の熱可塑樹脂の量が望ましい。熱可塑樹脂としてはアクリル樹脂等を用いることができ、特にコアシェル型のアクリル樹脂を配合すると耐衝撃性が向上する。ここでコアシェルとは、例えばアクリル樹脂等の熱可塑樹脂からなるコア層を他の樹脂(例えばガラス状ポリマーやエポキシ樹脂等)からなるシェル層で被覆した真珠状微粒子である。なお用途に応じて多層構造としてもよい。なお一次粒子径は0.05〜1.00μmの範囲(望ましくは0.1〜0.5μm)のものを使うことで分散性を高められる。なお二次凝集体を構成していても、二軸混練機等を用いることで容易に分散できる。これはコアシェル構造のためである。
なおコアは、例えばアクリルモノマーの単独重合体あるいは共重合体からなる低いTg(望ましくは50℃以下、さらには0℃以下)を有する熱可塑樹脂とする。これは未硬化組成物114の内部、あるいは伝熱層102の内部で応力の集中点として働き、耐衝撃性の向上や応力緩和を行うためである。
なおコアシェル型のポリマーを用いた場合は、コア部分に熱可塑樹脂の一種としてゴム状樹脂を用いてもよい。これは一次粒子径が1.00μm以下の微粒子状態では、架橋しているゴム状樹脂であっても、架橋していない熱可塑性樹脂であっても、実質的に同様に働き、耐衝撃性を向上させたり応力を緩和したりするためである。このため熱可塑性樹脂はゴム状樹脂(架橋樹脂)であってもよい。
なおシェルのTgは高く設定する。望ましくは100℃以上、さらには150℃以上が好ましい。これは粒子同士の融着の制限や、エポキシ樹脂(結晶性エポキシ樹脂を含む)や硬化剤等への相溶性、分散性を高めるためである。
なお未硬化組成物114中に添加したアクリル樹脂等の熱可塑樹脂は、アセトン等で抽出可能な状態で添加することが望ましい。これは未硬化組成物114の中に、こうした耐衝撃性を向上させる樹脂を、例えば海島構造に分散(あるいは点在、あるいは分散)させることで、耐衝撃性を高めるためである。そしてこのような海島構造とすることで、アセトン等で抽出でき、熱可塑樹脂が海島構造で分散していることが確かめられる。なお抽出にあたっては、サンプルを粉砕することで熱可塑樹脂等の検出精度を高められる。
なおアクリル樹脂等の熱可塑樹脂が、抽出できない状態で未硬化組成物114の中に存在していた場合は、アセトン等を用いても抽出することが難しい。例えば、エポキシ樹脂と反応した、あるいはエポキシ樹脂の中に溶解した、あるいはエポキシ樹脂の中に分子状態で分散した状態である。このような状態で未硬化組成物114の中に熱可塑樹脂が溶解した場合、耐衝撃性の向上効果が得られない。これはエポキシ樹脂と熱可塑樹脂との間に界面(あるいは応力集中)が発生しないためである。
なお抽出量は、抽出用のサンプルの状態(粉砕状態等)に依存するため、サンプル中の全樹脂において熱可塑樹脂の割合の痕跡、例えば、0.1Vol%以上、望ましくは1Vol%以上とする。これは抽出で熱可塑樹脂の絶対値の判断が難しい場合があるためである。
次に未硬化組成物114の調製方法について説明する。まず結晶性エポキシモノマーと非晶質エポキシモノマーと硬化剤と熱可塑樹脂と無機フィラ126とを配合比に従って秤量し混合する。
混練装置としては、市販の加熱混練装置や二軸混練機を使う。例えば、プラネタリーミキサーやニーダー、あるいは株式会社東洋精機製作所のラボプラストミルなどを使用する。なお混練装置の内部には、攪拌羽根としてΣ型、Z型等の攪拌羽根をつけてもよい。また羽根以外の形状を用いることもできる。また混練装置はヒーター等で所定温度に加熱できるものを用いることが望ましい。混練装置を加熱することで、室温では固体状態であった材料を溶解(あるいは液化)できるため他の部材との親和性を高められる。
なおモノマーの温度を、その溶解温度以上(例えば50〜200℃)の範囲とすることで、熱可塑樹脂を含んだ硬化性樹脂の溶融粘度を低く保ち、無機フィラ126の樹脂への均一分散を可能にすることができる。
なおこれら部材が液化状態を保てる最低温度以上、例えば100℃以上とすることが望ましい。そしてこの最低液化温度以上で、混練することで、均一化させやすい。
なお硬化剤を添加する際に、混練装置あるいはその中にセットした材料の温度を下げておくことで、添加後の熱硬化反応あるいは経時変化を抑えることもできる。このようにして、未硬化組成物114を作製する。
なお無機フィラ126と硬化性樹脂合計における比率において、無機フィラ126は66Vol%以上、90Vol%以下の範囲が望ましい。すなわち、硬化性樹脂は5Vol%未満、34Vol%未満の範囲が望ましい。さらに、無機フィラ126は70Vol%以上、90Vol%以下で、樹脂成分は12Vol%以上、30Vol%以下の範囲が望ましい。ここで硬化性樹脂とは、結晶性エポキシモノマーを含む主剤と硬化剤との合計を意味する。
無機フィラ126の割合が66Vol%未満の場合、未硬化組成物114が硬化してなる伝熱層102の熱伝導率が低下する場合がある。また無機フィラ126の割合が96Vol%より大きくなると、熱硬化性樹脂129の成形性に影響を与える場合がある。
以上のように、未硬化組成物114として、硬化性樹脂と、割れやすさを低減するために添加した熱可塑樹脂と、無機フィラ126とで構成することができる。硬化性樹脂は主剤と硬化剤とを含む。主剤は結晶性エポキシモノマーを5Vol%以上、100Vol%以下含有する。熱可塑樹脂は硬化性樹脂に対して0.3体積部以上、5.0体積部以下の範囲で添加されている。無機フィラ126は未硬化組成物114全体の中で66Vol%以上、90Vol%以下の範囲で含有されている。このような組成の未硬化組成物114を用いることで、伝熱層102の放熱性と耐衝撃性を高めることができる。
また主剤と硬化剤を反応させ硬化した熱硬化性樹脂129が結晶性を有することで、その熱伝導率を高めることができる。
また(式2)に示すように、硬化剤が2つのOH基またはNH基を有していることで、主剤に含まれるエポキシモノマーとの反応性を有する。なお、OH基とNH基を1分子に2つずつ有していてもよい。さらには結晶化の促進も可能になる。そのため、伝熱層102の熱伝導率を高め、放熱基板101における放熱性を高めることができる。
(実施例6)
また必要に応じて、無機系の難燃剤を添加する方法が知られている。しかし有機系の難燃剤として、構造的に大きく異なる樹脂を配合すると結晶化が阻害されるため添加量が制限される。そのため、結晶性を保ったまま難燃化が達成できない。また、無機系の難燃剤の場合、難燃剤の熱伝導率が低いため、量を多くすると熱伝導率が低下する。
ここでは、結晶性樹脂の硬くて脆い、また、燃えやすいという課題を解決し、結晶性樹脂を用いた放熱基板101に高熱伝導性と丈夫さを両立し、未硬化組成物114に難燃性を付与する方法を説明する。
具体的には、樹脂成分に難燃性エポキシ樹脂を添加し、無機フィラ126に難燃助剤フィラを添加する。より詳細には、結晶性エポキシモノマーを5Vol%以上、100Vol%以下含有する主剤と、硬化剤とで構成される硬化性樹脂の100体積部に、3体積部以上、15体積部以下の難燃性エポキシモノマーを添加する。そして硬化性樹脂と難燃性エポキシモノマーの混合物に無機フィラ126と難燃助剤フィラとを配合して未硬化組成物114を調製する。未硬化組成物114における無機フィラ126の体積比は66Vol%以上、90Vol%以下とする。難燃助剤フィラは硬化性樹脂の100体積部に対して0.6体積部以上、3.5体積部以下添加する。
このように難燃性エポキシと難燃助剤フィラを、結晶化が崩れない割合で添加することで難燃性を付与し、高い熱伝導率を維持したまま伝熱層102の難燃性を向上することができる。
また、硬化性樹脂に対する難燃助剤フィラの添加比率は0.6体積部以上、3.5体積部以下が望ましい。難燃助剤フィラの熱伝導率が低いため、3.5体積部より多い場合は、熱伝導率の低下が激しい。また、0.6体積部未満では難燃性を付与することができなくなる。難燃助剤フィラとしては、水酸化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物、モリブデン化合物、金属酸化物塩などを用いることができる。特に三酸化アンチモン(AntimonyTrioxide)は難燃性の効果が大きく望ましい。三酸化アンチモンの粒径は小さい方がよく、0.1〜20μmが望ましい。さらに好ましくは0.3〜10.0μmである。0.1μmより小さい場合は、高価であり未硬化組成物114への分散が難しい場合がある。また粒径が20μmを超えた場合、伝熱層102の表面123が粗面化し、リードフレーム103との密着性に影響を与える可能性がある。
なお三酸化アンチモンの粒径は、吸湿性にも影響を与える場合がある。そのため吸湿性が課題となる場合、三酸化アンチモンの粒径が細かいほど、吸湿しやすい。そのため吸湿性が課題となる場合、三酸化アンチモンの粒径は0.1μm以上とすることが望ましい。これは0.1μm未満の細かい三酸化アンチモンは吸湿性が高いためである。
なお三酸化アンチモンの粒径は、無機フィラ126の粒径とマッチングさせ、無機フィラ126の粒径に近い粒径にすることで、エポキシ樹脂等への分散を容易にできる。この場合、複数の異なる粒径の無機フィラ126を組み合わせて用いる場合、小さな粉、あるいは大きな粉のどちらか一方と、粒径を揃えることが望ましい。こうすることで、これら粉体の分散性を高めることができる。大きな粒径は例えば1.0〜10.0μm、小さな粒径は例えば0.2〜0.6μmである。
なお未硬化組成物114において、無機フィラ126の含有率は66Vol%以上90Vol%以下の範囲内が望ましい。すなわち硬化性樹脂や難燃性のエポキシモノマー、分散剤等からなる熱硬化性樹脂129の含有率は10Vol%より多く34Vol%より少ない範囲内とする。無機フィラ126の割合が66Vol%未満の場合、未硬化組成物114が硬化して形成される伝熱層102の熱伝導率が低下する場合がある。また、難燃性にも影響を与える。また無機フィラ126の割合が90Vol%より大きくなる(さらに96Vol%を超えると)と、伝熱層102の成形性や表面性が低下し、耐電圧特性が低下する場合がある。
以上のような組成に未硬化組成物114を調製することで、高熱伝導化と難燃化を実現することができる。なお難燃性エポキシモノマーとして臭素化エポキシを用いることで、未硬化組成物114、あるいは伝熱層102、これら部材を用いた放熱基板101等における高熱伝導化と難燃化を実現することができる。なお臭素化エポキシ樹脂は、分子量を選定することで他の樹脂との相溶性に優れブリードアウトを減らすことができる。ブリードアウトとは、未硬化組成物114中の各種添加物が経時変化によって凝集し表面123に粉化する現象や、硬化物の周囲に発生する低分子樹脂や溶剤の「染み出し」等の現象である。特にブリードアウトを減らすことで、放熱性や難燃化を高められる。
また硬化剤が、2つのOH基及び/またはNH基を有していることで、未硬化組成物114の反応性や硬化性、あるいは難燃化材等とのマッチングを改善し、高熱伝導化と難燃化を両立することができる。
(実施例7)
次に、特に高熱伝導率と、高い難燃性と、耐衝撃性との両立について説明する。
従来の結晶性樹脂は、結晶性樹脂特有の特性(硬くて脆い、欠けやすい、割れやすい、燃えやすい等)のため、放熱基板101用の用途が限定されている。強度を向上させる方法として、網目構造をとりやすい硬化剤を配合する方法等があるが、結晶性エポキシ樹脂の場合、立体的な結合を作ることで、結晶性が阻害され、高い熱伝導率が得られない場合が多い。
さらに結晶性樹脂は金属板108に対する接着力が弱い。あるいは結晶化樹脂の内部や結晶化樹脂と金属板108との界面に応力が集中しやすく、この応力によって結晶化樹脂と金属板108との界面が剥離する場合がある。そのため、放熱基板101を作製した場合、落下試験等の耐衝撃性に課題が残る場合がある。
また難燃性の付加については上述の通りである。したがって結晶性樹脂の硬くて脆い、また、燃えやすいという課題を解決して、高熱伝導性と丈夫さを両立し、難燃性を付与するには、上述の熱可塑性樹脂と難燃性エポキシ樹脂と難燃助剤フィラとを併用する。
具体的には、結晶性エポキシモノマーを5Vol%以上、100Vol%以下含有する主剤と、硬化剤との合計である硬化性樹脂の100体積部に対し、3体積部以上、12体積部以下の難燃性エポキシモノマーを添加する。そして0.3体積部以上、2.5体積部以下の熱可塑性樹脂を添加する。さらにこれらの混合物に無機フィラ126と難燃助剤フィラとを配合して未硬化組成物114を調製する。未硬化組成物114における無機フィラ126の体積比率は66Vol%以上、90Vol%以下とする。難燃助剤フィラは、硬化性樹脂の100体積部に対し、0.6体積部以上、2.5体積部以下添加する。
このように難燃性エポキシモノマーと難燃助剤フィラを結晶化が崩れない割合で添加することで難燃性を付与する。そして結晶化が崩れない割合で熱可塑性樹脂を配合する。これによって部品実装用基板として要求される丈夫さ(割れにくさ等)と高熱伝導性及び難燃性を付与することができる。その結果、高放熱性と丈夫さ・難燃性を両立させることができる。
また未硬化組成物114(あるいは未硬化組成物114が硬化して形成された伝熱層102)に応力が集中しにくくなるため、金属板108との間の密着力も向上する。
(実施例8)
図10(A)は本実施例による伝熱層102の表面123の顕微鏡写真、図10(B)はその模式図である。図11(A)はその伝熱層102の表面123を3次元的に示す斜視図、図11(B)はその模式図である。
図10〜図11の伝熱層102において、無機フィラ126の含有量を70Vol%とした。そして残りの30Vol%は、熱硬化性樹脂129を主体とし、ここに必要に応じて少量の分散剤、難燃剤、着色剤等を添加した。
図10(A)、図10(B)に示すように、倍率150倍で観察すると、伝熱層102の表面123(すなわち表面層127の表面123)は滑らかであり、顕微鏡のピント合わせ用に付けた汚れ130が、表面123に僅かに黒いシミ状に残っている。
図11(A)、(B)は、市販のレーザー顕微鏡(キーエンス製VK−9510)を用い、平面方向で約100μm×約75μm、厚み方向で1.2μmの評価結果を示している。このサンプルの表面123において、一番厚みが高くなっている部分でも、高さが0.8μm程度であることが判る。このように、このサンプルの表面は極めて滑らかである。またこのサンプルの表面の算術平均粗さRaは0.5μm、最大高さRyは0.90μm、Rzは0.53μmであった。また20度光沢は95〜105(n=5)、また60度光沢は100(n=5)であった。
次に、図10、図11に示したサンプルの自由表面が、滑らかになるメカニズムについて説明する。
未硬化組成物114に添加した結晶性エポキシ樹脂は、結晶化温度未満では固体であり、結晶化温度以上で液体となる。即ち、結晶化エポキシ樹脂は結晶状態では安定した固体として存在するが、融点に達するとともに速やかに結晶状態が溶け、極めて低粘度の液体に変化する。そのため発明品の場合、熱硬化するための加熱途中に、結晶化温度を超えることで、熱硬化性樹脂129自体が極めて低粘度の液体と変化する。その結果、熱硬化性樹脂129がフィラの表面を充分に濡らすことが出来る。またフィラとフィラとの間の狭い隙間にも低粘度化した熱硬化性樹脂129が浸透する。この結果、発明品ではフィラと熱硬化性樹脂129との界面、あるいはフィラとフィラとの間、あるいは熱硬化性樹脂129の内部の、気泡(あるいはボイド)を解消することができる。
また低粘度化した熱伝導樹脂が対流した結果、図10、図11等に示したように、改良発明品の表面は、更に一層滑らかとなる。
次に、従来例として、図10(A)〜図11(B)に示したサンプルと同様に、無機フィラ126の含有量を70Vol%とした。そして、残りは硬化性樹脂を主体とし、必要に応じて分散剤、難燃剤、着色剤等を添加した。
従来品に用いた硬化性樹脂は、主剤となる非晶質エポキシモノマーと、硬化剤とを用いて形成した。
図10(A)〜図11(B)と同様に評価した結果を図12(A)〜図13(B)に示す。図12(A)は従来の伝熱層102の表面123の顕微鏡写真、図12(B)はその模式図である。図13(A)はその伝熱層102の表面123を3次元的に示す斜視図、図13(B)はその模式図である。131は突起部、132はクラックであり、クラック132はボイド等も含むものとする。
従来の伝熱層102の表面123には、突起部131や、ボイド132が、無数に存在している。また図12(A)、図12(B)より、試作した従来例の、突起部131の高さは20μm程度、クラック132の深さは10μm程度であることが判る。このように突起部131やクラック132が発生する理由は前述の図8(A)、図8(B)にて説明した対流が、従来品の場合、殆ど発生しない為である。またこのサンプルの表面123の算術平均粗さRaは0.85μm(n=5)、最大高さRyは21.50μm(n=5)、Rzは21.04μm(n=5)であった。また20度光沢は0(n=5)、また60度光沢も0(n=5)であった。
次に、従来品の自由表面が、前述の図12等に示したように、凹凸を有するメカニズムについて説明する。再試作従来品において、熱硬化性樹脂として、非晶質エポキシ樹脂成分を用いており、結晶性エポキシ樹脂は添加していない。
一般的に非晶質のエポキシ樹脂は、分子量分布を持った不定形の固体として得られる。そして不定形な固体状態として得られる樹脂状物は、液体と固体との境が明確ではなく、温度上昇と共に徐々に軟化して、それと共に粘度の高い液体となり、やがて流動性が高くなって低粘度の液体へと変化する。
以上より、従来品の場合、熱硬化するための加熱途中に、熱硬化性樹脂自体の粘度が低下しにくく、熱硬化性樹脂の対流現象が発生しにくく、内部にはボイドが、その表面には突起部や凹部が発生しやすいと思われる。
次に、図14を用いて、本実施例による伝熱層102と従来例の伝熱層3の電気特性について比較した結果を説明する。
図14は、本実施例による伝熱層102と従来例の伝熱層3の漏れ電流の温度特性を、電気特性の一例として示すグラフである。すなわちこの評価では、放熱基板101の耐熱性について、漏れ電流の面から評価している。
ここで測定方法について説明する。まず加熱用の市販のホットプレートを用意する。そしてホットプレートの上に、絶縁性を確保するための耐熱性セラミック基板を載せ、このセラミック基板の上に、電極となる金属板108を載せる。セラミック基板として、例えば、厚さ1〜2mmのアルミナ基板を用いる。そしてこの金属板108の上に、厚み0.4mmで約5cm角の伝熱層102を含む放熱基板101を載せ、この上に漏れ電流測定機から伸びる測定端子を装着する。そして、金属板と、測定端子との間に、4.3kVの電圧を印加し、その時の漏れ電流を測定する。なおサンプルの温度は、ホットプレートによって制御する。表面温度は、サンプルの表面に、熱電対を取付けて測定する。
図14において、「・」のプロットは従来品の測定結果、「◆」のプロットは本実施例によるサンプルの測定結果を示す。図14から明らかなように、従来品の漏れ電流は60℃以下では小さいが、60℃を超えると、漏れ電流が温度上昇に従って大きくなる。そして110℃を超えると漏れ電流がさらに大きくなる。また160℃を超えると急激に漏れ電流が大きくなり、190℃で絶縁が破壊されている。このように従来品では、温度上昇と共に漏れ電流が増加する。
従来品は、前述の図20等に示すように、伝熱層3の表面に無数の凹凸を有している。また伝熱層3とリードフレーム6や基板7との界面には、隙間8や、ボイド5が無数に残っている。更に伝熱層3を構成する無機フィラ1が熱硬化性樹脂2によって充分覆われていない。その結果、従来例では、その厚み方向において、無機フィラ1どうしが単なる物理的接触(あるいは点接触)しているだけである。その結果、温度上昇と共に漏れ電流が急激に増加し、最後には絶縁破壊してしまったと考えられる。
一方、本実施例によるサンプルの漏れ電流は、190℃付近までは極めて小さい。そして200℃付近から温度上昇と共に徐々に漏れ電流が増加し、220℃付近から漏れ電流の増加が大きくなる。それでも、240℃においても絶縁破壊しない。このように、本実施例によるサンプルでは、温度上昇によっても漏れ電流は増加しにくい。すなわち、本実施例によるサンプルは優れた電気的特性を有しているが、これは図8(B)等で説明した理由による。
次に図15を用いて、更に詳しく説明する。図15は、未硬化組成物114に埋め込まれたリードフレーム103や配線基板104の側面や底面で、熱硬化性樹脂129が対流する様子を説明する断面図である。図15において、矢印115は、加熱され、低粘度化した熱硬化性樹脂129が、無機フィラ126の隙間を対流する様子を示す。
図15に示すように、配線基板104の埋め込まれた側面が、凹凸を有する粗面であっても、低粘度化した熱硬化性樹脂129が、その側面の細かい凹凸まで濡らすため、凹凸に残った空気等を除去することができ、配線基板104と未硬化組成物114との密着性を高め、電気絶縁性や密着力を高める。なお配線基板104の側面(いわゆるブレーク面、あるいは切断面)を粗面化することで、未硬化組成物114との密着面積が増加できる。その結果、伝熱層102と配線基板104との密着強度が増加し、漏れ電流も低減する。
(実施例9)
実施例9は、配線基板104の位置決め方法の一例について説明する。
図16(A)〜(D)は、配線基板104と、位置決め用のピン116との位置関係について説明する上面図である。図16において、配線基板104の周囲には、スルーホール107を半分に分割してなる孔(半割り孔と呼ばれることもある。なお半割り孔に番号は付与していない)を有している。
図16に示すように、円筒(あるいは半球状)のピン116や、L字方のピン116を、配線基板104の四隅等に設けることで、高精度な位置決めが可能となる。
またピン116の高さ(あるいは半硬化組成物114への押し込み量)を、配線基板104やリードフレーム103の厚みより小さくすることは有用である。
次に、図17を用いて、隣接する複数のリードフレーム間に、セラミック板、あるいはセラミック棒等を絶縁伝熱材(あるいは絶縁板)として挿入した場合の放熱基板101の一例について説明する。
図17(A)は、リードフレーム103間にセラミック部材を挿入してなる放熱基板101の上面図、図17(B)はその側面を拡大した断面図である。セラミック部材133としては、市販のアルミナ基板、窒化アルミセラミック等の絶縁性を有する高熱伝導材を用いる。
図17(A)に示すように、隣接する複数のリードフレーム103の間に、セラミック基板、セラミック棒等を挿入することで、リードフレーム103を、互いに絶縁した状態で互いを保持することができ、伝熱層102を介した場合より、より効率的な熱的結合を行なうことができる。
図17(B)は、その一例である。図17(B)に示すように、リードフレーム103a、103b、103cと、セラミック部材133とを、互いに1箇所以上(望ましくは1面以上。なお面で接触する方が熱伝導に有用である)で接することが望ましい。これら部材を直接的に接するようにすることで、互いに絶縁を保ったまま熱伝導効率を高めることができ、位置ずれ防止効果も得られる。
図17(B)の矢印115は、発熱部品(図示していない)に発生した熱が、リードフレーム103a、103b、103cの間を、セラミック部材133を介して、広範囲に拡散する(ヒートスプレッドする)様子を示す。そして外部から伝わった熱は、リードフレーム103a、103b、103cを一部分以上埋め込んだ伝熱層102に伝わる。そして伝熱層102に伝わった熱は、金属板108(図示していない)を介して、機器のシャーシ(図示していない)等に伝わる。またリードフレーム103a、103b、103cの間に、伝熱層102より高熱伝導性を有するセラミック部材133を挿入することで、矢印115に示すようにヒートスプレッド性を高める。またこのセラミック部材133から、伝熱層102への熱伝導性も優れている。
以上のように、リードフレーム103と、配線基板104とを、共に伝熱層102に埋め込むことによって、リードフレーム103と伝熱層102の接触面積を増加でき、放熱性を高めることができる。またこれらを埋め込むことで、伝熱層102の表面123に突き出すリードフレーム103の厚みを小さくすることもできる。こうしてリードフレーム103に、例えば肉厚0.3mmのリードフレーム103を用いた場合でも、伝熱層102に埋め込むことで、伝熱層102からのリードフレーム103の突き出し量(あるいは段差)を50μm以下に抑える。望ましくは20μm以下、さらには10μm以下に抑える。こうして突き出し量を抑えることで、リードフレーム103の上に形成するソルダーレジスト(図示していない)の形成が容易となり、ソルダーレジストの膜厚も薄層、均一化でき、放熱基板101の放熱性が高まる。
こうして発熱部品を冷却することで、発熱部品の効率を向上し、高寿命化、高信頼性化が可能となる。例えばLEDの場合、光量が増加する。あるいは電源回路の効率が向上する。また小型化も可能となる。
またリードフレーム103の一部分以上を伝熱層102に埋め込むことで、リードフレーム103と伝熱層102との接続強度が高まる。そしてリードフレーム103の引張り強度を高めることができる。引張り強度の測定方法については、プリント配線基板104における銅箔の引張り強度評価方法等を参考にすればよい。
放熱基板101を構成するリードフレーム103の一部は、図1に示したように折曲げることが可能であり、必要に応じて他に用意した配線基板104(図示していない)に接続したり、リード線を巻きつけ半田付けしたり、圧着端子を用いることができる。
なお実施例で作製した放熱基板101は、未硬化組成物114の熱硬化に伴う反りやうねりは殆ど発生しない。反りやうねりは、例えば、金属板108と未硬化組成物114との熱膨張係数の差が原因となる。しかしながら例えば、発明者らの実験によると100mm角において50μm以下であった。これは前述したボイド消失メカニズムによって、内部応力の低減や無機フィラ126の高密度充填が実現できたためと考えられる。
なお、放熱基板101の上に設けられた硬化後の伝熱層102の表面123には、無機フィラ126の隙間から、染み出した熱硬化性樹脂129からなる表面層127が形成されている。表面層127は表面123以外に、伝熱層102とその上に固定された配線であるリードフレーム103と、伝熱層102との界面に存在していることは有用である。更に表面粗化した銅箔をリードフレーム103とした場合、この粗化表面123と、伝熱層102との界面に表面層127が存在していることも同様である。
また未硬化組成物114の上に、粗面化した銅箔等を配線として固定し、未硬化組成物114を硬化し、銅箔と一体化した場合も、銅箔と硬化後の伝熱層102との界面に、表面層127が形成されることが望ましい。また銅箔の一部をエッチング等で除去した場合、伝熱層102の表面123に、銅箔を固定していた表面層127がそのまま残る。こうして表面123に露出した表面層127の表面123には、銅箔、あるいは銅箔表面123に設けた粗化面の表面123形状が、そのままレプリカのように転写される。この場合でも表面層127が、伝熱層102の信頼性を高める。
(実施例10)
次に、本発明の実施例10を用いて放熱基板101に用いる各種部材について説明する。
なおリードフレーム103からなる配線を、銅箔からなる配線としても良い。放熱基板101の用途に応じて、銅箔とリードフレーム103とを使い分けることができる。伝熱層102に埋め込まれる配線(例えば、リードフレーム103)の厚みとして0.002〜0.10mmの範囲が必要な場合は銅箔を用い、0.10〜1.00mmの範囲が必要な場合はリードフレーム103を用いればよい。なおリードフレーム103の部材としては銅を主体としたものを用いることが望ましい。例えばタフピッチ銅や無酸素銅等と呼ばれているものを用いることができる。銅を主体とすることで、高放熱性と低抵抗性を両立することができる。またリードフレーム103の一部分以上を伝熱層102に埋めることで、放熱基板101におけるリードフレーム103に起因する段差(厚み段差)を低減できる。
(実施例11)
以下に実施例11として、伝熱層102の製造に用いた、未硬化組成物114について説明する。
実施例11として、結晶性エポキシ樹脂を40Vol%以上含有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤との合計に対して3Vol%以上12Vol%以下の難燃性エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤に対して0.3Vol%以上2.5Vol%以下の熱可塑樹脂と、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤と前記難燃性エポキシに対して70Vol%以上88Vol%以下の無機フィラと、前記エポキシ樹脂と前記硬化剤に対して0.6Vol%以上2.5Vol%以下の難燃助剤フィラと、からなる未硬化組成物114、あるいは伝熱層102について実験した結果を示す。
なお未硬化組成物114、あるいは伝熱層102は、少なくとも、結晶性エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂と、無機フィラとを含み、無機フィラ126の含有率が未硬化組成物114、あるいは伝熱層102の66Vol%以上90Vol%以下が望ましいことは言うまでもない。
まず耐衝撃性について評価した結果を、[表1]を用いて説明する。
結晶性エポキシ含有樹脂としてジャパンエポキシレジン製「YL6120H」、エポキシ樹脂として「YX4000H」、硬化剤として、4、4’−ジアミノビフェニル、4、4’−ジハイドロキシビフェニルエーテル、難燃性エポキシ樹脂として日本化薬製臭素化エポキシ「BREN−S」、熱可塑樹脂としてゼオン化成製コアシェルアクリレート共重合体「F351」、無機フィラとしてアルミナ、難燃助剤フィラとして三酸化アンチモンを用意した。
上記の材料と、硬化促進剤として、ジャパンエポキシレジン製「P−200」イミダゾール(アミンアダクト)を混合攪拌し、エポキシ樹脂、硬化剤が融解する温度まで加熱し、2軸混練機を用いて混合した。混合後、各種試験に応じた形状に成形しこれを、図2(A)における未硬化組成物114とした。
そして、図2(A)に示すように、金属板108上に、未硬化組成物114と、市販の多層のガラスエポキシ樹脂基板(厚み0.6mm)、リードフレーム(厚み0.5mm)をセットし、図2(B)に示すようにして、1170℃×5Hourの条件で加熱硬化した。
落下試験用のサンプルは100mm×100mm×1.6mmの形状で作製し、1.5mの高さからコンクリート上に自由落下させた。試料に割れ、ひびが発生するかどうかで、結果を判断した。試料の配合条件はエポキシ樹脂中の結晶性エポキシ樹脂の割合、フィラ量、熱可塑樹脂の割合を変化させて行った。
結晶性エポキシ樹脂、フィラの割合は多くなるほど割れやすくなる傾向があり、熱可塑樹脂を加えることで耐衝撃性が向上する(熱伝導率的には低下する)。[表1]に結果を示す。
熱可塑樹脂を0.3%以上加えることで耐衝撃性が向上できる。
なお未硬化組成物114中に添加したアクリル樹脂等の熱可塑樹脂は、アセトン等で抽出可能な状態で添加することが望ましい。これは熱伝導樹脂の中に、こうした耐衝撃性を向上させる樹脂を、例えば海島構造に分散(あるいは点在、あるいは分散)させることで、耐衝撃性を高めるためである。そしてこのような海島構造とすることで、アセトン等で抽出でき、熱可塑樹脂が海島構造で分散していることが確かめられる。なお抽出にあたっては、サンプルを粉砕することで熱可塑樹脂等の検出精度を高められる。
なおアクリル樹脂等の熱可塑樹脂が、抽出できない状態で未硬化組成物114の中に存在していた場合(例えば、エポキシ樹脂と反応した、あるいはエポキシ樹脂の中に溶解した、あるいはエポキシ樹脂の中に分子状態で分散した)は、アセトン等を用いても抽出することが難しい。そしてこのような状態で未硬化組成物114の中に熱可塑樹脂が溶解した場合、耐衝撃性の向上効果が得られない。これはエポキシ樹脂と熱可塑樹脂との間に界面(あるいは応力集中)が発生しないためである。
なお抽出量は、抽出用のサンプルの状態(粉砕状態等)に依存するため、サンプル中の全樹脂に対する熱可塑樹脂の割合の痕跡(例えば、0.1%以上、望ましくは1%以上)とする。これは抽出で熱可塑樹脂の絶対値の判断が難しい場合があるためである。
次に難燃化について評価した結果を、[表2]を用いて説明する。
難燃性試験用として、サンプル1:124±5mm×13±0.5mm×1.6mm、サンプル2:124±5mm×13±0.5mm×0.4mmの形状で作製し、UL94の規格に基づく難燃性試験を実施した。
10秒接炎後、炎をはなし、消火までの燃焼時間(t1)を計り、消火後、10秒接炎後、炎をはなし、消火までの燃焼時間(t2)を計った。
試料の配合条件は燃えやすい結晶性エポキシ樹脂が多く、フィラが少ない条件で行い、難燃性エポキシ、難燃助剤フィラの割合を変化させて行った。
難燃性エポキシ、難燃助剤フィラを加えることで難燃性が向上する(熱伝導率的には低下する)。[表2]に結果を示す。
難燃性エポキシを3Vol%以上かつ難燃助剤フィラを0.6Vol%以上混合したときに難燃性を付加できる。
次に熱可塑樹脂を加え、耐衝撃性を向上させた状態での難燃化について評価した結果の一例を、[表3]を用いて説明する。
熱伝導率測定用のサンプルはφ1/2インチ、t1mmの円板状に作製し、ブルカーエイエックスエス社製キセノンレーザーフラッシュを用いて測定を行った。
試料の配合条件は熱伝導率が大きくなる結晶性エポキシ樹脂が多く、フィラが多い条件で行い、熱可塑樹脂、難燃性エポキシ、難燃助剤フィラの割合を変化させて行った。[表3]に熱可塑樹脂の結果を示す。
熱可塑樹脂を加えることで熱伝導率は低下し、3%以上加えたときに、エポキシ樹脂は結晶性を取ることができなくなり、熱伝導率が極端に低下する。
次に難燃性エポキシ樹脂の効果について、[表4]を用いて説明する。
[表4]に難燃性エポキシ樹脂の結果を示す。
3%以上の難燃性エポキシ樹脂が難燃性を付加するために必要だが、難燃性エポキシ樹脂を加えることで熱伝導率は低下し、15%以上加えたときに、エポキシ樹脂は結晶性を取ることができなくなり、熱伝導率が極端に低下する。
次に難燃助剤フィラの効果について、[表5]を用いて説明する。
[表5]に難燃助剤フィラの結果を示す。
0.6%以上の難燃助剤フィラが難燃性を付加するために必要だが、難燃助剤フィラを加えることで熱伝導率は低下(フィラ量が増えるため極端な低下はしない)し、3%以上加えたときに、エポキシ樹脂は結晶性を取ることができなくなり、熱伝導率が極端に低下する。
(実施例12)
実施例12を用いて、実施例1等で説明した伝熱層102中に含まれる無機フィラの含有率の最適化について実験した結果について説明する。
図18は、伝熱層中の無機フィラの体積分率と熱伝導率との関係についての実験結果の一例を説明する図である。図18において、横軸は伝熱層102に含まれる無機フィラの体積分率(単位はVol%)、縦軸は伝熱層の熱伝導率(単位は、W/m・K)である。図18に示すように、伝熱層102に含まれる無機フィラの体積分率が増加するにつれて、熱伝導率が増加する様子を示す。
[表6]に、図18や、実施例1等で説明した伝熱層102に含まれる無機フィラの体積含有率(Vol%)を変化させ、その時に得られた熱伝導率(単位はW/m・K)と、耐電圧特性(4.2kV印加)について、評価した結果の一例を示す。
[表6]に示すように、伝熱層102中に含まれる無機フィラ126の含有率が、90Vol%以下では、所定の耐電圧特性が得られるが、含有率が96Vol%以上では、必要な耐電圧特性が得られない。また無機フィラ126の含有率が、66Vol%未満では、放熱基板として要求される熱伝導率が得られない。
以上より、[表6]の総合評価結果に示すように、伝熱層102に含まれる無機フィラ126の含有率は、66Vol%以上90Vol%以下が、放熱基板101として好適であることが判る。
なお無機フィラ126の含有率はVol%で評価することが望ましい。これは無機フィラ126の比重の影響を抑えるためである。なお無機フィラ126の含有率を上げるには、平均粒径の異なる無機フィラ(例えば、平均粒径10μmと、平均粒径1μm)を混ぜる、あるいは無機フィラの形状を工夫する等、通常の高充填化手法を用いることが有用である。
以上のように、本発明に係る伝熱層とその製造方法によって、放熱性が必要な機器の小型化、低コスト化、高信頼性化が可能となる。そのため、車用のDC−DCコンバータ、照明用の発光ダイオード等の各種機器の小型化、高効率化に貢献できる。
101 放熱基板
102 伝熱層
103 リードフレーム
104 配線基板
105 配線部
106 絶縁部
107 スルーホール
108 金属板
109 充填材
110 凹部
111 孔
112 金型
113 保護フィルム
114 未硬化組成物
115 矢印
116 ピン
117 成形装置
118 光沢度計
119 光源
120 レンズ
121 受光部
122 点線
123 表面
124 表面粗さ計
125 模様
126 無機フィラ
127 表面層
128 主要部
129 熱硬化性樹脂
130 汚れ
131 突起部
132 クラック
133 セラミック部材

Claims (6)

  1. 金属板と、
    この金属板上に設けられたシート状の、結晶性エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂と、無機フィラとを含む伝熱層と、
    この伝熱層に固定された、配線基板と、リードフレームと、
    を有する放熱基板であって、
    前記伝熱層における前記無機フィラの含有率が、66Vol%以上、90Vol%以下であって、
    前記伝熱層の表面には、
    前記配線基板もしくは前記リードフレームのいずれか1つ以上に隣接する凹部を形成した放熱基板。
  2. 金属板と、
    この金属板上に設けられたシート状の、結晶性エポキシ樹脂を含む硬化済の熱硬化性樹脂と、無機フィラとからなる伝熱層と、
    この伝熱層に固定された、リードフレームと、絶縁板と、
    を有する放熱基板であって、
    前記伝熱層における前記無機フィラの含有率が、66Vol%以上、90Vol%以下であって、
    前記絶縁板と前記リードフレームとは一箇所以上で接触している放熱基板。
  3. 前記伝熱層の表面の算術平均粗さRaが3000Å以下もしくは最大高さRy15000Å以下のいずれか1つ以上である請求項1〜2のいずれか1つに記載の放熱基板。
  4. 前記伝熱層の表面の20度光沢が70以上である請求項1〜2のいずれか1つに記載の放熱基板。
  5. 前記無機フィラは、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選ばれた少なくとも1種類以上からなる請求項1〜2のいずれか1つに記載の放熱基板。
  6. 金属板上に、結晶性エポキシ樹脂を含む未硬化状態の熱硬化性樹脂と、無機フィラとを含む未硬化組成物と、リードフレームと、配線基板とを配置する配置工程と、
    前記金属板上で、前記未硬化組成物を加熱し、前記未硬化組成物に前記リードフレームと前記配線基板とを埋め込む、埋め込み工程と、
    少なくとも前記未硬化組成物を、前記結晶性エポキシ樹脂の結晶化温度、あるいは融点のいずれか1つ以上まで加熱して、液体状態とし、前記無機フィラの間を対流させる対流工程と、
    前記未硬化組成物を熱硬化させ、伝熱層とする熱硬化工程と、
    を備える放熱基板の製造方法であって、
    前記無機フィラの含有率が、66Vol%以上、90Vol%以下であり、
    前記リードフレームもしくは前記配線基板のいずれか1つ以上の位置決めにピンを用いる放熱基板の製造方法。
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