ところで、上記のような荷電装置において、浮遊粒子の帯電効率を向上させるためには、放電電極から発生したイオンを浮遊粒子と効率良く接触させる必要がある。これを実現させる手段としては、ケーシング内の空気通路において、荷電部の放電電極や対向電極を被処理空気の流れ方向に大型化することが考えられる。しかしながら、このようにすると、荷電部を収容するための空気通路が空気流れ方向に長くなり、ひいては空気通路を区画するケーシングも被処理空気の流れ方向に厚くなってしまう。
また、このようなケーシング厚さの増大を防止するために、空気通路を被処理空気の流れと直交する方向(例えば空気通路の幅方向や高さ方向)に拡大することも考えられる。しかしながら、単純に空気通路を拡大させただけでは、放電電極から生成したイオンを、空気通路の幅方向や高さ方向の全域に亘って充分に拡散させることができず、浮遊粒子の帯電効率の低下を招いてしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーシングを空気通路の流れ方向に薄型化でき、且つ浮遊粒子を効率良く帯電させることができる荷電装置を提供することである。
第1の発明は、被処理空気が流れる空気通路(41a)を形成するケーシング部材(41)と、該空気通路(41a)に配置される放電電極(45)と対向電極(50)を有する荷電部(40a)と、上記放電電極(45)と対向電極(50)とに電位差を付与する電源(60)とを備え、上記放電電極(45)の放電の基端となる放電部(45a)と上記対向電極(50)との間に被処理空気中の浮遊粒子を帯電させる電界を形成する荷電装置を対象とする。そして、この荷電装置は、上記対向電極(50)は、上記放電部(45a)から所定の間隔を置いて配置される対向部(51,52)を有し、該対向部(51,52)は、対向部(51,52)と上記放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して、空気通路(41a)の上流側又は下流側に45°の角度を成すように配置されていることを特徴とする。
第1の発明では、電源(60)から放電電極(45)と対向電極(50)とに電位差が付与されることで、放電電極(45)と対向電極(50)との間に、被処理空気中の浮遊粒子を帯電させるための電界が形成される。本発明のように対向部(51,52)を配置することで、放電部(45a)の放電に伴って生成するイオン風が被処理空気の流れと直交する方向へ吹き易くなる。この点について図12(A)及び(B)を参照しながら説明する。
イオン風は、放電電極から対向電極へ向かって移動するイオンが中性の空気分子と衝突することで発生する。つまり、放電部の近傍で発生した多量のイオンは、空気分子に次々と衝突しながら、対向電極に向かって移動していく。そして、このようにしてイオンと衝突した多数の空気分子がエネルギーを得て移動することで、イオン風が発生する。
このようなイオン風の風向は、イオンと空気分子との衝突角によって定まる。ここで、例えば図12に示すように、イオン(I)と空気分子(M)とを球体とみなした場合、イオンは空気分子に対して必ず真正面で(即ち衝突角θ=0°で)衝突するわけではなく、この衝突角は0°〜90°の範囲でバラツキが生じることになる。従って、理論上においては、イオン(I)と空気分子(M)との間の衝突角θは、このような衝突角の範囲(0°〜90°)の平均値となる45°と考えることができる。従って、イオン(I)と衝突して飛ばされる空気分子(M)は、イオン(I)の移動方向に対して45°ずれた円錐状に拡がる方向に移動する(図12(B)を参照)。即ち、イオン風の風速は、放電電極から対向電極へ向かうイオンの移動方向よりも45°ずれた方向において、最大になるといえる。
以上の点を考慮し、本発明では、放電部(45a)と対向部(51,52)との配列方向を、被処理空気の流れと直交する方向に対して空気通路(41a)の上流側又は下流側へ45°ずらすようにしている。これにより、放電部(45a)から対向部(51,52)へ移動するイオンが空気分子と衝突してイオン風が発生すると、このイオン風は、被処理空気の流れと直交する方向に飛び易くなる。これにより、放電部(45a)で発生させたイオンを、イオン風にのせて被処理空気の流れと直交する方向へ運ぶことができ、空気通路(41a)の軸直角方向におけるイオンの拡散効果を向上できる。
第2の発明は、第1の発明において、上記対向電極(50)は、第1と第2の上記対向部(51,52)を有し、上記第1の対向部(51)は、該第1対向部(51)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して、空気通路(41a)の上流側に45°の角度を成すように配置され、上記第2の対向部(52)は、該第2対向部(52)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して、空気通路(41a)の下流側に45°の角度を成すように配置されていることを特徴とする。
第2の発明では、対向電極(50)に第1対向部(51)と第2対向部(52)とが設けられる。第1対向部(51)は、被処理空気の流れ方向に対して空気通路(41a)の上流側に45°ずれるように配置され、第2対向部(52)は、被処理空気の流れ方向に対して空気通路(41a)の下流側に45°ずれるように配置される。これにより、第1対向部(51)に向かうイオンと空気分子とが衝突することで発生するイオン風は、被処理空気の流れと直交する方向に飛び易くなる。また、第2対向部(52)に向かうイオンと空気分子とが衝突することで発生するイオン風も、被処理空気の流れと直交する方向に飛び易くなる。
その結果、放電部(45a)で発生させたイオンを、イオン風にのせて被処理空気の流れと直交する方向へ運ぶことができ、空気通路(41a)の軸直角方向におけるイオンの拡散効果を向上できる。
第3の発明は、被処理空気が流れる空気通路(41a)を形成するケーシング部材(41)と、該空気通路(41a)に配置される放電電極(45)と対向電極(50)を有する荷電部(40a)と、上記放電電極(45)と対向電極(50)とに電位差を付与する電源(60)とを備え、上記放電電極(45)の放電の基端となる放電部(45a)と上記対向電極(50)との間に被処理空気中の浮遊粒子を帯電させる電界を形成する荷電装置を対象とし、上記対向電極(50)は、上記放電部(45a)から被処理空気の流れと直交する方向に所定の間隔を置いて配置される第1対向部(51)と、上記放電部(45a)から空気通路(41a)の上流側方向に所定の間隔を置いて配置される第2対向部(52)とを有することを特徴とする。
第3の発明では、第1対向部(51)が、放電部(45a)から被処理空気の流れと直交する方向に所定の間隔を置いて配置される。このため、第1対向部(51)側に向かうイオンが空気分子と衝突すると、イオン風は、この方向よりも空気通路(41a)の上流側へ45°ずれた方向に飛び易くなる。また、第2対向部(52)は、放電部(45a)から空気通路(41a)の上流側へ所定の間隔を置いて配置される。このため、第2対向部(52)側へ向かうイオンが空気分子と衝突すると、イオン風は、放電部(45a)と第2対向部(52)との配列方向よりも下流側へ45°ずれた方向に飛び易くなる。以上のような2つのイオン風を発生させることで、本発明では、両者を合成した比較的大きなイオン風が、被処理空気の流れと直交する方向よりも上流側へやや傾いた方向を指向することになる。
一方、空気通路(41a)を流れる被処理空気の風速が比較的大きな場合には、イオン風に運ばれるイオンは空気通路(41a)の下流側へ流されやすくなる。しかしながら、本発明では、比較的強いイオン風が上流側へやや傾いた方向を指向しているため、イオン風及び被処理空気にのって運ばれるイオンが、被処理空気の流れと直交する方向へ拡散することになる。即ち、本発明では、イオンが被処理空気によって下流側へ流されてしまうのを考慮して、イオン風を放電部(45a)よりもやや上流側へ飛ばすようにしている。
第4の発明では、第3の発明において、上記第2対向部(52)は、該第2対向部(52)と放電部(45a)との配列方向が、上記第1対向部(51)と放電部(45a)との配列方向に対して、90°の角度を成すように配置されていることを特徴とする。
第4の発明では、第1対向部(51)へ向かうイオンに伴って発生するイオン風が、被処理空気の流れ方向よりも上流側へ45°ずれた方向に大きくなり、且つ第2対向部(52)へ向かうイオンに伴って発生するイオン風も、被処理空気の流れ方向よりも上流側へ45°ずれた方向に大きくなる。従って、本発明では、放電部(45a)よりも上流側へ傾いた方向に向かって、特に強いイオン風を発生させることができる。これにより、被処理空気の流れによってイオンが下流側へ流されてしまうことを回避でき、イオン風及び被処理空気にのって運ばれるイオンを被処理空気の流れと直交する方向へ拡散させることができる。
第5の発明は、被処理空気が流れる空気通路(41a)を形成するケーシング部材(41)と、該空気通路(41a)に配置される放電電極(45)と対向電極(50)を有する荷電部(40a)と、上記放電電極(45)と対向電極(50)とに電位差を付与する電源(60)とを備え、上記放電電極(45)における放電の基端となる放電部(45a)と上記対向電極(50)との間に被処理空気中の浮遊粒子を帯電させる電界を形成する荷電装置を対象とし、上記対向電極(50)は、放電部(45a)から所定の間隔を置いて配置される対向部(51,52)を有し、該対向部(51,52)は、放電に伴って発生するイオン風によって拡散するイオンが被処理空気の流れと直交する方向を指向するように、上記放電部(45a)との相対的な位置が設定されていることを特徴とする。
第5の発明では、放電に伴って発生するイオン風によって拡散するイオンが、放電部(45a)から被処理空気の流れと直交する方向を指向する。このため、空気通路(41a)の軸直角方向におけるイオンの拡散効果を向上できる。
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、上記対向電極(50)は、上記対向部(51,52)よりも放電部(45a)から遠くに位置し、且つ該放電部(45a)から被処理空気の流れと直交する方向に所定の間隔を置くように配置される誘導対向部(55)を更に有することを特徴とする。
第6の発明では、放電に伴って生成したイオンの一部が、誘導対向部(55)側へ移動する。ここで、誘導対向部(55)は、放電部(45a)から被処理空気の流れと直交する方向に所定の間隔を置いて配置されている。従って、被処理空気の流れと直交する方向へイオンを電気的に引き寄せることができる。また、誘導対向部(55)は、上記対向部(51,52)よりも放電部(45a)から離れた位置にあるため、イオンは誘導対向部(55)へ衝突する前に空気通路(41a)の下流側へ流されていく。つまり、誘導対向部(55)は、イオンを拡散させる、いわゆる拡散荷電方式の放電を行うための電極として機能する。
第7の発明は、第6の発明において、上記放電電極(45)及び対向電極(50)の上流側と下流側のいずれか一方又は両方には、上記放電部(45a)と上記誘導対向部(55)の配列方向に沿って形成され、且つ複数の通気孔が形成される板状電極(61,62)を有し、上記板状電極(61,62)は、上記放電部(45a)の電位と上記誘導対向部(51)の電位との間の中間の電位に設定されていることを特徴とする。
第7の発明では、放電電極(45)及び対向電極(50)の上流側と下流側のいずれか一方又は両方に板状電極(61,62)が設けられる。板状電極(61,62)は、複数の通気孔を有しており、各通気孔を被処理空気が流通する。また、板状電極(61,62)は、放電部(45a)と誘導対向部(55)との間の中間の電位となっているため、板状電極(61,62)と誘導対向部(55)との間にも電界が形成される。このため、放電部(45a)で発生したイオンは、板状電極(61,62)と誘導対向部(55)との間の電界により、誘導対向部(55)側へ誘引され易くなる。これにより、被処理空気の流れと直交する方向へのイオンの拡散効果が更に向上する。
第8の発明は、第7の発明において、上記電源(60)は、上記放電電極(45)及び対向電極(50)のいずれか一方が正の電位となり他方が負の電位となるように両電極(45,50)に電位差を付与するように構成され、上記板状電極(61,62)は、アース電位に設定されていることを特徴とする。
第8の発明では、放電部(45a)で発生したイオンが、アース電位となる板状電極(61,62)と誘導対向部(55)との間の電界により、誘導対向部(55)側へ誘引され易くなる。これにより、被処理空気の流れと直交する方向へのイオンの拡散効果が更に向上する。また、板状電極(61,62)をアース電位とすることで、ユーザー等が板状電極(61,62)に触れても感電することがない。即ち、板状電極(61,62)は、ユーザー等が放電電極(45)や対向電極(50)に触れてしまうことを防止する安全対策用の部材としても機能する。
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1つの発明において、上記対向部(51,52)は、被処理空気の流れと直交する方向に延びる棒状に形成されていることを特徴とする。
第9の発明では、対向部(51,52)が被処理空気の流れと直交する方向に延びる棒状に形成されるため、対向部(51,52)の長手方向に亘って電界を形成することができ、イオンの拡散効果が向上する。また、棒状の対向部(51,52)を配設するために要する空気流れ方向のスペースを最小限に抑えることができる。
第10の発明は、第9の発明において、上記放電電極(45)の放電部(45a)は、上記対向部(51,52)と平行に延びる棒状に形成されていることを特徴とする。
第10の発明では、放電電極(45)の放電部(45a)も被処理空気の流れと直交する方向に延びる棒状に形成される。このため、放電部(45a)と対向部(51,52)との間では、該放電部(45a)及び対向部(51,52)の長手方向の全域に亘って電界を形成することができ、イオンの拡散効果が向上する。また、棒状の放電部(45a)を配設するために要する空気流れ方向のスペースを最小限に抑えることができる。
本発明では、イオン風によって拡散するイオンを被処理空気の流れと直交する方向へ飛ばすようにしている。このため、空気通路(41a)の通路長さを短くし、且つ空気通路(41a)を軸直角方向に拡大させても、空気通路(41a)の通路断面全域に亘ってイオンを拡散させることができる。従って、空気通路(41a)が被処理空気の流れ方向に大型化されてしまうのを防止できる。その結果、空気通路(41a)を形成するケーシング部材(41)の薄型化を図ることができ、ひいては荷電装置全体の薄型化、あるいは荷電装置が搭載される空気処理装置(空気調和装置や空気清浄機等)の薄型化を図ることができる。
特に第1や第2の発明では、イオン風が被処理空気の流れと直交する方向へ飛びやすくなるため、被処理空気の流速が比較的小さい場合に、イオンを空気通路(41a)の通路断面全域に拡散させ易くなる。また、第3や第4の発明では、イオン風が空気通路(41a)の上流側にやや傾いているため、被処理空気の流速が比較的大きい場合に、イオンを空気通路(41a)の通路断面全域に拡散させ易くなる。
第6の発明では、誘導対向部(55)を設けることで、イオンを被処理空気の流れと直交する方向へ電気的に引き寄せることができる。従って、空気通路(41a)の軸直角方向へのイオンの拡散を一層促すことができる。また、誘導対向部(55)には、ほとんどイオンが衝突しないため、誘導対向部(55)への放電電流は極めて小さくなる。従って、誘導対向部(55)への放電に伴う消費電力の抑えることができる。
第7や第8の発明では、放電部(45a)で発生させたイオンを板状電極(61,62)と誘導対向部(55)との間の電界を利用して、誘導対向部(55)側へ誘引させることができる。従って、イオンの拡散効果が高まり、荷電効率を向上できる。また、第7の発明では、板状電極(61,62)をアース電位としているため、この板状電極(61,62)を放電電極(45)や対向電極(50)の保護部材として機能させることができ、荷電装置の安全性を向上できる。
第9や第10の発明では、放電電極(45)や対向電極(50)を配置するために要する空気通路(41a)の空気流れ方向のスペースを小さくできるので、ケーシング部材(41)の薄型化、ひいては装置の薄型化を効果的に図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る荷電装置について説明する。実施形態1に係る荷電装置は、荷電ユニット(40)を構成しており、室内の冷房や暖房を行う空気調和装置(10)に搭載されている。空気調和装置(10)は、図示を省略した冷媒回路を備え、この冷媒回路で蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行うものである。
空気調和装置(10)は、室内空間の天井壁(C)に設置される天井埋設式の室内ユニット(11)を備えている。室内ユニット(11)は、略直方体の箱状の本体ケーシング(12)と、矩形板状の化粧パネル(13)とを有している。本体ケーシング(12)は、天井裏に埋設される。化粧パネル(13)は、本体ケーシング(12)の下側の開口部に取り付けられる。化粧パネル(13)が本体ケーシング(12)に取り付けられた状態では、化粧パネル(13)が室内空間に露出する。
化粧パネル(13)には、吸込口(14)と吹出口(15)とが形成されている。吸込口(14)は、矩形状に形成され、化粧パネル(13)の中央部に配置されている。吸込口(14)には、スリット状の吸込グリル(14a)が嵌め込まれている。一方、吹出口(15)は、吸込口(14)の全周囲を囲うように、化粧パネル(13)の外周に沿って形成されている。
本体ケーシング(12)の内部には、吸込口(14)から吹出口(15)に亘って、被処理空気が流通するケース内流路(16)が形成されている。ケース内流路(16)には、被処理空気の流れの上流側から下流側に向かって順に、プレフィルタ(17)、荷電ユニット(40)、集塵ユニット(30)、室内ファン(20)、室内熱交換器(25)が設けられている。
プレフィルタ(17)は、吸込グリル(14a)の背面に沿うように形成されている。プレフィルタ(17)は、被処理空気中に含まれる比較的大径の塵埃を捕集する。
荷電ユニット(40)は、被処理空気中に含まれる塵埃等の浮遊粒子を帯電させる荷電装置を構成している。荷電ユニット(40)の詳細構造については後述する。
集塵ユニット(30)は、荷電ユニット(40)で帯電させた浮遊粒子を電気的に誘引して捕捉する集塵装置を構成している。集塵ユニット(30)は、集塵電極(31)と高圧電極(32)と集塵用高圧電源(図示省略)とを備えている。集塵用高圧電極は、集塵電極(31)と高圧電極(32)とに電圧を印加し、両電極(31,32)に電位差を付与する。これにより、集塵電極(31)と高圧電極(32)との間に電界が形成され、帯電した浮遊粒子が集塵電極(31)の表面に電気的に誘引されて捕捉される。なお、本実施形態の集塵ユニット(30)は、集塵電極(31)と高圧電極(32)とが互いに対向するように平行に配置される、いわゆる平板構造を採用している。しかしながら、集塵電極(31)や高圧電極(32)を格子構造や他の構造として、集塵ユニット(30)を構成しても良い。また、本実施形態では、集塵電極(31)がアースに接続され、高圧電極(32)が集塵用高圧電源の正極に接続されている。
室内ファン(20)は、いわゆるターボファンである。室内ファン(20)は、本体ケーシング(12)の上側の真ん中付近に配置されている。室内ファン(20)は、ファンモータ(21)と羽根車(22)とを備えている。ファンモータ(21)は、本体ケーシング(12)の上側内壁に固定されている。羽根車(22)は、ファンモータ(21)の回転軸に連結されている。室内ファン(20)の下側には、吸込口(14)に連通するベルマウス(23)が設けられている。室内ファン(20)は、ベルマウス(23)を介して下側から吸い込んだ被処理空気を遠心力によって周方向に吹き出すように構成されている。
室内熱交換器(25)は、クロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器により構成されている。室内熱交換器(25)は、平面視でロ字状に形成され、室内ファン(20)の周囲を囲うように配置されている。室内熱交換器(25)では、室内ファン(20)によって送風する室内空気(被処理空気)と冷媒回路の冷媒とが熱交換する。
上述した荷電ユニット(40)は、図1〜図3に示すように、枠部材(41)と放電電極(45)と対向電極(50)と荷電用高圧電源(60)とを有している。
枠部材(41)は、内部に被処理空気が流通する空気通路(41a)を形成するケーシング部材を構成している。枠部材(41)は、空気通路(41a)を流れる被処理空気の流れ方向に扁平な矩形枠状に形成されている。そして、空気通路(41a)には、放電電極(45)及び対向電極(50)を有する荷電部(40a)が設けられている。
放電電極(45)は、被処理空気の流れと直交する方向(図3における枠部材(41)の幅方向)に延びる棒状ないし線状に形成されている。即ち、放電電極(45)は、いわゆるイオン化線を構成しており、その軸方向の両端が枠部材(41)の内壁面にそれぞれ固定されている。また、放電電極(45)の横断面は、外径が数百μmとなる円形状に形成されている。実施形態1の放電電極(45)では、その全域に亘って、放電の基端となる放電部(45a)が形成されている。
対向電極(50)は、2つの第1対向部(51,51)と2つの第2対向部(52,52)と2つの誘導対向部(55,55)とを有している。これらの対向部(51,52,55)は、放電電極(45)と平行となるように、被処理空気の流れと直交する方向に延びる棒状の電極を構成している。また、各対向部(51,52,55)の横断面は、それぞれ外径が約1mm〜約3mmとなる円形状に形成されている。本実施形態では、第1対向部(51)と第2対向部(52)と誘導対向部(55)とが同じ外径となっており、且つその外径が放電電極(45)の外径よりも小さくなっている。
一対の第1対向部(51)は、放電部(45a)を挟むように配列されている。詳細には、第1対向部(51)は、該第1対向部(51)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して、空気通路(41a)の上流側に45°の角度を成すように配置されている。即ち、図2に示すような第1対向部(51)の軸直角断面視において、第1対向部(51)と放電部(45a)とを結ぶ直線L1と、放電部(45a)を通り且つ被処理空気の流れと直交する直線Lsとの間の角度θ1は、45°となっている。
一対の第2対向部(51)は、該第2対向部(52)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して、空気通路(41a)の下流側に45°の角度を成すように配置されている。即ち、図2に示すような第2対向部(52)の軸直角断面視において、第2対向部(52)と放電部(45a)とを結ぶ直線L2と、上記直線Lsとの間の角度θ2は、45°となっている。また、第1対向部(51)と放電部(45a)との間の距離は、第2対向部(52)と放電部(45a)との間の距離と同じになっている。
荷電ユニット(40)では、以上のような第1対向部(51)及び第2対向部(52)の配置により、放電に伴って発生するイオン風によって拡散するイオンが、被処理空気の流れと直交する方向を指向するようになっている(詳細は後述する)
一対の誘導対向部(55)は、放電部(45a)を挟むように配列されている。誘導対向部(55)は、第1対向部(51)や第2対向部(52)よりも放電部(45a)から遠くに配置されている。具体的には、第1対向部(51)は、被処理空気の流れと直交する方向(図2に示す直線Lsの方向)に所定の間隔を置いて配置される。
図2に示すように、荷電用高圧電源(60)は、放電電極(45)と対向電極(50)とに直流の高電圧を印加するように構成されている。即ち、荷電用高圧電源(60)は、放電電極(45)と対向電極(50)との間に電位差を付与する電源手段を構成している。
本実施形態では、荷電用高圧電源(60)の正極側に放電電極(45)が接続し、荷電用高圧電源(60)の負極側に対向電極(50)が接続している。また、荷電用高圧電源(60)の負極側は、アースと接続している。これにより、放電部(45a)はプラス電位となり、第1対向部(51)と第2対向部(52)と誘導対向部(55)とがゼロ電位となっている。
本実施形態の荷電ユニット(40)では、第1対向部(51)及び第2対向部(52)が、いわゆる衝突荷電用の電極を構成し、誘導対向部(55)が、いわゆる拡散荷電用の電極を構成している。即ち、第1対向部(51)及び第2対向部(52)は、放電部(45a)から比較的近い位置にあるため、放電部(45a)と第1対向部(51)との間の電界密度や、放電部(45a)と2対向部(52)との間の電界密度も大きくなる。このため、放電部(45a)から発生したイオンは、第1対向部(51)や第2対向部(52)に到達/衝突し易くなる。これに対し、誘導対向部(55)は、放電部(45a)から比較的遠い位置にあり、放電部(45a)と誘導対向部(55)との間の電界密度も小さくなる。このため、放電部(45a)から発生したイオンは、誘導対向部(55)を指向するように拡散するものの、拡散したイオンが誘導対向部(55)に到達することはほとんどない。以上のように、本実施形態は、衝突荷電方式の放電と拡散荷電方式の放電とが同時に行われる(詳細は後述する)。
−運転動作−
空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)の運転時には、冷媒回路の圧縮機が駆動され、冷媒回路で冷凍サイクルが行われる。また、室内ファン(20)が駆動され、室内空気が吸込口(14)よりケース内流路(16)へ取り込まれる。また、集塵ユニット(30)では、集塵用高圧電源から集塵電極(31)と高圧電極(32)とに直流の高電圧が印加される。荷電ユニット(40)では、荷電用高圧電源(60)から放電電極(45)と対向電極(50)とに直流の高電圧が印加される。
ケース内流路(16)に取り込まれた被処理空気は、プレフィルタ(17)を通過する。プレフィルタ(17)では、被処理空気中に含まれる比較的大径の浮遊粒子(塵埃等)が捕捉される。
プレフィルタ(17)を通過した被処理空気は、荷電ユニット(40)を流れる。荷電ユニット(40)では、放電電極(45)と対向電極(50)との間に被処理空気中の浮遊粒子を帯電させるための電界が形成される。
具体的には、放電電極(45)で放電(いわゆるプラス放電)が行われると、放電電極(45)の近傍で多量のプラスイオンが生成する。これらのプラスイオンは、第1対向部(51)や第2対向部(52)に誘引され、各対向部(51,52)にそれぞれ衝突する。以上のように、放電部(45a)と第1対向部(51)との間や、放電部(45a)と第2対向部(52)との間では、いわゆる衝突荷電方式の放電が行われる。この衝突荷電方式の放電は、主としてミクロンオーダー(1μm以上)の浮遊粒子を帯電させ易い特性を有する。
また、放電電極(45)の近傍で発生したイオンの一部は、第1対向部(51)や第2対向部(52)に衝突せずにこれらの対向部(51,52)の裏側まで回り込む。このイオンは、放電電極(45)と誘導対向部(55)との間の電界によって誘導対向部(55)側に誘引される。ここで、誘導対向部(55)は、放電電極(45)から被処理空気の流れと直交する方向に所定間隔を置いて配置されているため、放電電極(45)で発生したイオンも、被処理空気の流れと直交するようにして誘導対向部(55)側へ移動する。一方、誘導対向部(55)は第1対向部(51)や第2対向部(52)よりも放電電極(45)から遠くに位置しているため、誘導対向部(55)に向かって移動するイオンは、誘導対向部(55)に衝突する前に被処理空気によって空気通路(41a)の下流側に流される。以上のようにして、第1対向部(51)や第2対向部(52)と誘導対向部(55)との間では、イオンが誘導対向部(55)に衝突せずに拡散する、拡散荷電方式の放電が行われる。なお、この拡散荷電方式の放電は、主としてサブミクロンオーダー(1μm未満)の浮遊粒子を帯電させ易い特性を有する。
以上のように、荷電ユニット(40)では、被処理空気の流れと直交する方向において、衝突荷電方式の放電が行われる領域と、拡散荷電方式の放電が行われる領域とが形成されている。このため、空気通路(41a)では、その通路断面の全域に亘ってイオンが拡散するので、浮遊粒子が効率良く荷電する。
加えて、本実施形態の第1対向部(51)や第2対向部(52)の配置構造により、放電部(45a)の放電に伴って生成するイオン風が、図2に示すように、被処理空気の流れと直交する方向へ吹き易くなる。この点について更に詳細に説明する。
イオン風は、放電電極から対向電極へ向かって移動するイオンが中性の空気分子と衝突することで発生する。つまり、放電部の近傍で発生した多量のイオンは、空気分子に次々と衝突しながら、対向電極に向かって移動していく。そして、このようにしてイオンと衝突した多数の空気分子がエネルギーを得て移動することで、イオン風が発生する。
このようなイオン風の風向は、イオンと空気分子との衝突角によって定まる。ここで、例えば図12に示すように、イオン(I)と空気分子(M)とを球体とみなした場合、イオンは空気分子に対して必ず真正面で(即ち衝突角θ=0°で)衝突するわけではなく、この衝突角は0°〜90°の範囲でバラツキが生じることになる。従って、理論上においては、イオン(I)と空気分子(M)との間の衝突角θは、このような衝突角の範囲(0°〜90°)の平均値である45°となる。
従って、イオン(I)と衝突して飛ばされる空気分子(M)は、イオン(I)の移動方向に対して45°ずれた円錐状に拡がる方向に移動する(図12(B)を参照)。即ち、イオン風の風速は、放電電極から対向電極へ向かうイオンの移動方向よりも45°ずれた方向において、最大になるといえる。
以上の点を考慮し、本実施形態では、放電部(45a)と第1対向部(51)との配列方向を、被処理空気の流れと直交する方向(直線Ls方向)よりも上流側へ45°ずらすようにしている。これにより、放電部(45a)から第1対向部(51)へ移動するイオンが空気分子と衝突してイオン風が発生すると、このイオン風は、直線Ls方向に向かって飛び易くなる。また、本実施形態では、放電部(45a)と第2対向部(52)との配列方向を、被処理空気の流れと直交する方向よりも下流側へ45°ずらすようにしている。これにより、放電部(45a)から第2対向部(52)へ移動するイオンが空気分子と衝突してイオン風が発生すると、このイオン風も、直線Ls方向に向かって飛び易くなる。
以上のように、本実施形態では、第1対向部(51)へのイオンの移動に伴って発生するイオン風と、第2対向部(52)へのイオンの移動に伴って発生するイオン風との双方について、被処理空気の流れと直交する方向への風速が大きくなる。これにより、このようなイオン風にのせてイオンを直線Ls方向へ飛ばすことができるので、空気通路(41a)の軸直角方向へのイオンの拡散効果が更に高まることになる。
荷電ユニット(40)を通過した被処理空気は、集塵ユニット(30)を流れる。集塵ユニット(30)では、プラスに帯電した浮遊粒子がゼロ電位となる集塵電極(31)に誘引され、集塵電極(31)の表面に浮遊粒子が捕集される。
以上のようにして浮遊粒子が除去された被処理空気は、ベルマウス(23)内に流入した後に室内ファン(20)によって径方向外方へ搬送され、室内熱交換器(25)を通過する。室内熱交換器(25)では、冷媒と被処理空気とが熱交換する。以上のようにして、室内熱交換器(25)で冷却又は加熱された空気は、吹出口(15)から室内へ供給される。
−実施形態1の効果−
上記実施形態では、第1対向部(51)と放電部(45a)の配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して、空気通路(41a)の上流側に45°を成すように、第1対向部(51)を配置しているため、被処理空気の流れと直交する方向へのイオン風の風速を増大できる。同様に、第2対向部(52)と放電部(45a)の配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して、空気通路(41a)の下流側に45°を成すように、第2対向部(52)を配置しているため、被処理空気の流れと直交する方向へのイオン風の風速を更に増大できる。このため、イオン風によって拡散するイオンを、空気通路(41a)の軸直角方向へ積極的に拡散させることができるので、浮遊粒子の荷電効率を充分得ると共に、空気通路(41a)が被処理空気の流れ方向に大型化されてしまうのを防止できる。その結果、枠部材(41)、ひいては荷電ユニット(40)の薄型化を図ることができ、この荷電ユニット(40)を空気調和装置(10)内にコンパクトに収容することができる。
なお、実施形態1では、放電部(45a)の上流側と下流側とにそれぞれ対向部(51,52)を設けているが、第1対向部(51)と第2対向部(52)のいずれか一方を省略した構成としても良い。
また、上記実施形態では、放電部(45a)から被処理空気の流れと直交する方向に誘導対向部(55)を配置し、誘導対向部(55)と放電部(45a)との間に第1対向部(51)及び第2対向部(52)を配置している。これにより、放電部(45a)と第1、第2対向部(51,52)との間では、衝突荷電方式の放電を行うことができ、且つ第1、第2対向部(51,52)と誘導対向部(55)との間では、拡散荷電方式の放電を行うことができる。ここで、これらの放電の領域は、被処理空気の流れと直交する方向に形成されるため、空気通路(41a)が空気流れ方向に大型化されてしまうことがない。従って、枠部材(41)、ひいては荷電ユニット(40)の薄型化を図ることができる。その結果、この荷電ユニット(40)を空気調和装置(10)内にコンパクトに収容することができる。
また、誘導対向部(51)側に向かってイオンを拡散させることで、イオンが空気通路(41a)の通路断面の全域に供給され易くなる。従って、被処理空気中の浮遊粒子とイオンとを確実に接触させることができ、荷電効率の向上を図ることができる。
更に、第1対向部(51)と第2対向部(52)と誘導対向部(55)と放電部(45a)とを棒状ないし線状に形成し、これらを互いに平行に配列している。このため、放電電極(45)や対向電極(50)を配置するために要する空気流れ方向のスペースを最小化でき、荷電ユニット(40)の薄型化を図ることができる。また、放電部(45a)の両側にそれぞれ第1対向部(51)、第2対向部(52)、及び誘導対向部(55)を設けることで、放電部(45a)の両側にそれぞれ放電領域を形成でき、イオンの拡散効果を促すことができる。
〈実施形態1の変形例〉
図4に示す変形例1に係る荷電ユニット(40)には、上記実施形態1の荷電ユニット(40)に2枚の案内板(57,58)が設けられている。第1案内板(57)は、放電部(45a)の上流側において、2つの第1対向部(51,51)の間に配置されている。第2案内板(58)は、放電部(45a)の下流側において、2つの第2対向部(52,52)の間に配置されている。各案内板(57,58)は、放電電極(45)と平行に延びる長尺の平板状に形成されている。そして、第1案内板(57)と第2案内板(58)とが、放電電極(45)を挟むように平行に配置されている。なお、各案内板(57,58)は、例えば絶縁性の樹脂材料で構成されている。
この変形例1の案内板(57,58)は、放電部(45a)から空気通路(41a)の上流側方向や下流側方向へ吹き出すイオン風を、被処理空気の流れと直交する方向へ案内する気流制御板を構成している。具体的には、まず、第1対向部(51)へイオンが移動すると、この移動方向と45°を成す、空気流れの逆方向においても、イオン風の風速が強くなる。しかしながら、この方向のイオン風は、第1案内板(57)に沿うようにして被処理空気と直交する方向へ案内される。また、第2対向部(52)へイオンが移動すると、この移動方向と45°を成す、空気流れ方向においても、イオン風の風速が強くなる。しかしながら、この方向のイオン風は、第2案内板(58)に沿うようにして被処理空気の直交する方向へ案内される。
以上のように、変形例1では、案内板(57,58)によってイオン風を被処理空気の流れ方向へ強制的に導くようにしているので、空気通路(41a)の軸直角方向へのイオンの拡散効果を更に向上できる。
《発明の実施形態2》
実施形態2は、上記実施形態1に係る荷電ユニット(40)について、第1対向部(51)及び第2対向部(52)の配置構造が異なるものである。図5に示すように、実施形態1の荷電ユニット(40)には、2つの第1対向部(51)と1つの第2対向部(52)とが設けられている。
一対の第1対向部(51)は、放電部(45a)を挟むように配列されている。詳細には、第1対向部(51)は、放電部(45a)から被処理空気の流れと直交する方向へ所定の間隔を置いて配置されている。即ち、第1対向部(51)の軸直角断面視において、第1対向部(51)は、図5に示す直線Ls上に位置している。
第2対向部(52)は、放電部(45a)から空気通路(41a)の上流側へ所定の間隔を置いて配置されている。具体的には、第2対向部(52)は、該第2対向部(52)と放電部(45a)との配列方向が、第1対向部(51)と放電部(45a)との配列方向に対して、90°の角度を成すように配置されている。即ち、第2対向部(52)の軸直角断面視において、第2対向部(52)と放電部(45a)とを結ぶ直線L2と、直線Lsとが直角を成している。
荷電ユニット(40)では、以上のような第1対向部(51)及び第2対向部(52)の配置により、放電に伴って発生するイオン風が、直線Lsに対して空気通路(41a)の上流側に45°傾いた方向を指向するようになっている。
この点について具体的に説明すると、上述のようにイオン風の風速は、イオンの移動方向に対して45°ずれた方向が最大となる。従って、実施形態2の放電部(45a)から第1対向部(51)へのイオンの移動に起因して、直線Lsに対して上流側へ45°ずれた方向へのイオン風が強くなる。また、放電部(45a)から第2対向部(52)へのイオンの移動に起因しても、直線Lsに対して上流側へ45°ずれた方向へのイオン風が強くなる。その結果、実施形態2では、両者の合成となるイオン風(Iw)が、空気通路(41a)の上流側へ傾きながら枠部材(41)の内縁部側へ吹くことになる。
一方、空気通路(41a)を流れる被処理空気の風速が比較的大きな場合には、イオン風に運ばれるイオンは空気通路(41a)の下流側へ流されやすくなる。しかしながら、本実施形態では、比較的強いイオン風(Iw)が上流側へやや傾いた方向を指向しているため、イオン風及び被処理空気にのって運ばれるイオンが、被処理空気の流れと直交する方向へ拡散し易くなる。従って、本実施形態においても、イオン風によって拡散するイオンを、空気通路(41a)の軸直角方向へ積極的に拡散させることができ、荷電効率の向上を図りつつ、荷電ユニット(40)の薄型化を図ることができる。
《発明の実施形態3》
実施形態3は、上記実施形態1に係る荷電ユニット(40)の構成が異なるものである。図6に示すように、実施形態3の荷電ユニット(40)には、導電性の2つの金網部材(61,62)が設けられている。これらの金網部材(61,62)は、放電電極(45)及び対向電極(50)の上流側に設けられる第1金網部材(61)と、放電電極(45)及び対向電極(50)の下流側に設けられる第2金網部材(62)とで構成されている。なお、本実施形態では、放電電極(45)及び対向電極(50)の上流側と下流側との双方に金網部材(61,62)を設けているが、上流側と下流側のいずれか一方のみに1つの金網部材を設けるようにしても良い。
各金網部材(61,62)は、複数の通気孔が形成されるメッシュ板状に形成されている。なお、金網部材(61,62)は、必ずしもメッシュ板状でなくても良く、例えば複数の通気孔が形成されるハニカム状であったり、いわゆる複数の円形の通気孔が貫通形成される、いわゆるパンチングメタルであっても良い。金網部材(61,62)は、放電部(45a)と誘導対向部(55)との配列方向に沿うように、空気通路(41a)の通路断面の全域に跨って配設されている。金網部材(61,62)の外縁部は、枠部材(41)の内壁に固定されて保持されている。
実施形態3の荷電用高圧電源(60)は、直列に接続される第1電源部(60a)と第2電源部(60b)とで構成されている。第1電源部(60a)の正極側は放電電極(45)と接続し、第2電源部(60b)の負極側が対向電極(50)と接続している。また、第1電源部(60a)と第2電源部(60b)との間には、アースが接続され、更にこのアースに上記の金網部材(61,62)が接続している。以上のようにして、実施形態3では、放電電極(45)が正の電位(例えば+5KV)となり対向電極(50)が負の電位(例えば−5KV)となり、金網部材(61,62)がアース電位(0KV)となっている。これにより、金網部材(61,62)は、放電部(45a)の電位と誘導対向部(55)の電位との間の中間の電位に設定される、板状電極を構成している。なお、実施形態3において、放電電極(45)を負の電位として対向電極(50)を正の電位とし、金網部材(61,62)をアース電位としても良い。また、放電部(45a)と誘導対向部(55)との間の電位差をΔVとすると、金網部材(61,62)の電位をΔVの二分の一(1/2×ΔV)とするのが好ましい。
実施形態3の荷電ユニット(40)では、被処理空気が第1金網部材(61)の通気孔を通過して空気通路(41a)に流入し、流入後の被処理空気が第2金網部材(62)の通気孔を通過して空気通路(41a)から流出する。空気通路(41a)では、実施形態1と同様にして、放電部(45a)と第1,第2対向部(51,52)との間で衝突荷電方式の放電が行われ、同時に第1,第2対向部(51,52)と誘導対向部(55)との間で拡散荷電方式の放電が行われる。
実施形態2では、金網部材(61,62)を設けることで、拡散荷電の放電領域におけるイオンの拡散効果が更に向上する。具体的には、金網部材(61,62)は、アース電位となり、誘導対向部(55)は負の電位となっているため、金網部材(61,62)と誘導対向部(55)との間にも電界が形成される。このため、放電部(45a)で発生したイオンは、金網部材(61,62)と誘導対向部(55)との間の電界によって誘導対向部(55)側に誘引され易くなる。その結果、空気通路(41a)では、イオンが通路断面の全域に亘って一層拡散し易くなり、浮遊粒子の荷電効率が更に向上する。
また、実施形態3では、金網部材(61,62)を安全用の保護部材として機能させることができる。具体的には、金網部材(61,62)は、放電電極(45)や対向電極(50)を覆うように配置されているため、ユーザー等が放電電極(45)や対向電極(50)に触れてしまうことを防止できる。そして、金網部材(61,62)は、アース電位となっているため、仮にユーザー等が金網部材(61,62)に触れてしまったとしても、感電することはない。
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2の荷電ユニット(40)においては、以下のような変形例の構成としても良い。
図7に示す変形例2に係る荷電ユニット(40)では、金網部材(61,62)がアースに接続されていない。具体的に変形例2では、放電電極(45)が第1電源部(60a)の正極に接続し、対向電極(50)が第2電源部(60b)の負極であって且つアースに接続している。そして、金網部材(61,62)は、第1電源部(60a)と第2電源部(60b)との間に接続されている。これにより、変形例2の金網部材(61,62)は、放電電極(45)のプラス電位(例えば+10KV)と対向電極(50)のアース電位(0KV)との間の中間電位(例えば5.0KV)となっている。
変形例1においても、金網部材(61,62)と誘導対向部(55)との間に電位差が生じるため、金網部材(61,62)と誘導対向部(55)との間の電界によってイオンを誘導対向部(55)側へ拡散させることができる。従って、浮遊粒子の荷電効率の向上を図ことができる。
図8に示す変形例3に係る荷電ユニット(40)では、金網部材(61,62)がアース電位となる一方、この金網部材(61,62)が放電部(45a)と第1対向部(51)との間の中間電位となっていない。具体的に変形例3では、放電電極(45)が荷電用高圧電源(60)の正極側と接続し、且つ対向電極(50)及び金網部材(61,62)の双方がアースと接続している。これにより、変形例3では、アースとなる金網部材(61,62)によって、放電電極(45)を覆うことができるので、荷電ユニット(40)の安全性の向上を図ることができる。
《その他の実施形態》
上述した各実施形態(変形例も含む)において、以下のような他の構成を採用することもできる。
〈放電電極の構造〉
上記各実施形態の放電電極(45)は、棒状ないし線状の電極で構成され、その全域に亘って放電の基端となる放電部(45a)が構成されている。しかしながら、放電電極(45)をこれ以外の構造としても良い。
図9に示す変形例4に係る荷電ユニット(40)では、放電電極(45)が、空気通路(4a1)の厚さ方向に突出した針状の放電部(45a)と、この放電部(45a)を支持する支持部(図示省略)とを備えている。そして、変形例4では、上記実施形態1と同様にして、第1対向部(51)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して上流側に45°を成し、且つ第2対向部(52)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して上流側に45°を成している。従って、上記各実施形態と同様、荷電ユニット(40)の薄型化、及びイオンの拡散効果の向上を図ることができる。
図10に示す変形例5に係る荷電ユニット(40)では、放電電極(45)が、軸直角断面が菱形となる棒状ないし柱状に形成されている。即ち、変形例5の放電電極(45)は、幅方向の両端部が誘導対向部(55)側に向かってそれぞれ突出しており、この突出部の先端が放電の基端となる放電部(45a)を構成している。そして、変形例5では、上記実施形態1と同様にして、第1対向部(51)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して上流側に45°を成し、且つ第2対向部(52)と放電部(45a)との配列方向が、被処理空気の流れと直交する方向に対して上流側に45°を成している。従って、上記各実施形態と同様、荷電ユニット(40)の薄型化、及びイオンの拡散効果の向上を図ることができる。
更に、図11に示す変形例6のように、平板状の柱部(47)と、該柱部(47)の幅方向の両側に形成される突起部としての放電部(45a)とから成る、いわゆる鋸歯状の電極によって放電電極(45)を構成しても良い。
〈その他の構成〉
上記各実施形態の荷電ユニット(40)では、放電電極(45)を対向電極(50)よりも高い電位とすることで、放電部(45a)からプラスのイオンを発生する、いわゆるプラス放電を行うようにしている。しかしながら、これとは逆に、放電電極(45)を対向電極(50)よりも低い電位とすることで、放電部(45a)からマイナスのイオンを発生する、いわゆるマイナス放電を行うようにしても良い。
上記各実施形態では、第1,第2対向部(51)と誘導対向部(55)とを同電位としている。しかしながら、例えば放電電極(45)を高電位としてプラス放電を行う場合には、誘導対向部(55)を第1対向部(51)や第2対向部(52)よりも更に低い電位とするように電源(60)から電位差を付与しても良い。また逆に、例えば放電電極(45)を低電位としてマイナス放電を行う場合には、誘導対向部(55)を第1対向部(51)や第2対向部(52)よりも高い電位とするように電源(60)から電位差を付与しても良い。
上記各実施形態では、空気通路(41a)において、放電部(45a)の両側にそれぞれ第1対向部(51)と第2対向部(52)とを設けているが、放電部(45a)の片側のみに第1対向部(51)と第2対向部(52)とを設けても良い。また、放電電極(45)を2本以上設けるようにしても良い。
上記各実施形態では、荷電ユニット(40)を天井埋込式の空気調和装置(10)に搭載しているが、例えば壁掛け式の空気長装置や、空気清浄機等の他の方式の空気処理装置に荷電ユニット(40)を搭載するようにしても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。