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JP2011053660A - 偏光レンズ - Google Patents

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JP2011053660A JP2010166257A JP2010166257A JP2011053660A JP 2011053660 A JP2011053660 A JP 2011053660A JP 2010166257 A JP2010166257 A JP 2010166257A JP 2010166257 A JP2010166257 A JP 2010166257A JP 2011053660 A JP2011053660 A JP 2011053660A
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英一 矢嶋
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Hoya Corp
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Abstract

【課題】周囲の環境に応じてレンズ内の見る位置を選択することで所望の遮光効果が得られる偏光レンズを提供することを目的とする。
【解決手段】基板1上に偏光層6を有し、偏光層6の偏光軸11の少なくとも一部は閉曲線状である。さらには、幾何中心から外れた左右の周辺領域に、水平方向に対して傾斜した閉曲線状の偏光軸を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、屋外等において特定の偏光方向を有する反射光等の光を遮光する目的で特定の偏光方向の光を吸収又は透過する機能を有する眼鏡用として好適な偏光レンズに関する。
屋外での活動等において、水面からの反射光や、照明等による眩光を低減して視界を改善する目的で、偏光レンズが開発されている。
このような偏光レンズや、その他例えば液晶ディスプレイ等に利用される偏光素子としては、従来高分子膜を所定の方向に延伸して偏光軸方向を規定する製法による偏光フィルムが一般的であった。これに対し近年、基板表面の配向膜に二色性色素を積層して形成される偏光層が開発されている。この二色性色素を用いた偏光素子の構造としては、例えば、透明基板の表面上に偏光層及び保護層を有し、透明基板と偏光層との間に、配向膜として例えばシリカ(SiO2)等の無機中間層を有する偏光素子が提案されている(特許文献1参照)。この偏光素子の偏光軸は、配向膜に、例えばストライプ状の凹凸パターンを設けることで、そのストライプに沿う方向、或いはストライプと直交する方向に形成される。
また、眼鏡用の偏光レンズとして、偏光軸方向を一方向とせず、レンズ面を例えば中央と左右の端部とで分割し、その分割された領域に偏光軸方向の異なる偏光フィルタを組み込んだ偏光レンズが提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載された眼鏡レンズは、例えば図9にその平面図を示すように、レンズ100の光学面が視線の上下方向(垂直方向)に沿う分割線によって3分割される。この3分割された領域のうち中央領域101は偏光軸が視線の左右方向(水平方向)に延びる直線であり、左右の周辺部102a及び102b、すなわち鼻側と耳側の周辺部での偏光軸は上下方向(垂直方向)に延長する直線である。
国際公開第06/081006号 特表2009−510504号公報
特許文献2に記載の偏光レンズは、従前の偏光レンズが海や川の水面などの水平な面からの反射光を抑える目的で偏光軸(吸収軸)が水平方向に沿う直線であるのに対し、これとは異なる垂直方向に沿う偏光軸を含む領域を設けるものである。これは、都市環境では建物の垂直壁の窓ガラス等による反射が視野の横部分において影響することを考慮し、都市環境内の眩しさの一般的な状況に適合させたものであり、その他装用者の左右に存在する車両や、車両運転者の視界にも適合させることを目的としている。
しかしながら、特許文献2に記載の偏光レンズは、図9に示すように偏光軸が特定の方向から急激にそれとは直交する方向となるように分布している場合には、顔の向きを僅かに変えただけで突然反射光の遮光機能が低下する事態も発生し得る。そして、そのような場合には、眼に不快な刺激を与えてしまう。
また実際には、窓ガラス等の垂直面による反射光の偏光方向は必ずしも一定の方向ではなく、特許文献2に開示された偏光レンズを使用しても反射光を十分に抑制できない状況が多い。以下、図10〜13を参照してこのような反射光の偏光方向の変化について説明する。
図10は、水面等の水平面からの反射光の偏光方向を示す図である。図10においては、水面やテーブルの光沢面などの水平面50において入射光Liが反射する様子を側面から示している。水平面50の入射位置における法線を破線vで示し、反射光を矢印Lrで示す。太陽光等の自然光は偏光方向が一定でなくあらゆる方向をもつが、矢印pで示すように入射方向と反射方向に沿う面(入射面)内で電気ベクトルが振動する光の成分をp成分(p偏光)と呼び、矢印sで示すように電気ベクトルが入射面に垂直に振動する光の成分をs成分(s偏光)と呼ぶ。光の反射率は入射角に対して変化するが、入射角0°から90°の殆どの領域でp偏光の反射率はs偏光の反射率より低く、ある入射角(ブリュースター角θB)においてゼロとなることが知られている。
一方、s偏光は入射角が大きくなるほど反射率が上昇する傾向があり、殆どの領域でp偏光より反射率が大きい。すなわち反射光Lrにおいては入射角の殆どの範囲でs偏光が支配的といえる。したがって、s偏光の光を偏光子により遮光することで、このような物体表面からの反射光を効率よく抑制することができ、特にブリュースター角で入射する光においてはs偏光のみが反射するので、反射光をほぼゼロに抑えることができる。
図10に示すように、人の眼60が水面の方向を向いているときは、反射光の偏光方向は眼60に対して横方向、すなわち水平方向である。このような反射光の偏光方向(s偏光)を遮光する偏光軸(s偏光を吸収しp偏光を透過する方向)を吸収軸とすると、偏光レンズを装用したときにこの吸収軸が水平方向であれば水平面からの反射光を良好に抑制できることとなる。また、このように水面等の水平な面を見る場合は、入射角によらずs偏光を遮光すればよく、つまり太陽の位置には関係しない、水平方向の吸収軸をもつ偏光レンズであればよい。
一方、建物の外壁、車の側面や窓ガラス等、ほぼ垂直な面からの反射光はこれとは異なる偏光方向となる。図11は垂直面51に対して、横方向から入射光Liが入射する場合の偏光方向を示す図である。図11において、図10と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。垂直面51からの反射光Lrも同様に入射面に垂直なs偏光が支配的になるが、横方向からの光の場合s偏光は人の眼60から見て垂直方向となる。つまり、人の眼60に対して垂直面を横方向から来る光の反射光を遮光するには、吸収軸が垂直方向の偏光レンズを装用することが好ましい。
しかしながら、反射光の偏光方向が垂直となるのは朝夕の特殊な状況のみであり、時間の経過と共に反射光の偏光方向も変化する。例えば図12に示すように、斜め方向から入射光Liが入射するときの垂直面51での反射光Lrの偏光方向は、垂直面51を下方から斜め上に見上げる状態の眼60に対して斜め方向となる。また図13に示すように、正午前後では垂直面51に垂直上方向から入射するので、反射光Lrの偏光方向は下方から見上げる状態の人の眼60に対しほぼ水平方向になる。図12及び図13において、図11と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
つまり垂直面51からの反射光の偏光方向は、時間経過と共に徐々に動き、横方向から垂直方向の範囲で変化する。その他、建物以外の車等において曲面や斜面で反射する場合もあるので、都市環境では斜め方向の様々な角度の偏光方向が存在する。したがって、特許文献2に記載されているように、単に吸収軸を中央で水平方向、左右両端で垂直方向とするだけでは、日中多くの時間帯で反射光抑制の効果が発揮されないこととなってしまい、偏光レンズとしての機能を満足し得ない。
また同様の原理により、人が眼球を回旋させる場合にも、反射光の偏光方向が変化すると考えられる。入射光の入射角度は太陽光の動きのみによるものではなく、例えば都市環境において建物が近接している場合などは、建物と建物、建物と車等の多重反射によって太陽光の向きとは異なる方向からの入射角となる場合も発生する。その場合、眼球回旋によって斜め方向からの反射光が眼に入る状態のときは、図9に示す構成の偏光レンズでは遮光機能が十分でない。つまり、偏光レンズの吸収軸が直線状であり、またその方向が水平、垂直など限られた方向である限り、反射光の抑制効果は限定的となり、十分でない状況や時間帯が多いといえる。
更に、レンズの偏光軸(吸収軸)が境界線を境に90°変化する構成では、前述したように眼球回旋方向によってこの偏光レンズによる遮光状況が急激に変化することとなるので、眼にとって好ましくない。このように吸収軸の方向が各ゾーンに分割されて不連続である場合に斜め方向からの反射光を遮光するには、例えば周辺部の偏光軸が垂直な領域についてその面積を変えるとか、または吸収軸の方向が異なる偏光素子を組み合わせるなどしなければならない。つまり、レンズ面内を分断して異なる吸収軸の領域を設けるのみでは、斜め方向から入射し、且つその入射角度にばらつきや変化がある偏光を遮断するには、複数のバリエーションを用意せざるを得ない。これは装用者が必要に応じて偏光レンズを掛け替えることとなり極めて非実用的である。このため、このような偏光レンズの掛け替えを要することなく、光の入射角度や眼球回旋方向によって変化する反射光の偏光方向に対して、より柔軟に対応し得る偏光レンズが望まれている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、より広範な入射角範囲の光によって生じる反射光に対して遮光効果を有する偏光レンズを提供することを目的とする。
本発明は、
基板上に、少なくとも一部が閉曲線状である偏光軸を有する偏光層を含む偏光レンズ、
に関する。
なお、本発明において偏光軸とは、特定の偏光方向の光を吸収する吸収軸をいい、偏光軸の方向(偏光軸方向)とは、閉曲線状の偏光軸についてはその接線方向を指している。また、閉曲線とはループ状の閉じた曲線を意味し、ここで曲線とは一次曲線すなわち直線を含むものとする。
上述したように本発明の偏光レンズは、少なくとも一部において偏光軸が閉曲線状であるため、面内の偏光軸の分布は、特許文献2に記載されている偏光レンズのように偏光軸の方向が急激に変化することなく滑らかに変化する分布となる。また偏光軸を閉曲線状とする領域では、レンズ装用者の眼球が回転することで装用者の視線方向が正面から左右いずれか又は斜め方向に変化した際に、あらゆる方向から入射する光に対して360度の角度範囲でこれを遮光する領域が必ず存在することとなる。このため、装用者が眼球を回転させることで、即ち視線方向を選択することで、好ましい遮光効果が得られることとなる。なお本発明において眼球の回転とは、ランダム回転する場合のみならず、正面方向を中心軸として回転すること(即ち回旋すること)を含むものとする。
また、本発明の偏光レンズの一形態としては、その幾何中心から外れた左右の周辺領域に、水平方向に対して傾斜した閉曲線状の偏光軸を有することが好ましい。
ここでレンズの幾何中心とは、偏光レンズが矯正視力用でない場合及び単焦点レンズの場合はその光学中心となる。遠近両用の累進屈折力レンズの場合はプリズム測定基準点となるが、設計等の都合によっては遠用部測定基準点と近用部測定基準点とを結ぶ線分の中間位置など、プリズム測定基準点からずれた位置としてもよい。また、幾何中心から外れた左右の周辺領域とは、レンズ装着時に幾何中心を含む中心領域を基準として、耳側または鼻側に位置する領域である。なお、特記しない限り、本発明におけるレンズ上の位置および方向は、レンズ装用状態における位置および方向を意味するものとする。
このようにレンズの左右の周辺領域で偏光軸方向が水平方向に対して傾斜する構成とすることで、レンズ装用者の眼球が回転することで装用者の視線方向が正面から左右いずれか又は斜め方向に変化した際に、建物や車の窓ガラス等からの斜め方向から入射する偏光を遮光することができる。特に偏光軸を閉曲線状とする部分では、偏光軸方向が斜め方向に連続的に変化することとなり、いわば斜め方向から入射する光に対し広い角度範囲で遮光作用をもつ偏光膜を配置している状態となる。これにより、ビル等の建物表面の反射光の経時変化のみならず、例えば湾曲した自動車のガラス面から反射される複雑な軸方向を含む反射光に対応することが可能となる。更にこのような状況においても眼球の回転運動によりレンズ装用者の視線方向の変化によって遮光効果が急激に変化することを回避できる。
例えば図9に示す従来の偏光レンズのように、中央部に水平方向、側方に垂直方向の直線状の偏光軸を設けるのみである場合は、ビル等の垂直面や車等の曲面からの反射光のうち特定の方向の光しか遮光することができない。一方、本発明においては、上述したように斜め方向から様々な角度で入射する入射光に対して遮光作用を発揮することができる。また、閉曲線状とすることでレンズ正面の中央領域では偏光軸が水平方向となる領域を含むことができので、中央部では水平面からの反射光と垂直面からの上方からの反射光を遮光することができ、周辺部では斜め方向からの反射光及び横方向からの反射光を遮光することができ、それぞれ効率的に不要な光を遮光することができる。この場合、必要に応じて装用者が眼球を回転させることで適切な視界を適宜選択することができる。
また本発明の偏光レンズの一形態としては、閉曲線状の偏光軸方向が、眼球回転角度に基づいて形成される領域を含む構成とすることが好ましい。即ち、本発明の偏光レンズは、眼球回転によって正面方向から視線方向が、例えば横または斜め方向に変化することにより視野領域となる部分に、閉曲線状の偏光軸が配置されていることが好ましい。これにより、眼球回転により装用者の視線方向が変化した際にも装用者が遮光効果を認識することができる。
ここで眼球回転角度とは、その角度における視線方向のレンズ上での位置を極座標(r,θ)で表し、レンズの幾何中心を極O(原点)としたときの所定の方向からの偏角θをいう。つまり、眼球回旋角度に基づいて偏光軸方向を閉曲線状とするとは、眼球回旋角度に対応して一定の関係で偏光軸方向を配置することを意味する。例えば眼球回旋角度が垂直上方向から偏角45度の領域において偏光軸(吸収軸)の方向を例えば水平方向から45度程度とし、垂直上方向からの偏角が90度の領域では偏光軸の方向を水平方向から90度程度となるように構成する。なお、本発明においてレンズ上で垂直方向とは、レンズの幾何中心から鉛直方向(及びその上向きの延長方向)をレンズ面上に投影した子午線に沿う方向をいう。
このように、閉曲線状の偏光軸の方向を眼球回転角度に基づいて決定することで、偏光軸を眼球の動きに沿うように分布させることができる。したがって、眼球回転運動によって生じる外界の変化、すなわち眼球に向かう光の偏光方向の変化に対し、より柔軟に対応して遮光する構成となり、眼球の自然な動きに応じて遮光の効果を変化させ、且つその変化を滑らかにすることができる。
また、本発明の偏光レンズの一形態としては、偏光軸方向の変化は連続的であることが好ましい。ここで連続的とは、例えばx軸をレンズの幾何中心を通る水平方向(基準線方向)、y軸を幾何中心を通る鉛直方向とするとき、偏光層内の偏光軸方向の分布をx−y座標軸平面に投影したときの偏光軸の分布において、理想的にはその二次微分が発散せず定数となる状態をいう。なお、ここでは人の視力で認識可能なスケールにおいて連続的であればよく、分子サイズ等の微視的なスケールで連続である必要はない。また例えば偏光軸方向が直線の領域と閉曲線の領域を含む場合、その接続部分が滑らかに変化することが好ましい。
更に、本発明の偏光レンズの一形態において、偏光軸の分布は、レンズの中心領域から垂直方向に延長する領域において、偏光軸方向が水平方向となる領域を含む分布とすることが好ましい。即ち、幾何中心を含む中心領域から垂直方向に向かう領域において、偏光軸の方向が水平方向となる領域を含むことが好ましい。
このような構成とする場合、眼球の回転により視線方向が正面方向から垂直方向に動いた場合に見られる水平面や垂直面からの反射光の偏光方向は水平方向であるため、この向きの反射光を遮光する機能が得られる。
また、本発明の偏光レンズの一形態としては、偏光軸方向の分布は同心円状であることが好ましい。即ち、複数本の閉曲線状の偏光軸が、偏光レンズの幾何中心を中心に同心円状に配置されていることが好ましい。同心円状に配置することにより、少なくとも正面方向とその上方及び下方の領域において偏光軸方向を水平方向に近くなり、また左右の周辺方向において、偏光軸の方向が斜めから垂直方向に近くなるように連続的に変化することとなり、眼球回転による視線方向の変化(眼球回旋角度の変化)に対し無理なく自然に対応するように偏光軸を分布させることができる。また、水平面からの反射光を遮光する領域を増やしたい場合は例えば長軸が水平方向に沿う楕円状の閉曲線の偏光軸を含む領域を形成してもよい。
また本発明の偏光レンズの一形態としては、その幾何中心近傍の領域を無偏光領域とすることが好ましい。この領域は必ずしも円形である必要はないが、円形である場合はその直径、その他の形状とする場合は幾何中心を含む水平方向及び垂直方向の長さを4mm以上15mm以下とすることが好ましい。
幾何中心近傍の領域を無偏光領域とすることで、視界の中心付近に偏光軸方向の急激な変化が生じることなく、正面付近を眼球が向いているときの急激な遮光効果の変化を避けることができる。
大きさが4mm未満であるとこのような領域が小さすぎ、15mmを超える場合は、遮光効果のない領域が広すぎてしまうため、上記領域の大きさは4mm以上15mm以下とすることが好ましい。
また本発明の偏光レンズの一形態としては、偏光層が色素含有層(色素層)であり、この色素層と基板との間に配列層を有する構成が好ましい。このように配列層と色素層とを設けて、色素層を偏光層とすると、配列層の表面に凹凸パターンを形成することで、容易にこの上の色素層の偏光軸方向を制御することができるので、上述したような同心円状を含む種々の閉曲線状の偏光軸を容易に形成することができる。
更に本発明の偏光レンズの一形態としては、上記偏光層が有する偏光軸とは方向の異なる偏光軸を有する追加偏光層を含む偏光レンズを挙げることができる。
上記二層の偏光層を有することにより、レンズ面内で部分的ないし漸次的な濃淡変化(グラデーション)を実現することができる。
本発明の偏光レンズによれば、周囲の環境に応じてレンズ内の見る位置を選択することで所望の遮光効果を得ることができる。
図1A〜Eは本発明の実施の形態に係る偏光レンズの一製造方法を示す工程図である。 図2は図1Bの工程で形成する凹凸パターンの形成方法の一例を示す説明図である。 図3Aは本発明の第1の実施の形態に係る偏光レンズの偏光軸方向を示す平面図、図3BはそのII線上の断面構成図である。 図4は図3に示す偏光レンズにおいて眼球回旋運動に対応する偏光軸方向の領域を示す説明図である。 図5は図3に示す偏光レンズにおける偏光軸方向の分布を示す平面図である。 図6A〜Dは図3に示す偏光レンズにおいて、偏光軸方向の異なる光を遮光する領域を示す平面図であり、図6Aは光の偏光方向がほぼ垂直方向、図6Bは垂直方向からほぼ45度、図6Cはほぼ水平方向の場合を示す。 図7は本発明の第2の実施の形態に係る偏光レンズの偏光軸方向を示す平面図である。 図8は本発明の第3の実施の形態に係る偏光レンズの偏光軸方向を示す平面図である。 図9は従来の偏光レンズの平面図である。 図10は水平面に対する反射光の偏光方向を示す説明図である。 図11は垂直面に対し横方向からの光の反射光における偏光方向を示す説明図である。 図12は垂直面に対し斜め上方向からの光の反射光における偏光方向を示す説明図である。 図13は垂直面に対し垂直上方向からの光の反射光における偏光方向を示す説明図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
(1)基板
(2)配列層
(3)偏光層
(4)製造方法
(5)偏光レンズの基本構成
(6)偏光軸方向の分布
(7)偏光方向の違いによる遮光領域の変化
2.第2の実施の形態
3.第3の実施の形態
本発明の偏光レンズは、眼鏡レンズ、サングラスの他、この偏光レンズを通して使用者が外界を視認する機能をもつものであれば適用可能であり、例えば自動車のフロントガラスや建物の窓ガラス等の光学用途にも適用することができる。本発明の偏光レンズは、上記の中でも特に眼鏡用プラスチックレンズとして好ましく用いられる。本発明の偏光レンズが眼鏡用プラスチックレンズの場合には、その屈折率は特に限定されるものではないが、通常1.5〜1.8程度である。
1.第1の実施の形態
(1)基板
本発明の偏光レンズにおける基板としては、特に限定されず、プラスチック、無機ガラス等が挙げられる。プラスチックとしては例えばメチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エピチオ基を有する化合物を材料とする重合体、スルフィド結合を有するモノマーの単独重合体、スルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリスルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリジスルフィドと一種以上の他のモノマーとの共重合体等などが挙げられる。
また偏光レンズが矯正用レンズも兼ねる場合は、その物体側とされる前面、像側すなわち眼球側とされる後面のいずれか、又はその両方に所定の処方度数を付与する曲面が成形又は表面研磨等によって形成されていてもよい。
(2)配列層
基板と偏光層との間には、偏光軸の方向を規定するための配列層を設けることができる。この配列層を無機材料から形成する場合、該無機材料としては、例えばSi、Al、Zr、Ti、Ge、Sn、In、Zn、Sb、Ta、Nb、V、Yから選ばれる金属酸化物またはその複合体を挙げることができる。この中でもSiO又はSiO2が比較的安価で扱い易く好適である。配列層の膜厚は、この上に設ける偏光層において均一に偏光軸が形成される範囲であればよく、例えば85nm以上500nm以下程度とすることができる。
また配列層を形成する材料としては、基板に対してある程度密着性を有し、上層の偏光層における偏光軸方向を容易に規定できる材料であれば、有機物を含む材料も利用可能である。このような材料としては、例えば(A)無機酸化物ゾルと、(B)下記一般式(1)で表わされるアルコキシシラン及び/又は下記一般式(2)で表わされるヘキサアルコキシジシロキサンとを少なくとも含有するゾル−ゲル膜を利用することができる。上記材料には、必要に応じて、(C)下記一般式(3)で表わされる官能基含有アルコキシシランを含む材料を用いたゾル−ゲル膜が利用可能である。
Si(OR1a(R24-a (1)
(R3O)3Si−O−Si(OR43 (2)
5−Si(OR6b(R7)3-b (3)
ここで、上記一般式(1)におけるR1、上記一般式(2)におけるR3およびR4は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基等が挙げられる。この中で、メチル基、及びエチル基が好ましい。
上記一般式(1)におけるR2は、炭素数1〜10のアルキル基であり、上記で例示した炭素数1〜5のアルキル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。この中では、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。上記一般式(1)におけるaは、3又は4である。
一般式(1)で表わされるテトラアルコキシシラン(式中、a=4)としては、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランテトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン等が挙げられる。
一般式(1)で表わされるトリアルコキシシラン(式中、a=3)としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン等が挙げられる。
一般式(2)で表わされるヘキサアルコキシジシロキサンとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン等が挙げられる。
一般式(3)におけるR5は、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有する有機基であり、R6及びR7は、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基であり、bは2又は3である。
前記配列層は、通常、所定の形状の凹凸パターンが形成される。その詳細は後述する。前記配列層は、基板上に直接積層されていてもよく、基板と配列層との間に他の層を介在させてもよい。他の層としては、ハードコート層やプライマー層等が挙げられる。
ハードコート層の材料は特に限定されず、公知の有機ケイ素化合物及び無機酸化物コロイド粒子よりなるコーティング組成物を使用することができる。有機ケイ素化合物及び無機酸化物コロイド粒子としては、例えば、特開2007−77327号公報段落〔0071〕〜〔0074〕に記載のものを用いることができる。ハードコート層用コ−ティング組成物は、従来知られている方法で調製することができる。
ハードコート層を基板上に形成する方法としては、コ−ティング組成物を基板に塗布し、必要に応じてコーティング組成物に含まれる硬化性成分に応じた硬化処理を施す方法が挙げられる。塗布手段としてはディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の通常行われる方法が適用できるが、面精度の面からディッピング法、スピンコーティング法が特に好ましい。
また、プライマー層には、密着性を向上させる観点から、ポリウレタン等の公知の各種樹脂を用いることができる。プライマー層は、ハードコート層と同様の手法を用いて形成することができる。
(3)偏光層
本発明の偏光レンズの偏光層は、好ましくは色素含有層であり、該色素としては二色性色素が好適である。ここで「二色性」とは、媒質が光に対して選択吸収の異方性を有するために、透過光の色が伝播方向によって異なる性質を意味し、二色性色素は、偏光光に対して色素分子のある特定の方向で光吸収が強くなり、これと直交する方向では光吸収が小さくなる性質を有する。また、二色性色素の中には、水を溶媒とした時、ある濃度・温度範囲で液晶状態を発現するものが知られている。このような液晶状態のことをリオトロピック液晶という。
この二色性色素の液晶状態を利用して特定の一方向に色素分子を配列させることができれば、より強い二色性を発現することが可能となる。
本発明において二色性色素としては、眼鏡レンズ用途に限らず一般的な偏光素子に通常使用されるものとして知られているものを用いることができる。例えばアゾ系、アントラキノン系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、キノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、テトラジン系、スチルベン系、ベンジジン系等が挙げられる。また、米国特許2400877号明細書、特表2002−527786号公報明細書に記載されているもの等も挙げられる。
(4)製造方法
次に、本発明の偏光レンズの製造方法の一例について図1A〜Eの工程図を参照して説明する。
先ず図1Aに示すように、基板1の上に、必要に応じて、例えば耐擦傷性を高める目的でハードコート層2、密着性や耐衝撃性を向上させるためのプライマー層3を上述した形成方法(例えばスピンコート等の塗布及び硬化)により形成する。そしてプライマー層3の上に、配列層4を形成する。
配列層4をSiO、SiO2等の無機材料より形成する場合は、蒸着法等によって形成することが好ましい。また、有機物を含む材料より形成する場合は、例えば上述したように無機酸化物ゾルと、上記一般式(1)、(2)で表わされる化合物のうち少なくともいずれかを含む材料、更に必要に応じて一般式(3)で表される材料を用いて、スピンコート等によってゾル−ゲル膜を製膜することができる。この場合は大掛かりな真空蒸着設備を利用する必要がないため、煩雑さを解消し、製造工程を簡略化することができる。この場合のコート液調製に使用する溶媒や、シラン化合物の加水分解反応を進行させるための触媒及びその添加量などは特に限定されず、スピンコート等の塗布方法によって均一な膜厚及び膜質で形成される材料や組成比であればよい。またコート液の調製方法も特に限定されない。
なお、上述したハードコート層2やプライマー層3を設けない場合は、配列層4のコート液をコートする前に、基板1上に酸、アルカリ、各種有機溶剤による化学的処理、プラズマ照射や紫外線照射などによる物理的処理、各種洗剤を用いる洗剤処理、サンドブラスト処理を施すことによって、基板と配列層との密着性等を向上させることができる。
上記コート液を基板1上にスピンコートにより塗工、続いて熱処理することにより、ゾル−ゲル膜を製膜することができる。ゾル−ゲル膜の厚みは、好ましくは0.02〜5μm、より好ましくは0.05〜0.5μmである。この厚みが0.02μm以上であると、研磨加工の際に膜全体の剥離が生じるがことなく、配列層4として良好に機能させることができ、5μm以下であるとクラックの発生を減らすことができる。
次に、図1Bに示すように、配列層4に対して所定の形状の凹凸パターン5を形成する。この凹凸パターン5は、配列層4に対して適度な硬度をもち、且つ適切な表面粗度を有する部材によりその表面を擦過することで擦過痕として容易に形成することができる。凹凸パターン5の幅や深さをある程度揃えることで偏光機能のムラを抑えることができる。このため例えば所定範囲の粒径の研磨材をスラリーとして用いた擦過処理によって凹凸パターン5を形成することが好ましい。またスラリーを用いる他、研磨粒を固定した研磨シートを弾性体の表面に貼り付けた擦過部材も利用可能である。レンズに比べて擦過部材が小さい場合は、擦過部材を例えばレンズ幾何中心を通過する直線上に沿って移動させて複数回擦過を行うことで、レンズ全面に閉曲線状の擦過痕を形成することができる。
なお、一般に液晶の場合には、基板にある一方向の摩擦加工や研磨加工を施すことにより、この基板上に塗布した液晶が、その加工痕の方向と一定の方向関係で配列することが知られている。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)製造において、液晶をセル内で配列するために、基板上に取り付けた配列膜(ポリイミドなど)を一方向に擦る、いわゆるラビング工程が行われることはよく知られている。二色性色素を含む溶液を一方向研磨した基板上にコートし、この色素を配列させその二色性を利用する技術は、例えば、米国特許2400877号明細書や米国特許4865668号明細書等に開示されている。
本発明においても、液晶ディスプレイ(LCD)製造における液晶の場合と同様に、基板上に形成したSiO2膜やゾル−ゲル膜より成る配列層4を研磨剤を用いて擦過処理することにより、偏光軸が所望の方向に分布するように、二色性色素を特定の方向に配列させることができる。
擦過処理に使用される研磨剤としては、特に制限ないが、例えば、研磨剤粒子を含むスラリーをウレタンフォーム等の発泡材料に浸漬させたものを用いることができる。研磨剤粒子としては、Al23、ZrO2、TiO2、CeO2等が挙げられる。この中で、形成した配列層に対する硬度(研磨の容易さ、仕上がり)、及び化学的安定性の観点から、Al23、ZrO2が好ましい。これらは1種単独でも、又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、研磨剤粒子を含むスラリーには、粘度改質剤、pH調整剤等が含まれていてもよい。
研磨剤粒子の平均粒径は、入射する偏光に対する遮光機能のムラを抑えて均一にするには7μm未満であることが好ましく、0.05〜6.7μmがより好ましく、1.5〜3.0μmがさらに好ましい。
特に上述したようにSiO2のような無機物質から形成される配列層と比べて有機物質を含むゾル−ゲル膜等の材料から形成される配列層は比較的硬度が低く、例えば平均粒径が1.5μm未満の研磨剤を使用した擦過処理でも十分な擦過痕を形成できる。特に1μm未満程度の微細な粒子の研磨剤を使用できることで、よりきめ細かな擦過処理が可能となる。また擦過時に加える圧力が高くなる場合、又は一箇所を集中的に擦過する場合でも、擦過痕によるヘイズの発生を抑えることができ、不良品の発生を低減化し、偏光レンズの生産性向上及びコスト削減が可能となる。なお擦過処理の条件は特に限定されず、擦過部材を円弧状等に回旋する際の速度や擦過時の圧力、また擦過時間(回数)等は配列層4の材料に応じて適宜調整すればよい。
また凹凸パターン5の形状を決定する擦過の軌跡は、この上に形成する偏光層の偏光軸が凹凸パターン5の配列方向に沿って形成される材料であるか、又は配列方向と直交する方向に沿って形成されるかによって異なる。前者の場合は、目的とする偏光軸方向の分布に沿って擦過を行い、凹凸パターン5を形成する。例えば同心円状の偏光軸の分布を形成する場合は、所定の位置を中心として同心円状に擦過を行う。また後者の場合は、目的とする偏光軸方向の分布に対し直交するパターンに沿って擦過を行う。例えば同心円状の偏光軸の分布を形成する場合は、図2に擦過方向の一例を示すように、基板1の幾何中心を原点Oとして、この原点Oから矢印cで示すように放射状に擦過を行えばよい。この場合、この上に形成される偏光層の偏光軸の分布は、破線dで示すように原点Oを中心とする同心円状の分布となる。
このように、基板1上に配列層4を形成し、その表面を擦過するのみで、この上に形成される後述する偏光層の偏光軸方向を所望の分布で形成することが可能となる。したがって、同心円や楕円、或いは直線部分を含む閉曲線状の分布など、目的に応じた種々の偏光軸方向の分布を容易に実現することができる。
次に、図1Cに示すように、配列層4の上に二色性色素を配列層4表面の凹凸パターン5を埋め込むように配列堆積させて偏光層6を形成する。
通常、偏光層6を形成する前に、擦過処理を行った配列層4の表面を十分に洗浄、及び乾燥させる。次に、二色性色素を含有する水溶液あるいは懸濁液(好ましくは水溶液)を、擦過痕を有する配列層4上に塗布、さらに二色性色素の非水溶化処理を行うことで偏光層6を形成することができる。
二色性色素を含有する水溶液あるいは懸濁液に、さらに上記以外の色素などを、本発明の効果を損なわない限り配合することで、所望の色相を有する偏光レンズを製造することができる。さらに塗布性等を向上させる観点から、必要に応じてレオロジー改質剤、接着性促進剤、可塑剤、レベリング剤等の添加剤を配合してもよい。
塗布方法としては、特に限定はなく、スピンコート、ディップコート、フローコート、スプレーコート等の公知の方法が挙げられる。
上記非水溶化処理としては、配列層4上に塗布した二色性色素を金属塩水溶液に浸漬する方法が好ましい。使用できる金属塩としては、特に限定されてないが、AlCl3、BaCl2、CdCl2、ZnCl2、FeCl2及びSnCl3等が挙げられる。この中で、取り扱いの容易さから、AlCl3及びZnCl2が好ましい。非水溶化処理後、二色性色素の表面をさらに乾燥させてもよい。
偏光層6の厚さは、特に限定されないが、目的とする偏光機能を安定して発揮するために0.05μm以上とすることが好ましい。また厚くし過ぎても付加的な効果は得られないので0.5μm以下の範囲であると好ましい。
次に、図1Dに示すように、偏光層6上に色素を固定するための保護層7を形成することが好ましい。この保護層7に用いられる材料としては、有機ケイ素化合物を用いることができる。保護層7の形成方法としては、偏光層6上に有機ケイ素化合物を含む液をディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の公知の手段によって塗布し、次いで熱硬化により製膜し形成することができる。この際有機ケイ素化合物は偏光層6に浸透し、実質的にこの保護層7と偏光層6とが一体化した層が形成される。色素保護層と偏光層が一体化した層の膜厚は、特に限定されないが0.05〜1μmの範囲であると好ましい。
更に図1Eに示すように、保護層7の上に、耐擦傷性を向上させるハードコート膜、反射防止膜、撥水膜、UV吸収膜、赤外線吸収膜、フォトクロミック膜、静電防止膜等の機能性膜8を公知の方法で形成することもできる。
上記の方法によれば、簡略な工程によって高品質な偏光レンズを製造することができる。
(5)偏光レンズの基本構成
本発明の第1の実施の形態に係る偏光レンズの偏光軸方向を示す平面図を図3Aに、そのI−I断面図を図3Bに示す。
第1の実施の形態に係る偏光レンズ10は、図3Aに示すようにその偏光軸11が、この偏光レンズ10の幾何中心を中心とする同心円状に形成されている。図3に示す偏光軸方向は円の円弧に沿って連続的に変化し、これにより遮光作用をもつ偏光の向きも連続的に変化する。つまり偏光軸の分布は幾何中心を原点とする点対称な分布であり、幾何中心から放射状に眼球が移動したとき偏光軸の方向はほぼ一定である。また同心円の円弧に沿って徐々に偏光軸方向が変化するので、レンズ内の任意の位置間を眼球が移動する場合にも、移動中の眼球回旋角度に応じて遮光機能が徐々に変化する構成となる。
またこの偏光レンズ10では、幾何中心の周囲の領域を偏光軸のない無偏光領域13とすることが好ましい。幾何中心近傍にも同心円状の偏光軸の分布を形成すると、幾何中心近傍、すなわち眼球の正面視方向で偏光軸が急激に変化することとなり、遮光機能も急激に変化してしまうため、正面方向からの反射光をこの範囲で遮光できず、良好な視界が得られない状況が生じ得る。したがって、幾何中心近傍はこのように無偏光領域13とすることが好ましい。そしてその大きさとしては、眼球が正面方向であるときに良好な視界が得られる範囲であればよく、例えば直径eが4mm以上15mm以下である円であることが好ましい。
またこの偏光レンズ10は、図3Bに示すように、例えばレンズ用に成形された光透過性材料より成る基板1上に、配列層4と、二色性色素等の偏光機能を有する材料を含む偏光層6とをこの順に形成した構成とする。前述したように配列層4と基板1との間に必要に応じてハードコート層、プライマー層を設けてもよく、また、前述のように、偏光層6上に保護層を設けることが好ましく、必要に応じて更に機能性膜を設けてもよい。この場合上述したように配列層4の表面に凹凸パターン5を形成し、その上に偏光層6を堆積することで、偏光層6に容易に所望の偏光軸方向の分布を形成することができる。配列層4上に形成される偏光層6は、この凹凸パターン5の延長する方向(図3B中矢印aで示す図3の紙面に垂直な方向)に沿う方向、又はこれとは直交する方向に偏光軸(吸収軸)をもつ。図3Bにおいては、凹凸パターン5はその断面形状を半円状とし、一定の間隔で並置する例であるが、これに限定されるものではなく、例えば図1B等に示すように鋸歯状等の断面形状や、またある程度不規則な凹凸形状であってもよい。要はこの上に形成する偏光層6に少なくとも人の眼で見てムラのない偏光機能が付与されるように、凹凸パターン5の幅、深さ及び密度のばらつきが抑えられていればよい。偏光層は、通常2本以上の複数の偏光軸を含むが、その本数および間隔は特に限定されるものではなく、所望の偏光機能に基づき設定されるものである。同一面内の複数の偏光軸は、通常それらの方向が平行となるように配置されるが、交差しない程度に方向が揃っていればよく完全に平行であることは必須ではない。
上述したようにこの配列層4上の凹凸パターン5は、ブラシやスポンジ等凹凸表面を有し所定の弾性を有する部材でその表面を擦過することで容易に形成できる。したがって所望の曲線形状をもつ偏光層を工程数の増加を招くことなく容易に製造することが可能である。
(6)偏光軸方向の分布
図4は、図3に示す偏光レンズ10におけるレンズ各領域の偏光軸方向と眼球回旋方向とを示す平面図である。図4において眼球80が回旋して左方向に傾いた状態を一点鎖線80b1、右方向に傾いた状態を破線80b2で示す。また眼球80の眼球回旋方向に対応する視線方向として正面視方向を実線b、左方向を一点鎖線b1、右方向を破線b2で示す。装用者の眼球80の回旋角度が正面方向の領域と、その上下に回旋した領域とを含む正面領域10bでは、偏光軸が水平方向に近い方向となっている。これにより、図10〜図13を用いて説明したように、水面などの水平面からの反射光と、建物等の垂直面に上方向から入射される光の反射光とを効率よく遮光できる。一方、眼球80の回旋方向が左方向に傾いたときの視野領域となるレンズ10の左側領域10b1では偏光軸方向が水平方向から左下向き、垂直方向、右下向きに徐々に連続的に傾斜角度が変化する。同様に眼球80の回旋方向が右方向に傾いたときの視野領域となる右側領域10b2でも偏光軸方向が水平方向から右下向き、垂直方向、左下向きに徐々に連続的に傾斜角度が変化する。つまりこの場合、正面領域10bでは水平面での反射光及び垂直面での上下方向からの反射光に対し遮光する機能をもち、左側領域10b1及び右側領域10b2では垂直面に対し斜め方向及び横方向からの反射光を遮光する機能をもつ。
図5は図3に示す偏光レンズ10において、眼球回旋角度に対する偏光軸方向の分布を示す。眼球回旋角度が矢印r0で示すように垂直方向上向きであるとき(偏角θ=0°)、偏光軸方向は矢印s0で示すようにほぼ水平方向である。眼球回旋角度が矢印r1で示すように垂直方向上向きからほぼ45度の場合(偏角θ=45°)、偏光軸方向は矢印s1で示すように右斜め下向き45度程度となる。眼球回旋角度が矢印r2で示すように垂直方向から90度、すなわち水平方向右向きの場合(偏角θ=90°)、偏光軸方向は矢印s2で示すようにほぼ垂直方向となる。眼球回旋角度が矢印r3で示すように垂直方向上向きから135度程度の場合(偏角θ=135°)、偏光軸方向は矢印s3で示すように左斜め下向き45度程度となる。以降眼球回旋角度が増加するにつれて偏光軸方向は同様の変化を示す。このように、偏光軸方向を同心円状とする場合は眼球回旋角度に対応して偏光軸方向が連続的に変化することとなり、眼球の移動に対して遮光機能が滑らかに変化する構成となる。
(7)偏光方向の違いによる遮光領域の変化
次に、図3に示す偏光レンズにおいて、実際に異なる偏光方向の光を入射した場合の遮光領域の変化について説明する。図6A〜Cは、偏光フィルム70を透過した光(偏光)を偏光レンズ10に入射した際に偏光レンズ10に現れる遮光領域を模式的に示す図であり、偏光フィルム70の向きを変えることにより、偏光レンズ10に入射する光の偏光方向を変化させている。
図6Aにおいては、同心円状の偏光軸11をもつ偏光レンズ10に対し、偏光フィルム70を近接させた状態の平面図である。偏光フィルム70には、複数の直線状の透過軸が平行に配列されている。この偏光フィルム70の透過軸方向を矢印Pで示す。図6Aでは、偏光フィルム70を透過する偏光の偏光方向は透過軸と平行となるため、縦方向、すなわちレンズ10を装用したときの垂直(子午線)方向である。このとき、レンズ10の水平方向に沿って左右の領域で偏光軸11が垂直方向にほぼ平行であり、幾何中心から左右に延在して遮光領域12が見られる。
次に、図6Bに示すように、偏光フィルム70を垂直方向から約45度傾けて配置する。フィルム70を透過する光の偏光方向も垂直方向から約45度となる。この場合、図6Bに示すように、レンズ10の幾何中心から左斜め上方と右斜め下方に延在して遮光領域12が出現する。矢印Pで示す偏光フィルム70の透過軸方向、即ち偏光フィルム70を透過した光(偏光)の偏光方向に対してレンズ10の偏光軸方向、すなわちこの領域12では吸収軸方向がほぼ平行となっているためである。
同様に、偏光フィルム70を垂直方向から約90度傾けて水平方向となるように配置すると、フィルム70を透過した光の偏光方向も水平方向となる。この場合、図6Cに示すように、レンズ10の幾何中心から上下に延在して遮光領域12が現われる。
なお、更に偏光フィルム70を45度回転させることで、図6Bで見られる遮光領域12とは左右対称な遮光領域が現われる。
つまり図6に示す例から、図6に示す偏光軸方向の分布を有する偏光レンズは、水平面や垂直面からの反射光のうち水平方向に偏光方向をもつ反射光をレンズ中央から上下に延びる領域で遮光し、垂直面での斜め右上及び斜め左下方向からの反射光をレンズ中央から斜め右上及び斜め左下に延びる領域で遮光する機能をもつことがわかる。垂直面での斜め左上及び斜め右下方向からの反射光はレンズ中央から斜め左上及び右下に延びる領域で遮光し、垂直面での横方向からの反射光は、レンズ中央から左右に延びる領域で遮光する機能をもつこともわかる。このように、様々な角度から入射する偏光を、その入射方向に対応した領域で遮光できるので、水平面及び垂直面からの反射光を良好に遮光することができる。また例えば車の側面等の曲面からの反射光が眩しい場合は、顔を左右どちらかに傾けることで、その視線方向に対応するレンズ10内での眼球回旋角度を調整することで、ある程度の遮光機能を得ることが可能となる。そしてこの場合、偏光レンズ10内での遮光領域12が急激に変化せず連続的に変化する構成となるので、眼への負担も抑えることができる。
2.第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態に係る偏光レンズについて図7を参照して説明する。
本実施の形態に係る偏光レンズにおいても、その基板や配列層、偏光層、その他の層の材料や形成方法は第1の実施の形態において説明した例と同様である。図7に示すように、本実施の形態では、偏光レンズ30に形成する偏光軸31の形状を楕円状とし、その一部を閉曲線状とするものである。この場合、楕円の長軸が偏光レンズ30の水平方向に沿って配置され、短軸が垂直方向に沿って配置されるようにする。このようにすることで、レンズ30の幾何中心から垂直方向上下に延在する水平方向の偏光光に対する遮光領域の幅を、第1の実施の形態において説明した同心円状の分布とする場合と比べ、やや広くすることができる。
このような偏光軸方向の分布は配列層に形成する凹凸パターンの分布によって制御することができる。偏光層の材料が、上記凹凸パターンに沿う方向に偏光軸が形成される性質を有するものである場合は、所望の偏光軸方向の分布に沿って配列層に擦過痕を形成すればよい。また、偏光層の材料が、上記凹凸パターンと直交する方向に偏光軸が形成される性質を有するものである場合は、図7において破線fで示すように、偏光レンズ30の水平方向及び垂直方向では直線状に擦過し、斜め方向には、垂直方向を対称軸として左右に凸となる曲線状の軌跡を描くように擦過することで、目的とする偏光軸31の分布を得ることができる。
なお、本実施の形態においても、偏光レンズ30の幾何中心近傍に無偏光領域33を設けることが好ましい。この無偏光領域33の大きさとしては、第1の実施の形態と同様の理由により4mm以上15mm以下とすることが好ましく、特に短辺を4mm以上、長辺を15mm以下とすることがより好ましい。
このようにすることで、レンズ30の幾何中心から上下に延在する水平方向の偏光光に対する遮光領域の幅を、第1の実施の形態において説明した同心円状の分布とする場合と比べ、やや広くすることができる。したがって、水平面からの反射光、又は垂直面での上下方向からの反射光をより広い範囲で遮光したい場合には、このように偏光軸の分布を楕円状とすることが好ましいといえる。
逆に、左右の領域において垂直面での横方向からの反射光をより多く遮光したい場合は、長軸を垂直方向に平行とし、短軸を水平方向としてもよい。更に、特殊な用途によっては、長軸及び短軸を斜めに直交する方向とすることも可能であり、その場合右眼用レンズと左眼用レンズとで左右対称な構成としてもよい。
3.第3の実施の形態
次に、本発明の第3の実施の形態に係る偏光レンズについて図8を参照して説明する。
本実施の形態に係る偏光レンズにおいても、その基板や配列層、偏光層、その他の層の材料や形成方法は第1の実施の形態において説明した例と同様である。本実施の形態では、図8に示すように、偏光レンズ40に形成する偏光軸41の分布としては、上下の領域では水平方向に沿う直線状とし、左右の領域では同心円の円弧状として、その間を滑らかな曲線で連続的に接続した形状とするものである。
本実施の形態においても、偏光レンズ40の幾何中心近傍に無偏光領域43を設けることが好ましい。この無偏光領域43の長径は、第1の実施の形態と同様の理由により4mm以上15mm以下とすることが好ましく、最小の部分で4mm以上、最大の部分で15mm以下の長さとすることがより好ましい。
この場合も、偏光層の材料が配列層に形成する凹凸パターンに沿う方向に偏光軸が形成される性質を有する材料であるときは、所望の偏光軸方向の分布に沿って配列層に擦過痕を形成すればよい。また、偏光層の材料が、凹凸パターンと直交する方向に偏光軸方向が形成される性質を有する材料であるときは、図8において破線gで示すように、垂直方向及び水平方向では直線状に擦過し、左右の同心円の円弧状とする領域では放射状に、また上下の直線状分布とする領域では、垂直方向を対称軸として左右に凸となる曲線状の軌跡を描くように擦過することで、目的とする偏光軸41の楕円状の分布を得ることができる。
このような偏光軸41の分布とする場合、第2の実施の形態と同様に、水平方向の偏光光に対する遮光領域の幅が第1の実施の形態の偏光レンズ10と比べて広くなり、左右の領域では第1の実施の形態と同様の遮光領域の分布となる。そして第2の実施の形態と同様に、図8に示す分布を90度回転させて左右に直線状領域、上下に同心円の円弧状領域を設ける構成としてもよい。更に、直線が水平方向から斜めに傾いた状態としてもよく、この場合も右眼用と左眼用とで左右対称な分布とすることも可能である。
なお、第2及び第3の実施の形態において説明した例では、偏光軸が閉曲線状ではない領域も含まれる。このように、同心円状以外の閉曲線状とする場合は、レンズの内側では閉曲線状で、外側では閉じていない形状となっていてもよい。しかしながら眼球回旋角度を変えたときに滑らかに偏光作用、すなわち偏光光の偏光方向に対する遮光領域の形状や面積が変化することが好ましい。
また、眼球がレンズの幾何中心から外側に、すなわち放射状に移動する場合に偏光作用が変化しないようにするには、複数の偏光軸の形状は、第1〜第3の実施の形態に示すように内側から外側に向かって相似形の閉曲線状とすればよい。ただしこれに限らず、例えば幾何中心から放射状に眼球が回旋するにつれて(極座標で表したときの動径rが大きくなるにつれて)偏光軸の方向が徐々に変化するように、閉曲線のカーブが徐々に変化する分布であってもよい。
更に、閉曲線の形状として、円または楕円の円弧及び直線のみではなく、例えば三角形等の多角形の各頂部を滑らかに曲線状に接続した形状などでもよい。なお、その接続部分の曲線は上述したように二次微分が定数となる程度に連続であればより好ましいが、それによって得られる遮光領域における偏光方向に対する変化が人の眼で見て急激に変化しない程度あればよい。
いずれの例においても、各偏光軸の分布を連続的な曲線状とすることができるので、眼球回転運動に対して遮光領域の変化が急激に生じることなく、眼球回転角度に対応した偏光機能を実現できる。
更に本発明の偏光レンズは、少なくとも一部が閉曲線状である偏光軸を有する偏光層(以下、「主偏光層」ともいう)に加えて、主偏光層が有する偏光軸とは方向の異なる偏光軸を有する偏光層(追加偏光層)を含むこともできる。これにより、偏光レンズの色調を面内の全域または一部領域で部分的に変化させることができ、また、漸次的に変化させることによりグラジエント染色した染色レンズと同様の濃淡分布を実現することもできる。この点について更に説明すると、図6に基づき説明したように、閉曲線部分を含む偏光軸を有する偏光層に偏光フィルムを重ねると、部分的に遮光領域、つまり高濃度領域を形成することができる。更に、これを利用すれば、主偏光層に形成する偏光軸の密度や方向を制御することにより面内で濃淡を漸次的に変化させることが可能となる。これにより、いわゆるグラジエント染色レンズと呼ばれる視感透過率(染色レンズでは濃度ともいう)が連続的に変化するレンズと同様の濃淡分布を実現することもできる。
これに対し、直線の偏光軸を有する偏光フィルム同士を重ねると、両フィルムの偏光軸が平行である場合と直交する場合で偏光レンズが呈す色調は変化するが、面内で濃淡を部分的ないし漸次的に変化させることはできない。即ち、2層の偏光層を設けることによりレンズの濃淡を面内で部分的ないし漸次的に変化させることができることは、主偏光層が、少なくとも一部が閉曲線状である偏光軸を有することによる効果である。
上記追加偏光層の偏光軸は、主偏光層と同じく閉曲線部分を含んでいてもよく、また開曲線部分を含んでもよいが、偏光軸方向の分布が主偏光層を同一である場合には、両層の偏光軸が重なりあうと濃淡を部分的、漸次的に変化させることができないため、重なりあわないように二層を配置することが好ましい。また、色調制御の容易性の観点からは、追加偏光層の偏光軸は直線であることが好ましい。追加偏光層の偏光軸が直線の場合には、図6に基づき説明したように、その偏光軸方向(軸角度)を変えることにより遮光領域を変化させることができる。
追加偏光層は、基板の主偏光層を設けた面とは反対側に形成してもよく、同じ側に形成してもよい。主偏光層と追加偏光層を含む場合の層構成の具体例としては、物体側から眼球側の順に、(1)基板/主偏光層/追加偏光層、(2)基板/追加偏光層/主偏光層、(3)追加偏光層/基板/主偏光層、(4)主偏光層/基板/追加偏光層、(5)追加偏光層/主偏光層/基板、(6)主偏光層/追加偏光層/基板、等を挙げることができる。なお、上記(1)〜(6)では基板および偏光層以外は記載していないが、先に説明した配列層、ハードコート層、プライマー層、保護層等の層を任意の位置に設けることができる。また、主偏光層の形成方法は先に説明したとおりであるが、追加偏光層の形成方法の一例としては、先に説明したように配列層を利用する方法を挙げることができる。または、追加偏光層が直線の偏光軸を有する偏光層の場合には、市販の偏光フィルムまたは公知の方法で作製した偏光フィルムを、接着剤等を利用し貼り付けることで、主偏光層と追加偏光層を積層することもできる。偏光フィルムの作製方法としては、例えばポリビニルアルコールフィルムに二色性色素を含浸させた後、該フィルムを一軸延伸することにより二色性色素を一軸配向させる方法等を挙げることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、得られた偏光レンズの物性評価は以下のようにして行った。
1.評価方法について
(1)偏光効率
偏光効率(Peff)は、ISO8980−3にしたがって、平行透過率(T//)及び垂直透過率(T⊥)を求め、次式により算出することで評価した。平行透過率及び垂直透過率は、可視分光光度計と偏光子を用いて測定した。
Peff(%)=〔(T//−T⊥)/(T//+T⊥)〕×100
(2)透明性(ヘイズ値)
株式会社村上色彩技術研究所製ヘイズメーターHM−150にて、作製した偏光レンズのヘイズ値を測定し、曇りの有無を判断した。
(評価基準)
○:曇りなし(ヘイズ値≦0.4%)
×:曇りあり(ヘイズ値>0.4%)
(3)密着性
作製した偏光レンズの密着性能は、沸騰水に3時間浸漬処理する前後における偏光レンズを用いて、下記の測定条件によって標準的密着テープ試験を行い評価した。
(測定条件)
硬化膜に1.5mm間隔で100目クロスカットし、このクロスカットしたところに粘着テープを強く貼り付けた後、粘着テープを急速に剥がした後の硬化膜の100目中の剥離マス目数を調べた。判断基準は以下の通り
である。
(評価基準)
◎ 剥離マス目数0/100(膜剥離なし)
○ 剥離マス目数1〜2/100
△ 剥離マス目数3〜5/100
× 剥離マス目数6以上/100
2.実施例1(偏光軸方向の分布:図3に示す同心円状)
(1)配列層の形成
レンズ基板として、ポリウレタンウレアレンズ(HOYA株式会社製商品名フェニックス、屈折率1.53、ハードコート付き、直径70mm、ベースカーブ4)を用いて、レンズ凹面上に、レンズ基板温度を約50℃とし、真空度約10-5.5MPaの条件で電子銃蒸着を行い、SiO2蒸着膜(膜厚250nm)を製膜した。
(2)擦過処理
得られた配列層(SiO2蒸着膜)に、研磨剤含有ウレタンフォーム(研磨剤:平均粒径0.1〜5μmアルミナAl23粒子、ウレタンフォーム:球面レンズの凹面の曲率とほぼ同形状)を擦過部材として用いて、研磨加工処理を行った。
擦過処理は圧力50g/cm2の条件で30秒間施した。レンズ基板の幾何中心を中心とした同心円方向に回転数350rpmで回転させながら擦過部材を当接し、レンズ基板上の配列層に図3に示す同心円状の擦過痕を形成した。擦過処理を施したレンズは純水により洗浄、乾燥させた。
(3)偏光層の形成
上記乾燥後、擦過処理面上に、二色性色素の約5質量%水溶液2〜3gを用いてスピンコートを施し、偏光層を形成した。スピンコートは、色素水溶液を回転数300rpmで供給し、8秒間保持、次に回転数400rpmで供給し45秒間保持、さらに1000rpmで供給し12秒間保持することで行った。なお、この段階での偏光レンズは、偏光効率99%,透過率30.5%を示した。ここで使用した二色性色素は、擦過痕に沿って偏光軸を形成する性質を有するものであったため、形成された偏光層における偏光軸方向の分布は、図3に示す同心円状となる。
次いで、塩化鉄濃度が0.15M、水酸化カルシウム濃度が0.2MであるpH3.5の水溶液を調製し、この水溶液に上記で得られたレンズをおよそ30秒間浸漬し、その後引き上げ、純水にて充分に洗浄を施した。この工程により、水溶性であった色素は難溶性に変換される。
(4)保護層の形成
その後、レンズをγ−アミノプロピルトリエトキシシラン10質量%水溶液に15分間浸漬し、その後純水で3回洗浄し、85℃で30分間熱硬化した。さらに、冷却後、レンズを空気中にてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2質量%水溶液に30分浸漬した後、100℃の炉で30分間熱硬化、硬化後冷却して保護層を形成した。
(5)機能性膜の形成
保護層を形成したレンズに、研磨剤(粒径0.8μm)で研磨処理を施し充分洗浄した。次に紫外線硬化性樹脂をスピンコート(500rpmで供給、45秒保持)により塗布した。塗布後、紫外線照射装置によりUV照射光量600mJ/cm2で硬化し、保護層を形成した面にハードコートを形成した。
3.比較例
レンズ基板として実施例で使用した材料と同様の基板を用い、これにレンズ基板温度約50℃、真空度約10-5.5MPaの条件で電子銃蒸着を行い、SiO2蒸着膜(膜厚250nm)を製膜したレンズ基板を作製した。
次に、上記で作製した基板に研磨剤(平均粒径0.8μm、1.3μm又は3μmAl23粒子)を用い擦過処理を行った。擦過処理は研磨圧50g/cm2の条件で30秒間施した。擦過の軌跡は1軸方向(固定された一定の方向)への直線状の擦過によって行った。
上記工程以外は実施例1と同様として偏光レンズを得た。前述のように、使用した二色性色素は擦過痕に沿って偏光軸を形成する性質を有するものであったため、形成された偏光層における偏光軸は、形成した擦過痕と同様、1軸方向に揃った直線となる。
得られた偏光レンズの偏光効率、密着性及び透明性を評価した。
実施例1 比較例
光学中心偏光効率 98% 98%
45度上方方向での45度方向偏光効率 98% 49%
透明性 ○ ○
密着性 ◎ ◎
上記の通り、実施例1の偏光レンズは、水平及び水平以外からの入射光に対する偏光効率は98%以上を有しており、偏光レンズとしての一般的なガイドラインである偏光効率50%を満たしている。一方、直線状の偏光軸とする比較例の偏光レンズでは45度斜め上方向の領域における45度方向の偏光効率が49%とガイドラインに達しておらず、斜め方向からの光に対して不都合を生じることがわかる。
実施例2(偏光層積層)
追加偏光層として使用する偏光フィルムとして、直線の偏光軸が複数平行配置された偏光フィルムを用意した。実施例1と同様の方法で作製した偏光レンズのハードコート上に、用意した偏光フィルムを接着剤で貼り付けた。追加偏光層の透過軸方向を、図6A〜Cと同様の方向に配置して自然光の下で観察したところ、図6A〜Cと同様に濃淡分布が現れ、部分的に遮光領域、つまり高濃度領域を形成することができた。
1.基板、2.ハードコート層、3.密着層、4.配列層、5.凹凸パターン、6.偏光層、7.保護層、8.機能性膜、10,30,40.偏光レンズ、10b.正面領域、10b1.左側領域、10b2.右側領域、11,31,41.偏光軸、12.遮光領域、13,33,43.無偏光領域、50.水平面、51.垂直面、60,80,80b1,80b2.眼

Claims (11)

  1. 基板上に、少なくとも一部が閉曲線状である偏光軸を有する偏光層を含む偏光レンズ。
  2. 前記偏光レンズは、幾何中心から外れた左右の周辺領域に、水平方向に対して傾斜した閉曲線状の偏光軸を有する、請求項1に記載の偏光レンズ。
  3. 前記偏光軸は、その方向が連続的に変化する、請求項1または2に記載の偏光レンズ。
  4. 前記偏光レンズは、幾何中心を含む中心領域から垂直方向に向かう領域において、偏光軸の方向が水平方向となる領域を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の偏光レンズ。
  5. 複数本の閉曲線状の偏光軸が、前記偏光レンズの幾何中心を中心に同心円状に配置されている、請求項1〜4のいずれかに記載の偏光レンズ。
  6. 前記偏光レンズの幾何中心近傍の領域は無偏光領域である、請求項1〜5のいずれかに記載の偏光レンズ。
  7. 前記無偏光領域の直径が4mm以上15mm以下である請求項6に記載の偏光レンズ。
  8. 眼球回転による視線方向の変化により視野領域となる部分に、閉曲線状の偏光軸が配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏光レンズ。
  9. 前記偏光層が色素含有層であり、
    前記基板と前記色素含有層との間に配列層を有する請求項1〜8のいずれかに記載の偏光レンズ。
  10. 前記偏光層に加えて、前記偏光層が有する偏光軸とは方向の異なる偏光軸を有する追加偏光層を含む請求項1〜9のいずれかに記載の偏光レンズ。
  11. 前記追加偏光層の偏光軸は直線状である請求項10に記載の偏光レンズ。
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