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JP2010249195A - 繊維強化樹脂歯車 - Google Patents

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JP2010249195A JP2009097952A JP2009097952A JP2010249195A JP 2010249195 A JP2010249195 A JP 2010249195A JP 2009097952 A JP2009097952 A JP 2009097952A JP 2009097952 A JP2009097952 A JP 2009097952A JP 2010249195 A JP2010249195 A JP 2010249195A
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Mihoko Yonezawa
美帆子 米澤
Shinichi Takahashi
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Abstract

【課題】本発明の目的は、歯車の噛み合い時に生ずる騒音の減少効果に優れ、かつ機械的強度を兼ね備えた繊維強化樹脂歯車を提供する。
【解決手段】繊維補強材により補強された、樹脂からなる繊維強化樹脂歯車であって、該繊維補強材が、強化繊維A及びBからなり、該強化繊維Aが、引張弾性率が5〜50GPa、25℃における損失正接(tanδ)が0.040以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維、該強化繊維Bが、引張弾性率が54GPa以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維であり、強化繊維A:強化繊維Bの重量比率が3:97〜56:44であることを特徴とする繊維強化樹脂歯車とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維強化樹脂歯車に関する。さらに詳しくは、歯車の噛み合い時に生ずる騒音の減少効果に優れ、かつ機械的強度を兼ね備えた繊維強化樹脂歯車に関する。
従来、歯車の材料として特に高負荷が必要な用途においては鋼等の金属材料が一般的であったが、歯車の噛み合い時に生ずる騒音の解消や軽量化などを目的として、最近、歯部に繊維強化樹脂複合体を用いたものが検討されている。
このような歯部成形用繊維強化樹脂複合体の補強補強材として必要とされる物性は、樹脂成形する際の成形温度、或いは自動車エンジンに用いられるタイミングギアのように100〜130℃の潤滑油への浸漬に長時間耐え得る耐熱性であり、さらに、近年では車両用歯車の歯部にかかる負荷が一層高くなっているので、高強度で高靭性であることも要求されている。
また、歯車の噛み合い時に発生する騒音を低減させるためには適切な弾性率と適切な伸度とを有する材料を補強材として用いる必要がある。このような補強材として、従来より、メタ型芳香族ポリアミド繊維を用いることが知られている(特許文献1)が、メタ型芳香族ポリアミド繊維は成形加工性には優れているものの強度が劣るため、高負荷が掛かる用途では信頼性の点で不安があった。このような問題を解決するため、特許文献2には、メタ型芳香族ポリアミド繊維とカーボン繊維とを複合した補強材が開示されているが、カーボン繊維は耐衝撃強度が低いため、歯車の切削加工時、或いは使用時に破損するなどの問題があるばかりでなく、弾性率が非常に高いため、歯車の噛み合い時に生ずる騒音の減少効果も少ないという問題がある。
特開平2−241729号公報 特開平5−240325号公報 特開平7−113458号公報
本発明の目的は、歯車の噛み合い時に生ずる騒音の減少効果に優れ、かつ機械的強度を兼ね備えた繊維強化樹脂歯車を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、かかる目的は、繊維補強材により補強された、樹脂からなる繊維強化樹脂歯車であって、該繊維補強材が、強化繊維A及びBからなり、該強化繊維Aが、引張弾性率が5〜50GPa、25℃における損失正接(tanδ)が0.04以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維、該強化繊維Bが、引張弾性率が54GPa以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維であり、強化繊維A:強化繊維Bの重量比率が3:97〜56:44であることを特徴とする繊維強化樹脂歯車により達成できることを見出した。
本発明の繊維強化樹脂歯車は、繊維補強材を構成する繊維に、引張弾性率が5〜50GPa、25℃における損失正接(tanδ)が0.04以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維を含有することによって、金属や他樹脂と接触した際の騒音低減効果に優れ、かつ機械的性能を兼ね備えることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の歯車は、繊維補強材により補強された、樹脂からなる繊維強化樹脂歯車であって、該繊維補強材が、強化繊維A及びBからなり、該強化繊維Aが、引張弾性率が5〜50GPa、25℃における損失正接(tanδ)が0.040以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維、該強化繊維Bが、引張弾性率が54GPa以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維であり、強化繊維A:強化繊維Bの重量比率が3:97〜56:44であることを特徴とする。
上記繊維補強材に使用される、強化繊維A及びBを構成するパラ型芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸などを、カルボキシル基とアミノ基とが略等モルとなる割合で重縮合して得られるもので、かつ延鎖結合が共軸又は平行であり且つ反対方向に向いているポリアミドである。具体的なパラ型全芳香族ポリアミド繊維としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維等を例示することができ、特に共重合型である後者は、複合材料とした時の機械的強度、特に衝撃強度が高く好ましい。
本発明においては、強化繊維Aの引張弾性率が5〜50GPa、好ましくは5〜25GPaであり、25℃における損失正接(tanδ)が0.040以上、好ましくは0.045以上であることが肝要であり、かかる強化繊維を特定量繊維強化材に含有させることによって歯車の噛み合い時に生ずる騒音を著しく低減できることが分かった。したがって、引張弾性率が5GPa未満では、取り扱いや歯車の成形がしにくく、50GPaを超えると騒音を抑制することが困難となる。また、損失正接(tanδ)が、0.040未満では十分に騒音の低減することができなくなる。
上記強化繊維Aとしては、例えば、特公昭62−149934号公報において、紡糸速度11m/分以下で引きとった未延伸糸や、結晶化が促進されないように延伸倍率を低く押さえた(例えば、延伸倍率を3倍以下、若しくは、最大可能延伸倍率の30〜40%以下とした)低倍率延伸繊維、熱履歴を少なくして延伸した延伸繊維を採用することができる。このようなパラ型芳香族ポリアミド繊維としては、具体的には、破断時の伸度が5.3%以上(高伸度)、強度が15.5cN/dtex以下(低強度)、比重が1.380以下(低比重)であることが好ましい。また、かかる物性を有するパラ型芳香族ポリアミド繊維は、加熱加圧条件下で軟化、変形、溶融(半溶融状態も含む)し、メタ型芳香族ポリアミド繊維よりも低吸水性であり、こうした特性を生かした歯車の成形が可能である。
一方、強化繊維Bの引張弾性率は54GPa以上、好ましくは65GPa以上である。引張弾性率が54GPa未満では、十分な機械的強度を有する歯車が得られない。
上記の強化繊維A及びBは長繊維であっても短繊維であっても良いが、繊維補強材が不織布、特に湿式不織布である場合、その長さが、好ましくは1〜12mm、より好ましくは2〜9mmの短繊維であることが望ましい。繊維長が1mm未満の場合、繊維補強材に必要な引張強力を維持することができず好ましくない。一方、繊維長が12mmを超える場合には、繊維の絡み合いが大きすぎて均一な地合形成が難しくなる傾向にあり、結果として歯車の機械的強度が低下するため好ましくない。強化繊維A及びBの繊維長は同じであっても異なっていてもよい。
本発明で使用される繊維補強材は上記の強化繊維A及びBからなるが、該繊維補強材において強化繊維A:強化繊維Bの重量比率は、3:97〜56:44、好ましくは10:90〜40:60である必要がある。強化繊維Aの含有量が3%未満では十分な騒音抑制効果を発揮できず、一方、強化繊維Aの含有量が56%を超えた場合、機械的強度が低下する。
上記繊維補強材は、熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体からなる繊維を該繊維補強材重量に対して1〜30重量%含んでいてもよい。上記有機高分子重合体からなる繊維としては、具体的には全芳香族ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、メタ型全芳香族ポリアミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維などが例示される。上記繊維の表面には、樹脂含浸性を向上させるために効果を損なわない範囲で種々の界面活性剤を少量付着させたり、また、繊維製造工程で付与する処理剤(油剤など)を除去せずそのまま使用してもよい。
また、上記繊維補強材は、熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体からなるフィブリッドを含んでいてもよい。ここで言うフィブリッドとは、バインダー性能を有する微小のフィブリルを有する薄葉状、鱗片状の小片、又は、ランダムにフィブリル化した微小短繊維の総称である。フィブリッドの具体例としては、特公昭35−11851号公報、特公昭37−5732号公報等に記載された方法により、有機系高分子重合体溶液を該高分子重合体溶液の沈澱剤と剪断力の存在する系において混合することにより製造されるフィブリッドや、あるいは、特公昭59−603号公報に記載された方法により、光学的異方性を示す高分子重合体溶液から成形した分子配向性を有する成形物に叩解等の機械的剪断力を与えてランダムにフィブリル化させたフィブリッド(なお、この様なフィブリッドは「パルプ」と称されることがある。)を用いるものが好ましく、なかでも後者の方法によるものが、基材への樹脂含浸性を促進しやすく好ましい。
このような有機高分子重合体としては、繊維もしくはフィルム形成能を有するものであって熱分解温度が350℃以上のものであればどれでも使用できる。例えば、パラ型全芳香族ポリアミド、メタ型全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができるが、中でも特に、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維に機械的剪断力を与えて微細なフィブリルを持たせたフィブリッド(テイジントワロン(株)製「トワロンパルプ」)が好適である。
また、上記フィブリッドの含有量は、繊維補強材重量に対して好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは3〜25重量%である。該フィブリッドの含有量を比較的低めに設定する場合には、例えば、特公昭35−11851号公報や特公昭37−5732号公報等に記載された製造方法から得られるフィブリッドを用いるのが好ましく、また、含有量を比較的高めに設定する場合には、特公昭59−603号公報に記載された方法により製造されたフィブリッドを用いるのが好ましく、さらにこれら両方の製造方法からなるフィブリッドを混合使用しても良い。
本発明で使用される繊維補強材としては、織物、編物、乾式不織布、湿式不織布を採用できるが、特に湿式抄造により成形された湿式不織布が好ましい。繊維補強材が湿式不織布であり、湿式抄造でこれを成形する場合は、上記フィブリッドを含有させることでウェット時の繊維補強材の強度を向上させることができ成形性が良好となるが、あまりフィブリッドの含有量が多くなると、歯車の機械的強度が低下し易くなる。特に、特公昭35−11851号公報や特公昭37−5732号公報等に記載された製造方法から得られるフィブリッドでは含有量をあまり多くすると繊維補強材全体への均一な樹脂含浸を阻害する恐れがあるため好ましくない。よって、フィブリッドの含有量は上記範囲とすることが望ましい。
本発明の歯車に使用する樹脂は特に限定されないが、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、架橋ポリアミノアミド樹脂、架橋ポリエステルアミド樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいは、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。これらは共重合体、変性体、あるいは2種以上の樹脂を混合した樹脂であってもよい。また、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を複合してもよい。あるいは樹脂中に、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、平滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、着色剤、抗菌剤、顔料、導電剤、シランカップリング剤、無機系コーティング剤などの機能剤を包含してもよい。
本発明の歯車においては、歯車の体積をV、樹脂の体積をVrとしたときの下記式で算出される体積樹脂含有率は、歯車の機械的強度や成形性の点から、30〜70%が好ましく、40〜60%がより好ましい。
体積樹脂含有率=Vr/V×100(%)
次に、以上に説明した本発明の歯車の製造方法について説明する。まず、本発明で使用する繊維補強材は、例えば湿式不織布の場合は、強化繊維A、強化繊維B、及びフィブリッドを所定の比率になるように秤量し、繊維濃度が0.15〜0.40重量%の範囲になるように水中に投入して均一分散させた水性スラリー中に、必要に応じて、分散剤や粘度調整剤を加えた後、長網式や丸網式の抄紙機を用いた湿式抄造方で湿紙を形成し、この湿紙に有機系のバインダー樹脂をスプレー方式等により付与した後、乾燥して得た乾燥紙を加熱加圧加工することにより得ることができる。
円筒状湿式不織布を成形する場合は、金属メッシュ上に互いに径の異なる大小の円筒を同心円状に配置し、大径の円筒の内周と小径の円筒の外周との中間部に、繊維あるいは繊維及びフィブリッドを、所定の比率になるように秤量し、繊維状物濃度が0.15〜0.40重量%の範囲になるように水中に投入して均一分散させ、必要に応じて、分散剤や粘度調整剤を加えた水性スラリーを投入し、抄造することにより得られる。その際、所定の目付となるように湿式抄造時にスラリー投入量、スラリー濃度を調節することで目付調整して形成することができ、それゆえ常に一定の範囲の目付とすることができる。湿式抄造シートを金網から剥離し、軽く加圧脱水後、熱風乾燥機等で乾燥し、ホットプレス等で厚さを規定し、一定の密度の不織布とすることが好ましい。得られた不織布は基材シート全体で密度斑が少なく、厚さ方向の密度も均一で繊維強化樹脂歯車の繊維補強材としてふさわしいものである。
上記湿式不織布の嵩密度は、0.1〜1.0g/cmであることが好ましい。嵩密度が0.1g/cm未満の場合、成形の際に紙が破断する可能性があり、それにより歯車の機械的強度が低下する可能性がある。また、嵩密度が1.0g/cmを超える場合には、単繊維1本1本に樹脂を均一に含浸することが困難となるため好ましくない。さらに、嵩密度は、その値が一定のものだけに限らず、嵩密度の異なるものを併用しても良い。その場合、例えば嵩密度の低い湿式不織布を歯車成形用金型の中心に位置するブッシュに捲きつけ、外側へ進むに従って徐々に嵩密度を上げて捲きつけていけば良い。製造された不織布は、中央に円形のスペースを空けたドーナツ型に打抜き、それを所定の樹脂率となるように積層して筒状に形成する、もしくは矩形に形成し、矩形の細い辺を始点として、中心に空間を残すように複数回巻き回して筒状に形成し、樹脂を繊維補強材である湿式不織布に含浸させ、成形する。
さらに、得られた繊維補強材に前述した樹脂を含浸させて金型に配置し樹脂を固化させることによって繊維強化樹脂成形体を成形する。このとき繊維補強材を金型に配置する前に樹脂を含浸してプリプレグとしてもよいし、繊維補強材を金型に配置し所定の樹脂率となるよう圧縮した後に樹脂を注入してもよいが、樹脂を含浸してプリプレグとする場合は、歯車としたときの樹脂率を所定の比率にするために、あらかじめ繊維補強材の嵩密度を高くしておくことがより好ましい。但し、前記の嵩密度範囲を外れる場合は成形が困難となりやすく、歯車にしたときの機械的強度が低下するため好ましくない。
上記の繊維強化樹脂成形体の成形に際しては、事前に金型を減圧状態にしたり、温度を上げておいたりすることにより、樹脂の繊維補強材への含浸性を向上させることが好ましい。また、繊維補強材は、樹脂を含浸させる前に加圧して形態を安定させてもよいし、樹脂含浸後に軸方向に加圧し、樹脂の含浸性を高めても良い。また、歯車を成形する場合は、一般に繊維強化樹脂成形体の成形後に、歯車の歯部を機械切削により作製するが、円筒状湿式不織布などの筒型繊維補強材の状態で歯車形状とし、さらにこれを歯車型の金型に配置して樹脂を含浸させるなどして歯車を成形してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で用いた評価方法は下記の通りである。
(1)強化繊維の引張弾性率
ASTM D 885に準拠して測定した。
(2)強化繊維の動的粘弾性
損失正接(tanδ)は、粘弾性試験機(RHEOVIBRON DDV−25FP型(株)オリエンテック製)により周波数10Hz,温度−20℃,昇温スピード5℃/minで測定を行った。
(3)湿式不織布補強材の目付
JIS P 8124に準拠して測定した。
(4)繊維強化樹脂成形体の体積樹脂含有率
繊維強化樹脂成形体の体積V、成形体中に導入した樹脂の体積Vrを計測し、下記式を用いて計算した。なお、本実施例において歯車は、上記繊維強化樹脂成形体に機械切削を施して歯部を成形し歯車とするため、維強化樹脂成形体の体積樹脂含有率と歯車の体積樹脂含有率は同じである。
体積樹脂含有率=Vr/V×100(%)
(5)歯車の押し込み強度
樹脂歯車から、歯部根元の幅が5mm、歯部根元から歯部頂点までの幅が5mmのテストピースを作製し、3.5mm径のピンゲージを2.5mm/minの速さで歯と歯の間に押し込み、歯が破壊されるときの押し込み強度(kgf)を測定した。歯の破壊は歯元に亀裂が入ることにより生じた。なお、押し込み強度が350kgf以上であれば実用上問題はなく合格とした。
(6)歯車の騒音レベル
歯車を無響箱内で噛み合わせて400rpm、1000rpmで回転させ、発生する騒音を、歯車対の噛み合い部から上方に垂直に5cm離れた空間に設置した精密騒音計で捕らえ、FFTサーボアナライザーによって解析した。騒音の大きさは騒音レベル(単位dB)で表示した。
[実施例1]
水分率が100ppm以下のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)112.9部、パラフェニレンジアミン1.506部、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.789部を常温下で反応容器に入れ、窒素中で溶解した後、攪拌しながらテレフタル酸クロリド5.658部を添加した。最終的に85℃で60分間反応せしめ、透明の粘稠なポリマー溶液を得た。次いで22.5重量%の水酸化カルシウムを含有するNMPスラリー9.174部を添加し、中和反応を行った。得られたポリマーの極限粘度は3.33であった。得られたポリマー溶液を用い、孔数1000の紡糸口金からNMP水溶液(濃度30重量%)の凝固浴に押し出し湿式紡糸した。この際、紡糸口金面と凝固浴との距離は10mmとした。凝固浴から引出された繊維を水洗した後、延伸倍率を1.3倍として延伸し、引張弾性率が12GPa、25℃における損失正接(tanδ)が0.045、単繊維繊度が16dtexのコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(強化繊維A)を得た。
上記製糸により得られたコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる、単繊維繊度16dtex、カット長3mmの短繊維(強化繊維A)/コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる、単繊維繊度1.7dtex、カット長3mm、引張弾性率74GPaの短繊維(強化繊維B)(帝人テクノプロダクツ(株)製「テクノーラ」)を重量比で25/75となるように、さらに、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなるフィブリッド(テイジントワロン(株)製「トワロンパルプ1094」)を、強化繊維A、B、及びフィブリットの合計重量(繊維補強材重量)に対して5重量%となるようにパルパーに投入して水中に離解分散させ、繊維濃度0.2重量%の抄紙用スラリーを作成した。
次にタッピー式角型手抄機を用いて該抄紙用スラリーを抄紙し、軽く加圧脱水後、温度120℃の熱風乾燥機中で約30分間乾燥して、坪量200g/mの湿式不織布を得た。
この湿式不織布を、温度200℃、線圧50kg/cmのカレンダーに通し、湿式不織布の嵩密度を0.5g/cmとした後、打抜きによりドーナツ型に形成し、積層して中空部に金属製ブッシュを通し(このとき、ブッシュ径が、ドーナツ型に打抜いた湿式不織布の中空部よりも若干太くなるように打抜きを行った)、これを繊維強化樹脂成形用金型に入れ、金型を約200℃にして、真空減圧下、特公昭63−241029公報に記載の方法に従い製造された架橋ポリアミノアミド樹脂を注入して、繊維補強材である湿式不織布に樹脂を含浸させた後、樹脂を硬化させ、体積繊維含有率が50%の繊維強化樹脂成形体を作製した。さらにこの繊維強化樹脂成形体に機械切削を施すことにより、歯車の歯部を作製して、繊維強化樹脂歯車を得た。結果を表1に示す。
[実施例2〜3,6,7,比較例1]
強化繊維A/強化繊維Bの重量比、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなるフィブリッドの含有量を表1に記載するように調整した以外は、実施例1と同様に実施して歯車を得た。結果を表1に示す。
[実施例4,5,比較例2]
引張弾性率が5GPa、25℃における損失正接(tanδ)が0.045のコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる短繊維に代えて、表1に示す、製糸において延伸倍率を変更することにより得られた、表1に示す引張弾性率が5GPa、25℃における損失正接(tanδ)を有する短繊維を強化繊維Aに使用した以外は、実施例1と同様に実施し、繊維強化樹脂歯車を得た。結果を表1に示す。
Figure 2010249195
本発明の繊維強化樹脂歯車は、歯車の噛み合い時に生ずる騒音の減少効果に優れ、且つ機械的性能を兼ね備えることが可能となる為、事務用機器、コンピュータ周辺機器類、さらに高負荷が必要な用途に適用する歯車として有用である。

Claims (6)

  1. 繊維補強材により補強された、樹脂からなる繊維強化樹脂歯車であって、該繊維補強材が、強化繊維A及びBからなり、該強化繊維Aが、引張弾性率が5〜50GPa、25℃における損失正接(tanδ)が0.040以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維、該強化繊維Bが、引張弾性率が54GPa以上のパラ型芳香族ポリアミド繊維であり、強化繊維A:強化繊維Bの重量比率が3:97〜56:44であることを特徴とする繊維強化樹脂歯車。
  2. 該パラ型芳香族ポリアミド繊維が、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる繊維及び/又はコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる繊維である請求項1に記載の繊維強化樹脂歯車。
  3. 該繊維補強材が、湿式抄造により形成された湿式不織布である請求項1または2に記載の繊維強化樹脂歯車。
  4. 該繊維補強材が、熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体からなる繊維を該繊維補強材重量に対して1〜30重量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂歯車。
  5. 該繊維補強材が、熱分解開始温度が350℃以上である有機高分子重合体からなるフィブリッドを該繊維補強材重量に対して1〜30重量%含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂歯車。
  6. 該パラ型芳香族ポリアミド繊維の繊維長が1〜12mmの範囲にある請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂歯車。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112277226A (zh) * 2015-08-04 2021-01-29 三菱化学株式会社 纤维增强塑料

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