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JP2010173865A - タンタル酸リチウム結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム結晶からなるウェハ - Google Patents

タンタル酸リチウム結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム結晶からなるウェハ Download PDF

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JP2010173865A JP2009015601A JP2009015601A JP2010173865A JP 2010173865 A JP2010173865 A JP 2010173865A JP 2009015601 A JP2009015601 A JP 2009015601A JP 2009015601 A JP2009015601 A JP 2009015601A JP 2010173865 A JP2010173865 A JP 2010173865A
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Abstract

【課題】焦電性を抑制したタンタル酸リチウム結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム結晶からなるウェハを提供する。
【解決手段】少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤を準備しA、C、前記素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬B後、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理Dし、該熱処理による反応が平衡状態になるまで熱処理を行う製造方法であって、前記準備する還元剤の還元力を調整することにより前記熱処理後に得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下、かつ導電性の結晶面内分布を均一となるように制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、弾性表面波素子などのウェハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用するタンタル酸リチウム結晶の製造方法、及びタンタル酸リチウム結晶からなるウェハに関する。
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(Surface Acountic Wave:SAW)の信号処理といった電気的特性を利用する用途に使用されている。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因するSAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
タンタル酸リチウム結晶の圧電性はタンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に、不可欠となる特性であるが、一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウェハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。
このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫が必要とされ、これら工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱が加わる工程があり、これらの工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられるとタンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊が生じるため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
通常の方法で製造されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長く、SAWデバイスの製造工程では、この自発的な焦電性の消失に期待できない。
SAWデバイスのような用途に対しては、デバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、上記背景により、結晶外側表面に電荷の発生が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られないタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
表面電荷を減少させるには圧電性結晶であるタンタル酸リチウム結晶の導電率を高めればよく、製造方法としては、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元性雰囲気にさらす方法がある。
最近、一部のSAWデバイスでは、デバイス特性の関係からタンタル酸リチウム結晶の好適な導電率として1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1と従来の目標とされていた導電率より小さな値が求められており、さらに、この範囲に導電性を高めるだけでなく、ウェハ面内でほぼ均一な導電率を示すウェハを製造することが重要になってきた。
上記の目的物を、例えば、高温(700℃以上)で還元処理を加えて黒く変色したタンタル酸リチウム結晶等を原料であるタンタル酸リチウム結晶に接触、もしくは近接させ、還元熱処理を300〜600℃で行う方法(特許文献1参照)で実施すると、その方法の内、接触させることで製造したタンタル酸リチウム結晶の導電率はその面内で大きなバラツキが生じ、また、その近接させる方法では面内のバラツキが生じ、かつ、1回の仕込み量が少なくなり、生産性が劣るという欠点があった。
国際公開第WO2004/079061号パンフレット
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、導電性を1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下の範囲に向上し、かつ向上した導電性を結晶面内で均一とすることにより、タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで発生する焦電性を抑制しつつ、さらにSAWデバイスの特性が良く、かつ、ウェハ面内の導電率のバラツキを抑えることでSAWデバイスの歩留まりが向上するタンタル酸リチウム結晶の製造方法、及びその製造方法によって製造されたタンタル酸リチウム結晶からなるウェハを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶の製造方法において、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤を準備し、前記素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理し、該熱処理による反応が平衡状態になるまで熱処理を行う製造方法であって、前記準備する還元剤の還元力を調整して前記熱処理後に得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を制御することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供する。
このように、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤を準備し、前記素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理し、該熱処理による反応が平衡状態になるまで熱処理を行う製造方法であって、前記準備する還元剤の還元力を調整して前記熱処理後に得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を制御する製造方法であれば、導電率が向上され、色むらが抑制され導電率が結晶面内で均一である焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。特に、その導電率を効果的に制御でき、所望の導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
このとき、前記還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上、950℃以下の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いることことができる。
このように、前記還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上、950℃以下の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いれば、製品となるタンタル酸リチウム結晶の導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下の範囲で製造装置を汚染することなく製造することができる。
またこのとき、前記金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いることができる。
このように、前記金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いれば、製造するタンタル酸リチウム結晶の反応性を向上させる効果により、熱反応による反応を速やかに平衡状態にすることができ、タンタル酸リチウム結晶の結晶面内にわたって導電率を均一にする効果を発揮することができる。また、これらのものは高純度で安価なものを容易に入手できる利点もある。
またこのとき、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理する際、及び前記還元剤に対して行う熱処理の前記還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用することができる。
このように、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理する際、及び前記還元剤に対して行う熱処理の前記還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用すれば、タンタル酸リチウム結晶の還元処理を速やかに実施できる。
またこのとき、前記還元剤の還元力の調整方法として、前記還元剤の厚みを調整するようにすることができる。
このように、前記還元剤の還元力の調整方法として、前記還元剤の厚みを調整するようにすれば、具体的に還元剤の還元力を調整することができ、簡単な方法で導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶を効果的に製造することができる。
またこのとき、前記還元剤の還元力の調整方法として、前記還元剤を作製する時の処理温度を調整するようにすることができる。
このように、前記還元剤の還元力の調整方法として、前記還元剤を作製する時の処理温度をキュリー温度以上、950℃以下の温度の範囲で調整するようにすれば、具体的に還元剤の還元力を調整することができ、簡単な方法で導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下の範囲内の所望の導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を効果的に製造することができる。
また、本発明によれば、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下であり、導電率のウェハ面内の分布が0.3以下であることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶からなるウェハが提供される。
特に、タンタル酸リチウムウェハの口径が直径95mm以上である大口径のウェハに対しても導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下であり、導電率のウェハ面内の分布が0.3以下であることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶からなるウェハが提供される。
このように、導電性が向上され、かつ導電性が結晶面内で均一であるタンタル酸リチウム結晶からなるウェハであれば、導電率が十分に向上し、かつその導電率は結晶面内で均一であるので、温度変化によって生じる結晶表面の電荷の蓄積が実質的に見られないという特性を持ち、SAWデバイス製造上歩留まりが向上するという極めて有利な材料である。特に、本発明では所望の導電率に制御されたタンタル酸リチウム結晶からなるウェハとできるので、デバイス特性上の関係等から所定の導電率特性が求められるSAWデバイスに好適に用いることができる。
本発明では、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶の製造方法において、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤を準備し、前記素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理し、該熱処理による反応が平衡状態になるまで熱処理を行い、前記準備する還元剤の還元力を調整して前記熱処理後に得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を制御するので、導電率が結晶面内で均一に向上された焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。さらに、その導電率を効果的に制御でき、所望の導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。その結果、ウェハ全体にわたってSAWデバイスの歩留まりを向上することができる。
本発明に係るタンタル酸リチウム結晶の製造方法のフロー図である。 本発明に係るタンタル酸リチウム結晶の製造方法で還元熱処理を行う際、還元剤とタンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせた様子を示す説明図である。
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来から、SAWデバイスの素材としてタンタル酸リチウム結晶が使用されている。そして、このタンタル酸リチウム結晶は、SAWデバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、結晶外側表面に電荷の発生(焦電性)が見られないような特性を有するものが求められる。
このようなタンタル酸リチウム結晶を製造するために、タンタル酸リチウム結晶の導電性を向上することで焦電性を抑制するという原理に基づいた方法が開示されている。
しかし、このような従来の方法を用いてタンタル酸リチウム結晶を製造しても、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下となる範囲ではウェハ面内で導電率が不均一となってしまい、SAWデバイス特性がばらつくという問題があった。
このため、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下となる範囲のタンタル酸リチウム結晶の製造において、導電性を高めるだけでなく、所望の範囲内で導電率の分布を均一にするものを製造することが求められていた。
そこで、本発明者等はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、タンタル酸リチウム結晶の製造において使用する還元剤の還元力を調整し、還元熱処理における反応を平衡状態になるまで熱処理すれば、得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を効果的に制御することができることに想到した。そして、還元剤の厚みや、還元剤を製造するときの処理温度を調整すれば、具体的に還元剤の還元力を調整できることを見出した。また、タンタル酸リチウム結晶素材の還元処理を行う前に、その素材を導電率が高い溶液に浸漬し、タンタル酸リチウム結晶素材の表面に塩を付着させて表面を活性化させれば、還元処理後の導電率の向上の反応速度を高め、速やかに平衡状態に達するために、結晶面内の導電率のバラツキを抑えることができることに想到し、本発明を完成させた。
図1に本発明のタンタル酸リチウム結晶の製造方法のフロー図を示す。
本発明のタンタル酸リチウム結晶の製造方法では、まず、元材であるタンタル酸リチウム結晶素材を準備する(図1(A))。これは、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られたタンタル酸リチウム多結晶を、イリジウムなどの貴金属性のルツボに入れる。そして、これを高純度の窒素にわずかの高純度の酸素を混合した雰囲気ガス下で、前記多結晶を加熱、溶融し、その後に種結晶を融液に浸漬して回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)して結晶の育成を行うことで、タンタル酸リチウム結晶棒が得られる。
このようにして得られたタンタル酸リチウム結晶棒を切断装置を用いてスライス状に切断し、ラップ加工を行うことで、本発明のタンタル酸リチウム結晶素材である両面ラップウェハを得ることができる。
次に、上記のようにして得られたタンタル酸リチウム結晶素材を、金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬する(図1(B))。
このように、タンタル酸リチウム結晶素材を、金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬すれば、金属のハロゲン化物を含有する溶液は導電率が高く、各種陽イオン、陰イオンを含むため、タンタル酸リチウム結晶素材の表面の電荷がプラスの時には陰イオンが、またマイナスの時には陽イオンが表面に付着し、結果としてタンタル酸リチウム結晶素材の表面が安定化され、還元処理後のタンタル酸リチウム結晶の導電率を向上でき、かつ結晶面内の導電率を均一にすることができる。
このとき、金属のハロゲン化物として、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いることができる。
このように、金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いれば、製造するタンタル酸リチウム結晶の反応性を向上させる効果により、熱反応による反応を速やかに平衡状態にすることができ、タンタル酸リチウム結晶の結晶面内にわたって導電率を均一にする効果を発揮することができる。しかも、これらは安価で高純度のものを容易に得ることができる。
また、他に含有物として考えられるものは、例えば塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のような溶液の導電率を上げる物質が挙げられ、このような物質であれば、同様の効果を期待することができる。
ここで、特に限定されることはないが、金属のハロゲン化物を含む溶液の濃度を、例えば0.001〜1.0mol/lとすることができる。
このように、金属のハロゲン化物を含む溶液の濃度を0.001〜1.0mol/lとすれば、溶液によってタンタル酸リチウム結晶素材がべた付いて炉内を汚染することもなく、また、水分が蒸発した後に前記素材表面に析出物が出るのを防ぐことができる。
次に、タンタル酸リチウム結晶素材を還元処理する際に使用する還元剤を用意する(図1(C))。
本発明では、還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上、950℃以下の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いることができる。
このように、還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上、950℃以下の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いれば、後工程である還元熱処理で製品となる導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶を汚染することなく熱処理することができる。また十分な還元性を有する還元剤とすることができ好ましい。
このような多分極タンタル酸リチウム結晶は、例えば以下のようにして得ることができる。
まず、例えば前記と同様にして得られたタンタル酸リチウム結晶素材(両面ラップウェハ)の片面を研磨し、無色半透明のポリッシュウェハを得る。そして、そのポリッシュウェハを、金属性チャンバーより成る炉内に配設し、キュリー温度以上、950℃以下の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理する。ここで、この還元剤を得るための熱処理の還元雰囲気は、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用することができ、例えば水素100%とすることができる。
本発明では、準備する還元剤の還元力を調整することによって、この還元力が調整された還元剤を用いて行う後工程の熱処理で得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を所望の値となるように制御する。
このとき、還元剤の還元力の調整は、還元剤の厚みを調整することによって行うことができる。あるいは、還元剤を作製する時の処理温度を調整することによって行うこともできる。もちろん、これら両方によって行うこともできる。
このようすれば、簡単な方法で還元剤の還元能力を効果的に調整することができる。
ここで、還元剤の厚みを厚くする、または還元剤を作製する時の処理温度を高くするほど還元剤の還元能力は高くなり、得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率は大きくなる傾向がある。
次に、図2に示すように、上記のようにして得られた還元剤2とタンタル酸リチウム結晶素材1を重ね合わせて、炉内に配設する。
そして、配設したタンタル酸リチウム結晶素材1を還元剤2と共に、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で熱処理する(図1(D))。
この際の熱処理(以下、重ね合わせ熱処理と記載する)によるタンタル酸リチウム結晶素材1の反応が平衡状態になるまで、すなわち還元剤2の還元力が反応により飽和した状態となるまで重ね合わせ熱処理を行う。これにより、還元剤の還元力を調整することで得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を正確に制御することができる。
ここで、重ね合わせ熱処理の温度を例えば570℃とし、熱処理の時間を例えば24時間とすることができる。しかし、これらの条件は特に限定されず、本発明では上記したように得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を還元剤の還元力によって制御するので、重ね合わせ熱処理の温度はなるべく反応が進み易い条件とすれば良く、反応が飽和状態になるまでの温度と時間の条件で熱処理を行うようにすれば良い。
このように、本発明のタンタル酸リチウム結晶の製造方法は、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤を準備し、素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤とタンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理し、該熱処理による反応が平衡状態になるまで重ね合わせ熱処理を行う製造方法であって、準備する還元剤の還元力を調整して重ね合わせ熱処理後に得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を制御するので、キュリー温度以下という比較的低温度でも所望の範囲の導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を製造することができ、かつ、色むらを抑制して、その導電率が結晶面内で均一とすることができる。
特に、還元剤の還元力を調整することによってその導電率を効果的に制御することができ、所望の範囲の導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。その結果SAWデバイスの歩留まりを向上することができる。
すなわち、SAWデバイスのようなデバイス特性を発揮するために好適とされる所定の圧電性を有した上で、焦電性を抑えることができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
このとき、還元剤とタンタル酸リチウム結晶素材とを重ね合わせ熱処理する際の還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用することができる。
このように、還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用すれば、タンタル酸リチウム結晶の還元処理を速やかに実施できる。
こうして、本発明に係わる製造方法を用いて製造したタンタル酸リチウム結晶は、導電率が所望の範囲に向上され、その導電率は面内で均一であるので、圧電性を維持しつつ、温度変化によって生じる結晶表面の電荷の蓄積が実質的に見られないという特性を持ち、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。特に、本発明では所望の導電率に制御されたタンタル酸リチウム結晶とできるので、デバイス特性上の関係等から所定の導電率特性が求められるSAWデバイスに好適に用いることができる。
ここで、導電率は次のように測定することができる。すなわち、導電率は体積抵抗率の逆数であるが、体積抵抗率は例えばHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivity等の計測器を用いて測定した抵抗値から、次式により得ることができる。
ρ=(πd/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: LTウェハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
この場合、例えば500ボルトの電圧を印加し、安定した測定値を得るため電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定すれば良い。
また、導電率の測定は、試作した4インチウェハを20mm角のサイズになるように切断し、各々のチップの導電率を測定し、最大と最小の導電率を抽出し、本発明での導電率の分布を次のように定義した。
(導電率分布)={Max導電率−Min導電率}/Max導電率
SAWデバイスの特性は単に導電率が所望の値に位置するだけでなく、この導電率分布が小さいことが求められ、具体的な数字としては0.30以下とすることが必要とされる。
本発明のタンタル酸リチウム結晶からなるウェハは、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下であり、導電率のウェハ面内の分布が0.3以下であるタンタル酸リチウム結晶からなるウェハである。
このように、本発明のタンタル酸リチウム結晶からなるウェハは、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下であり、導電率のウェハ面内の分布が0.3以下であるタンタル酸リチウム結晶からなるウェハであるので、導電率が十分に向上し、かつその導電率は結晶面内で均一であり、温度変化によって生じる結晶表面の電荷の蓄積が実質的に見られないという特性を持ち、SAWデバイス製造上歩留まりが向上するという極めて有利な材料である。特に、本発明では所望の導電率に制御されたタンタル酸リチウム結晶からなるウェハとできるので、デバイス特性上の関係等から所定の導電率特性が求められるSAWデバイスに好適に用いることができる。
以上説明したように、本発明では、導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶の製造方法において、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤を準備し、前記素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理し、該熱処理による反応が平衡状態になるまで熱処理を行い、前記準備する還元剤の還元力を調整して前記熱処理後に得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を制御するので、導電率が向上され、色むらが抑制され導電率が結晶面内で均一である焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。特に、その導電率を効果的に制御でき、所望の導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜4)
本発明の製造方法を用い以下のようにしてタンタル酸リチウム結晶を製造し、得られたタンタル酸リチウム結晶面内の目視による色むらの有無と、導電率、焦電性の測定を行いこれらを評価した。
まず、以下のようにしてタンタル酸リチウム結晶素材を準備した。
表面法線に対してy方向に36°回転して配向された直径100mm、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶棒をチョクラルスキー法により引き上げ、加工装置によって、結晶を切断、スライス加工後、ラップ加工を行い、厚さ0.3mmの両面ラップウェハを得てタンタル酸リチウム結晶素材とした。
次に、還元剤として多分極タンタル酸リチウム結晶を以下のようにして準備した。
上記と同様にして得た両面ラップウェハの片面を研磨し、厚さ0.25mmのポリッシュウェハを得て、該ポリッシュウェハを金属製チャンバーよりなる炉内に配設し、水素100%の雰囲気下で12時間処理して多分極タンタル酸リチウム結晶を得た。この際、熱処理の温度を920℃(実施例1)、900℃(実施例2)、850℃(実施例3)、800℃(実施例4)に調整し還元力を調整した還元剤を4つ準備した。
一方、濃度0.1mol/lの塩化カリウム溶液を準備し、該塩化カリウム水溶液に15分間、原料となるタンタル酸リチウム結晶素材を浸漬し、その後、乾燥を行った。
次に、図2に示すように、タンタル酸リチウム結晶素材と上記で準備した還元剤である多分極タンタル酸リチウム結晶の内の1つとを重ね合わせて炉内に配設した。
そして、常圧下、毎分約1.5リットルの速度で水素を流通しながら、室温から毎分約6.7℃の速度で570℃に昇温して24時間保持した後、すなわち熱処理による反応が平衡状態になるまで重ね合わせ熱処理を行った後、毎分約6.7℃の速度で降温し、炉内の温度が250℃以下になったところで大気を導入し、さらに30℃以下になったところでタンタル酸リチウム結晶を炉から取り出した。
そして、準備した4つの還元剤全てに対して上記を行い、得られたタンタル酸リチウム結晶の色むら、導電率、焦電性について評価した。
結果を表1に示す。表1に示すように、重ね合わせ熱処理は同一条件下で、還元剤を作製する際の温度を調整して還元剤の還元力を調整することによって得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率が変化していることが分かった。そして、還元剤を作製する際の温度が高いほどその導電率が高くなっていることが分かった。
また、後述する比較例1〜3の結果に比べ導電率の分布が改善されていることが分かった。また、色むらに関して良好な結果となっており、結晶面内で均一化されていことが分かった。
このことにより、本発明のタンタル酸リチウム結晶の製造方法は、導電率が向上され、色むらが抑制され導電率が結晶面内で均一である焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができることが確認できた。また、還元剤の還元力を調整することによって導電率を効果的に制御でき、所望の導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を製造することができることが確認できた。
(実施例5)
重ね合わせ熱処理の処理温度を500℃とし、処理時間を36時間とし、還元剤の作製条件の温度を750℃とした以外、実施例1−4と同様にしてタンタル酸リチウム結晶を製造し、同様に評価した。
結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1−4と同様の結果が得られた。すなわち、重ね合わせ熱処理の温度を低くしても、還元剤の反応が飽和して重ね合わせ熱処理による反応が平衡状態になるまでその熱処理を行えば、導電率が向上され、色むらが抑制され導電率が結晶面内で均一である焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができることが確認できた。
(実施例6)
還元剤の厚みを0.35mmと少し厚くし、還元剤の作製条件の温度を750℃とした以外、実施例1−4と同様にしてタンタル酸リチウム結晶を製造し、同様に評価した。
結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1−4と比べ導電率の分布が改善されていることが分かった。
(比較例1〜4)
実施例1〜4に対し、重ね合わせ熱処理の時間を6時間とし、還元剤の作製条件の温度を920℃(比較例1)、950℃(比較例2)、980℃(比較例3)、1050℃(比較例4)とした以外、実施例1〜4と同様にしてタンタル酸リチウム結晶の製造し、同様に評価した。
結果を表1に示す。表1に示すように、比較例4では導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下の範囲を超えてしまった。また、比較例1−3では、色むら、導電率分布の結果が実施例1〜4と比べ悪化していることが分かった。このことは、重ね合わせ熱処理の時間が短く反応が平衡状態まで達していないためと考えられる。
Figure 2010173865
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
1…タンタル酸リチウム結晶素材、2…還元剤。

Claims (8)

  1. 導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下のタンタル酸リチウム結晶の製造方法において、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤を準備し、前記素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、前記還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理し、該熱処理による反応が平衡状態になるまで熱処理を行う製造方法であって、前記準備する還元剤の還元力を調整して前記熱処理後に得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を制御することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  2. 前記還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上、950℃以下の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いることを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  3. 前記金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  4. 前記還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  5. 前記還元剤の還元力の調整方法として、前記還元剤の厚みを調整することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  6. 前記還元剤の還元力の調整方法として、前記還元剤を作製する時の処理温度を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  7. 導電率が1×10−13Ω−1・cm−1以上、9.99×10−12Ω−1・cm−1以下であり、導電率のウェハ面内の分布が0.3以下であることを特徴とするタンタル酸リチウム結晶からなるウェハ。
  8. 前記ウェハの口径が直径95mm以上であることを特徴とする請求項7に記載のタンタル酸リチウム結晶からなるウェハ。
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