JP2010285688A - Al合金及びAl合金導電線 - Google Patents
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Abstract
【課題】可撓性、加工性を備え、高導電で、引張強さと伸びが両立するAl合金導電線を提供することを目的とする。
【解決手段】Si:0.15〜0.4質量%、Fe:0.6〜2.4質量%、Cu:0.06〜0.2質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするAl合金で形成したAl合金導電線。
【選択図】なし
【解決手段】Si:0.15〜0.4質量%、Fe:0.6〜2.4質量%、Cu:0.06〜0.2質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするAl合金で形成したAl合金導電線。
【選択図】なし
Description
本発明は、ワイヤハーネスやバッテリーケーブル等の導電体に好適に用いられるAl合金導電線に関する。
従来、導電線にはCuが用いられてきたが、近年、導電線の軽量化、コストダウンのために、Cuの代替として、純Al或いはAl合金が提案されており、純Al或いはAl合金で高強度、高導電の導電線が求められるため、JISの1000系又は6000系のAl合金が用いられている。
ここで、導電線として使用するため、Al合金導電線には、可撓性、加工性が必要であり、高導電で、引張強さと伸びの両立が必要である。
しかし、JISの1000系又は6000系のAl合金を使用した導電線では、導電率は満たすことが出来る場合があるが、引張強さと伸びの両立は困難であった。
そこで、JISの6000系のAl合金の改善が提案され(特許文献1、2参照)、又、JISの1000系の強度と伸びを改善した合金として、JISの8000系のAl合金、例えばJISの8021や8079がある。
しかし、上記特許文献に記載されている改善した6000系のAl合金或いは上記8000系のAl合金を使用した導電線でも、引張強さと伸びの両立は困難であった。
そこで、本発明は、導電線を形成するためのAl合金であって、そのAl合金で形成される導電線が、可撓性、加工性を備え、高導電で、引張強さと伸びが両立するAl合金を提供すること、当該Al合金を使用した導電線、導電体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、Si:0.15〜0.4質量%、Fe:0.6〜2.4質量%、Cu:0.06〜0.2質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするAl合金である。
又、上記のAl合金で形成されたことを特徴とするAl合金導電線である。このAl合金導電線は、JIS T5、JIS T6、JIS T8又はJIS T10のうち何れかの調質処理を行い形成されることが好ましい。
更に、上記のAl合金導電線を用いて形成したことを特徴とする導電体であり、導電体としてワイヤハーネスやバッテリーケーブル等が含まれる。
以上のような本発明によれば、Al合金を使用した導電線において、可撓性、加工性を備え、高導電で、引張強さと伸びが両立するAl合金及びAl合金導電線を提供することが可能となった。又、Al合金を使用した導電線において、可撓性、加工性を備え、高導電で、引張強さと伸びが両立するAl合金導電体を提供することが可能となった。
以下本発明の実施の形態を説明する。本発明のAl合金は、Si(珪素):0.15〜0.4質量%、Fe(鉄):0.6〜2.4質量%、Cu(銅):0.06〜0.2質量%を含み、残部がAl(アルミニウム)及び不可避的不純物からなる。本発明のAl合金は、様々な用途に使用することが出来るが、特に導電線用として、好適に用いることが出来る。
本発明のAl合金は、Siを0.15〜0.4質量%含有する。Siの含有量を0.15〜0.4質量%とするのは、Siの含有量が0.15質量%より少ないと、引張強度と伸びの両立が出来ず、0.4質量%より多いと、導電率が低下するからである。
本発明のAl合金は、Feを0.6〜2.4質量%含有する。Feの含有量を0.6〜2.4質量%とするのは、Feの含有量が0.6質量%より少ないと、引張強度と伸びの両立が出来ず、2.4質量%より多いと、導電率が低下するからである。
又、本発明のAl合金は、Cuを0.06〜0.2質量%含有する。Cuの含有量を0.06〜0.2質量%とするのは、Cuの含有量が0.06質量%より少ないと、引張強度と伸びの両立が出来ず、0.2質量%より多いと、導電線への加工時に、割れや断線が発生する虞があるからである。
又、残部はAl及び不可避的不純物が含有されている。Alは、導電線の導電率を良好にするために高い純度が望ましく、純度99.95%以上が好ましい。又、不可避的不純物は、導電性を低下させる原因となるので、その含有量は出来るだけ少なくすることが好ましい。
次に、本発明のAl合金導電線の、上述のような本発明のAl合金を用いた製造について説明する。先ず、上述のような範囲の組成のSi、Fe、Cu及びAlを溶解し、連続鋳造機にて鋳造して、キャストバーを作製する。そして、キャストバーを熱間圧延してワイヤロッドを作製する。通常は連続鋳造機に熱間圧延機がタンデムに接続されている。このワイヤロッドの線径は特に限定されないが、9.0〜10.0mm程度とすることが出来る。
このワイヤロッドを冷間伸線加工し、線径を5.0〜6.0mm程度まで伸線し、次いで溶体化処理を行う。この溶体化処理は、添加元素を均質に固溶させるために行うもので、500〜580℃で行うことが好ましい。500℃より低い温度で溶体化処理を行うと、添加元素の均質化が不充分となる場合があり、580℃より高いと、線が部分的に溶解してしまう虞があるからである。尚、好ましい処理時間としては、550℃で行う場合には、2時間30分〜3時間30分、より好ましくは3時間である。この溶体化処理の後、水冷等により、線を冷却してもよいが、冷却しなくてもよい。
次に、更に冷間伸線加工を行い、所望の線径の素線を作製する。素線の線径としては、通常、0.3〜0.4mm程度である。
そして、時効硬化処理を行う。この時効硬化処理は、過剰に固溶した添加元素を微細に析出させる処理である。この時効硬化処理は、200〜250℃で行うことが好ましい。200℃より低い温度で時効硬化処理を行うと、析出が不充分であり、250℃より高い温度で時効硬化処理を行うと、粗大粒子が析出してしまうからである。尚、好ましい時効硬化処理時間としては、2時間30分〜3時間30分、より好ましくは3時間である。
尚、Al合金導電線の製造工程は、上述の方法に限定されず、圧延加工でもよいが、押出加工でもよく、又、伸線加工は、冷間加工でなくてもよい等、公知の他の方法を採用することが出来、特に調質処理としてもその処理方法は特に限定されないが、引張強度と伸び更には導電率をより高めるために、溶体化処理後に冷間加工を行い、更に人工時効硬化処理を施す方法(JIS T8)、溶体化処理後に冷間加工を行わずに人工時効硬化処理を施す方法(JIS T6)、高温加工から冷却後冷間加工を行い、更に人工時効硬化処理を施す方法(JIS T10)、高温加工から冷却後に冷間加工を行わずに人工時効硬化処理を施す方法(JIS T5)が好ましい。
このように作製された導電線は、例えば、複数本撚り合わせて撚線としたり、複数本の撚線を更に寄り合わせた撚線としたり、これらの撚線を円形に圧縮した圧縮導体として使用することが出来、これらの撚線や圧縮導体に、合成樹脂を被覆する等の加工が施され、ワイヤハーネスやバッテリーケーブル等の導電体を形成することが出来る。
Si、Fe、Cu及びAlを表1の組成で溶解し、鋳造して、線径25mmのキャストバーを作製し、キャストバーを圧延して線径9.5mmのワイヤロッドを作製し、このワイヤロッドを冷間伸線加工し、線径を5.5mmまで伸線し、550℃で3時間溶体化処理を行い、この溶体化処理の後、水冷により、線を冷却し、更に0.33mmまで冷間伸線加工を行った。このAl合金線を200〜250℃で3時間焼きなましをして、時効硬化処理を施した。
このようにして作製したAl合金導電線の特性評価として、JISC3002に準拠して、20℃での引張試験と、20℃での導電率測定を行なった。結果を表1に示す。判定は、引張強さが140MPa以上、伸びが10%以上、導電率が55%IACS以上の総てを満たすものを合格(表中「○」で示す。)とし、1つでも満たさないものは不合格(表中「×」で示す。)とした。ここで、引張強さを140MPa以上で合格としたのは、軟銅線と同等の引張強さ(約210MPa)を断面積1.5倍のAl合金線で実現するための引張強さは、210MPa×2/3=140MPaであるからである。尚、断面積を1.5倍にしても、アルミニウムの密度は2.7g/cm3、銅の密度は8.9g/cm3なので、軽量化が可能である。
本発明のAl合金導電線は、実施例1〜14に示すように、引張強さが140MPa以上、伸びが10%以上、導電率が55%IACS以上の総てを満たし、判定は、合格であった。一方、本発明の条件を満たさないAl合金導電線は、比較例1〜16に示すように、引張強さ、伸び、或いは導電率のいずれかが目標値に達せず、或いは加工時に割れが発生し、判定は、不合格であった。又、比較例では、時効硬化処理の温度が高いと伸びは向上するが、引張強さが低下し、時効硬化処理の温度が低いと引張強さは向上するが、伸びが低下してしまうが、実施例では、時効硬化処理の温度に関係なく、引張強さと伸びが目標値に達している。尚、比較例1及び2のAl合金は、JIS1100であり、比較例3及び4のAl合金は、JIS8021であり、比較例5及び6のAl合金は、JIS8079である。
本発明のAl合金は、導電線の軽量化、コストダウンを図れ、更に、可撓性、加工性を備え、高導電で、引張強さと伸びが両立するので、導電線に好適に使用でき、更に、本発明のAl合金で形成されたAl合金導電線は、ワイヤハーネスやバッテリーケーブル等の導電体に好適に用いることが出来る。
Claims (4)
- Si:0.15〜0.4質量%、Fe:0.6〜2.4質量%、Cu:0.06〜0.2質量%を含み、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とするAl合金。
- 請求項1に記載のAl合金で形成されたことを特徴とするAl合金導電線。
- JIS T5、JIS T6、JIS T8又はJIS T10のうち何れかの調質処理を行い形成されたことを特徴とする請求項2に記載のAl合金導電線。
- 請求項2又は3に記載のAl合金導電線を用いて形成したことを特徴とする導電体。
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