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JP2009249254A - タンタル酸リチウム結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム結晶 - Google Patents

タンタル酸リチウム結晶の製造方法及びタンタル酸リチウム結晶 Download PDF

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JP2009249254A JP2008101181A JP2008101181A JP2009249254A JP 2009249254 A JP2009249254 A JP 2009249254A JP 2008101181 A JP2008101181 A JP 2008101181A JP 2008101181 A JP2008101181 A JP 2008101181A JP 2009249254 A JP2009249254 A JP 2009249254A
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Abstract

【課題】焦電性が抑制されたタンタル酸リチウム結晶、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を20mm以下の距離で近接して、あるいは、重ね合わせて熱処理する。このとき、前記還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いる。この処理により、タンタル酸リチウム結晶の導電率が向上するとともに結晶面内で均一となるので、焦電性が抑制される。
【選択図】図1

Description

本発明は、弾性表面波素子などのウェハ上に金属電極でパターンを形成して電気信号を処理する用途に使用するタンタル酸リチウム結晶の特性改善に関する。
タンタル酸リチウムは、弾性表面波(Surface Acountic Wave:SAW)の信号処理といった電気的特性を利用する用途に使用されている。この用途に適したタンタル酸リチウム結晶は、その結晶構造に起因するSAWデバイスに必要とされる圧電気応答(圧電性)を示すが、通常の方法で入手できるタンタル酸リチウム結晶は圧電性に加えて焦電気応答(焦電性)を生じる。
タンタル酸リチウム結晶の圧電性はタンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして利用する時に、不可欠となる特性であるが、一方、焦電性はタンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで結晶の外側表面に発生する表面電荷として観察され、結晶を帯電させるものである。この表面電荷は、タンタル酸リチウム結晶をSAWデバイスとして使用するときに、タンタル酸リチウム結晶からなるウェハ上に形成された金属電極間で火花放電を起こし、SAWデバイスの著しい性能の欠陥を引き起こすとされている。
このため、タンタル酸リチウム結晶を用いるSAWデバイスの設計では、表面電荷を発生させない工夫、発生した表面電荷を逃がす工夫、あるいは金属電極同士の間隔を広くするなどの工夫が必要とされ、これら工夫を取り入れるために、SAWデバイス自体の設計に制約が加わるといった不利益があった。
また、タンタル酸リチウム結晶を用いたSAWデバイスの製造工程では金属膜の蒸着、レジストの除去といった工程でタンタル酸リチウム結晶に熱が加わる工程があり、これらの工程で加熱あるいは降温といった温度変化がタンタル酸リチウム結晶に与えられるとタンタル酸リチウム結晶の焦電性により外側表面に電荷が発生する。この表面電荷により、金属電極間に火花放電が生じ、電極パターンの破壊となるため、SAWデバイスの製造工程では出来るだけ温度変化を与えないように工夫をしたり、温度変化を緩やかにするといった工夫をしており、これら工夫のために製造工程のスループットが低下したり、あるいはSAWデバイスの性能を保証するマージンが狭くなるといった不利益が生じている。
通常の方法で製造されたタンタル酸リチウム結晶では、焦電性により発生した外側表面の電荷は周囲環境からの遊離電荷により中和され、時間の経過とともに消失するが、この消失時間は数時間以上と長く、SAWデバイスの製造工程では、この自発的な焦電性の消失に期待できない。
SAWデバイスのような用途に対しては、デバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、上記背景により、結晶外側表面に電荷の発生が見られない圧電性結晶の要求が増大しており、このような用途に対して表面電荷の蓄積が見られないタンタル酸リチウム結晶が必要とされている。
表面荷電を減少させたタンタル酸リチウム結晶の製造方法としては、タンタル酸リチウム結晶を500℃以上の還元性雰囲気にさらして導電率を高め、焦電率により生じた表面電荷を迅速に中和又は消滅させるという方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、このような方法でタンタル酸リチウム結晶を還元処理した場合、タンタル酸リチウム結晶のキュリー点は約603℃であるため、これを越える高温に晒すと圧電性が失われてしまう。また、400〜600℃程度の比較的低温で熱処理をした場合、充分に還元されない。すなわち、特許文献1に記載された還元ガス中での熱処理ではタンタル酸リチウム結晶の圧電性を損なわずに導電性を向上することは難しい。
また、還元剤として、アルカリ金属化合物、特にリチウム化合物を使用し、減圧下でタンタル酸リチウム結晶を還元する方法が開示されている(特許文献2参照)。
リチウム化合物はタンタル酸リチウムウェハ中の酸素と結合し酸化リチウムの状態で放出される旨の説明があり、還元剤としての役割があるため、塗布する場合は高濃度にすると良い旨の記載がされている。
しかし、高濃度で塗布する場合、ポリビニルアルコールやグリセリン等の有機溶剤が好適との記載があるが、このような手法ではべた付いたりして、炉内を汚染するため生産性の面で問題がある。
また、高温(700℃以上)で還元処理を加えて黒く変色したタンタル酸リチウム結晶等を原料であるタンタル酸リチウム結晶に接触、もしくは近接させ、還元熱処理を300〜600℃で行う方法が開示されている(特許文献3参照)。
しかしながら、この方法で製造したタンタル酸リチウム結晶の導電率はその面内でバラツキがあり、これに関しては改善の余地があった。
特開平11−92147号公報 特開2005−314137号公報 WO2004/079061号公報
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、導電性を向上し、かつ向上した導電性を結晶面内で均一とすることにより、タンタル酸リチウム結晶に温度変化を与えることで発生する焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶の製造方法、及びタンタル酸リチウム結晶を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を20mm以下の距離で近接して熱処理することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供する(請求項1)。
このように、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を20mm以下の距離で近接して熱処理すれば、導電率が向上され、かつその導電率が結晶面内で均一である、焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
また、本発明では、タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法を提供する(請求項2)。
このように、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理すれば、導電率をが向上され、かつその導電率が結晶面内で均一である、焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
このとき、前記還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いる
ことができる(請求項3)。
このように、前記還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いれば、製品となるタンタル酸リチウム結晶を汚染することなく製造することができる。また十分な還元性を有する還元剤とすることができ好ましい。
またこのとき、前記金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いることができる(請求項4)。
このように、前記金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いれば、溶液の導電率を上げることができ、製造するタンタル酸リチウム結晶の導電率の向上の効果を高め、結晶面内の導電率を均一にする効果を発揮することができる。また、これらのものは高純度で安価なものを容易に入手できる利点もある。
またこのとき、前記還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用することができる(請求項5)。
このように、前記還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用すれば、タンタル酸リチウム結晶の還元処理を速やかに実施できる。
またこのとき、前記金属のハロゲン化物を含む溶液の濃度を0.001mol/l以上、1.0mol/l以下とすることができる(請求項6)。
このように、前記金属のハロゲン化物を含む溶液の濃度を0.001mol/l以上、1.0mol/l以下とすれば、溶液によってタンタル酸リチウム結晶素材がべた付いて炉内を汚染することもなく、また、水分が蒸発した後に前記素材表面に析出物が出るのを防ぐことができる。
また、本発明によれば、本発明に係わる製造方法を用いて製造した、導電性が向上され、かつ導電性が結晶面内で均一であるタンタル酸リチウム結晶が提供される(請求項7)。
このように、導電性が向上され、かつ導電性が結晶面内で均一であるタンタル酸リチウム結晶であれば、導電率が十分に向上し、かつその導電率は結晶面内で均一であるので、温度変化によって生じる結晶表面の電荷の蓄積が実質的に見られないという特性を持ち、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。
本発明では、タンタル酸リチウム結晶の製造において、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を20mm以下の距離で近接して熱処理する、あるいは、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理するので、導電率をが向上され、かつその導電率が結晶面内で均一である、焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来から、SAWデバイスの素材としてタンタル酸リチウム結晶が使用されている。そして、このタンタル酸リチウム結晶は、SAWデバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、結晶外側表面に電荷の発生(焦電性)が見られないような特性を有するものが求められる。
このようなタンタル酸リチウム結晶を製造するために、タンタル酸リチウム結晶の導電性を向上することで焦電性を抑制するという原理に基づいた方法が開示されている。
しかし、このような従来の方法を用いてタンタル酸リチウム結晶を製造しても、結晶の面内で導電率が不均一となってしまい、焦電性を抑制する効果が安定して得られないという問題があった。
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、タンタル酸リチウム結晶素材の還元処理を行う前に、その素材を導電率が高い溶液に浸漬し、タンタル酸リチウム結晶素材の表面にイオンを付着させて表面を安定化させれば、還元処理後の導電率の向上の効果を高め、結晶面内の導電率のバラツキを抑えることができることに想到し、本発明を完成させた。
図1に本発明のタンタル酸リチウム結晶の製造方法のフロー図を示す。
本発明のタンタル酸リチウム結晶の製造方法では、まず、元材であるタンタル酸リチウム結晶素材を準備する(図1(A))。これは、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、炭酸リチウムと五酸化タンタルとを秤量、混合し、電気炉で1000℃以上に加熱することで得られたタンタル酸リチウム多結晶を、イリジウムなどの貴金属性のルツボに入れる。そして、これを高純度の窒素にわずかの高純度の酸素を混合した雰囲気ガス下で、前記多結晶を加熱、溶融し、その後に種結晶を融液に浸漬して回転引上げ(いわゆるチョクラルスキー法)して結晶の育成を行うことで、タンタル酸リチウム結晶棒が得られる。
このようにして得られたタンタル酸リチウム結晶棒を切断装置を用いてスライス状に切断し、ラップ加工を行うことで、本発明のタンタル酸リチウム結晶素材である両面ラップウェハを得ることができる。
次に、上記のようにして得られたタンタル酸リチウム結晶素材を、金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬する(図1(B))。
このように、タンタル酸リチウム結晶素材を、金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬すれば、金属のハロゲン化物を含有する溶液は導電率が高く、各種陽イオン、陰イオンを含むため、タンタル酸リチウム結晶素材の表面の電荷がプラスの時には陰イオンが、またマイナスの時には陽イオンが表面に付着し、結果としてタンタル酸リチウム結晶素材の表面が安定化され、還元処理後のタンタル酸リチウム結晶の導電率を向上でき、かつ結晶面内の導電率を均一にすることができる。
このとき、金属のハロゲン化物として、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いることができる。
このように、金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いれば、溶液の導電率を上げることができ、製造するタンタル酸リチウム結晶の導電率の向上の効果を高め、結晶面内の導電率を均一にする効果を発揮することができる。しかも、これらは安価で高純度のものを容易に得ることができる。
また、他に含有物として考えられるものは、例えば塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のような溶液の導電率を上げる物質が挙げられ、このような物質であれば、同様の効果を期待することができる。
次に、タンタル酸リチウム結晶素材を還元処理する際に使用する還元剤を用意する(図1(C))。
本発明では、還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いることができる。
このように、還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いれば、後工程である熱処理で製品となるタンタル酸リチウム結晶を汚染することなく熱処理することができる。また十分な還元性を有する還元剤とすることができ好ましい。
このような多分極タンタル酸リチウム結晶は、例えば以下のようにして得ることができる。
まず、前記のようにして得られたタンタル酸リチウム結晶素材(両面ラップウェハ)の片面を研磨し、無色半透明のポリッシュウェハを得る。そして、そのポリッシュウェハを、金属性チャンバーより成る炉内に配設し、キュリー温度以上の温度で、かつ水素雰囲気下で熱処理する。
ここで、この還元剤を得るための熱処理の雰囲気は、例えば水素100%とすることができる。また、熱処理温度は、例えば1000℃程度、熱処理時間は10時間程度をすることができる。しかし、特にこれらに限定されることはない。
このように熱処理を行うことで目的の多分極タンタル酸リチウムを得ることができる。
次に、図3に示すように、前記のようにして得られた還元剤2とタンタル酸リチウム結晶素材1を、それぞれの距離が20mm以下となるように近接させ、例えば、石英からなるボート上に交互に配置して、図2に示すような炉3内に配設する。
そして、配設したタンタル酸リチウム結晶素材1を還元剤2と共に、310℃〜キュリー温度の温度でかつ還元雰囲気下で熱処理する(図1(D))。
このように、還元剤2とタンタル酸リチウム結晶素材1を、それぞれの距離が20mm以下となるように近接させて熱処理すれば、還元剤2の還元効果を確実に奏することができ、得られるタンタル酸リチウム結晶の導電率を確実に高めることができる。
ここで、還元剤2とタンタル酸リチウム結晶素材1を近接させる距離は近いほど、還元剤の還元効果を高めることができるが、還元剤2とタンタル酸リチウム結晶素材1を後述するように重ね合わせるか、もしくは、極わずかな距離だけ離すことにより、両者の表面の一部が接触し、かつ別の一部が接触していないためにタンタル酸リチウム結晶面内の導電率にむらが生じてしまうのを防ぐことができる。ここで、極わずかだけ離す距離を、これに限定されるわけではないが、例えば0.1mm以上とすることができる。
あるいは、タンタル酸リチウム結晶素材を炉内に配設する際、図4に示すように、還元剤2とタンタル酸リチウム結晶素材1を重ね合わせて、図2に示すような炉3内に配設することもできる。
そして、配設したタンタル酸リチウム結晶素材1を還元剤2と共に、310℃〜キュリー温度の温度でかつ還元雰囲気下で熱処理する(図1(D))。
このように、タンタル酸リチウム結晶素材を、金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を20mm以下の距離で近接して、あるいは、タンタル酸リチウム結晶素材を、金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理すれば、キュリー温度以下という比較的低温度でも高い導電率を有するタンタル酸リチウム結晶を製造することができ、かつその導電率が結晶面内で均一とすることができる。すなわち、SAWデバイスのようなデバイス特性を発揮するために必要とされる圧電性を維持した上で、焦電性を抑えることができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
このとき、還元熱処理する際の還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用することができる。
このように、、還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用すれば、タンタル酸リチウム結晶の還元処理を速やかに実施できる。
またこのとき、前記金属のハロゲン化物を含む溶液の濃度を0.001〜1.0mol/lとすることができる。
このように、前記金属のハロゲン化物を含む溶液の濃度を0.001〜1.0mol/lとすれば、溶液によってタンタル酸リチウム結晶素材がべた付いて炉内を汚染することもなく、また、水分が蒸発した後に前記素材表面に析出物が出るのを防ぐことができる。
こうして、本発明によれば、本発明に係わる製造方法を用いて製造したタンタル酸リチウム結晶は、導電率が十分に向上され、かつその導電率は面内で均一であるので、圧電性を維持しつつ、温度変化によって生じる結晶表面の電荷の蓄積が実質的に見られないという特性を持ち、SAWデバイス製造上極めて有利な材料である。
ここで、導電率は次のように測定することができる。すなわち、導電率は体積抵抗率の逆数であるが、体積抵抗率は例えばHewlett Packard社製、4329A High Resistance Meter及び16008A Resistivity等の計測器を用いて測定した抵抗値から、次式により得ることができる。
ρ=(πd/4t)・R
ρ: 体積抵抗率(Ω・cm)
π: 円周率
d: 中心電極直径(cm)
t: LTウェハ厚さ(cm)
R: 抵抗値(Ω)
この場合、例えば500ボルトの電圧を印加し、安定した測定値を得るため電圧を印加してから1分後の抵抗値を測定すれば良い。
以上説明したように、本発明では、タンタル酸リチウム結晶の製造において、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を20mm以下の距離で近接して熱処理する、あるいは、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理するので、導電率が向上され、かつその導電率が結晶面内で均一である、焦電性を抑制することができるタンタル酸リチウム結晶を製造することができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
本発明の製造方法を用い以下のようにしてタンタル酸リチウム結晶を製造し、得られたタンタル酸リチウム結晶面内の色むらの有無と、色差と、導電率の測定を行い導電率のバラツキを求め、それらを評価した。
まず、以下のようにしてタンタル酸リチウム結晶素材を準備した。
表面法線に対してy方向に36°回転して転向された直径100mm、長さ50mmのタンタル酸リチウム結晶棒をチョクラルスキー法により引き上げ、加工装置によって、結晶を切断、スライス加工後、ラップ加工を行い、厚さ0.3mmの両面ラップウェハを得てタンタル酸リチウム結晶素材とした。
次に、還元剤として多結晶タンタル酸リチウム結晶を以下のようにして準備した。
前記のようにして得た両面ラップウェハの片面を研磨し、厚さ0.25mmのポリッシュウェハを得て、該ポリッシュウェハを金属製チャンバーよりなる炉内に配設し、水素100%、1050℃の雰囲気下で10時間処理して多結晶タンタル酸リチウム結晶を得た。
一方、表1に示す濃度0.001〜1.0mol/lの塩化ナトリウム溶液を準備し、該塩化ナトリウム水溶液に15分間、原料となるタンタル酸リチウム結晶素材を浸漬し、その後、乾燥を行った。
次に、図3のように、タンタル酸リチウム結晶素材と還元剤である多結晶タンタル酸リチウム結晶とを石英ボート上に交互に配置し、両者の間隔を3.0mmとし、それを図2に示すような金属性チャンバーからなる炉内に配設した。
そして、常圧下、毎分約1.5リットルの速度で水素を流通しながら、室温から毎分約6.7℃の速度で500℃に昇温し、6時間保持後、毎分約6.7℃の速度で降温し、炉内の温度が250℃以下になったところで大気を導入し、さらに30℃以下になったところでタンタル酸リチウム結晶を炉から取り出した。
ここで、色むら、色差の測定は以下のようにして行った。
色むらは目視検査により行い、色差はJIS Z8729で規定されるL*a*b*表色系における明度L*の値を日本電色社製、NF333 スペクトロフォトメーターにより測定した。色差は、色むらを前記測定方法によって数値で定量化したものとしてとらえることができる。
また、導電率のバラツキは次式により求めた。
{(Max導電率 − Min導電率)/平均}×100
結果を表1に示す。表1に示すように、後述の比較例1と比べ、導電率の値が大きくなり、結晶面内の導電率及び色差のバラツキが改善され均一化されていることが確認できた。また、塩化ナトリウムの濃度が大きくなるほど導電率及び色差のバラツキが改善され均一化されていることが分かる。
(実施例2)
塩化ナトリウムの濃度を0.1mol/lとし、還元処理の温度を450℃、550℃とした以外、実施例1と同様の条件でタンタル酸リチウム結晶を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。表1に示すように、後述の比較例1と比べ、結晶面内の導電率及び色差のバラツキが改善され均一化されていることが確認できた。
(実施例3)
還元処理時の還元剤とタンタル酸リチウム結晶素材を、図4に示すように重ね合わせて炉内に配設した以外、実施例2と同様な条件でタンタル酸リチウム結晶を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1と比べ、結晶面内の導電率及び色差のバラツキが改善され均一化されていることが確認できた。
(実施例4〜6)
還元処理前のタンタル酸リチウム結晶素材を浸漬する溶液に含有するハロゲン化物として、塩化カリウム溶液を用いた以外、実施例1〜3とそれぞれ同様な条件でタンタル酸リチウム結晶を製造し、それぞれ同等の評価した。
結果を表2に示す。表2に示すように、比較例1と比べ、結晶面内の導電率及び色差のバラツキが改善され均一化されていることが確認できた。
(比較例1)
還元処理前のタンタル酸リチウム結晶素材を溶液に浸漬させる工程を省いた以外、実施例1と同様な条件でタンタル酸リチウム結晶を製造し、それぞれ同等の評価した。
結果を表1に示す。本発明の実施例と比較して、結晶面内の導電率のバラツキが大きい結果となっていることが確認できた。
(比較例2)
炉内に配設する際の還元剤とタンタル酸リチウム結晶素材との間隔を25mmとした以外は、実施例1と同様な条件でタンタル酸リチウム結晶を製造し、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。表1に示すように、近接距離が離れすぎてしまったため、還元剤の還元効果が小さくなり、導電率は本発明の製造方法によるタンタル酸リチウム結晶のものと比べ低くなっていることが確認できた。
Figure 2009249254
Figure 2009249254
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
本発明のに係るタンタル酸リチウム結晶の製造方法のフロー図である。 本発明に係るタンタル酸リチウム結晶の製造方法で還元熱処理時に使用することができる炉の概略図である。 本発明に係るタンタル酸リチウム結晶の製造方法で還元熱処理を行う際、還元剤とタンタル酸リチウム結晶素材を近接させた様子を示す説明図である。 本発明に係るタンタル酸リチウム結晶の製造方法で還元熱処理を行う際、還元剤とタンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせた様子を示す説明図である。
符号の説明
1…タンタル酸リチウム結晶素材、2…還元剤、3…炉。

Claims (7)

  1. タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を20mm以下の距離で近接して熱処理することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  2. タンタル酸リチウム結晶の製造方法であって、少なくとも、タンタル酸リチウム結晶素材を準備し、該素材を金属のハロゲン化物を含有する溶液に浸漬後、310℃以上、キュリー温度以下の温度でかつ還元雰囲気下で、還元剤と前記タンタル酸リチウム結晶素材を重ね合わせて熱処理することを特徴とするタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  3. 前記還元剤として、タンタル酸リチウム結晶をキュリー温度以上の温度で、かつ還元雰囲気下で熱処理することによって得られた多分極タンタル酸リチウムを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  4. 前記金属のハロゲン化物として塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  5. 前記還元雰囲気として、水素ガスを含む雰囲気ガスを使用することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  6. 前記金属のハロゲン化物を含む溶液の濃度を0.001mol/l以上、1.0mol/l以下とすることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のタンタル酸リチウム結晶の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製造方法を用いて製造した、導電性が向上され、かつ導電性が結晶面内で均一であるタンタル酸リチウム結晶。



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