本発明の概念のほかは、図面に示される要素はよく知られたもので、詳細に説明することはしない。たとえば、本発明の概念のほかは、離散マルチトーン(DMT: Discrete Multitone)伝送(直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)または符号化直交周波数分割多重(COFDM: Coded Orthogonal Frequency Division Multiplexing)とも称される)にはなじみがあることを前提とし、本稿で説明はしない。また、テレビジョン放送、受信機およびビデオ・エンコードになじみがあることを前提とし、本稿で説明はしない。たとえば、本発明の概念のほかは、NTSC(National Television Systems Committee[全米テレビジョン・システム委員会])、PAL(Phase Alternation Lines[位相交替線])、SECAM(SEquential Couleur Avec Memoire[記憶をもつ逐次カラー])、ATSC(Advanced Television Systems Committee[先進テレビジョン・システム委員会])、デジタル・ビデオ放送(DVB: Digital Video Broadcasting)、地上波デジタル・ビデオ放送(DVB-T: Digital Video Broadcasting-Terrestrial)(たとえば非特許文献3参照)、DVB-Hおよび中国デジタル・テレビジョン・システム(GB)20600-2006(Digital Multimedia Broadcasting‐Terrestrial/Handheld (DMB-T/H))といった現行のおよび提案されているテレビジョン(TV)規格についての勧告になじみがあることは前提とする。ATSC放送信号についてのさらなる情報は、以下のATSC規格において見出せる:非特許文献1補正1および訂正1を含む改訂C版(文書A/53C)および非特許文献2(A/54)。同様に、本発明の概念のほかは、8レベル残留側波帯(8-VSB: eight-level vestigial sideband)、直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation)のような他の伝送概念および無線周波(RF: radio-frequency)フロントエンド(低ノイズ・ブロック、チューナー、ダウンコンバータ等のような)、復調器、相関器(correlator)、リーク積分器(leak integrator)および平方器(squarer)のような受信機コンポーネントは前提とされる。さらに、本発明の概念のほかは、単方向転送を通じたファイル送達(FLUTE: File Delivery over Unidirectional Transport)プロトコル、非同期層化符号化(ALC: Asynchronous Layered Coding)プロトコル、インターネット・プロトコル(IP: Internet protocol)およびインターネット・プロトコル・カプセル化(IPE: Internet Protocol Encapsulator)といったプロトコルになじみがあることは前提とし、本稿で説明することはしない。同様に、本発明の概念のほかは、転送ビットストリームを生成するためのフォーマットおよびエンコードの方法(動画像専門家グループ(MPEG)-2システム規格(ISO/IEC13818-1)のような)はよく知られており、本稿で説明することはしない。また、本発明の概念は、従来式のプログラミング技法を使って実装されてもよいことを注意しておくべきであろう。そのような従来式のプログラミング技法については本稿では説明しない。最後に、図面における同様の符号は同様の要素を表す。
図1は、移動DTVシステムのコンテキストにおける本発明の原理に基づくスタガーキャスト放送ストリーム1を示している。スタガーキャスト放送ストリーム1はコンプリートな(complete)または完全な(full)メディア・ストリーム11および別個のFECストリーム12を含む。完全なメディア・ストリームは本稿では基本ストリーム(base stream)またはエンコードされたストリームとも称され、これはテレビ番組についてのメディアまたはコンテンツ(たとえばビデオおよび/またはオーディオ)を伝達する。なお、完全なストリーム11はその完全なストリーム内においてFECデータを伝達するのではないことを注意しておく。よって、この完全なストリーム11のみをデコードする受信機は、ユーザーに対する表示のためにメディアまたはコンテンツ(たとえばビデオおよび/またはオーディオ)をレンダリングできるものの、チャネル誤りに対する耐性は低くなる。よって、完全なストリーム11は、FEC保護なしで送られるAないしH(大文字)とラベル付けされたブロックのストリームを含むが、対応するFECデータはFECストリーム12によって与えられる。FECストリーム12はcないしj(小文字)とラベル付けされたFECブロック(またはFECデータ)のシーケンスを含む。図1に示されるように、「c」とラベル付けされたFECブロックは、(点線14で表されるように)ブロック「C」の受信における誤りを訂正するために使われることができるFECデータである。図1から見て取れるように、完全なストリーム11はFECストリーム12に関してある時間遅延TDだけ遅延されている。ここで、TD=t1−t0である。つまり、完全なストリーム11はFECストリーム12と時間的にスタガーされている(staggered)のである。
本発明の原理に基づいて、チャネルを変える際、受信機がどのようにして、追加的な遅延を誘導することなく冗長性の利益を享受するかを見るために、再び図1を参照する。時刻t=t0において、受信機はスタガーキャスト放送ストリーム1の受信を開始する。しかしながら、スタガーキャスティング時間遅延TDのため、この時間TDの間に最初に受信されるFECブロック「c」および「d」は完全なストリーム11において伝達されるデータ「A」および「B」には対応しない。受信機は「A」または「B」についてのFECデータをもたないので、受信機はこの時間遅延TD後、ブロック「C」になるまで誤り訂正ができない。この時間期間TDにわたって何の保護もないデータは図1でラベル15によって表されている。このように、受信機が完全なサービス品質(QoS: Quality of Service)をユーザーに提供するためには、受信機は完全なストリーム11を処理する前に時間遅延TDの間待つ必要がある。残念ながら、これはチャネル変更における遅延を導入する。しかしながら、本発明の原理によれば、受信機は、データ「A」から完全なストリーム11を再生し、すぐコンテンツをユーザーに見せることを開始する。このようにして、たとえこのデータについて誤り保護がなくてもこのデータが利用可能になるとすぐレンダリングされることができるので、ユーザーは番組(またはチャネル)を切り替える際にチャネル変更遅延を被ることがない。だが時間遅延TD後、すなわち時刻t=t1には、受信機は完全なストリーム11の基本データのみならずFECストリーム12からの対応するFECデータももつ。したがって、低遅延を維持しながらも、ラベル16によって表される完全なストリーム11のブロック「C」で始まるデータについては、冗長性のあらゆる利益がある。
上記の例において、時間ダイバーシチは時間遅延TDによって表される。本発明の原理によれば、チャネル変更後、受信機はこの同じ時間区間にわたって時間多様FEC(time diverse FEC)の利益なしでデータを処理する。時間遅延TDは、適切なトレードオフを与えるために、調整できる。すべてのスタガーキャスト・ストリームが同じ時間遅延をもつことが想定されているものの、本発明の概念はそれに限定されるものではなく、時間遅延は異なるスタガーキャスト・ストリームの間で変動してもよい。たとえば、あるスタガーキャスト・ストリームは第一の時間遅延TD1をもってもよく、第二のスタガーキャスト・ストリームは異なる第二の時間遅延TD2をもってもよい。そのような場合、受信機は関連付けられた番組およびシステム情報を受信し、そのシステム情報が受信されたスタガーキャスト信号についての適切な時間遅延を指示することが想定される。実際、同じチャネル上の遅延TD自身も固定でなくてもよく、変動できる。変動する遅延の場合、値はたとえば0<TD≦TDmaxのように制限されることができる。可変遅延は、可変ビットレート(VBR: variable bit rate)コンテンツが一定ビットレート(CBR: constant bit rate)チャネル上で伝達される、あるいはCBRコンテンツがVBRチャネル上で伝達される場合に要求されることがありうる。この場合、FECストリームと基本ストリームを受信機内で再整列または再同期するために、RTP(Real-Time Protocol[リアルタイム・プロトコル])の特定のフィールドにおいて見出されるシーケンス番号が受信機によって使われることができる。
このように、本発明の原理によれば、受信機は、少なくとも一つのエンコードされたストリームおよび誤り訂正ストリームを含むチャネルを受信し、ここで、エンコードされたストリームは誤り訂正ストリームとずらされており;受信したエンコードされたストリームを、コンテンツを提供するようデコードし;受信したエンコードされたストリーム中の誤りを検出した際には、受信した誤り訂正ストリームを使って受信したエンコードされたストリームを訂正し;異なるチャネルが選択されるとき、その異なるチャネルの受信されたエンコードされたストリームを、ある時間遅延に等しい初期時間期間にわたってその異なるチャネルの受信されたエンコードされたストリームにおける誤りがその異なるチャネルの受信された誤り訂正ストリームによって訂正可能でない場合でも、コンテンツを提供するようデコードし;ここで、その異なるチャネルのエンコードされたストリームは、前記時間遅延だけ前記異なるチャネルの誤り訂正ストリームに関して遅延されている。
ここで図2に目を転じると、本発明の原理に基づく例示的な送信機100が示されている。本発明の概念に重要な送信機100の部分のみが示されている。送信機100はプロセッサ・ベースのシステムであって、図2において破線の四角の形で示されているプロセッサ140およびメモリ145によって表されるような一つまたは複数のプロセッサおよび付随するメモリを含む。このコンテキストにおいて、コンピュータ・プログラムまたはソフトウェアがプロセッサ140による実行のためにメモリ145に記憶され、たとえばFECエンコーダ105を実装する。プロセッサ140は一つまたは複数の記憶プログラム型制御プロセッサを表し、これらは送信機機能専用である必要はない。たとえば、プロセッサ140は送信機100の他の機能をも制御してもよい。メモリ145は任意の記憶装置、たとえばランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などを表し、送信機に内蔵および/または外付けであってよく、必要に応じて揮発性および/または不揮発性である。
図2に示される要素はFECエンコーダ105、遅延バッファ110、マルチプレクサ(mux)115、変調器120、アップコンバータ125およびアンテナ130を含む。パケット形式においてエンコードされたコンテンツ(たとえばMPEG-2エンコードされたビデオおよびオーディオ)を伝達する完全なストリーム101がFECエンコーダ105および遅延バッファ110に加えられる。後者は完全なストリーム101を時間遅延TDだけ遅延させて完全なストリーム11を与える。FECエンコーダ105は例示的には、すべてのシンボルを繰り返す単純な符号化率(rate)1/2のFEC反復符号である。一般的な形では、FECエンコーダはk個のシンボルを受け取り、N個のシンボルのブロックを与える。ここで、シンボルのうちのN−k個は冗長なシンボルである。FEC符号は、N個のシンボルのうちの任意のk個が受信されればもとのk個のシンボルを再構成することが可能であるという性質をもつ。FECエンコーダ105は完全なストリーム101を受け取ってFECストリーム12を与える。
完全なストリーム11およびFECストリーム12はマルチプレクサ115に加えられる。マルチプレクサ115は二つの論理的なチャネル(完全なストリーム11およびFECストリーム12)を多重化して、変調器120に加えるための多重化ストリーム116を与える。多重化されたストリーム116の例が図3に示されている。図2に戻ると、変調器120は多重化されたストリーム116を変調し、結果として得られる信号が、アンテナ130を介した移動DTV信号の送信のために、アップコンバータ125を介して無線周波数(RF)TVチャネルに上方変換(アップコンバート)される。
ここで図4を参照すると、本発明の原理に基づく送信機100において使用される例示的なフローチャートが示されている。ステップ150では、送信機100は放送送信のための完全なストリームを受領する。ステップ155では、送信機100は完全なストリームからFECストリームを形成する。ステップ160では、送信機100は完全なストリームを時間遅延TDだけ遅延させる。最後に、ステップ165において、送信機100は送信のためのスタガーキャスト・ストリームを形成する。ここで、スタガーキャスト・ストリームはFECストリームおよび遅延された完全なストリームを含む。
なお、一般には、完全なストリーム11についてかなりの遅延をもつ時間インターリーブ器を使わないことが好ましい。しかしながら、一層良好なフェージング・パフォーマンスが所望される場合には、時間インターリーブがFECストリーム12に対して使用されることができる。これは受信機によって経験される全体的なチャネル遅延に上乗せするものではない。さらに、上記の例は単純な符号化率1/2のFEC反復符号を用いて例示したが、ずっと洗練された符号を使うこともできる。たとえば、完全に失われた基本データグラムさえ再生できるようにするため、長い符号が使われることができる。この簡単な例は、図1に示される上記の図からの2ブロックに対して作用する3/4FEC符号である。たとえば、たとえ完全なストリーム11からの両方のブロックCおよびDが失われたとしても、このFEC符号を使えば、FECブロックc+dを使ってこれらの欠けているブロックを再生できる。これを達成するため、t1−t0間隔を1ブロック増やす必要がある。ここでもまた、以前と同様、これはシステムが誤り保護なしで動作するチャネル変更後の時間の長さを増すが、ユーザーが経験するチャネル変更遅延は全く増加しない。
ここで図5を参照すると、本発明の原理に基づく装置200の例示的な実施形態が示されている。装置200は、ハンドヘルド、モバイルまたは静止を問わず、任意のプロセッサ・ベースのプラットフォームを表す。たとえば、パソコン(PC)、サーバー、セットトップボックス、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、モバイル・デジタル・テレビジョン(DTV)、DTVなどである。これに関し、装置200は、メモリが付随する一つまたは複数のプロセッサを含む(図示せず)。装置200は受信機205およびディスプレイ290を含む。受信機205は放送信号204を(たとえばアンテナ(図示せず)を介して)受信し、その放送信号を処理してそれからたとえばビデオ・コンテンツを見るためのディスプレイ290に加えるためのビデオ信号206を復元する。
ここで受信機205に目を転じると、本発明の原理に基づく受信機205の例示的な部分が図6に示されている。本発明の概念に重要な部分のみが示されている。受信機205はプロセッサ・ベースのシステムであり、図6における破線の四角の形で示されているプロセッサ390およびメモリ395によって表されるような一つまたは複数のプロセッサおよび付随するメモリを含む。このコンテキストにおいて、コンピュータ・プログラムまたはソフトウェアがプロセッサ390による実行のためにメモリ395に記憶され、たとえばFECデコーダ320を実装する。プロセッサ390は一つまたは複数の記憶プログラム型制御プロセッサを表し、これらは受信機機能専用である必要はない。たとえば、プロセッサ390は受信機205の他の機能をも制御してもよい。メモリ395は任意の記憶装置、たとえばランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などを表し、受信機205に内蔵および/または外付けであってよく、必要に応じて揮発性および/または不揮発性である。
受信機205は復調器305、デマルチプレクサ(demux)310、遅延バッファ315およびFECデコーダ320を含む。本発明の概念に重要な部分しか示していない。上述したように、受信機205は処理のために放送信号204を(たとえばアンテナ(図示せず)を介して)受信する。放送信号204はフロントエンド処理(図示せず)によって下方変換(ダウンコンバート)されて受信信号304を与える。この受信信号304は復調器305によって復調されて復調信号306(シンボルのストリーム)をデマルチプレクサ310に与える。デマルチプレクサ310は送信機100のマルチプレクサ115の逆の機能を実行し、FECストリームから完全なストリームを分離する。具体的には、デマルチプレクサ310は、完全なストリーム11の受信されたバージョンに対応する完全なストリーム311を与え、またFECストリーム12の受信されたバージョンに対応するFECストリーム312をも与える。この後者は遅延バッファ315によって時間的に遅延させられ、遅延FECストリーム316を与える。遅延バッファ315は、完全なストリームをFECストリームと時間的に揃え直すために、対応する時間遅延TDを与える。FECデコーダ320は遅延FECストリーム31および完全なストリーム311の両方を受信して出力信号321を与える。この出力信号は、省略符号325によって表されるように受信機205の他の回路(図示せず)によって処理され、そこからたとえばビデオ信号206が復元される。
暫時図1に戻って参照すると、受信機立ち上げの時点、あるいはチャネル選択直後には、受信機205内の遅延バッファ315は、TDに等しい時間期間にわたってフラッシュされる、すなわち空である。よって、チャネル変更後のこの初期期間においては、FECデコーダ320は関心のあるデータ、たとえばブロック「A」および「B」のためのFECデータを全くもたず、よって単に保護されない完全なストリーム311をその出力に、すなわち出力信号321としてパススルーさせる。結果として、チャネル変更直後にこの時間区間TDの間にチャネル・フェードが起こると、その後デコードされレンダリングされるビデオはこの期間の間アーチファクトを示すことがありうる。最悪ケースのシナリオでは、完全なストリームは、時間t1においてFECチャネルが利用可能になるまでは、デコードするためにさえ十分堅牢でない。この場合、ユーザーはチャネル切り替えにおける遅延を知覚するであろう。しかしながら、これは低頻度なはずで、たいていの場合、ユーザーは、本発明の原理に従ってチャネル変更遅延を経験しないであろう。
時間遅延TD後には、FECデコーダ320は、出力信号321を与える際に、FECストリーム316内の対応する誤り訂正データを使うことによって、完全なストリーム311におけるいかなる検出された誤りをも訂正しようと試みることができる。
ここで図7を参照すると、受信機205において使用するための例示的なフローチャートが示されている。電源投入または受信チャネル選択に際して、受信機205はステップ405においてFECを無効にし、ステップ410において、受信した任意の完全なストリームのデコードを開始する。ステップ415において、完全なストリームをデコードする間、受信機205はいつスタガーキャスティング時間遅延TDが経過するかをチェックする(たとえばタイマーからの割り込みを介して)。スタガーキャスティング時間遅延TDが経過したら、受信機205はステップ420でFECを有効にし、そうでなければ受信機205はFEC保護で完全なストリームをデコードし続ける。
本発明の原理によれば、いくつかの興味深い変形がある。たとえば、FECエンコードに対してより少数のビットが割かれることができ、FECは、より長いブロックについて訂正する能力をもつより強力な符号と組み合わされ、追加的な帯域幅や遅延要求なしでより優れたパフォーマンスを発揮することができる。この一例は、畳み込み符号、ターボ符号、LDPC符号のような複数のブロックにわたって分散されている誤りを制御する能力をもつブロック符号である。この別の例は、追加的な遅延を被ることなく長いインターリーブ遅延をもって誤り訂正ストリームをインターリーブすることである。これは図8に示されている。図8では、FECストリームのブロックの対がインターリーブされている。これは図8ではブロック「d」の上に位置するブロック「c」によって表されている。このインターリーブの結果として、FECストリームは今や、「ブロック」の継続時間よりも長いフェード(信号のロス)に耐性をもつことができる。このプロセスの論理的な延長は、誤り訂正ストリームのために、データをマトリクスとして編成して行および列のデータ両方のFECパリティを生成するPRO-MPEG様の符号を使うことである。ここでもまた、これが通常被る遅延は、チャネル変更のためには問題ではない。というのも、誤り訂正ストリームは信号より前に放送されるからである。
さらに、完全なストリームをエンコードするためにSVC(scalable video coding[スケーラブル・ビデオ符号化])を使用できる。SVCでは、典型的にはSVC基本層があり、少なくとも一つのSVC向上層がある。SVC基本層は基本レベルのビデオ解像度、たとえば標準精細度(standard definition)を提供し、任意のSVC向上層はビデオ解像度を上げる。たとえば高精細度(high definition)である。本発明のコンテキストでは、SVC向上層はスタガーキャスティング保護なしで放送されることができ、誤り訂正データ、たとえばFECデータのスタガーキャスティングはSVC基本層に対してのみ提供されることができる。これは、ビットレートの無用な増大なしに、非常に高い信頼性をもってフォールバック(fallback)・ビデオ信号を利用可能にする。
このことは、図9の送信機600において本発明の原理に従ってさらに例示される。本発明の概念に重要な送信機600の部分のみが示されている。送信機600はプロセッサ・ベースのシステムであって、図9において破線の四角の形で示されているプロセッサ640およびメモリ645によって表されるような一つまたは複数のプロセッサおよび付随するメモリを含む。このコンテキストにおいて、コンピュータ・プログラムまたはソフトウェアがプロセッサ640による実行のためにメモリ645に記憶され、たとえばFECエンコーダ615を実装する。プロセッサ640は一つまたは複数の記憶プログラム型制御プロセッサを表し、これらは送信機機能専用である必要はない。たとえば、プロセッサ640は送信機600の他の機能をも制御してもよい。メモリ6145は任意の記憶装置、たとえばランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などを表し、送信機に内蔵および/または外付けであってよく、必要に応じて揮発性および/または不揮発性である。
図9に示される要素はSVCエンコーダ606、FECエンコーダ615、遅延バッファ610、マルチプレクサ(mux)620、変調器120、アップコンバータ125およびアンテナ130を含む。ビデオ・エンコードされる前のコンテンツの完全なストリーム601がSVCエンコーダ605に加えられる。SVCエンコーダ605は基本層ストリーム603および少なくとも一つの向上層ストリーム604を与える。見て取れるように、基本層ストリーム603のみがFECエンコーダ615に加えられる。基本層ストリーム603および向上層ストリーム604は遅延バッファ610に加えられる。遅延バッファ610はSVCエンコードされた信号のすべてのコンポーネント(すなわち、基本層および向上層)を時間遅延TDだけ遅延させる。点線の円11によって表されるような遅延させられたSVC信号(事実上、完全なストリーム11を表す)はマルチプレクサ620に加えられる。FECエンコーダ615は例示的には、すべてのシンボルを繰り返す単純な符号化率(rate)1/2のFEC反復符号であるが、本発明の概念はそれに限定されない。マルチプレクサ620はすべての論理的なチャネル(完全なストリーム11およびFECストリーム12)を多重化し、変調器120に加えるための多重化ストリーム621を与える。変調器120は多重化ストリーム621を変調し、結果として得られる信号が、アンテナ130を介した移動DTV信号の送信のために、アップコンバータ125を介して無線周波数(RF)TVチャネルに上方変換(アップコンバート)される。図4に示される方法は、ステップ155がFECストリームをSVCエンコードされた信号の基本層からのみ生成するよう、ストレートな仕方で修正できる。
ここで受信機205に目を転じると、SVCで使うための本発明の原理に基づく受信機205の例示的な部分が図10に示されている。本発明の概念に重要な部分のみが示されている。受信機205はプロセッサ・ベースのシステムであり、図10における破線の四角の形で示されているプロセッサ790およびメモリ795によって表されるような一つまたは複数のプロセッサおよび付随するメモリを含む。このコンテキストにおいて、コンピュータ・プログラムまたはソフトウェアがプロセッサ790による実行のためにメモリ795に記憶され、たとえばFECデコーダ720を実装する。プロセッサ790は一つまたは複数の記憶プログラム型制御プロセッサを表し、これらは受信機機能専用である必要はない。たとえば、プロセッサ790は受信機205の他の機能をも制御してもよい。メモリ795は任意の記憶装置、たとえばランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などを表し、受信機205に内蔵および/または外付けであってよく、必要に応じて揮発性および/または不揮発性である。
受信機205は復調器305、デマルチプレクサ(demux)710、遅延バッファ315およびFECデコーダ720を含む。本発明の概念に重要な部分しか示していない。上述したように、受信機205は処理のために放送信号204を(たとえばアンテナ(図示せず)を介して)受信する。放送信号204はフロントエンド処理(図示せず)によって下方変換(ダウンコンバート)されて受信信号304を与える。この受信信号304は復調器305によって復調されて復調信号306(シンボルのストリーム)をデマルチプレクサ710に与える。デマルチプレクサ710は送信機600のマルチプレクサ620の逆の機能を実行し、FECストリームから完全なストリームを分離する。具体的には、デマルチプレクサ710は、完全なストリーム11の受信されたバージョンに対応する受信された基本層ストリーム711および向上層ストリーム712によって表される完全なストリームを与え、またFECストリーム12の受信されたバージョンに対応するFECストリーム312をも与える。この後者は遅延バッファ315によって時間的に遅延させられ、遅延FECストリーム316を与える。遅延バッファ315は、完全なストリームをFECストリームと時間的に再整列させるために、対応する時間遅延TDを与える。FECデコーダ720は遅延FECストリーム31および基本層ストリーム711の両方を受信して出力信号721を与える。今や出力信号721によって表される基本層と向上層ストリーム712とは、省略符号725によって表されるように受信機205の他の回路(図示せず)によって処理され、そこからたとえばビデオ信号206が復元される。
受信機立ち上げの時点、あるいはチャネル選択直後には、受信機205内の遅延バッファ315は、TDに等しい時間期間にわたってフラッシュされる、すなわち空である。よって、チャネル変更後のこの初期期間においては、FECデコーダ720は基本層ストリームの保護のためのFECデータを全くもたず、よって単に保護されない基本層ストリーム711をその出力に、すなわち出力信号721として素通しにする。時間遅延TD後には、FECデコーダ720は、出力信号321を与える際に、FECストリーム316内の対応する誤り訂正データを使うことによって、基本層ストリーム711におけるいかなる検出された誤りをも訂正しようと試みることができる。図7に示された方法は、SVCエンコードされた信号を受信するための図10の受信機205における使用のために等しく適用可能である。
また、本発明の概念はエンコードされたストリームとしてのオーディオの伝送にも等しく適用される。よって、本発明に基づく上記の装置および方法は、速いチャネル変更を実装するために非スケーラブルおよびスケーラブルな圧縮されたオーディオにも適用される。たとえば、オーディオについては、図10の装置205は今度はスケーラブルな符号化されたオーディオ信号を受信し、信号711は今度は受信されたスケーラブルな符号化オーディオ信号の基本層ストリームであり、信号712は受信されたスケーラブルな符号化オーディオ信号の向上層である。スケーラブルなオーディオ・コーデックの例はMPEG4-AACスケーラブル・コーデックを含む。
上述したように、本発明の原理によれば、いかなるチャネル変更遅延も被ることなく無線送信ストリームにフェードからの保護を与えるためにスタガーキャスティングが使用される。本発明の概念は、ブロック、たとえば図1のブロック「A」、「B」および「C」のコンテキストで記載したが、本発明はそれに限定されず、実際上、データをブロックに分解する必要性はない。たとえば、冗長なFECストリームおよび畳み込み符号はブロックを必要としない。また、スタガーキャスト・ストリームTDの時間オフセットは選択可能なパラメータである。一般に、このオフセットは通常のストリームとスタガーキャスト・ストリームとの間でチャネルの信号品質の相関を失わせるのに十分大きいべきである。換言すれば、「a」が受信できない確率は、「A」が受信できない確率と密接に相関するべきではない。これが時間ダイバーシチの考えである。一般に、TDの値が大きいほど、達成される脱相関は大きい。ただし、実際上は数秒のオーダーのオフセットが十分である。このコンテキストにおいて、誤り訂正ストリームと完全なストリームの間で極端に大きな時間オフセット値を選ぶことにはいくつかの欠点がある。第一に、チャネル変更後の保護されないビデオの期間(保護されないというのは伝送誤りを訂正するためにFECデータが利用可能でないという意味で)がより長くなる。一般に、この保護されないビデオの時間の長さはスタガーキャスト・オフセットTDに等しい。第二に、受信機においてより大きなメモリ要件(たとえばより大きな遅延バッファ)および可能性としては処理要件が課される。
上記に鑑み、以上は単に本発明の原理を例解するものであり、よって、当業者は、本稿に明示的に記載されてはいなくても本発明の原理を具現するものでありその精神および範囲内である数多くの代替的な構成を考案できるであろうことは理解されるであろう。たとえば、別個の機能要素のコンテキストで例解されていても、それらの機能要素は一つまたは複数の集積回路(IC)において具現されてもよい。同様に、別個の要素として図示されていても、そのような要素の任意のものまたは全部が、たとえば図7などに示されるステップの一つまたは複数に対応する関連するソフトウェアを実行する記憶プログラム制御プロセッサ、たとえばデジタル信号プロセッサにおいて実装されてもよい。さらに、図面のいくつかは、要素が一つに束ねられていることを示唆するかもしれないが、本発明の概念はそれに限定されない。たとえば、図5の装置200の要素は、その任意の組み合わせにおいて異なるユニットに分散されていてもよい。たとえば、図5の受信機205は装置または装置とは物理的に別個であるセットトップボックスのようなボックスまたはディスプレイ290を組み込んでいるボックスなどの一部であってもよい。また地上波放送(たとえばATSC-DTV)のコンテキストで記載されたとしても、本発明の原理は他の型の通信システム、たとえば衛星、Wi-Fi、セルラー等にも適用可能であることは注意しておくべきである。実際、たとえ本発明の概念がモバイル受信機のコンテキストで例示されたとしても、本発明の概念は静止受信機にも適用可能である。したがって、付属の請求項によって定義される本発明の精神および範囲から外れることなく、例示的な実施形態に数多くの修正がなされてもよく、他の構成が考案されてもよいことは理解しておくものとする。