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JP2010111758A - 樹脂組成物、プリプレグ、積層板及びプリント基板 - Google Patents

樹脂組成物、プリプレグ、積層板及びプリント基板 Download PDF

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JP2010111758A JP2008285076A JP2008285076A JP2010111758A JP 2010111758 A JP2010111758 A JP 2010111758A JP 2008285076 A JP2008285076 A JP 2008285076A JP 2008285076 A JP2008285076 A JP 2008285076A JP 2010111758 A JP2010111758 A JP 2010111758A
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Abstract

【課題】接着性、低熱膨張性、低誘電損失性、低導体失性及び加工性をすべて満たす高周波対応配線板材料並びにそれを用いた多層プリント基板及び電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】架橋成分を70〜90重量部、破断伸び率が700%以上である高分子量成分を10〜30重量部、無機フィラーを150〜400重量部含有する樹脂組成物を絶縁層に用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂組成物、プリプレグ、積層板及びプリント基板に関する。
近年、電子機器は小型化、軽量化が進行し、それに用いるプリント基板には、多層化、微細配線化による高密度配線が要求されている。高密度配線を実現するため、プリント基板には、基板上の微細配線の信頼性向上を目的として、高接着性、及び相間接続配線の信頼性を向上させる低熱膨張性が要求されている。
一方、PHS、携帯電話等の情報通信機器の信号帯域、コンピューターのCPUクロックタイムはGHz帯に達し、高周波数化が進行している。電気信号の伝送損失は、誘電損失と導体損失と放射損失との和で表され、電気信号の周波数が高くなるほど、誘電損失、導体損失及び放射損失は大きくなる関係にある。
伝送損失は、電気信号を減衰させ、電気信号の信頼性を損なうため、高周波信号を取り扱う配線板においては、誘電損失、導体損失、放射損失の増大を抑制する工夫が必要である。
誘電損失は、回路を形成する絶縁体の比誘電率の平方根、誘電正接及び使用される信号の周波数の積に比例する。そのため、絶縁体として比誘電率及び誘電正接の小さな絶縁材料を選定することによって誘電損失の増大を抑制することができる。
導体損失は、一般に、導体層の表面粗さを小さくすることによって低減される。しかし、導体層の表面粗さを小さくすると、絶縁層との接着性が低下するという新たな問題を生じる。高接着性、低誘電損失性及び低熱膨張性をすべて満たす樹脂組成物、基板材料の開発が求められている。
従来の代表的な低誘電率で、且つ、低誘電正接である樹脂材料を以下に示す。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるフッ素樹脂は、比誘電率及び誘電正接がともに低いため、古くから高周波信号を扱う基板材料に使用されている。
これに対して、有機溶剤によるワニス化が容易で、成型温度及び硬化温度が低く、取り扱い易い、非フッ素系の低誘電率、低誘電正接の絶縁材料も種々検討されてきた。
例えば、特許文献1に記載のポリブタジエン等のジエン系ポリマーをガラスクロスに含浸して過酸化物で硬化した例がある。
また、特許文献2に記載のように、シアネートエステル、ジエン系ポリマー及びエポキシ樹脂を加熱してBステージ化した例がある。
特許文献3記載のアリル化ポリフェニレンエーテル及びトリアリルイソシアネート等からなる樹脂組成物の例や、特許文献4、特許文献5に記載の全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物を架橋成分として用いる例など多数が挙げられる。しかし、高接着性、低誘電損失性及び低熱膨張性をすべて満たす系は見出されていない。
一方、配線板の絶縁層には基材としてガラスクロスが含まれる場合が多く、基材の低誘電率、低誘電正接化の検討も種々行われてきた。例として、特許文献6に記載の酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素等の配合比を規定したNEガラスクロス、特許文献7に記載の石英ガラス繊維と非石英ガラス繊維を複合化したガラスクロス、特許文献8に記載の直径7μm以下の細線石英ガラス繊維、それを用いたクロスの製造方法等を挙げることができる。低誘電率、且つ低誘電正接であるクロス又は不織布と、高接着性、低誘電損失性及び低熱膨張性をすべて満たす樹脂組成物とを複合化することによって高周波信号の伝送特性に優れ、微細配線加工に対応しつつ、優れた信頼性を有する高周波用プリント基板、多層プリント基板及びそれに用いる積層板、プリプレグ等の配線板材料を得ることができる。
また、特許文献9には、ポリフェニレンエーテルの優れた特性を維持しながら、低沸点の汎用溶剤に可溶で、配線基板のプロセス加工性に優れた低誘電損失樹脂組成物を提供することを目的として、特定の構造式で示される繰り返し単位からなる共重合体である多層配線基板用低誘電損失樹脂が開示されている。
また、特許文献10には、ワニスの保存安定性に優れ、誘電率、誘電正接が低く高耐熱性である樹脂組成物及び該組成物を用いた硬化性フィルムを提供することを目的として、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体の末端をスチレン化した化合物と二重結合を有するスチレン系熱可塑性エラストマーに特定の重合禁止剤もしくは酸化防止剤を組み合わせた硬化性樹脂組成物が開示されている。
さらに、特許文献11には、線膨張係数が小さく、十分な強度、耐熱性および耐薬品性を有し、且つ、良好な誘電特性を示す熱可塑性樹脂および該熱可塑性樹脂から得られる自動車外板成形品を提供することを目的として、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)、ポリスチレン樹脂(B)、比誘電率が50以上である無機フィラー(C)及びアスペクト比が5以上の板状及び/若しくは針状の無機フィラー(D)を含有し、(A)と(B)の含有量の重量比が70/30〜10/90であり、(A)および(B)の合計100重量部あたりの(C)の含有量が10〜250重量部であり、(A)および(B)の合計100重量部あたりの(D)の含有量が1〜100重量部であり、且つ(A)が連続相を成形する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
特許文献12には、優れた耐熱性、電気絶縁性、誘電特性、熱伝導性を有する相溶性の良好な複合材料を提供することを目的として、特定のポリエーテルイミド、特定のポリフェニレンオキシド、シラン系カップリング剤、フィラー、およびスチレン系共重合体もしくはジビニル系化合物からなる複合材料が開示されている。
特開平08−208856号公報 特開平11−124491号公報 特開平09−246429号公報 特開2002−249531号公報 特開2005−89691号公報 特開平9−74255号公報 特開2005−336695号公報 特開2006−282401号公報 特開2006−93690号公報 特開2007−191681号公報 特開2005−97477号公報 特開平6−1911号公報
特許文献5においては、誘電正接の値が極めて低い多官能スチレン化合物を架橋成分とする樹脂組成物を石英ガラスクロスに含浸したプリプレグ、積層板、配線板、多層配線板等の配線板材料が開示されており、その絶縁層の誘電正接は10GHzにおいて0.0009と極めて優れた特性を示す。しかし、特許文献5に記載された積層板、配線板及び多層配線板は、穴あけ加工性(ドリル加工性)に対する配慮が欠けている。すなわち、石英ガラスクロスは非常に硬く、ドリル等による穴あけ加工性が一般ガラスクロスを用いた場合に比べて劣る。また、石英ガラスクロスの作製に用いられる石英ガラス繊維は生産性が低く、安定供給性及びコストにおいて課題があった。
我々は、石英ガラスクロスの低誘電正接性を維持しつつ、加工性を改善する技術として、石英繊維と、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン繊維とを複合化した複合クロスを用いる技術や、薄く疎密な構造を有する薄物石英クロスを適用する技術を見出し、検討を進めてきた。
その結果、複合クロス及び薄物石英クロスの実用化に向けた共通の課題として、積層板、プリント基板とした際のZ方向の熱膨張係数(以下、熱膨張係数と略す)の低減を見出した。
これは、複合クロスの場合、クロス中に含まれるオレフィン繊維の影響により熱膨張係数が大きくなる傾向にあり、薄物石英クロスの場合、プリプレグの製造時に樹脂組成物が過剰に塗布され易いために系内の低熱膨張成分であるガラス繊維等の含有量が低下して積層板、プリント基板の熱膨張係数が増大するものであった。この問題は、樹脂組成物中に石英等の低熱膨張性の無機フィラーを高充填することによって解決されると考える。
しかし、一般に、無機フィラーを高充填した樹脂組成物は硬く、脆い硬化物を形成するため、導体層との接着力が低下するという新たな問題を生じる。
本発明は、無機フィラーの充填密度を高めるとともに、接着力を向上させた低熱膨張性樹脂組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、本技術を低誘電損失樹脂組成物及び加工性の優れた低誘電損失クロスとの複合化材料である配線板材料に応用し、低誘電損失性、低熱膨張性、高接着性及び優れたドリル加工性をすべて満たす樹脂組成物、並びにこの樹脂組成物を用いるプリプレグ、積層板、プリント基板及び多層プリント基板を提供することを目的とする。
本発明の樹脂組成物は、架橋成分70〜90重量部と、高分子量成分10〜30重量部と、無機フィラー150〜400重量部とを含有する樹脂組成物であって、前記高分子量成分の破断伸び率が700%以上であることを特徴とする。
本発明のプリプレグは、上記樹脂組成物をクロス又は不織布に含浸したことを特徴とする。
本発明の積層板は、上記プリプレグの硬化物の片面又は両面に導体層を有することを特徴とする。
本発明のプリント基板は、上記プリプレグの硬化物の片面又は両面に導体配線を有することを特徴とする。
本発明によれば、導体層との高接着性及び低熱膨張性を両立した樹脂組成物、並びにこれを用いたプリプレグ、積層板等の配線板材料、プリント基板及び多層プリント基板を得ることができる。
さらに、本発明によれば、低誘電損失材料である熱硬化性ポリフェニレンエーテル、スチレン系エラストマー、酸化ケイ素フィラーを複合化した樹脂組成物と石英繊維とオレフィン繊維を複合化した複合クロス又は薄物石英クロスとを複合化することによって、低伝送損失性及び優れたドリル加工性をも有するプリプレグ、積層板等の配線板材料、並びにこれを用いた高周波用プリント基板及び多層プリント基板を得ることができる。
本発明は、低熱膨張性及び高接着性を両立する多層プリント基板、プリント基板並びにそれを製造するために用いる樹脂組成物、プリプレグ、積層板などの配線板材料に関し、更に高周波信号の伝送特性にも優れた低誘電率、低誘電正接な多層プリント基板、プリント基板並びにそれを製造するために用いる樹脂組成物、プリプレグ、積層板などの配線板材料に関する。
本発明は、以下の構成を特徴とする。
(1)本発明の樹脂組成物は、架橋成分(A)を70〜90重量部と高分子量成分(B)を10〜30重量部と無機フィラー(C)を150〜400重量部含有する樹脂組成物であって、高分子量成分(B)の破断伸び率が700%以上である。
(2)上記(1)に記載の特徴に加え、前記無機フィラー(C)を251〜400重量部含有する。
(3)上記(1)又は(2)に記載の特徴に加え、架橋成分(A)として硬化性ポリフェニレンエーテル化合物を含有し、高分子量成分(B)として水素添加されたスチレン系エラストマーを含有し、無機フィラーとして球状酸化ケイ素フィラーを含有する。
(4)上記(3)に記載の特徴に加え、硬化性ポリフェニレンエーテルが下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表されるGel Permeation Chromatography測定(以下、GPC測定と称する)におけるスチレン換算数平均分子量が1000〜15000の化合物である。
Figure 2010111758
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(一般式(1)はフェノール誘導体のランダム共重合体を表し、l、mは重合度であり、1以上の整数を表し、前記共重合体は分子量分布を持っていてもよい。R1、R2、R7は水素原子又は炭素数1〜9の炭化水素基を表し、R3〜R6は、同一又は異なって、水素原子あるいは炭素数1〜9の炭化水素基であるが少なくとも1つ以上が炭素数2〜9の不飽和炭化水素基を含む炭化水素基である。一般式(2)はフェノール誘導体の重合体を表し、n、oは重合度であり、1以上の整数を表し、前記共重合体は分子量分布を持っていてもよい。R8は、炭素数1以上の有機基であり、R9〜R16は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜9の炭化水素基、R17〜R18は、水素原子又は炭素数1〜9の炭化水素基を表す。)
(5)上記(3)に記載の特徴に加え、水素添加されたスチレン系エラストマーが、全炭化水素骨格を有し、GPC測定におけるスチレン換算数平均分子量が50000〜100000であり、スチレン含有率が10〜40重量%である。
(6)上記(3)に記載の特徴に加え、球状酸化ケイ素フィラーの平均粒径が0.2〜3μmであり、その表面にビニル系、メタクリレート系、アクリレート系、スチレン系シランカップリング剤の少なくとも1つが担持されている。
(7)上記(3)に記載の特徴に加え、更に、下記一般式(3)又は(4)で表される特定構造の難燃剤の少なくとも1つを含有する。
Figure 2010111758
Figure 2010111758
(8)上記(3)に記載の特徴に加え、更に、下記一般式(5)で表される多官能スチレン化合物、下記一般式(6)で表されるビスマレイミド化合物、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有する1、2−ポリブタジエン化合物の群から選ばれる少なくとも1つの架橋助剤を含有する。
Figure 2010111758
Figure 2010111758
Figure 2010111758
(一般式(5)は、複数のスチレン基を有する多官能スチレン化合物を表し、pは2以上の整数を表し、R21は炭化水素骨格を表し、GPC測定におけるポリスチレン換算重量平均分子量は1000以下である。一般式(6)において、R22は、同一又は異なっている炭素数1〜4の炭化水素基を表し、qは1〜4の整数を表す。一般式(7)は1、2−ブタジエンの繰り返し単位を有する化合物を表し、rは重合度であり、1以上の整数を表し、前記化合物は分子量分布を持っていてもよい。GPC測定におけるスチレン換算数平均分子量が100000〜200000である。)
(9)本発明のプリプレグは、上記(1)又は(2)に記載の樹脂組成物をクロス又は不織布に含浸している。
(10)上記(9)に記載の特徴に加え、クロス又は不織布が石英繊維を含有する。
(11)上記(9)又は(10)に記載の特徴に加え、クロス又は不織布がポリオレフィン繊維を含有する。
(12)本発明の積層板は、上記(9)に記載のプリプレグの硬化物の片面又は両面に導体層を有する。
(13)本発明のプリント基板は、上記(9)に記載のプリプレグの硬化物の片面又は両面に導体配線を有する。
(14)本発明の多層プリント基板は、上記(13)に記載のプリント基板を複数、上記(9)に記載のプリプレグを介して積層接着し、その後、層間配線を形成することにより製造される。
プリント基板、特に、多層プリント基板においては、Z方向の低熱膨張化がスルーホール、ブラインドビアホールを用いた相間接続の信頼性向上の観点から重要な課題である。
一般に、樹脂を低熱膨張化する技術としては、フィラーを高充填する技術が知られている。
しかし、フィラーを高充填した絶縁層は硬く、脆いことから、導体層と絶縁層との接着性が低下する。プリント基板及び多層プリント基板においては、導体層と絶縁層との接着性の向上は重要な課題であり、本業界では0.7kN/m以上が好ましいとされる。
導体層と絶縁層との接着性を改善する技術としては、表面粗さの大きな導体層を適用する技術、樹脂系内にエラストマー成分を添加する技術が知られている。
しかし、表面粗さの増大は、導体損失の増大を招くことから好ましくない。通常、導体の表面粗さ(10点平均表面粗さRz、以下、表面粗さと称す)は7μm程度であるが、高周波信号用プリント基板においては導体層の表面粗さは3μm以下が好ましいとされている。一方、エラストマー成分の増量は接着性の向上に効果を有するものの、熱膨張係数が増加する。また、ゴム成分の増量は、吸湿耐熱性、耐溶剤性の劣化を招くという問題も有する。従来、低熱膨張性と高接着性との両立は困難であった。
我々は、フィラーを高充填した低熱膨張性樹脂組成物に添加するエラストマー成分の物性及び添加量に着目して研究を進め、エラストマー成分の添加量が少ない領域においては樹脂系の低熱膨張性が保たれること、エラストマー成分の添加量が少ない場合においても700%以上の破断伸びを有するエラストマー成分を添加した場合には、特異的に高い接着性が発現することを見出した。これは、導体層を剥離する際に生じる、絶縁層と導体層との界面に生じる応力を系内のゴム成分が効果的に分散し、剥離部分への応力集中を緩和するためであると考えられる。
低熱膨張性と高接着性とを両立する樹脂組成物の基本構成は、架橋成分(A)を70〜90重量部、破断伸び率が700%以上である高分子量成分(B)を10〜30重量部、無機フィラー(C)を150〜400重量部という比率であることが好ましい。上記比率において、無機フィラー(C)は、251〜400重量部であることが更に好ましい。本構成比とすることによって低熱膨張性と高接着性との両立が可能となる。
架橋成分と高分子量成分の組み合わせは、自由に選定できる。両者が同一の単独溶媒又は同一組成の混合溶媒に可溶である組み合わせとすることがワイス化、プリプレグ化といった作業性の観点から好ましい。具体的には、架橋成分が複数のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノール性水酸基を有するフェノール樹脂、複数のシアネート基を有するシアネート樹脂、複数のアクリレート基又はメタクリレート基を有するアクリレート樹脂及びエポキシアクリレート樹脂である場合には、高分子量体としてアクリロニトリルブタジエンゴム、エポキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム、天然ゴム、ポリアミドエラストマー、スチレン含有率50wt%以上のスチレン−ブタジエン共重合体又はスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等の組み合わせが挙げられる。
架橋成分(A)と高分子量成分(B)の配合比は、樹脂成分の総量を100重量部として架橋成分(A)を50〜90重量部配合することが好ましく、更に好ましくは70〜90重量部とする。架橋成分の添加量が少ないと熱膨張係数が大きくなる場合があるほか、耐溶剤性及び耐熱性の低下を招く場合がある。
無機フィラーの配合比は、フィラーの形状、所望の熱膨張係数により任意に調整することが可能であるが、樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数が50ppm/℃以下、更に好ましくは30ppm/℃以下となるように調整することが好ましい。このような構成とすることによって、クロスや不織布の種類によらず、積層板、プリント基板及び多層プリント基板を低熱膨張化することが可能となる。
具体的な無機フィラーの配合比は、樹脂そのものの熱膨張係数に影響されるが、概ね、樹脂成分100重量部に対して150重量部以上添加することが好ましい。更に好ましくは、251重量部以上添加する。更に好ましくは、300重量部以上添加する。球状酸化ケイ素フィラーの添加量の限界は概ね75vol%とされており、樹脂成分の比重を1g/cm、酸化ケイ素の比重を2.65g/cmとした場合には、樹脂成分100重量部に対して796重量部である。なお、成形性を考慮した場合の酸化ケイ素フィラーの添加量は、およそ400重量部以下であることが望ましい。
本発明の低熱膨張性樹脂組成物を高周波機器の絶縁材料に適用する場合には、架橋成分(A)として熱硬化性のポリフェニレンエーテル樹脂を適用することが好ましく、特に好ましい例としては、ワニス化溶媒に対する溶解性が高く、誘電特性も優れているスチレン換算数平均分子量が1000〜15000である、一般式(1)及び(2)で表される熱硬化性ポリフェニレンエーテルを挙げることができる。
架橋成分(A)として熱硬化性ポリフェニレンエーテルを使用した場合には、高分子量成分(B)としてはポリフェニレンエーテルとの相溶に優れるスチレン系エラストマーを用いることが好ましく、特に、その中でも水素添加されたスチレン系エラストマーを使用することが誘電特性の観点から好ましい。水素添加されたスチレン系エラストマーの好ましい例としては、スチレン含有率が10〜40wt%であり、スチレン換算数平均分子量が50000〜100000である水素添加されたスチレン−ブタジエン共重合体のうち、破断伸び率が700%以上の高分子量体を挙げることができる。
そのような高分子量成分の具体例としては、旭化成ケミカルズ(株)製、タフテック(登録商標)H1052、H1221、H1272等を挙げることができる。
無機フィラーとしては、樹脂組成物の硬化物の誘電特性を改善するために酸化ケイ素フィラーを用いることが好ましく、また、フィラーを高充填化するために球状のフィラーを用いることが好ましい。球状酸化ケイ素フィラーの粒径には特に制限は無いが、低熱膨張性樹脂組成物をワニス化した際、ワニス中で著しい沈殿が生じず、且つ表面積が大きいことに起因して低熱膨張化への寄与が大きい小径フィラーを好ましく使用する。具体的な球状酸化ケイ素フィラーの粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.2〜3μmの範囲であることが更に好ましい。球状酸化ケイ素フィラーは、その表面をシラン系カップリング剤にて表面処理して用いることが、誘電特性、低吸湿性、はんだ耐熱性を改善する観点から好ましい。
カップリング剤による球状酸化ケイ素フィラーの表面処理は、予め表面処理を実施したフィラーを樹脂組成物に添加しても良いし、樹脂組成物中にシラン系カップリング剤を添加して樹脂組成物調整中に実施しても良い。本発明において好ましく用いられるシラン系カップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、p−スチリルトリメトキシシラン等を例示することができる。
プリント基板及び多層プリント基板においては、安全性の観点から難燃性が求められる場合が多く、樹脂材料においては、通常、難燃剤の添加による難燃化技術が用いられる。
本発明においては、絶縁層の低熱膨張性と接着性とを両立するため、少なくとも室温において固形である難燃剤を用いることが好ましく、更に低誘電損失性を保つためには一般式(3)及び(4)の構造を有する難燃剤の適用が好ましい。一般式(3)及び(4)で表される難燃剤は誘電正接が低く、高周波信号を取り扱う電気部品の難燃化には好適である。更に難燃剤の平均粒径には特に制限は無いが、平均粒径を0.2〜3.0μmとすることにより、ワニス中における難燃剤の沈殿を抑制することができ、ワニスの保存安定性を改善できることから好ましい。ワニス粘度にもよるが、0.1〜1.0Pa・s(パスカル秒)のワニスにおいて本粒径範囲の難燃剤、酸化ケイ素フィラーを用いることによってその沈殿の発生を抑制することができる。
難燃剤の添加量は、樹脂成分の総量を100重量部として、10〜200重量部の範囲で添加することが好ましく、求める難燃性のレベル、使用するクロス、不織布の種類に合わせて配合量を決定することが望ましい。クロス、不織布にオレフィン繊維を含有する場合には、100重量部以上添加することが望ましい。
本発明では、更に、誘電特性、ワニス粘度及び成膜性を調整することを目的として、一般式(5)、(6)及び(7)で表される架橋助剤を添加することができる。一般式(5)で表される全炭化水素骨格の多官能スチレン化合物は、その構造中にヘテロ原子を含有しないため、樹脂組成物の硬化物の誘電正接を一層低減する機能を有する。
一般式(5)の多官能スチレン化合物は反応性が高いことから、硬化触媒を添加することなく樹脂系を硬化することが可能になる。硬化触媒は構造中にヘテロ原子を有することから、硬化触媒の除去による誘電正接の低減効果も期待される。
一般式(6)で表される特定構造のビスマレイミド化合物は、詳細は不明であるが、ワニスに添加することによってワニス粘度を低減する効果を有し、その誘電正接はマレイミド化合物としては小さい。
一般式(7)で表される1、2−ポリブタジエン化合物は、高分子量体であるためワニス粘度を増加させる効果を有し、プリプレグの成膜性を向上するとともに、プリプレグの可とう性向上に寄与する。また、全炭化水骨格であり、芳香環を持たないため、誘電率の低減に寄与する。
各架橋助剤の配合比は、低熱膨張性、接着性、誘電特性を損なわないために、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂を70〜90重量部として架橋助剤を30〜10重量部とすることが好ましい。
一般式(5)で表される多官能スチレン化合物の例としては、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン、1、2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン、ビス(p−ビニルフェニル)メタン、ビス(m−ビニルフェニル)メタン、p−ビニルフェニル−m−ビニルフェニルメタン、1、4−ビス(p−ビニルフェニル)ベンゼン、1、4−ビス(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニル)−4−(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1、3−ビス(p−ビニルフェニル)ベンゼン、1、3−ビス(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1−(p−ビニルフェニル)−3−(m−ビニルフェニル)ベンゼン、1、6−ビス(p−ビニルフェニル)ヘキサン、1、6−ビス(m−ビニルフェニル)ヘキサン、1−(p−ビニルフェニル)−6−(m−ビニルフェニル)ヘキサン、及び側鎖にビニル基を有するジビニルベンゼン重合体(オリゴマー)等を挙げることができ、これらは単独あるいは二種類以上の混合物として使用される。
一般式(6)で表されるビスマレイミド化合物の例としては、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3、5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−n−ブチル−4−マレイミドフェニル)メタン等がある。
一般式(7)で表される1、2−ポリブタジエン化合物の例としては、JSR(株)製RB810、RB820及びRB830を挙げることができる。
本発明では、熱硬化反応の促進及び低温化を目的として、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤は、架橋成分の官能基の種類によって適宜選定する。一般式(1)又は(2)で表される熱硬化性ポリフェニレンエーテルを架橋成分とする場合には、ラジカル重合開始剤適用することが好ましい。ラジカル重合開始剤の種類によって硬化反応の開始温度を調整することができる。
ラジカル重合開始剤の例としては、イソブチルパーオキサイド、α、α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカルボネート、1、1、3、3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、1−シクロへキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカルボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカルボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジデカネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカルボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、3、5、5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、1、1、3、3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2、5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイドを挙げることができ、これらの開始剤は複合化して用いることができる。その添加量は、樹脂成分の総量を100重量部として0.0005〜20重量部の範囲で調整される。
更に、ワニス、プリプレグ作製時の加熱による硬化反応を抑制するとともに、プリプレグ保管時の硬化反応の進行を抑制することを目的として重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤は、架橋成分の官能基の種類によって適宜選定する。一般式(1)又は(2)で表される熱硬化性ポリフェニレンエーテルを架橋成分とする場合には、ラジカル重合禁止剤を適用することが好ましい。その例としては、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、クロラニル、トリメチルキノン、4−t−ブチルピロカテコール等のキノン類及び芳香族ジオール類が挙げられ、好ましい添加量の範囲は0.0005〜5重量部である。
本発明で用いられる樹脂組成物のワニス化溶媒は、その沸点が140℃以下であることが好ましく、そのような溶媒としてはキシレンを例として挙げることができ、更に好ましくは、沸点が110℃以下であることが好ましく、そのような溶媒としては、トルエン、シクロヘキサン等が例示される。これらの溶媒は、混合して用いても良く、更に、無機フィラーのカップリング処理に使用されるメチルエチルケトン、メタノール等の極性溶媒を含有しても良い。ワニス濃度は、40〜65wt%が好ましく、樹脂組成物を構成する架橋成分(A)、高分子量体(B)の種類、配合量によってワニス粘度を0.1〜1.0Pa・s(パスカル秒)に適宜調整する。
プリプレグは、上記樹脂組成物のワニスをクロス又は不織布に含浸、乾燥して作製することができる。乾燥条件は、乾燥温度が80〜150℃であることが好ましく、更に、乾燥時の不要な硬化反応を抑制しつつ、十分に乾燥するために、乾燥温度が80〜110℃であることが好ましい。乾燥時間は10〜90分の範囲にあることが好ましい。
クロス及び不織布の材質には、特に制限は無いが、高周波機器用絶縁材料に適用する場合には、石英繊維とオレフィン繊維とを複合化した複合クロス、薄く疎密な構造を有する薄物石英クロスを適用することが好ましい。複合クロスは、オレフィン繊維とガラス繊維とを共に含む糸を作製し、この混合糸を用いて作製するのが好ましい。オレフィン繊維とガラス繊維とは、破断伸び率が異なり、そのためにオレフィン繊維糸とガラス繊維糸を用いて交互織りした場合には、両繊維の伸縮度の違いにより、クロスに皺(しわ)や捩れ(よじれ)が発生する場合があるからである。
また、ガラス繊維とオレフィン繊維の直径は、5〜20μmの範囲にあることが望ましい。繊維径が大きすぎると、基材の折り目が粗く、表面の凹凸の大きくなることから、プリプレグ及び積層板の概観を損なうため好ましくない。また、繊維系が小さすぎると、織りの際に繊維の切断が生じ易くなるため好ましくない。石英繊維とポリオレフィン繊維との配合比は、積層板、プリント基板及び多層プリント基板の低熱膨張性を保つために40/60重量比〜60/40重量比であることが好ましい。
薄物石英ガラスクロスの好ましい構成は、フィラメント径が5〜9μmである溶融石英ガラス繊維を15〜49本含有する石英ガラス糸を用いて作製される石英ガラスクロスであって、縦糸及び横糸の織り密度が30〜70本/25mmであり、単位面積当たりの重量が10〜18g/m、厚さが15〜30μmである疎な石英ガラスクロスである。
本構成をとることによって、プリプレグ1層あたりの石英繊維含有量が低減できるため、ドリル加工性を改善することができる。薄物石英クロスを適用したプリプレグは1層あたりの膜厚を10〜50μmとすることが可能であり、電子機器の薄型化に寄与できる。
本発明のプリプレグの樹脂含有率は50〜90wt%である。50wt%よりも低いと、十分な成形性を確保することができない場合があり、90wt%を超えると成型時に樹脂の流動性が高くなりすぎ、クロスが破断する場合がある。より好ましい樹脂含有率の範囲は60〜80wt%である。
前述のように作製されたプリプレグの硬化物の両面又は片面に導体層を設置して積層板が製造される。導体層の設置はプリプレグ上に導体箔を重ね、熱プレスによって加熱、加圧し、導体箔との接着とプリプレグの硬化を同時に行うことが作業性の観点から好ましい。なお、本発明の樹脂組成物は、低熱膨張性を有することから、導体箔上に樹脂組成物ワニスを塗布、乾燥して作製した樹脂つき導体箔をプリプレグの替わりに用いてもよい。樹脂つき導体箔は、クロス、不織布を構造中に含んでいないため、ドリル加工性が更に向上するほか、レーザー穴あけ加工も容易である。
本発明のプリプレグや積層板を用いて、定法の配線加工、多層化及び相間接続の工程を経てプリント基板や多層プリント基板を作製することができる。
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、試薬及び評価方法を示す。
(1)1、2−ビス(ビニルフェニル)エタン(BVPE)の合成
500mlの三口フラスコにグリニャール反応用粒状マグネシウム(関東化学製)5.36g(220mmol)を取り、滴下ロート、窒素導入管及びセプタムキャップを取り付けた。窒素気流下、スターラーによってマグネシウム粒を撹拌しながら、系全体をドライヤーで加熱脱水した。乾燥テトラヒドロフラン300mlをシリンジに取り、セプタムキャップを通じて注入した。溶液を−5℃に冷却した後、滴下ロートを用いてビニルベンジルクロライド(東京化成製)30.5g(200mmol)を約4時間かけて滴下した。滴下終了後0℃で20時間撹拌を続けた。
反応終了後、反応溶液をろ過して残存マグネシウムを除き、エバポレーターで濃縮した。濃縮溶液をヘキサンで希釈して、3.6%塩酸水溶液で1回、純水で3回洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで脱水した。脱水溶液をシリカゲル(和光純薬製ワコーゲルC300)/ヘキサンのショートカラムに通して精製し、最後に、真空乾燥により目的のBVPEを得た。得られたBVPEは、1、2−ビス(p−ビニルフェニル)エタン(PP体、固体)、1、2−ビス(m−ビニルフェニル)エタン(mm体、液体)、1−(p−ビニルフェニル)−2−(m−ビニルフェニル)エタン(mp体、液体)の混合物で収率は90%であった。
H−NMRにより構造を調べたところ文献値と一致した(6H−ビニル:α−2H(6.7)、β−4H(5.7、5.2);8H−アロマティック(7.1〜7.4);4H−メチレン(2.9))。得られたBVPEを架橋成分として用いた。
(2)熱硬化性ポリフェニレンエーテル(一般式(1)の化合物)の合成
攪拌子を入れた2口フラスコに、ジ−μ−ヒドロキソビス[(N、N、N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン)銅(II)]二塩化物:0.464g(1.0mmol)、水:4ml、テトラメチルエチレンジアミン:1mlを加えて攪拌した。攪拌停止後、2、6−ジメチルフェノール:9.90g(81.0mmol)、2−アリル−6−メチルフェノール:1.34g(9.0mmol)をトルエン:50ml(ミリリットル)に溶解した溶液をフラスコに静かに加え、40ml/min(ミリリットル毎分)又は50ml/minの酸素雰囲気下500〜800rpmで攪拌した。酸素雰囲気下で6時間攪拌した。
反応終了後、大過剰の塩酸/メタノールに沈殿させ、メタノールで洗浄後、トルエンに溶解させ、不溶物を濾別した。再びトルエンに溶解後、大過剰の塩酸/メタノールに再沈殿させ、メタノールで洗浄後、120℃/2時間、150℃/30分真空乾燥して白色の固形物を得た。固形物の分子量及び分子量分布は、Mn=15000、Mw/Mn=1.7であった。
(3)その他の試薬
熱硬化性ポリフェニレンエーテル(一般式(2)の化合物)、OPE2St、スチレン換算数平均分子量2200、三菱ガス化学(株)製
ビスマレイミド:BMI−5100、3、3’−ジメチル−5、5’−ジエチル−4、4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、大和化成工業(株)製
高分子量ポリブタジエン:RB810、スチレン換算数平均分子量130000、1、2−結合90%以上、JSR(株)製
水素添加したスチレン−ブタジエン共重合体:
タフテック(商標)H1043、スチレン含量率67wt%、Mn76000、破断伸び率20%、旭化成ケミカルズ(株)製
タフテック(商標)H1051、スチレン含量率42wt%、Mn75000、破断伸び率600、旭化成ケミカルズ(株)製
タフテック(商標)H1031、スチレン含量率30wt%、Mn53000、破断伸び率650%、旭化成ケミカルズ(株)製
タフテック(商標)H1052、スチレン含量率20wt%、Mn72000、破断伸び率700%、旭化成ケミカルズ(株)製
タフテック(商標)H1221、スチレン含量率12wt%、Mn71000、破断伸び率980%、旭化成ケミカルズ(株)製
タフテック(商標)H1272、スチレン含量率35wt%、Mn74000、破断伸び率950%、旭化成ケミカルズ(株)製
硬化触媒:2、5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(略称25B)、日本油脂(株)製
難燃剤:SAYTEX8010、1、2−ビス(ぺンタブロモフェニル)エタン、平均粒径1.5μm、アルべマール日本(株)製
酸化ケイ素フィラー:アドマファイン、平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製
カップリング剤:KBM−503、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、信越化学工業(株)製
銅箔:AMFN1/2Oz、カップリング処理付銅箔、厚さ18μm、Rz≒2.1μm、(株)日鉱マテリアルズ製
複合クロス:石英繊維Φ7μm=60wt%、ポリプロピレン繊維Φ20μm=40wt%:信越石英(株)製
薄物石英クロス:石英繊維Φ7μm、糸内の繊維数40本、縦糸60本/25mm、横糸43本/25mm、信越石英(株)製
(3)ガラスクロスの表面処理
ガラスクロスを0.5wt%のKBM503メタノール溶液に1時間浸し、次いでガラスクロスをメタノール溶液から取り出し、大気中で100℃/30分間加熱して乾燥し、表面処理を実施した。
(4)ワニスの調製方法
所定量のカップリング剤、フィラーをメチルエチルケトン溶液中でボールミルにて2時間攪拌し、フィラーにカップリング処理を施した。次いで所定量の樹脂材料、難燃剤、硬化触媒、トルエンを加えて樹脂成分が完全に溶解するまで約8時間攪拌を続けてワニスを作製した。ワニス濃度は45〜65wt%とした。
(5)硬化物(樹脂板)の作製方法
樹脂ワニスをPETフィルムに塗布して室温で一夜、100℃で10分間乾燥した後、これを剥離してPTFE製の厚さ1.0mmのスペーサ内に充填し、真空プレスによって加圧、加熱して硬化物を得た。硬化条件は真空下、室温から2MPaに加圧し、一定速度(6℃/分)で昇温し、180℃で60分間保持とした。
(6)プリプレグの作製方法
上記ワニスにクロスを浸漬した後、所定のギャップを有するスリットの間を一定速度で垂直に引き上げて、その後乾燥して作製した。スリットのギャップにより樹脂の塗布量を調節した。乾燥条件は、100℃/10分間とした。
(7)銅張積層板の作製方法
上記で作製したプリプレグを4枚数積層し、上下面を銅箔でサンドイッチして、真空プレスにより、加圧、加熱して硬化した。硬化条件は室温から6MPaに加圧し、一定速度(6℃/分)で昇温し、180℃で60分保持とした。
(8)比誘電率及び誘電正接の測定
空洞共振法(8722ES型ネットワークアナライザー、アジレントテクノロジー製:空洞共振器、関東電子応用開発製)によって、10GHzの値を測定した。銅張積層板から作製される試料は銅をエッチング除去した後、1.0×80mmの大きさに切り出して作製した。樹脂板から作製される試料は、樹脂板から1.0×1.5×80mmの寸法に切り出して作製した。
(9)熱膨張係数の評価
熱膨張係数は、アルバック理工(株)製TM9300型熱機械試験機を用い、窒素雰囲気下、積層板の厚さ方向(Z方向)の値を観測した。試料は積層板を5×5mmの寸法に切り出し、175℃でアニール処理してサンプルとした。昇温速度は10℃/分とし、50〜100℃の間の熱膨張係数を求めた。
(10)耐溶剤性
硬化後の積層板から銅箔をエッチング除去し、20×20mmのサイズに切り出した後、110℃で2時間乾燥してサンプルとした。サンプルの初期重量を観測した後、室温でトルエンに20時間浸した。その後、トルエン中から試料を取り出し、110℃で2時間乾燥し、処理後のサンプル重量を観測した。(初期重量−処理後の重量)/初期重量×100の計算により溶出率を求め、溶出率が0.1wt%以上の試料を不良とした。
(11)破断伸び率の測定
破断伸び率の測定は、日本工業規格(JIS K6251)に準拠して行った。
用いたサンプルは3号ダンベル、引張り速度は500mm/分とし、サンプルが破断するまでの伸びの変化を測定した。
(12)ピール強度の測定
ピール強度の測定は、日本工業規格(JIS C6481)に準拠して行った。
以下、表1及び2に実施例、比較例の構成及び特性を示した。
(実施例1〜3)
実施例1〜3は、高分子量成分として破断伸び率が700%以上のエラストマーを20重量部添加した樹脂組成物の例である。フィラーの添加量が高く、樹脂成分中に占める高分子量成分の含有率が低いため、オレフィン繊維を含有する複合クロスを用いたにも係わらず、積層板の厚さ方向の熱膨張係数は30ppm/℃レベルの低熱膨張性が確認された。また、破断伸び率が700%以上のエラストマーを配合した効果として、表面粗さRzが2.1μmと小さな銅箔を用いたにも係わらず、0.7kN/m以上の高いピール強度が確認された。
(実施例4〜6)
実施例4〜6は、架橋助剤の成分を変更した例である。架橋助剤として多官能スチレン化合物BVPEを添加した系は、積層板の誘電特性のうち、特に誘電正接が低減される。架橋助剤として特定構造のビスマレイミド化合物を添加した系では、ワニス粘度が他の系に比べて低いことが確認される。架橋助剤としてポリブタジエンを添加した系では、ワニス粘度が上昇したことが確認される。
以上のことから、架橋助剤を加えることによって、誘電特性の改善及びワニス粘度の調整が可能であることが確認された。
(実施例7)
実施例7は、薄物石英クロスを用いた例である。オレフィン繊維を含まない薄物石英クロスを用いることによって、更に低熱膨張化できることが確認された。また、1層当たりのプリプレグが薄膜化でき、単位面積あたりの化学物質の使用量を低減できることが確認された。
(比較例1〜3)
比較例1〜3は、高分子量成分として破断伸び率が650%以下のエラストマーを20重量部添加した樹脂組成物の例である。破断伸び率が低いエラストマーを配合したため、ピール強度は0.5kN/m以下と低い値を示した。
(比較例4)
比較例4は、高分子量成分を増量した樹脂組成物の例である。高分子量成分を増量することによってピール強度は0.7kN/mと高い値を示すものの、熱膨張係数が増大し、また、耐溶剤性が低下することが判明した。高分子量成分の増量は、低熱膨張化、耐溶剤性向上の観点から好ましくない。
Figure 2010111758
Figure 2010111758
(実施例8)
実施例8では、実施例7のプリプレグを用いて作製したアンテナ回路内蔵高周波基板を作製した。工程を図2に示した。
(A)実施例7のプリプレグを10×10cmに切断して10枚積層し、積層プリプレグ2とし、2枚の銅箔1で挟み込んだ。真空プレスによって、5MPaの圧力で加圧しながら、真空下、昇温速度6℃/分の条件で昇温し、230℃で1時間保持して両面銅張積層板101を作製した。次いで、両面銅張積層板101を30℃のエッチング液(過硫酸アンモニウムペルオキシド200g/リットル、硫酸50g/リットル)に10分間浸し、銅層の厚さを8μmに低減した。
(B)両面銅張積層板101の片面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートしてフォトレジストアンテナパターン3を形成し、アンテナ回路接続用スルーホール部分にマスクを施し、露光した。次いで、残る銅箔1表面にフォトレジスト(日立化成製HS425)をラミネートしてフォトレジストスルーホールパターン4を形成し、アンテナのテストパターンを露光し、両面の未露光部分のフォトレジストを1%炭酸ナトリウム液で現像した。
(C)硫酸5%、過酸化水素5%のエッチング液で露出した銅箔をエッチング除去して、両面銅張積層板101にアンテナパターン5及びスルーホールパターン6を作製した。3%水酸化ナトリウム溶液で残存するフォトレジストを除去した。
(D)スルーホールパターン6側に1枚のプリプレグ102を介して銅箔103を積層し、上記(A)と同様の条件でプレス加工して多層化した。
(E)新たに設置した導体層(銅箔103)に上記(B)及び(C)と同様の方法で、配線パターン7(配線回路)及びスルーホールパターン106を加工した。
(F)外層のスルーホールパターン106をマスクとして、炭酸ガスレーザーによりスルーホール8を形成した。
(G)スルーホール8内に銀ペースト9を導入し、アンテナパターン5(アンテナ回路)と裏面の配線(配線パターン7)とを接続し、アンテナ回路直下にシールド層を有するアンテナ内臓プリント配線板を作製した。
(実施例9〜10)
実施例9及び10は、フィラー成分の添加量を変更した例である。表3に示すように、フィラー成分を増量することによって積層板の低熱膨張化が促進され、破断伸びの高いエラストマー成分の効果により、高いピール強度が保持されることが確認された。
Figure 2010111758
本発明の樹脂組成物、プリプレグ、積層板及びプリント基板は、薄く、軽量で加工性に優れ、誘電正接が低く、誘電損失が低いことから高速サーバー、ルーター、ミリ波レーダー等の高周波対応電子機器の絶縁部材に好適である。
高分子量成分の破断伸び率とピール強度との関係を示すグラフである。 アンテナ内蔵基板の作製工程を示す模式断面図である。
符号の説明
1:銅箔、2:積層プリプレグ、3:フォトレジストアンテナパターン、4:フォトレジストスルーホールパターン、5:アンテナパターン、6:スルーホールパターン、7:配線パターン、8:スルーホール、9:銀ペースト、101:両面銅張積層板。

Claims (14)

  1. 架橋成分70〜90重量部と、高分子量成分10〜30重量部と、無機フィラー150〜400重量部とを含有する樹脂組成物であって、前記高分子量成分の破断伸び率が700%以上であることを特徴とする樹脂組成物。
  2. 前記無機フィラーを251〜400重量部含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. 前記架橋成分が硬化性ポリフェニレンエーテル化合物であり、前記高分子量成分が水素添加されたスチレン系エラストマーであり、前記無機フィラーが球状酸化ケイ素フィラーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記硬化性ポリフェニレンエーテルは、下記一般式(1)又は下記一般式(2)で表され、GPC測定におけるスチレン換算数平均分子量が1000〜15000の化合物であることを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
    Figure 2010111758
    Figure 2010111758
    (一般式(1)は、フェノール誘導体のランダム共重合体を表し、l、mは、1以上の整数で表す重合度である。R1〜R7は、水素原子又は炭素数1〜9の炭化水素基を表し、R3〜R6のうち、少なくとも1つ以上が炭素数2〜9の不飽和炭化水素基を含む炭化水素基である。また、一般式(2)はフェノール誘導体の重合体を表し、n、oは、1以上の整数で表す重合度である。R8は、炭素数1以上の有機基であり、R9〜R16は、水素原子又は炭素数1〜9の炭化水素基、R17〜R18は、水素原子又は炭素数1〜9の炭化水素基を表す。)
  5. 前記スチレン系エラストマーは、全炭化水素骨格を有し、GPC測定におけるスチレン換算数平均分子量が50000〜100000であり、スチレン含有率が10〜40重量%であることを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
  6. 前記球状酸化ケイ素フィラーの平均粒径が0.2〜3μmであり、その表面にビニル系、メタクリレート系、アクリレート系及びスチレン系のシランカップリング剤から選択される少なくとも1つが担持されていることを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
  7. 更に一般式(3)又は(4)で表される難燃剤を含有することを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
    Figure 2010111758
    Figure 2010111758
  8. 更に下記一般式(5)で表される多官能スチレン化合物、下記一般式(6)で表されるビスマレイミド化合物、下記一般式(7)で表される繰り返し単位を有する1、2−ポリブタジエン化合物の群から選ばれる少なくとも1つの架橋助剤を含有することを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
    Figure 2010111758
    Figure 2010111758
    Figure 2010111758
    (一般式(5)は、複数のスチレン基を有する多官能スチレン化合物を表し、pは2以上の整数を表し、R21は炭化水素骨格を表し、GPC測定におけるポリスチレン換算重量平均分子量は1000以下である。一般式(6)において、R22は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、qは1〜4の整数を表す。一般式(7)は、1、2−ブタジエンの繰り返し単位を有する化合物を表し、rは重合度であり、1以上の整数を表す。GPC測定におけるスチレン換算数平均分子量が100000〜200000である。)
  9. 請求項1又は2に記載の樹脂組成物をクロス又は不織布に含浸したことを特徴とするプリプレグ。
  10. 前記クロス又は不織布が石英繊維を含有することを特徴とする請求項9記載のプリプレグ。
  11. 前記クロス又は不織布がポリオレフィン繊維を含有することを特徴とする請求項9又は10に記載のプリプレグ。
  12. 請求項9記載のプリプレグの硬化物の片面又は両面に導体層を有することを特徴とする積層板。
  13. 請求項9記載のプリプレグの硬化物の片面又は両面に導体配線を有することを特徴とするプリント基板。
  14. 請求項9記載のプリプレグを介して、請求項13記載のプリント基板が複数積層接着され、層間配線を形成したことを特徴とする多層プリント基板。
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