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JP2011152647A - 流体噴射装置 - Google Patents

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JP2011152647A JP2010013916A JP2010013916A JP2011152647A JP 2011152647 A JP2011152647 A JP 2011152647A JP 2010013916 A JP2010013916 A JP 2010013916A JP 2010013916 A JP2010013916 A JP 2010013916A JP 2011152647 A JP2011152647 A JP 2011152647A
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Abstract

【課題】 キャップから大気開放弁に繋がるチューブ内に流体が流れ込んでもチューブ内で流体が増粘や固化を起こし難い、流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】プリンター1は、キャップ17の内部とキャップ17の外部の大気とを連通するチューブ30,32と、チューブ32に接続され、キャップ17の内部を、チューブ30,32を介して大気に開放する状態と大気から閉塞する状態とに切り替えることができる大気開放弁33と、チューブ30のキャップ17と大気開放弁33との間の部分を押圧することができるローラー40A,40Bを、該部分を押圧する状態と押圧しない状態とに変位可能とすると共に、ローラー40A,40Bがチューブ30を押圧している状態で、チューブ30の押圧されている部分がキャップ17側から大気開放弁33に向けて移動するようにローラー40A,40Bを移動させることができるチューブポンプ31を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、流体噴射装置に関する。
インクジェットプリンターには、印刷ヘッドのノズル形成面をキャップで封止した状態でキャップ内を負圧とすることにより、ノズル内の増粘したインクを排出させる、いわゆるメンテナンス処理を行うことができる構成を備えるものがある。このようにキャップ内が負圧になっている状態で、キャップをノズル形成面から離間させる際には、キャップの離間に先立ち、キャップ内の大気開放が行われる。この大気開放を行うための構成には次のようなものである。つまり、キャップの内部は、キャップの底面に接続されるチューブを介して大気開放弁に連通されている。したがって、大気開放弁を開放することで、チューブを介してキャップ内が大気開放される(特許文献1、2参照)。一方、メンテナンス処理によりノズルから排出されたインクがキャップに設けられるチューブとの連通口に流れ込むことがある。そして、流れ込んだインクが経時的に増粘や固化をし、連通口が詰まってしまうことがある。かかる問題を解消するため、連通口をインクやクリーニング液で洗浄することで連通口の詰りを防止する手段が、たとえば、特許文献3に開示されている。
特開2003−205632号公報 特開2002−234174号公報 特開平9−240000号公報
しかしながら、連通口をインクで洗浄することによる場合には、インクの使用量が増えるという問題がある。また、クリーニング液により洗浄することによる場合には、クリーニング液の貯留部を備える必要があり、加えて、クリーニング液のコストも嵩むという問題がある。
そこで、本発明は、キャップから大気開放弁に繋がるチューブ内に流れ込んだ流体を洗浄によることなく、チューブ外に排出することができる流体噴射装置を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、流体噴射装置は、流体をノズル形成面に形成される流体噴射ノズルから噴射する流体噴射ヘッドと、ノズル形成面を封止可能なキャップと、キャップに設けられた吸引口からキャップ内の流体を吸引することができる吸引ポンプと、キャップの内部と上記キャップの外部の大気とを連通するチューブと、チューブに接続され、キャップの内部をチューブを介して大気に開放する状態と大気から閉塞する状態とに切り替えることができる大気開放弁と、チューブのキャップと大気開放弁との間の部分を押圧する状態と押圧しない状態とに押圧部を変位させることができる共に、押圧部がチューブを押圧している状態で、押圧部をチューブに沿ってキャップ側から大気開放弁側に向けて移動することができるチューブ押圧手段とを備えることとする。
流体噴射装置をこのように構成することで、チューブ押圧手段によりチューブ内にあるインクをチューブ外に排出することができる。そのため、キャップから大気開放弁に繋がるチューブ内に流れ込んだ流体を洗浄によることなく、チューブ外に排出することができ、チューブ内でのインクの増粘や固化を未然に防ぐごとができる。
上記発明に加えて、流体噴射装置においては、流体噴射ヘッドを2つ以上備えると共に、各流体噴射ヘッド毎に、キャップ、チューブ、およびチューブ押圧手段を有することとしてもよい。
流体噴射ヘッドが2つ以上備えられることで、キャップの周囲に配置される構造物の数が増えたり構造が複雑化し、キャップの近傍に大気開放弁を配置するスペースを確保することができなくなることがある。このような場合には、大気開放弁をキャップから離れた位置に配置せざるを得ず、キャップと大気開放弁とを連通するチューブの長さが長くなってしまう。一方、チューブの長さが長くなるものほど、チューブ内に流体が溜まり易くなる。そこで、各流体噴射ヘッド毎に、キャップ、チューブ、およびチューブ押圧手段を備えることで、キャップと大気開放弁とを連通するチューブの長さが長い場合でも、チューブ内に流れ込んだ流体の排出を行うことができ、チューブ内における流体の増粘や固化を防止することができる。
上記発明に加えて、流体噴射装置においては、流体噴射ヘッドを2つ以上備えると共に、各流体噴射ヘッド毎にキャップが備えられ、チューブは、各キャップに接続される分岐チューブと、複数の分岐チューブが接続される集合チューブとを有し、大気開放弁は、集合チューブに接続され、チューブ押圧手段は、集合チューブに対して備えられることとしてもよい。
流体噴射装置をこのように構成することで、1台のチューブ押圧手段により複数の分岐チューブに対して、分岐チューブ内に流れ込んだインクを上流側から下流側に流すことができ、チューブ押圧手段の台数を減らすことができる。その結果、流体噴射装置の小型化と部品点数の削減を図ることができる。
上記発明に加えて、流体噴射装置においては、流体噴射ヘッドを2つ以上備えると共に、各流体噴射ヘッド毎に、キャップおよびチューブが備えられ、チューブ押圧手段は、少なくとも2つのチューブに対して同時に、押圧する状態と押圧しない状態とに、押圧部を変位させることができると共に、押圧部がチューブを押圧している状態で、押圧部をチューブに沿ってキャップ側から大気開放弁側に向けて移動させることとしてもよい。
流体噴射装置をこのように構成することで、1台のチューブ押圧手段により複数のチューブに対して、チューブ内に流れ込んだインクを上流側から下流側に流すことができ、チューブ押圧手段の台数を減らすことができる。その結果、流体噴射装置の小型化と部品点数の削減を図ることができる。
上記発明に加えて、流体噴射装置においては、チューブ押圧手段の押圧部が、ローラーであることとしてもよい。
流体噴射装置をこのように構成することで、押圧部とチューブとの擦れが少なくなり、チューブが損傷してしまう虞を低減できる。
上記発明に加えて、流体噴射装置においては、チューブまたは集合チューブの、少なくとも、チューブ押圧手段の押圧部が接触する部分で自己潤滑性を有することとしてもよい。
流体噴射装置をこのように構成することで、チューブまたは集合チューブの押圧部と接触する部分の摩耗を低減することができる。
上記発明に加えて、流体噴射装置においては、流体が、白色のインクジェット記録用インク組成物を有することとしてもよい。
白色のインクジェット記録用インク組成物は、粘度が高い傾向にあり、増粘や固化をし易い。したがって、白色のインクジェット記録用インク組成物を有する流体が流れるチューブに対して、チューブ押圧手段を備え、排出処理を行うことができるように構成することで、チューブ内での流体の増粘や固化を効果的に防ぐことができる。
上記発明に加えて、流体噴射装置においては、流体が、着色材と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、ポリアルキレングリコールとを少なくとも含んでなる、インクジェット記録用インク組成物を有することとしてもよい。
着色材と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、ポリアルキレングリコールとを少なくとも含む流体は、高粘度となる。したがって、増粘や固化をし易い。したがって、高粘度の流体が流れるチューブに対して、チューブ押圧手段を備え、排出処理を行うことができるように構成することで、チューブ内での高粘度の流体の増粘や固化を効果的に防ぐごとができる。
本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンターの全体的な概略構成を示す正面視における断面図である。 図1に示すインクジェットプリンターの概略構成を示す平面図である。 図1に示すインクジェットプリンターの概略構成を示す右側面図である。 図1に示すインクジェットプリンターに備えられるキャップ、メンテナンス機構および大気開放機構の構成示す図である。 インクジェットプリンターの電気的構成を示すブロック図である。 インクジェットプリンターの変形例1を示す図である。 インクジェットプリンターの変形例2を示す図である。 インクジェットプリンターの変形例3を示す図である。
(実施の形態)
以下、本発明の流体噴射装置の実施の形態として、流体としてのインクを噴出することができるインクジェットプリンター(以下、単に、プリンターと記載する。)1について、図面を参照しながら説明をする。図1は、プリンター1の概略構成を示す正面視における断面図である。図2は、プリンター1の概略構成を示す平面図である。図3は、プリンター1の内部の一部分の概略構成を示す右側面図である。なお、図1から図3では、インクカートリッジ等のインク供給系を省略している。また、図面において、矢印X方向を前方、矢印Y方向を左方、矢印Z方向を上方として、以下の説明を行うこととする。
図1および図2に示すように、プリンター1は、流体噴射ヘッドとしての複数の印刷ヘッド2が、最大用紙幅全域に亘って配置されている、いわゆるラインプリンターである。本実施の形態では、9つの印刷ヘッド2が左右方向に配列されている例が示されている。つまり、印刷ヘッド2は、ラインヘッド3を構成する単位ヘッドとして備えられている。また、上側が開口する箱状の本体ケース4内には、たとえば、4本(図1では2本のみ図示)の駆動軸5(スクリュー軸)が立設されており、4本の駆動軸5に対してヘッド支持部材6(支持枠)がその四隅のネジ孔にて螺合する状態に支持されている。
ヘッド支持部材6には、印刷ヘッド2が、用紙搬送方向(X方向)と交差する左右方向に沿って配列された状態で支持されている。これら複数個の印刷ヘッド2は、図2に示すように、平面視において、左右方向に沿って、二列の千鳥状に配列されている。本実施の形態では、複数個の印刷ヘッド2が共通のヘッド支持部材6に組み付けられることにより、ラインヘッド3が構成されている。
4本の駆動軸5は同期して回転できるように動力伝達機構(図示せず)を介して連結されており、そのうち1本の駆動軸5が歯車機構7を介して電動モーター8と動力伝達可能な状態に連結されている。よって、電動モーター8が正逆転駆動されることによりラインヘッド3が上下方向に昇降可能となっている。
図1および図2に示すように、ラインヘッド3の下方には、記録媒体(ターゲット)としての用紙Pを搬送するための搬送ユニット9が配設されている。搬送ユニット9は、左右方向が軸方向となる向きで互いに平行に配列された3本のローラー10A,10B,10C(図1では1本のみ図示)と、ローラー10A〜10Cの軸方向に一定の間隔で複数箇所に巻き掛けられた複数本の搬送ベルト11と、ローラー10Aを回転駆動する電動モーター12とを備えている。
つまり、中央1本のローラー10Aが駆動ローラー、前後2本のローラー10B,10Cが従動ローラーとなっており、前側2つのローラー10A,10Bの間に6本の搬送ベルト11が巻き掛けられるとともに、後側の2つのローラー10A,10C間に5本の搬送ベルト11が巻き掛けられている。複数個の印刷ヘッド2は、各搬送ベルト11の隙間と対応する位置にそれぞれ配置されている。
電動モーター12が駆動されて中央のローラー10Aが回転駆動することにより、搬送ベルト11が回転駆動されて、搬送ベルト11上に載った用紙Pが主走査方向前方に搬送される。なお、電動モーター8の正逆転駆動によりラインヘッド3を昇降させることによって、印刷ヘッド2と用紙P(又は搬送ベルト11上面)との間のギャップの調整が可能となっている。
図1に示すように、ラインヘッド3の上方位置には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のインクをそれぞれ収容する4個のインクカートリッジ13A,13B,13C,13Dが配置されている。各インクカートリッジ13A,13B,13C,13Dからのインクは、インク供給チューブ14(1本のみ図示)を通じて各印刷ヘッド2に供給される。
図1に示すように、各印刷ヘッド2の下方には、キャップユニット15がそれぞれ配設されている。キャップユニット15は、印刷ヘッド2の下面に配置されるノズル形成面16(図4参照)を封止するためのキャップ17と、キャップ17を昇降させる昇降機構18等とを備える。昇降機構18は、キャップ17の底面に当接するカム19(回転カム)と、カム19を正逆回転させる動力源としての電動モーター20とを備える。図1では昇降機構18を模式的に描いているが、詳しくは図3に示すように、カム19の回転軸は、歯車機構21を介して電動モーター20の駆動軸と動力伝達可能に連結されている。電動モーター20が正転駆動すると、カム19が図1に示す状態から時計方向へ回転して、キャップ17がノズル形成面16から離間している退避位置(最下降位置)から封止位置(最上昇位置)まで上昇し、一方、キャップ17が封止位置にある状態から電動モーター20が逆転駆動すると、カム19が反時計方向へ回転して、キャップ17が退避位置(最下降位置)まで下降する。
また、図1および図3に示すように、各キャップ17には、印刷ヘッド2に対してメンテナンス処理を行うことができるメンテナンス機構22と、ノズル形成面16を封止状態としているキャップ17内を大気開放することができる大気開放機構23とが備えられている。
次に、図1、図3および図4を参照しながら、メンテナンス機構22と大気開放機構23の構成について説明する。
(メンテナンス機構22)
メンテナンス機構22は、各キャップ17の底面部17A(図4参照)に接続されるチューブ24と、各チューブ24毎に接続され、各キャップ17内に負圧を発生させることができる吸引ポンプ25と、チューブ26を介して吸引ポンプ25に接続される廃インクタンク27とを備えている。チューブ24は、キャップ17の底面部17Aに形成される吸引口としての孔部28を介してキャップ17の内部に連通している。したがって、キャップ17が印刷ヘッド2のノズル形成面16に当接しノズル形成面16を封止した状態の下で、吸引ポンプ25が駆動されることにより、チューブ24を通じてキャップ17内に負圧が発生し、ノズル形成面16に開口するノズル29に吸引力(負圧)が作用する。これにより、ノズル29内の増粘インクやインク中の気泡等を吸引除去するメンテナンス処理が行われる。
吸引ポンプ25により吸引された廃インクは、チューブ24およびチューブ26を介して、廃インクタンク27に排出される。なお、図1では、前方側に配置される5つのキャップ17について備えられるチューブ24および吸引ポンプ25のみを示しているが、他の4つのキャップ17についても同様にチューブ24、チューブ26および吸引ポンプ25が備えられている。
(大気開放機構23)
一方、大気開放機構23は、チューブ30と、チューブポンプ31と、チューブ32と、大気開放弁33とを備える。チューブ30とチューブポンプ31は、各キャップ17毎に備えられ、大気開放弁33については、複数のチューブ30が接続されるチューブ32を介して、各キャップ17に対し共通に備えられている。
チューブ30の一端側は、キャップ17に接続され、他端側は、大気開放弁33に連通するチューブ32に接続されている。チューブ30は、キャップ17の底面部17A(図4参照)に形成される孔部34を介してキャップ17の内部に連通している。したがって、キャップ17がノズル形成面16を封止し、キャップ17内が負圧になっている状態で、大気開放弁33を開放すると、チューブ32およびチューブ30を介してキャップ17内が大気開放される。これにより、キャップ17をノズル形成面16から離間させる際に、ノズル29内に形成されたインクメニスカスを破壊してしまうことを防止することができる。
また、大気開放弁33とキャップ17との間には、各チューブ30毎、すなわち、キャップ17毎に、チューブ押圧手段としてのチューブポンプ31が備えられている。したがって、チューブ30にキャップ17内のインクが流れ込んでも、大気開放弁33を開放した状態で、チューブポンプ31を駆動することで、チューブ30およびチューブ32に流れ込んだインクを大気開放弁33の側に送り排出することができる。チューブ32の大気開放弁33側の先端は、廃インクタンク35に接続され、チューブ32から排出されたインクを受けることができる。なお、図1では、前方側に配置される5つのキャップ17について備えられるチューブ30およびチューブポンプ31のみを示しているが、他の4つのキャップ17についても同様にチューブ30およびチューブポンプ31が備えられている。
なお、プリンター1を使用しない間は、ノズル29内のインクの増粘を防止するため、キャップ17によりノズル形成面16を封止状態とする。その際、大気開放弁38が開放されていると、チューブ30,32を通じてキャップ17内が大気に解放されるためキャップ17内の保湿を行うことができない。そのため、プリンター1を使用しない間、ノズル形成面16を封止状態とする場合には、キャップ17内の保湿状態が損なわれないように、大気開放弁33は閉鎖状態とされる。
(チューブポンプ31)
チューブポンプ31は、円筒状のケース36を有しており、このケース36内には円形状をなすポンプホイール37が収容されている。ポンプホイール37は、ケースの軸心に設けられたホイール軸38を中心に回動可能とされている。そして、このケース36内に、チューブ30の中間部30Aがケース36の内周壁36Aに沿うようにして収容されている。
ポンプホイール37には、一対の外側に膨らむ円弧状をなすローラー案内溝39A,39Bがホイール軸38を挟んで対向するように形成されている。各ローラー案内溝39A,39Bは、一端がポンプホイール37の外周側に位置しており、他端がポンプホイール37の内周側に位置している。すなわち、両ローラー案内溝39A,39Bは、それらの一端から他端に向かうほど、徐々にポンプホイール37の外周部から遠ざかるように延びている。
両ローラー案内溝39A,39B内には、押圧部としての一対のローラー40A,40Bが、それぞれ回転軸41A,41Bを介して挿通支持されている。なお、両回転軸41A,41Bは、それぞれ両ローラー案内溝39A,39B内を摺動自在になっている。
そして、ポンプホイール37を、正方向(矢印方向)に回動させると、両ローラー40A,40Bが両ローラー案内溝39A,39Bの一端側(ポンプホイール37の外周側)に移動し、チューブ30の中間部30Aを上流側(キャップ17側)から下流側(大気開放弁33側)へ順次押し潰しながら(押圧しながら)回動するようになっている。また、ポンプホイール37を、逆方向(矢印逆方向)に回動させると、両ローラー40A,40Bが両ローラー案内溝39A,39Bの他端側(ポンプホイール37の内周側)に移動し、両ローラー40A,40Bによるチューブ30の押圧が解除される。
(電気的構成)
図5は、プリンター1の電気的構成を示す図である。図5に示すように、プリンター1は、制御部42、ヘッドドライバー43およびモータードライバー44,45,46,47,48,49を備えている。制御部42は、ヘッドドライバー43を介して各印刷ヘッド2と接続されている。また、モータードライバー44,45,46,47,48,49はそれぞれ電動モーター8,12,20,50,51,52と接続され、制御部42は、各モータードライバーを介して対応する電動モーターに接続されている。
電動モーター50は、吸引ポンプ25を駆動するものであり、電動モーター51は、チューブポンプ31を駆動するものである。また、電動モーター52は、大気開放弁33の開閉弁の駆動を行うものである。
制御部42は、CPU(Central Processing Unit)53、ASIC(Application Specific IC)54、ROM(Read
Only Memory)55、RAM(Random Access Memory)56およびフラッシュメモリー57を内蔵している。CPU53およびASIC54は、印刷動作、メンテナンス処理、大気開放動作、排出処理等、プリンター1の各種動作・処理の制御を司る。ROM55には、CPU53が実行するための各種プログラムが記憶されている。RAM56は、CPU53が演算結果等のデータを一時記憶するための作業メモリーとして使用される。
(プリンター1の動作)
次に、プリンター1において実行される、メンテナンス処理と、大気開放動作と、チューブ30内のインクの排出処理について説明する。
(メンテナンス処理)
メンテナンス処理は、所定のタイミング、たとえば、印刷を行っている間の所定の時間毎、あるいは、印刷動作の終了後や印刷動作の開始に先立って行われる。制御部42は、メンテナンス処理を行う所定のタイミングが到来すると、先ず、電動モーター20を駆動して、キャップ17を上昇させ、キャップ17によりノズル形成面16を封止する。
ノズル形成面16の封止が行われる際には、制御部42は、チューブポンプ31をローラー案内溝39A,39Bの長さ分だけ逆回転させ、チューブ30の押圧が解除される状態にすると共に、大気開放弁33を閉鎖する。このように、チューブポンプ31によるチューブ30の押圧が解除されていると共に、大気開放弁33が閉鎖され、ノズル形成面16がキャップ17により封止されている状態で、制御部42は、電動モーター50を駆動し、吸引ポンプ25を動作する。
吸引ポンプ25が動作を開始すると、キャップ17内に負圧が発生し、ノズル29内のインクがキャップ17内に吸引される。これにより、ノズル29内で増粘したインクをノズル29外に排出することができる。キャップ17内に排出された廃インクは、吸引ポンプ25の吸引力により、孔部28からチューブ24に吸込まれ、チューブ26から廃インクタンク27に排出される。
制御部42は、吸引ポンプ25の動作を所定時間行った後、吸引ポンプ25の動作を停止する。そして、制御部42は、大気開放弁33を開状態とする。大気開放弁33が開放状態となることで、キャップ17内は、チューブ30,32を介して大気開放される。これにより、キャップ17をノズル形成面16から離間させても、ノズル29内に形成されているインクメニスカスを破壊してしまうことがない。
ところで、キャップ17に排出されたインクの一部は、孔部34から、チューブ30,32内に流れ込むことがある。このインクを放置しておくと、インクがチューブ30,32内で増粘あるいは固化し、大気開放弁33を介したキャップ17と大気との連通を確保することができなくなる。このような状態になると、メンテナンス処理後に大気開放弁33を開放状態としても、キャップ17内を大気開放することができなくなる。そのため、キャップ17がノズル形成面16から離間する際に、ノズル29内のインクメニスカスを破壊してしまう虞がある。
(排出処理)
そこで、プリンター1では、次に説明するチューブ30,32内のインクの排出処理を行う。排出処理は、たとえば、メンテナンス処理に続いて行う。メンテナンス処理に続いて排出処理を行うことで、チューブ30,32内でインクが増粘したり固化してしまう前に、インクの排出を行うことができ、チューブ30,32内でのインクの増粘や固化を未然に防ぐごとができる。特に、インクが顔料系の場合には、粘度が高く増粘や固化がし易い傾向にある。そのため、上述の排出処理を行うことで、チューブ30,32内でのインクの増粘や固化を効果的に防ぐごとができる。
制御部42は、メンテナンス処理の終了に続いて、大気開放弁33を開放し、電動モーター20を駆動してキャップ17をノズル形成面16から離間させる。キャップ17をノズル形成面16から離間させる前に大気開放弁33が開放されることで、キャップ17内の大気開放を行うことができる。そのため、ノズル29内のインクメニスカスを破壊してしまうことを防止できる。また、大気開放弁33が開放されることで、チューブ30,32内にあるインクが廃インクタンク35に排出可能となる。
続いて、制御部42は、チューブポンプ31を正方向に駆動(ポンプホイール37が正方向に回動する方向)する。チューブポンプ31が正方向に駆動すると、ローラー40A,40Bは、ローラー案内溝39A,39Bの一端側(ポンプホイール37の外周側)に移動し、チューブ30の中間部30Aを上流側(キャップ17側)から下流側(大気開放弁33側)へ順次押し潰しながら(押圧しながら)回動する。チューブポンプ31の正方向への駆動は、所定時間、継続して行われる。チューブポンプ31が正方向に駆動することで、メンテナンス処理の際に、キャップ17からチューブ30,32内に流れ込んだインクを上流側から下流側に流すことができ、チューブ30,32内のインクを廃インクタンク35に排出することができる。
チューブポンプ31を駆動させる時間は、たとえば、孔部34付近にあるインクが、チューブ32の廃インクタンク35側の開口部まで移動することができる時間継続させる。この時間の間、チューブポンプ31の駆動を継続させることで、チューブ30,32内のどこにインクが溜まっていても、チューブ30,32から完全に排出させることができる。
また、チューブ32からインクが排出されて来ないことを、プリンター1の操作者が確認し、チューブ30,32内にインクが溜まっていないと判断したときに、図示を省略する操作部を自身で操作し、チューブポンプ31の動作を停止するようにしてもよい。
なお、排出処理は、メンテナンス処理の終了に併せて自動的に開始されることに換えて、操作者が、チューブ30,32内のインクの有無を判断し、その判断に基づいて、図示を省略する操作部から、チューブポンプ31の正方向への駆動をプリンター1に指示するようにしてもよい。
上述したチューブポンプ31は、ローラー40A,40Bが回転軸41A,41Bに対して回転自在に支持される構成となっている。つまり、ローラー40A,40Bは、ポンプホイール37に対して自転可能に取り付けられている。したがって、ポンプホイール37が回転すると、ローラー40A,40Bは、チューブ30に対して回転しながら移動する。
しかしながら、ローラー40A,40Bは、ポンプホイール37に対して自転可能な構成としなくても、チューブ30,32を上流側から下流側に押し潰しながら移動することができ、チューブ30,32内のインクを廃インクタンク35に排出できる。これに対し、ローラー40A,40Bを、ポンプホイール37に対して自転可能な構成とすることで、ローラー40A,40Bとチューブ30との擦れが少なくなり、チューブ30が損傷してしまう虞を低減できる。
また、上述のプリンター1では、チューブポンプ31を、大気開放弁として機能させることもできる。つまり、チューブポンプ31を、チューブ30が押し潰された状態で停止させておくと、チューブ30,32を介したキャップ17の大気との連通を遮断することができる。また、チューブポンプ31が、逆方向に駆動され、チューブ30の押圧を解除することで、チューブ30,32を介してキャップ17が大気開放される。
したがって、メンテナンス処理時に、チューブポンプ31によりチューブ30を押し潰した状態とし、チューブ30,32を介したキャップ17と大気との連通を遮断することができる。また、プリンター1を使用しない間に、キャップ17によりノズル形成面16を封止状態とする際にも、チューブポンプ31を、チューブ30が押し潰された状態で停止させておくことで、キャップ17がチューブ30,32を介して大気開放されないようにすることもできる。
しかしながら、チューブ30が押し潰されている部分にインクが残留している場合には、このインクが増粘あるいは固化し、チューブ30の内面同士が接着してしまう虞がある。このような場合には、チューブポンプ31による押圧力をチューブ30から除いても、チューブ30が押し潰されたままの状態となってしまう。したがって、チューブポンプ31に加えて大気開放弁33を備えていることで、キャップ17と大気との連通が遮断される状態が継続される場合には、大気開放弁33を用いて遮断を行うことができ、チューブ30が押し潰れたままの状態になってしまうことを防ぐことができる。
上述のプリンター1は、印刷ヘッドとして、ラインヘッド3を備える、いわゆるラインプリンターとして構成されている。しかしながら、印刷ヘッド2を単体で備える、いわゆるシリアルプリンターについても、上述の大気開放機構23を備え、キャップ17からチューブ30,32内に流れ込んだインクの排出を行うことができる。
しかしながら、一般に、ラインプリンターであるプリンター1は、ラインヘッド3を構成する単位ヘッドとしての印刷ヘッド2の中で、廃インクタンク35から遠くに配置されるものほど、チューブ30,32の長さが長くなる。そして、チューブ30,32が長くなるほど、チューブ30,32内にインクが溜まり易い。そのため、大気開放機構23を備えることで、ラインプリンターであるプリンター1のチューブ30,32内に流れ込んだインクがチューブ30,32内で増粘や固化してしまうことを防止することができる。
また、ラインプリンターは、複数の印刷ヘッド2を備えるため、一般に、印刷ヘッド2の周囲に印刷ヘッド2を動作させるための多くの機構が配置されている。また、印刷ヘッド2は互いに接近して配置されている。したがって、大気開放弁33と廃インクタンク35を各キャップ17の近傍に配置することが難しい。
そのため、キャップ17から、大気開放弁33および廃インクタンク35までを接続するチューブ30,32を長い設定にせざるを得ない場合がある。このため、チューブ30,32内にインクが溜まり易く、溜まったインクがチューブ30,32内で増粘や固化してしまうことが起こり易い。しかしながら、上述のように、大気開放機構23を備えることで、チューブ30,32内に流れ込んだインクをチューブから排出することができ、チューブ30,32内で増粘や固化してしまうことを防止することができる。
なお、プリンター1では、大気開放弁33を各キャップ17に対して共通に備える構成としているが、各キャップ17毎に大気開放弁33を備える構成としてもよい。しかしながら、このように構成した場合には、大気開放弁33の台数が増えることもあり、さらに、各大気開放弁33を各キャップ17の近傍に配置することが難しくなる。
そのため、キャップ17から離れた位置に大気開放弁33を配置せざるを得なくなる。このような場合であっても、上述のように、大気開放機構23を備えることで、チューブ30,32内に流れ込んだインクをチューブから排出することができ、チューブ30,32内で増粘や固化してしまうことを防止することができる。
なお、チューブ30を、少なくとも、チューブポンプ31のローラー40A,40Bが接触する部分について、四フッ化エチレン樹脂やフッ素含有樹脂等のいわゆる自己潤滑性を有する材質の樹脂で構成してもよい。チューブ30をこのように構成することで、ローラー40A,40Bによる摩耗を低減することができる。
(変形例1)
上述のプリンター1は、キャップ17毎に、チューブポンプ31を備えている。これに対し、図6に示すように、各キャップ17に接続される分岐チューブ58を1本の集合チューブ59に集合させ、この集合チューブ59に、チューブポンプ31および大気開放弁33を備えるようにしてもよい。このように構成することで、チューブポンプ31の台数を減らすことができ、プリンター1の小型化と部品点数の削減を図ることができる。
なお、図6では、9つのキャップ17にそれぞれ接続される分岐チューブ58の全てを、1本の集合チューブ59に接続している。これに対し、たとえば、5つのキャップ17に接続される分岐チューブ58を1本のチューブに集合させ、残りの4つのキャップ17に接続される分岐チューブ58を他の1本のチューブに集合させ、そして、2つの集合チューブを、大気開放弁33に接続される1本のチューブに接続する構成としてもよい。
そして、このように構成した場合には、5つのキャップ17に接続される分岐チューブ58が集合される1本のチューブと、残りの4つのキャップ17に接続される分岐チューブ58が集合される他の1本のチューブとに対して、それぞれチューブポンプ31を備える構成とすることができる。この場合には、1台のチューブポンプ31により9本の分岐チューブ58に対してインクを上流側から下流側に送る力を作用させる場合に比べて、大きな力で、チューブ内のインクを上流側から下流側に送ることができる。
(変形例2)
上述のプリンター1は、チューブ押圧手段として、チューブポンプ31に換えて、図7に示す構成のチューブ押圧機構60を用いてもよい。チューブ押圧機構60は、電気モーター61Aにより回転駆動されるピニオンギア61と、このピニオンギア61に噛み合うラックギア62が設けられる駆動板63と、駆動板63にカム孔64を介して連結され、ローラー65が回転自在に支持されているローラー支持板66と、チューブ30を挟んでローラー65と反対側に配置される固定板67とを有する。電気モーター61Aは、制御部42により駆動制御される
カム孔64は、下方から上方に向かうにつれてチューブ30に接近する方向に傾斜している。また、ローラー支持板66は、軸部66Aによりカム孔64による案内を受けて移動可能な状態で駆動板63に支持されている。さらに、軸部66Aがカム孔64の下端に位置しているときに、ローラー65がチューブ30に対して軽く押し付けられように、駆動板63、カム孔64およびローラー支持板66等が構成されている。
このように構成されるチューブ押圧機構60において、駆動板63が上方から下方に移動すると、ローラー65がチューブ30に押し付けられているローラー支持板66は、カム孔64に案内されてチューブ30側に移動する。そして、軸部66Aがカム孔64の上端に到達した状態で、チューブ30は、ローラー65と固定板67のチューブ支持面67Aとの間で完全に押し潰される(押圧される)状態となる。また、軸部66Aがカム孔64の上端に到達した状態では、ローラー支持板66は、駆動板63と共に下方に向かって移動する。したがって、ローラー65は、チューブ30を上方から下方に向かって押し潰しながら(押圧しながら)移動する。
そして、駆動板63が、ピニオンギア61との噛み合い範囲の最下端に到達したところで、電気モーター(図示省略)が逆転され、これにより、駆動板63が上方に移動させられる。駆動板63が上方に移動することで、ローラー支持板66は、駆動板63と共に下方から上方に向かって移動しながら、カム孔64に沿って、チューブ30から離れる方向に移動する。駆動板63が、上述の上下方向の移動を繰り返すことで、チューブ30内に溜まったインクを上流側から下流側に流すことができ、チューブ30内のインクを廃インクタンク35に排出することができる。
(変形例3)
上述のチューブ押圧機構60を用いた場合には、プリンター1を次のように構成してもよい。つまり、図8に示すように、各キャップ17に接続される各チューブ30(9本のチューブ30)を、固定板67のチューブ支持面67Aに沿って並列させる。
そして、チューブ押圧機構60のローラー65を、チューブ支持面67Aに沿って並列された9本のチューブ30の全部に対して同時(一斉)に接触できる長さに設定する。このように構成することで、1台のチューブ押圧機構60により、9本のチューブ30に対して同時(一斉)に、上流側から下流側にチューブ30を押し潰すことができる。したがって、チューブ押圧機構60の台数を減らすことができ、プリンター1の小型化と部品点数の削減を図ることができる。
なお、チューブ押圧機構60を、たとえば、3台用いて、各チューブ押圧機構60がそれぞれ3本ずつのチューブ30に対して同時(一斉)に押圧するように構成してもよい。また、たとえば、チューブ押圧機構60を2台とし、各チューブ押圧機構60がそれぞれ2本と7本のチューブ30に対して同時(一斉)に押圧するように構成してもよい。
(白色インクの使用について)
ところで、インクとして、インクジェット記録用インク組成物である白色インクを含むものが使用されることがある。たとえば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の4色のインクがそれぞれ収容される4個のインクカートリッジ13A,13B,13C,13Dの内、少なくとも1つを、白色インクを含むインク(白色含有インク)が収容されるインクカートリッジに交換することで、白色含有インクを用紙Pに噴射することができる。また、プリンター1を、4つのインクカートリッジ13A,13B,13C,13Dに加えて、白色含有インクが収容されるインクカートリッジを備えた構成とした場合にも白色含有インクを用紙Pに噴射することができる。
しかしながら、白色インクの組成物として、たとえば、無機白色顔料や有機白色顔料、白色の中空ポリマー微粒子等が顔料として用いられる。また、白色インクの組成物としては、着色剤成分として中空ポリマー微粒子を含有する水系インク組成物が用いられることがある。
このような顔料系の組成物を含む白色含有インクは粘度が高い傾向にあり、増粘や固化し易い。したがって、少なくとも白色含有インクが流れるチューブ30あるいはチューブ32に対して、上述の大気開放機構23を備え、排出処理を行うことができるように構成することで、チューブ30あるいはチューブ32内での白色含有インクの増粘や固化を効果的に防ぐごとができる。
(高粘度インクの使用について)
また、各種記録媒体、とりわけ合成紙や印刷本紙のようなインクの吸水性の低い記録媒体においても高品質な記録物を得ることができる組成を有するインクとして、たとえば、以下に説明するインクジェット記録用インク組成物を含むインク(以下、高粘度インクと記載する。)が提案されている。かかる高粘度インクは粘度が高く、増粘や固化をし易い。
したがって、4個のインクカートリッジ13A,13B,13C,13Dの内、少なくとも1つを、後述する高粘度インクが収容されるインクカートリッジに交換した場合、あるいは、プリンター1を、4つのインクカートリッジ13A,13B,13C,13Dに加えて、高粘度インクが収容されるインクカートリッジを備えた構成とした場合に、少なくとも、高粘度インクが流れるチューブ30あるいはチューブ32に対して、上述の大気開放機構23を備え、排出処理を行うことができるように構成することで、チューブ30あるいはチューブ32内での高粘度インクの増粘や固化を効果的に防ぐごとができる。
なお、本願で言う高粘度とは、使用時におけるインクの粘度が5mPa・s以上15mPa・s以下の範囲を言う。
(高粘度インクの組成について)
高粘度インクとしては、たとえば、着色材と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、ポリアルキレングリコールとを少なくとも含んで構成される。さらに、高粘度インクは、水溶性の対称型両末端アルカンジオールを含んでいてもよい。
上述の難水溶性のアルカンジオールは、炭素数7以上のアルカンジオールであってもよい。
また、上述のポリアルキレングリコールは、ポリプロピレングリコールであってもよい。
また、上述の水溶性の対称型両末端アルカンジオールは、炭素数が3以上のアルカンジオールであってもよい。
また、上述の難水溶性のアルカンジオールと、上述のポリアルキレングリコールとの含有量比は、それぞれ1:1〜1:10であってもよい。
また、上述の水溶性の対称型両末端アルカンジオールと、上述の難水溶性のアルカンジオールとの含有量比が、それぞれ1:80〜4:1であってもよい。
また、上述の水溶性の対称型両末端アルカンジオールと、上述のポリアルキレングリコールとの含有量比が、それぞれ1:1〜1:100であってよい。
また、上述の難水溶性のアルカンジオールと、上述のポリアルキレングリコールとの含有量の和が、インク組成物に対し、14重量%以下であってもよい。
また、上述の水溶性の対称型両末端アルカンジオールと、上述の難水溶性のアルカンジオールと、上述のポリアルキレングリコールとの含有量の和が、インク組成物に対し、18重量%以下であってもよい。
また、上述の難水溶性のアルカンジオールが、インク組成物に対し、1〜4重量%含まれていてもよい。
また、上述のポリアルキレングリコールが、インク組成物に対し、4〜10重量%含まれていてもよい。
また、上述の水溶性の対称型両末端アルカンジオールが、インク組成物に対し、0.1〜4重量%含まれていてもよい。
また、上述の難水溶性のアルカンジオールが、1,2−オクタンジオールであってもよい。
また、上述のポリプロピレングリコールが、ジオール型であってもよい。
また、上述のポリプロピレングリコールの重量平均分子量が、400〜700であってもよい。
また、上述の水溶性の対称型両末端アルカンジオールが、分枝鎖を有するものであってもよい。
また、上述の水溶性の対称型両末端アルカンジオールが、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択される一種または二種以上のものであってもよい。
また、高粘度インクは、多価アルコールのアルキルエーテルを更に含んでいてもよい。
また、上述の多価アルコールのアルキルエーテルが、アルキレングリコールのメチルエーテルであってもよい。
また、上述の多価アルコールのアルキルエーテルが、トリエチレングリコールモノメチルエーテルであってもよい。
また、高粘度インクは、界面活性剤を含んでいてもよい。
また、上述の界面活性剤が、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤またはジェミニ型界面活性剤であってもよい。
(定義)
本明細書において、アルカンジオールの炭化水素基部分は、直鎖または分枝鎖のいずれ
であってもよい。
また、水溶性とは、20℃での、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、10.0g以上であることを意味し、難水溶性とは、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、1.0g未満であることを意味する。混和性とは、20℃での、水への溶解度(水100gに対する溶質の量)が、10.0gの場合に、半透明な溶液であることを意味する。
(インク組成物)
高粘度インクにおけるインク組成物は、アルカンジオールと、ポリアルキレングリコールとを少なくとも含んでなる。これら二種類の有機溶剤を他の成分と組み合わせて含むことにより、印刷本紙において、インク組成物のビーディングが抑制され、特に低解像度で印刷した場合でも、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現でき、噴射安定性にも優れたインク組成物を実現できる。
なお、本明細書中、ビーディングとは、単色で印刷した際(例えば6インチ四方に単色(結果として、印刷される色が単一であることを意味し、その色を実現するインク組成物数は複数であってよい)で印刷した際)に発生する、局所的な同系色の濃度斑のことを意味し、記録媒体表面がインクによって被覆されない部分が残存することを意味するものではない。また、色材のブリーディングとは、各単色を隣接面として印刷した際(例えば3インチ四方に各単色を隣接面として印刷した際)に、境界線近傍において、混合色が発生してしまう現象を意味する。また、溶剤のブリーディングとは、各単色を隣接面として印刷した際(例えば3インチ四方に各単色を隣接面として印刷した際)に、境界線近傍において、溶剤の滲み出しによる色材の移動等により被覆状態が変化し、同系色の濃度斑が発生してしまう現象を意味する。
また、高粘度インクにおいては、上記のような記録媒体において、米坪が73.3〜104.7g/mまたは104.7〜209.2g/mの薄い印刷本紙等を用いた場合、好ましくは米坪が73.3〜104.7g/mの薄い印刷本紙を用いた場合であっても、印刷面が内側に反り返る、いわゆるカールの発生を抑制できる。
上記のように、アルカンジオールに加え、ポリアルキレングリコールを添加することにより、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
印刷本紙に記録する場合に発生するインクのビーディングは、インク滴の表面張力が高く、印刷本紙表面に対するインク滴との接触角が高いために、印刷本紙がインクを弾いてしまうことが原因であると考えられる。弾かれたインク滴は、隣接するインク滴と相互流動し、結合し合うので、ビーディングが発生する。よって、インクのビーディングを抑制するには、インク滴の表面張力を低くし、インク滴の流動性を抑制することが好ましいと考えられる。
また、印刷本紙に記録する場合に発生するインクのブリーディングは、インク滴の表面張力が異なるために、印刷本紙表面に付着した表面張力の低いインク滴が、表面張力の高いインク滴に濡れ広がり、インクが流動することが原因であると考えられる。このインク流動は、隣接するインク滴同士の付着時間差や付着時の液滴の大きさなども影響すると考えられる。
よって、インクのブリーディングを抑制するには、各々のインク組成物の表面張力を全て同じにすることが好ましいと考えられる。しかしながら、隣接するインク滴同士の付着時間差や付着時の液滴の大きさまでを同じにすることは困難であるので、インク滴の流動性を低くすることが好ましいと考えられる。
高粘度インクにおけるインク組成物にあっては、表面張力が低く、かつ流動性の低いインクが、他のインク組成物に求められる品質を損なうことなく実現できたものと考えられ、その結果、ブリーディング、ビーディングが効果的に抑制されたものと考えられる。
(難水溶性のアルカンジオール)
高粘度インクにおいて、難水溶性のアルカンジオールは、炭素数7以上のアルカンジオールが好ましく、より好ましくは炭素数7〜10のアルカンジオールである。さらに好ましくは難水溶性の1,2−アルカンジオールであり、ビーディングをより効果的に抑制できる。難水溶性の1,2−アルカンジオールとしては、例えば、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、5−メチル−1,2−ヘキサンジオール、4−メチル−1,2−ヘキサンジオール、または4,4−ジメチル−1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、1,2−オクタンジオールがより好ましい。
高粘度インクにおいて、難水溶性のアルカンジオールの添加量は、インクのブリーディングとビーディングインクとを効率良く抑制出来る限りにおいて、適宜決定されてよいが、組成物全体に対し、1〜4重量%が好ましく、より好ましくは2〜4重量%であり、さらに好ましくは2.5〜3.5重量%である。難水溶性のアルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、ビーディング発生の抑制を十分なものとすることができる。また、難水溶性のアルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ上限を超えずにあることでインクの初期粘度が高くなりすぎず、通常のインク保存状態において、油層の分離を有効に防止でき、インクの保存性の観点から好ましい。
(ポリアルキレングリコール)
高粘度インクによるインク組成物は、ポリアルキレングリコールを含んでなるものである。
高粘度インクにおけるインク組成物に含まれるポリアルキレングリコールは、炭素数2〜4のアルキレングリコールが一つのユニットであることが好ましく、より好ましくはポリプロピレングリコールである。そのポリプロピレングリコールは、特に限定されないが、生態毒性や環境毒性の観点から、ジオール型であることが好ましい。また、前記ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、特に限定されないが、難水溶性のアルカンジオールを水層から分離させる観点から、その重量平均分子量は400〜1000であることが好ましく、400〜700であることがより好ましい。
高粘度インクにおいてポリアルキレングリコールは、インクのブリーディングとビーディングインクとを効率良く抑制出来る限りにおいて、適宜決定されてよいが、インク組成物全体に対し、4〜10重量%含有されていることが好ましく、より好ましくは5〜8重量%である。ポリアルキレングリコールの量を上記範囲とすることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、難水溶性のアルカンジオールをインク滴の乾燥工程で良好に油層に分離することができ好ましい。また、ポリアルキレングリコールの量を上記範囲とすることで、とりわけ上限を超えずにあることで、インクの初期粘度が高くなりすぎず、通常のインク保存状態において、油層の分離を有効に防止でき、インクの保存性の観点から好ましい。
また、高粘度インクにおけるインク組成物に含まれるポリアルキレングリコールは、高温低湿放置下においても乾燥しにくいため、50℃/湿度15%の環境でのノズルの目詰まり回復性を改善することができるとの利点も有する。
さらに、高粘度インクにおけるインク組成物にあっては、顔料を分散樹脂で分散した態様において、記録媒体上での早すぎるインクの凝集が抑制されるとの効果も見出された。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
一般に、インクが記録媒体に付着した瞬間、インク中の親油的成分は未だ水に分散された状態であるが、記録媒体に付着後の乾燥過程において、水が先に失われると、O/WからW/Oの状態に相転移すると考えられる。一方、インクの水層には水分散性の分散樹脂によって分散状態にある顔料が存在するが、油層には顔料は存在できない。したがって、O/WからW/Oの状態に相転移する際に、水層にある顔料の流動性が、油層の壁によって抑制され、インクが凝集すると考えられる。しかし、ポリアルキレングリコールは、油層の壁を微細に分離していると考えられる。その結果、水層にある顔料の流動性を向上させ、早すぎるインクの凝集が抑制されると考えられる。
さらに、高粘度インクにおける難水溶性のアルカンジオールとポリアルキレングリコールとの含有量比が、それぞれ1:1〜1:10であることが好ましく、より好ましくはそれぞれ1:1〜1:5である。この範囲にあることで、インクの噴射安定性を向上させることができる。
(対称型両末端アルカンジオール)
高粘度インクの好ましい態様によれば、高粘度インクにおけるインク組成物は、難水溶性のアルカンジオールおよびポリアルキレングリコールに加えて、対称型両末端アルカンジオールを含んでなることができる。これにより、インク組成物が含有している固形分以外の物質、すなわち溶剤を含む水溶液のブリーディング発生がさらに抑制できる点で有利である。
水溶性の対称型両末端アルカンジオールとしては、主鎖の炭素数が3以上のアルカンジオールが好ましく、より好ましくは主鎖の炭素数が4〜6である。また、水溶性の対称型両末端アルカンジオールは、分枝鎖を有していても良い。なお、本明細書中、「対称型」とは、アルキル鎖の両末端に水酸基を有するアルカンジオールにおいて、1,5−ペンタンジオールのように、両水酸基から等距離にある炭素を対称軸とする、両末端アルカンジオールを意味する。高粘度インクにおける溶性の対称型両末端アルカンジオールとして、より好ましくは2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールである。これらの中でも、噴射安定性の観点からは、炭素数の多い水溶性の対称型両末端アルカンジオールが好ましく用いられる。炭素数が6の水溶性の対称型両末端アルカンジオール、例えば、3−メチル−1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールは、難水溶性のアルカンジオールを水に溶解させる能力に優れるため、噴射安定性が向上する。
特に、1,6−ヘキサンジオールは、水易溶性であり、常温において固形であることから、目詰まり回復性の能力に優れるため、より好ましい。理由は定かではないが、ノズル近傍の固形化インクに、水易溶性の固形の1,6−ヘキサンジオールを含有することにより、クリーニング操作によって、液体のインクが接触した際に、1,6−ヘキサンジオールによる溶解が目詰まり回復のきっかけになると考えられる。
上記溶剤を含む水溶液のブリーディング発生がさらに抑制できる理由は、明らかではないが以下のように考えられる。
難水溶性のアルカンジオールは、表面張力が極めて低く、蒸発乾燥性も低いため、色材の動きが止まった後も、溶剤を含む水溶液の濡れ拡がりが継続すると考えられる。よって、場所によりインク付着量の差異が大きい記録画像の場合、インク付着量が多い部分から
少ない部分への溶剤を含む水溶液の滲み出しが発生する。表面張力が高い対称型両末端アルカンジオールを添加することによって、このような溶剤のブリーディングを抑制することができる。対称型両末端アルカンジオールは、難水溶性のアルカンジオールとポリアルキレングリコールとを溶解する能力が高いことから、インク滴の乾燥工程において、ポリアルキレングリコールにより、油層の壁が過剰に微細に分離することを阻害しているためである考えられる。
高粘度インクおける水溶性の対称型両末端アルカンジオールは、上記ブリーディング抑制の効果が得られる範囲で適宜決定されてよいが、インク組成物全体に対し、0.1〜4重量%含有されていることが好ましく、より好ましくは、0.6〜1.4重量%である。水溶性の対称型両末端アルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、噴射安定性を十分なものとすることができ、またワイピング耐久性が劣化しないため好ましい。ワイピング性能とは、クリーニング操作を繰り返し実施した場合に発生する、インクノズルの周辺面の撥水劣化に起因するインク滴の着弾精度劣化を意味する。理由は定かではないが、難水溶性のアルカンジオールとポリアルキレングリコールとが、インクノズルの周辺面に析出していると考えられる。また、水溶性の対称型両末端アルカンジオールの量が上記範囲にあることで、とりわけ上限を超えずにあることで、難水溶性のアルカンジオールとポリアルキレングリコールとを過度に溶解しないため好ましい。
高粘度インクにおいて用いられる水溶性の対称型両末端アルカンジオールは、水溶性の対称型両末端アルカンジオールはグリセリンよりも低い表面張力を示す浸透性湿潤剤である。例えば、10%水溶液とした場合の1,6−ヘキサンジオールの表面張力は41.5mN/mであり、また、10%水溶液とした場合の2−メチル−1,3−プロパンジオールの表面張力は57.5mN/mであり、また、10%水溶液とした場合の3−メチル−1,5−ブタンジオールの表面張力は45.8mN/mである。
高粘度インクにおける水溶性の対称型両末端アルカンジオールと、ポリアルキレングリコールとの含有量比は、1:1〜1:100であることが好ましい。この範囲とすることにより、重量平均分子量2000以下の前記ポリアルキレングリコールをインク中に安定的に溶解させることができ、噴射安定性が向上する。すなわち、水溶性対称型両末端アルカンジオールの割合が上記範囲にあることで、とりわけ上限を超えずにあることで、インク初期粘度の低減とビーディング斑低減が可能になる。また、水混和性の水溶性対称型両末端アルカンジオールの割合が上記範囲にあることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、ポリアルキレングリコールをインク中に安定的に溶解させることが可能となり、経過時の粘度変化を抑制したり保存安定性を維持したりすることが可能となる。また、ワイピング耐久性が劣化を防止できる。
上記範囲内において、水溶性対称型両末端アルカンジオールの割合が少ない場合は、ポリアルキレングリコールの分子量は、700以下であることが、ワイピング耐久性の観点から、より好ましい。
また、高粘度インクおける水溶性の対称型両末端アルカンジオールと難水溶性のアルカンジオールとの含有量比は、それぞれ1:80〜4:1であることが好ましく、より好ましくはそれぞれ1:40〜2:1である。この範囲とすることにより、インクの噴射安定性を向上させることができる。すなわち、水溶性の対称型両末端アルカンジオールの割合が、上記範囲にあることで、とりわけ上限を超えずにあることで、インク初期粘度が高くならず、ビーディング斑低減が可能になる。また、水溶性の対称型両末端アルカンジオールの割合が、上記範囲にあることで、とりわけ下限を下回らずにあることで、難水溶性のアルカンジオールをインク中に安定的に溶解させることが可能となり、経過時の粘度変化を抑制し、保存安定性を維持することが可能となる。また、高粘度インクにおける水溶性の対称型両末端アルカンジオールと難水溶性のアルカンジオールとの含有量比を上記範囲内とすることにより、ワイピング耐久性が向上する。
また、前記対称型両末端アルカンジオールをX、前記難水溶性のアルカンジオールをY、前記ポリアルキレングリコールをZとした場合に、含有量比が、X:(Y+Z)=1:140〜4:5が好ましい。この範囲にあることで、噴射安定性、保存安定性、およびワイピング耐久性を確保できる。その理由は定かではないが、ポリアルキレングリコールによる乾燥過程における油層の壁の微細分離効果と、対称型両末端アルカンジオールによる乾燥過程における油層の壁の過剰な微細分離を阻害する効果とのバランスによるものと考えられる。上記範囲内であり、かつ、X:Y=1:80〜4:1の範囲内において、難水溶性のアルカンジオールの割合が多い場合は、ポリアルキレングリコールの分子量は、700以下であることが、ワイピング耐久性の観点で、より好ましい。
このような層転移は、乾燥過程において、低分子量の水は即座に乾燥するが、難水溶性のアルカンジオールとポリアルキレングリコールとは、乾燥しないで残るために発現すると考えられる。顔料に吸着した樹脂は、流動性に優れた分散状態から、急激に水が失われるのと同時に、油層に取り残されるので、凝集状態の高粘調性の樹脂に変化すると考えられる。
また、高粘度インクにおける難水溶性のアルカンジオールとポリアルキレングリコールとの含有量の和が、インク組成物に対し14重量%以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、インクの初期粘度を低く抑えられ、印刷本紙のようなインク吸収性の低い記録媒体においてビーディングを生じることなく、色材のブリーディングにも優れる。
また、高粘度インクにおいては、難水溶性のアルカンジオールと、ポリアルキレングリコールと、水溶性の対称型両末端アルカンジオールとの含有量の和が、インク組成物に対し18重量%以下であることが好ましい。この範囲にあることにより、インクの初期粘度を低く抑えられ、印刷本紙のようなインク吸収性の低い記録媒体においてビーディング斑を生じることなく、色材のブリーディングだけでなく、溶剤のブリーディングにも優れる。特に、溶剤のブリーディングに優れるので、水の吸収能力が殆どない、合成紙への記録性に優れる。
高粘度インクの一つの態様によれば、更に1,2−ヘキサンジオールを0.1〜4重量%含んでなることが好ましい。1,2−ヘキサンジオールを0.1〜4重量%含むことにより、さらにブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる。また、顔料種や樹脂量により噴射性能が異なる場合の調整剤として効果的である。
また、高粘度インクの一つの態様によれば、更に4−メチル−1,2−ペンタンジオールを0.1〜4重量%含んでなることが好ましい。1,2−ヘキサンジオールを0.1〜4重量%含むことにより、さらにブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる。また、顔料種や樹脂量により噴射性能が異なる場合の調整剤として効果的である。
さらに、高粘度インクの一つの態様によれば、多価アルコールのアルキルエーテルを更に加えることができる。多価アルコールのアルキルエーテルを加えることにより、印刷ヘッド2にキャップするためのキャップ17内の目詰まり回復性を向上させることができる。ここで、キャップ17内の目詰まりとは、キャップ内に滞留している廃液が乾燥固化し、これがキャップ17内の不織布等のインク吸収剤の微細孔を目詰させることを意味する。キャップ17内の目詰まり回復性を向上させることにより、クリーニング成功率の低下を防ぎ、ノズル目詰まり回復性を向上させることができる。
前記多価アルコールのアルキルエーテルとしては、アルキレングリコールのメチルエーテルが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、およびトリエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。凝集性の観点では、アルキレングリコールのモノメチルエーテルがより好ましく、引火点の観点では、トリエチレングリコールのメチルエーテルが好ましい。環境毒性と生態毒性の観点では、トリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
また、前記トリエチレングリコールモノメチルエーテルと、前記難水溶性のアルカンジオールとの含有量比は、特に限定されないが、3:1〜1:6であることが好ましく、3:1〜1:1であることがより好ましい。この範囲とすることにより、印刷ヘッド2にキャップするためのキャップ17内の目詰まり回復性を更に向上させることができる。
また、前記トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよび前記ポリアルキレングリコールの合計量の和と、前記難水溶性のアルカンジオールとの含有量比は、特に限定されないが、3:1〜1:6であることが好ましく、3:1〜1:1であることがより好ましい。この範囲とすることにより、印刷ヘッド2にキャップするためのキャップ17内の目詰まり回復性を更に向上させることができる。
また、前記トリエチレングリコールモノメチルエーテルと、前記ポリアルキレングリコールとの含有量比は、特に限定されないが、5:1〜1:5であることが好ましく、5:1〜1:1であることがより好ましい。この範囲とすることにより、印刷ヘッド2にキャップするためのキャップ17内の目詰まり回復性を更に向上させることができる。
前記トリエチレングリコールモノメチルエーテルは、インク組成物全体に対し、特に限定されないが、0.5〜
9.0重量%含有されていることが好ましく、より好ましくは0.5〜3.0重量%である。
また、高粘度インクにおいて、前記トリエチレングリコールモノメチルエーテルと前記ポリアルキレングリコールとの含有量の和は、特に限定されないが、インク組成物に対し、9.0重量%以下であることが好ましく、3.0重量%以下であることがより好ましい。この範囲とすることにより、印刷ヘッド2にキャップするためのキャップ17内の目詰まり回復性を更に向上させることができる。
(着色材)
高粘度インクにおけるインクジェット記録用インク組成物に用いられる着色材としては、染料および顔料のいずれも使用することができるが、耐光性や耐水性の観点から顔料を好適に使用できる。また、着色材は、前記顔料およびその顔料をインク中に分散させることが可能な下記分散剤を含んでなることが好ましい。
顔料としては、無機顔料および有機顔料を使用することができ、それぞれ単独または複数種を混合して用いることができる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタンおよび酸化鉄の他に、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックが使用できる。また、前記有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が使用できる。
顔料の具体例は、得ようとするインク組成物の種類(色)に応じて適宜挙げられる。例えば、イエローインク組成物用の顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,147,150,151,154,155,180,185等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントイエロー74,110,128、および129からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。また、マゼンタインク組成物用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,112,122,123,168,184,202,209;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントレッド122,202,209、およびC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましく、これらの固溶体であってもよい。また、シアンインク組成物用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1,2,3,15:3,15:4,15:34,16,22,60;C.I.バットブルー4,60等が挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらのうち、特にC.I.ピグメントブルー15:3および/または15:4を用いることが好ましく、とりわけ、C.I.ピグメントブルー15:3を用いることが好ましい。
また、ブラックインク組成物用の顔料としては、例えば、ランプブラック(C.I.ピグメントブラック6)、アセチレンブラック、ファーネスブラック(C.I.ピグメントブラック7)、チャンネルブラック(C.I.ピグメントブラック7)、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)等の炭素類、酸化鉄顔料等の無機顔料;アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料等が挙げられるが、高粘度インクにおいては、カーボンブラックが好ましく用いられる。カーボンブラックとして、具体的には、#2650、#2600、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#966、#960、#950、#900、#850、MCF-88、#55、#52、#47、#45、#45L、#44、#33、#32、#30、(以上、三菱化学(株)製)、SpecialBlaek4A、550、Printex95、90、85、80、75、45、40(以上、デグッサ社製)、Regal660、RmogulL、monarch1400、1300、1100、800、900(以上、キャボット社製)、Raven7000、5750、5250、3500、3500、2500ULTRA、2000、1500、1255、1200、1190ULTRA、1170、1100ULTRA、Raven5000UIII、(以上、コロンビアン社製)等が挙げられる。
顔料の濃度は、インク組成物を調製した際に適宜な顔料濃度(含有量)に調整すればよいため特に限定されないが、高粘度インクにおいては、顔料の固形分濃度を7重量%以上とすることが好ましく、10重量%以上とすることがより好ましい。記録媒体上にインク液滴が付着すると、記録媒体の表面でインクが濡れ拡がるが、顔料固形濃度を7%重量%以上と高くすることにより、濡れ拡がりが留まった後のインクの流動性が早期に失われるため、印刷本紙等の記録媒体に、特に低解像度で印刷した場合でも、より滲みを抑制することができる。すなわち、上記した特定の二種の有機溶剤を組み合わせて使用することにより、インク吸収性の低い記録媒体上でもインクが濡れ拡がり、併せて、インクの固形分濃度を高くすることにより、記録媒体上でのインクの流動性を下げて、滲みを抑制することができると考えられる。特に、インク滴の1滴の重量が6ng以上の場合において、ビーディングとブリーディングの抑制効果が顕著である。
前記顔料は、後記する分散剤との混練処理がされた顔料であることが画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点から好ましい。
(分散剤)
高粘度インクにおけるインク組成物は、着色材を分散させるための分散剤としては、スチレン−アクリル酸系共重合樹脂、オキシエチルアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、およびフルオレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなることが好ましく、より好ましくは、オキシエチルアクリレート系樹脂およびフルオレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含んでなる。これら共重合樹脂は、顔料に吸着して分散性を向上させる。
共重合体樹脂における疎水性モノマーの具体例としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルアクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、iso−オクチルアクリレート、iso−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、2−ジエチルアミノエチルアクリレート、2−ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルアクリレート、フエニルメタクリレート、ノニルフェニルアクリレート、ノニルフェニルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ボルニルアクリレート、ボルニルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシエチル化オルトフェニルフェノールアクリレートなどを挙げることができる。これらは、単独でまたは二種以上を混合して用いてもよい。
親水性モノマーの具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などを挙げることができる。
前記疎水性モノマーと親水性モノマーとの共重合樹脂は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、スチレン−メチルスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、またはスチレン−マレイン酸共重合樹脂、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、またはスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、ヒドロキシエチル化オルトフェニルフェノールアクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合樹脂の少なくともいずれかであることが好ましい。
前記共重合樹脂は、スチレンと、アクリル酸またはアクリル酸のエステルと、を反応して得られる重合体を含む樹脂(スチレン−アクリル酸樹脂)であってもよい。あるいは、前記共重合樹脂は、アクリル酸系水溶性樹脂であってもよい。またはこれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等の塩であってもよい。
前記共重合樹脂の酸価は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは50〜320であり、一層好ましくは100〜250である。
前記共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは2,000〜3万であり、より好ましくは2,000〜2万である。
前記共重合樹脂のガラス転移温度(Tg;JISK6900に従い測定)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは30℃以上であり、一層好ましくは50〜130℃である。
前記共重合樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合とがあり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
前記共重合樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100重量部に対して、好ましくは20〜50重量部であり、一層好ましくは20〜40重量部である。
高粘度インクにおいては、前記共重合樹脂として、オキシエチルアクリレート系樹脂を使用することもできる。使用することにより、インクの初期粘度の低減、高温時の保存安定性、目詰まり回復性に優れるので、より好ましい。
上記オキシエチルアクリレート系樹脂は、特に限定されないが、好ましくは下記式(I)で表される化合物である。下記式(I)で表される化合物は、例えば、モノマーモル比として、CAS No.72009−86−0のオルト-ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレートを45〜55%と、CAS No.79−10−7のアクリル酸を20〜30%と、CAS No.79−41−4のメタクリル酸を20〜30%と含む樹脂が挙げられる。これらは、単独でもまたは二種以上を混合して用いてもよい。また、上記モノマー構成比は、特に限定されないが、好ましくはCAS No.72009−86−0のオルト-ヒドロキシエチル化フェニルフェノールアクリレートが70〜85%、CAS No.79−10−7のアクリル酸が5〜15%、CAS No.79−41−4のメタクリル酸が10〜20%である。
Figure 2011152647
(R1および/またはR3は水素原子またはメチル基であって、R2はアルキル基または
アリール基である。nは1以上の整数である。)
上記式(I)で表される化合物は、好ましくはノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレートまたはポリプロピレングリコール#700アクリレート等が挙げられる。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の含有量は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに、凝集斑を抑制し、埋まり性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100重量部に対して、好ましくは10〜40重量部であり、一層好ましくは15〜25重量部である。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂に占めるアクリル酸とメタクリル酸の群から選ばれる水酸基を有するモノマー由来の樹脂構成比の合計は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに、目詰まり回復性の観点からは、好ましくは30〜70%であり、一層好ましくは40〜60%である。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の架橋前の数平均分子量(Mn)は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立する観点からは、好ましくは4000〜9000であり、より好ましくは5000〜8000である。Mnは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合とがあり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
前記オキシエチルアクリレート系樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100重量部に対して、好ましくは20〜50重量部であり、一層好ましくは20〜40重量部である。
また、高粘度インクにおいては、定着性顔料分散剤として、ウレタン系樹脂を用いることにより、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる。ウレタン系樹脂とは、ジイソシアネート化合物と、ジオール化合物とを反応して得られる重合体を含む樹脂であるが、高粘度インクにおいては、ウレタン結合および/またはアミド結合と、酸性基とを有する樹脂であることが好ましい。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらの変性物が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリエーテル系、ポリエチレンアジベート、ポリブチレンアジベート等のポリエステル系、ポリカーボネート系が挙げられる。
前記ウレタン系樹脂の酸価は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは10〜300であり、一層好ましくは20〜100である。なお、酸価は、樹脂1gを中和させるのに必要なKOHのmg量である。
前記ウレタン樹脂の架橋前の重量平均分子量(Mw)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは100〜20万であり、より好ましくは1000〜5万である。Mwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
前記ウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg;JISK6900に従い測定)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、好ましくは−50〜200℃であり、一層好ましくは−50〜100℃である。
前記ウレタン系樹脂は、カルボキシル基を有することが好ましい。
前記ウレタン系樹脂の含有量は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100重量部に対して、好ましくは20〜50重量部であり、一層好ましくは20〜40重量部である。
さらに、高粘度インクにおいては、定着性顔料分散剤として、フルオレン系樹脂を使用することもできる。使用することにより、インクの初期粘度の低減、高温時の保存安定性、印刷本紙への定着性に優れるので、より好ましい。
また、前記フルオレン系樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂であれば何ら制限されるものではなく、例えば、下記のモノマー単位を共重合することにより得ることができる。 シクロヘキサン、5−イソシアネート−1−(イソシアネートメチル)−1,3,3−トリメチル(CAS No.4098−71−9)
エタノール、2,2‘−[9H−フルオレン−9−イリデンビス(4,1−フェニレン
オキシ)]ビス(CAS No.117344−32−8)
プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル(CAS N
o.4767−03−7)
エタンアミン、N,N−ジエチル−(CAS No.121−44−8)
上記フルオレン系樹脂は、特に限定されないが、例えば、モノマー構成比は、特に限定されないが、好ましくはCAS No.4098−71−9が35〜45%、CAS No.117344−32−8が40〜50%、CAS No.4767−03−7が5〜15%、CAS No.121−44−8が5〜10%である。
前記フルオレン系樹脂の架橋前の数平均分子量(Mn)は、インク組成物の初期粘度およびインク組成物の保存安定性を両立する観点からは、好ましくは2000〜5000であり、より好ましくは3000〜4000である。Mnは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。
前記フルオレン系樹脂は、顔料分散液中において顔料に吸着している場合と、遊離している場合と、があり、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記共重合樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分散径(累積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(MicrotracInc.社)を使用して測定することができる。
前記フルオレン系樹脂の含有量は、カラー画像の定着性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層定着性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、前記顔料100重量部に対して、好ましくは20〜50重量部であり、一層好ましくは20〜40重量部である。
前記共重合樹脂および前記定着性顔料分散剤の重量比(前者/後者)は、1/2〜2/1が好ましいが、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、1/1.5〜1.5/1であることが一層好ましい。
前記顔料の固形分と、前記共重合樹脂および前記定着性顔料分散剤の固形分との重量比(前者/後者)は、カラー画像の光沢性、ブロンズ防止、およびインク組成物の保存安定性を両立するとともに一層光沢性に優れたカラー画像を形成できる観点からは、100/40〜100/100であることが好ましい。
また、分散剤として、界面活性剤を用いてもよい。このような界面活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキルスルホン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、スルホ琥珀酸エステル塩、ナフテン酸塩、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などの陰イオン界面活性剤;脂肪酸アミン塩、第四アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウムなどの陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。上記した界面活性剤はインク組成物に添加されることで、界面活性剤としての機能をも果たすことは言うまでもない。
(界面活性剤)
高粘度インクにおけるインクジェット記録用インク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。記録媒体として、その表面にインクを受容するための樹脂がコーティングされたものに対して、界面活性剤を用いることにより、光沢感がより重視される写真紙等の記録媒体においても、優れた光沢を有する画像を実現することができる。とりわけ、印刷本紙のように、表面の受容層に油性インクを受容するための塗布層が設けられているような記録媒体を用いた場合であっても、色間の滲み(ブリーディング)を防止できるとともに、インク付着量の増加に伴い発生する光の反射光による白化を防止することができる。
高粘度インクにおいて用いられる界面活性剤としては、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を好適に使用でき、記録画像を形成する際に、記録媒体表面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。ポリオルガノシロキサン系界面活性剤を用いた場合、上記したような1種類の難水溶性のアルカンジオールと1種類のポリアルキレングリコールを含有するため、界面活性剤のインク中への溶解性が向上し、不溶物等の発生を抑制できるため、噴射安定性がより優れるインク組成物を実現できる。
上記のような界面活性剤は市販されているものを用いてもよく、例えば、オルフィンPD−501(日信化学工業株式会社製)、オルフィンPD−570(日信化学工業株式会社製)、BYK−347(ビックケミー株式会社製)、BYK−348(ビックケミー株式会社製)等を用いることができる。
また、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤として、下記式(II):
Figure 2011152647
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは7〜11の整数を表し、mは30〜50の整数を表し、nは3〜5の整数を表す。)で表される一種または二種以上の化合物を含んでなるか、または、上記式(II)の化合物において、式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは9〜13の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、nは1〜2の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。また、上記式(II)の化合物において、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは6〜18の整数を表し、mは0の整数を表し、nは1の整数である一種または二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。このような特定のポリオルガノシロキサン系界面活性剤を使用することにより、記録媒体として印刷本紙に印刷した場合であっても、インクのビーディングとブリーディングがより改善される。
上記式(II)の化合物においては、Rがメチル基の化合物を使用することによって、さらにインクのビーディングが改善できる。
また、上記式(II)の化合物においては、Rが水素原子の化合物を併用することにより、さらにインクのブリーディングが改善できる。
上記界面活性剤は、高粘度インクにおけるインク組成物中に、好ましくは0.01〜1.0重量%、より好ましくは0.05〜0.50重量%含有される。特に、Rがメチル基である上記界面活性剤を使用する場合は、RがHである上記界面活性剤を用いた場合よりも、含有量を多くすることが好ましい。
また、高粘度インクにおいて用いられる界面活性剤としては、ジェミニ型界面活性剤を好適に使用できる。上記の難水溶性のアルカンジオールと組み合わせてジェミニ型界面活性剤を用いることにより、難水溶性溶剤を均一に分散することができ、その結果、インクの初期粘度を低下させることができる。したがって、インク組成物中への色材の添加量や目詰まり防止剤等の添加量を高めることができ、ひいては、普通紙のみならず、表面にインクを受容するための樹脂や粒子がコーティングされた多孔質な表面を持つ記録媒体においても、優れた発色性を有する画像を実現することができる。とりわけ、印刷本紙のように、表面の受容層に油性インクを受容するための塗布層が設けられているような記録媒体を用いた場合であっても、色間の滲み(ブリード)を防止できるとともに、インク付着量の増加に伴い発生するドット間のインク流動による色濃度斑を防止することができる。この理由は定かではないが、ジェミニ型界面活性剤の優れた配向性によって、難水溶性溶剤と極めて安定なオイルゲルを形成する為に、着色材の流動性がなくなると考えられる。よって、ジェミニ型界面活性剤の添加による効果は、難水溶性溶剤が多いほど享受できる。なお、「ジェミニ型界面活性剤」とは、二つの界面活性剤分子がリンカーを介して互いに結合した構造を有する界面活性剤を意味する。
上記のジェミニ型界面活性剤は、一対の1鎖型界面活性剤の親水基部分を、親水性基を有するリンカーを介して互いに結合させた構造の、2鎖3親水基型界面活性剤であることが好ましい。また、上記の1鎖型界面活性剤の親水基部分が酸性アミノ酸残基であることが好ましく、上記リンカーは塩基性アミノ酸であることが好ましい。具体的には、親水基部分がグルタミン酸またはアスパラギン酸であるような一対の1鎖型界面活性剤を、アルギニン、リシン、またはヒスチジンのようなリンカーを介して結合させた構造の界面活性剤が挙げられる。上記のようなジェミニ型界面活性剤として、高粘度インクにおいては、下記化学式(III):
Figure 2011152647
(式中、X、X、およびXは、それぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属を表すが、X、X、およびXの何れもが同時に水素原子またはアルカリ金属となることはなく、LおよびMは、それぞれ独立して0または2を表すが、LおよびMが同時に0または2となることはなく、NおよびPは、それぞれ独立して0または2を表すが、NおよびPが同時に0または2となることはなく、QおよびRは、8〜18の整数を表す)で表される界面活性剤を用いることがこのましい。
上記式(III)において、アルカリ金属としてはNaが好ましく、またQおよびRは10程度が好ましい。このような化合物として、N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩が挙げられる。上記式で表される化合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば、N−ラウロイル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物のナトリウム塩を30%含有した水溶液である、ペリセアL−30(旭化成ケミカルズ株式会社製)等を好適に用いることができる。
高粘度インクにおいては、上記ジェミニ型界面活性剤を使用することにより、記録画像を形成する際に、記録媒体表面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。その結果、記録媒体として印刷本紙に印刷した場合であっても、インクの凝集むらがより改善される。また、高粘度インクにおけるインク組成物は上記した難水溶性のアルカンジオールを含有するため、上記界面活性剤のインク中への溶解性が向上し、不溶物等の発生を抑制できるため、噴射安定性がより優れるインク組成物を実現できる。
上記ジェミニ型界面活性剤は、高粘度インクおけるインク組成物中に、好ましくは0.01〜1.0重量%、より好ましくは0.05〜0.50重量%含有される。
高粘度インクにおけるインク組成物には、その他の界面活性剤、具体的には、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等をさらに添加しても良い。
これらのうち、アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(商品名、日信化学社製)、サーフィノール61、104,82,465,485、あるいはTG(商品名、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
(糖類)
高粘度インクにおいては、糖類は単独で用いてもよいが、上記した水溶性の対称型両末端アルカンジオールとともに用いることが好ましい。界面活性剤として上記したようなジェミニ型の界面活性剤と、難水溶性のアルカンジオールとの併用において、水溶性の対称型両末端アルカンジオールとともに糖類を添加することにより、目詰まりやカールの発生をより抑制することができるとともに、印刷物の光沢性を向上させることができる。その理由は定かではないが、光沢性が向上するのは、糖の添加によって印刷物の表面に被膜が形成されることによるものと考えられる。
高粘度インクにおけるインク組成物に用いられる糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)、および多糖類またはこれらの誘導体が挙げられる。これらの中でも、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、グルシトール、ソルビット、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、フィラノース、およびラフィノース等が好ましい。その中でも、ラフィノースが特に好ましい。高粘度インクのインク組成物にラフィノースを加えることにより、間欠印刷特性が向上する。糖類の添加量は適宜決定されてよいが、3〜18重量%含有されていることが好ましく、より好ましくは4〜8重量%である。
なお、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロース等の自然界に広く存在する物質を含むものとする。また、これら糖類の誘導体としては、上記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式:HOCH(CHOH)CHOH(式中、nは2〜5の整数を表す)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。これらの中でも、特に糖アルコールが好ましく、具体的には、マルチトール、ソルビトール、キシリトール等が挙げられる。これらの糖類は市販のものを使用してもよく、例えばHS20、HS30、HS500(林原商事株式会社製)やオリゴGGF(旭化成株式会社製)を好適に使用できる。
(水、その他の成分)
高粘度インクにおけるインクジェット記録用インク組成物は、上記した特定の難水溶性のアルカンジオール、特定のポリアルキレングリコール、および界面活性剤、その他の各種添加剤を含有するとともに、溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。
また、高粘度インクにおけるインク組成物は、上記成分に加えて、浸透剤を含んでなることが好ましい。
浸透剤としては、グリコールエーテル類を好適に使用できる。
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノールなどが挙げられ、これらの一種または二種以上の混合物として用いることができる。
上記グリコールエーテル類のなかでも、多価アルコールのアルキルエーテルが好ましく、特にエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが好ましい。 より好ましくは、トリエチレングリコールモノメチルエーテルおよびトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルである。
上記浸透剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.1〜30重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜20重量%程度である。
また、高粘度インクにおけるインク組成物は、上記成分に加えて、記録媒体溶解剤を含んでなることが好ましい。
記録媒体溶解剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの、ピロリドン類を好適に使用できる。上記記録媒体溶解剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.1〜30重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜20重量%程度である。
また、高粘度インクにけるインクジェット記録用インク組成物においては、グリセリン等の湿潤剤を実質的に含まないことが好ましい。グリセリン等の湿潤剤は、インクジェットノズル等において、インクが乾燥して固化するのを防ぐ機能を有するものであるため、インク吸収性能が特に低い合成紙にインクを滴下すると、インクが乾燥せず、高速印刷の際に問題となる場合がある。また、湿潤剤は含まれるインクを用いた場合、吸収されないインクが記録媒体表面に存在している状態で、次のインクが記録媒体上に付着するため、ビーディング斑が発生する場合がある。そのため、高粘度インクにおいては、このようなインク吸収性能が特に低い記録媒体を用いる場合に、湿潤剤を実質的に含まないことが好ましい。なお、インクジェットノズルにおいてインクが乾燥固化してしまった場合であっても、湿潤剤を含む溶液を適用することにより、固化したインクを再溶解させることができる。
特に、高粘度インクにおいては、25℃における蒸気圧が2mPa以下である湿潤剤を、実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、これら湿潤剤の添加量が、インク組成物に対して1重量%未満であることを意味する。
25℃における蒸気圧が2mPa以下であるグリセリン等の湿潤剤の含有量が、インクに対して3重量%未満となることにより、印刷本紙等のインク吸収性の低い記録媒体だけでなく、合成紙やラベル用紙のようなインク吸収能が特に低い記録媒体に対しても、インクジェット記録方式により印刷することが可能となる。また、25℃における蒸気圧が2mPa以下である湿潤剤の含有量が、インクに対して1重量%未満となることにより、インク吸収能のまったくない金属やプラスチックに対しても、インクジェット記録方式により印刷することが可能となる。なお、上記した浸透溶剤の一部は、湿潤剤としても作用することは、当業者にとって明らかであるが、本明細書においては、上記した浸透溶剤は、湿潤剤には含まれないものとする。また、本明細書においては、上記した難水溶性のアルカンジオールは、湿潤剤に含まれないものとする。
湿潤剤としては、通常のインクジェット記録用インクに用いられている湿潤剤が挙げられ、具体的には、グリセリン、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール等の炭素数3〜5の水溶性アルカンジオール類である。記録媒体が、インク吸収性能の低い印刷本紙等の場合には、適宜、これら湿潤剤を添加することで、目詰まり回復性を調整することができる。高粘度インクのインク組成物において、前記グリセリンを湿潤剤として0.1〜8重量%以下含んでなることが好ましい。
高粘度インクにけるインク組成物は、さらにノズルの目詰まり防止剤、防腐剤、酸化防止剤、導電率調整剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤などを添加することができる。
防腐剤・防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等を挙げることができる。
さらに、pH調整剤、溶解助剤、または酸化防止剤の例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩を挙げることができる。
また、高粘度インクにおけるインク組成物は、酸化防止剤および紫外線吸収剤を含んでいてもよく、その例としては、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のTinuvin
328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor 252 153、Irganox 1010、1076、1035、MD1024、ランタニドの酸化物等を挙げることができる。
高粘度インクにおけるインク組成物は、上記の各成分を適当な方法で分散・混合することよって製造することができる。好ましくは、まず顔料と高分子分散剤と水とを適当な分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなど)で混合し、均一な顔料分散液を調製し、次いで、別途調製した樹脂(樹脂エマルジョン)、水、水溶性有機溶媒、糖、pH調製剤、防腐剤、防かび剤等を加えて十分溶解させてインク溶液を調製する。十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒径および異物を除去するためにろ過を行って目的のインク組成物を得ることができる。前記ろ過は、ろ材として、好ましくは、グラスファイバーフィルターを用いて行ってもよい。前記グラスファイバーは、樹脂含浸グラスファイバーであることが、静電吸着機能の観点から好ましい。また、グラスファイバーフィルターの孔径は、1〜40ミクロンが好ましく、さらに好ましくは1〜10ミクロンであることが、生産性と帯電遊離樹脂等の吸着除去の観点から好ましい。帯電遊離樹脂等の吸着除去を十分に行うことにより、噴射安定性を向上させることができる。上記のフィルターとして、例えば、日本ポール社製のウルチポアGFプラスを挙げることができる。
(インクジェット記録方法)
高粘度インクにおけるインクジェット記録方法は、上記の高粘度インクの組成物の液滴を噴射し、該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うものである。高粘度インクにおける記録方法においては、記録媒体として合成紙や印刷本紙(OKT+:王子製紙株式会社製)を用いることが好ましいが、とりわけ、アート紙、POD(プリントオンデマンド)用途に用いられる高画質用紙およびレーザープリンタ用の専用紙において、特に低解像度で印刷した場合でも、ブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現できる。POD用途の高画質用紙としては、例えば、リコービジネスコートグロス100(リコー株式会社製)等が挙げられる。また、レーザープリンタ用の専用紙としては、例えばLPCCTA4(セイコーエプソン株式会社製)等が挙げられる。
以下、実施例によって高粘度インクをより詳細に説明するが、高粘度インクはこれら実施例に限定されるものではない。
(インク組成物の調製)
下記表1の組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、各インクを調製した。なお、表中のオキシエチルアクリレート系樹脂は、CAS No.72009−86−0で示されるオキシエチルアクリレート構造を有するモノマーをモノマー構成比率略75重量%含有する、分子量6900の樹脂である。 フルオレン系樹脂は、CAS No.117344−32−8で示されるフルオレン骨格を有するモノマーをモノマー構成比率略50重量%含有する、分子量3300の樹脂である。 さらに、用いた界面活性剤は、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤であり、上記の式(II)において、Rがメチル基であり、aが6〜18の整数であり、mが0の整数であり、nが1の整数である化合物と、上記の式(II)において、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物と、上記の式(II)において、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物とからなる界面活性剤である。
Figure 2011152647
Figure 2011152647
実施例9〜16および比較例2
また、上記の実施例1〜8のインクセットおよび比較例1のインクセットの1,2−オクタンジオールを2重量%から4重量%に変更した以外は同様にして、実施例9〜16および比較例2のインクセットを調製した。
実施例17〜32
さらに、上記の実施例1〜16のインクセットのジオール型のポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)(和光純薬工業株式会社製)を、ジオール型のポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000)(和光純薬工業株式会社製)に変更した以外は同様にして、実施例17〜32のインクセットを調製した。
実施例33〜48
また、上記の実施例1〜16のインクセットの1,2−オクタンジオールを2重量%または4重量%から1重量%に変更した以外は同様にして、実施例33〜48のインクセットを調製した。
さらに、上記の比較例1の1,2−オクタンジオールを2重量%から1重量%に変更した以外は同様にして、比較例3のインクセットを調製した。
実施例49〜56
また、上記の実施例1〜8のインクセットのポリオルガノシロキサン系界面活性剤をジェミニ型界面活性剤であるペリセアL−30(旭化成ケミカルズ株式会社製)(固形分として30重量%)に変更した以外は同様にして、実施例49〜56のインクセットを調製した。
さらに、上記の比較例1のポリオルガノシロキサン系界面活性剤を上記ジェミニ型界面活性剤であるペリセアL−30に変更した以外は同様にして、比較例4のインクセットを調製した。
(評価)
インクブリーディング(画質)の評価(その1)(ブリーディング1)
上記で得られたY、M、C、およびKの各インクをインクセットとして、インクジェットプリンター(PX−G920、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着し、主走査(ヘッド駆動)方向に720dpiでかつ副走査(記録媒体搬送)方向に360dpiで記録できるようにした。次に、着弾時のドットサイズが概ね7ngになるようにプリンタヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一駆動が720×360dpiで、約128g/平米のOKT+(王子製紙株式会社製)に、720×720dpiのベタ画像を記録した。記録は、低温高湿(15℃、65%湿度)環境下において実施した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は概ね3.6mg/inch平米であった。なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は3mmであった。記録画像は、Duty60%同士のDuty120%の2次色に、Duty60%の1次色の2〜8ピクセル罫線を接触させた画像である。
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。
A:2/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できている。
B:4/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できているが、2/720イ
ンチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
C:6/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できているが、4/720イ
ンチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
D:8/720インチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
評価結果は、下記の表2に示される通りであった。
インクブリーディング(画質)の評価(その2)(ブリーディング2)
上記で得られたY、M、C、およびKの各インクをインクセットとして、インクジェットプリンター(PX−G920、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着し、主走査(ヘッド駆動)方向に720dpiでかつ副走査(記録媒体搬送)方向に360dpiで記録できるようにした。次に、着弾時のドットサイズが概ね7ngになるようにプリンタヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一駆動が720×360dpiで、約128g/平米のOKT+(王子製紙株式会社製)に、720×720dpiのベタ画像を記録した。記録は、低温高湿(15℃、65%湿度)環境下において実施した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は概ね3.6mg/inch平米であった。なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は3mmであった。記録画像は、Duty60%同士のDuty180%の3次色に、Duty60%の1
次色の2〜8ピクセル罫線を接触させた画像である。
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。
A:2/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できている。
B:4/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できているが、2/720イ
ンチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
C:6/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できているが、4/720イ
ンチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
D:8/720インチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
インクブリーディング(画質)の評価(その3)(ブリーディング3)
上記で得られたY、M、C、およびKの各インクをインクセットとして、インクジェットプリンター(PX−G920、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着し、主走査(ヘッド駆動)方向に720dpiでかつ副走査(記録媒体搬送)方向に360dpiで記録できるようにした。次に、着弾時のドットサイズが概ね3ngになるようにプリンタヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一駆動が720×360dpiで、約128g/平米のOKT+(王子製紙株式会社製)に、720×720dpiのベタ画像を記録した。記録は、低温高湿(15℃、65%湿度)環境下において実施した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は概ね1.6mg/inch平米であった。なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は3mmであった。記録画像は、Duty60%同士のDuty120%の2次色に、Duty60%の1
次色の2〜8ピクセル罫線を接触させた画像である。
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。
A:2/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できている。
B:4/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できているが、2/720イ
ンチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
C:6/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できているが、4/720イ
ンチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
D:8/720インチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
評価結果は、下記の表2に示される通りであった。
インクブリーディング(画質)の評価(その4)(ブリーディング4)
上記で得られたY、M、C、およびKの各インクをインクセットとして、インクジェットプリンター(PX−G920、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着し、主走査(ヘッド駆動)方向に720dpiでかつ副走査(記録媒体搬送)方向に360dpiで記録できるようにした。次に、着弾時のドットサイズが概ね3ngになるようにプリンタヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一駆動が720×360dpiで、約128g/平米のOKT+(王子製紙株式会社製)に、720×720dpiのベタ画像を記録した。記録は、低温高湿(15℃、65%湿度)環境下において実施した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は概ね1.6mg/inch平米であった。なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は3mmであった。記録画像は、Duty60%同士のDuty180%の3次色に、Duty60%の1
次色の2〜8ピクセル罫線を接触させた画像である。
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。
A:2/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できている。
B:4/720インチの罫線がブリーディングなく、再現できているが、2/720イ
ンチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
C:8/720インチの罫線がブリーディングして、再現できていない。
評価結果は、下記の表2に示される通りであった。
インクビーディング(画質)の評価(その1)(ビーディング1)
上記で得られたY、M、C、およびKの各インクをインクセットとして、インクジェットプリンター(PX−G920、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着し、主走査(ヘッド駆動)方向に720dpiでかつ副走査(記録媒体搬送)方向に360dpiで記録できるようにした。次に、着弾時のドットサイズが概ね7ngになるようにプリンタヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一駆動が720×360dpiで、約128g/平米のOKT+(王子製紙株式会社製)に、720×720dpiのベタ画像を記録した。記録は、低温高湿(15℃、65%湿度)環境下において実施した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は概ね3.6mg/inch平米であった。なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は3mmであった。 記録画像は、同じDutyの単色同士を混合した2次色の画像である。
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。
AA:各単色Duty90%の2次色Duty180%までが、ビーディングなく再現
できている。
A:各単色Duty80%の2次色Duty160%までが、ビーディングなく再現で
きている。
B:各単色Duty70%の2次色Duty140%までが、ビーディングなく再現で
きている。
C:各単色Duty60%の2次色Duty120%までが、ビーディングなく再現で
きている。
評価結果は、下記の表2に示される通りであった。
インクビーディング(画質)の評価(その2)(ビーディング2)
上記で得られたY、M、C、およびKの各インクをインクセットとして、インクジェットプリンター(PX−G920、セイコーエプソン社製)のインクカートリッジに装着し、主走査(ヘッド駆動)方向に720dpiでかつ副走査(記録媒体搬送)方向に360dpiで記録できるようにした。次に、着弾時のドットサイズが概ね3ngになるようにプリンタヘッドのピエゾ素子に与える電圧を調整し、一駆動が720×360dpiで、約128g/平米のOKT+(王子製紙株式会社製)に、720×720dpiのベタ画像を記録した。記録は、低温高湿(15℃、65%湿度)環境下において実施した。この際、単色のDuty100%のインク付着量は概ね1.6mg/inch平米であった。なお、記録用紙と記録ヘッドとの間の距離は3mmであった。記録画像は、同じDutyの単色同士を混合した2次色の画像である。
得られた画像について、下記の基準により評価を行った。
AA:各単色Duty90%の2次色Duty180%までが、ビーディングなく再現
できている。
A:各単色Duty80%の2次色Duty160%までが、ビーディングなく再現で
きている。
B:各単色Duty70%の2次色Duty140%までが、ビーディングなく再現で
きている。
C:各単色Duty60%の2次色Duty120%までが、ビーディングなく再現で
きている。
評価結果は、下記の表2に示される通りであった。
ワイピング耐久の評価
上記のインクカートリッジおよびインクジェットプリンターを用いた。1回当たり各色で約0.25gのインクがキャップ内に廃棄され、その後、ヘッド面をワイパーがワイピングする動作を3000回繰り返し実施した。評価は、低温高湿(15℃、65%湿度)環境下において実施した。
A:濡れ曲がりが発生していない。
B:濡れ曲がりが発生している。
評価結果は、下記の表2に示される通りであった。
インクの初期粘度の評価
上記のようにして得られた各インクについて、インク粘度の評価を行った。振動型粘度計(MV100型番、ヤマイチエレクトロニクス社製)を用い、インク調製後1時間経過後のインクの粘度を測定し、以下の基準により評価を行った。なお、測定温度は20℃とした。
S:粘度が3.4mPa・s以下である。
A:粘度が3.5mPa・sを超え、4.5mPa・s以下である。
B:粘度が4.5mPa・sを超え、5.5mPa・s以下である。
C:粘度が5.5mPa・sを超える。
評価結果は、下記の表2に示される通りであった。
目詰まり回復性の評価
上記のインクカートリッジおよびインクジェットプリンターを用い、インク交換ボタンを押してからコンセントを抜いた。このように、ヘッドキャップが外れた状態にしてから、プリンターを50℃/湿度15%の環境に2日間放置した。
放置後、全ノズルが初期と同等に噴射するまでクリーニング動作を繰り返し、以下の判断基準により、回復しやすさを評価した。
AA:クリーニング操作を3回繰り返して目詰まりが回復する。
A:クリーニング操作を6回繰り返して目詰まりが回復する。
B:クリーニング操作を12回繰り返して目詰まりが回復する。
C:クリーニング操作を12回繰り返しても目詰まりが回復しない。
結果は下記の表2に示される通りであった。
Figure 2011152647
Figure 2011152647
また、実施例49〜56および比較例4についても上記と同様の評価を行ったところ、実施例1〜8および比較例1と、初期粘度の評価以外は同一の評価結果であった。初期粘度の評価は、一段階向上した。ジェミニ型界面活性剤であるペリセアL−30を含むインク組成物の方が、ポリオルガノシロキサン系界面活性剤に比べ、初期粘度が向上することがわかる。
(実施の形態の主な効果)
上述のように本実施の形態に係る流体噴射装置としてのプリンター1は、ノズル形成面16に形成される流体噴射ノズルとしてのノズル29から流体としてのインクを噴射する流体噴射ヘッドとしての印刷ヘッド2と、ノズル形成面16を封止可能なキャップ17と、キャップ17に設けられた吸引口として孔部28からキャップ17内に負圧を発生させることができる吸引ポンプ25と、キャップ17の内部とキャップ17の外部の大気とを連通するチューブ30,32と、チューブ32に接続され、キャップ17の内部を、チューブ30,32を介して大気に開放する状態と大気から閉塞する状態とに切り替えることができる大気開放弁33と、チューブ30のキャップ17と大気開放弁33との間の部分を押圧することができる押圧部としてのローラー40A,40Bを、該部分を押圧する状態と押圧しない状態とに変位させることができる共に、ローラー40A,40Bがチューブ30を押圧している状態で、ローラー40A,40Bをチューブ30に沿ってキャップ17側から大気開放弁33に向けて移動することができるチューブ押圧手段としてのチューブポンプ31を備える。
このようにプリンター1を構成することで、チューブ30,32内であるインクをチューブ30,32外に排出することができる。そのため、キャップ17から大気開放弁に繋がるチューブ30,32内に流れ込んだ流体を洗浄によることなく、チューブ外に排出することができ、チューブ30,32内でのインクの増粘や固化を未然に防ぐごとができる。
また、チューブ押圧手段として、チューブ押圧機構60を用いることができる。この場合は、押圧部としてのローラー65が、チューブ30を押圧している状態で、ローラー65をチューブ30に沿ってキャップ17側から大気開放弁33に向けて移動させる。
また、プリンター1においては、印刷ヘッド2が2つ以上備えられ、各印刷ヘッド2毎に、キャップ17、チューブ30、およびチューブポンプ31を有する構成としている。
印刷ヘッド2を2つ以上備える場合、キャップ17の周囲に配置される構造物の数が増えたり構造が複雑化し、キャップ17の近傍に大気開放弁33を配置するスペースを確保することができなくなることがある。このような場合には、大気開放弁33をキャップ17から離れた位置に配置せざるを得ず、キャップ17と大気開放弁33とを連通するチューブ30,32の長さが長くなってしまう。一方、チューブ30,32は長さが長くなるものほど、チューブ内にインクが溜まり易くなる。そこで、各印刷噴射ヘッド2毎に、キャップ17、チューブ30、およびチューブポンプ31を備えることで、キャップ17と大気開放弁33とを連通するチューブ30,32の長さが長い場合でも、チューブ30内に流れ込んだインクの排出を行うことができる。
また、プリンター1においては、印刷ヘッド2が2つ以上備えられると共に、各印刷ヘッド2毎に、キャップ17が備えられ、チューブ30は、各キャップ17に接続される分岐チューブ58と、複数の分岐チューブ58が接続される集合チューブ59とを有し、大気開放弁33は、集合チューブ59に接続され、チューブポンプ31は、集合チューブ59に対して備えられる構成としてもよい。
このようにプリンター1を構成することで、1台のチューブポンプ31により複数の分岐チューブ58に対して、チューブ30内に流れ込んだインクを上流側から下流側に流すことができ、チューブポンプ31の台数を減らすことができる。その結果、プリンター1の小型化と部品点数の削減を図ることができる。なお、チューブ押圧手段としては、チューブ押圧機構60を備えてもよい。
また、プリンター1においては、印刷ヘッド2が2つ以上備えられ、各印刷ヘッド2毎に、キャップ17およびチューブ30が備えられ、チューブ押圧手段としてのチューブ押圧機構60が、押圧部としてのローラー65を、少なくとも2つの複数チューブ30に対して同時に押圧する状態と押圧しない状態とに変位可能とすると共に、ローラー65が複数のチューブ30を押圧している状態で、ローラー65をチューブ30に沿ってキャップ17側から大気開放弁33側に向けて移動することとしてもよい。
プリンター1をこのように構成することで、1台のチューブ押圧機構60により複数のチューブ30に対して、チューブ30内に流れ込んだインクを上流側から下流側に流すことができ、チューブ押圧機構60の台数を減らすことができる。その結果、プリンター1の小型化と部品点数の削減を図ることができる。
また、プリンター1においては、チューブポンプ31のチューブ30を押圧する押圧部であるローラー40A,40Bが回転可能となっている。また、チューブ押圧手段として、チューブ押圧機構60を用いた場合には、ローラー65が回転可能となっている。
このようにプリンター1を構成することで、ローラー40A,40Bあるいはローラー65とチューブ30との擦れが少なくなり、チューブ30が損傷してしまう虞を低減できる。
また、プリンター1においては、チューブ30または集合チューブ59は、少なくともチューブポンプ31のローラー40A,40Bが接触する部分において、自己潤滑性を有することとしてもよい。
このようにプリンター1を構成することで、チューブ30または集合チューブ59のローラー40A,40Bと接触する部分の摩耗を低減することができる。また、チューブ押圧手段として、チューブ押圧機構60を用いた場合には、チューブ30または集合チューブ59のローラー65と接触する部分において、自己潤滑性を有することとしてもよい。このようにプリンター1を構成することで、チューブ30または集合チューブ59のローラー65と接触する部分の摩耗を低減することができる。
また、プリンター1において、インクは、白色のインクジェット記録用インク組成物を有することとしてもよい。
白色のインクジェット記録用インク組成物は、高粘度となる傾向にあり、増粘や固化し易い。したがって、白色のインクジェット記録用インク組成物を有するインクが流れるチューブ30あるいはチューブ32に対して、大気開放機構23を備え、排出処理を行うことができるように構成することで、チューブ30あるいはチューブ32内でのインクの増粘や固化を効果的に防ぐごとができる。
また、プリンター1において、インクは、着色材と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、ポリアルキレングリコールとを少なくとも含んでいることとしてもよい。
かかる成分を含むインクは、高粘度となる。したがって、増粘や固化をし易い。したがって、高粘度インクが流れるチューブ30あるいはチューブ32に対して、大気開放機構23を備え、排出処理を行うことができるように構成することで、チューブ30あるいはチューブ32内での高粘度インクの増粘や固化を効果的に防ぐことができる。
上述の実施形態では、流体噴射装置をインクジェットプリンターに具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体、流体として流して噴射できる固体を含む)を噴射したり噴射したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。なお、「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。
2 … 印刷ヘッド(流体噴射ヘッド) 16 … ノズル形成面 17 … キャップ 25 … 吸引ポンプ 28 … 孔部(吸引口) 29 … ノズル(流体噴射ノズル) 30,32 … チューブ 31 … チューブポンプ(チューブ押圧手段) 33 … 大気開放弁 40A,40B,65 … ローラー(押圧部)
58 … 分岐チューブ 59 … 集合チューブ 60 … チューブ押圧機構(チューブ押圧手段)

Claims (8)

  1. ノズル形成面に形成される流体噴射ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
    上記ノズル形成面を封止可能なキャップと、
    上記キャップに設けられた吸引口から上記キャップ内に負圧を発生させることができる吸引ポンプと、
    上記キャップの内部と上記キャップの外部の大気とを連通するチューブと、
    上記チューブに接続され、上記キャップの内部を上記チューブを介して上記大気に開放する状態と上記大気から閉塞する状態とに切り替えることができる大気開放弁と、
    上記チューブの上記キャップと上記大気開放弁との間の部分を押圧することができる押圧部を、上記部分を押圧する状態と押圧しない状態とに変位させることができる共に、上記押圧部が上記チューブを押圧している状態で、上記押圧部を上気チューブに沿って上記キャップ側から上記大気開放弁側に向けて移動することができるチューブ押圧手段と、
    を備えることを特徴とする流体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の流体噴射装置であって、
    前記流体噴射ヘッドを2つ以上備えると共に、各流体噴射ヘッド毎に、前記キャップ、前記チューブ、および前記チューブ押圧手段を有する、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  3. 請求項1に記載の流体噴射装置であって、
    前記流体噴射ヘッドを2つ以上備えると共に、各流体噴射ヘッド毎に前記キャップが備えられ、
    前記チューブは、上記各キャップに接続される分岐チューブと、上記複数の分岐チューブが接続される集合チューブとを有し、
    前記大気開放弁は、上記集合チューブに接続され、
    前記チューブ押圧手段は、上記集合チューブに対して備えられる、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  4. 請求項1に記載の流体噴射装置であって、
    前記流体噴射ヘッドを2つ以上備えると共に、各流体噴射ヘッド毎に、前記キャップおよび前記チューブが備えられ、
    前記チューブ押圧手段は、少なくとも2つの前記チューブを同時に押圧する状態と押圧しない状態とに、前記押圧部を変位させることができると共に、前記押圧部が前記チューブを押圧している状態で、前記押圧部を前記チューブに沿って前記キャップ側から前記大気開放弁側に向けて移動させることができる、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  5. 請求項1から4のいずれか1に記載の流体噴射装置であって、
    前記チューブ押圧手段の前記押圧部は、ローラーである、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  6. 請求項1から4のいずれか1に記載の流体噴射装置であって、
    前記チューブまたは前記集合チューブは、少なくとも、前記チューブ押圧手段の前記押圧部が接触する部分において自己潤滑性を有する、
    ことを特徴とする流体噴射装置。
  7. 請求項1から6のいずれか1に記載の流体噴射装置であって、
    前記流体は、白色のインクジェット記録用インク組成物を有することを特徴とする流体噴射装置。
  8. 請求項1から6のいずれか1に記載の流体噴射装置であって、
    前記流体は、着色材と、水と、難水溶性のアルカンジオールと、ポリアルキレングリコールとを少なくとも含んでなる、インクジェット記録用インク組成物を有することを特徴とする流体噴射装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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