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JP2011099464A - 車輪用軸受シール - Google Patents

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JP2011099464A JP2009252834A JP2009252834A JP2011099464A JP 2011099464 A JP2011099464 A JP 2011099464A JP 2009252834 A JP2009252834 A JP 2009252834A JP 2009252834 A JP2009252834 A JP 2009252834A JP 2011099464 A JP2011099464 A JP 2011099464A
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Abstract

【課題】シール内への泥水の浸入を防止して密封性の向上を図ると共に、例え、泥水が浸入して堆積してもシールの摺動抵抗の増大を抑制して低トルク化を図った車輪用軸受シールを提供する。
【解決手段】磁気エンコーダ14に、スリンガ11の立板部11bの外径部を覆う回り込み部14aが形成されると共に、シール部材13が、芯金12の嵌合部12aの端部外表面に回り込んで固着され、シール部材13の開口端部15の内径面が、外径側に向って5〜20°の傾斜角αからなるテーパ面に形成され、この内径d2と回り込み部14aの外径d1が0.2〜0.3mmの範囲に設定された径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシール16が構成されているので、シール7の耐泥水性能を向上させると共に、シール7内に泥水が浸入したとしても遠心力で容易に排出され、軸受空間への泥水の浸入を効果的に防止することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、パックシールからなる車輪用軸受シールに関し、詳しくは、シール内への泥水の浸入を防止して密封性の向上を図ると共に、例え、泥水が浸入して堆積してもシールの摺動抵抗の増大を抑制して低トルク化を図った車輪用軸受シールに関するものである。
従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を複列の転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第3世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第4世代構造とに大別されている。
これらの軸受開口部には、軸受内部に封入されたグリースの漏れを防止すると共に、外部から雨水やダスト等の侵入を防止するためにシールが装着されている。近年、自動車の燃費向上のため軸受部の低トルク化が進んでいる。この軸受部の回転トルクのうち、シールの回転トルクが支配的である。すなわち、転がり抵抗に比べシールの摺動抵抗が大きく、回転トルクに占めるシールの摺動抵抗の比率が高く、車輪用軸受装置のシールにおいて、さらなる低トルク化が要求されるようになっている。また、市場回収品の軸受損傷状況を検証すると、剥離等の本来の軸受寿命よりも、シール不具合による損傷が多くを占めている。したがって、シールの密封性と耐久性を高めることにより、軸受寿命の向上を確実に図ることができる。
従来から、密封性を高めた車輪用軸受シールに関しては種々提案されているが、こうした車輪用軸受シールの代表的な一例を図6に示す。このシール50は、外輪51の端部内周面に嵌合される芯金52と、内輪53の端部外周面に嵌合されるスリンガ54と、芯金52に接着固定されてスリンガ54に摺接するシール部材55とを備えている。
芯金52は、外輪51の内周面に内嵌固定される外径側円筒部52aと、この外径側円筒部52aの軸方向内端縁から径方向内方に延びる内側円環部52bとを有して断面略L字状に形成されている。一方、スリンガ54は、内輪53の外周面に外嵌固定される内径円筒部54aと、この内径円筒部54aの軸方向外端縁から径方向外方に延びる外側円環部54bとを有して断面略L字状に形成されている。
シール部材55は合成ゴム等により形成され、スリンガ54の外側円環部54bに対して軸方向に摺接するアキシアルリップ55aと、内径側円筒部54aに対して径方向に摺接するラジアルリップ55bおよびグリースリップ55cを有している。また、スリンガ54の外側円環部54bにはABS用の磁気エンコーダ56が接着等により固定されている。
ここで、スリンガ54の外側円環部54bの軸方向内側面において、アキシアルリップ55aの軸方向の摺接位置より径方向外方部位に段部57が形成され、この段部57の軸方向側面57aと連続して磁気エンコーダ56が形成されている。このように、アキシアルリップ55aとスリンガ54は、アキシアルリップ55aの摺接位置より径方向外方部位が段差57によって摺接位置よりも軸方向外方に位置するように形成されているので、アキシアルリップ55aの先端近傍およびアキシアルリップ55aと摺接するスリンガ54に泥水等の異物が固着し難くなる。
また、泥水等の異物が固着したとしても、アキシアルリップ55aの先端摺接部以外の部分での泥との接触がなくなるため、高い密封性を維持することができると共に、アキシアルリップ55aの低摩擦化および低摩耗化を図ることができる(例えば、特許文献1参照。)。
また、軸受空間への泥水の浸入を効果的に防止したシールとして図7に示すようなものが知られている。このシール58は、外方部材側に装着されたシール部材59と、内方部材側に装着されたスリンガ60とを備えている。
シール部材59は、外方部材の端部内周面に内嵌される円筒部61aと、この円筒部61aの軸方向内端から直角に折曲される円環部61bとからなる芯金61と、この芯金61に加硫接着されたゴム部材62とからなる。
スリンガ60は、内方部材側の外径面に外嵌される円筒部60aと、この円筒部60aの軸方向外端から直角に折曲され、先端がシール部材59のゴム部材62との間に径方向すきま63を形成する円環部60bとからなり、円環部60bの外側面に回転センサの磁気エンコーダとなり、円周方向で複数の磁極に着磁された磁性ゴム64が加硫接着で固定されている。シール部材59のゴム部材62は、スリンガ60の円環部60bに摺接する2つのシールリップ62a、62bと、円筒部60aに摺接する1つのシールリップ62cとが形成されている。
ここで、スリンガ60の円環部60bの外側面に固定された磁性ゴム64は、円環部60bの先端から内面側に回り込むように形成され、この円環部60bの先端から内面側に回り込んだ磁性ゴム64と、シール部材59のゴム部材62との間で、半径方向すきま63が軸方向外方へ半径方向外向きに傾斜するように形成されている。この傾斜角θは25〜45°とされている。これにより、ラビリンスすきまとなる半径方向すきま63の長さが長くなると共に、この半径方向すきま63から入った泥水が車輪の回転に伴う遠心力で容易に排出され、軸受空間への泥水の浸入を効果的に防止することができる(例えば、特許文献2参照。)。
特開2007−032640号公報 特開2007−285499号公報
然しながら、こうした従来の前者(特許文献1)のシール50では、スリンガ54の外側円環部54bの軸方向内側面に段部57が形成され、この段部57の軸方向側面57aと連続して接着により磁気エンコーダ56が固定されているが、段部57の軸方向側面57aにまで回り込んで接合されていないため、磁気エンコーダ56が剥れる恐れがあると共に、接着力を充分に確保するにはスリンガ54の板厚が必然的に厚くなってしまう。
一方、後者(特許文献2)のシール58では、ラビリンスすきまとなる半径方向すきま63の長さが長くなって泥水の浸入を効果的に防止することができるものの、一度浸入した泥水が車両の停止中に固着すると、シールリップ62aの先端が固着した泥水に摺接し、トルクの増大や摩耗が促進される恐れがあった。
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、シール内への泥水の浸入を防止して密封性の向上を図ると共に、例え、泥水が浸入して堆積してもシールの摺動抵抗の増大を抑制して低トルク化を図った車輪用軸受シールを提供することを目的とする。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に複列の内側転走面を有する内方部材との間の開口部に装着された車輪用軸受シールであって、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなるパックシールで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合されたシール部材とを備え、このシール部材が、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップと、軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップとを一体に有すると共に、前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部のインナー側の側面に磁気エンコーダが加硫接着により一体に接合され、当該立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接され、前記円筒部に前記グリースリップが所定の径方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、前記磁気エンコーダに、前記スリンガの立板部の外径部を覆うように回り込み部が形成されると共に、前記シール部材が、前記芯金の嵌合部の端部外表面に回り込んで固着され、当該シール部材の開口端部の内径面が、外径側に向って所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、この内径と、前記回り込み部の外径が僅かな径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されている。
このように、内方部材と外方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着された車輪用軸受シールが、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなるパックシールで構成され、シール板が、外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合されたシール部材とを備え、このシール部材が、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップと、軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップとを一体に有すると共に、スリンガが断面略L字状に形成され、内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部のインナー側の側面に磁気エンコーダが加硫接着により一体に接合され、当該立板部にサイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接され、円筒部にグリースリップが所定の径方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、磁気エンコーダに、スリンガの立板部の外径部を覆うように回り込み部が形成されると共に、シール部材が、芯金の嵌合部の端部外表面に回り込んで固着され、当該シール部材の開口端部の内径面が、外径側に向って所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、この内径と、回り込み部の外径が僅かな径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されているので、シールの耐泥水性能を向上させると共に、ラビリンスシールからシール内に泥水が浸入したとしても、車輪の回転に伴う遠心力で容易に排出され、軸受空間への泥水の浸入を効果的に防止することができる。
また、請求項2に記載の発明のように、前記シール部材の開口端部と磁気エンコーダの回り込み部との径方向すきまが0.2〜0.3mm(直径値)の範囲に設定されていれば、シールの耐泥水性能を向上させることができる。
また、請求項3に記載の発明のように、前記シール部材の開口端部の内径面の傾斜角が5〜20°の範囲に設定されていれば、ラビリンスシールからシール内に泥水が浸入したとしても、車輪の回転に伴う遠心力で容易に排出され、シールの耐泥水性能を向上させることができる。
また、請求項4に記載の発明のように、前記磁気エンコーダの回り込み部のストレート部が、前記サイドリップの先端の延長線上にまで延設されていれば、磁気エンコーダの接合力が高まり、長期間に亘って立板部から剥離するのを防止すると共に、ラビリンスシールから浸入した泥水が遠心力によってサイドリップの外表面に沿って容易に排出することができ、例え、泥水が堆積し、固着したとしても、サイドリップの先端摺接部以外の部分での泥との接触がなくなるため、シールの摺動抵抗の増大を抑制して低トルク化を図ることができる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記スリンガの立板部の外径部に段部が形成され、この段部に前記磁気エンコーダの回り込み部が形成されると共に、この回り込み部の端面が前記立板部のアウター側の側面と略面一に設定されていれば、ラビリンスシールから浸入した泥水が遠心力によってサイドリップの外表面に沿って容易に排出することができ、シールの耐泥水性能をさらに向上させることができる。
また、請求項6に記載の発明のように、前記立板部の段部の深さが0.2〜0.5mmの範囲に設定されると共に、当該段部の幅が0.2〜0.6mmの範囲に設定されていれば、磁気エンコーダを加硫接着でき、また、スリンガの板厚を必要以上に厚くすることなく立板部の強度を確保することができる。
また、請求項7に記載の発明のように、前記開口端部の内径面のテーパ面が路面側に位置する内径面のみに形成され、所定の角度範囲からなる排出口として構成され、これ以外の内径面が円筒状に形成されていれば、ラビリンスシールからシール内に泥水が浸入したとしても、車輪の停止時に外側のサイドリップに沿って泥水が下方側に垂れ下がり、路面側の開口端部にテーパ面からなる排出口が形成されるので、この排出口を通して容易に泥水を排出させることができ、シールの耐泥水性能をさらに向上させることができる。
また、請求項8に記載の発明のように、前記排出口の形成角度が30〜75°の範囲に設定されていれば、効果的に泥水を効果的に排出することができ、シールの耐泥水性能を向上させることができる。
また、請求項9に記載の発明のように、前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びる第1および第2のサイドリップを備え、これらの第1および第2のサイドリップのうち外径側に形成された第1のサイドリップのシメシロが内径側のサイドリップのシメシロよりも僅かに大きく設定されていれば、シール摺動トルクを抑制し、第1のサイドリップが摩耗しても所望の密封性を維持することができる。
また、請求項10に記載の発明のように、前記シール部材が水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムで形成されていても良い。
本発明に係る車輪用軸受シールは、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に複列の内側転走面を有する内方部材との間の開口部に装着された車輪用軸受シールであって、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなるパックシールで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合されたシール部材とを備え、このシール部材が、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップと、軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップとを一体に有すると共に、前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部のインナー側の側面に磁気エンコーダが加硫接着により一体に接合され、当該立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接され、前記円筒部に前記グリースリップが所定の径方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、前記磁気エンコーダに、前記スリンガの立板部の外径部を覆うように回り込み部が形成されると共に、前記シール部材が、前記芯金の嵌合部の端部外表面に回り込んで固着され、当該シール部材の開口端部の内径面が、外径側に向って所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、この内径と、前記回り込み部の外径が僅かな径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されているので、シールの耐泥水性能を向上させると共に、ラビリンスシールからシール内に泥水が浸入したとしても、車輪の回転に伴う遠心力で容易に排出され、軸受空間への泥水の浸入を効果的に防止することができる。
本発明に係る車輪用軸受シールが装着された車輪用軸受を示す縦断面図である。 本発明に係るシールを示す断面図である。 (a)は、図2のシールの変形例を示す断面図、(b)は、(a)の拡大図である。 (a)は、図3のシールの変形例を示す断面図、(b)は、(a)の拡大図である。 (a)は、図2のシールの他の変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の正面図である。 従来のシールを示す断面図である。 他の従来のシールを示す断面図である。
内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に複列の内側転走面を有する内方部材との間の開口部に装着された車輪用軸受シールであって、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなるパックシールで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合されたシール部材とを備え、このシール部材が、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップと、軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップとを一体に有すると共に、前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、この立板部のインナー側の側面に磁気エンコーダが加硫接着により一体に接合され、当該立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接され、前記円筒部に前記グリースリップが所定の径方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、前記磁気エンコーダに、前記スリンガの立板部の外径部を覆うように回り込み部が形成されると共に、前記シール部材が、前記芯金の嵌合部の端部外表面に回り込んで固着され、当該シール部材の開口端部の内径面が、外径側に向って5〜20°の傾斜角からなるテーパ面に形成され、この内径と、前記回り込み部の外径が0.2〜0.3mm(直径値)の範囲に設定された径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係るシールが装着された車輪用軸受を示す縦断面図、図2は、本発明に係るシールを示す断面図、図3(a)は、図2のシールの変形例を示す断面図、(b)は、(a)の拡大図、図4(a)は、図3の変形例を示す断面図、(b)は、(a)の拡大図、図5(a)は、図2のシールの他の変形例を示す縦断面図、(b)は、(a)の正面図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図1の左側)、中央寄り側をインナー側(図1の右側)という。
図1に示す車輪用軸受1は第1世代と称され、内周に複列の外側転走面2a、2aが一体に形成された外方部材2と、外周に前記複列の外側転走面2a、2aに対向する内側転走面3aがそれぞれ形成された一対の内輪3、3と、両転走面間に収容された複列の転動体(ボール)4、4と、これらの転動体4、4を転動自在に保持する保持器5、5と、外方部材2と一対の内輪3、3との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシール6、7とを備えている。
外方部材2はSUJ2(JIS G 4805)等の高炭素クロム軸受鋼、あるいは浸炭鋼からなる。高炭素クロム軸受鋼の場合は820〜860℃でズブ焼入れされた後、160〜200℃で焼戻しされ、58〜64HRCの範囲に芯部まで硬化処理されている。また、浸炭鋼の場合は、表面が58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。一方、内輪3も外方部材2と同様、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼、あるいは浸炭鋼からなり、高炭素クロム軸受鋼の場合は58〜64HRCの範囲に芯部まで硬化処理され、浸炭鋼の場合は、表面が58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。また、転動体4はSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで62〜67HRCの範囲に硬化処理されている。
この車輪用軸受1は、一対の内輪3、3の小径側(正面側)端面3b、3bが突き合された状態でセットされ、所謂背面合せタイプの複列のアンギュラ玉軸受を構成している。また、シール6、7によって、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
シール6、7のうちアウター側のシール6は、固定側部材となる外方部材2のアウター側端部の内周に所定のシメシロを介して圧入された芯金8と、この芯金8に接合されたシール部材9とからなる一体型のシールで構成されている。
また、インナー側のシール7は、図2に拡大して示すように、互いに対向配置された環状のシール板10とスリンガ11とからなる複合型のシール、所謂パックシールで構成されている。シール板10は、外方部材2に装着される芯金12と、この芯金12に加硫接着により一体に接合されたシール部材13とからなる。
芯金12は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)等の防錆能を有する鋼板からプレス加工にて断面略L字状に形成され、外方部材2に圧入され、端部が僅かに縮径されて薄肉に形成された円筒状の嵌合部12aと、この嵌合部12aから径方向内方に延びる内径部12bとを備えている。
シール部材13は、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなり、径方向外方に傾斜して延びる第1および第2のサイドリップ13a、13bと、これら第1および第2のサイドリップ13a、13bの内径側で、軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップ13cとを有している。なお、シール部材13の材質としては、NBR以外にも、例えば、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、EPM、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)等をはじめ、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等を例示することができる。
一方、スリンガ11は断面略L字状に形成され、内輪3の外径に圧入される円筒部11aと、この円筒部11aから径方向外方に延びる立板部11bとを備えている。そして、シール部材13の第1および第2のサイドリップ13a、13bが立板部11bに所定の軸方向シメシロを介して摺接されると共に、グリースリップ13cが円筒部11aに所定の径方向シメシロを介して摺接されている。そして、第1および第2のサイドリップ13a、13bのうち外径側に形成された第1のサイドリップ13aのシメシロが内径側のサイドリップ13bのシメシロよりも僅かに大きく設定されている。これにより、シール摺動トルクを抑制し、第1のサイドリップ13aが摩耗しても所望の密封性を維持することができる。さらに、立板部11bのインナー側の側面に磁気エンコーダ14が加硫接着により一体に接合されている。この磁気エンコーダ14は、エラストマに磁性体粉が混入され、周方向等配で交互に磁極N、Sが着磁されてロータリエンコーダを構成している。
なお、ここでは、転動体4をボールとした複列アンギュラ玉軸受で構成された第1世代の車輪用軸受を例示したが、これに限らず転動体に円すいころを使用した複列円すいころ軸受で構成されていても良い。また、第2〜第3世代構造であっても良い。
ここで、シール部材13は、芯金12の嵌合部12aの端部外表面に回り込んで固着され、外方部材2との嵌合部の気密性の向上を図っている。そして、シール部材13の開口端部15の内径面が、外径側に向って所定の傾斜角αからなるテーパ面に形成されている。また、磁気エンコーダ14は、スリンガ11の立板部11bの外径部を覆うように回り込み部14aが形成されている。この外径d1と、シール部材13の開口端部15の内径d2が、僅かな径方向すきまδを介して対峙し、ラビリンスシール16が構成されている。開口端部15の傾斜角αは5〜20°の範囲に設定されると共に、径方向すきまδ(=d2−d1)は、0.2〜0.3mmの範囲に設定されている。これにより、シール7の耐泥水性能を向上させると共に、ラビリンスシール16からシール7内に泥水が浸入したとしても、車輪の回転に伴う遠心力で容易に排出され、軸受空間への泥水の浸入を効果的に防止することができる。
なお、開口端部15の傾斜角αが20°を超えると、泥水が浸入し易くなると共に、傾斜角αが5°未満では遠心力による泥水の排出が難しくなるので好ましくない。また、ラビリンスシール16の径方向すきまδが0.3mm(直径値)を超えると、ラビリンス効果が減少して耐泥水性能が低下すると共に、0.2mm(直径値)未満では、泥水の排出が難しくなるので好ましくない。
図3(a)に示すシール17は、前述したシール7の変形例である。なお、このシール17は、シール7と基本的には形状は同じであるが、磁気エンコーダ18の回り込み部18aの構成が異なる。すなわち、(b)に拡大して示すように、外径側のサイドリップ13aの先端の延長線上にまで磁気エンコーダ18の回り込み部18aのストレート部が深く延設されている。これにより、磁気エンコーダ18の接合力が高まり、長期間に亘って立板部11bから剥離するのを防止すると共に、ラビリンスシール16から浸入した泥水が遠心力によってサイドリップ13aの外表面に沿って容易に排出することができ、例え、泥水が堆積し、固着したとしても、サイドリップ13aの先端摺接部以外の部分での泥との接触がなくなるため、シール17の摺動抵抗の増大を抑制して低トルク化を図った車輪用軸受シールを提供することができる。
図4(a)に示すシール19は、前述したシール17の変形例である。なお、このシール19は、シール17と基本的には形状は同じであるが、スリンガ20の立板部20bの外径部と磁気エンコーダ21の回り込みストレート部の構成が異なる。すなわち、スリンガ20は、内輪(図示せず)の外径に嵌合される円筒部11aとこの円筒部11aから径方向外方に延びる立板部20aとからなり、この立板部20aの外径部に段部22が形成されている。(b)に拡大して示すように、この段部22に磁気エンコーダ21の回り込み部21aが形成され、その端面が立板部20aのアウター側の側面と略面一に設定されている。そして、外径側のサイドリップ13aの先端の延長線上に回り込み部21aが配置されている。これにより、ラビリンスシール16から浸入した泥水が遠心力によってサイドリップ13aの外表面に沿って容易に排出することができ、例え、泥水が堆積し、固着したとしても、サイドリップ13aの先端摺接部以外の部分での泥との接触がなくなるため、シール19の摺動抵抗の増大を抑制することができる。ここで、前記「略面一」の略とは、各部材の出来具合や接合時の誤差程度のものも含む意味であり、具体的には±0.1mm程度である。
なお、立板部20aの段部22の深さEが0.2〜0.5mmの範囲に設定されると共に、その幅Fが0.2〜0.6mmの範囲に設定されている。これにより、スリンガ20の板厚を必要以上に厚くすることなく立板部20aの強度を確保することができる。
図5(a)に示すシール23は、前述したシール7の他の変形例である。なお、このシール23は、互いに対向配置された環状のシール板24とスリンガ11とからなるパックシールで構成されている。シール板24は、外方部材(図示せず)に装着される芯金12と、この芯金12に加硫接着により一体に接合されたシール部材25とからなる。
シール部材25の開口端部26の内径面のうち、路面側(図中下方側)に位置する所定角度βの範囲の内径面のみが、外径側に向って所定の傾斜角αからなるテーパ面に形成され、その他の内径面が円筒状に形成されている。これにより、車輪の回転に伴う遠心力で容易に排出されると共に、ラビリンスシール16からシール23内に泥水が浸入したとしても、車輪の停止時に外側のサイドリップ13aに沿って泥水が下方側に垂れ下がり、路面側の開口端部26にテーパ面からなる排出口26aが形成されているので、この排出口26aを通して容易に泥水を排出させることができ、シール23の耐泥水性能をさらに向上させることができる。
なお、ここで、路面側の排出口26aの形成角度βは30〜75°の範囲が好ましい。βが30°未満では、その排出効果が小さくなると共に、βが75°を超えると、シール23の耐泥水性能が低下するからである。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る車輪用軸受シールは、互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなるパックシールに適用することができる。
1 車輪用軸受
2 外方部材
2a 外側転走面
3 内輪
3a 内側転走面
3b 小径側端面
4 転動体
5 保持器
6、7、17、19、23 シール
8、12 芯金
9、13、25 シール部材
10、24 シール板
11、20 スリンガ
11a 円筒部
11b、20a 立板部
12a 嵌合部
12b 内径部
13a 第1のサイドリップ
13b 第2のサイドリップ
13c グリースリップ
14、18、21 磁気エンコーダ
14a、18a、21a 回り込み部
15、26 開口端部
16 ラビリンスシール
22 段部
26a 排出口
50、58 シール
51 外輪
52 芯金
52a 外径側円筒部
52b 内側円環部
53 内輪
54 スリンガ
54a 内径円筒部
54b 外側円環部
55 シール部材
55a アキシアルリップ
55b ラジアルリップ
55c グリースリップ
56 磁気エンコーダ
57 段差
57a 段部の軸方向側面
59 シール部材
60 スリンガ
60a 円筒部
60b 円環部
61 芯金
61a 円筒部
61b 円環部
62 ゴム部材
62a、62b アキシアルリップ
62c グリースリップ
63 径方向すきま
64 磁性ゴム
d1 磁気エンコーダの外径
d2 開口端部の内径
θ 傾斜角
α 開口端部の内径面の傾斜角
β テーパ面の形成角度

Claims (10)

  1. 内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、この外方部材に複列の転動体を介して内挿され、外周に複列の内側転走面を有する内方部材との間の開口部に装着された車輪用軸受シールであって、
    互いに対向配置された環状のシール板とスリンガとからなるパックシールで構成され、前記シール板が、前記外方部材の端部内周に圧入される芯金と、この芯金に加硫接着により一体に接合されたシール部材とを備え、
    このシール部材が、径方向外方に傾斜して延びるサイドリップと、軸受内方側に傾斜して延びるグリースリップとを一体に有すると共に、
    前記スリンガが断面略L字状に形成され、前記内方部材の端部外周に圧入される円筒部と、この円筒部から径方向外方に延びる立板部とを有し、
    この立板部のインナー側の側面に磁気エンコーダが加硫接着により一体に接合され、当該立板部に前記サイドリップが所定の軸方向シメシロを介して摺接され、前記円筒部に前記グリースリップが所定の径方向シメシロを介して摺接された車輪用軸受シールにおいて、
    前記磁気エンコーダに、前記スリンガの立板部の外径部を覆うように回り込み部が形成されると共に、前記シール部材が、前記芯金の嵌合部の端部外表面に回り込んで固着され、当該シール部材の開口端部の内径面が、外径側に向って所定の傾斜角からなるテーパ面に形成され、この内径と、前記回り込み部の外径が僅かな径方向すきまを介して対峙し、ラビリンスシールが構成されていることを特徴とする車輪用軸受シール。
  2. 前記シール部材の開口端部と前記磁気エンコーダの回り込み部との径方向すきまが0.2〜0.3mm(直径値)の範囲に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
  3. 前記シール部材の開口端部の内径面の傾斜角が5〜20°の範囲に設定されている請求項1または2に記載の車輪用軸受シール。
  4. 前記磁気エンコーダの回り込み部のストレート部が、前記サイドリップの先端の延長線上にまで延設されている請求項1または2に記載の車輪用軸受シール。
  5. 前記スリンガの立板部の外径部に段部が形成され、この段部に前記磁気エンコーダの回り込み部が形成されると共に、この回り込み部の端面が前記立板部のアウター側の側面と略面一に設定されている請求項1に記載の車輪用軸受シール。
  6. 前記立板部の段部の深さが0.2〜0.5mmの範囲に設定されると共に、当該段部の幅が0.2〜0.6mmの範囲に設定されている請求項5に記載の車輪用軸受シール。
  7. 前記開口端部の内径面のテーパ面が路面側に位置する内径面のみに形成され、所定の角度範囲からなる排出口として構成され、これ以外の内径面が円筒状に形成されている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受シール。
  8. 前記排出口の形成角度が30〜75°の範囲に設定されている請求項7に記載の車輪用軸受シール。
  9. 前記シール部材が、径方向外方に傾斜して延びる第1および第2のサイドリップを備え、これらの第1および第2のサイドリップのうち外径側に形成された第1のサイドリップのシメシロが内径側のサイドリップのシメシロよりも僅かに大きく設定されている請求項1乃至3いずれかに記載された車輪用軸受シール。
  10. 前記シール部材が水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴムで形成されている請求項9に記載された車輪用軸受シール。
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