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JP2010221595A - ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性フィルムの製造方法 Download PDF

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JP2010221595A
JP2010221595A JP2009072801A JP2009072801A JP2010221595A JP 2010221595 A JP2010221595 A JP 2010221595A JP 2009072801 A JP2009072801 A JP 2009072801A JP 2009072801 A JP2009072801 A JP 2009072801A JP 2010221595 A JP2010221595 A JP 2010221595A
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紀雄 秋田
Masakazu Kamitori
正和 神取
Daido Chiba
大道 千葉
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Abstract

【課題】高湿度条件下でも酸素透過性および水蒸気透過性を低く維持することができるガスバリア性フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムの両面に珪素含有蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムであって、前記基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、前記蒸着膜の厚さは、150〜4000オングストロームである。更に、ヒートシール層やプラスチック基材フィルムを積層し、ガスバリア性包装材とすることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリビニルアルコールやエチレンビニル共重合体からなる基材フィルムの両面に所定厚さの珪素含有蒸着膜を形成することで、高湿度条件下でも酸素透過性および水蒸気透過性を低く維持することができるガスバリア性フィルム、ガスバリア性積層フィルム、ガスバリア性包装材、およびガスバリア性フィルムの製造方法に関するものである。
従来、飲食品、化成品、雑貨品、その他を充填包装する包装用材料として、内容物の変質、変色、その他を防止するために、酸素ガス、水蒸気等の透過を遮断、阻止する、種々の形態からなるバリア性積層材が開発され、提案されている。
従来より、酸素、水蒸気などの遮断性に優れたアルミニウムなどの金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。アルミニウム等の金属箔を用いた包装材料は、温度・湿度の影響がほとんどなく、ガスバリア性に非常に優れるという利点がある。しかし、アルミニウムなどの金属箔を用いた包装材料は、使用後に廃棄する際に不燃物として処理しなくてはならない、検査時に金属探知機に検知されてしまう、電子レンジ用材料として使用できないなどの問題がある。
これに対し、アルミニウム等の金属箔を含まない包装材が開発されている。例えば、本来ガスバリア性があるとされるポリビニルアルコールにケイ素酸化物の蒸着膜を形成したガスバリア性に優れる透明プラスチックがある(特許文献1)。実施例では、電子ビーム加熱方式で、純度99.9%の一酸化珪素を加熱蒸発させてポリビニルアルコールにケイ素酸化物の透明な蒸着膜を形成させている。
また、ポリビニルアルコールにケイ素窒化物の蒸着膜を形成したガスバリア性に優れる透明プラスチックもある(特許文献2)。実施例では、電子ビーム加熱方式で、純度99.9%の四窒化三ケイ素を加熱蒸発させてポリビニルアルコールにケイ素窒化物の透明な蒸着膜を形成させている。
また、ポリビニルアルコールにケイ素の蒸着膜とケイ素酸化物の蒸着膜を形成したガスバリア性に優れる透明プラスチックもある(特許文献3)。実施例では、電子ビーム加熱方式で、純度99.9%のケイ素を加熱蒸発させてポリビニルアルコールにケイ素の蒸着膜を形成し、ついで一酸化珪素を加熱蒸発させてケイ素酸化物の透明な蒸着膜を形成させている。
また、ポリビニルアルコールにケイ素酸化物の蒸着膜を形成した透明フィルムと片面にケイ素酸化物薄膜を有する透明フィルムとを積層してなる防湿フィルムもある(特許文献4)。実施例では、電子ビーム加熱方式で、純度99.9%の一酸化珪素を加熱蒸発させてポリビニルアルコールにケイ素酸化物の透明な蒸着膜を形成させた透明フィルムと、ポリエチレンテレフタレートに上記方法でケイ素酸化物を蒸着した透明フィルムとを形成し、前記蒸着膜を対抗させてウレタン系接着剤を用いて積層し、防湿フィルムを得ている。更に、特許文献4記載の防湿フィルムに、ヒートシール層を形成した高剛性防湿フィルムもある(特許文献5)。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの両面にアルミニウムによる厚さ0.03μmの金属蒸着層を形成する、カールしないガス遮断性金属蒸着フィルムもある(特許文献6)。
特公平8−22580号公報 特公平8−22583号公報 特公平8−13521号公報 特許第2820469号公報 特許第2816998号公報 特公昭58−8985号公報
アルミニウムなどの金属箔を用いた包装材料は、金属探知機で検知されるため電子レンジ用材料として使用できず、また、太陽電池や真空断熱材の被覆フィルムとして使用すると、金属箔の伝熱性により高温条件でこれらの性能を低下させやすい。このため、アルミニウムなどの金属箔を使用しないガスバリア性フィルムの開発が望まれる。
一方、ポリビニルアルコールは、本来ガスバリア性に優れるが、構造中に親水性の官能基を有するため高湿度下でガスバリア性が低下しやすい。このような親水性官能基を有するフィルムの高湿度下でのガスバリア性を向上させるため、蒸着膜を形成する方法があるが、例えば、前記特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載されるように、その片面にケイ素酸化物やケイ素窒化物の蒸着膜を形成してもガスバリア性が十分でない場合がある。
また、上記親水性の官能基を有するガスバリア性フィルムとして、エチレンビニル共重合体も知られているが、ポリビニルアルコールと同様に、高湿度下でガスバリア性が低下しやすい。したがって、ポリビニルアルコールやエチレンビニル共重合体などの、高湿度下でガスバリア性が低下しやすいフィルムであっても、よりガスバリア性に優れるフィルムの開発が望まれる。
更に、基材フィルムの両面にアルミニウムによる金属蒸着層を形成すると、特許文献6に示すように基材フィルムのカールを防止することができるが、両面に形成された蒸着層どうしが擦れ、このため、得られたフィルムを均一に巻き取ることが困難で、蒸着フィルムを巻き取った原反ロールの調製が容易でない場合がある。蒸着フィルムは、ガスバリア性に優れると同時に、それ自体が吸湿し易いため、使用前には防湿包装を行うことが好ましいが、巻き取りが容易でないと、防湿包装を行うことができない。したがって、ガスバリア性に優れ、かつ得られたフィルムの巻き取りを容易に行うことができる、ガスバリア性フィルムの開発が望まれる。
上記問題に鑑み、本発明は、ポリビニルアルコールやエチレンビニル共重合体からなるフィルムを基材フィルムとし、高湿度下でもガスバリア性を高く維持しうる、ガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
また本発明は、原反ロールの調製が容易な、ガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの両面に厚さ150〜4000オングストロームの蒸着膜を形成すると基材フィルムの水蒸気の透過を両面から防ぐことで酸素透過度及び水蒸気透過度等のガスバリア性を飛躍的に向上させうること、このような蒸着膜として、プラズマ化学気相成長法(PE−CVD)によって珪素酸化物の蒸着膜を形成すると、蒸着膜が柔軟に調製されるため、基材フィルムの両面に蒸着膜を形成した場合でも、得られたガスバリア性フィルムを柔軟に維持することができ、巻き取りを容易に行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、基材フィルムの両面に珪素含有蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムであって、前記基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、前記蒸着膜の厚さは、150〜4000オングストロームである、ガスバリア性フィルムを提供するものである。
また本発明は、前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールフィルムまたはエチレンビニル共重合体フィルムであり、前記蒸着膜は、プラズマ化学気相成長法によって前記基材フィルムの両面に形成されたものである、上記ガスバリア性フィルムを提供するものである。
また本発明は、前記蒸着膜は、プラズマ化学気相成長法により有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給してなる炭素含有酸化珪素の蒸着膜である、上記ガスバリア性フィルムを提供するものである。
また本発明は、上記ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の蒸着膜に、更にシランカップリング剤と充填剤とを含むプライマー組成物によるプライマー層が形成されていることを特徴とする、ガスバリア性積層フィルムを提供するものである。
また本発明は、前記ガスバリア性積層フィルムの前記プライマー層または前記蒸着膜にプラスチック基材フィルムが、他面にヒートシール層が積層されたガスバリア性包装材を提供するものである。
また本発明は、前記ガスバリア性フィルムの蒸着膜の一面にプラスチック基材フィルムが、他面にヒートシール層が積層されたガスバリア性包装材を提供するものである。
また本発明は、前記プラスチック基材フィルムとヒートシール層とが、ドライラミネート用接着剤を介して積層されることを特徴とする、ガスバリア性包装材を提供するものである。
また本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの両面に、それぞれ厚さ150〜4000オングストロームの蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムを巻き取った原反ロールであって、前記基材フィルムの片面に化学気相成長法によって、有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、ついで他面に化学気相成長法によって有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成してガスバリア性フィルムを得て、このガスバリア性フィルムを巻き取って製造されたことを特徴とする、ガスバリア性フィルムを巻き取った原反ロールを提供するものである。
また本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの両面に、それぞれ厚さ150〜4000オングストロームの蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記基材フィルムの片面に化学気相成長法によって、有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、ついで他面に化学気相成長法によって有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成することを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法を提供するものである。
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの両面に所定厚さの珪素含有蒸着膜を形成することで、片面のみに珪素含有蒸着膜を形成する場合と比較して、水蒸気透過度ならびに酸素透過度を飛躍的に低減することができる。このため、同等のバリア性を得るために層構成を簡素化でき、コスト面、環境面で有利である。
特に、本発明のガスバリア性フィルムは、プラズマ化学気相成長法により有機含有酸珪素酸化物を蒸着モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素を蒸着することにより、ガスバリア性と共に基材フィルムと炭素含有酸化珪素との密着性を確保でき、かつ前記蒸着層に延展性、屈曲性、可撓性等の柔軟性を付与することができる。
本発明のガスバリア性包装材は、前記ガスバリア性フィルムにプラスチック基材フィルムとヒートシール層とを積層することで、前記ガスバリア性フィルムと比較して水蒸気透過度を更に低減することができる。
図1は、本発明のガスバリア性フィルムの層構成を説明する図であり、基材フィルム(10)の両面に炭素含有酸化珪素の蒸着膜(20)を有する態様を示す。 図2は、本発明のガスバリア性積層フィルム(83)の層構成を説明する図であり、基材フィルム(10)の両面に炭素含有酸化珪素の蒸着膜(20)を有し、前記蒸着膜(20)にシランカップリング剤と充填剤とを含むプライマー組成物によるプライマー層(30)が積層される態様を示す。 図3は、本発明のガスバリア性包装材(85)の層構成を説明する図であり、ガスバリア性積層フィルム(83)のプライマー層(30)にドライラミネーション用接着剤層を介してヒートシール層とプラスチック基材フィルムが積層される態様を示す。 図4は、本発明のガスバリア性包装材(85)の層構成を説明する図であり、ガスバリア性フィルム(80)の蒸着膜(20)にドライラミネーション用接着剤層(60)を介してヒートシール層(40)とプラスチック基材フィルム(50)とが積層される態様を示す。 図5は、本発明のガスバリア性包装材(85)の層構成を説明する図であり、ガスバリア性積層フィルム(83)のプライマー層(30)にドライラミネーション用接着剤層(60)を介してヒートシール層(40)とプラスチック基材フィルム(50)とが積層される態様を示す。 図6は、低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。 図7は、複数の成膜室を有する低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。 図8は、ガスバリア性積層フィルムを巻き取った原反ロールをアルミ箔等による防湿包装を行った状態を示す図である。
本発明の第一は、基材フィルムの両面に珪素含有蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムであって、前記基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、前記蒸着膜の厚さは、150〜4000オングストロームである、ガスバリア性フィルムであり、本発明の第二は、上記ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の蒸着膜に、更にシランカップリング剤と充填剤とを含むプライマー組成物によるプライマー層が形成されていることを特徴とする、ガスバリア性積層フィルムであり、本発明の第三は、上記ガスバリア性積層フィルムの前記プライマー層または前記蒸着膜にプラスチック基材フィルムが、他面にヒートシール層が積層されたガスバリア性包装材である。
ポリビニルアルコール系樹脂は、構造中に親水性基を有するため、高湿度下でガス透過速度が増してガスバリア性が低下され易いが、その両面に厚さ150〜4000オングストロームの珪素含有蒸着膜を形成することで、ガスバリア性を著しく向上しうることが判明した。以下、本発明を詳細に説明する。
(1)フィルムの層構成
本発明において、ガスバリア性フィルムとは、基材フィルム(10)の両面に炭素含有酸化珪素の蒸着膜(20)を有するフィルムであり、ガスバリア性積層フィルムとは、前記ガスバリア性フィルム(80)の蒸着膜(20)の少なくともいずれかに、シランカップリング剤と充填剤とを含むプライマー組成物によるプライマー層(30)を積層したフィルムをいい、ガスバリア性包装材(85)とは、ガスバリア性フィルム(80)またはガスバリア性積層フィルム(83)にヒートシール層(40)とプラスチック基材フィルム(50)とが積層された包装材をいう。
すなわち、本発明のガスバリア性フィルム(80)は、図1に示すように、基材フィルム(10)の両面に炭素含有酸化珪素の蒸着膜(20)を有する。更に、図2に示すように、ガスバリア性フィルム(80)は、少なくともいずれかの珪素含有蒸着膜(20)にシランカップリング剤と充填剤とを含むプライマー組成物によるプライマー層(30)を積層して、ガスバリア性積層フィルム(83)とすることができる。図2では、両方の蒸着膜(20)にプライマー層(30)が積層される態様を示す。また、図3に示すように、ガスバリア性積層フィルム(83)にヒートシール層とプラスチック基材フィルムとを積層してガスバリア性包装材(85)とすることができる。また、図4に示すように、ガスバリア性フィルム(80)の蒸着膜(20)にドライラミネーション用接着剤層(60)を介してヒートシール層(40)とプラスチック基材フィルム(50)とを積層して、ガスバリア性包装材(85)としてもよい。更に、図5に示すように、このガスバリア性積層フィルム(83)に、前記ヒートシール層(40)とプラスチック基材フィルム(50)とをドライラミネート用接着剤層(60)を介して接着し、ガスバリア性包装材(85)とすることもできる。
なお、本発明のガスバリア性包装材において、蒸着膜(20)の一方にのみプライマー層(30)が形成される場合には、外層から内層に向かって、プラスチック基材フィルム/プライマー層(30)/蒸着膜(20)/基材フィルム(10)/蒸着膜(20)/ヒートシール層(40)となるように積層しガスバリア性包装材(85)とすることができる。この態様のガスバリア性包装材(85)は、得られた包装材からなる包装容器の内側に乾燥した内容物を収納することで、外部からの水の影響を回避することができる。
一方、プラスチック基材フィルム/蒸着膜(20)/基材フィルム(10)/蒸着膜(20)/プライマー層(30)/ヒートシール層(40)となるように積層しガスバリア性包装材(85)とすることができる。この態様によれば、得られたガスバリア性包装材(85)からなる包装容器の内側に水気の多いものを収納することで、容器内からの水蒸気の放散を防止することができる。
(2)基材フィルム
本発明で使用する基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂である。例えば、ポリビニルアルコールフィルムやエチレンビニル共重合体フィルムがある。これらは、本来ガスバリア性に優れるが、高湿度下でガスバリア性が低下され易い。本発明は、本来ガスバリア性に優れるこれらのフィルムを使用し、高湿度下でも高いガスバリア性を確保できるガスバリア性フィルムの提供を目的とする。
ポリビニルアルコールとしては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコールや、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでもよい。また、水酸基が変性された変性ポリビニルアルコールでもよく、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から、好ましいケン化度は80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものであり、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から、好ましいケン化度は80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下、「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%である。
上記ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。耐水性、耐熱性に優れる点で、延伸フィルムが好ましい。
本発明において、上記の各種の樹脂のフィルムとしては、例えば、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化し、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラー方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸してなるフィルムを使用することができる。
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムの膜厚としては、8〜100μm、より好ましくは、12〜30μmである。
なお、上記の各種の樹脂の1種ないしそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
なお、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムとしては、市販品でもよく、二軸延伸ポリビニルアルコールフィルムとして日本合成化学工業社製の商品名「BOVLON」や2軸延伸エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムとしてクラレ社製の商品名「エバール」がある。
(3)表面処理
本発明では、上記の基材フィルムの一方の面に炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成する際に、予め基材フィルムに表面処理をおこなってもよい。これによって炭素含有酸化珪素の蒸着膜やガス珪素含有蒸着膜またはバリア性塗布膜との密着性を向上させることができる。同様に、蒸着層上に表面処理を行ってもよい。
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
また、本発明で使用する各種フィルムの表面に、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理とすることもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。例えばプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。例えば、後記する化学気相成長法による炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。また、蒸着後にプラズマ処理を行い、密着性を向上させることもできる。本発明では、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
なお、本発明においては、前記基材フィルム以外の他のフィルムの表面にも、炭素含有酸化珪素の蒸着膜、ヒートシール層、印刷層その他の層やフィルムとの密着性を向上させるために、前記いずれかの表面処理をおこなってもよい。
(4)炭素含有酸化珪素の蒸着膜
炭素含有酸化珪素の蒸着膜は、化学気相成長法により有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして使用して行うことが好ましい。化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等を用いることができる。それらの中でも、特に、低温プラズマ化学気相成長法を用いて成膜化して製造することが望ましい。
本発明においては、具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物の1種以上からなる成膜用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、かつ、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができ、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
上記の低温プラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素の蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図6を用いて説明する。
図6のプラズマ化学気相成長装置(100)は、基材フィルム供給室(110)、真空チャンバーからなる第一成膜室(120)および基材フィルムの上に炭素含有酸化珪素層を成膜化したフィルムを巻き取る巻取り室(150)から構成される。前記基材フィルム供給室(110)内に配置された巻き出しロール(111)から基材フィルム(101)を繰り出し、該基材フィルム(101)を、第一成膜室(120)内の補助ロール(121)を介して所定の速度で冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送する。一方、ガス供給装置(125)および、原料揮発供給装置(124)等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して所定組成の蒸着用混合ガス組成物に調整し、これを原料供給ノズル(127)を通して第一成膜室(120)内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送された基材フィルム(101)の上に供給し、グロー放電プラズマ(128)によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等の炭素含有酸化珪素の蒸着膜を成膜化する。次いで、上記で酸化珪素等の炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成した基材フィルム(101)を補助ロール(123)を介して巻取り室(150)に移送し、ここで巻き取りロール(151)に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による炭素含有酸化珪素の蒸着膜を有するフィルムを製造することができる。
なお、冷却・電極ドラム(122)は、第一成膜室(120)の外に配置されている電源(160)から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム(122)の近傍には、マグネット(129)を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、酸化珪素等の炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成することができる。なお、図6中、符号(153)は真空ポンプを表す。
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される炭素含有酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOXCy(ただし、xは0.5〜3.0、yは0.1〜2.5を示す。)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記炭素含有酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOXCy(ただし、Xは、1.3〜1.9、yは0.5〜1.0を示す。)で表される炭素含有酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなり、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
本発明において、炭素含有酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とする。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、炭素含有酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させてもよい。この際、上記の化合物が炭素含有酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。含有率が0.1質量%未満であると、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50質量%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
本発明においては、プラズマにより、基材フィルムの表面が清浄化され、その表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、成膜化される珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。
更に、本発明では、炭素含有酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が炭素含有酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって増減していてもよい。例えば、表面から深さ方向に減少している場合には、これにより、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと炭素含有酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。このような炭素含有酸化珪素の蒸着膜は、1層で構成される場合に限定されず、例えば2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよい。
上記多層からなる蒸着層を成膜するには、複数の真空チャンバーを成膜室として有する化学気相成長装置(100)を使用することで、異なる組成の炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成することができる。図7を使用して、3層の蒸着膜を有する場合を例示する。図7のプラズマ化学気相成長装置(100)は、基材フィルム供給室(110)、第一成膜室(120)、第二成膜室(130)、第三成膜室(140)、および、基材フィルムの上に炭素含有酸化珪素層を成膜化し重層したフィルムを巻き取る巻取り室(150)から構成される。基材フィルム供給室(110)において、巻き出しロール(111)から基材フィルム(101)を第一成膜室(120)に繰り出し、更に、該基材フィルム(101)を、補助ロール(121)を介して所定の速度で冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送する。第一成膜室(120)では、原料揮発供給装置(124)、および、ガス供給装置(125)等から有機珪素化合物の1種以上からなる成膜用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他等を供給し、それらからなる所定組成の成膜用混合ガス組成物に調整しながら、原料供給ノズル(127)を通して第一成膜室(120)内に上記の成膜用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム(122)周面上に搬送された基材フィルム(101)の上に、グロー放電プラズマ(128)によってプラズマを発生させ、これを照射して、珪素酸化物等からなる第1層の炭素含有酸化珪素層を成膜化する。
上記の第一成膜室(120)で第1層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化した基材フィルム(101)を補助ロール(123)、(131)等を介して第二成膜室(130)に繰り出し、次いで、上記と同様に、第1層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化した基材フィルム(101)を所定の速度で冷却・電極ドラム(132)周面上に搬送する。その後、上記と同様に、原料揮発供給装置(134)、および、ガス供給装置(135)等から有機珪素化合物の1種以上からなる成膜用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他等を供給し、それらからなる成膜用混合ガス組成物を調整しながら、原料供給ノズル(137)を通して第二成膜室(130)内に上記の成膜用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム(132)周面上に搬送された第1層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化した基材フィルム(101)の第1層の炭素含有酸化珪素膜の上に、グロー放電プラズマ(138)によってプラズマを発生させ、これを照射して、珪素酸化物等からなる第2層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化する。
更に、上記の第二成膜室(130)で第1層と第2層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化し、重層した基材フィルム(101)を補助ロール(133)、(141)等を介して第三成膜室(140)に繰り出し、次いで、上記と同様に、第1層と第2層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化した基材フィルム(101)を所定の速度で冷却・電極ドラム(142)周面上に搬送する。次いで、原料揮発供給装置(144)、および、ガス供給装置(145)等から有機珪素化合物の1種以上からなる成膜用モノマーガス、酸素ガス、不活性ガス、その他等を供給し、それらからなる成膜用混合ガス組成物を調整しながら、原料供給ノズル(147)を通して、第三成膜室(140)内に上記の成膜用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム(142)周面上に搬送された第1層と第2層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化し、重層した基材フィルム1の第2層の炭素含有酸化珪素膜の上に、グロー放電プラズマ(148)によってプラズマを発生させ、これを照射して、珪素酸化物等からなる第3層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化する。
次いで、上記で第1層、第2層、および、第3層の炭素含有酸化珪素膜を成膜化し、それらを重層した基材フィルム(101)を、補助ロール(143)を介して、巻取り室(150)に繰り出し、次いで、巻取りロール(151)に巻き取る。
なお、各第一、第二、および、第三の成膜室(120)、(130)、(140)に配設されている各冷却・電極ドラム(122)、(132)、(142)は、各第一、第二、および、第三の成膜室(120)、(130)、(140)の外に配置されている電源(160)から所定の電力が印加され、また、各冷却・電極ドラム(122)、(132)、(142)の近傍には、マグネット(129)、(139)、(149)を配置してプラズマの発生が促進されるものである。なお、図示しないが、上記のプラズマ化学気相成長装置には、真空ポンプ等が設けられ、各成膜室等は真空に保持されるように調整し得ることは勿論である。また、上記は、3層で例示したが、成膜室を任意に調製し、4層以上の多層構造とすることができる。
上記において、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが望ましい。また、本発明では、炭素含有酸化珪素の蒸着膜が単層で構成されるか多層で構成されるかに係わらず、酸化珪素等の炭素含有酸化珪素の蒸着膜の形成時の真空度は、各真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrに調整することが好ましい。従来の真空蒸着法により酸化珪素等の炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく成膜プロセスも安定化する。なお、成膜室が複数ある場合には、真空度は、各室において同じであってもよく、異なっていてもよい。
また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分位、好ましくは、50〜200m/分位に調整することが望ましいものである。プラズマ化学気相成長では、上記冷却・電極ドラムには、電源から所定の電圧が印加されているため、成膜室内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、成膜用混合ガス組成物に含まれる1以上のガス成分から導出されるものであり、基材フィルムを上記範囲で一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、前記冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素膜を均一に成膜化することができる。
また、原料である有機珪素化合物、酸素ガス、不活性ガスからなる成膜用混合ガス組成物において、各ガス成分のガス混合比としては、有機珪素化合物の1種からなる成膜用モノマーガスの含有量は、1〜40質量%位、酸素ガスの含有量は、0.1〜70質量%位、不活性ガスの含有量は、1〜60質量%位の範囲として調整することが好ましい。前記蒸着層が多層からなる場合には、各蒸着層において、原料である成膜用モノマーガスと酸素ガス(O2)との比をそれぞれ変化させてもよい。これによって成膜化した炭素含有酸化珪素膜中の炭素量を増減させることができ、該炭素量が増加すると、C−C結合、Si−CH3結合が増加し、柔軟性の高い、かつ、水蒸気に対して高いバリア性を持つ撥水性の炭素含有酸化珪素膜を成膜化可能とすることができる。また、成膜化した炭素含有酸化珪素層中に炭素量の含有が減少すると、Si−CH3結合が少なくなるため柔軟性は劣るが、酸素等に対して高いガスバリア性を保持することができる。
本発明において、上記の炭素含有酸化珪素の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
本発明において、上記炭素含有酸化珪素の各蒸着膜の総膜厚は、50〜4000Åであることが好ましく、より好ましくは150〜2000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
なお、上記した3層からなる多層構造の場合には、第1層を構成する炭素含有酸化珪素膜の膜厚としては、30Å〜2000Å位が望ましく、また、第2層を構成する炭素含有酸化珪素膜の膜厚としては、20Å〜2000Å位、好ましくは、30Å〜1000Å位が望ましく、更に、第3層を構成する炭素含有酸化珪素膜の膜厚としては、20Å〜2000Å位、好ましくは、30Å〜1000Å位が望ましいものである。上記において、20Å以下であると、それ自身のバリア性が発現しないことから好ましくなく、また、2000Åを越えると、膜にクラック等が入りやすく、特に、成膜中に、基材フィルムが巻き取られる間にクラックが入りやすい傾向にあることから好ましくないものである。また、上記において、上記の炭素含有酸化珪素層の膜厚を変更する手段としては、その層の体積速度を大きくすること、すなわち、成膜用モノマーガスと酸素ガスの量を多くする方法や成膜する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
本発明において、酸化珪素等の炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
本発明では、上記基材フィルムの片面に上記方法により蒸着膜を形成し、ついで、再度上記蒸着方法を基材フィルムの他の面に形成してガスバリア性フィルムを製造することができる。
(5)プライマー層
本発明のガスバリア性積層フィルムは、珪素含有蒸着膜の上にさらにプライマー層を有することが好ましい。プライマー膜の積層によって珪素含有蒸着膜とこれに積層する他のフィルムとの接着を強固なものとし、層間剥離を防止することができ、印刷等の外部ストレスの緩和層として作用させることができる。
本発明において、珪素含有蒸着膜の上に積層するプライマー層は、シランカップリング剤と充填剤とを含むプライマー組成物を塗工することで調製することができる。前記プライマー組成物としては、本発明の珪素含有蒸着膜に密着性を示す樹脂を主成分とし、これにシランカップリング剤と充填剤とを配合したものである。このような樹脂としてはポリウレタン系、ポリエステル系又はアクリル系の樹脂が挙げられる。好ましくは、プライマー組成物は、前記樹脂1〜30質量部に対し、シランカップリング剤0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、充填剤0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部を添加し、さらに、必要ならば、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合して調製した樹脂組成物である。
上記プライマー組成物は、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート等により、前述基材の一方の面に設けた珪素含有蒸着膜の上に塗布される。
本発明において、プライマー層の層厚は、例えば0.1〜2.0g/m2(乾燥状態)の範囲が望ましい。
上記プライマー組成物からなるプライマー層は、本発明のガスバリア性積層フィルムを構成する珪素含有蒸着膜の表面と相互作用し、高い層間結合強度を提供する。また、本発明において、該プライマー層を最表面とすることにより、その上に別のフィルムをラミネートしてガスバリア性包装材を調製する場合にも、良好なラミネート強度を得ることができる。また、プライマー層は高い伸長度を有するため、該プライマー層上に別のフィルム等をラミネートして得られるガスバリア性包装材は、優れた耐屈曲性を示すことができる。したがって、長期間にわたり外部ストレスを受ける状態、たとえば後加工時においても、珪素含有蒸着膜のクラックの発生等が防止され、高いガスバリア能が維持される。
(6)ヒートシール層
ヒートシール層(40)としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、ヒートシール層の厚さとしては、15〜130μmである。15μmを下回ると炭素含有酸化珪素の蒸着膜に擦り傷やクラックを発生する場合がある。
(7)プラスチック基材フィルム
本発明で使用しうるプラスチック基材フィルムとしては、機械的、物理的、化学的強度に優れ、特に耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性などに優れる樹脂フィルムを広く使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂などの一種以上を好適に使用することができる。本発明においては、特にポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、を好適に使用することができる。
本発明において、プラスチック基材フィルムは、上記樹脂の未延伸フィルムや一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムなどのいずれのものでも使用することができる。本発明では、特に延伸ナイロンフィルム、2軸延伸プラスチック基材フィルムまたは2軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。
本発明において、プラスチック基材フィルムの厚さは、強度、耐突き刺し性、剛性などが確保できれば特に限定はないが、好ましくは6〜100μm、より好ましくは9〜50μmである。
(8)アンカーコート層
本発明では、ガスバリア性フィルム(80)の蒸着層(20)やガスバリア性積層フィルム(83)の前記蒸着膜(20)またはコーティング膜(30)にヒートシールを押出し形成によって積層することができる。
ヒートシール層(40)を押出し形成する際に、前記プライマー層や蒸着膜の上にアンカーコート剤を介してヒートシール層を形成することが好ましい。使用するアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、前記蒸着膜やプライマー層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、蒸着膜やコーティング膜へのクラックなどの発生を回避することができ、ガスバリア性積層フィルムとヒートシール層との密接着性を向上させ、ラミネート強度を向上させることができる。
本発明においては、アンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥して、本発明にかかるアンカーコート剤によるアンカーコート層を形成することができる。アンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。また、上記アンカーコート剤からなるアンカーコート層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
(9)ラミネート用接着剤
本発明では、ガスバリア性フィルム(80)やガスバリア性積層フィルム(83)にヒートシール層(40)やプラスチック基材フィルム(50)を積層してガスバリア性包装材(85)を調製する際に、ラミネート用接着剤(60)を介してドライラミネート積層法を用いて積層することができる。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、蒸着膜やコーティング膜に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、蒸着膜やコーティング膜へのクラックなどの発生を回避することができる。上記ラミネート用接着剤からなるラミネート接着剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
(10)印刷層
本発明においては、上記ガスバリア性フィルム(80)、ガスバリア性積層フィルム(83)、ガスバリア性包装材(85)を形成するいずれかの層間に所望の印刷模様層を形成することができるものである。
上記の印刷模様層としては、例えば、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
上記インキ組成物について、インキ組成物を構成するビヒクルとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロースなどの繊維素系樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼインなどの天然樹脂、アマニ油、大豆油などの油脂類、その他の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明において、上記のようなビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、染料・顔料などの着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに必要ならば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤などで充分に混練してなる各種の形態からなるインキ組成物を使用することができる。
印刷層は、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を表刷り印刷しても、あるいは裏刷り印刷してもよく、全面印刷でも、部分印刷でもよい。
(11)ガスバリア性フィルムの製造方法
本発明の第四は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの両面に、それぞれ厚さ150〜4000オングストロームの蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記基材フィルムの片面に化学気相成長法によって、有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、ついで他面に化学気相成長法によって有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成することを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法である。
本発明では、前記ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの片面に、上記した化学気相成長法によって、有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、ついで前記ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの他の面に、前記化学気相成長法によって有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成するができる。
本発明では、蒸着膜の厚さを150〜4000オングストロームに調整することで、極めてガスバリア性を向上させることができる。その際、化学気相成長法によって、有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成することで、蒸着膜中にCH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を誘導することができる。これにより、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等を向上させ、曲げなどによる擦り傷、クラック等を防止することができる。特に、プラズマによって基材フィルムの表面が清浄化され、その表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、成膜化される珪素酸化物等からなる炭素含有酸化珪素膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。
この結果、得られたガスバリア性フィルムは、定法に従って巻き取り、原反ロールとすることができる。単にケイ素、一酸化珪素、四窒化三ケイ素などを蒸着源として供給すると、蒸着膜に柔軟性がないため、原反ロールとして巻き取ることが困難であった。しかしながら、上記方法によって蒸着膜を形成することで、150〜4000オングストロームという厚い蒸着膜であっても、原反ロールを形成することができた。なお、得られたガスバリア性フィルムの原反ロール(90)は、図8に示すように、アルミ箔等による防湿包装(95)を行うことが好ましい。
また、このガスバリア性フィルムを使用してガスバリア性包装材を調製する際には、例えば、上記珪素含有蒸着膜の上にプライマー層を形成する工程の後に、アルミ箔などによる防湿包装(95)を行うことで、得られるガスバリア性積層フィルムやガスバリア性包装材のガスバリア性を高く維持することができる。
(12)ガスバリア性包装材
本発明のガスバリア性包装材(85)は、前記ガスバリア性フィルム(80)やガスバリア性積層フィルム(83)にヒートシール層(40)およびプラスチック基材フィルム(50)を積層したものである。なお、ヒートシール層(40)やプラスチック基材フィルム(50)の積層に先立ち、ガスバリア性フィルム(80)の蒸着膜(20)に前記プライマー層が形成されることで、ガスバリア性能をより向上させることができる。
ラミネートする方法としては、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、共押し出しインフレーション法、その他等で行うことができる。
このようなガスバリア性包装材を使用して、包装用容器を製造することができる。例えば、上記包装材を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピロ−シール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明にかかる種々の形態の包装用容器を製造することができる。また、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も製造することが可能であり、更に、本発明においては、上記のガスバリア性包装材を使用してチューブ容器等も製造することができる。
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バ−シール、回転ロ−ルシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、本発明においては、上記のような包装用容器には、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパ−等を任意に取り付けることができる。また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状の紙缶等のいずれのものでも製造することができる。
上記のようにして製造した包装容器は、太陽電池用包装材、種々の飲食品、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、ケミカルカイロ等の雑貨品、その他等の物品の充填包装に使用されるものである。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのポリビニルアルコールの2軸延伸フィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムに、厚さ200Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着膜;コロナ処理面
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:3.0:3.0(単位:slm)
真空チャンバー内の真空度;2〜6×10-6mBar
蒸着チャンバー内の真空度;2〜5×10-3mBar
冷却・電極ドラム供給電力;10kW
ライン速度;100m/min
(2) 上記で膜厚200Åの蒸着膜を形成した直後に、その蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、前記炭素含有酸化珪素の蒸着膜の表面張力を54dyn/cm以上に向上させたプラズマ処理面を形成した。
(3) 前記基材フィルムの他面に上記(1)の条件と同様にして、厚さ200Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、蒸着膜を形成した直後に、その蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の表面張力を54dyn/cm以上に向上させたプラズマ処理面を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(4) 上記(3)で製造したガスバリア性フィルムの蒸着面に、シランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用し、シランカップリング剤1.2質量%、シリカ粉末1.0質量%、ポリウレタン系樹脂13〜15質量%、ニトロセルロース3〜4質量%、トルエン31〜38質量%、メチルエチルケトン(MEK)29〜30質量%、イソプロピールアルコール(IPA)15〜16%からなるプライマー組成物を、グラビアロールコート法を利用してコーティングし、次いで、80℃で20秒間乾燥して、厚さ0.2μmのプライマー層を形成した。
(5) 前記プライマー層を形成した蒸着フィルムの一方に厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを、他面に厚さ30μmのポリエチレンフィルムをそれぞれドライラミネート用接着剤を介して積層し、前記ガスバリア性フィルムの最外層にポリエチレンテレフタレートフィルム、最内層にポリエチレンフィルムとがドライラミネートで積層されたガスバリア性包装材を製造した。なお、上記(1)、上記(3)の蒸着処理の後、および前記プライマー層の形成後は、直ちにフィルムをアルミ箔による防湿包装を行った。
(6) 得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、下記条件で酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。なお、表1、表2において、酸素透過度が0.1以下、水蒸気透過度が0.02以下とは、測定限界値以下であることを意味する。
(i)酸素透過度の測定:
温度23℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、オクストラン(OX−TRAN2/21)〕にて測定した。
(ii)水蒸気透過度の測定:
温度40℃、湿度90%RHの条件で、米国、モコン(MOCON)社製の測定機〔機種名、パ−マトラン(PERMATRAN3/31)〕にて測定した。結果を表1に示す。
(実施例2)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのエチレンビニル共重合体の2軸延伸フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、エチレンビニル共重合体の両面蒸着フィルムであるガスバリア性フィルムを得た。
(2) 実施例1と同様に操作して、前記ガスバリア性フィルムからガスバリア性包装材を製造し、実施例1と同様にして、得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。
(比較例1)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムを用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートの両面蒸着フィルムであるガスバリア性フィルムを得た。
(2) 実施例1と同様に操作して、前記ガスバリア性フィルムからガスバリア性包装材を製造し、実施例1と同様にして得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。
(比較例2)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのポリビニルアルコールの2軸延伸フィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の延伸ポリビニルアルコールフィルムに、厚さ100Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着膜;コロナ処理面
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:3.0:3.0(単位:slm)
真空チャンバー内の真空度;2〜6×10-6mBar
蒸着チャンバー内の真空度;2〜5×10-3mBar
冷却・電極ドラム供給電力;10kW
ライン速度;200m/min
(2) 上記で膜厚100Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成した直後に、その炭素含有酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、炭素含有酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyn/cm以上に向上させたプラズマ処理面を形成した。
(3) 前記基材フィルムの他面に上記(1)の条件と同様にして、厚さ100Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、蒸着膜を形成した直後に、その炭素含有酸化珪素の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、炭素含有酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyn/cm以上に向上させたプラズマ処理面を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(4) 実施例1と同様に操作して、前記ガスバリア性フィルムからガスバリア性包装材を製造し、実施例1と同様にして得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。
(比較例3)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのエチレンビニル共重合体の2軸延伸フィルムを用いた以外は比較例2と同様にして、エチレンビニル共重合体の両面蒸着フィルムであるガスバリア性フィルムを得た。
(2) 実施例1と同様に操作して、前記ガスバリア性フィルムからガスバリア性包装材を製造し、実施例1と同様にして得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。
(比較例4)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのポリビニルアルコールの2軸延伸フィルムを使用し、これをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、下記に示す条件で、上記の延伸ポリビニルアルコールフィルムに、厚さ200Åの炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成した。
(蒸着条件)
蒸着膜;コロナ処理面
導入ガス量;ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:3.0:3.0(単位:slm)
真空チャンバー内の真空度;2〜6×10-6mBar
蒸着チャンバー内の真空度;2〜5×10-3mBar
冷却・電極ドラム供給電力;10kW
ライン速度;100m/min
(2) 上記で膜厚200Åの蒸着膜を形成した直後に、その蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、酸化珪素の蒸着膜面の表面張力を54dyn/cm以上に向上させたプラズマ処理面を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(3) 実施例1と同様に操作して、前記ガスバリア性フィルムからガスバリア性包装材を製造し、実施例1と同様にして得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。
(比較例5)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのエチレンビニル共重合体の2軸延伸フィルムを用いた以外は比較例4と同様にして、エチレンビニル共重合体の蒸着フィルムからなるガスバリア性フィルムを得た。
(2) 実施例1と同様に操作して、前記ガスバリア性フィルムからガスバリア性包装材を製造し、実施例1と同様にして得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。
(比較例6)
(1) 基材フィルムとして両面にコロナ処理面を有する厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートの2軸延伸フィルムを用いた以外は比較例4と同様にして、ポリエチレンテレフタレートの蒸着フィルムからなるガスバリア性フィルムを得た。
(2) 実施例1と同様に操作して、前記ガスバリア性フィルムからガスバリア性包装材を製造し、実施例1と同様にして得られたガスバリア性フィルムおよびガスバリア性包装材について、酸素透過度と水蒸気透過度とを測定した。結果を表1、表2に示す。
Figure 2010221595
Figure 2010221595
本発明によるガスバリア性フィルムは、高湿度条件下でもガスバリア性に優れ、かつ柔軟性に優れ、原反ロールを調製し、これを防湿包装することで保存することができる。
10・・・基材フィルム、
20・・・蒸着膜、
40・・・ヒートシール層、
50・・・プラスチック基材フィルム、
60・・・ラミネート用接着剤層、
70・・・ヒートシール層、
80・・・ガスバリア性フィルム、
83・・・ガスバリア性積層フィルム、
85・・・ガスバリア性包装材、
100・・・プラズマ化学気相成長装置、
101・・・基材フィルム、
110・・・基材フィルム供給室、
111・・・巻き出しロール、
120・・・第一成膜室、
121、123、131、133、141、143・・・補助ロール、
122、132、142・・・冷却・電極ドラム、
124、134、144・・・原料揮発供給装置、
125、135、145・・・ガス供給装置、
127、137、147・・・原料供給ノズル
128、138、148・・・グロー放電プラズマ、
129、139、149・・・マグネット、
130・・・第二成膜室、
140・・・第三成膜室、
150・・・巻取り室、
153・・・真空ポンプ、
160・・・電源。

Claims (9)

  1. 基材フィルムの両面に珪素含有蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムであって、
    前記基材フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、
    前記蒸着膜の厚さは、150〜4000オングストロームである、ガスバリア性フィルム。
  2. 前記ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコールフィルムまたはエチレンビニル共重合体フィルムであり、
    前記蒸着膜は、プラズマ化学気相成長法によって前記基材フィルムの両面に形成されたものである、請求項1記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記蒸着膜は、プラズマ化学気相成長法により有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給してなる炭素含有酸化珪素の蒸着膜である、請求項2記載のガスバリア性フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの少なくとも一方の蒸着膜に、更にシランカップリング剤と充填剤とを含むプライマー組成物によるプライマー層が形成されていることを特徴とする、ガスバリア性積層フィルム。
  5. 請求項4記載のガスバリア性積層フィルムの前記プライマー層または前記蒸着膜にプラスチック基材フィルムが、他面にヒートシール層が積層されたガスバリア性包装材。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの蒸着膜の一面にプラスチック基材フィルムが、他面にヒートシール層が積層されたガスバリア性包装材。
  7. 前記プラスチック基材フィルムとヒートシール層とが、ドライラミネート用接着剤を介して積層されることを特徴とする、請求項5または6記載のガスバリア性包装材。
  8. ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの両面に、それぞれ厚さ150〜4000オングストロームの蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムを巻き取った原反ロールであって、
    前記基材フィルムの片面に化学気相成長法によって、有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、ついで他面に化学気相成長法によって有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成してガスバリア性フィルムを得て、このガスバリア性フィルムを巻き取って製造されたことを特徴とする、ガスバリア性フィルムを巻き取った原反ロール。
  9. ポリビニルアルコール系樹脂からなる基材フィルムの両面に、それぞれ厚さ150〜4000オングストロームの蒸着膜が積層されたガスバリア性フィルムの製造方法であって、
    前記基材フィルムの片面に化学気相成長法によって、有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成し、ついで他面に化学気相成長法によって有機珪素化合物を蒸着用モノマーとして供給して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成することを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法。
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