JP2010000161A - 人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、血液回路及びダイアライザ内に付着する気泡を、簡易な手法でかつ完全に除去し、かつ、エアートラップ内のプライミング液の液面の高さを、効率的に調整すること。
【解決手段】ダイアライザに動脈側血液回路管と静脈側血液回路管を接続し、動脈側血液回路管と連通する状態で補液回路を備え、血液ポンプを駆動させ、補液回路の先端の補液収納体から、補液回路管、動脈側血液回路管、ダイアライザ及び静脈側血液回路管の順に、補液収納体内のプライミング液をウェットタイプのダイアライザを用いる場合には毎分250ミリリットル以上の流量で血液回路およびダイアライザを洗浄・プライミングし、ドライタイプのダイアライザを用いる場合には毎分151乃至250ミリリットルの流量で血液回路およびダイアライザをプライミングする。
【選択図】図1
【解決手段】ダイアライザに動脈側血液回路管と静脈側血液回路管を接続し、動脈側血液回路管と連通する状態で補液回路を備え、血液ポンプを駆動させ、補液回路の先端の補液収納体から、補液回路管、動脈側血液回路管、ダイアライザ及び静脈側血液回路管の順に、補液収納体内のプライミング液をウェットタイプのダイアライザを用いる場合には毎分250ミリリットル以上の流量で血液回路およびダイアライザを洗浄・プライミングし、ドライタイプのダイアライザを用いる場合には毎分151乃至250ミリリットルの流量で血液回路およびダイアライザをプライミングする。
【選択図】図1
Description
本発明は、ダイアライザ(透析器)を使用する人工透析において、透析血液中の老廃物の除去、水分の除去、電解質の調節、血液のpHの調節などの人工透析を行う前に、血液回路(動脈側血液回路管、静脈側血液回路管)およびダイアライザ内部の血液通過部に付着している気泡を、プライミング液で効率的かつ完全に血液回路の外部に排出し、血液回路の途中に、エアー抜きの目的で設置されているエアートラップの内部のプライミング液の液面の高さを、ポンプの稼動により、人工透析をする際に最も適切な位置に自動的に調整できるようにした、人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法に関する。
従来、医療の現場ではダイアライザを利用した人工透析が広く実施されており、この人工透析(血液透析)における主な作業としては、洗浄・プライミング、透析、返血という作業が存在する。
ここで洗浄とは、人工透析の準備段階で、患者の血液を通過させる血液回路(動脈側穿刺針の接続部からダイアライザ入り口までの動脈側血液回路と、ダイアライザ出口から静脈側穿刺針の接続部までの静脈側血液回路とがある)とダイアライザの内部を洗浄することをいう。
また、プライミングとは、洗浄により血液回路内部及びダイアライザ内部に気泡が全く残らない状態にし、透析を行う準備を完了させる工程をいう。このプライミングにおいては、上記エアートラップの内部のプライミング液の液面を、適切な位置に調整しておく必要がある。
透析とは、ダイアライザ内部の血液通過部にある血液と透析液とを、半透膜を介して、拡散作用に基づき、血液中の老廃物を除去したり、過剰になった電解質を取り除き、不足している電解質を補い、あるいは限外ろ過作用に基づき、余分な水分を除去したりするなどして血液を正常化させる工程のことである。ダイアライザ内部の血液通過部は、約1万本の微細な中空糸の束で構成されている。
返血とは、透析終了後に、患者の体内から血液回路とダイアライザに導いている血液を残りなく患者の体内に戻す工程のことである。
ここで洗浄とは、人工透析の準備段階で、患者の血液を通過させる血液回路(動脈側穿刺針の接続部からダイアライザ入り口までの動脈側血液回路と、ダイアライザ出口から静脈側穿刺針の接続部までの静脈側血液回路とがある)とダイアライザの内部を洗浄することをいう。
また、プライミングとは、洗浄により血液回路内部及びダイアライザ内部に気泡が全く残らない状態にし、透析を行う準備を完了させる工程をいう。このプライミングにおいては、上記エアートラップの内部のプライミング液の液面を、適切な位置に調整しておく必要がある。
透析とは、ダイアライザ内部の血液通過部にある血液と透析液とを、半透膜を介して、拡散作用に基づき、血液中の老廃物を除去したり、過剰になった電解質を取り除き、不足している電解質を補い、あるいは限外ろ過作用に基づき、余分な水分を除去したりするなどして血液を正常化させる工程のことである。ダイアライザ内部の血液通過部は、約1万本の微細な中空糸の束で構成されている。
返血とは、透析終了後に、患者の体内から血液回路とダイアライザに導いている血液を残りなく患者の体内に戻す工程のことである。
プライミングは、透析開始後に、血液回路内部及びダイアライザ内部に残留している気泡が人体に入り込むことを防止することを目的として行われる。万が一、透析開始後に、静脈側穿刺針を通じて気泡が人体に入り込むと、血流を阻害し、生命の危険が生じる。また、ダイアライザ内の中空糸に気泡が残留した場合、血液と接触して凝固を起こす場合もあり、この場合にはダイアライザの機能が損なわれる。
前記エアートラップは、万が一、エアートラップよりもダイアライザ側の血液回路内部およびダイアライザ内部に残存した気泡(空気)がある場合に、これを捕捉して貯留し、静脈側穿刺針を通じて人体に気泡が入り込まないようにする役割を果たす。
また、このエアートラップは、エアートラップのダイアライザ側の端縁部で静脈圧計回路と連結し、静脈圧計回路の先端に設置された静脈圧計と繋がっている。静脈圧計は、人工透析中、エアートラップ内に捕捉して貯留された気泡の空気圧を計測し、血液回路内部を流れる血液の圧力に異常がないかを計測する。仮に、血液回路管の一部が折れたり、何かに挟まれてつぶれたりしている場合、エアートラップ内の気泡の空気圧が上昇する。また、静脈側穿刺針が患者の静脈から外れてしまった場合などには、エアートラップ内の気泡の空気圧が下降する。静脈圧計には、適正な空気圧の上限および下限が設定されており、これを超えてエアートラップ内の気泡の空気圧が上昇または下降すると、警報が鳴るなどして異常を知らせる。したがって、エアートラップ内部に一定の空気が貯留されていることは、正常な空気圧の測定(換言すれば、正常な血圧の測定)のために不可欠であり、人工透析の安全な実施のために重要である。
人工透析の実施中、エアートラップ内部の血液の液面の高さは、これが低すぎる場合には、エアートラップよりも静脈側の静脈側血液回路管にエアートラップ内部の空気が混入し、患者の身体、生命に重大な危険を及ぼすおそれがある。また、液面が高すぎる場合には、血液が静脈圧計回路に逆流し、やはり患者の生命、身体に重大な危険を及ぼすおそれがある。
このような危険を回避するために適正なエアートラップ内の液面の高さは、エアートラップの静脈側を下にしてその下端から4分の3乃至3分の2の高さにあるのが適正であるとされている。
また、このエアートラップは、エアートラップのダイアライザ側の端縁部で静脈圧計回路と連結し、静脈圧計回路の先端に設置された静脈圧計と繋がっている。静脈圧計は、人工透析中、エアートラップ内に捕捉して貯留された気泡の空気圧を計測し、血液回路内部を流れる血液の圧力に異常がないかを計測する。仮に、血液回路管の一部が折れたり、何かに挟まれてつぶれたりしている場合、エアートラップ内の気泡の空気圧が上昇する。また、静脈側穿刺針が患者の静脈から外れてしまった場合などには、エアートラップ内の気泡の空気圧が下降する。静脈圧計には、適正な空気圧の上限および下限が設定されており、これを超えてエアートラップ内の気泡の空気圧が上昇または下降すると、警報が鳴るなどして異常を知らせる。したがって、エアートラップ内部に一定の空気が貯留されていることは、正常な空気圧の測定(換言すれば、正常な血圧の測定)のために不可欠であり、人工透析の安全な実施のために重要である。
人工透析の実施中、エアートラップ内部の血液の液面の高さは、これが低すぎる場合には、エアートラップよりも静脈側の静脈側血液回路管にエアートラップ内部の空気が混入し、患者の身体、生命に重大な危険を及ぼすおそれがある。また、液面が高すぎる場合には、血液が静脈圧計回路に逆流し、やはり患者の生命、身体に重大な危険を及ぼすおそれがある。
このような危険を回避するために適正なエアートラップ内の液面の高さは、エアートラップの静脈側を下にしてその下端から4分の3乃至3分の2の高さにあるのが適正であるとされている。
従来、血液回路及びダイアライザ内部の血液通過部のプライミングは、以下の工程により行われている。
まず、動脈側血液回路を補液回路と接続し、動脈側血液回路管を補液収納体内の生理食塩液(プライミング液)で満たし、動脈側血液回路の動脈側穿刺針付近をクランパにより閉じる。その後、動脈側血液回路のダイアライザ接続部側端部から生理食塩液を流出させて動脈側血液回路内を洗浄した後、動脈側血液回路管内に生理食塩液が充填されている状態でダイアライザ接続部側端部付近をクランパにより閉じる。これにより、動脈側血液回路管は、両端部をクランパにより閉じられ、管内に生理食塩液が満ちていることになる。
その後、ダイアライザの動脈側接続部に、ダイアライザ内部に気泡が混入しないように注意しながら、動脈側血液回路を接続する。引き続き、ダイアライザ静脈側接続部に、静脈側血液回路を接続する。
次いで、動脈側血液回路のダイアライザ接続部付近のクランパを開き、補液収納体の生理食塩液を毎分50乃至150ミリリットル程度で流し、ダイアライザの血液通過部及び血液回路内の洗浄を行い、同時に気泡を追い出す。
まず、動脈側血液回路を補液回路と接続し、動脈側血液回路管を補液収納体内の生理食塩液(プライミング液)で満たし、動脈側血液回路の動脈側穿刺針付近をクランパにより閉じる。その後、動脈側血液回路のダイアライザ接続部側端部から生理食塩液を流出させて動脈側血液回路内を洗浄した後、動脈側血液回路管内に生理食塩液が充填されている状態でダイアライザ接続部側端部付近をクランパにより閉じる。これにより、動脈側血液回路管は、両端部をクランパにより閉じられ、管内に生理食塩液が満ちていることになる。
その後、ダイアライザの動脈側接続部に、ダイアライザ内部に気泡が混入しないように注意しながら、動脈側血液回路を接続する。引き続き、ダイアライザ静脈側接続部に、静脈側血液回路を接続する。
次いで、動脈側血液回路のダイアライザ接続部付近のクランパを開き、補液収納体の生理食塩液を毎分50乃至150ミリリットル程度で流し、ダイアライザの血液通過部及び血液回路内の洗浄を行い、同時に気泡を追い出す。
血液回路内の洗浄に当たっては、回路内に設置されたエアートラップの静脈側端縁部を上にする(人工透析中とは上下を反転させる)ことにより、エアートラップ内を生理食塩液で満たす。プライミング後、生理食塩液で満たされたエアートラップの上下を元に戻し、エアートラップのダイアライザ側端縁部から、注射器により空気を注入する方法によって、エアートラップ内の生理食塩液の液面の高さを調整する。
特開平6-14993号公報
特開2008-62000号公報
血液回路を洗浄・プライミングする際のプライミング液の流量は、ダイアライザの種類により幅はあるものの、毎分50乃至150ミリリットルの範囲で行うべきと取扱説明書に記載されている。このため、これに従う限り、毎分250ミリリットル程度の流量で行う場合と比較して、血液回路の洗浄・プライミングに時間がかかるという問題があった。
また、従来のプライミング方法においては、洗浄・プライミングのために血液回路内を流れるプライミング液(生理食塩液)の流速が遅いために、血液回路の内壁に気泡が付着していても、それを剥がすことができなかった。
そこで、洗浄後に、血液回路内部に気泡が付着しているかを目視により確認し、これが認められた場合には、血液回路に手で衝撃を加えることにより、人の手で一つ一つの気泡を追い出す作業が必要であった。
そこで、洗浄後に、血液回路内部に気泡が付着しているかを目視により確認し、これが認められた場合には、血液回路に手で衝撃を加えることにより、人の手で一つ一つの気泡を追い出す作業が必要であった。
さらに、従来のプライミング方法においては、人が手作業で、生理食塩液で完全に充填した動脈側血液回路を、ダイアライザに気泡が混入しないように注意してダイアライザ入口と接続する必要があった。これは、毎分50乃至150ミリリットル程度の流量のプライミング液を流す方法で血液回路の洗浄・プライミングを行うと、プライミング液の流速が遅いため、ダイアライザ内部の中空糸内部に混入した気泡が洗浄・プライミングによってもダイアライザ外部に出て行かなくなってしまうためであった。
このような問題を解決するためには、血液回路内を通過するプライミング液の流速を速くする必要があった。しかし、過去に治療の現場に流通していたダイアライザにあっては、プライミング液の流速が速い場合に、ダイアライザの内部機構を破損し、機能を損なう事例があったため、一般的なダイアライザの取扱説明書には、上記毎分50乃至150ミリリットルの流量のプライミング液で洗浄・プライミングを行う旨が記載されていた。
この点、本発明は、血液回路管の内壁に付着した気泡を剥がすために最適な流速が、ウェットタイプのダイアライザにおいては、毎分250ミリリットル以上、ドライタイプのダイアライザにおいては、毎分151乃至250ミリリットルであることを実験により確認し、その後、1000症例以上の臨床試験を通じて、同流量による洗浄・プライミングによっても、現在流通しているダイアライザの機能を低下させることはないことを確認した。
この点、本発明は、血液回路管の内壁に付着した気泡を剥がすために最適な流速が、ウェットタイプのダイアライザにおいては、毎分250ミリリットル以上、ドライタイプのダイアライザにおいては、毎分151乃至250ミリリットルであることを実験により確認し、その後、1000症例以上の臨床試験を通じて、同流量による洗浄・プライミングによっても、現在流通しているダイアライザの機能を低下させることはないことを確認した。
エアートラップ内のプライミング液の液面の調整について、従来は、エアートラップを上下逆さの姿勢を保ってプライミング液を流すことによって、エアートラップ内部の空気を一度完全に追い出し、その後、エアートラップの上下を元に戻したうえで、注射器で必要な量の空気を血液回路の外部から注入するなど、人の手作業による迂遠な方法が採られていた。
このような方法によると、時間と労力がかかることに加えて、室内の空気を注射器に取り込みこれをエアートラップ内で血液と触れさせることになり、衛生上の問題もあった。
このような方法によると、時間と労力がかかることに加えて、室内の空気を注射器に取り込みこれをエアートラップ内で血液と触れさせることになり、衛生上の問題もあった。
本発明は、血液回路及びダイアライザ内部の血液通過部のプライミングにおいて、動脈側血液回路からダイアライザの血液通過部を経て静脈側血液回路に至るまでを、プライミング液をウェットタイプのダイアライザを使用する場合には毎分250ミリリットル以上の流量で通過させ、ドライタイプのダイアライザを使用する場合には毎分151乃至250ミリリットルの流量で通過させることにより、一度の作業手順で完全に血液回路及びダイアライザ内から気泡を排出することを可能にし、かつ、エアートラップ内のプライミング液の液面の高さを、人の手作業によることなく、予め必要な回転数をプログラミングした液面調整ポンプの稼動により自動的に行うことで、上記した問題点をすべて解決できる人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法を提供せんとするものである。
本発明に係る、人工透析における血液回路及びダイアライザ内の血液通過部のプライミング方法の請求項1のものは、人工透析を行うダイアライザの片側に動脈側血液回路管を接続し、ダイアライザの他側に静脈側血液回路管を接続し、この動脈側血液回路管、静脈側血液回路管から構成される血液回路と、前記血液回路の動脈側血液回路管と連通する補液回路と、補液回路の先端に取り付けられたプライミング液の貯留された補液収納体と、前記血液回路の動脈側血液回路管と静脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた各血液回路管の流路の開閉が可能となる血液クランパと、前記補液回路の動脈側血液回路管との接続部付近に取り付けられた補液回路の流路の開閉が可能となる補液クランパと、駆動により前記血液回路内の血液を流動させて体外循環させる血液ポンプと、静脈側血液回路の途中に血液回路内部の気泡を捕捉して貯留するためのエアートラップと、エアートラップのダイアライザ側の端縁部と連通する静脈圧計回路と、前記静脈圧計回路の先端に取り付けられた静脈圧計と、前記静脈圧計回路と連通する液面調整ポンプ回路と、前記液面調整ポンプ回路の先端に取り付けられた液面調整ポンプとを具備した透析回路において、前記ダイアライザが、内部が蒸留水で満たされているウェットタイプのダイアライザにおいて、前記血液回路の動脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを閉じ、補液回路の補液クランパを開き、前記血液回路の静脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを開いた状態で、前記血液ポンプを駆動させ、補液収納体内のプライミング液を、内径断面積を9.0乃至9.2平方ミリメートルとし、内壁の素材を塩化ビニールとする前記血液回路の静脈側血液回路管および動脈側血液回路管内を毎分250ミリリットル以上の流量で通過させることを特徴とする人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法である。
また、請求項2は、請求項1の透析回路において、前記ダイアライザが、内部が空気で満たされているドライタイプのダイアライザにおいて、前記血液回路の動脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを閉じ、補液回路の補液クランパを開き、前記血液回路の静脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを開いた状態で、前記血液ポンプを駆動させ、補液収納体内のプライミング液を、内径断面積を9.0乃至9.2平方ミリメートルとし、内壁の素材を塩化ビニールとする前記血液回路の静脈側血液回路管および動脈側血液回路管内を毎分151乃至250ミリリットルの流量で流すことを特徴とする人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法である。
また、請求項3は、液面調整ポンプを、エアートラップの容量に基づき予め定められた回転数だけ回転させることにより、静脈圧計回路および液面調整回路を通じてエアートラップ内に捕捉して貯留された空気を吸引し、エアートラップ内のプライミング液の液面の高さを調整するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法である。
本発明に係る人工透析における血液回路のプライミング方法によれば、プライミング工程後に血液回路内に気泡が残存することがなく、熟練したスタッフが目視により気泡の残存の有無を確認する必要がなくなる。これは、作業時間の短縮、作業労力の低減に止まらず、気泡の見落としという人為的なミスにより、重大な生命の危険が生じることを回避する効果がある。
なお、ウェットタイプのダイアライザにおいては、血液回路管の内径断面積を9.0乃至9.2平方ミリメートルとした場合で、血液回路管の内壁素材を塩化ビニールとする場合に、プライミング液の流量を毎分250ミリリットル以上とし、一方同条件下でドライタイプのダイアライザにおいては、プライミング液の流量を毎分151乃至250ミリリットルとすると、血液回路管の内壁に付着する気泡を全て剥がすことができ、安全なプライミング工程を行えるということは、既に1000を超える臨床症例を通じて確認されている。
なお、ウェットタイプのダイアライザにおいては、血液回路管の内径断面積を9.0乃至9.2平方ミリメートルとした場合で、血液回路管の内壁素材を塩化ビニールとする場合に、プライミング液の流量を毎分250ミリリットル以上とし、一方同条件下でドライタイプのダイアライザにおいては、プライミング液の流量を毎分151乃至250ミリリットルとすると、血液回路管の内壁に付着する気泡を全て剥がすことができ、安全なプライミング工程を行えるということは、既に1000を超える臨床症例を通じて確認されている。
また、上記流量のプライミング液によるプライミングによれば、仮に動脈側血液回路管を接続する際に、ダイアライザ内部に気泡が混入しても、問題なく気泡を除去することができる。したがって、そもそも、動脈側血液回路管にプライミング液を充填し、クランパで閉じた状態で、気泡の混入しないよう注意しながらダイアライザと接続するという従来の方法によるプライミング作業は必要なくなる。
これにより、従来よりも簡易な方法で洗浄・プライミング工程に入ることができ、人的資源を節約し、効率的な人工透析を行えるという優れた効果がある。
これにより、従来よりも簡易な方法で洗浄・プライミング工程に入ることができ、人的資源を節約し、効率的な人工透析を行えるという優れた効果がある。
さらに、本発明によるプライミングでは、一定量(通常1000ミリリットル)のプライミング液(生理食塩液)で血液回路内を洗浄することが予定されている。このため、上記流量条件下のプライミング液によるプライミングによれば、プライミング液の流量の増加に伴い当然に洗浄・プライミングに要する時間自体が短縮され、効率的な人工透析に資する効果がある。
加えて、毎分250ミリリットルの流量でプライミング液を通過させることにより、回路中のエアートラップ内を短時間のうちに気泡(空気)で満たすことができる。エアートラップ内が空気で満たされれば、その状態からどれだけの空気を液面調整ポンプで吸引すれば適正な液面の高さ(エアートラップの下端から4分の3乃至3分の2の高さ)が確保できるかは、エアートラップの容量に基づき予め計算することができる。
そして、吸引すべき空気の量が計算できれば、吸引するために必要な液面調整ポンプの回転数も、予め特定することができる。この液面調整ポンプの回転数を、予め液面調整ポンプ内の制御装置にプログラミングすることによって、人の手作業によらず、自動的にエアートラップ内のプライミング液の液面の高さを調整することが可能になった。
これにより、人が手作業で、エアートラップ内に空気を送り込むための時間と労力を削減することが可能となり、より効率的な人工透析の実施に資する優れた効果がある。また、液面調整後にエアートラップ内に残る空気は、滅菌処理された血液回路管およびダイアライザ内の空気であり、室内の空気を注射器によりエアートラップ内に送り込む従来の方法に比較して、衛生的な観点でも優れた効果がある。
そして、吸引すべき空気の量が計算できれば、吸引するために必要な液面調整ポンプの回転数も、予め特定することができる。この液面調整ポンプの回転数を、予め液面調整ポンプ内の制御装置にプログラミングすることによって、人の手作業によらず、自動的にエアートラップ内のプライミング液の液面の高さを調整することが可能になった。
これにより、人が手作業で、エアートラップ内に空気を送り込むための時間と労力を削減することが可能となり、より効率的な人工透析の実施に資する優れた効果がある。また、液面調整後にエアートラップ内に残る空気は、滅菌処理された血液回路管およびダイアライザ内の空気であり、室内の空気を注射器によりエアートラップ内に送り込む従来の方法に比較して、衛生的な観点でも優れた効果がある。
以下、図面を参照して本発明の人工透析における血液回路のプライミング方法の実施の形態を説明する。
図1は、洗浄・プライミング工程の基本回路図である。図2乃至図5は、その作業手順図である。
図1は、洗浄・プライミング工程の基本回路図である。図2乃至図5は、その作業手順図である。
最初に本発明に係る回路の各配置について説明すると、人工透析を行うダイアライザ(透析器)1の片側には動脈側血液回路管2が接続されており、他側には静脈側血液回路管3が接続されており、この動脈側血液回路管2と静脈側血液回路管3とで血液回路4が構成されている。
前記ダイアライザ1の構成は公知のものであり、その内部には半透膜(図示しない)を介して、血液通過部と透析液室(いずれも図示しない)が備えられている。
前記ダイアライザ1の構成は公知のものであり、その内部には半透膜(図示しない)を介して、血液通過部と透析液室(いずれも図示しない)が備えられている。
つぎに前記動脈側血液回路管2には補液回路5が連通状に接続されており、この補液回路5の先端には、例えば500〜1500ミリリットル程度の容量のパック容器又はその他の適宜の容器から構成される補液収納体6が取り付けられている。
ついで、前記動脈側血液回路管2と静脈側血液回路管3の端縁部付近(人体との接続口付近)には、各流路の開閉が可能となる血液クランパ7、8が備えられているため、この血液クランパ7を開けば動脈側血液回路管2が開通状となり、それを閉めれば閉鎖状となる。同様に、血液クランパ8を開けば静脈側血液回路管3が開通状となり、それを閉めれば閉鎖状となる。
続いて前記補液回路5の動脈側血液回路管2との接続口付近には、補液回路の流路の開閉が可能となる補液クランパ9が備えられているため、この補液クランパ9を開けば補液回路5が開通状となり、それを閉めれば閉鎖状となる。
続いて静脈側血液回路管3の適所位置に、血液回路4の流路中の気泡の存在をチェックし、それを捕捉して貯留することができるエアトラップ10が備えられている。
ついで、各血液回路管4内の流路内の血液を循環させることができる血液ポンプ11が、動脈側血液回路管2の側壁付近に備えられている。この血液ポンプ11を駆動させて、動脈から血液を動脈側血液回路管2内に導き、ダイアライザ1を経由して血液透析を終え、透析されたきれいな血液を静脈側血液回路管3内に流れ込ませ、さらに静脈に戻すという流れを作る。
さらに、エアートラップ内の空気圧を計測するための静脈圧計12が、静脈圧計回路13と接続されている。
加えて、エアートラップ内のプライミング液の液面を調整するための液面調整ポンプ14が、液面調整回路15と接続されており、液面調整回路15は、静脈圧計回路13と連通常に接続されている。
加えて、エアートラップ内のプライミング液の液面を調整するための液面調整ポンプ14が、液面調整回路15と接続されており、液面調整回路15は、静脈圧計回路13と連通常に接続されている。
また、血液が固まるのを防止するための抗凝固薬を注入するための抗凝固薬回路16を動脈側血液回路管2に備えたり、血液回路4内に気泡が存在した場合に、それがそのまま体内に送り込まれることがないようにするため、気泡センサ17を血液回路4の適宜位置に設置したり、血液回路4内を通過する物質が血液であるか透析液であるかを判断する透過度センサ18を備えたり、することができる。
また図中の符号19は、血液回路4の適所に設置したアクセスポートで、血液回路4に薬液を注入したり、血液回路4内の血液を採血したりするために外部の回路や採血針などと簡単かつ確実に連結するためのパーツである。さらに符号20はポンプセグメントで、血液ポンプ11と動脈側血液回路管2を挟んで対峙し、血液ポンプ11の機能を確実に発揮できるようにするためのパーツである。符号21は、血液回路4、補液回路5およびエアートラップに適宜設置されたワンタッチクランパであり、プライミング、返血等の作業時に、血液の流れを一時的に止めるためのパーツである。
人工透析前の洗浄・プライミング工程(準備作業)としては、第1に、動脈側血液回路管の血液クランパ7を閉じ、補液回路の補液クランパ9を開き、静脈側血液回路管の血液クランパ8を開いた状態で、血液ポンプ11を駆動させ、補液収納体内のプライミング液を、内径断面積を9.0乃至9.2平方ミリメートルとし、内壁の素材を塩化ビニールとする動脈側血液回路管2および静脈側血液回路管3内を、毎分250ミリリットル以上の流量(ウェットタイプのダイアライザの場合)、又は151乃至250ミリリットルの流量(ドライタイプのダイアライザの場合)でプライミング液を通過させることによって、血液回路及びダイアライザを洗浄する。
第2に、液面調整ポンプ14が、エアートラップ10の容量に基づき予め液面調整ポンプ内の制御装置にプログラミングされた回転数だけ自動的に回転し、エアートラップ内の空気をエアートラップ内のプライミング液の液面がエアートラップの下端から3分の2乃至4分の3の高さになるように、静脈圧計回路13および液面調整回路15を通じて吸引する。
第3に、動脈側血液回路管の血液クランパ7を開き、静脈側血液回路管の血液クランパ8を閉じて、前記血液ポンプを停止させ、補助収納体内のプライミング液を動脈側血液回路管2の動脈側穿刺針の接続部側を通過させることによって、動脈側血液回路管2を洗浄する。
以上により、人工透析前の洗浄・プライミング工程(準備作業)は完了する。
本発明によれば、人工透析を行う医療現場の分野で利用可能である。
1 ダイアライザ
2 動脈側血液回路
3 静脈側血液回路
4 血液回路
5 補液回路
6 補液収納体
7 動脈側血液回路管の血液クランパ
8 静脈側血液回路管の血液クランパ
9 補液クランパ
10 エアトラップ
11 血液ポンプ
12 静脈圧計
13 静脈圧回路
14 液面調整ポンプ
15 液面調整回路
16 抗凝固薬回路
17 気泡センサ
18 透過度センサ
19 アクセスポート
20 ポンプセグメント
21 ワンタッチクランパ
2 動脈側血液回路
3 静脈側血液回路
4 血液回路
5 補液回路
6 補液収納体
7 動脈側血液回路管の血液クランパ
8 静脈側血液回路管の血液クランパ
9 補液クランパ
10 エアトラップ
11 血液ポンプ
12 静脈圧計
13 静脈圧回路
14 液面調整ポンプ
15 液面調整回路
16 抗凝固薬回路
17 気泡センサ
18 透過度センサ
19 アクセスポート
20 ポンプセグメント
21 ワンタッチクランパ
Claims (3)
- 人工透析を行うダイアライザの片側に動脈側血液回路管を接続し、ダイアライザの他側に静脈側血液回路管を接続し、この動脈側血液回路管、静脈側血液回路管から構成される血液回路と、前記血液回路の動脈側血液回路管と連通する補液回路と、補液回路の先端に取り付けられたプライミング液の貯留された補液収納体と、前記血液回路の動脈側血液回路管と静脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた各血液回路管の流路の開閉が可能となる血液クランパと、前記補液回路の動脈側血液回路管との接続部付近に取り付けられた補液回路の流路の開閉が可能となる補液クランパと、駆動により前記血液回路内の血液を流動させて体外循環させる血液ポンプと、静脈側血液回路の途中に血液回路内部の気泡を捕捉して貯留するためのエアートラップと、エアートラップのダイアライザ側の端縁部と連通する静脈圧計回路と、前記静脈圧計回路の先端に取り付けられた静脈圧計と、前記静脈圧計回路と連通する液面調整ポンプ回路と、前記液面調整ポンプ回路の先端に取り付けられた液面調整ポンプとを具備した透析回路において、前記ダイアライザが、内部が蒸留水で満たされているウェットタイプのダイアライザにおいて、前記血液回路の動脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを閉じ、補液回路の補液クランパを開き、前記血液回路の静脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを開いた状態で、前記血液ポンプを駆動させ、補液収納体内のプライミング液を、内径断面積を9.0乃至9.2平方ミリメートルとし、内壁の素材を塩化ビニールとする前記血液回路の静脈側血液回路管および動脈側血液回路管内を毎分250ミリリットル以上の流量で通過させることを特徴とする人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法。
- 請求項1の透析回路において、前記ダイアライザが、内部が空気で満たされているドライタイプのダイアライザにおいて、前記血液回路の動脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを閉じ、補液回路の補液クランパを開き、前記血液回路の静脈側血液回路管の端縁部付近に取り付けられた血液クランパを開いた状態で、前記血液ポンプを駆動させ、補液収納体内のプライミング液を、内径断面積を9.0乃至9.2平方ミリメートルとし、内壁の素材を塩化ビニールとする前記血液回路の静脈側血液回路管および動脈側血液回路管内を毎分151乃至250ミリリットルの流量で流すことを特徴とする人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法。
- 液面調整ポンプを、エアートラップの容量に基づき予め定められた回転数だけ回転させることにより、静脈圧計回路および液面調整回路を通じてエアートラップ内に捕捉して貯留された空気を吸引し、エアートラップ内のプライミング液の液面の高さを調整するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の人工透析における血液回路及びダイアライザのプライミング方法。
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