JP2011096559A - 燃料電池モジュール - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池の伝熱・放熱制御を簡便な構成で行う。
【解決手段】燃料電池モジュール10は、筐体20と、筐体20に収容された膜電極接合体12、放熱部材50、形状記憶部材52および水素吸蔵合金タンク60を備える。放熱部材50により膜電極接合体12と水素吸蔵合金タンク60とが熱的に接続されている。放熱部材50は、所定温度以上でガス透過性が高くなる形状記憶部材52で被覆されている。
【選択図】図2
【解決手段】燃料電池モジュール10は、筐体20と、筐体20に収容された膜電極接合体12、放熱部材50、形状記憶部材52および水素吸蔵合金タンク60を備える。放熱部材50により膜電極接合体12と水素吸蔵合金タンク60とが熱的に接続されている。放熱部材50は、所定温度以上でガス透過性が高くなる形状記憶部材52で被覆されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、水素を含む燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池モジュールに関する。
燃料電池は水素と酸素とから電気エネルギーを発生させる装置であり、高い発電効率を得ることができる。燃料電池の主な特徴としては、従来の発電方式(火力発電等)のように熱エネルギーや運動エネルギーの過程を経ない直接発電であるので、小規模でも高い発電効率が期待できること、窒素化合物等の排出が少なく、騒音や振動も小さいので環境性が良いことなどが挙げられる。このように、燃料電池は燃料のもつ化学エネルギーを有効に利用でき、環境にやさしい特性を持っているので、21世紀を担うエネルギー供給システムとして期待され、宇宙用から自動車用、携帯機器用まで、大規模発電から小規模発電まで、種々の用途に使用できる将来有望な新しい発電システムとして注目され、実用化に向けて技術開発が本格化している。
中でも、固体高分子形燃料電池は、他の種類の燃料電池に比べて、作動温度が低く、高い出力密度を持つ特徴が有り、特に近年、携帯機器(携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、MP3プレーヤ、デジタルカメラ、電子辞書、あるいは電子書籍)などのモバイル用電源への利用が期待されている。携帯機器用電源としての燃料電池システムでは、高出力化の観点から、燃料としてメタノールを用いるより水素を用いた方が有利である。燃料として水素を用いる場合、水素吸蔵合金タンクに収容された水素吸蔵合金に水素を貯蔵する技術が知られている。パッシブ型燃料電池システムにおいて水素吸蔵合金タンクを適用する場合には、カソードへの空気供給を確保するために、水素吸蔵合金タンクをアノード側に配置する構成が知られている(特許文献1参照)。
水素吸蔵合金タンクを有する燃料電池モジュールにおいては、以下のような課題が挙げられる。
・十分な水素放出を行うために、水素吸蔵合金タンクへの熱供給が必要である。
・燃料電池および水素吸蔵合金を適度な温度に保つ必要がある。より具体的には、燃料電池の温度が上昇しすぎるとドライアウトによる性能低下が生じ、水素吸蔵合金の温度が上昇しすぎると水素吸蔵合金タンクの内部圧力が高まって破裂のおそれが生じる。
・十分な水素放出を行うために、水素吸蔵合金タンクへの熱供給が必要である。
・燃料電池および水素吸蔵合金を適度な温度に保つ必要がある。より具体的には、燃料電池の温度が上昇しすぎるとドライアウトによる性能低下が生じ、水素吸蔵合金の温度が上昇しすぎると水素吸蔵合金タンクの内部圧力が高まって破裂のおそれが生じる。
このため、燃料電池の温度制御を行う技術として、発電部、燃料タンクおよび外部放熱部を可動式熱接続部材を用いて熱的に接続し、発電部および燃料タンクの温度に応じて可動式熱接続部材を駆動し、発電部、燃料タンクおよび外部放熱部との接触状態を変えることにより、発電部および燃料タンクの温度を一定の範囲に保持する技術が開示されている(特許文献2参照)。
従来の燃料電池モジュールでは、燃料電池の温度制御を行うために温度センサや駆動機構が必要となるため、構成が複雑になるといった課題がある。特に、特許文献1に記載の燃料電池では、放熱器が外部に向いた構成となっているため、携帯機器用電源として用いた場合に、デザイン性が阻害されるという課題がある。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池の伝熱・放熱制御を簡便な構成で行うことができる燃料電池モジュールの提供にある。
本発明のある態様は、燃料電池モジュールである。当該燃料電池モジュールは、電解質膜と電解質膜の一方の面に設けられたカソードと電解質膜の他方の面に設けられたアノードとを有する燃料電池と、燃料電池を収容する筐体と、燃料電池乃至筐体の少なくとも1つと熱的に接続するように設けられている放熱部材と、放熱部材を被覆するように設けられている形状記憶部材と、を備え、形状記憶部材は、所定温度以上でガス透過性が高くなることを特徴とする。
この態様の燃料電池モジュールによれば、放熱部材の放熱性が燃料電池の温度に応じて変化し、放熱または伝熱の役割を担う。このため、温度センサや駆動機構のような部材を用いることなく、簡易な構成により燃料電池の伝熱・放熱制御が可能となる。
上記態様の燃料電池モジュールにおいて、所定温度は、前記燃料電池においてフラッディングが生じる上限温度より高く、かつ前記燃料電池においてドライアウトが生じる下限温度より低くてもよい。所定温度は形状記憶部材のガラス転移温度であってもよい。所定温度以上における形状記憶部材の平均孔径は0.4nm以上、所定温度未満における形状記憶部材の平均孔径は0.4nmより小さくてもよい。
また、上記態様の燃料電池モジュールにおいて、放熱部材がアノードに供給される水素ガスを収容する水素吸蔵合金タンクと接していてもよい。
本発明によれば、燃料電池の伝熱・放熱制御を簡便な構成で行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る燃料電池モジュールの外観を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。
図1は、実施の形態1に係る燃料電池モジュールの外観を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。
燃料電池モジュール10は、筐体20と、筐体20に収容された膜電極接合体12、放熱部材50、形状記憶部材52および水素吸蔵合金タンク60を主な構成として備える。なお、膜電極接合体12は、本明細書における「燃料電池」の一部または「燃料電池」そのものである。
筐体20には、膜電極接合体12のカソード側に対向する面(図1、2の上部)に複数の空気取入口22が設けられている。空気取入口22を通して、外部から筐体20の内部に設けられた空気室110に酸化剤としての空気が流入可能である。また、筐体20には放熱用の複数の空気取り入れ口23が設けられている。空気取り入れ口23から空気が流入することで、放熱部材50に伝わった熱が空気中へ放熱される。
また、筐体20には、空気取入口22が設けられている面に対向する面近傍の側面(図1、2の下部)に水素充填口24が設けられている。水素充填口24は、水素吸蔵合金タンク60と連通しており、水素充填口24に水素が充填された外部ボンベ(図示せず)を接続することにより、水素吸蔵合金タンク60内に水素を注入することができる。
膜電極接合体12は、電解質膜30、カソード触媒層32およびアノード触媒層34を含む。
電解質膜30は、湿潤状態において良好なイオン伝導性を示すことが好ましく、カソード触媒層32とアノード触媒層34との間でプロトンを移動させるイオン交換膜として機能する。電解質膜30は、含フッ素重合体や非フッ素重合体等の固体高分子材料によって形成され、たとえば、スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体、ポリサルホン樹脂、ホスホン酸基又はカルボン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体等を用いることができる。スルホン酸型パーフルオロカーボン重合体の例として、ナフィオン(デュポン社製:登録商標)112などが挙げられる。また、非フッ素重合体の例として、スルホン化された、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどが挙げられる。電解質膜30の厚さは、たとえば10〜200μmである。
カソード触媒層32は、電解質膜30の一方の面に形成されている。カソード触媒層32には、外部から空気取入口22を経由して空気が供給される。また、アノード触媒層34は、電解質膜30の他方の面に形成されている。アノード触媒層34には、水素吸蔵合金タンク60から放出された水素が供給される。一対のカソード触媒層32とアノード触媒層34との間に電解質膜30が狭持されることにより単セルが構成され、単セルは水素と空気中の酸素との電気化学反応により発電する。
カソード触媒層32およびアノード触媒層34は、それぞれイオン交換樹脂ならびに触媒粒子、場合によって炭素粒子を有する。
カソード触媒層32およびアノード触媒層34が有するイオン交換樹脂は、触媒粒子と電解質膜30とを接続し、両者間においてプロトンを伝達する役割を持つ。このイオン交換樹脂は、電解質膜30と同様の高分子材料から形成されてよい。触媒金属としては、Sc、Y、Ti、Zr、V、Nb、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Os、Ir、ランタノイド系列元素やアクチノイド系列の元素の中から選ばれる合金や単体が挙げられる。また触媒を担持する場合には炭素粒子として、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどを用いてもよい。なお、カソード触媒層32およびアノード触媒層34の厚さは、それぞれ、たとえば10〜40μmである。
ガスケット80は、カソード触媒層32の周囲に位置する電解質膜30(電解質膜30のカソード側の外周部)と筐体20のカソード側の内周側面に設けられたカソード側固定部材90との間に設けられている。ガスケット80により、空気室110の密封性が高められている。
ガスケット82は、アノード触媒層34の周囲に位置する電解質膜30(電解質膜30のアノード側の外周部)と筐体20のアノード側の内周側面に設けられたアノード側固定部材92との間に設けられている。ガスケット82により、アノード触媒層34の密封性が高められ、燃料が漏洩することが抑制されている。
筐体20内にはアノード触媒層34と対向してシート状のガスシール部材40が設けられている。ガスシール部材40によりアノード触媒層34の密封性が高められている。ガスシール部材40は、水素の流出を遮断でき、且つ膜電極接合体12からの熱を放熱部材50に伝えることができる材料であればよく、たとえば、SUSやアルミニウム等の金属板が用いられる。ガスシール部材40は、「燃料電池」の一部である。
水素吸蔵合金タンク60は、膜電極接合体12のアノード側に対向する筐体20の内周面側に設けられている。水素吸蔵合金タンク60には、水素を吸蔵可能な水素吸蔵合金(たとえば、希土類系のMm(ミッシュメタル)Ni4.32Mn0.18Al0.1Fe0.1Co0.3)が格納されている。なお、水素吸蔵合金は、希土類系に限られず、たとえばTi−Mn系、Ti−Fe系、Ti−Zr系、Mg−Ni系、Zr−Mn系等であってもよい。なお、水素吸蔵合金タンク60と筐体20のアノード側の内面との間に断熱部材62が設けられている。断熱部材62の材料は断熱性があればよく、特に限定されないが、たとえば、無機繊維系断熱材(ガラスウール等)や発泡プラスチック系断熱材(ポリスチレン等)が挙げられる。断熱部材62により、水素吸蔵合金タンク60の温度低下が抑制される。
水素吸蔵合金タンク60の内部とアノード触媒層34とは、水素供給路70を介して連通している。具体的には、水素供給路70は、筐体20のアノード側の内周側面に沿って設けられており、水素供給路70の一方の端部において、レギュレータ71を介して水素供給路70と水素吸蔵合金タンク60の内部とが連通している。レギュレータ71により、外部ボンベから水素吸蔵合金に水素が補充される際や、水素吸蔵合金から水素が放出される際に、アノード触媒層34に供給される水素の圧力が低減され、アノード触媒層34が保護される。また、水素供給路70の他方の端部において、水素供給路70とアノード触媒層34とを連通する水素供給口72が設けられている。なお、図示しない制御部がレギュレータ71の開度を制御することにより、水素吸蔵合金タンク60からアノード触媒層34に供給される水素の量が調節され、燃料電池運転中の出力が制御される。
放熱部材50はガスシール部材40と水素吸蔵合金タンク60との間に設けられている。放熱部材50は柱状であり、アノード側の放熱部材50の端部がガスシール部材40と接し、アノードと反対側の放熱部材50の端部が水素吸蔵合金タンク60と接している。
放熱部材50は、銅などの熱伝導性が高い材料で形成されている。言い換えると、放熱部材50により膜電極接合体12と水素吸蔵合金タンク60とが熱的に接続されている。本実施の形態では、複数の放熱部材50がガスシール部材40と水素吸蔵合金タンク60との間にマトリクス状に配置されている。
放熱部材50は、銅などの熱伝導性が高い材料で形成されている。言い換えると、放熱部材50により膜電極接合体12と水素吸蔵合金タンク60とが熱的に接続されている。本実施の形態では、複数の放熱部材50がガスシール部材40と水素吸蔵合金タンク60との間にマトリクス状に配置されている。
形状記憶部材52は、放熱部材50を被覆するように、放熱部材50の周囲に密着して設けられている。形状記憶部材52の外側は、空気が存在する空間54となっている。形状記憶部材52は、所定温度以上でガス透過性が高くなる材料により形成されている。形状記憶部材52を構成する材料としてポリウレタンが挙げられる。当該所定温度は、膜電極接合体12においてフラッディング(生成水の滞留)が生じる上限温度より高く、かつ膜電極接合体12においてドライアウトが生じる下限温度より低いことが好ましい。図3は、フラッディングが生じる上限温度(以下、「フラッディング上限温度T1」という)と、ドライアウトが生じる下限温度(以下、「ドライアウト下限温度T2」という)の湿度依存性を示すグラフである。高湿度時にはフラッディング上限温度T1、ドライアウト下限温度T2ともに高くなる。逆に、低湿度時にはフラッディング上限温度T1、ドライアウト下限温度T2ともに低くなる。そのため、広い湿度範囲においてフラッディングおよびドライアウトを防止する場合には、当該所定温度は、高湿度時のフラッディング上限温度T1’より高く、低湿度時のドライアウト下限温度T2’より低いことが望ましい。このため、当該所定温度は、典型的には30〜50℃の範囲である。形状記憶部材52の膜厚は、たとえば10〜100μmである。
より具体的には、形状記憶部材52のガラス転移温度が上述した所定温度に設定される。たとえば、ポリウレタンは、ガラス転移温度以上では、分子の熱振動が活性化し、分子鎖に隙間が生じることによりガス透過性が高まる。逆に、ガラス転移温度未満では、分子の熱振動が停止し、分子鎖の隙間が閉じることによりガス透過性が低下する。ガラス転移温度以上における形状記憶部材52の平均孔径は0.4nm以上、ガラス転移温度未満における形状記憶部材52の平均孔径は0.4nmより小さいことが好ましい。ガラス転移温度以上における形状記憶部材52の平均孔径は、たとえば0.5nmであり、ガラス転移温度未満における形状記憶部材52の平均孔径は、たとえば0.3nmである。これによれば、酸素の分子径が約0.35nm、窒素の分子径が約0.37nmであるため、ガラス転移温度の前後で空気の透過性を選択的に変化させることが可能となる。
形状記憶部材52のガラス転移温度を所望の温度に設定する方法としては、形状記憶部材52を構成する材料の分子量、分子構造、結晶化度等のパラメータを変えることが挙げられる。
(1)分子量によるガラス転移温度の調節:
形状記憶部材52を構成する高分子材料の分子量をより大きくすることにより、ガラス転移点をより高くすることができる。
(2)分子構造によるガラス転移温度の調節:
形状記憶部材52のガラス転移温度には、高分子材料の主鎖、側鎖の性質が影響する。このため、高分子材料の主鎖を剛直でたわみにくくすることにより、ガラス転位温度をより高くすることができる。また、高分子材料の側鎖のかさばりをより大きく、たわみにくくすることにより、ガラス転移温度をより高くすることができる。
(3)結晶化度によるガラス転移温度の調節:
形状記憶部材52を構成する高分子材料の結晶化度をより高くすることにより、ガラス転移点をより高くすることができる。
上記(1)〜(3)のパラメータを適宜調節することにより、形状記憶部材52のガラス転移温度をたとえば−40〜120℃の範囲で1℃刻みで設定することができる。
(1)分子量によるガラス転移温度の調節:
形状記憶部材52を構成する高分子材料の分子量をより大きくすることにより、ガラス転移点をより高くすることができる。
(2)分子構造によるガラス転移温度の調節:
形状記憶部材52のガラス転移温度には、高分子材料の主鎖、側鎖の性質が影響する。このため、高分子材料の主鎖を剛直でたわみにくくすることにより、ガラス転位温度をより高くすることができる。また、高分子材料の側鎖のかさばりをより大きく、たわみにくくすることにより、ガラス転移温度をより高くすることができる。
(3)結晶化度によるガラス転移温度の調節:
形状記憶部材52を構成する高分子材料の結晶化度をより高くすることにより、ガラス転移点をより高くすることができる。
上記(1)〜(3)のパラメータを適宜調節することにより、形状記憶部材52のガラス転移温度をたとえば−40〜120℃の範囲で1℃刻みで設定することができる。
形状記憶部材52の一例としてポリウレタンを用いた場合のガラス転移温度の設定方法について説明する。
形状記憶性を有するポリウレタンは原材料としてポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤が用いられる。ポリウレタンのガラス転移点温度は、ポリウレタン中のハードセグメント(ポリイソシアネート、鎖延長剤)とソフトセグメント(ポリオール)の組み合わせにより自由に設定することができる。ポリウレタン中のハードセグメントの割合を多くすることで分子の剛直性が増し、ガラス転移点を高くすることができる。逆に、ポリウレタン中のハードセグメントの割合を少なくなると、分子鎖の運動性が増し、ガラス転移を低くすることができる。
ポリイソシアネートは、末端にイソシアネート基を2つ以上有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネートとして、たとえば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリオールは、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されない。ポリオールとして、たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びこれらを共重合させたポリエーテルエステルポリオールなどが挙げられる。ポリオールの数平均分子量としては400〜2000が好ましい。分子量が高いポリオールを用いるほど、ポリウレタンのガラス転移点を低く設定することができる。
鎖延長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどのジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコールが挙げられる。
ガラス転移温度を人体温度付近(36〜37℃)に設定した形状記憶性ポリウレタンを製造する場合、イソシアネート成分、鎖延長剤、ポリオール成分を、1.9〜2.2:0.9〜1.2:1(モル比)の割合で混合することが知られている(特開平7−102170号公報参照)。
放熱部材50および形状記憶部材52の機能についてより詳細に説明する。燃料電池起動時などのように、燃料電池の温度が所定温度より低い場合には、形状記憶部材52のガス透過率が相対的に低い状態となる。このため、放熱部材50の表面と空間54との間を空気が移動しにくくなり、放熱部材50からの放熱が抑制され、放熱部材50を介して、膜電極接合体12から水素吸蔵合金タンク60への伝熱性が高まる。水素吸蔵合金タンク60に熱が供給されやすくなることで、水素吸蔵合金タンク60における水素放出に必要な熱量が補われる。
一方、燃料電池運転中に燃料電池の温度が所定温度以上になると、形状記憶部材52のガス透過率が相対的に高い状態となる。このため、放熱部材50の表面と空間54との間で空気の移動が容易となり、放熱部材50からの放熱が促進される。この結果、膜電極接合体12および水素吸蔵合金タンク60の放熱性が高まり、膜電極接合体12および水素吸蔵合金タンク60の温度上昇が抑制される。温度上昇の抑制により、膜電極接合体12においては、ドライアウトの発生が抑制される。一方、水素吸蔵合金タンク60においては、内部圧力の増加が抑制される。また、所定温度は、燃料電池においてフラッディングが生じる上限温度より高いため、温度上昇が抑制されてもフラッディングが生じるおそれがない。これにより、燃料電池の運転を安定的に行うことができる。
本実施の形態によれば、放熱部材50の放熱性が燃料電池の温度に応じて変化し、放熱または伝熱の役割を担う。このため、温度センサや駆動機構のような部材を用いることなく、簡易な構成により燃料電池の伝熱・放熱制御が可能となる。また、放熱部材が燃料電池のアノード側の筐体内に配置されているため、携帯機器用電源として用いた場合に、デザイン性が損なわれないという利点が得られる。
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に係る燃料電池モジュール10の断面図である。本実施の形態の燃料電池モジュール10について、実施の形態1と同様な構成については適宜説明を省略し、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。本実施の形態の燃料電池モジュール10では、アノード側の放熱部材50の端部がガスシール部材40と接し、アノードと反対側の放熱部材50の端部が筐体20の内壁と接している。また、水素吸蔵合金タンク60側の放熱部材50の端部が水素吸蔵合金タンク60と接している。より具体的には、放熱部材50は水素吸蔵合金タンク60の側方に設けられており、水素吸蔵合金タンク60の側面と接している。さらに、断熱部材62に貫通穴が設けられており、この貫通穴に放熱部材50が挿入されることにより、アノードと反対側の放熱部材50の端部が筐体20の内壁と接している。これにより、筐体20からも放熱を行うことが可能になり、温度上昇が抑制され、膜電極接合体12においては、ドライアウトの発生が抑制される。
図4は、実施の形態2に係る燃料電池モジュール10の断面図である。本実施の形態の燃料電池モジュール10について、実施の形態1と同様な構成については適宜説明を省略し、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。本実施の形態の燃料電池モジュール10では、アノード側の放熱部材50の端部がガスシール部材40と接し、アノードと反対側の放熱部材50の端部が筐体20の内壁と接している。また、水素吸蔵合金タンク60側の放熱部材50の端部が水素吸蔵合金タンク60と接している。より具体的には、放熱部材50は水素吸蔵合金タンク60の側方に設けられており、水素吸蔵合金タンク60の側面と接している。さらに、断熱部材62に貫通穴が設けられており、この貫通穴に放熱部材50が挿入されることにより、アノードと反対側の放熱部材50の端部が筐体20の内壁と接している。これにより、筐体20からも放熱を行うことが可能になり、温度上昇が抑制され、膜電極接合体12においては、ドライアウトの発生が抑制される。
本実施の形態の燃料電池モジュール10によれば、燃料電池起動時などのように、燃料電池の温度が所定温度より低い場合には、形状記憶部材52のガス透過率が相対的に低い状態となる。このため、放熱部材50の表面と空間54との間を空気が移動しにくくなり、放熱部材50からの放熱が抑制される。
一方、燃料電池運転中に燃料電池の温度が所定温度以上になると、形状記憶部材52のガス透過率が相対的に高い状態となる。これにより、このため、放熱部材50の表面と空間54との間で空気の移動が容易となり、放熱部材50からの放熱が促進される。この結果、膜電極接合体12の放熱性が高まり、膜電極接合体12の温度上昇が抑制される。温度上昇の抑制により、膜電極接合体12においては、ドライアウトの発生が抑制される。また、所定温度は、燃料電池においてフラッディングが生じる上限温度より高いため、温度上昇が抑制されてもフラッディングが生じるおそれがない。これにより、燃料電池の運転を安定的に行うことができる。
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
たとえば、上述の各実施の形態では、水素供給口72からアノード触媒層34に水素が供給されているが、アノード触媒層34とガスシール部材40との間に燃料ガス室を設け、水素供給口72から燃料ガス室に水素を供給してもよい。
また、他の実施の形態として、放熱部材50が燃料電池と直接熱的に接続せず、筐体20のみに接続していてもよい。この場合、筐体20の温度が燃料電池と同等となり、燃料電池から発生した熱が筐体20を通じて放熱部材50に伝わり、放熱が行われる。
10 燃料電池モジュール、12 膜電極接合体、20 筐体、30 電解質膜、32 カソード触媒層、34 アノード触媒層、40 ガスシール部材、50 放熱部材、52 形状記憶部材、60 水素吸蔵合金タンク、70 水素供給路
Claims (5)
- 電解質膜と前記電解質膜の一方の面に設けられたカソードと前記電解質膜の他方の面に設けられたアノードとを有する燃料電池と、
前記燃料電池を収容する筐体と、
前記燃料電池乃至前記筐体の少なくとも1つと熱的に接続するように設けられている放熱部材と、
前記放熱部材を被覆するように設けられている形状記憶部材と、
を備え、
前記形状記憶部材は、所定温度以上でガス透過性が高くなることを特徴とする燃料電池モジュール。 - 前記所定温度は、前記燃料電池においてフラッディングが生じる上限温度より高く、かつ前記燃料電池においてドライアウトが生じる下限温度より低い請求項1に記載の燃料電池モジュール。
- 前記所定温度は前記形状記憶部材のガラス転移温度である請求項1または2に記載の燃料電池モジュール。
- 前記所定温度以上における前記形状記憶部材の平均孔径は0.4nm以上、前記所定温度未満における前記形状記憶部材の平均孔径は0.4nmより小さい請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料電池モジュール。
- 前記放熱部材が前記アノードに供給される水素ガスを収容する水素吸蔵合金タンクと接している請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料電池モジュール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009250656A JP2011096559A (ja) | 2009-10-30 | 2009-10-30 | 燃料電池モジュール |
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