JP2010030867A - シリコン単結晶の育成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】連続チャージCZ法(チョクラルスキー法)を用いたシリコン単結晶の育成方法において、転位のない長尺の単結晶を育成することができる方法を提供する。
【解決手段】CZ法により、単結晶引き上げ用の石英坩堝2でシリコン単結晶11を育成しながら、シリコン原料融解用の石英坩堝21で固体シリコン原料を融解し、このシリコン融液30を単結晶引き上げ用の石英坩堝2に供給するシリコン単結晶の育成方法において、シリコン原料融解用の石英坩堝21に収容するシリコン融液30にバリウム化合物を添加、または、シリコン原料融解用の石英坩堝21から単結晶引き上げ用の石英坩堝2にシリコン融液を導く石英管27、およびシリコン原料融解用の石英坩堝21のうちの少なくとも一方の内表面にバリウム化合物を塗布する。
【選択図】図1
【解決手段】CZ法により、単結晶引き上げ用の石英坩堝2でシリコン単結晶11を育成しながら、シリコン原料融解用の石英坩堝21で固体シリコン原料を融解し、このシリコン融液30を単結晶引き上げ用の石英坩堝2に供給するシリコン単結晶の育成方法において、シリコン原料融解用の石英坩堝21に収容するシリコン融液30にバリウム化合物を添加、または、シリコン原料融解用の石英坩堝21から単結晶引き上げ用の石英坩堝2にシリコン融液を導く石英管27、およびシリコン原料融解用の石英坩堝21のうちの少なくとも一方の内表面にバリウム化合物を塗布する。
【選択図】図1
Description
本発明は、チョクラルスキー法(以下、「CZ法」という)によるシリコン単結晶の育成方法に関し、さらに詳しくは、単結晶引き上げ用の石英坩堝に原料融解用の坩堝からシリコン融液を逐次供給しながらシリコン単結晶を育成する、いわゆる連続チャージCZ法によるシリコン単結晶の育成方法に関する。
シリコン単結晶は、半導体デバイスに用いられるシリコンウェーハの素材であり、その製造には、CZ法による単結晶育成方法が広く採用されている。通常、CZ法によるシリコン単結晶の育成では、減圧下の不活性ガス雰囲気に維持された単結晶育成装置内において、石英ルツボ内に初期チャージとして充填された多結晶シリコンなどのシリコン原料をヒータにより加熱し融解させる。石英ルツボ内にシリコン融液が形成されると、石英ルツボの上方で引き上げ軸に保持された種結晶を下降させシリコン融液に浸漬する。この状態から種結晶および石英ルツボを所定の方向に回転させながら種結晶を徐々に上昇させ、これにより、種結晶の下方にシリコン単結晶が育成され引き上げられる。
従来から、CZ法による単結晶育成方法に用いられる単結晶引き上げ用の石英坩堝は、初期チャージのシリコン原料を融解した融液からシリコン単結晶を引き上げるごとに交換しており、これがコスト増加の原因となっていた。
特許文献1では、シリコン単結晶を引き上げ、炉外に取り出すごとに、単結晶引き上げ用の石英坩堝内に残ったシリコン融液にカットロッドと呼ばれる棒状シリコン原料を追加溶融することにより、同一の石英坩堝で複数本のシリコン単結晶を引き上げ、坩堝コストの抑制を図る方法が開示されている。しかし、この方法では、シリコン単結晶を引き上げた後に棒状シリコン原料を融解させる時間を要するため、高い生産効率は望めない。
生産効率を向上させる方法として、特許文献2では、単結晶引き上げ用の石英坩堝とは別にシリコン原料融解用の石英坩堝でシリコン原料を融解し、そのシリコン融液を単結晶引き上げ用の石英坩堝に供給することによって、大口径のシリコン単結晶や、長尺のシリコン単結晶を引き上げる連続チャージCZ法が開示されている。
しかし、前記特許文献2で開示された連続チャージCZ法では、シリコン単結晶を育成する際に、単結晶引き上げ用の石英坩堝の内表面から剥離したクリストバライト等の異物の影響で、得られる単結晶の無転位引き上げ長が短くなるおそれがある。
特許文献3では、通常のCZ法において、2a族元素または3b族元素を含む化合物を含有する溶液を、単結晶引き上げ用の石英坩堝の内表面に塗布することにより、その坩堝内表面に結晶層を形成し、石英坩堝の内表面の溶損を低減させる方法が開示されている。この方法によれば、石英坩堝の内表面に形成された結晶層によって、クリストバライト等の剥離性の高い異物が生成するのを防止することができる。
しかし、特許文献3で提案された方法では、通常のCZ法で単結晶引き上げ用の石英坩堝の内表面を改質するだけであり、連続チャージCZ法を用いて単結晶を育成する場合、シリコン原料融解用の石英坩堝やシリコン融液を導く石英管に、クリストバライト等の剥離性の高い異物が生成するのを抑制することができないため、単結晶引き上げ用の石英坩堝に供給するシリコン融液に異物が混入し、引き上げられる単結晶の無転位引き上げ長が低下するおそれがある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、連続チャージCZ法によりシリコン単結晶を育成する際に、単結晶引き上げ用の石英坩堝に供給するシリコン融液にクリストバライト等の異物が混入するのを抑制し、転位のない長尺の単結晶を育成することができるシリコン単結晶の育成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、連続チャージCZ法を適用した単結晶育成方法について詳細に検討した結果、シリコン原料融解用の石英坩堝、および、シリコン原料融解用の石英坩堝から単結晶引き上げ用の石英坩堝にシリコン融液を導く融液供給配管の少なくとも一方の内表面にバリウム化合物を塗布したり、シリコン原料融解用の石英坩堝に収容するシリコン融液にバリウム化合物を添加することにより、単結晶引き上げ用の坩堝へ供給するシリコン融液にクリストバライト等の異物が混入するのを防止できることを知見した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成させたものであり、下記(1)および(2)のシリコン単結晶の育成方法を要旨とする。
(1)チョクラルスキー法により、単結晶引き上げ用の石英坩堝でシリコン単結晶を育成しながら、シリコン原料融解用の石英坩堝で固体シリコン原料を融解し、このシリコン融液を前記単結晶引き上げ用の石英坩堝に供給するシリコン単結晶の育成方法において、前記シリコン原料融解用の石英坩堝に収容するシリコン融液にバリウム化合物を添加することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。
この育成方法において、前記シリコン原料溶解用石英坩堝に収容する前記シリコン融液中のバリウム濃度を7.1×1015〜7.1×1017atoms/cm3とすることが好ましい。
(2)チョクラルスキー法により、単結晶引き上げ用の石英坩堝でシリコン単結晶を育成しながら、シリコン原料融解用の石英坩堝で固体シリコン原料を融解し、このシリコン融液を前記単結晶引き上げ用の石英坩堝に供給するシリコン単結晶の育成方法において、前記シリコン原料融解用の石英坩堝から前記単結晶引き上げ用の石英坩堝にシリコン融液を導く石英管、および前記シリコン原料融解用の石英坩堝のうちの少なくとも一方の内表面にバリウム化合物を塗布することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。
この育成方法において、前記バリウム化合物を塗布した面のバリウム濃度を2.3×1017〜2.3×1019atoms/cm2とすることが好ましい。
本発明のシリコン単結晶の育成方法によれば、シリコン原料融解用の石英坩堝や供給配管の内表面からシリコン融液にクリストバライト等の異物が混入するのを抑制でき、無転位引き上げ長を低下させることなく、製品歩留まりを向上させたシリコン単結晶を育成することが可能になる。
以下に、本発明のシリコン単結晶の育成方法について、その実施形態を詳述する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の一実施形態である連続チャージ方式のシリコン単結晶の育成に適した単結晶育成装置の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、単結晶育成装置は、その外郭をチャンバ1で構成され、チャンバ1内の中心部に単結晶引き上げ用の坩堝2が配置されている。この坩堝2は、二重構造になっており、内側の石英坩堝2aと、外側の黒鉛坩堝2bとから構成される。坩堝2は、支持軸3の上端部に固定され、その支持軸3の回転駆動および昇降駆動を介して、周方向に回転するとともに軸方向に昇降することが可能である。
図1は、本発明の一実施形態である連続チャージ方式のシリコン単結晶の育成に適した単結晶育成装置の構成を模式的に示す図である。図1に示すように、単結晶育成装置は、その外郭をチャンバ1で構成され、チャンバ1内の中心部に単結晶引き上げ用の坩堝2が配置されている。この坩堝2は、二重構造になっており、内側の石英坩堝2aと、外側の黒鉛坩堝2bとから構成される。坩堝2は、支持軸3の上端部に固定され、その支持軸3の回転駆動および昇降駆動を介して、周方向に回転するとともに軸方向に昇降することが可能である。
単結晶引き上げ用坩堝2の外側には、この坩堝2を囲繞する抵抗加熱式のヒータ4が配設され、そのさらに外側には、チャンバ1の内面に沿って断熱材5が配されている。ヒータ4は、坩堝2内に充填された固体シリコン原料を融解させ、これにより、坩堝2内にシリコン融液10が形成される。
単結晶引き上げ用坩堝2の上方には、支持軸3と同軸上にワイヤなどの引き上げ軸6が配されている。引き上げ軸6は、チャンバ1の上端に設けられた図示しない引き上げ機構により回転するとともに昇降することが可能である。引き上げ軸6の先端には、種結晶7が取り付けられている。引き上げ軸6の駆動に伴って、種結晶7を坩堝2内のシリコン融液10に浸漬し、その種結晶7を回転させながら徐々に上昇させることにより、種結晶7の下方に、シリコン単結晶11が育成される。
さらに、チャンバ1内には、引き上げ中のシリコン単結晶11を囲繞する筒状の熱遮蔽体8が配設されている。熱遮蔽体8は、単結晶引き上げ用坩堝2内のシリコン融液10やヒータ4からの輻射熱を遮断し、引き上げ中のシリコン単結晶11の冷却を促進させる役割を果たす。
また、チャンバ1の外側には、単結晶引き上げ用坩堝2を挟んで対向する一対の電磁コイル9が配設されている。電磁コイル9は、電磁コイル9同士の間に水平方向の横磁場を発生させ、坩堝2内のシリコン融液10に横磁場を印加する。横磁場の印加により、シリコン融液10の自然対流が抑制され、結晶成長界面における融液温度の急激な変動が抑えられるため、有転位化や直径変動などが発生しない高品質のシリコン単結晶11を育成することができる。
図1に示す単結晶育成装置は、シリコン単結晶11を育成する過程で単結晶引き上げ用坩堝2にシリコン融液を逐次供給する融液供給装置20を備えている。本実施形態の融液供給装置20は、以下のように構成される。
図1に示すように、チャンバ1内には、単結晶引き上げ用坩堝2の上方で、その坩堝2の中心軸から外れた位置に、原料融解用の坩堝21が配置されている。この原料融解用坩堝21は、銅などの熱伝導性および導電性に優れた金属からなる水冷坩堝22と、この水冷坩堝22の内側に配された石英坩堝23とから構成される。
水冷坩堝22は、周方向で複数のセグメントに分割されて成り、内部を流通する冷却水との熱交換により冷却される。冷却水は、図示しない吸水管を通じて水冷坩堝22に導入され、水冷坩堝22自身に形成された図示しない流路を経た後、図示しない排水管を通じて外部に排出される。石英坩堝23の底には、上下方向に延在する石英製の融液流出管24が連結されており、この融液流出管24は、水冷坩堝22の底を貫通している。
このような水冷坩堝22と石英坩堝23とで構成される原料融解用坩堝21の外側には、この坩堝21を囲繞する誘導加熱コイル25が周設されている。この誘導加熱コイル25は、図示しない配線を介して電源装置に接続されており、その電源装置から交流電流が印加される。
原料融解用坩堝21の上方には、石英製の原料供給管26が設けられている。この原料供給管26は、チャンバ1を貫通し、その上端に図示しない原料フィーダが接続され、その下端が石英坩堝23の内側に配置されている。原料供給管26には原料フィーダから固形のシリコン原料が導入され、原料供給管26を介して原料融解用坩堝21にシリコン原料を供給することができる。
また、原料融解用坩堝21の下方には、石英坩堝23からの融液流出管24と同軸上で石英製の融液供給管27が配設されている。この融液供給管27は、その上端が融液流出管24の下端に向けて開口し、その下端部が単結晶引き上げ用坩堝2の側壁の内側近傍でその坩堝2内のシリコン融液10に浸漬するように構成される。
このように構成された融液供給装置20では、原料供給管26を介して石英坩堝23に固体シリコン原料を供給し、誘導加熱コイル25に交流電流を印加することにより、誘導加熱コイル25の内側に磁界が形成される。この磁界により、石英坩堝23内の固体シリコン原料に渦電流が生じ、この渦電流により発生するジュール熱で固体シリコン原料が発熱する。その結果、石英坩堝23内で固体シリコン原料を融解させ、シリコン融液30を形成することができる。
さらに、形成されたシリコン融液30は、水冷坩堝22の内表面に生じる渦電流とシリコン融液30の表面に生じる渦電流とによる電磁力の作用で浮揚力を受ける。石英坩堝23内のシリコン融液30は、その浮揚力とシリコン融液自身の重量とのバランスにより、直ちに流出することなく、その位置に保持される。
この状態で、原料供給管26から石英坩堝23に固体シリコン原料を供給することにより、石英坩堝23内に保持されているシリコン融液30のうち、固体シリコン原料の供給量に相当する量のシリコン融液30が、融液流出管24を通じて石英坩堝23から流出する。そして、流出したシリコン融液30は、融液供給管27を通じて単結晶引き上げ用坩堝2に供給される。
このとき、石英坩堝23に供給された固体シリコン原料は、石英坩堝23内に存在するシリコン融液30と接触することにより温度が上昇し、誘導加熱コイル25からの電磁誘導で容易に融解する。
シリコン単結晶11を安定して育成するため、シリコン融液30は、単結晶引き上げ用坩堝2における液面の高さが一定となるように融液供給装置20から供給することが好ましい。
本実施形態では、融液供給装置20においてシリコン融液30を収容する石英坩堝23の内表面に、あらかじめバリウム化合物を塗布する。また、融液供給装置20から単結晶引き上げ用坩堝2にシリコン融液30を導く配管、すなわち融液流出管24および融液供給管27の内表面に同じバリウム化合物をあらかじめ塗布することもできる。
バリウム化合物溶液を上記内表面に塗布し、石英坩堝23内で固体シリコン原料を融解させ、またはシリコン融液30を流出させることにより、上記内表面が塗布したバリウム化合物とともに加熱され、結晶層が形成される。この結晶層は、剥離性が低いため、シリコン融液30および育成されるシリコン単結晶11に異物が混入するのを抑制でき、得られた単結晶の無転位引き上げ長を向上させ、転位のない長尺の単結晶を安定して育成することができる。また、単結晶引き上げ用坩堝2の内表面にもバリウム化合物溶液を塗布し、結晶層を形成することにより、さらにシリコン融液30およびシリコン単結晶11に異物が混入するのを抑制し、より安定して転位のない長尺の単結晶を育成することができる。
塗布するバリウム化合物は、水もしくはアルコールまたはこれらの混合液からなる溶媒に溶解性を有するBa(NO3)2、Ba(OH)2、BaO、BaCl2等を用いることができ、これらの溶媒に溶解した溶液として塗布することができる。
また、上記内表面におけるバリウム化合物の塗布量は、Ba(NO3)2の塗布量として0.1〜10mg/cm2、すなわちバリウム濃度として2.3×1017〜2.3×1019atoms/cm2と規定するのが望ましい。バリウムの濃度が上記下限未満では上記内表面での結晶の生成量が少ないため、クリストバライト等の剥離性の高い異物の生成を抑制する効果が十分に発揮されず、上記上限を超えてもその効果は飽和するからである。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態で融液供給装置の石英坩堝やシリコン融液の配管の内表面にバリウム化合物溶液を塗布する代わりに、融液供給装置においてシリコン融液にバリウム化合物を添加することを特徴とする。この点以外は、第1の実施形態と同様であり、前記図1に示す単結晶育成装置を用いることができる。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態で融液供給装置の石英坩堝やシリコン融液の配管の内表面にバリウム化合物溶液を塗布する代わりに、融液供給装置においてシリコン融液にバリウム化合物を添加することを特徴とする。この点以外は、第1の実施形態と同様であり、前記図1に示す単結晶育成装置を用いることができる。
本実施形態では、融液供給装置20の石英坩堝23に収容するシリコン融液30にバリウム化合物を添加する。シリコン融液30にバリウム化合物を添加することにより、シリコン融液30を保持または流出させる際に、石英坩堝23、融液流出管24および融液供給管27の内表面にバリウムが付着し、剥離性の低い結晶層が形成される。そのため、バリウム化合物をシリコン融液30に添加することにより、シリコン融液30および育成される単結晶に異物が混入する可能性が低下し、得られた単結晶の無転位引き上げ長を向上させることができる。
シリコン融液30に添加するバリウム化合物は、溶液とする必要がないため、第1の実施形態で使用するBa(OH)2、BaO、BaCl2等に加えて、水に難溶性のBaCO3、BaSO4等を用いることができる。また、本実施形態では、バリウム化合物を溶液とする必要がないため、塗布する場合よりも容易に実施することができる。
バリウム化合物は、溶融状態のシリコン融液30に添加してもよいし、固体シリコン原料とともに添加してもよい。いずれの場合も、石英坩堝23、融液流出管24および融液供給管27の内表面にバリウムを付着させ、結晶層を効率よく形成させるため、石英坩堝23の内表面近傍に添加するのが好ましい。
シリコン原料に対するバリウム化合物の添加量は、BaCO3の添加量(重量比)として、1〜100ppm、すなわちバリウム濃度として7.1×1015〜7.1×1017atoms/cm3と規定するのが望ましい。バリウムの濃度が上記下限未満では上記内表面の結晶化の促進が不十分であり、クリストバライト等の剥離性の高い異物の生成を抑制する効果が十分に発揮されず、上記上限を超えてもその効果は飽和するからである。
また、本実施形態において、第1の実施形態と同様に、バリウム化合物を、石英坩堝23の内表面、ならびに融液供給装置20から単結晶引き上げ用坩堝2にシリコン融液30を供給する配管、すなわち融液流出管24および融液供給管27の内表面にあらかじめ塗布してもよい。
本発明のシリコン単結晶の育成方法の効果を確認するため、以下の試験を行った。前記図1に示す単結晶育成装置を用い、内径590mm、深さ395mmの単結晶引き上げ用坩堝を使用し、これにシリコン原料として塊粒状の多結晶シリコン100kgを初期チャージして溶解し、このシリコン融液から直径205mmのシリコン単結晶を育成した。育成条件は、引き上げ速度を1mm/min、横磁場の強度を3000ガウス、単結晶引き上げ用坩堝の回転数を1rpm、引き上げ軸の回転数を8rpmとした。
また、融液供給装置として、内径220mm、肉厚15mm、高さ350mmであり、18個のセグメントに分割された銅製の水冷坩堝に、肉厚3mmの石英坩堝を嵌合させ、これらの周囲に、高さ200mm、内径260mmで、5巻きの誘導加熱コイルを配置させたものを使用した。この石英坩堝内で保持できるシリコン融液の最大量は10kgであった。誘導加熱コイルには、周波数20kHzの交流電流を最大出力200kWで印加した。また、融液供給管として、内径40mm、長さ2mの石英管を使用した。そして、単結晶引き上げ用坩堝内のシリコン融液量が一定となるように融液供給装置からシリコン融液を逐次供給した。
本発明例1〜3の試験では、下記表1に示す条件で、融液供給装置のシリコン融液にBaCO3を添加または融液供給管の内表面にBa(NO3)2を塗布した。そして、各試験において、1本のシリコン単結晶の直胴部の長さの目標値を1000mmとして、シリコン融液の連続チャージを行うことにより、石英製の部品の交換を行うことなく3本連続して引き上げた。これを1バッチとして、各試験において3バッチずつ単結晶の引き上げを行った。
また、比較例1〜3として、下記表1に示すように、本発明例と同様の単結晶育成装置を用いて連続チャージによりシリコン融液の追加を行い、バリウム化合物を添加も塗布もしない場合(比較例1)およびバリウム化合物を単結晶引き上げ用坩堝中のシリコン融液のみに添加した場合(比較例2)、ならびに連続チャージを行わずカットロッドのリチャージによりシリコンの追加を行い、バリウム化合物を単結晶引き上げ用坩堝中のシリコン融液に添加した場合(比較例3)について、単結晶の育成を行った。
本発明例1では、融液供給装置の石英坩堝中の10kgの多結晶シリコン原料にBaCO3を0.4g添加して融解した。このときのシリコン融液中のバリウム濃度は2.8×1017atoms/cm3であった。単結晶引き上げ用坩堝中のシリコン融液には、バリウム化合物の添加は行わず、融液供給管の内表面への塗布も行わなかった。そして、引き上げられた各シリコン単結晶における、無転位で引き上げられた直胴部の長さは、下記表2に示す通りであり、その合計は上記表1に示す通り、8475mmであった。各バッチとも、1本目および2本目は目標長さである1000mmの無転位引き上げを完了することができた。
本発明例2では、融液供給装置の石英坩堝中の10kgの多結晶シリコン原料にBaCO3を0.2g添加して、多結晶シリコン原料を融解し、単結晶引き上げ用坩堝では、初期のシリコン融液100kgに、BaCO3を0.2g添加した。このときのシリコン融液中のバリウム濃度は、融液供給装置の石英坩堝では1.4×1017atoms/cm3であり、単結晶引き上げ用坩堝では1.4×1016atoms/cm3であった。また、融液供給管の内表面への塗布は行わなかった。そして、引き上げられた各シリコン単結晶の無転位で引き上げられた直胴部の長さは、下記表3に示す通りであり、その合計は9000mmであった。各バッチとも全てのシリコン単結晶について、目標長さである1000mmの無転位引き上げを完了することができた。
本発明例3では、融液供給装置の石英坩堝中のシリコン原料および単結晶引き上げ用坩堝中のシリコン融液にはバリウム化合物の添加は行わず、融液供給管の内表面にBa(NO3)2を、単位面積当たりの塗布量が1.5mg/cm2となるように、水溶液として塗布した。このときの融液供給管の内表面のバリウム濃度は3.5×1018atoms/cm2であった。そして、引き上げられた各シリコン単結晶の無転位で引き上げられた直胴部の長さは、下記表4に示す通りであり、その合計は9000mmであった。各バッチとも、1本目および2本目は目標長さである1000mmの無転位引き上げを完了することができた。
比較例1では、融液供給装置の石英坩堝中のシリコン原料および単結晶引き上げ用坩堝中のシリコン融液にはバリウム化合物の添加は行わず、融液供給管の内表面への塗布も行わなかった。そして、引き上げられた各シリコン単結晶の無転位で引き上げられた直胴部の長さは、下記表5に示す通りであり、その合計は2340mmと本発明例1〜3と比べて著しく短かった。また、各バッチとも、目標長さである1000mmの無転位引き上げを完了することができた単結晶は1本もなく、3本目は無転位引き上げをすることができなかった。
比較例2では、融液供給装置の石英坩堝中のシリコン原料にはバリウム化合物の添加は行わず、融液供給管の内表面への塗布も行わなかった。単結晶引き上げ用坩堝では、初期のシリコン融液100kgに、BaCO3を0.4g(バリウム濃度で2.8×1016atoms/cm3)添加した。そして、引き上げられた各シリコン単結晶における、無転位で引き上げられた直胴部の長さは、下記表6に示す通りであり、その合計は7450mmであった。各バッチとも、1本目および2本目は目標長さである1000mmの無転位引き上げを完了することができた。これは、単結晶引き上げ用の坩堝中のシリコン融液にBaCO3を添加することで、その坩堝の内表面が改質されたことによる。
比較例3では、結晶育成中に単結晶引き上げ用坩堝にシリコン融液の供給を行えない通常のCZ法の単結晶育成装置を用いて、シリコン原料にBaCO3を添加し、カットロッドのリチャージによる複数本のシリコン単結晶の育成を行った。
具体的には、単結晶引き上げ用坩堝中の多結晶シリコン原料160kgにBaCO3を0.4g(バリウム濃度で1.8×1016atoms/cm3)添加して融解し、1本目のシリコン単結晶を引き上げた。続いて、単結晶引き上げ用坩堝中の残留溶液に、減少した分のカットロッドを追加溶融させて融液量を160kgとして2本目のシリコン単結晶を引き上げ、最後に長さ1000mmの結晶を引き上げるのに必要な量のカットロッドを追加溶融させて、3本目のシリコン単結晶を引き上げた。
引き上げられた各シリコン単結晶の無転位で引き上げられた直胴部の長さは、下記表7に示す通りであり、その合計は6490mmと本発明例1〜3と比べて短かった。また、各バッチとも、3本目は無転位引き上げをすることができなかった。
比較例3では、本発明例1、2および比較例2と同量のBaCO3を添加したにもかかわらず、無転位で引き上げられた直胴部の長さはこれらの実施例と比べて短い。この原因としては、以下の二つの理由が考えられる。(1)カットロッドのリチャージによる引き上げでは、単結晶引き上げ用坩堝で棒状シリコン原料を融解するため、坩堝の温度がこれらの実施例よりも高くなり、坩堝の内表面に剥離性の高い異物が生成されやすい。(2)シリコン融液と接していた坩堝の内表面が、結晶の引き上げに伴うシリコン融液の現象によって露出し、リチャージによって再びシリコン融液と接するという熱履歴によって坩堝の内表面に何らかの悪影響を及ぼしている。
以上の結果から、本発明例1〜3は、無転位引き上げ長の点で、バリウム化合物を添加も塗布もしない場合(比較例1)およびバリウム化合物を添加するものの連続チャージを行わない場合(比較例3)と比べて優れており、単結晶引き上げ用坩堝中のシリコン融液のみにバリウム化合物を添加する場合(比較例2)と同等またはこれより優れていることが明らかとなった。
本発明のシリコン単結晶の育成方法によれば、シリコン原料融解用の石英坩堝および供給配管の少なくとも一方のシリコン融液に接する面にクリストバライト等の剥離性の高い異物が生成するのを抑制できる。そのため、シリコン原料融解用の石英坩堝および供給配管の少なくとも一方からシリコン融液にクリストバライト等の異物が混入するのを抑制でき、無転位引き上げ長を低下させることなく、つまり製品歩留まりを低下させずにシリコン単結晶を育成することが可能になる。したがって、本発明のシリコン単結晶の育成方法は、連続チャージCZ法によるシリコン単結晶の引き上げに好適に利用することができる。
1:チャンバ、 2:単結晶引き上げ用ルツボ、 2a:石英ルツボ、
2b:黒鉛ルツボ、 3:支持軸、 4:ヒータ、 5:断熱材、
6:引き上げ軸、 7:種結晶、 8:熱遮蔽体、 9:電磁コイル、
10:原料融液、 11:シリコン単結晶、
20:融液供給装置、 21:原料融解用ルツボ、 22:水冷ルツボ、
23:石英ルツボ、 24:融液流出管、 25:誘導加熱コイル、
26:原料供給管、 27:融液供給管、 30:シリコン融液
2b:黒鉛ルツボ、 3:支持軸、 4:ヒータ、 5:断熱材、
6:引き上げ軸、 7:種結晶、 8:熱遮蔽体、 9:電磁コイル、
10:原料融液、 11:シリコン単結晶、
20:融液供給装置、 21:原料融解用ルツボ、 22:水冷ルツボ、
23:石英ルツボ、 24:融液流出管、 25:誘導加熱コイル、
26:原料供給管、 27:融液供給管、 30:シリコン融液
Claims (4)
- チョクラルスキー法により単結晶引き上げ用の石英坩堝でシリコン単結晶を育成しながら、シリコン原料融解用の石英坩堝で固体シリコン原料を融解し、このシリコン融液を前記単結晶引き上げ用の石英坩堝に供給するシリコン単結晶の育成方法において、
前記シリコン原料融解用の石英坩堝に収容するシリコン融液にバリウム化合物を添加することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。 - 前記シリコン原料融解用の石英坩堝に収容する前記シリコン融液中のバリウム濃度を7.1×1015〜7.1×1017atoms/cm3とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の育成方法。
- チョクラルスキー法により単結晶引き上げ用の石英坩堝でシリコン単結晶を育成しながら、シリコン原料融解用の石英坩堝で固体シリコン原料を融解し、このシリコン融液を前記単結晶引き上げ用の石英坩堝に供給するシリコン単結晶の育成方法において、
前記シリコン原料融解用の石英坩堝から前記単結晶引き上げ用の石英坩堝にシリコン融液を導く石英管、および前記シリコン原料融解用の石英坩堝のうちの少なくとも一方の内表面にバリウム化合物を塗布することを特徴とするシリコン単結晶の育成方法。 - 前記バリウム化合物を塗布した面のバリウム濃度を2.3×1017〜2.3×1019atoms/cm2とすることを特徴とする請求項3に記載のシリコン単結晶の育成方法。
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2008
- 2008-07-31 JP JP2008197615A patent/JP2010030867A/ja active Pending
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