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JP2010096372A - 二酸化炭素冷媒用の内部熱交換器 - Google Patents

二酸化炭素冷媒用の内部熱交換器 Download PDF

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JP2010096372A JP2008265812A JP2008265812A JP2010096372A JP 2010096372 A JP2010096372 A JP 2010096372A JP 2008265812 A JP2008265812 A JP 2008265812A JP 2008265812 A JP2008265812 A JP 2008265812A JP 2010096372 A JP2010096372 A JP 2010096372A
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慶 小山
Kenichi Inui
謙一 乾
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Abstract

【課題】二酸化炭素を冷媒としたヒートポンプ式熱交換機器の内部熱交換器において、低圧側冷媒のドライアウトを抑制し、かつ低圧側冷媒の伝熱性能を向上させることにより、コンパクトで高性能な熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明に係る内部熱交換器は、冷凍サイクル中の圧縮機の潤滑油が0.5質量%以上混入した状態の二酸化炭素を冷媒として用い、高圧側冷媒と低圧側冷媒との間で熱交換を行う前記冷凍サイクルの内部熱交換器であって、前記低圧側冷媒が流れる低圧冷媒管は内面溝付管であり、前記内面溝付管のフィン高さHFと前記内面溝付管の内径IDとの比がHF/ID≧0.025であり、前記内面溝付管の断面円周方向のフィンピッチPFと前記内面溝付管の内径IDとの比がPF/ID≦0.08であり、前記内面溝付管のフィンが円周を1周するのに要する管の長さLと前記内面溝付管の内径IDとの比がL/ID≦12である。
【選択図】図4

Description

本発明は、二酸化炭素冷媒を用いるヒートポンプ式給湯機やヒートポンプ式空調機等(以下、ヒートポンプ式給湯機やヒートポンプ式空調機等を総称して「ヒートポンプ式熱交換機器」という)の熱交換器に関し、特に、高圧側冷媒と低圧側冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器に関する。
ヒートポンプとは、熱源(通常、大気や地下水、海水など安価で豊富にある資源)からの熱を圧縮機(コンプレッサ)を利用して汲み上げ、移動させることにより加熱や冷却を行うシステムをいう。例えば、電動ヒートポンプでは、電気エネルギーを熱エネルギーに直接変換するのではなく、熱を移動させる動力源として利用することにより、消費電力(消費エネルギー)の3倍近くの熱エネルギーが利用できると言われている。これは、石油などの化石燃料を燃焼させて熱エネルギーとする従来のシステムに比しても効率がよく、環境への負荷が小さいシステムといえる。このことから、ヒートポンプ式熱交換機器が近年広く利用されている。
一方、冷凍サイクルを利用した一般的な熱交換機器(空調機、冷蔵庫、冷凍機、給湯機など)には、従来からフロン系の冷媒が使用されていた。しかし、フロン系の冷媒は地球温暖化への影響が懸念される等の理由から、環境への負荷が小さい自然冷媒、特に二酸化炭素が最近注目されている。そして、経済的・環境的理由により、例えばエコキュート(登録商標)やカーエアコン用として、上述のヒートポンプと組み合わせた自然冷媒(特に二酸化炭素)ヒートポンプ式熱交換機器への期待が急速に高まっている。
冷凍サイクル中の内部熱交換器とは、膨張弁等の減圧器に流入する高圧側冷媒と圧縮機等に吸引される低圧冷媒との間で熱交換する熱交換器であり、ヒートポンプ式熱交換機器の冷凍能力を向上させるものとして用いられている。冷凍空調機に適用される内部熱交換器は、減圧器に流入する高圧側冷媒の温度およびエンタルピを低下させることによって、蒸発器での吸熱量(すなわちエンタルピ)の上昇幅を増大させることを目的としている。一方、給湯機に適用される内部熱交換器は、圧縮機に吸入される低圧側冷媒の温度を高めることで圧縮機の吐出温度を高め、結果として貯湯温度を高める手段として用いられている。
二酸化炭素を冷媒とするヒートポンプ式熱交換機器の内部熱交換器として、例えば次のようなものが提案されている。特許文献1には、低温低圧側の冷媒を流す中径管が大径管の中に同心状に配設され、高温高圧側の冷媒を流す小径管が大径管と中径管との間に配設されている内部熱交換器が開示されている。特許文献1においては、単純な構造で熱交換能を高めることができるとされている。さらに、高温高圧側の冷媒を内部熱交換器の外周側に配置することで、高温高圧冷媒を外気とも熱交換させることが可能となり、放熱量を増加させることができるとされている。
また、特許文献2には、高温高圧側の冷媒を流す第1伝熱管が低温低圧側の冷媒を流す第2伝熱管内に配置された内部熱交換器が開示されている。特許文献2においては、二酸化炭素を冷媒とするヒートポンプ式熱交換機器でしばしば問題となる圧縮機の潤滑油に起因する伝熱阻害(例えば、内部熱交換器への潤滑油の付着による影響)を少なくして内部熱交換器の熱交換効率を高めることができるとされている。
特開2001−56188号公報 特開2006−300488号公報
前述したように、二酸化炭素を冷媒とするヒートポンプ式熱交換機器においては、圧縮機の潤滑油が冷媒に混入する割合(以下、油濃度)が多くなると、熱交換器の熱伝達率が大きく低下することが知られている(非特許文献1参照)。さらに、内部熱交換器において、低圧側冷媒と高圧側冷媒との熱伝達率の比は、圧縮機の潤滑油が圧縮機外に流出しない(潤滑油が冷媒中に混入しない)油濃度=0%の理想的な状態でも約1:4と、低圧側冷媒の熱伝達率が非常に小さい。このため、特許文献1のように、低圧側冷媒の伝熱管に熱伝達率向上のための対策が施されていない場合は、所期の熱交換を達成するための長さが長くなるという問題がある。
一方、特許文献2においては、低圧側冷媒が二重管の環状部を流れることから、低圧側冷媒の濡れ縁長さは、伝熱面となる内管(高圧側冷媒の流れる伝熱管)の外表面と伝熱に寄与しない外管(低圧側冷媒の流れる伝熱管)の内表面を合わせたものとなる。このため、特許文献2の内部熱交換器は、圧縮機の潤滑油の付着について考慮されているが、伝熱性能の向上に対して圧力損失が増大する比が大きくなり、ヒートポンプ効率であるCOP(能力を入力(消費電力)で除したもの)を低下させてしまうという問題がある。また、前述したように、サイクル内を循環する冷媒中に潤滑油の混入がない理想的な場合でも、低圧側冷媒の熱伝達率は高圧冷媒のそれに比して小さいため、必要とされる熱交換長さが長くなるという問題は解決されていない。
さらに、内部熱交換器では、一般的に熱交換効率を向上させるために冷媒流速を上げる工夫が施されるが、二酸化炭素冷媒の場合、平滑管内で冷媒が蒸発する際にドライアウトと呼ばれる現象が従来のフロン系冷媒の場合と比較して低乾き度でも発生しやすい。このため、冷媒流速を上げた結果、伝熱性能が著しく低下する場合がある(非特許文献2参照)。また、低圧側冷媒がガス化していない二相流であっても、伝熱管が平滑管の場合、高乾き度冷媒はドライアウトしてしまうために蒸発による熱伝達率の向上が見込めない。
高雷,本田知宏:CO2の水平平滑管内蒸発における潤滑油の影響,第42回日本伝熱シンポジウム講演論文集(2005−6),pp. 269-270. 橋本克巳,清谷明弘,佐々木直栄:水平平滑管内CO2蒸発熱伝達率の計測と予測値との比較,第42回日本伝熱シンポジウム講演論文集(2005−6),pp. 141-142.
すなわち、特許文献1、2に記載されているような熱交換器は、いずれも低圧側冷媒の熱伝達率が小さく、ドライアウトに関する対策も特段採られていないため、必要とされる熱交換長さが長くなるという課題を解決することが困難である。
従って、本発明の目的は、二酸化炭素を冷媒としたヒートポンプ式熱交換機器の内部熱交換器において、低圧側冷媒のドライアウトを抑制し、かつ低圧側冷媒の伝熱性能を向上させることにより、コンパクトで高性能な熱交換器を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、冷凍サイクル中の圧縮機の潤滑油が0.5質量%以上混入した状態の二酸化炭素を冷媒として用い、高圧側冷媒と低圧側冷媒との間で熱交換を行う前記冷凍サイクルの内部熱交換器であって、
前記低圧側冷媒が流れる低圧冷媒管は内面溝付管であり、
前記内面溝付管のフィン高さHFと前記内面溝付管の内径IDとの比がHF/ID≧0.025であり、
前記内面溝付管の円周方向のフィンピッチPFと前記内面溝付管の内径IDとの比がPF/ID≦0.08であり、
前記内面溝付管のフィンが1周するのに要する管の長さLと前記内面溝付管の内径IDとの比がL/ID≦12であることを特徴とする内部熱交換器を提供する。
本発明によれば、二酸化炭素を冷媒としたヒートポンプ式熱交換機器(例えば、給湯機や空調機など)の内部熱交換器において、低圧側冷媒のドライアウトを抑制し、かつ低圧側冷媒の伝熱性能を向上させることにより、コンパクトで高性能な熱交換器を提供することができる。なお、本発明における伝熱性能とは、後述の式で算出される管内熱伝達率と定義する。
上述の本発明において、以下のような改良や変更を加えることは好ましい。
(1)前記内部熱交換器は二重管式であり、前記低圧冷媒管が二重管の内側の管で、前記高圧側冷媒が流れる高圧冷媒管が二重管の外側の管である。
(2)前記高圧側冷媒が流れる高圧冷媒管と前記低圧冷媒管とが互いに管の外側でロウ付け接合されている。
(3)前記高圧冷媒管の相当直径または内径が、前記低圧冷媒管の内径に対して0.45〜0.95である。
以下に、図を参照しながら、本発明に係る実施の形態を説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施の形態に限定されることはなく、適宜組み合わせてもよい。
(二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯機の構成)
はじめに、二酸化炭素を冷媒としたヒートポンプ式熱交換機器として、給湯機を例にとって説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯機の概略構成を示したものである。二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯機10は、圧縮機11、水熱交換器12、減圧器13、吸熱器(蒸発器)14および内部熱交換器15を備え、これらを配管16で接続することにより冷凍サイクルを構成し、二酸化炭素冷媒が封入されている。圧縮機の潤滑油としては、例えばポリアルキレングリコール油(PAG油)が用いられている。
(二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯機の動作)
次に、二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯機10の動作について説明する。圧縮機11で圧縮(本実施の形態では、例えば、約10 MPa)された二酸化炭素冷媒は、臨界圧力(約7.4 MPa)を超える高温高圧の状態(超臨界状態)で水熱交換器(ガスクーラとも言う)12へ導入され、水などと熱交換(冷媒から放熱)する。ついで、内部熱交換器15にて低圧冷媒に放熱後、減圧器13で減圧されて(本実施の形態では、例えば、約3.5 MPa)、低圧の気液二相状態となり、吸熱器14へ導入される。
気液二相状態となった二酸化炭素冷媒は、吸熱器14において、空気(大気)から吸熱してガス状態(気相の単相状態)または、乾き度の高い液/ガスの二相状態となり、内部熱交換器15にて過熱度の高いガス状態になり、再び圧縮機11に吸入される。このようなサイクルを繰り返すことにより、水熱交換器12における冷媒からの放熱による加熱作用、吸熱器14における冷媒の吸熱による冷却作用が行われる。
(内部熱交換器の構成)
次に、本発明の実施形態に係る内部熱交換器の構成について説明する。図2は、本発明の第1の実施形態に係る内部熱交換器の1例を表す断面模式図である。第1の実施形態に係る内部熱交換器20は二重管式であり、低圧側冷媒が流れる低圧冷媒管21が二重管の内側の管で、高圧側冷媒が流れる高圧冷媒管22が二重管の外側の管となっている。なお、内部熱交換器の端末分岐部の構造は、図示に限定されるものではない。図3は、本発明の第2の実施形態に係る内部熱交換器の1例を表す断面模式図である。第2の実施形態に係る内部熱交換器30は、低圧側冷媒が流れる低圧冷媒管21と高圧側冷媒が流れる高圧冷媒管22とが互いに管の外側でロウ付け接合されている。なお、低圧冷媒管21と高圧冷媒管22の位置関係は、図示に限定されるものではなく、低圧冷媒管21の周りに高圧冷媒管22を螺旋状に巻き付いたものでもよい。
(低圧冷媒管および高圧冷媒管の構成)
図4は、本発明の内部熱交換器に適用される低圧冷媒管の断面模式図である。図4に示したように、低圧冷媒管21は内面溝付管であり、「外径」をOD、「内径」をID、「底肉厚」をTW、「フィン高さ」をHF、「フィンピッチ」をPF、「ねじれ角」をβと表記する。なお、「フィンピッチ」とは、内面溝付管の横断面における円周方向でのフィンの間隔(ピッチ)をいい、「ねじれ角」とは、内面溝付管における管中心軸方向と溝方向のなす角をいう。また、「底肉厚」とは、溝底部(内面溝付管において最も肉厚の薄い部分)での管の肉厚を意味し、内径IDは「ID=OD−TW×2」となる。
冷凍サイクル中の圧縮機の潤滑油が0.5質量%以上混入した状態の二酸化炭素を冷媒として用いる場合、従来よりも高い伝熱性能の内部熱交換器を得るためには、フィン高さHFと内径IDとの比が「HF/ID≧0.025」であり、フィンピッチPFと内径IDとの比が「PF/ID≦0.080」であり、1つのフィンが内面溝付管の内周を1周するのに要する管の長さLと内径IDとの比が「L/ID≦12」であることが望ましい。より望ましくは、「HF/ID≧0.028」、「PF/ID≦0.075」、「L/ID≦12」である。更に望ましくは、「HF/ID≧0.030」、「PF/ID≦0.068」、「L/ID≦10」である。詳細は後述する。
また、内部熱交換器全体として高い熱交換能力を得るためには、高圧冷媒管の相当直径IDeまたは高圧冷媒管の内径ID’と低圧冷媒管の内径IDとの比が、「0.45≦IDe/ID≦0.95」または「0.45≦ID’/ID≦0.95」であることが望ましい。より望ましくは、「0.55≦IDe/ID≦0.90」または「0.55≦ID’/ID≦0.90」である。詳細は後述する。
(測定評価方法)
図5は、伝熱性能を評価するための二重管式熱交換器の構成模式図である。図5に示すように、低圧冷媒管21を内管とし、該内管の外側に冷媒と熱交換を行うための水を環状(ジャケット状)に流す水管23を有した二重管式熱交換器50を構成した。
管内熱伝達率αは、以下のようにして求めた。二重管式熱交換器50の熱交換部における、冷媒入口温度Tr2[単位:K]、冷媒出口温度Tr1[単位:K]、水管23の入口温度Tw1[単位:K]、水管23の出口温度Tw2[単位:K]、および水の質量流量G[単位:kg/s]を計測する。水の入口/出口温度から算出される代表温度(平均温度T[単位:K])より、熱交換部の水の定圧比熱Cpが求まり、次式(1),(2)の関係から熱流速q[単位:kW/m2]および対数平均温度差ΔT[単位:K]が求まる。
Figure 2010096372
ここで、Aは熱交換面積(前記二重管式熱交換器50において、水と接する冷媒用伝熱管の表面積)[単位:m2]である。
Figure 2010096372
ここで、
Figure 2010096372
Figure 2010096372
である。
また、熱流速qを対数平均温度差ΔTで除すことにより、二重管式熱交換器の熱通過率K[単位:kW/(m2K)]を次式(5)から算出することができる。
Figure 2010096372
一方、水管23の入口/出口温度から算出される代表温度(平均温度T=(Tw1+Tw2)/2)から、その温度における水の各物性値(密度、比熱、粘度、熱伝導率λ)が定まり、プラントル数Prが求まる。また、水の物性値と質量流量によりレイノルズ数Reが求まり、次式(6)の関係により、水の熱伝達率α[単位:kW/(m2K)]が算出できる。
Figure 2010096372
ここで、
IDは水管23の内径[単位:m]
IDは水の環状流通部分の相当直径(流路面積の4倍を濡れ縁長さで除したもの)[単位:m]
ODは低圧冷媒管21の外径[単位:m]
である。
以上のことから、管内熱伝達率α[単位:kW/(m2K)]は、熱通過率Kと水の熱伝達率αおよび低圧冷媒管21の外径OD、低圧冷媒管21の内径ID[単位:m]を用いて、次式(7)のように算出できる。
Figure 2010096372
(評価した低圧冷媒管)
表1に、評価した低圧冷媒管の仕様を示す。試料No.1〜7は内面溝付管であり、従来の転造加工により作製した。試料No.8は平滑管である。
Figure 2010096372
(評価結果)
はじめに、低圧側冷媒が単相状態(例えば、完全に気化した状態)を模擬するために低圧伝熱管内に水を流し、低圧側冷媒が単相状態の場合の管内熱伝達率を測定した。図6は、試料No.1〜3の測定結果であり、平滑管性能比とHF/IDとの関係を表す。なお、「平滑管性能比」とは、各試料の管内熱伝達率を平滑管(試料No.8)のそれで除したものと定義する(以下同じ)。また、「HF/ID」とはフィン高さと内径の比である。図7は、試料No.3〜5の測定結果であり、平滑管性能比とPF/IDとの関係を表す。「PF/ID」とはフィンピッチと内径の比であり、「π/N」で与えられる。図8は、試料No.4,6,7の測定結果であり、平滑管性能比とL/IDとの関係を表す。「L/ID」とは、1つのフィンが内面溝付管の内周を1周するのに要する管の長さと内径の比であり、「π/tanβ」で与えられる。
図6〜8に示すように、低圧側冷媒が単相状態の場合、低圧冷媒管の管内熱伝達率を向上させるためには、フィン高さが高いほど好ましく、フィン数が多いほど好ましく、フィンのねじれ角が大きいほど好ましいことが明らかになった。具体的には、「HF/ID≧0.015」、「PF/ID≦0.08」、「L/ID≦12」であることが望ましい。
図9は、試料No.8(平滑管)において、油濃度0.5%、乾き度0.6〜0.9の二酸化炭素冷媒を用いた場合の管内熱伝達率と冷媒流速との関係を示すグラフである。前述したように、従来、内部熱交換器では、伝熱性能を上げるために冷媒の流速を上げる方が良いとされてきた。しかしながら、図9から判るように、二酸化炭素冷媒においては、乾き度0.6〜0.9でも冷媒流速を上げていくと、管内熱伝達率は約500 kg/(m2s)の冷媒流速で極大を示した後に低下している。これは、ドライアウトが発生したことを強く示唆するものである。このことから、管内熱伝達率の向上のためには、ドライアウトを抑制することが大変重要であると言える。なお、「乾き度」とは冷媒中における気相分の重量割合を示す。例えば、「乾き度0.6」は気相分が60%で液相分が40%を意味する。また、二酸化炭素を冷媒とした家庭用ヒートポンプ式給湯機では、定格仕様における冷媒循環量が65 kg/h程度であるので、試料No.8の平滑管を用いたと仮定すると、管内の冷媒流速は約600 kg/(m2s)となる。
図10は、試料No.2(内面溝付管)および試料No.8(平滑管)の低圧冷媒管について、油濃度を0.5%、冷媒流速を600 kg/(m2s)とし、冷媒の状態を乾き度0.8の二相流から過熱度8Kの単相流まで変化させた場合(「二相→単相」と表記)の伝熱性能の測定結果である。図中には、比較として冷媒が単相流の場合(図6参照)の伝熱性能を併せて示した。図10に示したように、試料No.2(内面溝付管)は、「二相→単相」と「単相」のいずれの場合も伝熱性能が試料No.8(平滑管)より高く、かつ「二相→単相」の場合は「単相」の場合よりも伝熱性能がより大きく向上していることが判る。これは、本発明に係る内部熱交換器の効果によりドライアウトが抑制されたことで、冷媒が二相状態から単相状態に変化する(蒸発する)ことによる熱伝達率の向上を引き出したものと考えられる。
図11は、試料No.1〜3の低圧冷媒管において、油濃度0.1〜3%、乾き度0.6〜0.9の二酸化炭素冷媒を用いた場合の平滑管性能比とHF/IDとの関係を示すグラフである。図11に示したように、低圧冷媒管の伝熱性能は図6の結果と同様にフィン高さが高いほど高くなるが、冷媒中の油濃度の増加とともに伝熱性能が急激に低下していく様子が判る。二酸化炭素冷媒を使用したヒートポンプ式熱交換機器では、冷媒に混入する油濃度が一般的に0.5〜3質量%程度と言われていることから、平滑管性能比で1.4倍以上の性能向上を達成するためにはHF/IDが0.025以上であることが望ましい。より望ましくはHF/ID≧0.030であり、更に望ましくはHF/ID≧0.035である。
図12は、試料No.3〜5の低圧冷媒管において、油濃度0.1〜3%、乾き度0.6〜0.9の二酸化炭素冷媒を用いた場合の規格化熱伝達率とPF/IDとの関係を示すグラフである。なお、規格化熱伝達率は、試料No.3の低圧冷媒管を用いた場合の熱伝達率を1として規格化したものである。図12から判るように、油濃度が低い(例えば0.1質量%)ときは、フィンピッチPFが小さい(フィン数が多い)方が高性能となる傾向があり、油濃度が高い(例えば3質量%)ときは、フィン数が少ない方が高性能となる傾向がある。図11に示したように油濃度3質量%のときの平滑管性能比が最も小さいことから、油濃度が3質量%の場合を想定すると、図12において性能低下率が10%以内となる(すなわち規格化熱伝達率が0.9以上となる)0.05≦PF/ID≦0.08が望ましい。より望ましくは0.06≦PF/ID≦0.08である。
(低圧冷媒管の内径と高圧冷媒管の内径との関係)
次に、内部熱交換器における低圧側冷媒が流れる低圧冷媒管の内径と高圧側冷媒が流れる高圧冷媒管の内径との関係について検討した。低圧冷媒管としては前記試料No.6の内面溝付管を用い、高圧冷媒管としては平滑管を用いた。図13は、本発明の第2の実施形態に係る内部熱交換器において、低圧冷媒管の内径に対する高圧冷媒管の内径の割合と規格化熱交換量との関係を示すグラフである。なお、「規格化熱交換量」とは、熱交換量の最大値を1として規格化したものである。
図13に示すように、内部熱交換器における熱交換量は、低圧冷媒管の内径に対する高圧冷媒管の内径の割合による影響を受けることが明らかになった。図中の結果から、低圧冷媒管の内径IDに対する高圧冷媒管の内径ID’の割合(ID’/ID)の望ましい範囲は、最大熱交換量の90%以上を適正範囲とすると、0.45≦ID’/ID≦0.95である。より望ましくは、0.55≦ID’/ID≦0.90である。
以上で説明したように、本発明に係る二酸化炭素を冷媒としたヒートポンプ式熱交換機器の内部熱交換器は、従来の内部熱交換器に比して高い伝熱特性を有することから、従来よりもコンパクトで高性能な熱交換器を提供することができる。
本発明の一実施の形態における二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯機の概略構成を示したものである。 本発明の第1の実施形態に係る内部熱交換器の1例を表す断面模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る内部熱交換器の1例を表す断面模式図である。 本発明の内部熱交換器に適用される低圧冷媒管の断面模式図である。 伝熱性能を評価するための二重管式熱交換器の構成模式図である。 試料No.1〜3の測定結果であり、平滑管性能比とHF/IDとの関係を表す。 試料No.3〜5の測定結果であり、平滑管性能比とPF/IDとの関係を表す。 試料No.4,6,7の測定結果であり、平滑管性能比とL/IDとの関係を表す。 試料No.8において、油濃度0.1%、乾き度0.6〜0.9の二酸化炭素冷媒を用いた場合の管内熱伝達率と冷媒流速との関係を示すグラフである。 試料No.2および試料No.8の低圧冷媒管について、油濃度を0.5%、冷媒流速を600 kg/(m2s)とし、冷媒の状態を乾き度0.8の二相流から過熱度8Kの単相流まで変化させた場合の伝熱性能の測定結果である。 試料No.1〜3の低圧冷媒管において、油濃度0.1〜3%、乾き度0.6〜0.9の二酸化炭素冷媒を用いた場合の平滑管性能比とHF/IDとの関係を示すグラフである。 試料No.3〜5の低圧冷媒管において、油濃度0.1〜3%、乾き度0.6〜0.9の二酸化炭素冷媒を用いた場合の規格化熱伝達率とPF/IDとの関係を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る内部熱交換器において、低圧冷媒管の内径に対する高圧冷媒管の内径の割合と規格化熱交換量との関係を示すグラフである。
符号の説明
10…二酸化炭素冷媒ヒートポンプ式給湯機、11…圧縮機、12…水熱交換器、
13…減圧器、14…吸熱器(蒸発器)、15…内部熱交換器、
20,30…内部熱交換器、21…低圧冷媒管、22…高圧冷媒管、
23…水管、50…二重管式熱交換器。

Claims (5)

  1. 冷凍サイクル中の圧縮機の潤滑油が0.5質量%以上混入した状態の二酸化炭素を冷媒として用い、高圧側冷媒と低圧側冷媒との間で熱交換を行う前記冷凍サイクルの内部熱交換器であって、
    前記低圧側冷媒が流れる低圧冷媒管は内面溝付管であり、
    前記内面溝付管のフィン高さHFと前記内面溝付管の内径IDとの比がHF/ID≧0.025であり、
    前記内面溝付管の断面円周方向のフィンピッチPFと前記内面溝付管の内径IDとの比がPF/ID≦0.08であり、
    前記内面溝付管のフィンが円周を1周するのに要する管の長さLと前記内面溝付管の内径IDとの比がL/ID≦12であることを特徴とする内部熱交換器。
  2. 請求項1に記載の内部熱交換器において、
    前記内部熱交換器は二重管式であり、前記低圧冷媒管が二重管の内側の管で、前記高圧側冷媒が流れる高圧冷媒管が二重管の外側の管であることを特徴とする内部熱交換器。
  3. 請求項1に記載の内部熱交換器において、
    前記高圧側冷媒が流れる高圧冷媒管と前記低圧冷媒管とが互いに管の外側でロウ付け接合されていることを特徴とする内部熱交換器。
  4. 請求項2に記載の内部熱交換器において、
    前記高圧冷媒管の相当直径IDeと前記低圧冷媒管の内径IDとの比が0.45≦IDe/ID≦0.95であることを特徴とする内部熱交換器。
  5. 請求項3に記載の内部熱交換器において、
    前記高圧冷媒管の内径ID’と前記低圧冷媒管の内径IDとの比が0.45≦ID’/ID≦0.95であることを特徴とする内部熱交換器。
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