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JP2010254006A - 車両のステアリング装置 - Google Patents

車両のステアリング装置 Download PDF

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JP2010254006A JP2009103716A JP2009103716A JP2010254006A JP 2010254006 A JP2010254006 A JP 2010254006A JP 2009103716 A JP2009103716 A JP 2009103716A JP 2009103716 A JP2009103716 A JP 2009103716A JP 2010254006 A JP2010254006 A JP 2010254006A
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electric motor
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JP2009103716A
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Masaharu Yamashita
正治 山下
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Toyota Motor Corp
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】 舵角比可変装置VGRSにより舵角比が大きく設定される場合に、電動パワーステアリング装置EPSの電動モータ31の追従性を確保するために車両電源電圧を昇圧してモータ駆動回路50に電源供給するものにおいて、操舵フィーリングを悪化させないように、昇圧回路60の過熱を防止する。
【解決手段】 昇圧回路60からモータ駆動回路50への電源供給路に副電源70を並列に接続し、副電源70に充電した電気エネルギーを使ってモータ駆動回路50への電源供給を補助する。昇圧温度センサ66により検出した昇圧回路温度の上昇にしたがって、副電源70からモータ駆動回路50への電源供給割合が増加するようにスイッチング素子74のデューティ比を調整する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、舵角比を可変する舵角比可変装置と、操舵アシストトルクを出力する電動パワーステアリング装置とを備えたステアリング装置に関する。
従来から、操舵ハンドルの操舵角に対する操舵輪の転舵角の比である舵角比を可変する舵角比可変装置と、運転者のハンドル回動操作を補助する操舵アシストトルクを出力する電動パワーステアリング装置とを備えたステアリング装置が知られている。舵角比可変装置は、操舵ハンドルを上端に固定した入力操舵軸と、ラックバーに噛合するピニオンギヤを下端に固定した出力操舵軸との間に設けられ、入力操舵軸の回転角度に対する出力操舵軸の回転角度を連続的に変更できるものである。尚、舵角比は、入力操舵軸の回転した角度aに対する操舵輪の転舵した角度bの比(b/a)を意味し、舵角比が大きいほど少ないハンドル操作で大きく操舵輪を転舵でき、舵角比が小さいほど操舵輪を転舵するのに大きなハンドル操作を必要とする。操舵輪の転舵角は、出力操舵軸の回転角度から一義的に決まるため、入力操舵軸の回転角度に対する出力操舵軸の回転角度の比を制御することにより舵角比を制御することができる。
こうした舵角比可変装置が装着されたステアリング装置においては、大きな舵角比を設定することにより、少ない操舵ハンドルの回転操作で操舵輪を大きく転舵することができるが、その場合、出力操舵軸の回転速度が速くなるため、電動パワーステアリング装置内の電動モータの追従性が悪くなる。そこで、特許文献1のステアリング装置においては、電動パワーステアリング装置のモータ駆動回路に供給する電源電圧を昇圧する昇圧回路を備え、舵角比が大きく設定されているときには昇圧電圧を高くするように制御している。また、昇圧回路の温度を検出し、検出温度が所定温度を超える場合には、舵角比を小さくするように変更する。
特開2006−205895号公報
しかしながら、特許文献1のステアリング装置では、昇圧回路の温度が所定温度を超える場合に舵角比を小さくするため操舵フィーリングが悪化してしまう。
本発明の目的は、上記問題に対処するためになされたもので、操舵フィーリングを悪化させないように、昇圧回路の過熱を防止することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、運転者による操舵ハンドルの回動操作を電動モータの駆動によりアシストする電動パワーステアリング装置と、前記電動モータと前記操舵ハンドルとの間に設けられ、前記操舵ハンドルの操舵角に対する操舵輪の転舵角の比である舵角比を可変する舵角比可変装置とを備えた車両のステアリング装置において、
前記電動パワーステアリング装置は、車両電源から前記電動モータの駆動回路への電源供給路に設けられ、前記車両電源の出力電圧を昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路に対して、前記電動モータの駆動回路と並列に接続されて前記昇圧回路の出力により充電されるとともに、充電された電気エネルギーを使って前記電動モータの駆動回路への電源供給を補助する副電源と、前記舵角比可変装置により可変される舵角比が大きくなるにしたがって前記昇圧回路の昇圧電圧を上昇させる昇圧制御手段と、前記昇圧回路の温度を検出する温度検出手段と、前記昇圧回路から前記電動モータの駆動回路へ供給される電源供給量と、前記副電源から前記電動モータの駆動回路へ供給される電源供給量との比を、前記昇圧回路の温度が高くなるにしたがって、前記副電源から前記電動モータの駆動回路へ供給する電源供給量の割合が増加するように変更する電源供給比制御手段とを備えたことにある。
本発明においては、電動パワーステアリング装置と舵角比可変装置とを備えるが、特に、電動パワーステアリング装置に特徴的な構成を備えている。電動パワーステアリング装置は、昇圧回路により車両電源の出力電圧を昇圧し、昇圧した電源を電動モータの駆動回路(以下、モータ駆動回路と呼ぶ)に供給する。この昇圧回路からモータ駆動回路への電源供給路には、副電源がモータ駆動回路と並列に接続されている。従って、副電源は昇圧回路の出力により充電されるとともに、充電された電気エネルギーを使ってモータ駆動回路への電源供給を補助する。
舵角比可変装置により舵角比が大きく設定された場合、ステアリング機構の操舵出力軸が高速回転するため、電動モータの追従性が悪いと運転者に対してハンドル操作に引っ掛かり感を与えてしまう。従って、電動モータを高速回転できるようにする必要がある。そこで、昇圧制御手段は、舵角比可変装置により可変される舵角比が大きくなるにしたがって昇圧回路の昇圧電圧を上昇させる。これにより電動モータを高速回転させることができる。
昇圧回路の昇圧電圧を上昇させた場合、昇圧回路の温度上昇が懸念される。そこで、本発明においては、昇圧回路の温度を検出する温度検出手段と、電源供給比制御手段とを備えている。電源供給比制御手段は、昇圧回路と副電源とにおけるモータ駆動回路への電源供給量の比を、昇圧回路の温度が高くなるにしたがって副電源からモータ駆動回路へ供給する電源供給量の割合が増加するように変更する。例えば、副電源のモータ駆動回路への放電路にスイッチング素子を設け、昇圧回路の温度が高くなるにしたがって、このスイッチング素子のデューティ比を増加させて電源供給比を制御することができる。
従って、昇圧回路の温度が高くなると、昇圧回路の電源供給負担が軽くなり、昇圧回路の発熱量が低下する。これにより、舵角比可変装置により舵角比が大きく設定された場合であっても、電動モータの追従性維持と昇圧回路の過熱防止とを両立させることができ、舵角比可変装置により舵角比を小さくする必要がなくなる。このため、操舵フィーリングの悪化も招かない。
本発明の他の特徴は、前記昇圧制御手段は、更に、前記昇圧回路の温度が高くなるにしたがって、前記昇圧回路の昇圧電圧の上昇幅を小さくすることにある。
本発明においては、昇圧制御手段が、舵角比可変装置により可変される舵角比が大きくなるにしたがって昇圧回路の昇圧電圧を上昇させるが、その電圧上昇幅を、昇圧回路の温度が高くなるにしたがって小さくするため、適切な昇圧電圧に設定することができる。このため、電動モータの追従性維持と昇圧回路の過熱防止とのバランスを一層良好にすることができる。
本発明の他の特徴は、前記操舵ハンドルの操舵速度を検出する操舵速度検出手段を備え、前記昇圧制御手段は、前記検出された操舵速度が基準速度よりも高い操舵状態となる頻度が高くなるにしたがって、前記昇圧回路の昇圧電圧の上昇幅を小さくすることにある。
運転者の感覚として、操舵開始当初においては電動モータの追従性が悪いとハンドル操作の引っ掛かりを感じるが、連続して速い操舵操作を行っている場合には、操舵開始から少し時間がたつとハンドル操作に引っ掛かりを感じにくくなる。そこで、本発明においては、操舵速度を検出し、検出した操舵速度が基準速度よりも高い操舵状態となる頻度が高くなるにしたがって、昇圧回路の昇圧電圧の上昇幅を小さくする。従って、大きな舵角比が設定されている場合であっても、操舵操作開始時においては、昇圧電圧の上昇幅が大きく設定されるため、電動モータを高速回転させてハンドル操作に引っ掛かり感を与えない。また、稀ではあるが、連続して速い操舵操作が続くことも考えられる。そうした場合には、昇圧電圧の上昇幅が小さく設定されるため、昇圧回路の過熱を防止できる。この場合、電動モータの追従性が低下するものの、運転者にとってハンドル操作に引っ掛かりを感じにくい。
本発明の他の特徴は、前記電動モータの駆動回路は、スイッチング素子のデューティ比を調整することにより前記電動モータの通電量を制御するものであり、前記昇圧制御手段は、前記スイッチング素子のデューティ比が小さくなるにしたがって、前記昇圧回路の昇圧電圧を低くする側に補正することにある。
本発明においては、モータ駆動回路に設けられたスイッチング素子のデューティ比を調整して電動モータの通電量を制御する。例えば、モータ駆動回路として3相インバータ回路やHブリッジ回路を使用することができる。電動モータが通電制御されているとき、モータ駆動回路のスイッチング素子のデューティ比(オンデューティ比)が小さい場合には、電動モータで大出力を必要としていない。そうした場合には、昇圧回路の昇圧電圧を高くしておく必要はない。そこで、本発明においては、昇圧制御手段が、スイッチング素子のデューティ比が小さくなるにしたがって昇圧電圧を低くする側に補正する。このため、電動モータの駆動状況に応じた適正な昇圧電圧が設定され、電動モータの適正駆動と昇圧回路の過熱防止とを良好に両立させることができる。
本発明の他の特徴は、前記昇圧制御手段は、前記スイッチング素子のデューティ比が増加側に変化した場合、その増加度合いが大きいほど前記昇圧回路の昇圧電圧を高くする側に補正することにある。
本発明においては、電動モータの駆動状況の急激な変化(出力増大側への急激な変化)に対して昇圧電圧を追従させることができる。この結果、電動モータを応答性よく駆動することができ、急激な操舵操作に対しても良好な操舵フィーリングが得られる。
本発明の実施形態に係る車両のステアリング装置の概略構成図である。 電動パワーステアリング装置の電源供給系統を表す概略構成図である。 操舵アシスト制御ルーチンを表すフローチャートである。 アシストトルクマップを表すグラフである。 電源供給制御ルーチンを表すフローチャートである。 基本昇圧電圧設定ルーチンを表すフローチャートである。 目標昇圧電圧設定ルーチンを表すフローチャートである。 昇圧増加係数マップを表すグラフである。 昇圧調整係数マップを表すグラフである。 目標昇圧電圧算出マップを表すグラフである。 副電源供給割合制御ルーチンを表すフローチャートである。 副電源供給割合マップを表すグラフである。 モータ駆動回路に供給される電源供給量の推移を表すグラフである。 第1変形例の目標昇圧電圧設定ルーチンの変形部分を表すフローチャートである。 補正電圧設定マップを表すグラフである。 第2変形例の目標昇圧電圧設定ルーチンの変形部分を表すフローチャートである。 第2補正電圧設定マップを表すグラフである。 車速−係数マップを表すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る車両のステアリング装置について図面を用いて説明する。図1は、実施形態として車両のステアリング装置の概略構成を表している。
車両のステアリング装置は、運転者によって回動操作される操舵ハンドル11を操舵軸12に固定して備えている。操舵軸12は、操舵ハンドル11を上端に固定する操舵軸12a(以下、入力操舵軸12aと呼ぶ)と、ピニオンギヤ13を下端に固定する操舵軸12b(以下、出力操舵軸12bと呼ぶ)とに、上下に2分割されている。ピニオンギヤ13は、ラックバー14のラック歯が噛み合っている。ラックバー14は、左右方向(車幅方向)に延設され、その両端が、図示しないタイロッドを介して操舵輪としての左右前輪15a,15bのナックルと操舵可能に連結されている。従って、操舵ハンドル11の回動は、操舵軸12およびピニオンギヤ13を介してラックバー14に伝達されて、ラックバー14を軸線方向に変位させて、左右前輪15a,15bを操舵する。このような操舵軸12、ピニオンギヤ13、ラックバー14等によりステアリング機構が構成されている。
2分割された操舵軸12の入力操舵軸12aと出力操舵軸12bとの間には、操舵ハンドル11の操舵角に対する前輪(操舵輪)15a,15bの転舵角の比である舵角比を変更する舵角比可変機構20が介装されている。舵角比可変機構20は、入力操舵軸12aの下端部に一体回転するように接続された円筒状のケーシング21を備えている。このケーシング21内には、電動モータ22が固定されている。電動モータ22の出力軸22aは、ケーシング21に回転可能に支持されていて、下端にて出力操舵軸12bに一体回転可能に接続されている。電動モータ22は、減速機構を内蔵していて、電動モータ22の回転は減速されて出力軸22aに出力される。
電動モータ22には、相対角センサ18が設けられる。相対角センサ18は、電動モータ22の出力軸22aに組み付けられていて、出力操舵軸12bのケーシング21に対する回転角に応じた検出信号を出力する。この相対角センサ18により検出される回転角の値を、以下、相対角Δθvと呼ぶ。従って、出力操舵軸12bの回転角は、入力操舵軸12aの回転角と相対角Δθvとの和となる。
ラックバー14には、操舵アシストトルクを出力して運転者の操舵ハンドルの回動操作を補助するパワーアシスト機構30が設けられている。パワーアシスト機構30は、電動モータ31とボールねじ機構32とを備えている。電動モータ31の回転は、ボールねじ機構32によってラックバー14の軸線方向の運動に変換されてラックバー14に伝達され、左右前輪15a,15bに転舵力を付与して運転者の操舵操作をアシストする。
電動モータ31としては、3相ブラシレスモータが使用される。電動モータ31には、回転制御に必要な回転角センサ33が設けられる。この回転角センサ33は、電動モータ31内に組み込まれ、電動モータ31の回転子の回転角度位置に応じた検出信号を出力する。この回転角センサ33により検出される回転角の値を、以下、モータ回転角θmと呼ぶ。モータ回転角θmは、電動モータ31の回転制御に必要な電気角θeの計算に利用される。
また、ステアリング機構内には、操舵角センサ16、操舵トルクセンサ17が組み付けられている。操舵角センサ16は、入力操舵軸12aに組み付けられていて、操舵ハンドル11の中立位置からの回転角、すなわち、操舵角に応じた検出信号を出力する。この操舵角センサ16により検出される回転角の値を、以下、操舵角θinと呼ぶ。操舵トルクセンサ17は、出力操舵軸12bに組み付けられており、出力操舵軸12bに作用するトルク、すなわち、左右前輪15a,15bの操舵に伴う操舵トルクを表す検出信号を出力する。この操舵トルクセンサ17により検出される操舵トルクの値を操舵トルクTrと呼ぶ。尚、操舵角θin、操舵トルクTrおよび相対角Δθvは、正の値により右方向の角度およびトルクを表し、負の値により左方向の角度およびトルクを表すものとする。
舵角比可変機構20の電動モータ22は、舵角比電子制御ユニット200(以下、舵角比ECU200と呼ぶ)によって駆動制御される。舵角比ECU200は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として備えたマイコン部210と、モータ駆動回路220とから構成される。マイコン部210は、図示しない入力インタフェースを介して操舵角センサ16、相対角センサ18、車速を検出する車速センサ19を接続し、操舵角θinを表す信号、相対角Δθvを表す信号、車速Vを表す信号を入力する。また、モータ駆動回路220は、Hブリッジ回路や3相インバータ回路であって、マイコン部210から出力されるPWM制御信号により内部のスイッチング素子のデューティ比が制御されて、電動モータ22の通電量および回転方向を調整する。
舵角比可変装置VGRSは、舵角比可変機構20と舵角比ECU200と上述のセンサ類(操舵角センサ16、相対角センサ18、車速センサ19)とにより構成される。舵角比可変装置VGRSにより調整される舵角比は、入力操舵軸12aの回転した角度aに対する前輪15a,15bの転舵した角度bの比(b/a)を意味し、舵角比が大きいほど少ないハンドル操作で大きく前輪を転舵でき、舵角比が小さいほど前輪を転舵するのに大きなハンドル操作を必要とする。前輪15a,15bの転舵角は、出力操舵軸12bの回転角度θoutから一義的に決まるため、入力操舵軸12aの回転角度(操舵角θin)に対する出力操舵軸12bの回転角度θoutの比(θout/θin)を制御することにより舵角比を制御することができる。また、出力操舵軸12bの回転角度θoutは、操舵角θinと相対角Δθvとの和に等しい。従って、舵角比ECU200による電動モータ22の回転角制御により舵角比を目標値に制御することができる。
マイコン部210は、入力した操舵角θinおよび車速Vを用いて、下記式の演算の実行により目標相対角Δθv*を計算する。なお、下記式中の係数Kcは予め決められた定数である。係数Kvは、マイコン部210のROM内に設けられた車速−係数マップ(図18参照)を参照することにより、車速Vが増加するにしたがって「1.0」より大きな所定値から「1.0」に徐々に減少する値に決定される。
Δθv*=Kc・(Kv−1)・θin
マイコン部210は、算出した目標相対角Δθv*と、相対角センサ18から入力した実際の相対角Δθvとの偏差(Δθv*−Δθv)を演算し、偏差(Δθv*−Δθv)に応じたフィードバック制御信号(PWM制御信号)をモータ駆動回路220に出力する。モータ駆動回路220は、マイコン部210から出力されたPWM制御信号により内部のスイッチング素子のデューティ比を調整して電動モータ22を駆動し、出力操舵軸12bを目標相対角Δθv*まで回転させる。
この状態では、操舵角(すなわち、操舵軸12aの基準回転位置からの回転角)がθinであれば、出力操舵軸12bの回転角は(θin+Δθv*)となり、左右前輪15a,15bはこの回転角(θin+Δθv*)に比例した切れ角だけ操舵される。従って、車速Vが小さいほど操舵ハンドル11の回転に対して左右前輪15a,15bは大きく操舵される。つまり、車速Vが小さくなるにしたがって舵角比が大きくなり、低速走行時における車両の小回り性能が良好になる。また、高速走行時における車両の走行安定性が良好になる。
パワーアシスト機構30の電動モータ31は、操舵アシスト電子制御ユニット100(以下、操舵アシストECU100と呼ぶ)によって駆動制御される。操舵アシストECU100は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータを主要部として備えたマイコン部40と、3相インバータ回路からなるモータ駆動回路50と、車両電源電圧を昇圧する昇圧回路60と、副電源70とを備えている。マイコン部40は、舵角比ECU200のマイコン部210と通信可能に接続されている。電動パワーステアリング装置EPSは、操舵アシストECU100と、パワーアシスト機構30と、上述のセンサ類(操舵角センサ16、操舵トルクセンサ17、回転角センサ33)とにより構成される。
ここで操舵アシストECU100における電源供給系統について図2を用いて説明する。電動パワーステアリング装置EPSは、車両電源80から電源供給される。この車両電源80は、舵角比可変装置VGRSを含む他の車載電気負荷への電源供給をも共通して行う電源装置であり、定格出力電圧12Vの一般的な車載バッテリである主バッテリ81と、エンジンの回転により発電する定格出力電圧14Vのオルタネータ82とを並列接続して構成される。従って、車両電源80は、14V系の電源装置を構成している。
車両電源80のプラス端子には、電源供給元ライン83が接続され、グランド端子には接地ライン91が接続される。電源供給元ライン83は、制御系電源ライン84と駆動系電源ライン85とに分岐する。制御系電源ライン84は、マイコン部40のみに電源供給するための電源ラインとして機能する。駆動系電源ライン85は、モータ駆動回路50とマイコン部40との両方に電源供給する電源ラインとして機能する。
制御系電源ライン84には、イグニッションスイッチ86が接続される。駆動系電源ライン85には、電源リレー87が接続される。この電源リレー87は、マイコン部40のアシスト制御部41(後述する)からの制御信号によりオンして電動モータ31への電源供給回路を形成するものである。制御系電源ライン84は、マイコン部40の電源+端子に接続されるが、その途中で、イグニッションスイッチ86よりも負荷側(マイコン部40側)においてダイオード88を備えている。このダイオード88は、カソードをマイコン部40側、アノードを車両電源80側に向けて設けられ、電源供給方向にのみ通電可能とする逆流防止素子である。
駆動系電源ライン85には、電源リレー87よりも負荷側において制御系電源ライン84と接続する連結ライン89が分岐して設けられる。この連結ライン89は、制御系電源ライン84におけるダイオード88の接続位置よりもマイコン部40側に接続される。また、連結ライン89には、ダイオード90が接続される。このダイオード90は、カソードを制御系電源ライン84側に向け、アノードを駆動系電源ライン85側に向けて設けられる。従って、連結ライン89を介して駆動系電源ライン85から制御系電源ライン84には電源供給できるが、制御系電源ライン84から駆動系電源ライン85には電源供給できないような回路構成となっている。駆動系電源ライン85および接地ライン91は昇圧回路60に接続される。また、接地ライン91は、マイコン部40の接地端子にも接続される。
昇圧回路60は、駆動系電源ライン85と接地ライン91との間に設けられるコンデンサ61と、コンデンサ61の接続点より負荷側の駆動系電源ライン85に直列に設けられる昇圧用コイル62と、昇圧用コイル62の負荷側の駆動系電源ライン85と接地ライン91との間に設けられる第1昇圧用スイッチング素子63と、第1昇圧用スイッチング素子63の接続点より負荷側の駆動系電源ライン85に直列に設けられる第2昇圧用スイッチング素子64と、第2昇圧用スイッチング素子64の負荷側の駆動系電源ライン85と接地ライン91との間に設けられるコンデンサ65とから構成される。昇圧回路60の二次側には、昇圧電源ライン92が接続される。
本実施形態においては、この昇圧用スイッチング素子63,64としてMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いるが,他のスイッチング素子を用いることも可能である。また、図中に回路記号で示すように、昇圧用スイッチング素子63,64を構成するMOSFETには、構造上ダイオードが寄生している。
昇圧回路60は、マイコン部40の電源制御部42(後述する)により昇圧制御される。電源制御部42は、第1,第2昇圧用スイッチング素子63,64のゲートに所定周期のパルス信号を出力して両スイッチング素子63,64をオン・オフし、車両電源80から供給された電源を昇圧して昇圧電源ライン92に所定の出力電圧を発生させる。この場合、第1,第2昇圧用スイッチング素子63,64は、互いにオン・オフ動作が逆になるように制御される。昇圧回路60は、第1昇圧用スイッチング素子63をオン、第2昇圧用スイッチング素子64をオフにして昇圧用コイル62に短時間だけ電流を流して昇圧用コイル62に電力をため、その直後に、第1昇圧用スイッチング素子63をオフ、第2昇圧用スイッチング素子64をオンにして昇圧用コイル62にたまった電力を出力するように動作する。
第2昇圧用スイッチング素子64の出力電圧は、コンデンサ65により平滑される。従って、安定した昇圧電源が昇圧電源ライン92から出力される。この場合、周波数特性の異なる複数のコンデンサを並列に接続して平滑特性を向上させるようにしてもよい。また、昇圧回路60の入力側に設けたコンデンサ61により、車両電源80側へのノイズが除去される。
昇圧回路60の昇圧電圧(出力電圧)は、第1,第2昇圧用スイッチング素子63,64のデューティ比の制御(PWM制御)により調整可能となっている。本実施形態における昇圧回路60は、例えば、入力電源電圧〜50Vの範囲で昇圧電圧を調整できるように構成される。尚、昇圧回路60として、汎用のDC−DCコンバータを使用することもできる。
昇圧電源ライン92は、昇圧駆動ライン93と充放電ライン94とに分岐する。昇圧駆動ライン93は、モータ駆動回路50の電源入力部に接続される。充放電ライン94は、副電源70のプラス端子に接続される。
副電源70は、昇圧回路60の出力により充電され、モータ駆動回路50で大電力を必要としたときに、蓄電しておいた電気エネルギーをモータ駆動回路50に供給して車両電源80を補助する蓄電装置である。従って、副電源70は、昇圧回路60の昇圧電圧相当の電圧を維持できるように複数の蓄電セルを直列に接続して構成される。副電源70の接地端子は、接地ライン91に接続される。この副電源70として、例えば、キャパシタ(電気二重層コンデンサ)や二次電池を用いることができる。
昇圧回路60の出力側には、電流センサ71と電圧センサ72とが設けられる。電流センサ71は、昇圧電源ライン92に流れる電流、つまり、昇圧回路60の出力電流を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部42に出力する。また、電圧センサ72は、昇圧電源ライン92と接地ライン91との間の電圧、つまり、昇圧回路60の昇圧電圧を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部42に出力する。以下、電流センサ71を昇圧電流センサ71と呼び、その検出電流値を昇圧電流i1と呼ぶ。また、電圧センサ72を昇圧電圧センサ72と呼び、その検出電圧値を昇圧電圧v1と呼ぶ。
昇圧回路60には、昇圧回路60の発熱状態を検知するための温度センサ66が設けられる。この温度センサ66は、昇圧回路60内の素子のうち通電により一番早く過熱状態に到達する可能性のある素子に取り付けられて素子温度を検出する。例えば、第1昇圧用スイッチング素子63、第2昇圧用スイッチング素子64、昇圧用コイル62等に設けられる。温度センサ66は、検出した温度に応じた信号を電源制御部42に出力する。以下、温度センサ66を昇圧温度センサ66と呼び、昇圧温度センサ66にて検出される温度を昇圧回路温度Kと呼ぶ。尚、昇圧回路60の温度検出は、温度センサにより直接的に行うものに限らず、回路素子に流れる電流の積算値に基づいて演算した推定値を使って間接的に行うものであってもよい。
また、充放電ライン94には、電流センサ73が設けられる。電流センサ73は、充放電ライン94に流れる電流、つまり、副電源70に流れる充放電電流を検出し、その検出値に応じた信号を電源制御部42に出力する。電流センサ73は、電流の向き、つまり、昇圧回路60から副電源70に流れる充電電流と、副電源70からモータ駆動回路50に流れる放電電流とを区別して、それらの大きさを検出する。以下、電流センサ73を充放電電流センサ73と呼び、その検出電流値を充放電電流i2と呼ぶ。尚、電流の流れる方向を特定する場合には、充電電流i2あるいは放電電流i2と呼ぶ。
また、充放電ライン94には、スイッチング素子74が設けられる。このスイッチング素子74は、マイコン部40の電源制御部42に接続され、電源制御部42から出力されるPWM制御信号に応じたデューティ比でオン・オフする。スイッチング素子74としては、例えば、MOS−FETが使用される。
モータ駆動回路50は、MOS−FETからなる6個のスイッチング素子51〜56により3相インバータ回路を構成したものである。具体的には、第1スイッチング素子51と第2スイッチング素子52とを直列接続した回路と、スイッチング素子53と第4スイッチング素子54とを直列接続した回路と、第5スイッチング素子55と第6スイッチング素子56とを直列接続した回路とを並列接続し、各直列回路における2つのスイッチング素子間(51−52,53−54,55−56)から電動モータ31への電力供給ライン58を引き出した構成を採用している。
モータ駆動回路50には、電動モータ31に流れる電流を検出する電流センサ57が設けられる。この電流センサ57は、各相ごとに流れる電流をそれぞれ検出し、その検出した電流値に対応した検出信号をマイコン部40のアシスト制御部41に出力する。以下、この測定された電流値をモータ電流imと呼び、この電流センサ57をモータ電流センサ57と呼ぶ。
各スイッチング素子51〜56は、それぞれゲートがマイコン部40のアシスト制御部41に接続され、アシスト制御部41からのPWM制御信号によりデューティ比が制御される。これにより電動モータ31の駆動電圧が目標電圧に調整される。
マイコン部40は、その機能から、アシスト制御部41と電源制御部42とに大別される。アシスト制御部41は、操舵角センサ16、操舵トルクセンサ17、回転角センサ33、モータ電流センサ57、車速センサ19を接続し、操舵角θin、操舵トルクTr、モータ回転角θm、モータ電流im、車速Vを表すセンサ信号を入力する。アシスト制御部41は、これらのセンサ信号に基づいて、モータ駆動回路50にPWM制御信号を出力して電動モータ31を駆動制御し、運転者の操舵操作をアシストする。また、アシスト制御部41は、電源制御部42と相互に信号授受できるように構成されており、電源制御部42に対して、センサ信号情報やモータ駆動回路50のPWM制御情報を提供できるようになっている。
電源制御部42は、昇圧回路60の昇圧制御と、副電源70による電源供給制御とを行う。電源制御部42は、昇圧電流センサ71、昇圧電圧センサ72、充放電電流センサ73、昇圧温度センサ66を接続し、昇圧電流i1、昇圧電圧v2、充放電電流i2、昇圧回路温度Kを表すセンサ信号を入力する。電源制御部42は、これらセンサ信号と、アシスト制御部41および舵角比ECU200からの情報に基づいて、昇圧回路60およびスイッチング素子74にそれぞれ独立したPWM制御信号を出力する。昇圧回路60は、入力したPWM制御信号にしたがって第1,第2昇圧用スイッチング素子63,64のデューティ比を制御することにより、その出力電圧である昇圧電圧を変化させる。また、スイッチング素子74は、入力したPWM制御信号に応じたデューティ比でオン・オフすることにより、副電源70からモータ駆動回路50への電源供給量を調整する。
次に、マイコン部40のアシスト制御部41が実行する操舵アシスト制御処理について説明する。図3は、アシスト制御部41により行われる操舵アシスト制御ルーチンを表す。このアシスト制御ルーチンは、マイコン部40のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ86がオンされて所定の初期診断が完了すると起動し、短い周期で繰り返し実行される。
操舵アシスト制御ルーチンが起動すると、アシスト制御部41は、まず、ステップS11において、車速センサ19によって検出された車速Vと、操舵トルクセンサ17によって検出された操舵トルクTrと、モータ電流センサ57によって検出されたモータ電流imを読み込む。
続いて、図4に示すアシストトルクマップを参照して、入力した車速Vおよび操舵トルクTrに応じて設定される目標アシストトルクTr*を計算する(S12)。アシストトルクマップは、マイコン部40のROM内に記憶されるもので、操舵トルクTrの増加にしたがって増加する目標アシストトルクTr*を設定する。この場合、目標アシストトルクTr*は、車速Vが低くなるほど大きな値となるように設定される。
尚、図4のアシストトルクマップは、右方向の操舵トルクTrに対する目標アシストトルクTr*の関係を示しているが、左方向の操舵トルクTrに対する目標アシストトルクTr*の関係に関しては、図4の特性グラフを原点を中心に点対称の位置に移動した関係になる。また、本実施形態では、目標アシストトルクTr*をアシストトルクマップを用いて算出するようにしたが、アシストトルクマップに代えて操舵トルクTrおよび車速Vに応じて変化する目標アシストトルクTr*を定義した関数を用意しておき、その関数を用いて目標アシストトルクTr*を計算するようにしてもよい。また、目標アシストトルクTr*の算出に関しては、例えば、操舵角θinに比例して大きくなる操舵軸12の中立位置への復帰力や、操舵ハンドル11の操舵速度に比例して大きくなる操舵軸12の回転に対向する抵抗力に対応した戻しトルクを計算し、これらを補償トルクとして目標アシストトルクTr*に加算するようにしてもよい。
続いて、アシスト制御部41は、ステップS13において、目標アシストトルクTr*を発生させるために必要な目標電流im*を計算する。目標電流im*は、目標アシストトルクTr*をトルク定数で除算することにより求められる。この目標電流im*は、予め設定された上限電流値以下に制限される。従って、目標アシストトルクTr*から計算した目標電流im*が上限電流値以下であれば、その計算値をそのまま目標電流im*とするが、目標アシストトルクTr*から計算した目標電流im*が上限電流値を越える場合には、上限電流値を目標電流im*に設定する。
次に、アシスト制御部41は、ステップS14において、目標電流im*と実電流imとの偏差Δimを算出し、この偏差Δimに基づいて目標指令電圧vm*を計算する。目標指令電圧vm*は、例えば、下記のPI制御(比例積分制御)式により計算する。
vm*=Kp・Δim+Ki・∫Δim dt
ここでKpは、PI制御における比例項の制御ゲイン、Kiは、PI制御における積分項の制御ゲインである。
次に、アシスト制御部41は、ステップS15において、目標指令電圧vm*に応じたPWM制御信号をモータ駆動回路50に出力する。この場合、目標指令電圧vm*に応じたデューティ比のパルス信号列がPWM制御信号として出力される。こうして、電動モータ31には、電流フィードバック制御により運転者の操舵方向と同じ方向に回転する向きの目標電流im*が流れる。この結果、電動モータ31は、目標アシストトルクTr*に等しいトルクを出力し、運転者の操舵操作をアシストする。
ステップS15の処理が行われると、操舵アシスト制御ルーチンは一旦終了する。操舵アシスト制御ルーチンは、イグニッションスイッチ86がオフするまでのあいだ短い周期で繰り返される。
こうした操舵アシスト制御を行っているときに、舵角比可変装置VGRSにおいては、上述したように車速Vに応じた舵角比制御が行われている。舵角比制御は、入力操舵軸12aの回転角度(操舵角θin)に対する出力操舵軸12bの回転角度θoutの比(θout/θin)を制御することにより行われる。ここで、入力操舵軸12aの回転角度(操舵角θin)に対する出力操舵軸12bの回転角度θoutの比(θout/θin)を操舵角増幅率Aと呼ぶ。車速Vが高い場合には、上述した目標相対角Δθvがゼロに設定されるため操舵角増幅率Aは1となり、車速Vが低い場合には目標相対角Δθvが上記計算式により設定されるため操舵角増幅率Aは1より大きな値となる。尚、操舵角比は、この操舵角増幅率Aに、出力操舵軸12bの回転角度outを左右前輪15a,15bの切れ角に変換する係数を乗じたものとなる。
操舵角増幅率Aが大きい場合(操舵角比が大きい場合)、操舵ハンドル11の回動操作に対して出力操舵軸12bが高速で回転するため、電動パワーステアリング装置EPSの電動モータ31による操舵アシストが追従できなくなる可能性がある。そうした場合には、ハンドル操作に引っ掛かりを感じてしまう。そこで、本実施形態においては、電動モータ31の追従性を確保するために、操舵角増幅率Aが大きい場合には、昇圧回路60の昇圧電圧を上昇させることにより高電圧の電源をモータ駆動回路50に供給する。以下、モータ駆動回路50への電源供給制御について説明する。
図5は、マイコン部40の電源制御部42により行われる電源供給制御ルーチンを表す。この電源供給制御ルーチンは、マイコン部40のROM内に制御プログラムとして記憶され、イグニッションスイッチ86がオンされて所定の初期診断が完了すると起動し、短い周期で繰り返し実行される。
電源供給制御ルーチンは、大別すると、操舵速度ωに基づいて基本昇圧電圧v0を設定する基本昇圧電圧設定処理(ステップS100)と、基本昇圧電圧v0に加算する昇圧上昇幅を演算して目標昇圧電圧v*を設定する目標昇圧電圧設定処理(ステップS200)と、昇圧回路60の昇圧電圧が目標昇圧電圧v*となるように昇圧回路60の作動を制御する昇圧回路制御処理(ステップS300)と、昇圧回路温度Kに基づいて副電源70からモータ駆動回路50に電源供給する割合を制御する副電源供給割合制御処理(ステップS400)とからなる。
まず、ステップS100の基本昇圧電圧設定処理について説明する。図6は、電源供給制御ルーチンにおけるステップS100の処理として組み込まれるサブルーチン(基本昇圧電圧設定ルーチンと呼ぶ)を表す。基本昇圧電圧設定ルーチンが開始されると、まず、ステップS101において、操舵速度ωを検出する。この処理は、操舵角センサ16により検出される操舵角θinを時間微分して求められる。続いて、ステップS102において、フラグFが「0」に設定されているか否かを判断する。このフラグFは、基本昇圧電圧v0の設定状況を表すもので、電源供給制御ルーチンの起動時においては、「0」に設定されている。従って、ここでは「Yes」と判断して、続くステップS103において、操舵速度ωが予め設定した基準操舵速度ω0以上であるか否かを判断する。つまり、運転者が操舵ハンドル11を基準操舵速度ω0以上の速さで操舵している状態か否かを判断する。尚、本ルーチンにおいては、操舵速度ωは、その大きさを検出するために用いるものであるため、その絶対値である操舵速度|ω|を意味する。操舵速度ωが基準操舵速度ω0以上であれば、ステップS104において、フラグFを「1」に設定し、操舵速度ωが基準操舵速度ω0未満であればステップS104の処理をスキップする。この基準操舵速度ω0としては、例えば、8rad/秒が設定される。
続いて、電源制御部42は、ステップS105において、フラグFの設定状況を確認し、フラグFが「0」に設定されている場合には、ステップS106において基本昇圧電圧v0を低電圧vLに設定し、フラグFが「1」に設定されている場合には、ステップS107において基本昇圧電圧v0を高電圧vHに設定する。例えば、低電圧vLは20ボルト、高電圧vHは30ボルトに設定される。こうして、基本昇圧電圧v0を設定すると、基本昇圧電圧設定ルーチンをいったん抜けて、目標昇圧電圧設定ルーチン(S200)に進む。
基本昇圧電圧設定ルーチンは、電源供給制御ルーチンにおけるサブルーチンとして所定の短い周期で繰り返される。フラグFが「0」に設定されている状況であれば、上述したようにステップS103からの処理を行うが、フラグFが「1」に設定されている状況(S102:No)、つまり、基本昇圧電圧v0が高電圧vHに設定されている状況においては、その処理をステップS108に進める。電源制御部42は、ステップS108において、操舵速度ωが基準操舵速度ω0未満となっているか否かを判断する。操舵速度ωが基準操舵速度ω0以上であれば(S108:No)、ステップS109において、タイマ値tωをゼロクリアして、その処理をステップS105に進める。この場合、フラグFが変更されないため、基本昇圧電圧v0が高電圧vHに維持される。尚、タイマ値tωは、後述する処理からわかるように、操舵速度ωが基準操舵速度ω0を下回っている連続時間を測定した値であり、電源供給制御ルーチンの起動時においては、「0」に設定されている。
操舵速度ωが基準操舵速度ω0を下回ると(S108:Yes)、ステップS110において、タイマ値tωを値「1」だけインクリメントする。続いて、ステップS112において、タイマ値tωが基準時間t0に達したか否かを判断する。基準時間t0としては、例えば、5秒程度の時間が設定される。タイマ値tωが基準時間t0に達しないあいだは、その処理をステップS105に進める。この場合、フラグFが変更されないため、基本昇圧電圧v0が高電圧vHに維持される。そして、タイマ値tωが基準時間t0に達すると、つまり、操舵速度ωが基準操舵速度ω0を下回っている状態が基準時間t0以上経過すると、ステップS113において、フラグFを「0」に設定し、その処理をステップS105に進める。従って、この段階で基本昇圧電圧v0が低電圧vLに戻されることになる。
このように、基本昇圧電圧設定ルーチンによれば、運転者が、操舵速度ωが基準操舵速度ω0以上となるハンドル操作したときに基本昇圧電圧v0を高電圧vHに設定し、その後、操舵速度ωが基準操舵速度ω0を下回り、その下回っている連続時間が基準時間t0に達したときに基本昇圧電圧v0を低電圧vLに設定する。つまり、速い操舵操作が行われたときに基本昇圧電圧v0を高電圧vHに設定し、その後、操舵操作が弱まって基準時間経過したときに基本昇圧電圧v0を低電圧vLに戻すのである。
次に、ステップS200の目標昇圧電圧設定処理について説明する。図7は、電源供給制御ルーチンにおけるステップS200の処理として組み込まれるサブルーチン(目標昇圧電圧設定ルーチンと呼ぶ)を表す。目標昇圧電圧設定ルーチンが開始されると、電源制御部42は、まず、ステップS201において、舵角比ECU200のマイコン部210から現時点の操舵角増幅率A(θout/θin)を読み込む。続いて、ステップS202において、この操舵角増幅率Aに基づいて、昇圧増加係数αを設定する。昇圧増加係数αは、基本昇圧電圧v0を増加させる度合いを設定する1つのパラメータであり、図8に示す昇圧増加係数マップから算出される。昇圧増加係数αは、舵角比可変装置VGRSにより制御される操舵角増幅率Aが1以下の場合は、値「1」に設定され、操舵角増幅率Aが1より大きい場合には、操舵角増幅率Aの増加にしたがって大きくなる値に設定される。つまり、舵角比可変装置VGRSにより操舵ハンドル11の回動操作に対して出力操舵軸12bの回転速度が大きく増幅されるほど昇圧増加係数αが大きな値に設定される。尚、本実施形態においては、ROM内に記憶した昇圧増加係数マップを用いて昇圧増加係数αを算出するが、昇圧増加係数マップに代えて、操舵角増幅率Aと昇圧増加係数αとの関係を定義した関数を記憶しておき、その関数を用いて昇圧増加係数αを算出するようにしてもよい。
続いて、電源制御部42は、ステップS203において、昇圧温度センサ66により検出される昇圧回路温度Kを読み込む。続いて、ステップS204において、この昇圧回路温度Kに基づいて、昇圧調整係数βを設定する。昇圧調整係数βは、基本昇圧電圧v0を低減させる度合いを設定する1つのパラメータであり、図9に示す昇圧調整係数マップから算出される。昇圧調整係数βは、昇圧回路温度Kが第1基準温度K1以下のときは値「1」に設定され、昇圧回路温度Kが第1基準温度K1より高いときには、昇圧回路温度Kの増加にともなって低下する値に設定される。また、昇圧回路温度Kが第2基準温度K2以上の場合には、値「0」に設定される。この昇圧調整係数βは、その値が小さいほど基本昇圧電圧v0を低減する度合いが大きくなる。尚、本実施形態においては、ROM内に記憶した昇圧調整係数マップを用いて昇圧調整係数βを算出するが、昇圧調整係数マップに代えて、昇圧回路温度Kと昇圧調整係数βとの関係を定義した関数を記憶しておき、その関数を用いて昇圧調整係数βを算出するようにしてもよい。
続いて、電源制御部42は、ステップS205において、操舵速度ωを検出する。この操舵速度ωは、上述した基本昇圧電圧設定ルーチンのステップS101にて検出した操舵速度ωを用いることができる。次に、ステップS206において、操舵速度ω(操舵速度ωの絶対値|ω|を意味する)が予め設定した基準操舵速度ω1以上であるか否かを判断する。このステップS206は、運転者の操舵状態を判定するもので、基準操舵速度ω1を、基本昇圧電圧設定ルーチンのステップS103で用いた基準操舵速度ω0と同じ値に設定してもよい。
操舵速度ωが基準操舵速度ω1以上であれば(S206:Yes)、ステップS207において、加減算タイマ値Tを「1」だけ加算する。この加減算タイマ値Tは、電源制御ルーチンの起動時においては「0」に設定されている。一方、操舵速度ωが基準操舵速度ω1未満であれば(S206:No)、ステップS208において、加減算タイマ値Tを「1」だけ減算する。この場合、ステップS209において、加減算タイマ値Tの値が負になったか否かを判断し、負の値であれば、ステップS210において、加減算タイマ値Tの値を「0」に設定する。
電源制御部42は、加減算タイマ値Tの加算あるいは減算を行うと、続いて、ステップS211において、昇圧増加係数α、昇圧調整係数β、加減算タイマ値T、および、基本昇圧電圧v0に基づいて、目標昇圧電圧v*を計算する。この目標昇圧電圧v*の計算にあたっては、図10に示す目標昇圧電圧算出マップを参照する。加減算タイマ値TがT1より小さい状況、つまり、操舵操作があまり連続的に行われていない状況においては、次式により、目標昇圧電圧v*を計算する。
v*=v0(1+α×β)
従って、目標昇圧電圧v*は、操舵角増幅率Aが大きいほど、かつ、昇圧回路温度Kが低いほど高い値に設定される。この場合、昇圧電圧の基本昇圧電圧v0に対する上昇幅は、(v0×α×β)となる。
また、加減算タイマ値TがT2(>T1)より大きい状況、つまり、操舵操作が頻繁に行われている状況においては、目標昇圧電圧v*は、基本昇圧電圧v0と等しい値に設定される。この場合は、昇圧電圧の基本昇圧電圧v0に対する上昇幅はゼロとなる。
また、加減算タイマ値TがT1〜T2のあいだの値となる状況においては、次式により、目標昇圧電圧v*を計算する。
v*=v0(1+α×β×k)
ここでkは、2つの直線間を線形補間するための係数で、k=(T2―T)/(T2−T1)で表すことができる。この場合は、昇圧電圧の基本昇圧電圧v0に対する上昇幅は(v0×α×β×k)となる。
尚、本実施形態では、ROMに記憶した目標昇圧電圧算出マップを用いて目標昇圧電圧v*を算出するようにしたが、目標昇圧電圧算出マップに代えて加減算タイマ値Tと基本昇圧電圧v0に対する上昇幅との関係を定義した関数を用意しておき、その関数を用いて目標昇圧電圧v*を計算するようにしてもよい。
こうして、目標昇圧電圧v*を計算すると、目標昇圧電圧設定ルーチンを一旦抜けて、昇圧回路制御処理(S300)に進む。
目標昇圧電圧設定ルーチンは、電源供給制御ルーチンにおけるサブルーチンとして所定の短い周期で繰り返される。従って、加減算タイマ値Tは、操舵状況に応じて変化していく。速い操舵操作が行われた場合、それが短期間であれば、加減算タイマ値TはT1以内に収まるため、昇圧電圧の上昇幅を大きく設定することができる。一般的な運転操作においては、連続的な操舵操作は行われないため加減算タイマ値TはT1以内に収まるが、まれに、速い操舵操作が連続して行われることもある。こうした場合には、一時的に加減算タイマ値TがT1よりも大きくなり昇圧電圧の上昇幅が抑えられる。つまり、基準操舵速度より速い操舵操作が行われる頻度が高い状況ほど、加減算タイマ値Tが大きくなって昇圧電圧の上昇幅が小さく設定される。
舵角比可変装置VGRSにより操舵角増幅率Aが大きく設定された状態で操舵ハンドル11の速い回動操作が行われた場合には、昇圧電圧を上昇させることにより電動モータ31の追従性を向上させてハンドル操作の引っ掛かり感を抑制できるが、昇圧電圧の高い状態が長く続くと昇圧回路60の過熱を招いてしまう。そこで、実際に昇圧回路60の発熱状態を昇圧温度センサ66にて検出し、検出した昇圧回路温度Kに基づいて昇圧調整係数βを設定することで、発熱が進むにしたがって昇圧電圧の上昇幅を少なくする。
また、運転者の感覚として、操舵開始当初においては電動モータ31の追従性が悪いとハンドル操作の引っ掛かりを感じるが、連続して速い操舵操作を行っている場合には、操舵開始から少し時間がたつとハンドル操作に引っ掛かりを感じにくくなる。従って、加減算タイマ値Tが大きくなった場合に、昇圧電圧の上昇幅を少なくしても、ハンドル操作に引っ掛かりを感じにくくなる。このため、操舵フィーリングを悪化させることなく昇圧回路60の過熱を防止できる。
こうして、目標昇圧電圧設定ルーチンにより目標昇圧電圧v*が計算されると、電源制御部42は、ステップS300において、昇圧回路60の昇圧電圧を目標昇圧電圧v*に制御する。例えば、昇圧電圧センサ72により検出される昇圧電圧v1が目標昇圧電圧v*より低い場合には昇圧電圧が上昇するように、逆に、昇圧電圧センサ72により検出される昇圧電圧v1が目標昇圧電圧v*より高い場合には昇圧電圧が下降するように、第1,第2昇圧用スイッチング素子63,64のデューティ比を調整する。
続いて、電源制御部42は、ステップS400の副電源供給割合制御処理を行う。図11は、電源供給制御ルーチンにおけるステップS400の処理として組み込まれるサブルーチン(副電源供給割合制御ルーチンと呼ぶ)を表す。副電源供給割合制御ルーチンが開始されると、電源制御部42は、まず、ステップS401において、昇圧回路温度Kを読み込む。この昇圧回路温度Kは、上述した目標昇圧電圧設定ルーチンのステップS203にて検出した昇圧回路温度Kを用いることができる。
続いて、電源制御部42は、ステップS402において、この昇圧回路温度Kに基づいて副電源供給割合γ設定する。副電源供給割合γは、モータ駆動回路50へ供給する電源供給量(昇圧回路60からモータ駆動回路50へ供給する電源供給量と、副電源70からモータ駆動回路50へ供給する電源供給量の和)に対して副電源70が負担する電源供給量の割合を意味する。この副電源供給割合γは、図12に示す副電源供給割合マップから算出される。図示するように、副電源供給割合γは、昇圧回路温度Kの増加にしたがって増加するように設定される。この例では、昇圧回路温度KがK3以下の場合には、一定のγ1となる副電源供給割合γが設定され、昇圧回路温度KがK3〜K4(>K3)の範囲では、昇圧回路温度Kの増加に比例してγ2まで増加する副電源供給割合γが設定され、昇圧回路温度KがK4以上の場合には、一定のγ2となる副電源供給割合γが設定される。尚、本実施形態では、ROMに記憶した副電源供給割合マップを用いて副電源供給割合γを算出するようにしたが、副電源供給割合マップに代えて昇圧回路温度Kと副電源供給割合γとの関係を定義した関数を用意しておき、その関数を用いて副電源供給割合γを計算するようにしてもよい。
続いて、電源制御部42は、ステップS403において、昇圧電流センサ71により検出される昇圧電流i1と、充放電電流センサ73により検出される充放電電流i2とを読み込む。次に、ステップS404において、昇圧電流i1と充放電電流i2とに基づいて、副電源供給割合γが得られるように、スイッチング素子74に出力するPWM信号のデューティ比を調整する。この場合、次式の関係が得られるようにデューティ比を調整する。
i2/(i1+i2)=γ
ここでi2は副電源70から放電される放電電流である。図13は、このように副電源供給割合γが制御されたときの、昇圧回路60からの電源供給量E1と副電源70からの電源供給量E2の推移の一例を示したものである。尚、昇圧電流i1と放電電流i2との合計値(i1+i2)は、モータ電流センサ57により検出される3相のモータ電流imから計算により求めることもできる。
これにより、昇圧回路温度Kが高くなるにしたがって昇圧回路60からの電源供給割合が減るように、昇圧回路60からの電源供給量と副電源70からの電源供給量との比が調整される。従って、昇圧回路温度Kが高い場合には、昇圧回路60の負担が低減されるため、昇圧回路60の過熱を防止できる。また、それに伴って、昇圧回路温度Kが低下して、昇圧調整係数βによる制限が緩くなる(βが大きくなり)ため、舵角比増大に伴う昇圧電圧の上昇幅を増大させることができる。従って、電動モータ31を適正な高電圧で駆動することができ良好な追従性を確保することができる。
以上説明した本実施形態の車両のステアリング装置によれば、舵角比可変装置VGRSにより設定される舵角比が大きくなるにしたがって昇圧回路60の昇圧電圧を上昇させるため、電動パワーステアリング装置EPSの電動モータ31の追従性を向上させることができる。また、昇圧回路60の昇圧電圧の上昇幅を、昇圧回路温度Kが高くなるにしたがって小さくなるように調整するため、昇圧回路60の過熱を防止できる。また、加減算タイマ値Tに基づいて、短期間における速い操舵操作が行われているあいだは、適度な昇圧電圧の上昇幅を確保し、速い操舵操作が連続的に行われているような状態(操舵頻度が高い状態)であれば昇圧電圧の上昇幅を抑えるため、操舵フィーリングを悪化させることなく昇圧回路60の過熱防止を行うことができる。
更に、昇圧回路温度Kの増加にしたがって副電源70からの電源供給量の割合を増加させて昇圧回路60の負担を低減するため、昇圧回路60の発熱を抑制することができ、これに伴って、舵角比増大に伴う昇圧電圧の上昇幅を増大させることができる。従って、電動モータ31を高い電圧で駆動することができ良好な追従性を確保することができる。また、舵角比可変装置VGRSにより舵角比を小さくしなくてもよいため、舵角比可変装置VGRSの性能を十分発揮することができ良好な操舵フィーリングが得られる。
次に、上記実施形態における第1変形例について説明する。この第1変形例は、実施形態における目標昇圧電圧設定ルーチン(図7)において、ステップS211の処理の後に、図14に示すステップS212〜S214の処理を追加したものであり、他の構成については実施形態と同一である。
電源制御部42は、ステップS211において目標昇圧電圧v*を計算すると、続く、ステップS212において、モータ駆動回路50におけるデューティ比を読み込む。モータ駆動回路50は、アシスト制御部41から出力されるPWM制御信号によりスイッチング素子51〜56のデューティ比が制御される。従って、電源制御部42は、アシスト制御部41から出力されるPWM制御信号を読み込んでデューティ比を検出する。
続いて、電源制御部42は、ステップS213において、デューティ比に基づいて補正電圧Δvを計算する。補正電圧Δvは、図15に示す補正電圧設定マップから算出される。図示するように、デューティ比(スイッチがオンされる期間割合を表すオンデューティ比)が基準範囲DSより大きい領域においては、正の補正電圧Δvが設定され、デューティ比が基準範囲DSより小さい領域においては、負の補正電圧Δvが設定される。この場合、デューティ比が基準範囲DSから離れるほど正あるいは負の補正電圧Δvの大きさ(絶対値)が大きくなるように設定される。尚、本実施形態では、ROMに記憶した補正電圧設定マップを用いて補正電圧Δvを算出するようにしたが、補正電圧設定マップに代えてデューティ比と補正電圧Δvとの関係を定義した関数を用意しておき、その関数を用いて補正電圧Δvを計算するようにしてもよい。
続いて、電源制御部42は、ステップS214において、目標昇圧電圧v*を補正する。つまり、ステップS211で計算した目標昇圧電圧v*に補正電圧Δvを加算した値を、最終的な目標昇圧電圧v*に設定する(v*←v*+Δv)。従って、補正された目標昇圧電圧v*に基づいて、昇圧回路60の昇圧電圧が制御される。
上述したように目標昇圧電圧v*は、速い操舵速度ωでハンドル操作されたときに高く設定されるが、必ずしも、操舵速度ωが速いときに電動モータ31で大出力を必要とするわけではない。電動モータ31で大出力を必要としていないときには、モータ駆動回路50のデューティ比が小さく設定される。そこで、第1変形例においては、デューティ比が小さく設定されている場合には、昇圧回路60の昇圧電圧を低めに抑えることで、過剰な昇圧動作を防止することができる。この結果、電動モータ31の駆動状況に応じた適正な昇圧電圧が設定され、電動モータ31の適正駆動と昇圧回路60の過熱防止とを良好に両立させることができる。
次に、第2変形例について説明する。この第2変形例は、実施形態における目標昇圧電圧設定ルーチン(図7)において、ステップS211の処理の後に、図16に示すステップS220〜S223の処理を追加したものであり、他の構成については実施形態と同一である。
電源制御部42は、ステップS211において目標昇圧電圧v*を計算すると、続く、ステップS220において、モータ駆動回路50におけるデューティ比を読み込む。この処理は、第1変形例のステップS212の処理と同じである。続いて、電源制御部42は、ステップS221において、デューティ比に基づいて第1補正電圧Δv1を計算する。この第1補正電圧Δv1は、第1変形例の補正電圧Δvと同じである。
続いて、電源制御部42は、ステップS222において、デューティ比の単位時間当たりの変化量に基づいて第2補正電圧Δv2を計算する。デューティ比は、所定の周期で制御されるため、今回検出したデューティ比(Dn)と1周期前のデューティ比(Dn-1)との差(Dn−Dn-1)を求めて、デューティ比の単位時間当たりの変化量とする。そして、図17に示す第2補正電圧設定マップから第2補正電圧Δv2を算出する。図示するように、デューティ比の単位時間当たりの変化量が正の値、つまり、デューティ比が増加傾向にあれば、その変化量が大きいほど大きくなる第2補正電圧Δv2(>0)を設定する。また、デューティ比が減少傾向にあれば、第2補正電圧Δv2をゼロ(Δv2=0)に設定する。尚、本実施形態では、ROMに記憶した第2補正電圧設定マップを用いて第2補正電圧Δv2を算出するようにしたが、第2補正電圧設定マップに代えてデューティ比の変化量と第2補正電圧Δv2との関係を定義した関数を用意しておき、その関数を用いて第2補正電圧Δv2を計算するようにしてもよい。
続いて、電源制御部42は、ステップS223において、第1補正電圧Δv1と第2補正電圧Δv2を用いて目標昇圧電圧v*を補正する。つまり、ステップS211で計算した目標昇圧電圧v*に、第1補正電圧Δv1と第2補正電圧Δv2とを加算した値を、最終的な目標昇圧電圧v*に設定する(v*←v*+Δv1+Δv2)。従って、補正された目標昇圧電圧v*に基づいて、昇圧回路60の昇圧電圧が制御される。
この第2変形例によれば、第1変形例の効果に加えて、電動モータ31の駆動状態の急激な変化に対して昇圧電圧を追従させることができる。このため、電動モータ31を応答性よく駆動することができ、急激な操舵操作に対しても良好な操舵フィーリングが得られる。
以上、本実施形態の車両のステアリング装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、操舵速度ωに応じて基本昇圧電圧v0を変化させているが、操舵速度ωに応じて昇圧電圧を変化させない構成であってもよい。
また、本実施形態においては、図8に示すように、昇圧増加係数αの設定にあたって、操舵角増幅率Aの増加とともにリニアに増加する特性領域を備えているが、段階的に増加するように設定してもよい。例えば、操舵角増幅率Aをn個(n≧2)の範囲に区分し、操舵角増幅率Aが大きい範囲ほど昇圧増加係数αを大きな値に段階的に設定するものであってもよい。同様に、昇圧調整係数βの設定にあたっても、昇圧回路温度Kをn個(n≧2)の範囲に区分し、昇圧回路温度Kが高い範囲ほど昇圧調整係数βを小さな値に段階的に設定するものであってもよい。同様に、目標昇圧電圧v*の設定にあたっても、加減算タイマ値をn個(n≧2)の範囲に区分し、加減算タイマ値が大きい範囲ほど目標昇圧電圧v*を小さな値に段階的に設定するものであってもよい。同様に、副電源供給割合γの設定にあたっても、昇圧回路温度Kをn個(n≧2)の範囲に区分し、昇圧回路温度Kが高い範囲ほど副電源供給割合γを大きな値に段階的に設定するものであってもよい。同様に、補正電圧Δvの設定にあたっても、デューティ比をn個(n≧2)の範囲に区分し、デューティ比が小さい範囲ほど補正電圧Δvを低い値に段階的に設定するものであってもよい。同様に、第2補正電圧Δv2の設定にあたっても、デューティ比の変化量をn個(n≧2)の範囲に区分し、デューティ比の変化量が大きな範囲ほど第2補正電圧Δv2を高い値に段階的に設定するものであってもよい。
また、本実施形態においては、電動パワーステアリング装置EPS側にのみ昇圧回路を備えているが、舵角比可変装置VGRSの舵角比ECU200にも車両電源電圧を昇圧する昇圧回路を備えてもよい。また、本実施形態においては、操舵アシストトルクを発生させるアクチュエータとして3相ブラシレスモータを備え、3相インバータ回路にて3相ブラシレスモータを駆動制御するが、Hブリッジ回路により単相モータを駆動制御する構成に代えることもできる。
尚、本実施形態において、電源制御部42が実行する目標昇圧電圧設定ルーチン(S200)が本発明の昇圧制御手段に相当し、電源制御部42が実行する副電源供給割合制御ルーチン(S400)およびスイッチング素子74が本発明の電源供給比制御手段に相当する。
VGRS…舵角比可変装置、EPS…電動パワーステアリング装置、11…操舵ハンドル、12…操舵軸、12a…入力操舵軸、12b…出力操舵軸、13…ピニオンギヤ、14…ラックバー、15a,15b…前輪、16…操舵角センサ、17…操舵トルクセンサ、18…相対角センサ、19…車速センサ、20…舵角比可変機構、22…電動モータ、30…パワーアシスト機構、31…電動モータ、40…マイコン部、41…アシスト制御部、42…電源制御部、50…モータ駆動回路、57…モータ電流センサ、60…昇圧回路、61…コンデンサ、62…昇圧用コイル、62…電源制御部、63,64…昇圧用スイッチング素子、66…昇圧温度センサ、70…副電源、71…昇圧電流センサ、72…昇圧電圧センサ、73…充放電電流センサ、74…スイッチング素子、80…車両電源、81…主バッテリ、82…オルタネータ、92…昇圧電源ライン、93…昇圧駆動ライン、94…充放電ライン、100…操舵アシストECU、200…舵角比ECU、210…マイコン部、220…モータ駆動回路。

Claims (5)

  1. 運転者による操舵ハンドルの回動操作を電動モータの駆動によりアシストする電動パワーステアリング装置と、
    前記電動モータと前記操舵ハンドルとの間に設けられ、前記操舵ハンドルの操舵角に対する操舵輪の転舵角の比である舵角比を可変する舵角比可変装置と
    を備えた車両のステアリング装置において、
    前記電動パワーステアリング装置は、
    車両電源から前記電動モータの駆動回路への電源供給路に設けられ、前記車両電源の出力電圧を昇圧する昇圧回路と、
    前記昇圧回路に対して、前記電動モータの駆動回路と並列に接続されて前記昇圧回路の出力により充電されるとともに、充電された電気エネルギーを使って前記電動モータの駆動回路への電源供給を補助する副電源と、
    前記舵角比可変装置により可変される舵角比が大きくなるにしたがって前記昇圧回路の昇圧電圧を上昇させる昇圧制御手段と、
    前記昇圧回路の温度を検出する温度検出手段と、
    前記昇圧回路から前記電動モータの駆動回路へ供給される電源供給量と、前記副電源から前記電動モータの駆動回路へ供給される電源供給量との比を、前記昇圧回路の温度が高くなるにしたがって、前記副電源から前記電動モータの駆動回路へ供給する電源供給量の割合が増加するように変更する電源供給比制御手段と
    を備えたことを特徴とする車両のステアリング装置。
  2. 前記昇圧制御手段は、更に、前記昇圧回路の温度が高くなるにしたがって、前記昇圧回路の昇圧電圧の上昇幅を小さくすることを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
  3. 前記操舵ハンドルの操舵速度を検出する操舵速度検出手段を備え、
    前記昇圧制御手段は、前記検出された操舵速度が基準速度よりも高い操舵状態となる頻度が高くなるにしたがって、前記昇圧回路の昇圧電圧の上昇幅を小さくすることを特徴とする請求項1または2記載の車両のステアリング装置。
  4. 前記電動モータの駆動回路は、スイッチング素子のデューティ比を調整することにより前記電動モータの通電量を制御するものであり、
    前記昇圧制御手段は、前記スイッチング素子のデューティ比が小さくなるにしたがって、前記昇圧回路の昇圧電圧を低くする側に補正することを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項記載の車両のステアリング装置。
  5. 前記昇圧制御手段は、前記スイッチング素子のデューティ比が増加側に変化した場合、その増加度合いが大きいほど前記昇圧回路の昇圧電圧を高くする側に補正することを特徴とする請求項4記載の車両のステアリング装置。
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