JP2010129955A - 分布帰還型半導体レーザ - Google Patents
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Abstract
【課題】発振波長の変動を抑制することが可能な分布帰還型半導体レーザを提供することを目的とする。
【解決手段】互いに異なる発振波長を有する複数の発光素子と、半導体レーザの一端に設けられた高反射膜と、半導体レーザの他端に設けられ、高反射膜よりも反射率の低い低反射膜と、を備え、複数の発光素子の各々は、活性層と、活性層の下側または上側に設けられた回折格子層とを有し、半導体レーザの一端において、当該複数の回折格子層の回折格子の端面位相が互いに揃っている分布帰還型半導体レーザ。
【選択図】図3
【解決手段】互いに異なる発振波長を有する複数の発光素子と、半導体レーザの一端に設けられた高反射膜と、半導体レーザの他端に設けられ、高反射膜よりも反射率の低い低反射膜と、を備え、複数の発光素子の各々は、活性層と、活性層の下側または上側に設けられた回折格子層とを有し、半導体レーザの一端において、当該複数の回折格子層の回折格子の端面位相が互いに揃っている分布帰還型半導体レーザ。
【選択図】図3
Description
本発明は、複数の波長を発振する分布帰還型半導体レーザに関するものである。
波長分割多重通信(WDM: Wavelength Division Multiplex)用の光源等に用いられる多波長半導体レーザとして、回折格子を組み込んだ分布帰還型半導体レーザ(以下、DFBレーザという)が知られている。また、WDM用の光源等を小型化、低コスト化する観点から、一つの半導体基板上に異なる発振波長を有する発光素子をアレイ状に並べたDFBレーザが開発されている。例えば、特許文献1には、回折格子の周期を基板上で連続的に変化させたDFBレーザが記載されており、特許文献2には、互いに周期の異なる回折格子を同一の導波路層に形成したDFBレーザが記載されている。
しかしながら、従来のDFBレーザでは、端面において、隣接する回折格子の位相の整合は無い。また、非特許文献1には、端面における回折格子の位相によって、発振波長が変動してしまうことが報告されている。この問題を解決するために、例えば、特許文献3では、回折格子を傾斜させることが記載されている。
特開昭61−279191号公報
特開昭61−255087号公報
KATSUYUKI UTAKA, SHIGEYUKI AKIBA, KAZUO SAKAI, YUICHI MATSUSHIMA,"Effect of Mirror Facets on Lasing Characteristics of Distributed Feedback InGaAsP/InP Laser Diodes at 1.5 μm Range",IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol. QE-20, No. 3 (March 1984), p236-245
特開平9−214067号公報
ところで、DFBレーザの発振波長の制御精度を高める観点からは、回折格子中にλ/4位相シフト領域を設け、DFBレーザの両端に低反射膜を設ける方法や、DFBレーザの一端に高反射膜を設ける方法などがある。
しかしながら、位相シフト領域を用いる場合、構造が複雑となるうえ、両端に低反射膜を設けると、DFBレーザの前後において光が出力されるため、レーザの前方における発光強度が低くなってしまう。また、高反射膜を用いる場合、レーザの前方における発光強度は高くなるが、高反射膜側における回折格子の位相のずれにより、単一モード発振が妨げられるうえ、発振波長が変動してしまう。
また、単体のレーザの場合、特性評価を行うことにより単一モード性の良好なチップを選び、動作温度を調整することにより、発振波長を制御する方法などが試みられている。一方、多波長集積する場合には、素子の発振波長を精度良くすることが必要である。発振波長の絶対値は、チップの温度により調整できるが、チップ間の発振波長の差も正確に制御されていることが望ましい。例えば、位相シフト領域を用いたり、位相制御領域を設けたりする手法が考えられるが、構造が複雑になったり、光出力が低下するという問題がある。
WDM用の光源等を小型化する観点から、一つの半導体基板上に異なる発振波長を有する発光素子をアレイ状に並べたDFBレーザにおいて、例えば、周波数間隔を100GHzとし、発振波長の異なる複数の発光素子を並べたものが知られている。例えば、周波数193.0[THz]と193.1[THz]の場合、発振波長では0.8nmの波長の違いに相当し、発振波長の制御としては、例えば、0.1nm以内が要求される。このようなアレイ型のレーザに均一回折格子型のDFBレーザを用いると、端面位相の違いにより、個々の発光素子の発振波長が、例えば1nm程度もばらついてしまう。個々の発光素子の温度を調整する方法を用いることも考えられるが、素子構造が複雑になってしまう。また、単一モード発振の歩留まりが悪いため、全部の発光素子が単一モード発振する歩留まりが非常に悪くなるという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、発振波長の変動を抑制することが可能な分布帰還型半導体レーザを提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明の分布帰還型半導体レーザは、互いに異なる発振波長を有する複数の発光素子と、半導体レーザの一端に設けられた高反射膜と、半導体レーザの他端に設けられ、高反射膜よりも反射率の低い低反射膜と、を備え、複数の発光素子の各々は、活性層と、活性層の下側または上側に設けられた回折格子層とを有し、半導体レーザの一端において、複数の回折格子層の回折格子の端面位相が互いに揃っていることを特徴とする。
この分布帰還型半導体レーザによれば、複数の回折格子層の回折格子の端面位相が互いに揃っているので、発振波長の変動を抑制することが可能となる。「端面位相が揃っている」とは、高反射膜側の端面において、複数の回折格子の位相が完全に揃っているものに限らず、劈開によって形成される端面位相のずれを考慮した形状をも包含する。なお、上記回折格子の端面位相は、例えば電子顕微鏡等を使用することによって評価することができる。
また、上記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における凸部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における凸部の中心とが揃っていても良い。また、上記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における凹部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における凹部の中心とが揃っていても良い。また、上記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における左側傾斜部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における左側傾斜部の中心とが揃っていても良い。また、上記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における右側傾斜部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における右側傾斜部の中心とが揃っていても良い。これらにより、半導体レーザの一端において、複数の回折格子層の回折格子の端面位相を互いに揃えることが可能となる。
また、上記分布帰還型半導体レーザにおいて、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層における周期がaであり、当該周期aと、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期との差がdであり、nを整数とした場合において、半導体レーザの一端から他端までの長さLが下記式(1)を満たすことが好ましい。
半導体レーザの一端から両端までの長さが上記式(1)を満たすように設計すれば、一端で複数の発光素子の回折格子の位相が揃っていれば、他端でも回折格子の位相を揃えることが可能となる。
半導体レーザの一端から両端までの長さが上記式(1)を満たすように設計すれば、一端で複数の発光素子の回折格子の位相が揃っていれば、他端でも回折格子の位相を揃えることが可能となる。
また、上記分布帰還型半導体レーザにおいて、低反射膜が設けられている他端には回折格子が形成されていなくてもよい。これにより、高反射膜側の一端において、当該複数の回折格子層の回折格子の端面位相を一致させ、かつ、特性を劣化させずに、半導体ウェハ上に効率的に分布帰還型半導体レーザを配置して作製することができる。低反射膜側の他端では、回折格子の端面位相が発光素子の特性に与える影響は少なく、また、端面まで回折格子が設けられていなくても、上記のように発振波長の変動を抑制することが可能となる。
本発明によれば、発振波長の変動を抑制することが可能な分布帰還型半導体レーザを提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るDFBレーザを示す斜視図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。DFBレーザ100は、基板1上に設けられた複数の発光素子10a〜10dと、一端Ehに設けられた高反射(High Reflection)膜HRと、他端Eaに設けられた低反射(Anti Reflection)膜ARとを備えている。なお、図1では、複数の発光素子10a〜10dの形態を理解し易くするため、高反射膜HRと低反射膜ARとを省略した状態を示している。
複数の発光素子10a〜10dは、下部電極8、基板1、下部クラッド層2、活性層3、回折格子層4、上部クラッド層5、コンタクト層6、及び上部電極7をこの順にそれぞれ有している。図1に示すXYZ直交座標系において、複数の発光素子10a〜10dの長手方向はX軸方向にそれぞれ延在しており、複数の発光素子10a〜10dはY軸方向に所定の間隔をおいてアレイ状に形成されている。また、下部クラッド層2、活性層3、回折格子層4、上部クラッド層5、コンタクト層6は、リッジ状の光導波路を形成しており、複数の発光素子10a〜10dの各発光素子間には、活性層3よりも屈折率の小さい、高抵抗の半導体層または樹脂等が埋め込まれている。高抵抗の半導体層としては、例えばFeドープInP半導体層を用いることができる。また、樹脂としては、例えばポリイミド樹脂やBCB樹脂等を用いることができる。リッジ状の光導波路の幅は1〜2μm程度とすることができる。
基板1は半導体基板であり、例えば基板1として、n型InP半導体が用いられる。下部電極8は、導電性材料からなり、例えばAuGeとAuによって構成されている。下部電極8は、基板1とオーミック接触をなしている。
活性層3として、例えば、多重量子井戸(MQW: Multiple Quantum Well)構造が用いられる。MQW構造の具体例として、GaInAsP半導体からなるバリア層とGaInAsP半導体からなるウェル層とが交互に複数積層されたものが挙げられる。活性層3では、下部クラッド層2及び上部クラッド層5から注入されたキャリアが再結合することによって、光が発生する。
下部クラッド層2として、例えば、n型InP半導体が用いられる。上部クラッド層5として、例えば、p型InP半導体が用いられる。下部クラッド層2及び上部クラッド層5の屈折率は、活性層3よりも小さくなっており、これにより、下部クラッド層2及び上部クラッド層5は、活性層3で発生した光を閉じ込める機能を有する。
コンタクト層6として、例えば、p型GaInAs半導体が用いられる。上部電極7は導電性材料からなり、例えばTi、Pt、Auによって構成されている。上部電極7は、コンタクト層6とオーミック接触をなしている。
高反射膜HRは、DFBレーザにおける光軸方向(X軸方向)の一端Ehにおいて、所定の反射波長帯域を有する。高反射膜HRは、その反射波長帯域において、活性層3の内部光をおよそ80%以上反射させる機能を有する。高反射膜HRとして、例えば、窒化シリコン膜とアモルファスシリコン膜との多層膜が挙げられる。
低反射膜ARの反射率は、高反射膜HRの反射率より低く、例えば1%以下の反射率とすることができる。低反射膜ARは、DFBレーザ100における光軸方向(X軸方向)の他端Ea、すなわち、DFBレーザ100の出力端面において、反射光がDFBレーザ100の内部へ戻ることを抑制する機能を有する。低反射膜ARの反射率が小さいほど、反射光がDFBレーザ100の内部へ戻ることを抑制することが可能であるから、この低反射膜ARが形成された出力端面での端面位相による波長変動の影響を低減することが可能となる。好ましくは、低反射膜ARの反射率としては、0.1%以下にすることができる。低反射膜ARとして、例えば、窒化シリコン膜が挙げられる。
回折格子層4として、例えば、p型GaInAsP半導体層が用いられる。図2に示すように、回折格子層4には、DFBレーザ100における光軸方向(X軸方向)に沿った周期的な凹凸パターンからなる回折格子Gが形成されている。
回折格子層4は、活性層3の内部を進行する光の一部を、進行方向とは逆の方向に反射させる機能を有する。これにより、活性層3の内部では、回折格子層4の回折格子Gにおける凹凸パターンの周期で決まる波長の光が高反射膜HRに帰還され、低反射膜ARから所定の波長(λ1〜λ4)を有するレーザ光として出射される。このようにして、低反射膜ARから出射される光出力の強度を高めることができる。
以下に、発光素子10a〜10dにおける回折格子層の配置について、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)、及び図5(b)を用いて説明する。図3(a)は、回折格子層をZ軸方向からみた模式上面図である。一方、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)、及び図5(b)は、図3(a)に示した回折格子層をそれぞれY軸方向からみた模式図の例である。
図3(a)に示すように、各発光素子10a〜10dのそれぞれの回折格子層4a〜4dが、DFBレーザ100における光軸方向(X軸方向)に互いに所定の間隔をおいて略平行に形成されている。図3(b)に示すように、各回折格子層4a〜4dは互いに異なる周期T1〜T4を有する。すなわち、回折格子層4a〜4dは、互いに異なるピッチを有している。上述したように、各回折格子層の周期は、DFBレーザの光出力の波長によりそれぞれ設定される。
例えば、1.55μm帯の発振波長を有する各発光素子10a〜10dの発振周波数を100GHz間隔とする場合、すなわち、各発光素子10a〜10dの発振周波数を193.1[THz]、193.2[THz]、193.3[THz]、193.4[THz]とするDFBレーザを作成する場合、各回折格子層4a〜4dの周期(ピッチ)は、図9に示す値となる。
図3(b)に示すように、各回折格子層4a〜4dにおける高反射膜側の一端Eh(Ah、Bh、Ch、Dh)において、当該複数の回折格子層4a〜4dの回折格子の端面位相が互いに揃っている。具体的には、図3(b)では、高反射膜側の一端Ehにおいて、回折格子層4aの周期における凸部のスタート点と、回折格子層4bの周期における凸部のスタート点と、回折格子層4cの周期における凸部のスタート点と、回折格子層4dの周期における凸部のスタート点とが揃っていることにより、端面位相が互いに揃っている。また、例えば、図4(a)に示すように、高反射膜側の一端Ehにおいて、回折格子層4aの周期における凸部の中心P1と、回折格子層4bの周期における凸部の中心P2と、回折格子層4cの周期における凸部の中心P3と、回折格子層4dの周期における凸部の中心P4とが揃っていることにより、端面位相が互いに揃っていても良い。
また、例えば、図4(b)に示すように、高反射膜側の一端Ehにおいて、回折格子層4aの周期における凹部の中心P5と、回折格子層4bの周期における凹部の中心P6と、回折格子層4cの周期における凹部の中心P7と、回折格子層4dの周期における凹部の中心P8とが揃っていることにより、端面位相が互いに揃っていても良い。
この他にも、例えば、図5(a)に示すように、高反射膜側の一端Ehにおいて、回折格子層4aの周期における左側傾斜部の中心P9と、回折格子層4bの周期における左側傾斜部の中心P10と、回折格子層4cの周期における左側傾斜部の中心P11と、回折格子層4dの周期における左側傾斜部の中心P12とが揃っていることにより、端面位相が互いに揃っていても良い。なお、左側傾斜部とは、回折格子の凸部形状を中心とする左側の傾斜部のことをいう。
また、例えば、図5(b)に示すように、高反射膜側の一端Ehにおいて、回折格子層4aの周期における右側傾斜部の中心P13と、回折格子層4bの周期における右側傾斜部の中心P14と、回折格子層4cの周期における右側傾斜部の中心P15と、回折格子層4dの周期における右側傾斜部の中心P16とが揃っていることにより、端面位相が互いに揃っていても良い。なお、右側傾斜部とは、回折格子の凸部形状を中心とする右側の傾斜部のことをいう。
このような周期をずらした回折格子層4a〜4dは、それぞれ固有の周期を持たせるように、例えば電子ビーム露光装置を用いて作成すればよい。なお、回折格子層を形成する工程以外は、公知の半導体プロセス技術を用いることによりDFBレーザ100を作成することができる。
以下に、本実施形態に係るDFBレーザ100の原理及び効果を説明する。一般に、DFBレーザでは、活性層で発生した誘導放出光が、活性層の上または下に形成された回折格子を有する回折格子層にまで拡がり、伝播する。活性層および回折格子層は、上部クラッド層及び下部クラッド層に挟まれることにより、光導波路を形成しており、誘導放出光は、この光導波路中を伝播しながら増幅される。一方、この伝播光の一部は、回折格子による回折により、光の伝播方向と反対方向に反射され帰還される。このように、光導波路中を伝播する進行光と、それと反対方向に反射される帰還光の相互作用により定在波が生じ、レーザ共振器が形成されることでレーザ発振が生じる。このときのレーザ光の波長は、進行光及び帰還光の位相によって決定される。具体的には、この光の位相は、回折格子の周期とDFBレーザの端面位相によって決定される。従って、回折格子の周期が設計通りの周期となっている場合でも、端面位相の変動或いはバラツキによって、DFBレーザの発振波長が回折格子の周期から期待される波長とはならず、発振波長に変動またはバラツキが生じることになる。本実施形態に係るDFBレーザでは、高反射膜側の一端において、複数の発光素子の回折格子層の端面位相が互いに揃っているため、端面位相のバラツキによって生じる発振波長の変動を抑制することが可能となる。すなわち、ブラッグ波長と発振波長のずれ量が、複数の発光素子間で概ね同じ値になり、回折格子の周期で設計したとおりの発振波長の差が得られることとなる。また、従来のDFBレーザのように、素子毎に端面位相が異なる場合には、各素子の良品率の素子数のべき乗の良品率しか得られず、素子数が多い場合には、良品率が大きく低下してしまうが、本実施形態に係るDFBレーザでは、発光素子間で端面位相が揃っているので、作成する発光素子の数が増えても、単一の発光素子を作成する場合の良品率と同程度の良品率を得ることが可能となる。
なお、1枚の半導体ウェハをチップ化して複数のDFBレーザを作成する際、隣接するDFBレーザは劈開によって分断される。この劈開位置の揺らぎにより端面位相は厳密には固定できないが、例えば、図9の例において、回折格子の端面位相のずれを1/10まで許容すると、劈開位置のずれ量は約15μmであるので、十分に劈開精度の範囲内に入る。
例えば、DFBレーザの大きさを共振器方向(X軸方向)に200μmから600μmとすると、集積するDFBレーザの発光素子の配置間隔を100μmから300μmとすることができる。この場合、互いに異なる発振波長を有する発光素子を200μmの間隔おいて4つ集積した場合、4つの発光素子の(Y軸方向における)全体の幅は、600μm程度になる。
回折格子を電子ビーム露光装置で描画する場合に一般的なショットサイズは、1mm角程度有る。よって、回折格子は半導体ウェハを移動させること無く、描画することが可能である。ショット内での電子ビームの位置決め精度は、1nm程度であるため、高反射膜側の端面での回折格子の位相を制御することは容易である。上述のように、劈開で形成される高反射膜側の端面と、描画した回折格子の角度がずれていることによる、端面位相のずれを考慮すると、例えば、2インチの半導体ウェハの端部から40mm離れたところにおいて、1μmの精度で半導体ウェハ面方位と描画パターンをあわせておけば、その角度ズレは、0.014度であり、600μm離れた4つの発光素子間での位置ズレは、15nmとなり、回折格子の周期よりも十分に小さなずれに抑えることが出来る。また、発振波長の絶対値は、端面位相の僅かなずれにより多少変動する恐れがあるが、チップ全体の温度を調整して変動を抑制することもできる。
次に、本実施形態に係るDFBレーザの作成方法の一例を図6及び図7を用いて説明する。図6は、半導体ウェハW上に形成された複数のDFBレーザを示す模式図である。
図6に示すように、回折格子層4a〜4dを有する発光素子10a〜10dをそれぞれ備え、高反射膜側の一端Eh1,Eh2と低反射膜側の一端Ea1,Ea2を有するようなDFBレーザR1,R2を作成する。このDFBレーザR1,R2は、導波路方向(X軸方向)に沿って連続して作成されるが、ひとつのDFBレーザR1の低反射膜側の一端Ea1が、隣接するDFBレーザR2の高反射膜側の一端Eh2と対向して接触するように形成する。
この際、複数の回折格子層4a〜4dのうちの一つの回折格子層の周期がaであり、当該複数の回折格子層4a〜4dのうちの一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期との差がdであり、nを整数とした場合において、DFBレーザR1またはR2のそれぞれの一端から他端までの長さ(共振器長)Lが下記式(1)を満たすように形成する。例えば、図9のような例であれば、n=1としたときの長さは、約487μmとなる。
図7は、DFBレーザの素子長と位相のずれとの関係を示すグラフである。図7に示すG1は発光素子10aと発光素子10bとの間、G2は発光素子10aと発光素子10cとの間、G3は発光素子10aと発光素子10dとの間における素子長と位相ずれとの関係を表している。図7を参照すると、発光素子10a〜10dのすべてにおいて位相ずれが無いDFBレーザの素子長は、約487μmとなっていることが分かる。
このように、DFBレーザの素子長を適切な長さに設定することにより、DFBレーザの一端で端面位相が揃っている場合に、他端でも端面位相が揃っていることになる。素子の特性面からは、AR側の端面位相が揃っている必要は無いが、この様にDFBレーザの素子長を設定することにより、製造が容易になる。なぜならば、半導体ウェハW上に連続して作製した多数のDFBレーザにおいて、一つの素子のAR側の端面の位相は、劈開面を隔てて接していた隣接する素子のHR側の端面になるように製造されるからである。このように設定しない場合には、位相を再度揃えるための、犠牲領域を設けるか、次に示すようにAR側端面近傍の回折格子をなくすことでも解決できる。波長間隔が広いDFBレーザを作成する場合には、n=1で式(1)を満たすLの値は小さくなるが、Lの整数倍の長さのうちから、所望のDFBレーザの特性上、もっとも望ましい長さを素子長に選べばよい。
例えば、周波数間隔が100GHzのDFBレーザの素子長が487μmであれば、十分にレーザの特性を得ることができる。また、周波数間隔が200GHzのDFBレーザの場合には、素子長を234μm、467μmのいずれの値でも両端面が揃うため、より、設計は自由になる。以上のようにして、半導体ウェハW上において、導波路方向に連続して複数の発光素子を形成することが容易となり、半導体ウェハWから多数の半導体レーザを効率良く作成できる。
一方、DFBレーザの特性を最適化するために必要であれば、素子長は必ずしもLの整数倍にする必要は無い。以下、図8を用いて説明する。図8は、半導体ウェハW上に形成された複数のDFBレーザを示す模式図である。
図8の領域Sに示すように、DFBレーザR3に隣接して作製するDFBレーザR4を各々の高反射膜を設ける側の一端Eh5,Eh6で対向して接触するように作成する。対して、低反射膜側の一端Ea5またはEa6においては、回折格子をそれぞれ形成しないようにしてもよい。例えば、劈開位置のあわせ精度の範囲、具体的には、低反射膜側の一端Ea5,Ea6からそれぞれ10μmの範囲には回折格子を形成しないようにしてもよい。すなわち、隣接するDFBレーザR3、R4間で高反射膜側の一端Eh5,Eh6は向かい合うように配置し、他方の低反射膜側の一端Ea5,Ea6の近傍には、例えば10μmの範囲で回折格子を形成しないようにしてもよい。さらに、回折格子の深さを補償することにより、フィードバック量の減少を抑制してもよい。
これにより、DFBレーザの素子長をLの整数倍にしない場合であっても、半導体ウェハW上に効率的に発光素子を作成することができる。低反射膜側の一端Ea5,Ea6では、回折格子の端面位相がDFBレーザの特性に与える影響は小さく、低反射膜側の一端Ea5,Ea6まで回折格子が形成されている必要は必ずしも無いためである。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、一つのDFBレーザにおいて発光素子が4つ設けられている例を示したが、発光素子の数は2以上であればよい。また、上記実施形態では、回折格子層が活性層上に設けられている例を示したが、回折格子層が活性層下に設けられていても良い。また、上記実施形態では、n型基板上に半導体層を積層するDFBレーザを例示したが、p型基板上に半導体層を積層するDFBレーザでもよい。いずれの場合においても、本実施形態と同様の効果が得られる。
1…基板、2…下部クラッド層、3…活性層、4,4a,4b,4c,4d…回折格子層、5…上部クラッド層、6…コンタクト層、7…上部電極、8…下部電極、100…DFBレーザ。
Claims (7)
- 分布帰還型半導体レーザであって、
互いに異なる発振波長を有する複数の発光素子と、
前記半導体レーザの一端に設けられた高反射膜と、
前記半導体レーザの他端に設けられ、前記高反射膜よりも反射率の低い低反射膜と、を備え、
前記複数の発光素子の各々は、活性層と、前記活性層の下側または上側に設けられた回折格子層とを有し、
前記半導体レーザの前記一端において、当該複数の回折格子層の回折格子の端面位相が互いに揃っている分布帰還型半導体レーザ。 - 前記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における凸部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における凸部の中心とが揃っていることにより、前記端面位相が互いに揃っている請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ。
- 前記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における凹部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における凹部の中心とが揃っていることにより、前記端面位相が互いに揃っている請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ。
- 前記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における左側傾斜部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における左側傾斜部の中心とが揃っていることにより、前記端面位相が互いに揃っている請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ。
- 前記一端において、当該複数の回折格子層のうちの一つの回折格子層の周期における右側傾斜部の中心と、前記一つの回折格子層とは異なる他の回折格子層の周期における右側傾斜部の中心とが揃っていることにより、前記端面位相が互いに揃っている請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ。
- 前記他端には前記回折格子が形成されていない請求項1に記載の分布帰還型半導体レーザ。
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