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JP2010228217A - 光学フィルム、並びにその製造方法及び製造装置 - Google Patents

光学フィルム、並びにその製造方法及び製造装置 Download PDF

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JP2010228217A JP2009077015A JP2009077015A JP2010228217A JP 2010228217 A JP2010228217 A JP 2010228217A JP 2009077015 A JP2009077015 A JP 2009077015A JP 2009077015 A JP2009077015 A JP 2009077015A JP 2010228217 A JP2010228217 A JP 2010228217A
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山田  晃
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Abstract

【課題】レターデーションのばらつきを低減した光学フィルム、並びにその製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】溶融状態の樹脂組成物12をダイ16から吐出して、挟圧装置20を構成するタッチロール28及びキャスティングロール18により、樹脂組成物12を挟圧してフィルムFを成形する。このとき、タッチロール28とキャスティングロール18との間隔(ロール間隔)は、ロール間隔が狭まるのを防止するスペーサーと、ロール間隔が広がるのを防止するストッパーとにより固定される。これにより、レターデーションのばらつきが低減された光学フィルムを製造することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学フィルム、並びにその製造方法及び製造装置に係り、例えば、液晶表示装置などの光学用途に使用される光学フィルム、並びにその製造方法及び製造装置に関する。
近年、液晶表示装置等の光学用途において、所定の光学特性を有するフィルム(いわゆる、光学フィルム)が様々な目的で使用されている。光学フィルムとして、例えば、液晶表示装置における偏光膜用の保護膜や、液晶セルのレターデーションを補償する位相差フィルム等が挙げられる。
このような光学フィルムの製造方法として、溶融樹脂を主ロール(キャスティングロール)と押さえロール(タッチロール)とで挟圧してフィルム状に成形するタッチロール法が知られている。
タッチロール法により光学フィルムを製造する場合、ロールの挟圧部上に形成される溶融樹脂溜まり(バンク)が乱れると、厚みムラやタッチ抜け等の光学フィルムの面状不良として現れる。なおタッチ抜けとは、タッチロールと接触している領域と接触していない領域との境界上に現れるライン状の欠陥をいう。
このため、厚みムラやタッチ抜け等の面状不良を低減することができる光学フィルムの製造方法が提案されている。
例えば、特許文献1は、ゴムロールを含む挟圧装置により、溶融樹脂を挟圧してフィルム状に成形する光学フィルムの製造方法を開示している。この方法によれば、溶融樹脂を挟圧するゴムロールが適度に変形可能であるため、バンクが不安定な場合であっても、光学フィルムの面状不良を防止することができる。
また特許文献2には、金属無端状ベルトが巻き架けられたゴムロールを含む挟圧装置により、溶融樹脂を挟圧してフィルム状に成形する光学フィルムの製造方法が開示されている。この方法によれば、特許文献1に記載された方法と同様にゴムロールが適度に変形可能であるため、バンクが不安定な場合であっても、光学フィルムの面状不良を防止することができる。
特開2007−38646号公報 特開2003−237495号公報
しかしながら、近年、光学フィルムのさらなる高品質化が要求されており、レターデーションのばらつきが少ない光学フィルムの開発が望まれている。
このような状況において、特許文献1及び2に記載された方法では、レターデーションのばらつきを十分に低減することが難しかった。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、レターデーションのばらつきを低減した光学フィルム、並びにその製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂を含む溶融状態の樹脂組成物を、供給手段の吐出口から押し出して供給する工程と、溶融状態の前記樹脂組成物を第1挟圧面と第2挟圧面とで挟圧して、フィルムを成形する工程とを含む光学フィルムの製造方法であって、前記フィルムを成形する工程では、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が狭まるのを防止するスペーサーと、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が広がるのを防止するストッパーとにより、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔を固定することを特徴とする。
本願発明者が鋭意検討した結果、挟圧部において、樹脂組成物の粘度にばらつきがあったり、挟圧部に供給される樹脂組成物の流量にばらつきがあったりすると、樹脂組成物から受ける反力の変化により挟圧面間隔が変動してしまい、結果として、レターデーションが不均一になることが明らかになった。上記光学フィルムの製造方法は、本願発明者による上記検討結果に基づくものであり、スペーサー及びストッパーにより第1挟圧面と第2挟圧面との間隔を固定することで、レターデーションのばらつきを低減することができる。
上記光学フィルムの製造方法において、前記スペーサーはコッターであることが好ましい。
これにより、フィルム成形条件の一つである、第1挟圧面と第2挟圧面との最近接距離(最近接面間隔)を自由に調節することができる。
上記光学フィルムの製造方法において、前記フィルムを成形する工程では、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔x、前記フィルムの膜厚dとが0.001d≦x≦dの関係を満たすことが好ましい。
ロール間隔xを上記範囲に設定することで、バンクが不安定になることを防止しつつ、タッチ抜けによる面状不良を防止することができる。
上記光学フィルムの製造方法において、前記第1挟圧面及び前記第2挟圧面が剛性ロールであることが好ましい。
第1挟圧面及び第2挟圧面として、高いニップ圧を付与しても変形しにくい剛性ロールを用いることで、レターデーションが十分に高い光学フィルムを製造することができる。
上記光学フィルムの製造方法において、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面とで挟圧される前記溶融樹脂の温度Tと、前記溶融樹脂のガラス転移温度Tgとが、Tg+70℃≦T≦Tg+200℃の条件を満たすことが好ましい。
挟圧部における樹脂組成物の温度を上記範囲に設定することで、フィルムの成形性を維持しながら、樹脂組成物の分解を防止することができる。
上記光学フィルムの製造方法において、前記フィルムを成形する工程では、前記溶融樹脂を0.1MPa以上60MPa以下の圧力で挟圧することが好ましい。
上記光学フィルムの製造方法において、溶融状態の前記樹脂組成物を挟圧する前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との移動速度は互いに異なってもよい。
この場合、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との移動速度比が0.60以上0.99以下であることが好ましい。
このように第1挟圧面と第2挟圧面との移動速度を互いに異なる速度に設定することで、光軸が傾斜した光学フィルムを製造することができる。また第1挟圧面と第2挟圧面との移動速度比を上記範囲に設定することで、表面が平滑であり、光軸が大きく傾斜した光学フィルムを製造することができる。
本発明に係る光学フィルムは、上記光学フィルムの製造方法により製造することができる。
本発明に係る光学フィルムの製造装置は、熱可塑性樹脂を含む溶融状態の樹脂組成物を供給する供給手段と、第一挟圧面と第二挟圧面とを有し、前記供給手段から供給される溶融状態の前記樹脂組成物を前記第1挟圧面と前記第2挟圧面とで挟圧してフィルムを成形する挟圧手段と、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が狭まるのを防止するスペーサーと、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が広がるのを防止するストッパーとを有し、前記スペーサーと前記ストッパーにより前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔を固定する間隔固定手段とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、溶融状態の樹脂組成物を挟圧する第1挟圧面と第2挟圧面との間隔を、スペーサー及びストッパーにより固定することで、光学フィルムのレターデーションのばらつきを低減することができる。
光学フィルムの製造装置の一例を示す全体構成図である。 押出機の構成を示す断面図である。 ロール間隔を固定する機構を示す図であり、(a)はロール間隔を固定する前の状態を示し、(b)はロール間隔を固定した後の状態を示す。 ダイ及び挟圧装置の構成を示す側面図である。 挟圧装置の挟圧部を示す拡大図である。 ロールの周速比と|Re(40°)-Re(-40°)|との関係を示すグラフである。 実施例の条件及び結果を示す表である。
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法を実施するために用いられる樹脂シート製造装置の一例を示す構成図である。以下、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法及び製造装置について説明する。
図1に示すように、光学フィルム製造装置10は、主として、樹脂組成物12を溶融させる押出機14と、溶融状態の樹脂組成物12を吐出するダイ16と、ダイ16から吐出された溶融状態の樹脂組成物12を挟圧してフィルムFを成形する挟圧装置20と、フィルムFを冷却する冷却ロール22と、冷却ロール22からフィルムFを剥離する剥離ロール24と、冷却ロール22から剥離されたフィルムFを巻き取る巻取機26とにより構成される。
押出機14は、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物12を溶融させて、溶融状態の樹脂組成物12をダイ16に送る。図2は、押出機14の構成の一例を示す断面図である。同図に示すように、押出機14のシリンダ32内には、スクリュー軸34にフライト36を取り付けた単軸スクリュー38が設けられている。この単軸スクリュー38は、不図示のモータによって回転するようになっている。シリンダ32の供給口40には不図示のホッパーが取り付けられている。そして、このホッパーからペレット状の樹脂組成物12が供給口40を介してシリンダ32内に供給される。
シリンダ32内は、供給口40側から順に、供給口40から供給されたペレット状の樹脂組成物を定量輸送する供給部(Aで示す領域)と、樹脂組成物を混練及び圧縮する圧縮部(Bで示す領域)と、混練及び圧縮された樹脂組成物を計量する計量部(Cで示す領域)とにより構成される。上記構成の押出機14により、溶融状態の樹脂組成物12が吐出口42からダイ16に連続的に送られる。
押出機14のスクリュー圧縮比は、1.5〜4.5に設定されることが好ましく、シリンダ内径に対するシリンダ長さの比L/Dは20〜70に設定されることが好ましい。ここで、スクリュー圧縮比とは、供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち(供給部Aの単位長さ当たりの容積)/(計量部Cの単位長さ当たりの容積)で表され、供給部Aのスクリュー軸34の外径d1、計量部Cのスクリュー軸34の外径d2、供給部Aの溝部径a1、及び計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。押出温度は190〜300℃が好ましい。さらに残存酸素による溶融樹脂の酸化を防止するため、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのも好ましい。
押出機14によって溶融した樹脂組成物12は、図1に示すように、配管44を介してダイ16に送られ、ダイ16の吐出口16Aから挟圧装置20に向けて吐出される。このとき、ダイ16における樹脂組成物12の吐出圧の変動は10%以内の範囲にすることが好ましい。
ダイ16の吐出口16Aから押し出された直後の樹脂組成物12の温度T[℃]は、Tg+70℃≦T≦Tg+200℃を満足することが好ましい。ダイ16の吐出口16Aから押し出された直後の樹脂組成物12の温度Tは、接触式温度計や非接触式温度計によって測定することができる。またTg[℃]は樹脂組成物12のガラス転移温度を意味し、例えば走査型示差熱量計(DSC)を用いて以下の手順で測定することができる。
走査型示差熱量計(DSC)の測定パンに樹脂組成物12を入れ、これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から300℃まで昇温した後(1st−run)、30℃まで−10℃/分で冷却し、再度10℃/分で30℃から300℃まで昇温する(2nd−run)。上記2nd−runでベースラインが低温側から偏奇し始める温度を、樹脂組成物12のガラス転移温度Tgとして算出することができる。
また、周囲の空気の流れに起因するバンクの変動や、樹脂組成物の周囲への放熱等の外乱の影響を小さくする観点から、ダイ16の吐出口16Aと挟圧装置20との間に、樹脂組成物12を囲う遮蔽部材を設けてもよい。
この場合、空気より熱伝導率が小さい気体を遮蔽部材の内部に封入することで、外気からの熱伝導を抑えることができ、バンクの樹脂温度を高くすることができるとともに、溶融樹脂が受ける外乱の影響を小さくできる。遮蔽部材の内部に封入可能な気体として、例えばアルゴンや炭酸ガス等を挙げることができる。
上述のようにダイ16の吐出口16Aから挟圧装置20に向けて押し出された樹脂組成物12は、挟圧装置20によりフィルム状に成形される。挟圧装置20は、タッチロール28(「第1挟圧面」に相当)と、タッチロール28に対向して配置されるキャスティングロール18(「第2挟圧面」に相当)とにより構成される。
タッチロール28及びキャスティングロール18は、不図示の駆動装置により、図1の矢印方向に回転可能に構成されている。ダイ16から吐出された溶融状態の樹脂組成物12は挟圧装置20上にバンク(樹脂溜まり)15を形成しており、このバンク15内の樹脂組成物12が、タッチロール28及びキャスティングロール18の回転に伴って、タッチロール28とキャスティングロール18との間の挟圧部に送られ、フィルムFが成形される。このフィルムFは、タッチロール28とキャスティングロール18との間の挟圧部を通過した後、タッチロール28から剥がれて、キャスティングロール18に密着したままフィルム搬送方向(図1の左から右の方向)に搬送される。
挟圧装置20のタッチロール28とキャスティングロール18との間隔(ロール間隔)は、フィルムFを成形する際、挟圧部における樹脂組成物12から受ける反力の変化により、変動することがないように固定される。
本願発明者が鋭意検討した結果、挟圧部において、樹脂組成物12の粘度にばらつきがあったり、挟圧部に供給される樹脂組成物12の流量にばらつきがあったりすると、樹脂組成物12から受ける反力の変化によりロール間隔が変動してしまい、結果として、レターデーションが不均一になることが明らかになった。本実施形態に係る光学フィルムの製造方法は、本願発明者による上記検討結果に基づくものであり、フィルムFの成形時にロール間隔を固定することで、レターデーションのばらつきを低減することができる。
図3はタッチロール28とキャスティングロール18との間隔を固定する機構を示す図であり、図3(a)はロール間隔を固定する前の状態を示し、図3(b)はロール間隔を固定した後の状態を示す。
図3(a)及び(b)に示すように、間隔固定装置50は、主として、架台52と、タッチロール28を支持するタッチロール支持部28Aと、キャスティングロール18を支持するキャスティングロール支持部18Aと、キャスティングロール18とタッチロール28との間隔が狭まるのを防ぐスペーサー54と、キャスティングロール18とタッチロール28との間隔が広がるのを防ぐストッパー56と、タッチロール支持部28Aをキャスティングロール支持部18A側に押し付けるエアシリンダー58とにより構成される。
スペーサー54は、いわゆるコッターであり、傾斜面を有する一対のスペーサー54A、54Bにより構成される。スペーサー54A、54Bは、それぞれタッチロール支持部28Aとキャスティングロール支持部18Aとに取り付けられている。またスペーサー54Bは、例えばネジにより上下方向(図3(a)の矢印方向)に関して位置の調節が可能であり、フィルム成形条件の一つである、タッチロール28とキャスティングロール18との最近接距離(最近接ロール間隔)を自由に調節することができる。
ストッパー56は、例えばネジにより水平方向(図3(a)の矢印方向)に関して位置の調節が可能であり、架台52上の任意の位置に固定することができる。
キャスティングロール支持部18Aは架台52に直接固定されている。このため、キャスティングロール支持部18Aに支持されるキャスティングロール18は架台52に対して不動である。
一方、タッチロール支持部28Aは、架台52上のレール(不図示)に取り付けられており、ロール間隔が固定される前の状態では、架台52に対して図3(a)の矢印方向に移動可能である。
このため、タッチロール支持部28Aは、エアシリンダー58によりキャスティングロール支持部18A側に押されると、タッチロール支持部28Aに取り付けられたスペーサー54Aと、キャスティングロール支持部18Aに取り付けられたスペーサー54Bとが接触する位置まで移動する。この状態で、タッチロール支持部28Aのスペーサー54Aの取り付け面とは反対側の、タッチロール支持部28Aと接する位置にストッパー56を移動させることで、タッチロール支持部28Aは架台52に対して固定される(図3(b)参照)。これにより、タッチロール28とキャスティングロール18との間隔を固定することができる。
スペーサー54、ストッパー56、タッチロール支持部28A及びキャスティングロール支持部18Aは、フィルムFの成形時に変形しないように、SUS等の硬い金属により構成することが好ましい。また各部材の熱膨張による寸法変化の影響を低減する観点から、フィルムFの成形開始前に、各部材の温度が定常状態に到達するのに十分な立ち上げ時間(装置立ち上げ時間)を確保することが好ましい。
なお図3(a)及び(b)には、スペーサー54としてコッターを用いる例について説明したが、スペーサー54はロール間隔が狭まるのを防止することが可能な構成であれば特に限定されない。例えば、所定の厚さを有する板状部材であるスペーサーを、タッチロール支持部28Aとキャスティングロール支持部18Aとの間に挟むことで、ロール間隔が狭まるのを防止する構成であってもよい。
またロール間隔が広がるのを防止する手段として、ストッパー56の代わりにバックアップロールを用いてタッチロール28をキャスティングロール18側に押し付ける構成も考えられる。しかしながら、バックアップロールを用いる構成では、樹脂組成物12から受ける反力がバックアップロールの押付け圧を上回ると、ロール間隔の広がりを十分に防止することができないため、ストッパー56を用いることが好ましい。
またバックアップロールを用いる場合、タッチロール28との接触により、タッチロール28の表面に擦り傷がついてしまい、この擦り傷がタッチロール28からフィルムFに転写されることがある。さらに、バックアップロールは、表面の粗いゴムロールであることが一般的であり、バックアップロールの表面の凹凸に沿って析出した樹脂組成物12中の揮発成分がバックアップロールからタッチロール28を介してフィルムFに転写されることがある。しかも、バックアップロールを用いると、ロール幅方向に関してニップ圧ばらつきが発生してしまうことがあり、ニップ圧ばらつきが許容範囲を超える場合には、タッチロール28の形状をクラウン化するなどの対応が必要になる。
次にタッチロール28及びキャスティングロール18による樹脂組成物12の挟圧条件(フィルムFの成形条件)について説明する。
図4はダイ16及び挟圧装置20を示す側面図であり、図5は挟圧装置20の挟圧部を示す拡大図である。
ダイ16の吐出口16Aとバンク15との間の距離(エアギャップ)Gは、外部の空気流れの影響を低減する観点から、200mm以内に設定されることが好ましい。
挟圧装置20のロール間隔x(図5参照)と、成形されるフィルムFの膜厚dとが、0.001d≦x≦dの関係を満たすことが好ましい。ロール間隔xが小さすぎると、バンクが不安定になってしまう一方で、ロール間隔xが大きすぎると、タッチ抜けによる面状不良が発生してしまう。ロール間隔xを上記範囲に設定することで、バンクが不安定になることを防止しつつ、タッチ抜けによる面状不良を防止することができる。
挟圧装置20のニップ圧は、例えば、挟圧装置20のロール間隔x(図5参照)、樹脂組成物12の粘度、成形されるフィルムFの膜厚dにより制御することができる。なおフィルムFの膜厚dは、挟圧部を通過する樹脂組成物12の流量(挟圧装置20のロール回転速度)により調節することができる。
挟圧装置20のニップ圧の調節方法として、例えば、挟圧装置20のニップ圧を測定しながら、ロール間隔xを繰り返し調節することで、挟圧装置20のニップ圧を所望の範囲に調節する方法が挙げられる。
ここで、挟圧装置20のニップ圧は、富士フイルム社製の圧力測定フィルム「プレスケール」を貼り合わせて、フィルムFと同等の膜厚のサンプルを作製して、当該サンプルを挟圧装置20により挟圧して発色させた後、発色度合いをプレスケール専用濃度計FPD−305およびプレスケール専用圧力換算機FPD−306を用いて圧力値に換算することで求めることができる。
挟圧装置20のニップ圧は、0.1MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。また挟圧装置20のニップ圧は、150MPa以下であることが好ましく、60MPa以下であることがより好ましい。
また挟圧装置20のニップ圧を高圧(例えば10MPa以上)に設定して、タッチロール28とキャスティングロール18との間の狭隘な挟圧部から樹脂組成物12を押し出すことで、樹脂組成物12の伸長変形を起こして、流れ方向(面内方向)及び厚み方向に高いレターデーションを発現させることもできる。これにより、例えば、波長550nmにおけるフィルム面内方向のレターデーションReが40nm以上のフィルムFを成形することができる。なお、挟圧装置20により成形されるフィルムFの遅相軸の方向は、樹脂組成物12が流れる方向(すなわち、フィルムFの長手方向)と略同一である。
タッチロール28及びキャスティングロール18は、高いニップ圧を付与しても変形しにくい剛性ロールにより構成することが好ましい。これは、表面が金属で被覆されたゴムロールのように硬度の低い弾性ロールを用いると、ニップ圧の付与により樹脂組成物12との接触面積が増加してしまい、レターデーションが十分に高いフィルムFを成形することが難しいからである。
タッチロール28やキャスティングロール18に使用可能な剛性ロールとしては、ショア硬さが45HS以上(より好ましくは50HS以上)の金属ロールを挙げることができる。ここでショア硬さは、JIS Z 2246の方法を用いて、ロール幅方向に5点及び周方向に5点測定した値の平均値から求めることができる。
キャスティングロール18及びタッチロール28の表面は、表面が平滑なフィルムFを成形する観点から、算術平均粗さRaが100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、25nm以下であることがさらに好ましい。
タッチロール28については、例えば特開平11−314263号公報、特開2002−36332号公報、特開平11−235747号公報、国際公開第97/28950号パンフレット、特開2004−216717号公報、特開2003−145609号公報記載のものを利用できる。
バンク15から上部20mmの樹脂温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとした時、(Tg+50)℃以上であることが好ましく、より好ましくは(Tg+60)℃以上であり、さらに好ましくは(Tg+70)℃以上である。また、樹脂温度の上限は、(Tg+200)℃以下であることが好ましく、より好ましくは(Tg+160)℃以下であり、さらに好ましくは(Tg+140)℃以下である。バンク部の熱可塑性樹脂の温度を上記範囲とすることにより、バンク15で所望の粘度を得ることができるので、キャスティングロール18とタッチロール28とで圧力をかける際に、面内方向のレターデーションを発現させることができる。
また挟圧部における樹脂組成物12の温度Tと、熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとが、Tg+70℃≦T≦Tg+200℃の条件を満たすことが好ましい。挟圧部における樹脂組成物12の温度を上記範囲に設定することで、フィルムFの成形性を維持しながら、樹脂組成物12の分解を防止することができる。
バンク15における樹脂組成物12の粘度は、100Pa・s以上40000Pa・s以下が好ましく、600Pa・s以上20000Pa・s以下であることがより好ましく、1000Pa・s以上10000Pa・s以下であるであることがさらに好ましい。粘度が上記上限値よりも高い場合は、樹脂組成物12をキャスティングロール18とタッチロール28の間を通過させる際、樹脂組成物12の変形が起こらず、面内方向にレターデーションが発現しないことがある。一方、粘性が上記下限値よりも低い場合は、キャスティングロール18とタッチロール28の間を通過させる際に、十分な剪断力が樹脂組成物12に作用しないため、面内方向のレターデーションが発現しないことがある。
また、タッチロール28(「第1挟圧面」に相当)とキャスティングロール18(「第2挟圧面」に相当)とを異なる速度(周速度)で移動(回転)させることが好ましい。タッチロール28とキャスティングロール18との間に周速差を設けることにより、挟圧部において樹脂組成物12に剪断力を付与して、光軸が傾斜したフィルムFを成形することができる。
上述の周速差を設ける場合、タッチロール28(「第1挟圧面」に相当)を、キャスティングロール18(「第2挟圧面」に相当)よりも大きな周速で回転させることが好ましい。タッチロール28がキャスティングロールよりも遅い場合、タッチロール28側にバンク15が形成されるため、キャスティングロール18と樹脂組成物12との接触時間が短くなる。このため、樹脂組成物12の冷却が不十分となり、タッチロール28から樹脂組成物12が剥がれにくくなり、フィルムFの幅方向に沿った縞状の面状不良が発生してしまうことがある。タッチロール28をキャスティングロール18よりも大きな周速で回転させることにより、フィルムFの幅方向に沿った縞状の面状不良を防止することができる。
2つのロールの周速比は、0.6〜0.99とすることが好ましく、0.75〜0.98とすることがより好ましい。ここで、2つのロールの周速比とは、遅いロールの周速度/速いロールの周速度を意味する。
2つのロールの周速比が小さいほど(すなわち、周速差が大きいほど)、得られるフィルムFのRe(40°)とRe(−40°)の差の絶対値は大きくなる一方で、周速差が小さすぎると、得られるフィルムFの表面に傷が付きやすくなる。2つのロールの周速比を上記範囲内に設定すると、表面が平滑であり、光軸が大きく傾斜したフィルムFを成形することができる。
図6は、樹脂温度が高温の場合と低温の場合における、2つのロールの周速比と、屈折率楕円体が一様傾斜したことを仮定した場合の|Re(40°)−Re(−40°)|との関係を示すグラフである。図6に示すように、樹脂温度が低い場合に比べて、樹脂温度が高い場合のほうが、周速比の変化による|Re(40°)−Re(−40°)|の変化を抑えることができるので、樹脂温度を高くして製造することにより、|Re(40°)−Re(−40°)|を安定して製造することができる。
さらに,直径の大きなロールを用いるのが好ましく、具体的には、直径が350〜600nm、より好ましくは350〜500nmの2つのロールを使用するのが好ましい。直径の大きなロールを用いると、溶融状態の樹脂組成物12とロールとの接触面積が広くなり、剪断がかかる時間がより長くなるため、Re(40°)とRe(−40°)の差が大きなフィルムを、そのバラツキを抑制しつつ製造することができる。なお、2つのロールの直径は等しくても、異なっていてもよい。
2つのロールは、連れ周り駆動でも独立駆動でもよいが、バラツキを抑制するためには、独立駆動であることが好ましい。
2つのロールを異なる周速で回転させることで光軸を傾斜したフィルムFを成形可能であることは既に説明した通りであるが、さらにRe[40°]とRe[−40°]との差を大きくするために、2つのロールの表面温度に差をつけてもよい。好ましい温度差は5℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃である。その際、2つのロールの温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを用いて、Tg−70℃〜Tg+20℃、より好ましくはTg−50℃〜Tg+10℃、さらに好ましくはTg−40℃〜Tg+5℃に設定する。このような温度制御は、例えば、タッチロール28の内部に温調した液体又は気体を流すことで達成することができる。
なお図1では、第1挟圧面としてのタッチロール28と第2挟圧面としてのキャスティングロール18とにより挟圧装置20が構成される例について説明したが、本発明はこれに限定されず、様々な構成の挟圧装置20を使用することができる。例えば、特開2000−219752号公報に記載されているように、周速の異なるロールとタッチベルトとの組み合わせにより構成される挟圧装置を使用してもよい。
挟圧装置20において成形されたフィルムFは、図1に示すように、挟圧装置20の後段に配置された冷却ロール22(22A、22B)において冷却されることが好ましい。これにより、挟圧装置20のキャスティングロール18と、冷却ロール22(22A、22B)とを含む複数のロールにより、フィルムFを確実に冷却固化することができる。
冷却ロール22は、図1に示すように、キャスティングロール18の後段に2本配置されるのが一般的であるが、冷却ロール22の本数はこの例に限定されるものではない。キャスティングロール18及び冷却ロール22(22A、22B)を含む複数のロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、1mm〜100mmがより好ましく、3mm〜30mmがさらに好ましい。
上記構成の冷却ロール22において冷却固化されたフィルムFは、剥離ロール24により冷却ロール22Bから剥離される。
この後、剥離ロール24により剥離されたフィルムFは、巻取機26において巻き取られ、製品として出荷される。
なおフィルムFは、巻取機26により巻き取られる前に、幅方向の端部の裁断(トリミング)により、所望のサイズに揃えられることが好ましい。また一端あるいは両端に厚みだし加工(ナーリング処理)を行うことも好ましい。厚みだし加工による凹凸の高さは1μm〜50μmが好ましく、3μm〜20μmであることがより好ましい。厚みだし加工は両面に凸になるようにしても、片面に凸になるようにしても構わない。厚みだし加工の幅は1mm〜50mmが好ましく、3mm〜30mmであることがより好ましい。巻き取る前に、片面もしくは両面に、ラミフィルムを付けることも好ましい。ラミフィルムの厚みは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。ラミフィルムの材質は特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等を使用することができる。
以上、本発明の一実施形態に係る光学フィルムの製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
例えば、上述の実施形態では、挟圧装置20による挟圧によりフィルムFに所望の光学特性を発現させる例について説明したが、挟圧装置20による挟圧に加えて、フィルムFに対して延伸処理及び/又は収縮処理を施すことにより、フィルムFの光学特性を制御してもよい。
この場合、縦延伸、横延伸を行うのが好ましく、さらに収縮処理を組み合わせてもよい。中でも好ましいのが縦延伸後に横延伸を行うもの、あるいは横延伸と縦収縮処理を組み合せるものであり、前者は高Rthを発現させるのに適しており、後者は低Rthを発現させるのに適している。
横延伸と縦収縮処理を組み合せて実施する場合、縦収縮は横延伸中に実施してもよく、横延伸後に実施してもよく、両方で実施してもよい。さらに、この横延伸の前又は後或いは両方に縦延伸を組み合せてもよい。また、挟圧装置20によりフィルムFを成形した後、連続して縦延伸工程と横延伸工程とを行って、その後で巻取機26により巻き取ってもよい。巻き取る場合の巻き取り張力は、好ましくは2kg/m幅〜50kg/m幅であり、より好ましくは5kg/m幅〜30kg/m幅である。
縦延伸は一対のニップロールを設置し、この間を加熱しながら出口側のニップロールの周速を入口側のニップロールの周速より速くすることで達成することができる。この際、ニップロール間の間隔(L)と延伸前のフィルム幅(W)を変えることで厚み方向のレターデーションの発現性を変えることができる。L/Wが2よりも大きく50以下(長スパン延伸)の範囲ではRthを低減することができ、L/Wが0.01以上0.3以下(短スパン延伸)の範囲ではRthを向上させることができる。なお、長スパン延伸、短スパン延伸、これらの間の領域(中間延伸=L/Wが0.3よりも大きく2以下)どれを使用してもよいが、配向角を小さくできる長スパン延伸、短スパン延伸が好ましい。
これらの縦延伸の好ましい延伸温度は(Tg−10℃)〜(Tg+50)℃、より好ましくは(Tg−5℃)〜(Tg+40)℃、さらに好ましくは(Tg)〜(Tg+30)℃である。好ましい延伸倍率は2%〜200%であり、より好ましくは4%以上150%以下、さらに好ましくは6%〜100%である。
横延伸はテンターを用いて実施することができる。即ち、フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持し、横方向に拡幅することで延伸する。この時、テンター内に所定の温度の風を送ることで延伸温度を制御できる。延伸温度は、Tg−10℃以上Tg+60℃以下が好ましく、Tg−5℃以上Tg+45℃以下がより好ましく、Tg以上Tg+30℃以下がさらに好ましい。好ましい延伸倍率は10%以上250%以下、より好ましくは20%以上200%以下、さらに好ましくは30%以上150%以下である。ここでいう延伸倍率とは下記式で定義されるものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
≪光学フィルム≫
次に、上述の製造方法により製造される光学フィルムについて説明する。
上述の製造方法により製造される光学フィルムは、フィルム長手方向とフィルム法線を含む面内において、該法線から測定した波長550nmにおけるレターデーションRe[0°]が、以下の関係式(I)を満たすことが好ましい。
60nm≦Re[0°]≦300nm (I)
また光学フィルムの測定範囲(長さ1m×幅1m)におけるRe[0°]のばらつき(=ΔRe=Remax−Remin)が、以下の関係式(II)を満たすことが好ましい(ただし、Remaxは測定範囲におけるRe[0°]の最大値であり、Reminは測定範囲におけるRe[0°]の最小値である)。
0nm≦ΔRe<20nm (II)
またフィルム長手方向とフィルム法線を含む面内において、+40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[+40°]と、該法線に対して−40°傾いた方向から測定したレターデーションRe[−40°]は、以下の関係式(III)を満たすことが好ましい。
40nm≦|Re[+40°]−Re[−40°]|≦300nm (III)
本明細書において、「該法線からθ°傾いた方向」とは、フィルム長手方向を傾斜方位として、法線方向からθ°だけフィルム面方向に傾斜させた方向と定義する。即ち、フィルム面の法線方向は、傾斜角度0°の方向であり、フィルム面内の任意の方向は、傾斜角度90°の方向である。
フィルムの、|Re[+40°]−Re[−40°]|は60〜250nmであり、60〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは、80〜180nmである。また、面内レターデーションRe(0°)が60〜250nmであり、より好ましくは、Re(0°)が60〜200nmであり、さらに好ましくは、80〜180nmである。さらに、厚み方向のレターデーションRthが40〜500nmであることが好まく、より好ましくは40〜350nm、さらに好ましくは40〜300nmである。
上記範囲の光学フィルムを、TNモード、ECBモード、OCBモード等の液晶ディスプレイの光学補償に利用した場合に、視野角特性の改善に寄与し、広視野角化を達成することができる。
光学フィルムの膜厚については特に制限はないが、液晶ディスプレイ等に用いる場合は、薄型化の観点では、100μm以下であるのが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましく、40μm以下であることが特に好ましい。上述の製造方法によれば、このような薄手のフィルムを成形する場合であっても、タッチ抜けを防止しつつ、レターデーションのばらつきを低減することができる。
また、遅相軸の角度のバラツキは、液晶ディスプレイに利用した場合に、表示ムラとなって現れるので、そのバラツキは小さいほど好ましく、具体的には±1°以内であることが好ましく、±0.5°以内であることがさらに好ましく、±0.25°であることが特に好ましい。なお、フィルムの遅相軸の方向は、後述する本フィルムの製造方法に依存する。例えば、正の固有複屈折性を示す樹脂を、2つのロールで挟圧すると、遅相軸はフィルムの長手方向と同方向となる。
なお、遅相軸のバラツキは、フィルムの幅方向に10点及び、搬送方向10点に等間隔に測定を行った際の最大値と最小値の差で決定することができる。
上記光学特性値は、以下の方法により測定することができる。
フィルムのRe(0°),Re(40°),Re(−40°)は、KOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)を用い、フィルムの長手方向とフィルム法線を含む面内において、長手方向を傾斜方位とし、傾斜角度40度での位相差及び傾斜角度−40度での位相差を測定する。なお、測定波長は550nmとする。なお、一般的な熱可塑性樹脂を溶融製膜法で作成したフィルムは、|Re(40°)−Re(−40°)|≒0nmとなる。すなわち、長手方向を傾斜方位として|Re(40°)−Re(−40°)|を測定した場合、0nm以上の位相差を発現することができる。
Rthは、屈折率楕円体がβ°一様傾斜したことを仮定し、屈折率楕円体の各方位の屈折率nx、ny、nzを数値計算し、数式(A)に代入して、求めることができる。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d 数式(A)
上述の製造方法により製造される光学フィルムの場合、nyはフィルム幅方向の屈折率である。nxはフィルムのx軸への射影成分がz軸への射影成分よりも大きい方位の、nzはz軸への射影成分がx軸の射影成分よりも大きい方位の屈折率である。
nx、ny、nzの求め方については、王子計測機器株式会社の技術資料等(http://www.oji-keisoku.co.jp/products/kobra/kobra.html)に記載されており、例えば、Re(0°),Re(40°),Re(−40°)の値及び平均屈折率naveの値及び膜厚値dから、以下の式(B)を用いて計算することができる。
Figure 2010228217
なお、式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、数式(B)中のβは、屈折率楕円体が一様傾斜したことを仮定した場合の傾斜角度を表し、傾斜型位相差フィルムの構造を単純に把握するときに使用される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
≪フィルムの素材≫
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は、上記光学特性を有する限り特に限定されないが、溶融押出し法を利用して作製する場合は、溶融押出し成形性が良好な材料を利用するのが好ましく、その観点では、環状オレフィン類、セルロースアシレート類、ポリカーボネート類、ポリエステル類、透明ポリエチレン、透明ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、マレイミド系共重合体類、透明ナイロン類、透明フッ素樹脂類、透明フェノキシ類、ポリエーテルイミド類、ポリスチレン類、アクリル系共重合体類、スチレン系共重合体類を選択するのが好ましい。1種の当該樹脂を含有していてもよいし、互いに異なる2種以上の当該樹脂を含有していてもよい。中でも、セルロースアシレート類、及び付加重合によって得られた環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート類、スチレン系共重合体、アクリル系共重合体が好ましい。
特に、正の固有複屈折性を示す、セルロースアシレート類、及び付加重合によって得られた環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート類は、2つのロールで剪断変形を付加した場合、遅相軸がMD方向を向き、長手方向を傾斜方位として、|Re(40°)―Re(−40°)|>0のフィルムを作製することができる。
また、負の固有複屈折性を示す、アクリル、スチレン系共重合体は、上記加工を行った場合、遅相軸がTD方向を向き、長手方向を傾斜方位として、|Re(40°)―Re(−40°)|>0のフィルムを作製することができる。
本フィルムを、視野角補償フィルムとして液晶表示装置に応用する場合には、液晶表示装置の特性や偏光板加工の利便性を考慮にいれて、上記正又は負の固有複屈折樹脂を適宜選択して用いることができる。
本発明に使用可能な環状オレフィン共重合体類の例には、ノルボルネン系化合物の重合により得られた樹脂が含まれる。開環重合及び付加重合のいずれの重合方法によって得られる樹脂であってもよい。
付加重合及びそれにより得られる樹脂としては、例えば、特許3517471号公報、特許3559360号公報、特許3867178号公報、特許3871721号公報、特許3907908号公報、特許3945598号公報、特表2005−527696号公報、特開2006−28993号公報、特開2006−11361公報、国際公開WO第2006−/004376号公報、国際公開WO第2006−/030797号公報パンフレットに記載されているものが挙げられる。中でも、特許3517471号公報に記載のものが特に好ましい。
開環重合及びそれにより得られる樹脂としては、国際公開WO98第98/−14499号公報パンフレット、特許3060532号公報、特許3220478号公報、特許3273046号公報、特許3404027号公報、特許3428176号公報、特許3687231号公報、特許3873934号公報、特許3912159号公報に記載のものが挙げられる。中でも、国際公開WO第98−/14499号公報パンフレット、特許3060532号公報に記載のものが特に好ましい。
これらの環状オレフィンの中でも付加重合のものが、複屈折の発現性、溶融粘度の観点から好ましく、例えば、「TOPAS #6013」(Polyplastics社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なセルロースアシレート類の例には、セルロース単位中の3個の水酸基が、少なくとも一部がアシル基で置換されたいずれのセルロースアシレートも含まれる。当該アシル基(好ましくは炭素数3〜22のアシル基)は、脂肪族アシル基及び芳香族アシル基のいずれであってもよい。中でも、脂肪族アシル基を有するセルロースアシレートが好ましく、炭素数3〜7の脂肪族アシル基を有するものがより好ましく、炭素数3〜6の脂肪族アシル基を有するものがさらに好ましく、炭素数は3〜5の脂肪族アシル基を有するものがよりさらに好ましい。これらのアシル基は複数種が1分子中に存在していてもよい。好ましいアシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基などが含まれる。これらの中でも、さらに好ましいものは、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基から選択される1種又は2種以上を有するセルロースアシレートであり、よりさらに好ましいものは、アセチル基及びプロピオニル基の双方を有するセルロースアシレート(CAP)である。CAPは、樹脂の合成が容易であること、押し出し成形の安定性が高いこと、の点で好ましい。
本発明の方法等、溶融押出し法により光学フィルムを作製する場合は、用いるセルロースアシレートは、以下の式(S−1)及び(S−2)を満足することが好ましい。以下の式を満足するセルロースアシレートは、融解温度が低く、融解性が改善されているので、溶融押出し製膜性に優れる。
式(S−1) 2.0≦X+Y≦3.0
式(S−2) 0.25≦Y≦3.0
式中、Xはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Yはセルロースの水酸基に対するアシル基の置換度の総和を表す。本明細書でいう「置換度」とは、セルロースの2位、3位および6位のぞれぞれの水酸基の水素原子が置換されている割合の合計を意味する。2位、3位および6位全ての水酸基の水素がアシル基で置換された場合は置換度が3となる。
さらに、下記式を満足するセルロースアシレートを用いるのがより好ましく、
2.3≦X+Y≦2.95
1.0≦Y≦2.95
下記式を満足するセルロースアシレートを用いるのがさらに好ましい。
2.7≦X+Y≦2.95
2.0≦Y≦2.9
セルロースアシレート類の質量平均重合度及び数平均分子量については特に制限はない。一般的には、質量平均重合度が350〜800程度、及び数平均分子量が70000〜230000程度である。前記セルロースアシレート類は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法では、綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。前記式(S−1)及び(S−2)を満足するセルロースアシレートの合成方法としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁の記載や、特開2006−45500号公報、特開2006−241433号公報、特開2007−138141号公報、特開2001−188128号公報、特開2006−142800号公報、特開2007−98917号公報記載の方法を参照することができる。
本発明に使用可能なポリカーボネート類として、ビスフェノールA骨格を有するポリカーボネート樹脂が挙げられ、ジヒドロキシ成分とカーボネート前駆体とを界面重合法または溶融重合法で反応させて得られるものであり、例えば、特開2006−277914に記載のものや特開2006−106386、特開2006−284703記載のものが好ましく用いることができる。例えば、市販品として、「タフロンMD1500」(出光興産社製)を用いることができる。
本発明に使用可能なスチレン系共重合体とは、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、あるいはこれらの多元(二元、三元等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン無水マレイン酸樹脂がフィルム強度の観点から好ましい。
前記スチレン無水マレイン酸樹脂は、スチレンと無水マレイン酸との質量組成比が、スチレン:無水マレイン酸=95:5〜50:50であることが好ましく、スチレン:無水マレイン酸=90:10〜70:30であることがより好ましい。また、固有複屈折を調整するため、スチレン系樹脂の水素添加を行うことも好ましく利用できる。
前記スチレン無水マレイン酸樹脂としては、例えば、ノバケミカル社製の「Daylark D332」などが挙げられる。
本発明のアクリル系共重合体とは、スチレンと、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体を重合して得られる樹脂およびその誘導体であり、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。該樹脂の中でも、樹脂を構成する全モノマー中、MMA単位(モノマー)を30モル%以上含むものが好ましく、MMA以外に、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、グルタル酸無水物単位の少なくとも1種の単位を含むことがより好ましく、例えば下記のものを使用できる。
(1)ラクトン環単位を含むアクリル樹脂
特開2007−297615、特開2007−63541、特開2007−70607、特開2007−100044、特開2007−254726、特開2007−254727、特開2007−261265、特開2007−293272、特開2007−297619、特開2007−316366、特開2008−9378、特開2008−76764等に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−9378に記載の樹脂である。
(2)無水マレイン酸単位を含むアクリル樹脂
特開2007−113109、特開2003−292714、特開平6−279546、特開2007−51233(ここに記載の酸変性ビニル)、特開2001−270905、特開2002−167694、特開2000−302988、特開2007−113110、特開2007−11565に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが、特開2007−113109に記載のものである。また市販のマレイン酸変性MAS樹脂(例えば旭化成ケミカルズ(株)製デルペット980N)も好ましく使用できる。
(3)グルタル酸無水物単位を含むアクリル樹脂
特開2006−241263、特開2004−70290、特開2004−70296、特開2004−126546、特開2004−163924、特開2004−291302、特開2004−292812、特開2005−314534、特開2005−326613、特開2005−331728、特開2006−131898、特開2006−134872、特開2006−206881、特開2006−241197、特開2006−283013、特開2007−118266、特開2007−176982、特開2007−178504、特開2007−197703、特開2008−74918、WO2005/105918等に記載のものを使用できる。この中でより好ましいのが特開2008−74918に記載のものである。
これらの樹脂のガラス転移温度(Tg)は106℃以上170℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以上160℃以下、さらに好ましくは115℃以上150℃以下である。市販品として、「デルペット980N」(旭化成ケミカルズ社製)を用いることができる。
本発明の光学フィルムは、上記熱可塑性樹脂以外の材料を含有していてもよいが、上記熱可塑性樹脂の1種又は2種以上を主成分(組成物中の全材料中、最も含有割合の高い材料を意味し、当該樹脂を2種以上含有する態様では、それらの合計の含有割合が、他の材料それぞれの含有割合より高いことを意味する)として含有しているのが好ましい。上記熱可塑性樹脂以外の材料としては、種々の添加剤が挙げられ、その例には、安定化剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、可塑剤、微粒子、及び光学調整剤が含まれる。
(i)安定化剤
本発明の光学フィルムは、安定化剤の少なくとも一種を含有していてもよい。安定化剤は、前記熱可塑性樹脂を加熱溶融させる前に又は加熱溶融時に添加することが好ましい。安定化剤は、フィルム構成材料の酸化防止、分解して発生した酸の捕捉、光または熱によるラジカル種基因の分解反応を抑制または禁止する等の作用がある。安定化剤は、解明されていない分解反応などを含む種々の分解反応によって、着色や分子量低下等の変質及び揮発成分の生成等が引き起こされるのを抑制するのに有用である。樹脂を製膜するための溶融温度においても安定化剤自身が分解せずに機能することが求められる。安定化剤の代表的な例には、フェノール系安定化剤、亜リン酸系安定化剤(フォスファイト系)、チオエーテル系安定化剤、アミン系安定化剤、エポキシ系安定化剤、ラクトン系安定化剤、アミン系安定化剤、金属不活性化剤(スズ系安定化剤)などが含まれる。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載があり、本発明ではフェノール系や亜リン酸系安定化剤の少なくとも一方以上を用いることが好ましい。フェノール系安定化剤の中でも、特に分子量500以上のフェノール系安定化剤を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定化剤としては、ヒンダードフェノール系安定化剤が挙げられる。
これらの素材は、市販品として容易に入手可能であり、下記のメーカーから販売されている。チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から、Irganox 1076、Irganox 1010、Irganox 3113、Irganox 245、Irganox 1135、Irganox 1330、Irganox 259、Irganox 565、Irganox 1035、Irganox 1098、Irganox 1425WL、として入手することができる。また、旭電化工業株式会社から、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80として入手できる。さらに、住友化学株式会社から、スミライザーBP−76、スミライザーBP−101、スミライザーGA−80、として入手できる。また、シプロ化成株式会社からシーノックス326M、シーノックス336B、としても入手することが可能である。
また、上記の亜リン酸系安定化剤としては、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を挙げることができる。さらに、その他の安定化剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
上記亜リン酸エステル系安定化剤は、高温での安定性を保つために高分子量であることが有用であり、分子量500以上であり、より好ましくは分子量550以上であり、特には分子量600以上が好ましい。さらに、少なくとも一置換基は芳香族性エステル基であることが好ましい。また、亜リン酸エステル系安定化剤は、トリエステルであることが好ましく、リン酸、モノエステルやジエステルの不純物の混入がないことが望ましい。これらの不純物が存在する場合は、その含有量が5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特には2質量%以下である。これらは、特開2004−182979号公報の[0023]〜[0039]に記載の化合物などを挙げることが、さらに特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物も挙げることができる。亜リン酸エステル系安定化剤の好ましい具体例として下記の化合物を挙げることができるが、本発明で用いることができる亜リン酸エステル系安定化剤はこれらに限定されるものではない。
これらは、旭電化工業株式会社からアデカスタブ1178、同2112、同PEP−8、同PEP−24G、PEP−36G、同HP−10として、またクラリアント社からSandostab P−EPQとして市販されており、入手可能である。更に、フェノールと亜リン酸エステルを同一分子内に有する安定化剤も好ましく用いられる。これらの化合物については、さらに特開平10−273494号公報に詳細に記載されており、その化合物例は、前記安定化剤の例に含まれるが、これらに限定されるものではない。代表的な市販品として、住友化学株式会社から、スミライザーGPがある。これらは、住友化学株式会社から、スミライザーTPL、同TPM、同TPS、同TDPとして市販されている。旭電化工業株式会社から、アデカスタブAO-412Sとしても入手可能である。
前記安定化剤は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。好ましくは、熱可塑性樹脂の質量に対して、安定化剤の添加量は0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.8質量%である。
(ii)紫外線吸収剤
本発明の光学フィルムは、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、透明性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロース混合エステルに対する不要な着色が少ないことから好ましい。これらは、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。
紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
(iii)光安定化剤
本発明の光学フィルムは、1種または2種以上の光安定化剤を含有していてもよい。光安定化剤としては、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)化合物が挙げられ、より具体的には、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。これらは、旭電化からアデカスタブLA−57、同LA−52、同LA−67、同LA−62、同LA−77として、またチバ・スペシャリティーケミカルズ社からTINUVIN 765、同144として市販されている。
これらのヒンダードアミン系光安定化剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらヒンダードアミン系光安定化剤は、勿論、可塑剤、安定化剤、紫外線吸収剤等の添加剤と併用してもよいし、これら添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。その配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で決定され、一般的には、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部程度であり、好ましくは0.02〜15質量部程度、特に好ましくは0.05〜10質量部程度である。光安定化剤は、熱可塑性樹脂組成物の溶融物を調製するいずれの段階で添加してもよく、例えば、溶融物調製工程の最後に添加してもよい。
(iv)可塑剤
本発明の光学フィルムは、可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加は、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点において好ましい。また、本発明の光学フィルムを溶融製膜法で製造する場合は、用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させることを目的として、または無添加の熱可塑性樹脂よりも同じ加熱温度において粘度を低下させることを目的として、添加されるであろう。本発明の光学フィルムには、例えばリン酸エステル誘導体、カルボン酸エステル誘導体から選択される可塑剤が好ましく用いられる。また、特開2003−12859号に記載の重量平均分子量が500以上10000以下であるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリル系ポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリル系ポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリル系ポリマーなども好ましく用いられる。
(v)微粒子
本発明の光学フィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子としては、無機化合物の微粒子や有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。本発明における熱可塑性樹脂に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、ヘイズを低く抑えるという観点から5nm〜3μmであることが好ましく、5nm〜2.5μmであることがより好ましく、10nm〜2.0μmであることが更に好ましい。ここで、微粒子の平均一次粒子サイズは、熱可塑性樹脂を透過型電子顕微鏡(倍率50万〜100万倍)で観察し、粒子100個の一次粒子サイズの平均値を求めることにより決定する。微粒子の添加量は、熱可塑性樹脂に対して0.005〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.4質量%である。
(vi)光学調整剤
本発明の光学フィルムは、光学調整剤を含有していてもよい。光学調整剤としてはレターデーション調整剤を挙げることができ、例えば、特開2001−166144号、特開2003−344655号、特開2003−248117号、特開2003−66230号各公報記載のものを使用することができる。光学調整剤を添加することによって、面内のレターデーション(Re)、厚み方向のレターデーション(Rth)を制御することができる。好ましい添加量は0〜10質量%であり、より好ましくは0〜8質量%、さらに好ましくは0〜6質量%である。
以下、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
図1に示す光学フィルム製造装置10において、ダイ16から吐出した溶融状態の樹脂組成物12を、挟圧装置20により挟圧して、光学フィルム(フィルムF)を成形した。得られた光学フィルムの光学特性について評価した。
図7は、本発明の実施例(1〜11)と比較例(1〜8)に関して、フィルムの成形条件(スペーサー及びストッパーの有無、タッチロールの材質、ニップ圧、挟圧部の樹脂温度、ロール間隔、ロール周速比、フィルム膜厚)と、得られたフィルムの光学特性(Re、Re分布、|Re(+40°)−Re(−40°)|)との関係を一覧表にまとめたものである。
図7において、「ロール間隔」はフィルム膜厚dを用いて表したものであり、「周速比(CR/TR)」とは、(キャスティングロールの周速)/(タッチロールの周速)を意味する。また「Re分布」は、光学フィルムの測定範囲(長さ1m×幅1m)におけるReのばらつき(=ΔRe=Remax−Remin)を意味する。ここで、Remaxは測定範囲におけるReの最大値であり、Reminは測定範囲におけるReの最小値である。
実施例1〜11および比較例1〜9では、ポリカーボネート(出光興産社製タフロンMD1500)をフィルムの原料として使用した。ポリカーボネートのガラス転移温度Tgを走査型示差熱量計(DSC)により測定したところ、145℃であった。また樹脂組成物12の吐出温度は280℃に設定した。
実施例1〜11では、図3(a)及び(b)に示すスペーサー54とストッパー56により、ロール間隔を固定した。
一方、比較例1〜6及び8では、ストッパー56を設けずに、エアシリンダー58によりタッチロール支持部28Aをキャスティングロール支持部18A側に0.1MPaで押しつけた。また、比較例9では、ストッパー56の代わりにバックアップロールを用いて、タッチロール28をキャスティングロール18に押し付ける構成にした。また、比較例1〜5、7及び8ではスペーサー54を設けなかった。
図7から、スペーサー54とストッパー56とを併用することで、レターデーションのばらつきが低減された光学フィルム(Re分布が10nm以下)を製造可能であることが分かった。
また実施例1と実施例2との比較により、タッチロールの材質をゴムロールではなく、剛性ロールにすることで、より高いReを有する光学フィルムを製造可能であることが分かった。
また実施例9及び10のように、タッチロール28とキャスティングロール18との間に周速差をつけることで、|Re(40°)-Re(-40°)|>0を満たす光学フィルムを製造可能であることが分かった。
なお、実施例11では、スペーサー54及びストッパー56によりロール間隔を固定した状態で、膜厚が40μmの光学フィルムを成形したところ、面状に優れたフィルムが得られた。一方、比較例8において、スペーサー54及びストッパー56を設けずに、膜厚が40μmの光学フィルムを成形したところ、タッチムラによる面状不良が発生した。
また比較例5において、スペーサー54及びストッパー56を設けずに、ロール間隔を1.5dに設定して、膜厚が100μmの光学フィルムを成形したところ、タッチムラによる面状不良が発生した。
さらに比較例9において、ストッパー56の代わりにバックアップロールを用いて光学フィルムを成形したところ、レターデーションのばらつき(Re分布が50nm)だけでなく、面状不良が発生した。この面状不良は、バックアップロールの表面の凹凸に沿って析出した揮発成分(樹脂組成物由来の揮発成分)が、バックアップロールからタッチロール28を介して、フィルム表面に転写したためであると考えられる。
10…光学フィルム製造装置、12…樹脂組成物、14…押出機、15…バンク、16…ダイ、16A…吐出口、18…キャスティングロール、18A…キャスティングロール支持部、20…挟圧装置、22…冷却ロール、24…剥離ロール、26…巻取機、28…タッチロール、28A…タッチロール支持部、34…スクリュー軸、36…フライト、38…単軸スクリュー、40…供給口、42…吐出口、44…配管、50…間隔固定装置、52…架台、54…スペーサー、56…ストッパー

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂を含む溶融状態の樹脂組成物を、供給手段の吐出口から押し出して供給する工程と、
    溶融状態の前記樹脂組成物を第1挟圧面と第2挟圧面とで挟圧して、フィルムを成形する工程とを含む光学フィルムの製造方法であって、
    前記フィルムを成形する工程では、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が狭まるのを防止するスペーサーと、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が広がるのを防止するストッパーとにより、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔を固定することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 前記スペーサーはコッターであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 前記フィルムを成形する工程では、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔x、前記フィルムの膜厚dとが0.001d≦x≦dの関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 前記第1挟圧面及び前記第2挟圧面が剛性ロールであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との挟圧部における前記溶融樹脂の温度Tと、前記溶融樹脂のガラス転移温度Tgとが、Tg+70℃≦T≦Tg+200℃の条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 前記フィルムを成形する工程では、前記溶融樹脂を0.1MPa以上60MPa以下の圧力で挟圧することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 溶融状態の前記樹脂組成物を挟圧する前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との移動速度は互いに異なることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との移動速度比が0.60以上0.99以下であることを特徴とする請求項7に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製造方法により製造される光学フィルム。
  10. 熱可塑性樹脂を含む溶融状態の樹脂組成物を供給する供給手段と、
    第一挟圧面と第二挟圧面とを有し、前記供給手段から供給される溶融状態の前記樹脂組成物を前記第1挟圧面と前記第2挟圧面とで挟圧してフィルムを成形する挟圧手段と、
    前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が狭まるのを防止するスペーサーと、前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔が広がるのを防止するストッパーとを有し、前記スペーサーと前記ストッパーにより前記第1挟圧面と前記第2挟圧面との間隔を固定する間隔固定手段とを含むことを特徴とする光学フィルムの製造装置。
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