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JP2010094656A - 微粒子が固着してなる吸水剤 - Google Patents

微粒子が固着してなる吸水剤 Download PDF

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Taku Iwamura
卓 岩村
Yoshiro Mitsugami
義朗 光上
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Abstract

【課題】吸収倍率、吸収速度、通液性、消臭性に優れる吸水剤を提供することにある。さらには性能を長時間維持できる吸水剤を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、酸基含有吸水性樹脂粒子の表面に、有機微粒子及び/又は無機微粒子が固着してなる吸水剤であって、該吸水剤の表面の酸基中和率は該吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率未満であることを特徴とする。好ましくは酸基含有ラジカル重合性化合物を含む処理液で表面処理されたものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、微粒子が固着してなる吸水剤に関する。より詳細には、使い捨てオムツや生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料に好適に用いられる吸水剤と吸収性物品に関する。
従来、生理綿、紙おむつ、あるいはその他の体液を吸収する衛生材料の一構成材料として吸水性樹脂が用いられている。このような吸水性樹脂としては、例えば、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物、これらの架橋体やポリアクリル酸部分中和物架橋体等がある。これらは、いずれも内部架橋構造を有し、水に不溶である。
このような吸水性樹脂に望まれる特性として、高吸収倍率、優れた吸収速度、消臭性、抗菌性等が挙げられる。
上述した特性を上げるために吸水性樹脂は種々の処理が施されている。
例えば、吸収特性や消臭性に優れた吸水剤組成物として以下の文献が挙げられる。
特許文献1(特開2004−156010号、米国特許公開第20040048955号)では半発酵茶の抽出物および/または発酵茶の抽出物と、表面部分および/またはその近傍が架橋剤により表面処理された吸水性樹脂とを含む吸水剤組成物が開示されている。
特許文献2(特表2004-530777号、WO2003/002623号)ではpH≦5.7の酸性の高膨潤性ヒドロゲル、具体的には中和度が有利に≦60モル%のポリアクリル酸をベースとするヒドロゲルが開示されている。
また、吸収速度等の吸収特性に優れるものとして以下の文献が挙げられる。
特許文献3(特開平11−333292号)では、吸水性樹脂粒子の表面に、前記吸水性樹脂粒子の吸収倍率よりも低い吸収倍率を有する吸水性微粒子が固着してなる吸水剤が開示されている。
特許文献4(特表2008-526502号)では、高吸水速度を発現する吸水性樹脂微粉の造粒物の開示があり、造粒剤として多価アルコールとポリカルボン酸と水が使用されている。
さらに、ラジカル重合性化合物を含む処理液を添加して表面処理する技術として特許文献5(米国特許第7201941号)特許文献6(WO2006/062253号)等が挙げられる。
米国特許公開第20040048955号明細書 特表2004-530777号公報 特開平11−333292号公報 特表2008-526502号公報 米国特許第7201941号明細書 国際公開第2006/062253号パンフレット
吸収倍率、吸収速度、通液性、消臭性に優れる吸水剤を提供することにある。さらには吸水し膨潤しても固着した微粒子が脱離せず性能が長時間維持できる吸水剤を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を行った。その結果、以下の吸水剤、吸収性物品を見出すことができた。
(1)酸基含有吸水性樹脂粒子の表面に、有機微粒子及び/又は無機微粒子が固着してなる吸水剤であって、該吸水剤の表面の酸基中和率は該吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率未満であることを特徴とする吸水剤。
(2)前記吸水剤は酸基含有ラジカル重合性化合物を含む処理液で表面処理されたものであることを特徴とする(1)に記載の吸水剤。
(3)前記吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率が40モル%を超えて90モル%以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の吸水剤。
(4)前記処理液に含まれる酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率が0〜30モル%であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の吸水剤。
(5)前記吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は、150μm以上850μm以下であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか一つに記載の吸水剤。
(6)前記微粒子の質量平均粒子径は150μm未満であることを特徴とする(1)〜(5)の何れか一つに記載の吸水剤。
(7)(1)〜(6)までの何れか一つに記載の吸水剤を含む吸収性物品。
吸水性樹脂粒子の表面に微粒子が強固に固着することで、吸収倍率、吸収速度、通液性、消臭性に優れる本発明の吸水剤は吸水し膨潤しても固着した微粒子が脱離せず性能が長時間維持できる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本発明においては、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱い、「重量ppm」は「質量ppm」と同義語として扱う。
本発明は、酸基含有吸水性樹脂粒子の表面に、有機微粒子及び/又は無機微粒子が固着してなる吸水剤であって、該吸水剤の表面の酸基中和率は該吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率未満であることを特徴とする吸水剤である。
上記吸水剤の製造方法は、米国特許第7201941号明細書、国際公開第2006/062253号パンフレットに開示されている原料や製造方法を適宜採用すれば良い。好ましくは、吸水性樹脂の表面処理方法として、a)酸基含有吸水性樹脂粒子100重量部(固形分100重量%に換算したもの)と微粒子の混合品に対し、酸基含有ラジカル重合性化合物0.1〜20重量部と、水5〜20重量部とを混合する工程、およびb)上記酸基含有ラジカル重合性化合物を重合する工程を含み、上記酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率が0〜30モル%であり且つ吸水剤の表面は上記吸水性樹脂粒子内部の中和率より低いものである。
上記好ましい形態において、上記酸基含有吸水性樹脂粒子に有機微粒子及び/又は無機微粒子をあらかじめ混合すること、及び/又は有機微粒子及び/又は無機微粒子を上記酸基含有ラジカル重合性化合物と水を含む処理液に分散させておくことで、最終的に本発明の微粒子が固着した吸水剤が得られる。
以下、本発明にかかる吸水剤の特徴部分について説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得る。
(a)吸水性樹脂(粒子)
本発明で使用できる吸水性樹脂は、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体である。本発明において「水膨潤性」とは、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中において自由膨潤倍率が、必須に2g/g以上、好ましくは5〜100g/g、より好ましくは10〜60g/gの生理食塩水を吸収するものをいう。また、「水不溶性」とは、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が好ましくは0〜50重量%、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下のものをいう。なお、自由膨潤倍率および水可溶性成分の数値は、後記する実施例で規定する測定方法によるものとする。
本明細書において、「酸基含有ラジカル重合性化合物を重合する」とは、酸基含有ラジカル重合性化合物を吸水性樹脂の表面および/またはその近傍で重合することを意味し、ここで「重合」とは、酸基含有ラジカル重合性化合物が重合した結果、吸水性樹脂に対して行なう全ての物理的または化学的作用をいい、好ましくは吸水性樹脂の表面架橋、孔の形成、親水化、疎水化などの「表面処理」を包含し、より好ましくは吸水性樹脂の表面架橋である。「表面処理された吸水性樹脂」を「吸水剤」とも称する。
本発明において使用できる吸水性樹脂としては、好ましくは酸基、特に好ましくはカルボキシル基を有しておればよく、エチレン性不飽和単量体を必須に含む単量体成分を用いて、従来公知の方法などを用いて重合により得られるものであれば、特に限定されない。また酸基含有吸水性樹脂として、エチレン性不飽和単量体の重合以外にも、水溶性ポリマーの架橋体、例えば、CMC架橋体やポリアスパラギン酸架橋体なども使用できる。
エチレン性不飽和単量体としては、特に限定されず、好ましくは末端に不飽和二重結合を有する単量体、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のアニオン性単量体やその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等のノニオン性親水基含有単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化物;等を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化物、(メタ)アクリルアミドであり、特に好ましくは、アクリル酸および/またはその塩である。アクリル酸(塩)の割合は全単量体の50〜100モル%が好ましく、さらに好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。
単量体としてアクリル酸塩を用いる場合には、吸水性樹脂の吸水性能の観点からアクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩から選ばれるアクリル酸の1価塩が好ましい。より好ましくはアクリル酸アルカリ金属塩であり、特に好ましくは、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれるアクリル酸塩である。
吸水性樹脂を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記単量体以外の他の単量体成分を用いることができる。例えば、炭素数8〜30の芳香族エチレン性不飽和単量体、炭素数2〜20の脂肪族エチレン性不飽和単量体、炭素数5〜15の脂環式エチレン性不飽和単量体、アルキル基の炭素数4〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどの疎水性単量体を例示することができる。これら疎水性単量体の割合は、一般に、上記エチレン性不飽和単量体100重量部に対し、0〜20重量部の範囲である。疎水性単量体が20重量部を超えると、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下する場合がある。
本発明で使用する吸水性樹脂は、内部架橋の形成によって不溶性となる。このような内部架橋は、架橋剤を使用しない自己架橋型でもよいが、一分子内に2個以上の重合性不飽和基及び/又は2個以上の反応性官能基を有する内部架橋剤を使用して形成することができる。
このような内部架橋剤としては、特に限定されず、好ましくは、例えば、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸多価金属塩、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの内部架橋剤は2種以上を併用してもよい。これらのうち、単量体、特にエチレン性不飽和単量体と重合性を有する重合性架橋剤が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく使用される。
内部架橋剤の使用量は、吸水性樹脂を製造する際に用いる単量体成分の全量に対して、好ましくは0.0001〜1モル%、より好ましくは0.001〜0.5モル%、さらに好ましくは0.005〜0.2モル%である。0.0001モル%を下回ると、内部架橋が樹脂中に導入されず、一方、1モル%を超えると、吸水性樹脂のゲル強度が高くなりすぎ、吸水倍率が低下する場合がある。上記内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
吸水性樹脂を得るには、上記単量体および内部架橋剤を含む単量体成分を水溶液中で重合すればよい。この際、使用できる重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド;過酸化水素;2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物、等の水溶性ラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等の光重合開始剤がある。また、例えば、上記水溶性ラジカル重合開始剤に、亜硫酸塩やL−アスコルビン酸、第2鉄塩等の還元剤を組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、単量体成分の全量に対して、好ましくは0.001〜2モル%であり、より好ましくは0.01〜0.5モル%である。レドックス系開始剤を使用する場合のレドックス系開始剤の使用量もまた、特に制限されないが、単量体成分の全量に対して、好ましくは0.0001〜2モル%であり、より好ましくは0.001〜1.5モル%である。
上記単量体水溶液中の単量体の濃度に特に制限はないが、好ましくは15〜90重量%、より好ましくは35〜80重量%である。15重量%を下回ると、得られたヒドロゲルの水分量が多いため、乾燥のための熱量や時間を必要とし、不利である。
重合方法としては特に限定されず、周知の方法、例えば、水溶液重合、逆相懸濁重合、沈殿重合、塊状重合等を採用することができる。これらの方法の中でも、重合反応の制御の容易さや、得られる吸水性樹脂の性能面から、単量体を水溶液に溶解して重合させる水溶液重合や、逆相懸濁重合が好ましい。
上記の重合を開始させる際には、前述の重合開始剤を使用して開始させる。また、前述重合開始剤の他にも紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独で用いても、あるいは重合開始剤と併用しても良い。重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。重合開始時の温度が上記の範囲を外れると、得られる吸水性樹脂の残存単量体が増加したり、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがあるので好ましくない。また、重合時間は、特に制限されないが、好ましくは、30秒〜60分間である。
なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させた状態で重合を行う重合法であり、例えば、米国特許第4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などの米国特許に記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許第4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許第0811636号、同0955086号,同0922717号などの欧州特許に記載されている。これら重合法に例示の単量体や開始剤なども本発明では適用できる。
なお、重合を行なう場合には、アクリル酸等の部分中和物を重合したり、アクリル酸等の酸基含有単量体を重合した後に水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム等のアルカリ化合物により重合物を中和することもできる。したがって、本発明で使用される吸水性樹脂は、酸基を含有しかつ所定の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)を有するものであることが好ましい。この際、得られる吸水性樹脂の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)は、好ましくは25〜100モル%の範囲であり、より好ましくは40〜100モル%の範囲、さらにより好ましくは40〜90モル%の範囲、さらに好ましくは50〜80モル%の範囲、最も好ましくは50〜70モル%の範囲である。
重合後、通常は含水ゲル状架橋重合体が得られる。本発明では、この含水ゲル状架橋重合体をそのまま吸水性樹脂として使用することもできるが、好ましくは乾燥して用いる。前記乾燥は、例えば、熱風乾燥機などの乾燥機を用い、好ましくは100〜220℃、より好ましくは120〜200℃で乾燥させればよい。なお、重合によって得られた含水ゲル状架橋重合体が塊状である場合には、このような含水ゲル状架橋重合体を粒子状にする目的で、上述した乾燥工程の前に、当該重合体を粉砕するゲル細粒化工程を行ってもよい。粒子状の含水ゲルとすることにより、ゲルの表面積が大きくなるため、上述した乾燥工程が円滑に進行しうる。粉砕は、例えばローラー型カッターや、ギロチンカッター、スライサー、ロールカッター、シュレッダー、ハサミなどの各種の切断手段を単独でまたは適宜組み合わせて行うことができ、特に限定されることはない。
本発明で用いられる吸水性樹脂は、粉末状であることが好ましい。より好ましくは150〜850μm(ふるい分級で規定)の範囲の粒径の粒子を90〜100重量%、特に好ましくは95〜100重量%含む粉末状吸水性樹脂である。850μmよりも大きい吸水性樹脂は、例えばこのような吸水性樹脂を用いて表面処理したものをおむつ等に用いると、肌触りが悪く、おむつのトップシートを破ったりする場合もある。一方、150μmよりも小さい粒子の量が10重量%を超えると、微粉が飛散したり、使用時に目詰まりを生じ、表面処理された吸水性樹脂の吸水性能を低下させる場合もある。重量平均粒径は、10〜1,000μm、好ましくは150〜850μm、好ましくは200〜600μm、さらに好ましくは300〜500μmの範囲である。重量平均粒径が10μmを下回ると、安全衛生上好ましくない場合がある。一方、1,000μmを超えると、オムツなどに用いることができない場合がある。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.23〜0.45であり、より好ましくは0.25〜0.40である。なお、上記粒径の数値としては、以下の粒度分布[重量平均粒径や粒度分布の対数標準偏差(σζ)の数値]の測定方法で測定された値を採用するものとする。
[粒度分布の測定方法]
吸水性樹脂10gを直径75mm、目開き850μm、600μm、300μm、150μmのテストふるい(IIDA製作所製)で篩い分けし、それぞれの重量を測定し、各粒度の重量%を求める。篩い分けは、IIDA製作所製のSIEVE SHAKER ES−65型を用いて5分間振とうすることにより行う。なお、吸水性樹脂は、予め60±5℃で減圧(1mmHg(133.3Pa)未満)下で24時間乾燥してから測定する。また、重量平均粒径については、残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、このプロットからR=50重量%に対応する粒子径を重量平均粒径(D50)として読み取る。
また、X1をR=84.1重量%、X2をR=15.9重量%のときのそれぞれの粒径とすると、対数標準偏差(σζ)は下記式で表される。すなわち、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ=0.5×ln(X2/X1)・・・数式
上記に加えてあるいは上記に代えて、本発明で用いられる吸水性樹脂は、上記したような中和率を有することが好ましい。この際、吸水性樹脂の中和率は、予め中和率を調整した単量体を重合することによって調整してもあるいは、例えば、酸重合後中和法(例えば、米国特許6,187,872号)などによって、一旦低位の中和率を有する重合体を製造した後に当該重合体の中和率を所望の中和率になるように調整してもよい。
本発明の吸水性樹脂の表面処理方法で使用する吸水性樹脂の、表面処理前における含水率は、吸水性樹脂が流動性を有する限り、特に制限されない。好ましくは180℃で3時間乾燥した後の含水率が、0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜5重量%の範囲である。
本発明で用いる吸水性樹脂は、上記方法で製造されたものに限定されず、他の方法で調製されたものであってもよい。また、上記方法で得られた吸水性樹脂は、通常は表面架橋されていない吸水性樹脂であるが、本発明の吸水性樹脂の表面処理方法で使用する吸水性樹脂としては、予め多価アルコール、多価エポキシ化合物、アルキレンカーボネート、オキサゾリドン化合物等を用いて表面架橋された吸水性樹脂であってもよい。
(b)酸基含有ラジカル重合性化合物
本発明では、酸基を含有しているラジカル重合性化合物を必須に用いる。ラジカル重合性化合物の中でも酸基を含有する化合物は、吸水特性の点で非常に優れる。該酸基としては、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基などが挙げられる。
本発明で吸水性樹脂粒子と混合する酸基含有ラジカル重合性化合物としては、好ましくは前述したエチレン性不飽和単量体のうち、酸基を含有する単量体である。具体的には、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸および/またはその塩が挙げられる。中でも、吸水特性の点で、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸がさらにより好ましく、アクリル酸が特に好ましい。アクリル酸の割合は全単量体の好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。酸基含有ラジカル重合性化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物で使用されてもよい。
本発明において、酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率は0〜60モル%である。中和率がかような範囲にあると、後の工程b)における活性エネルギー線照射及び/または加熱による重合(表面処理)の反応速度が向上し、吸水特性が優れた吸水性樹脂を低温、短時間で得ることができる。従来は、中和率が、本発明の範囲よりも高いものであった。これは、吸水倍率の低下や表面処理後に残存するラジカル重合性化合物による臭気が懸念されたためである。しかしながら、従来の懸念に反して敢えて従来用いられていたラジカル重合性化合物の中和率よりも低い中和率である酸基含有ラジカル重合性化合物を用いると、意外にも表面処理が速やかに行われ、しかも得られる吸水性樹脂の各物性は、維持されることがわかった。
酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率は、好ましくは0〜50モル%であり、より好ましくは0〜40モル%であり、さらに好ましくは0〜30モル%であり、特に好ましくは0〜15モル%であり、最も特に好ましくは0〜10モル%である。上記範囲であると、従来の表面時間が数時間単位であったのに対して、表面処理時間が数十分程度にまで、好ましくは数分程度にまで大幅に短縮され、例えば商業スケールの1000kg/hrの大規模生産時(好ましくは連続生産時)には大きな経済効果をもたらす。
本発明では、酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率がベースポリマーとしての吸水性樹脂粒子の中和率より低い。ここで、酸基含有ラジカル重合性化合物と吸水性樹脂との中和率の関係は、上記関係を満たすかぎり特に制限されない。具体的には、ベースポリマーとしての吸水性樹脂の中和率に対して、混合する酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率が0〜80%の数値割合であることが好ましく、0〜60%がより好ましく、0〜40%がさらに好ましく、0〜20%が特に好ましく、0〜10%が最も特に好ましい。なお、本明細書において、「中和率」とは、酸基含有ラジカル重合性化合物の全酸基に対する中和された酸基の比率を指す。「酸基含有ラジカル重合性化合物の全酸基」および「中和された酸基」は、酸基含有ラジカル重合性化合物が2種以上である場合、それぞれ各酸基含有ラジカル重合性化合物中の酸基および中和された酸基の合計を指す。例えば、酸基含有ラジカル重合性化合物として、アクリル酸とアクリル酸ナトリウムとを1:1のモル比で用いた場合には、酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率は50モル%である。
酸基含有ラジカル重合性化合物が中和されている場合(塩の形態の場合)、当該化合物はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩から選ばれる1価塩であることが好ましい。より好ましくはアルカリ金属塩であり、特に好ましくは、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩から選ばれる塩である。
使用する酸基含有ラジカル重合性化合物の量は、酸基含有吸水性樹脂100重量部に対し0.1〜20重量部の範囲である。酸基含有ラジカル重合性化合物の量が0.1重量部よりも少ないと、吸水性樹脂の加圧下吸収性能が十分に向上しない場合がある。一方、酸基含有ラジカル重合性化合物の量が20重量部よりも多いと、得られる表面処理された吸水性樹脂の吸収倍率が低下する場合がある。また、使用する酸基含有ラジカル重合性化合物の量は、吸水性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5〜15重量部の範囲、より好ましくは1〜10重量部の範囲、さらに好ましくは3〜8重量部の範囲である。酸基含有ラジカル重合性化合物の量が、かような範囲にあると、表面処理時間を短縮できるという本発明の効果が顕著に現れる。
本発明において、酸基含有ラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。酸基含有ラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物としては、好ましくは前述したエチレン性不飽和単量体、および架橋性不飽和単量体が挙げられる。より好ましくは、架橋性不飽和単量体を工程a)でさらに混合することが好ましい。
エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、等のノニオン性親水基含有単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、等のアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化物;等が挙げられる。このような場合のエチレン性不飽和単量体の量は、所望の性質によって適宜選択できるが、酸基含有ラジカル重合性化合物の100重量%に対して、好ましくは0〜100重量%、より好ましくは1〜50重量%である。
架橋性不飽和単量体としては、特に制限されないが、例えば、吸水性樹脂の製造で使用される内部架橋剤として例示した単量体が挙げられる。これらのうち、平均エチレンオキサイド数が2〜50のポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリセリンアクリレートメタクリレート、グリセリンジアクリレートなどが好ましく使用される。架橋性不飽和単量体が吸水性樹脂表面においてエチレン性不飽和単量体と効率よく(共)重合するためには、吸水性樹脂との混合工程における架橋性不飽和単量体とエチレン性不飽和単量体の吸水性樹脂への拡散挙動が類似していることが望ましい。そのためには架橋性不飽和単量体が、分子量や親水性の面で、用いるエチレン性不飽和単量体と類似していることが望ましい。用いる架橋性不飽和単量体の量は、所望の性質によって適宜選択できるが、酸基含有ラジカル重合性化合物の100重量%に対して、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0.1〜15重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%である。架橋性不飽和単量体を併用することにより加圧下吸収倍率をより向上せしめることができる。架橋性不飽和単量体を併用することで、加圧下吸収倍率が向上する理由は明確ではないが、該水溶性エチレン性不飽和単量体が重合時に架橋性不飽和単量体によって架橋構造を形成し、これが吸水性樹脂の表面に導入されるためと推察される。
本明細書中、「エチレン性不飽和単量体」とは、1分子内に1つのビニル基を有する単量体であり、「架橋性不飽和単量体」とは、1分子内に2以上のビニル基を有する単量体である。本発明ではエチレン性不飽和単量体は必須成分であり、架橋性不飽和単量体は併用してもよい。
なお、この際、酸基含有ラジカル重合性化合物以外のラジカル重合性化合物としてのエチレン性不飽和単量体と架橋性不飽和単量体とのモル組成比はベースポリマーとしての吸水性樹脂と同一でも異なってもよいが、好ましくはベースポリマーとしての吸水性樹脂の組成と比較して、エチレン不飽和単量体に対して相対的に多くの、例えば、モル%の比で1.01〜10倍の、架橋性単量体を含むようにする。架橋性不飽和単量体の使用量は、エチレン性不飽和単量体の全量に対して好ましくは0.001〜100モル%であり、より好ましくは0.01〜50モル%であり、さらに好ましくは0.05〜30モル%であり、特に好ましくは0.1〜20モル%であり、最も好ましくは0.5〜10モル%である。特に、エチレン性不飽和単量体としてアクリル酸(塩)を主成分とし、これに架橋性不飽和単量体を併用すると、吸水特性に優れる点で好ましい。なお、上記架橋性不飽和単量体の代わりに1分子内に2個以上のビニル基以外の重合性不飽和基および/または2個以上の反応性官能基を有する化合物を用いることもできる。
また、吸水性樹脂と混合する酸基含有ラジカル重合性化合物を適宜選択することにより、表面処理された吸水性樹脂粒子表面に親水性、疎水性、接着性、生体親和性などの様々な性質を付与することができる。吸水性樹脂粒子表面に親水性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有単量体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコール含有単量体が例として挙げられる。吸水性樹脂粒子表面に疎水性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、メチルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートや、スチレンなどの芳香族基含有単量体、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどのフッ素含有単量体が例として挙げられる。吸水性樹脂粒子表面に接着性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのガラス転移温度が25℃以下のポリマーを形成する単量体、ビニルアミン、アリルアミン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドなどのカチオン性単量体、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのシラン基を含む単量体が例として挙げられる。中でも、シラン基を含む単量体が、吸水性樹脂粒子間の接着性だけでなく、吸水性樹脂粒子の金属、ガラス、パルプなどの基材への接着性が向上できるため、好ましく使用される。さらに、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを部分的に中和されたアクリル酸と過硫酸塩を含む水溶液に加えると、加えない場合に比べて通液性が優れた吸水性樹脂を得ることができる。吸水性樹脂粒子表面に生体親和性を付与するエチレン性不飽和単量体としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどのリン脂質様の構造を有する単量体が例として挙げられる。
吸水性樹脂粒子表面の性質を改変するという目的を達成するためには、酸基含有ラジカル重合性化合物は、上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体及び内部架橋剤とは異なる化合物を含むことが望ましい。この際、上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体と中和率の異なるエチレン性不飽和単量体は、「上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体及び内部架橋剤とは異なる酸基含有ラジカル重合性化合物」に包含される。上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体が、酸基含有エチレン性不飽和単量体である場合には、本願発明の効果を適切に得るために上述した通り、酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率が、(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体の中和率よりも低くすることで、本発明の効果を発現する。
また、上記(a)で記載した吸水性樹脂を製造するのに使用されるエチレン性不飽和単量体及び内部架橋剤とは異なる化合物として、上記酸基含有ラジカル重合性化合物中に、窒素、硫黄、リン、ケイ素、及びホウ素からなる群より選択される少なくとも1つの酸素以外のヘテロ原子を含むエチレン性不飽和単量体を用いてもよい。前記エチレン性不飽和単量体を用いることにより、吸水性樹脂粒子の性質をより大きく改変できる。より好ましくは、ケイ素、特にシラン基(XSi(OR)4−n、但し、Rは、メチル、エチル、フェニルまたはアセトキシ基を表わし、nは、1〜3の整数であり、nが1または2のときは、Rは同じであっても異なっていてもよい)、リンを含むエチレン性不飽和単量体が使用される。また、酸素以外のヘテロ原子を含むエチレン性不飽和単量体を酸基含有ラジカル重合性化合物として使用する場合の当該酸素以外のヘテロ原子を含むエチレン性不飽和単量体の量は、所望の性質によって適宜選択できるが、酸基含有ラジカル重合性化合物の全量100重量部に対して、50重量部以下、より好ましくは0.01〜20重量部、最も好ましくは0.1〜10重量部であることが好ましい。
上記したエチレン性不飽和単量体の中で水溶性の低い化合物は、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて他のラジカル重合性化合物を含む水溶液に分散するか、親水性有機溶媒に溶解して該水溶液に混合した後、吸水性樹脂に添加してもよい。または、必要に応じて有機溶媒に溶解して、該水溶液とは別に添加してもよい。この際、エチレン性不飽和単量体の添加順序は、特に制限されず、上記水溶液より前にあるいは後に添加してもいずれでもよい。
上記ラジカル重合性化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物で使用されてもよく、また、後者の場合の組合わせは、付与すべき性質などにより適宜に選択でき、特に限定されるものではない。
使用する酸基含有ラジカル重合性化合物の量は、酸基含有吸水性樹脂100重量部に対し好ましくは0.1〜20重量部の範囲、さらに好ましくは0.5〜15重量部の範囲、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。ラジカル重合性化合物の量が0.1重量部よりも少ないと、吸水性樹脂の加圧下吸収性能が十分に向上しない場合がある。一方、ラジカル重合性化合物の量が20重量部よりも多いと、得られる表面処理された吸水性樹脂の吸収倍率が低下する場合がある。
(c)ラジカル重合開始剤
本発明の吸水剤の好ましい製法では、a)吸水性樹脂、酸基含有ラジカル重合性化合物および水の混合工程において、好ましくはラジカル重合開始剤を使用する。ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、具体的には熱分解性ラジカル重合開始剤や光重合開始剤が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量に制限はないが、本発明では、酸基含有吸水性樹脂100重量部に対し、0.001〜20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.05〜10重量部の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。ラジカル重合開始剤がかような範囲にあれば、吸水特性に優れる吸水性樹脂が得られるとともに、表面処理反応速度が向上するため、生産性に優れる。また、ラジカル重合開始剤は、1種単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
熱分解性ラジカル重合開始剤とは、加熱によりラジカルを発生する化合物であり、中でも10時間半減期温度が0℃以上120℃以下のものが好ましく、20℃以上100℃以下のものがより好ましく、活性エネルギー線を照射する温度条件等を考慮すると、40℃以上80℃以下のものが特に好ましい。10時間半減期温度が0℃(下限値)未満では、貯蔵時に不安定であり、120℃(上限値)を超えると化学的に安定過ぎて反応性が低くなる場合がある。
熱分解性ラジカル重合開始剤は、光重合開始剤として市販されている化合物と比べて比較的安価で、厳密な遮光が必ずしも必要でないため製造プロセス、製造装置を簡略化できる。代表的な熱分解性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−2(−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物が挙げられる。中でも、10時間半減期温度が40〜80℃である、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、および2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−2(−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物が好ましい。これらの中でも、特に過硫酸塩を使用すると、加圧下吸収倍率、通液性、自由膨潤倍率がいずれも優れる点で好ましい。過硫酸塩は1種類だけでなく対イオンの異なる2種類以上を併用できる。使用される熱分解性ラジカル重合開始剤は、吸水性樹脂100重量部に対して、0.001〜5重量部であることが好ましく、0.01〜3重量部であることがより好ましく、0.1〜1重量部であることがさらに好ましい。
本発明においては、油溶性のベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体などの光重合開始剤、また油溶性のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシカルボネートなどの油溶性有機過酸化物を使用してもよい。かかる光重合開始剤は市販品でもよく、チバ・スペシャルティケミカルズの商品名イルガキュア(登録商標)184(ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)、イルガキュア(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)などが例示できる。使用される光重合開始剤は、吸水性樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、0.005〜0.5重量部であることがより好ましく、0.01〜0.1重量部であることがさらに好ましい。
本発明のラジカル重合開始剤は、油溶性と水溶性のいずれも用いることができる。油溶性ラジカル重合開始剤は、水溶性ラジカル重合開始剤と比較して分解速度がpHやイオン強度の影響を受けにくいという特徴がある。しかし、吸水性樹脂は親水性なので、吸水性樹脂への浸透性を考慮すると、水溶性のラジカル重合開始剤を使用することがより好ましい。なお、水溶性とは、水(25℃)に1重量%以上溶解するものを指し、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上溶解するものである。
水溶性ラジカル重合開始剤としては、好ましくは、過硫酸塩、過酸化水素、およびアゾ化合物からなる選択されるラジカル重合開始剤が挙げられる。具体的には、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2'−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−2(−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕2塩酸塩等の水溶性アゾ化合物等が挙げられる。これらの中でも、特に過硫酸塩を使用すると、表面処理後の吸水性樹脂の加圧下吸収倍率、通液性、自由膨潤倍率がいずれも優れる点で好ましい。
上記のラジカル重合開始剤に加えて、または上記のラジカル重合開始剤に代えて、過炭酸ナトリウムなどの過炭酸塩;過酢酸、過酢酸ナトリウムなどの過酢酸塩などを、さらに使用してもよい。
本発明で必要により熱分解性ラジカル重合開始剤と光重合開始剤などそれ以外のラジカル重合開始剤を併用する場合、後者の使用量は吸水性樹脂100重量部に対して0〜20重量部、好ましくは0〜15重量部、特には0〜10重量部であり、その使用比率は該熱分解性ラジカル重合開始剤よりも少ない量、例えば該熱分解性ラジカル重合開始剤の重量比の1/2以下、更には1/10以下、特には1/50以下である。
(d)吸水性樹脂、ラジカル重合性化合物、および水の混合工程a)
本発明の好ましい吸水性樹脂の表面処理方法として、混合工程a)において、a)酸基含有吸水性樹脂100重量部に対し、中和率0〜60モル%の酸基含有ラジカル重合性化合物0.1〜20重量部と、水5〜20重量部とを混合して吸水性樹脂組成物を得る。
従来、吸水性樹脂の表面処理は、表面架橋剤を配合して行われることが一般的であった。表面架橋剤を配合すれば、樹脂表面にある官能基と表面架橋剤とが化学的に強固に結合し、これによって安定な表面架橋構造を樹脂表面に導入することができる。また、表面架橋剤の鎖長を適宜選択することで表面架橋距離を容易に調整することができ、配合量を調整すれば架橋密度を制御することができる。しかしながら、本発明では、このような表面架橋剤を配合しなくとも、酸基含有ラジカル重合性化合物や必要であればラジカル重合開始剤を使用するだけで、吸水性樹脂を表面処理(改質)し、具体的には吸水性樹脂の表面に架橋構造を導入することができる。さらに、水を混合して得られる吸水性樹脂組成物に対して活性エネルギー線の照射処理および/または加熱処理をすることで、吸水性樹脂粒子の表面に効率的に架橋構造を導入することができ、かつ、得られる表面処理(改質)された吸水性樹脂の吸水特性も改善されうるのである。上記利点に加えて、工程a)で中和度の低い酸基含有ラジカル重合性化合物を用い、さらに吸水性樹脂に比較的多量の水を添加することによって、後述する工程b)において、吸水性樹脂粒子の表面に効率的に架橋構造を導入することができる。このため、食塩水流れ誘導性(SFC)を所望の程度まで向上させるために必要な表面処理時間(具体的には、活性エネルギー線の照射時間や加熱時間)を、好ましくは数十分程度にまで、好ましくは数分程度にまで短縮できるという利点もある。SFCは、表面処理された吸水性樹脂組成物(吸水剤)の膨潤後の通液性に影響を与える。つまり、例えば本発明の吸水性樹脂組成物を紙おむつの吸収体の一部に使用した場合の通液性を良好にし、吸収体に液を十分に行き渡らせ、使用時における尿等の排泄液に対する吸収量を増大させ、液の漏れを防止する効果が著しく向上する。吸水性樹脂に求められる特性として、吸収倍率、吸収速度、ゲル強度、吸引力などがある。これらの特性のうち、本発明の表面処理方法では、所望の食塩水流れ誘導性(SFC)を得るために必要な表面反応処理時間が、従来と比べ著しく減少した。詳細なメカニズムは不明であるが、ラジカル重合性化合物の重合速度が向上したためと考えられる。
ラジカル重合性化合物と、水と、必要に応じて添加されるラジカル重合開始剤とを吸水性樹脂に混合する際の混合順序には限定がない。したがって、それぞれ単独で吸水性樹脂と混合してもよく、予めラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物とを含む水溶液を調製し、これを吸水性樹脂に混合してもよい。しかしながら、両者が均一に吸水性樹脂の表面に分散されるためには、ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物とを含む水溶液を予め調製し、これと吸水性樹脂とを混合することが好ましい。なお、ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物と吸水性樹脂とを混合した後に、得られた混合物を水と混合してもよい。
ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物とを溶解させる水溶液は、水のほかに、これらの溶解性を損なわない範囲で他の溶媒を含んでいてもよいが、好ましくは水のみを使用する、即ち、ラジカル重合開始剤および/またはラジカル重合性化合物を、疎水性有機溶媒の非存在下で、水溶液の形態で使用する。
混合工程a)において吸水性樹脂と混合される水の混合量は、吸水性樹脂100重量部(固形分100重量%に換算したもの)に対し、5〜20重量部、好ましくは6〜15重量部、より好ましくは7〜12重量部である。水をかような範囲で混合すると、活性エネルギー線照射処理および/または加熱処理による表面処理反応の速度が高まり、また活性エネルギー線照射処理および/または加熱処理した後に乾燥工程で多くのエネルギーを必要とせず、さらに吸水性樹脂が分解する虞れが低いため、好ましい。
酸基含有ラジカル重合性化合物等が水溶液の形態で混合される場合、用いられる水溶液における水の量は、得られる吸水性樹脂組成物における水の量が上述した範囲となるように調節されうる。なお、吸水性樹脂への水の混合形態は、必ずしも酸基含有ラジカル重合性化合物等を含む水溶液の形態で混合される場合に限られない。例えば、酸基含有ラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤と吸水性樹脂とを混合した後に、水が混合されてもよい。したがって、単量体成分を重合して得た含水ゲル状架橋重合体(吸水性樹脂)を、得られる吸水性樹脂組成物における水の量が上述した範囲となるような含水率になるまで乾燥したものに、ラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤とを直接混合して、吸水性樹脂組成物を得てもよい。
(e)有機微粒子及び/又は無機微粒子
本発明で用いる微粒子としては有機物質、無機物質、有機無機複合物質等、種々の固形物質の微粒子を用いることができる。例えばポリアクリル酸(塩)架橋体、ポリアクリルアミドおよびその架橋体、アクリル酸(塩)−アクリルアミド共重合架橋体、またはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびその4級塩などのカチオン性単量体とポリアクリルアミドの共重合架橋体、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどポリカチオン化合物の架橋体などの有機物質、タルク、カオリン、フラー土、ベントナイト、活性白土、重晶石、天然アスファルタム、ストロンチウム鉱石、イルメナイト、パーライトなどの鉱産物;硫酸アルミニウム14〜18水塩(または無水物)、硫酸カリウムアルミニウム12水塩、硫酸ナトリウムアルミニウム12水塩、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、酸化アルミニウムなどのアルミニウム化合物類、その他の多価金属塩類;親水性のアモルファスシリカ(例、乾式法:トクヤマ社 ReolosilQS−20、沈殿法:DEGUSSA社 Sipernat(登録商標)22S,Sipernat2200)類;酸化ケイ素・酸化アルミ・酸化マグネシウム複合体(例、ENGELHARD社 Attagel(登録商標)#50)、ゼオライト、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、活性炭などの無機物質が挙げられる。また有機物質、無機物質の複合体やブレンド物も挙げられる。
上記固形物(固体)の形状は、特には限定されず、繊維状であっても粒子状であってもかまわないが、粒子状の方が表面積が高く、より効果的に吸収速度、消臭性を上げることができるため好ましい。
これらの固形物(固体)は、通常、常温で固体の粉末状(微粒子)化合物であることが好ましい。粒子径としては質量平均粒子径が好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは50μm以下である。下限値としては数nm、例えば1nmである。微粒子の粒子径が150μmを超えると固着されても表面積の増加に寄与せず吸収速度や消臭性の向上効果が不充分となる。また、固着された微粒子が脱離しやすくなる。
また、上記固形物(微粒子)は、実質全て(99.9重量%以上)の粒子の粒子径が1nm〜150μmの範囲内であることがより好ましく、全ての粒子の粒子径が5nm〜100μmの範囲内であることが最も好ましい。微粒子の粒子径が1nm未満である場合は、ダスト等の発生やダマとなってしまい取り扱い性が低下する虞がある。
粒度の測定は38μm以上の粒子については標準ふるい(JIS Z8801−1(2000))を用いてふるい分級して測定できるし、38μm以下の粒子にはレーザー解析式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
本発明で好ましく用いられるのは有機微粒子であり、中でも好ましくは吸水性の高いポリアクリル酸(塩)架橋重合体、すなわち、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が用いられる。有機微粒子が吸水性樹脂のベースポリマーである乾燥微粒子または表面処理された微粒子である。
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を用いる場合、本発明を達成するうえで、その吸収倍率(GV)は、通常50g/g以下、好ましくは40g/g以下、さらに好ましくは30g/g以下、特に好ましくは20g/g以下である。下限は吸収倍率から5g/g以上、好ましくは10g/g以上である。また、可溶分量は好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。すなわち、本発明で好ましくは、微粒子が、生理食塩水に対する吸収倍率(GV)5〜20g/gである吸水性樹脂微粒子である。
かかるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は別途製造してもよく、粒度制御のために除去された微粉でもよい。すなわち、吸水性樹脂の製造工程で微粉を除去したのち、それらを廃棄することなく、本発明の微粒子として使用することでリサイクルでき吸水性樹脂粒子に固着された場合、表面積が向上し微粒子に起因する性能が向上する。
また、吸水性樹脂粒子に対する微粒子の割合は目的とする性能に応じて適宜設定すればよいが、吸水性樹脂粒子に対して通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であり、最も好ましくは10重量%以上である。上限は通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましく30質量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。0.01重量%未満では添加による効果がほとんど見られず、50重量%を超えると吸収倍率の低下などが見られる場合がある。
また、微粒子の混合方法としては、特に制限はないが、例えば、容器に入った表面処理液中に添加して分散させたり、連続的に流れる前記表面処理液中に混合機を用いて連続的に分散させるといった方法、更にはあらかじめ吸水性樹脂と微粒子を混合しておく方法、上記方法の併用を用いることができる。その結果、微粒子を均一に吸水性樹脂粒子の表面に付着または近傍に存在させることができる。
なお、吸水性樹脂粒子と微粒子を混合して混合品を得る方法としては、通常の混合機、例えばV型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、回転円板型混合機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機、鋤型混合機等を用いて混合する方法が挙げられる。
(f)酸基含有ラジカル重合性化合物を重合する工程b)
本発明の吸水剤を得るのに好ましい製法は、a)酸基含有吸水性樹脂粒子100重量部(固形分100重量%に換算したもの)と有機微粒子及び/又は無機微粒子の混合品(ベースポリマー)に対し、酸基含有ラジカル重合性化合物0.1〜20重量部と、水5〜20重量部とを混合する工程、およびb)上記酸基含有ラジカル重合性化合物を重合する工程を含むものである。工程b)においては、吸水性樹脂粒子と上記微粒子の混合品に酸基含有ラジカル重合性化合物を重合する。ここで、混合品への酸基含有ラジカル重合性化合物の重合方法は、特に制限されない。好ましくは、工程b)は、工程a)で得られた混合物に活性エネルギー線を照射する工程、および/または工程a)で得られた混合物を加熱する工程を含む。詳細には、ベースポリマーに混合した酸基含有ラジカル重合性化合物を、活性エネルギー線の照射および/または加熱といったラジカル発生手段を用いて、好ましくはベースポリマー混合品の表面および/またはその近傍で重合する。
上記重合により、吸水性樹脂粒子の内部より表面近傍の架橋密度が高まり、加圧下吸収倍率、通液性など吸水性樹脂の実使用時に望まれる特性が高くなる。以下、微粒子が固着された本発明の吸水剤を得るための、ベースポリマーと表面処理液との混合物に活性エネルギー線を照射する工程、および混合物を加熱する工程について説明する。ただし、本発明は、下記形態に限定されない。
(f−1)活性エネルギー線の照射
吸水性樹脂の製造において、活性エネルギー線を照射して重合率を向上させることは公知である。例えば、重合性単量体成分に内部架橋剤と光重合開始剤を配合し、紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を照射すると、内部架橋を有する不溶性吸水性樹脂を調製することができる。一方、吸水性樹脂の表面処理方法として、表面架橋剤を使用し、加温条件で反応を促進して表面架橋を形成させることも公知である。このような吸水性樹脂の表面架橋として、多価アルコールや多価グリシジルエーテル、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒドなどの、1分子中に複数の官能基を有する化合物がある。一般に、100〜300℃に加熱すると、これらの官能基が吸水性樹脂の表面にあるカルボキシル基などと反応し、吸水性樹脂の表面に架橋構造が形成される。しかしながら本発明では、このような表面架橋剤がなくても、重合性単量体の存在とラジカル重合開始剤と活性エネルギー線の照射によって、吸水性樹脂の表面処理を行うことができ、詳しくは吸水性樹脂粒子に有機微粒子及び/又は無機微粒子が付着された状態で表面処理されることで、有機微粒子及び/又は無機微粒子が強固に固着された吸水剤を得ることができる。その結果、固着された微粒子に起因する吸水特性に優れる吸水剤を得ることができる。
本発明において、活性エネルギー線の照射は、混合品(ベースポリマー)、水、酸基含有ラジカル重合性化合物および必要であればラジカル重合開始剤の混合中に行なってもよく、これらの2つ以上を混合した後に照射してもよい。しかしながら、均一な表面処理を行える点で、好ましくは、混合品(ベースポリマー)、水、酸基含有ラジカル重合性化合物および必要であればラジカル重合開始剤を含む混合組成物を得た後、得られた混合組成物に活性エネルギー線を照射する。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、ガンマー線の1種または2種以上が挙げられる。好ましくは、紫外線、電子線である。活性エネルギー線の人体への影響を考慮すると、紫外線がより好ましく、更に好ましくは波長300nm以下、特に好ましくは波長180〜290nmの紫外線である。照射条件は、紫外線を用いる場合には、好ましくは、照射強度が3〜1000mW/cm、照射量が100〜10000mJ/cmである。
活性エネルギー線の照射の際には撹拌することが好ましい。撹拌によってラジカル重合開始剤と混合品(ベースポリマー)との混合物に、活性エネルギー線を均一に照射することができる。活性エネルギー線の照射の際にベースポリマーを撹拌できる装置としては、振動型混合機、振動フィダー、リボン型混合機、円錐型リボン型混合機、スクリュー型混合押出機、気流型混合機、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、パドル型混合機、高速流動式混合機、浮上流動式混合機等が挙げられる。
その回転数は10〜1000rpmが好ましく、15〜500rpmが更に好ましく、20〜300rpmが特に好ましく、30〜100rpmが最も好ましい。また、その際の混合物(処理液との混合組成物)の温度は10〜100℃が好ましく、20〜80℃が更に好ましく、30〜70℃が特に好ましい。
(f−2)加熱
上述した通り、混合品(ベースポリマー)に対して混合する酸基含有ラジカル重合性化合物を加熱により重合することができる。重合を加熱単独で行う場合、活性エネルギー線の照射装置を別途設けることが不要となり、製造装置の設計面において優れる。また、低コストで、かつ安全な手法により、得られる表面処理された吸水剤の吸水特性(特に、加圧下吸収倍率・通液性)を向上させることが可能となる。
上記a)工程で得られる混合物は、上述した活性エネルギー線の照射時と同様の条件で調製すれば良く、ラジカル重合開始剤は必須成分ではない。酸基含有ラジカル重合性化合物、水、および必要であればラジカル重合開始剤を混合品(ベースポリマー)に対して、上記したような特定の量で混合することが好ましい。そして、特定の温度条件下にて混合物を加熱することが好ましい。
b)工程が混合物(処理液との混合組成物)を加熱する工程である場合、上記a)工程で得られる混合物は、上述した活性エネルギー線の照射時と異なる条件で調製することでラジカル発生を制御できる。
加熱処理を行う際の加熱時間は特に制限されないが、好ましくは1〜90分間であり、より好ましくは2〜60分間であり、さらに好ましくは3〜30分間である。加熱時間が1分間以上であれば、ベースポリマーの表面に架橋構造が導入され、一方、加熱時間が90分間以下であれば、加熱によるベースポリマーの劣化が防止されうる。
(g)その他の処理
活性エネルギー線の照射後には、乾燥などのために、必要に応じて、吸水剤を50〜250℃の温度で加熱処理してもよい。
また、活性エネルギー線照射後に、従来周知の多価アルコール、多価エポキシ化合物、アルキレンカーボネート等の表面架橋剤を使用して、表面架橋を形成させてもよい。
また、活性エネルギー線照射の後に、吸水剤に通液性向上剤を添加してもよい。このような通液性向上剤は、上述した無機微粒子を用いることが好ましい。
(h)表面処理された有機微粒子及び/又は無機微粒子が固着してなる吸水剤
本発明では、好ましくは酸基含有ラジカル重合性化合物を吸水性樹脂粒子の表面で重合することによる表面処理方法を用いることで、吸水性樹脂粒子の表面に存在する微粒子が強固に固着する。推定ではあるがイメージ図を図2に示す。
図2や後述する図3に示す通り、本発明の吸水剤は単なる造粒粒子ではない。つまり、厳密に内部の吸水性樹脂粒子と固着させる微粒子の粒度を制御して、好ましくは一層で微粒子が固着されている。
内部の吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は、150μm以上850μm以下であることを特徴とする。そして微粒子は内部の吸水性樹脂粒子より粒度が小さく、その質量平均粒子径は150μm未満であることを特徴とする。そのように区別することで、酸基含有ラジカル重合性化合物による表面処理や吸水剤の表面積の制御が円滑に行え、固着される微粒子の機能が効率的に発現する。
表面の酸基中和率は吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率未満であることを特徴とする。好ましくは表面処理液の酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率が30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、最も好ましくは0%を用いた低中和の範囲である。
本発明で、中和率を分析で確認する際の「表面」とは、外気に曝されている吸水性樹脂粒子を意味する。つまり微粒子の表面では大小関係を確認していない。また、「吸水性樹脂粒子内部」とは、吸水性樹脂粒子の表面近傍よりさらに中心部へ向かう部分を意味する。ここで、「吸水性樹脂粒子の表面近傍」とは、吸水性樹脂粒子表面から粒子径(短径)の10分の1の厚さの部分を意味する。なお、吸水性樹脂粒子表面からの厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)、EPMA等で確認できる。また、「酸基(好ましくはカルボキシル基)中和率」は、赤外吸光分析法の一つである顕微ATR法(MicroAttenuated Total Reflection)やEPMA法により測定できる。また、顕微ATR法では、吸水性樹脂粒子表面については、顕微ATR法にて直接吸水性樹脂粒子表面を測定すればよく、また、吸水性樹脂粒子内部については、例えばウルトラミクロトーム(Reichert製、ULTRACUT N)を用いることにより吸水剤を割断して中心部を露出させてから顕微ATR法にて測定することができる。なお、測定装置は、例えば、Bio−Rad社製 FTS−575などの公知の装置を用いることができる。
本発明では具体的に以下のEPMA測定方法で精度良く大小関係を確認できる。
吸水剤の断面を、EPMA(Electron Probe Microanalyzer;島津製作所製、商品名:EPMA−1610)で測定する。測定は、面分析(マッピング)で行う。測定条件は、加速電圧:15kV、Beam size:1μm、Beam Current:0.05μAで行う。マッピングの測定は、Measuring time:40msec、Data Point:X,Yともに200、Step size:X,Yともに0.5μm、Area size:100μm、Measure Type:One−Way、Start Type:Center、Naの特性X線(Kα線)の波長:11,8950オングストロームで行なう。測定元素はNa(分光結晶:RAP(酸性フタル酸ルビジウム))、その際の観察は反射電子像(BEI)で行なう。1つのサンプルに対して、微粒子の固着していない3箇所で上記マッピングを測定する。その後、解析を行う。
実際には微粒子の表面と微粒子が固着していない吸水性樹脂粒子表面の中和されていないアクリル酸部分により塩基性悪臭成分(例えば、アンモニア、アミン類)を中和することができる。さらに、微粒子が固着されることで表面積が大きくなり、その結果、消臭効果が大きく向上することを見出した。しかも、吸水して膨潤後も微粒子が脱離せず、種々の環境下で用いられても性能を長く維持することができる。
消臭性が大きくなるのは、吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率が好ましくは40モル%以上60モル%の範囲であり、さらに微粒子が吸水性樹脂微粒子である場合は、その酸基中和率も同様に40モル%以上60モル%以下の範囲である。そして、表面処理する酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率を30モル%以下として吸水剤全体の中和率を40モル%以上60モル%の範囲とし、特に表面はその中和率範囲未満にすることで効果が大きくなる。
本発明に係る吸水剤は、衛材分野の紙オムツ等の吸収性物品をはじめ種々の用途に用いることができる。表面に固着した微粒子として、消臭剤、抗菌剤、香料、二酸化珪素や酸化チタン等の無機粉微粒子、蓄光剤、親水性短繊維、可塑剤、肥料、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等の微粒子を用いれば、種々の機能が付与され、固着状態が長く続くことで性能を長く維持できる。
有機微粒子として、上述したような吸水性樹脂微粒子を用いれば吸収速度等の吸水特性の向上効果が大きくなる。
固着するために必要な酸基含有ラジカル重合性化合物での表面処理による表面被覆率は、好ましくは内部の吸水性樹脂粒子の表面の30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上、最も好ましくは90%以上である。上限は100%である。
上記表面被覆率は、種々の用途によって性能の発現性を制御できる。微粒子自体の機能を重視する場合は、被覆率を例えば20%以上50%以下に制御できる。また酸基含有ラジカル重合性化合物の酸基を重視する場合は、例えば50%以上100%以下に制御することで、消臭性が向上する。
表面被覆率が100%を越えると、添加量に見合った効果が出なくなる。また皮膜が厚くなり、微粒子が存在していても表面積の増加が不充分となる。
本発明の吸水剤を構成する吸水性樹脂粒子に対する有機微粒子及び/又は無機微粒子の割合は目的とする性能に応じて適宜設定すればよいが、吸水性樹脂粒子に対して0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であり、最も好ましくは10重量%以上である。上限は50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましく30質量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。0.01重量%未満では添加による効果がほとんど見られず、50重量%を超えると吸収倍率の低下などが見られる場合がある。
本発明の吸水剤の吸水特性として4.83kPaの加圧下吸収倍率は好ましくは8g/g以上、より好ましくは12g/g以上、さらに好ましくは15g/g以上、特に好ましくは20g/g以上、最も好ましくは22g/g以上である。なお、上限は特に問わないが、製造の困難によるコストアップから40g/g程度で十分である場合もある。加圧下吸水倍率の値は、実施例に記載の方法で測定される値を採用する。
また、自由膨潤倍率(GV)は、好ましくは8g/g以上、より好ましくは15g/g以上、さらに好ましくは20g/g以上、特に好ましくは25g/g以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは50g/g以下であり、より好ましくは40g/g以下であり、更に好ましくは35g/g以下である。自由膨潤倍率(GV)が8g/g未満の場合、吸収量が少なすぎ、オムツなどの衛生材料の使用に適さない。また、自由膨潤倍率(GV)が50g/gよりも大きい場合、ゲル強度が弱く、通液性に優れる吸水性樹脂をうる事ができないおそれがある。自由膨潤倍率の値は、実施例に記載の方法で測定される値を採用する。
さらに、食塩水流れ誘導性(SFC)は、好ましくは10(単位:10−7・cm・s・g−1)以上、より好ましくは30(単位:10−7×cm×s×g−1)以上、さらに好ましくは50(単位:10−7×cm×s×g−1)以上である。上限値は特に限定されないが、好ましくは500(単位:10−7×cm×s×g−1)以下である。食塩水流れ誘導性(SFC)が10(単位:10−7×cm×s×g−1)未満の場合、通液性が十分でないため、吸収体に液を十分に行き渡らせることができず、使用時における尿等の排泄液に対する吸収量を低下させる虞れがある。食塩水流れ誘導性の値は、実施例に記載の方法で測定される値を採用する。
本発明の吸水剤の重量平均粒子径(ふるい分級で規定)は10〜1,000μm、好ましくは200〜600μmの粉末状であり、好ましくは150〜850μmの含有量が、吸水性樹脂に対して、90〜100重量%、更に好ましくは95〜100重量%である。また、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.23〜0.45であり、より好ましくは0.25〜0.35である。
本発明の吸水剤の比表面積は好ましくは0.02m/g以上1.0m/g以下である。
さらに好ましくは0.03m/g以上0.5m/g以下である。0.02m/g未満では消臭性や吸収速度が不充分となる。1.0m/gを超えると、プロセスダメージ(粒子どうしの衝突や粒子と装置との衝突などによるダメージ)を受けて性能が低下する可能性がある。
本発明の吸水剤の吸収速度(FSR;Free Swell Rate)は0.15を超えて2.00(g/g/sec)以下、好ましくは0.17以上1.00(g/g/sec)以下、さらに好ましくは0.20以上0.90(g/g/sec)以下、特に好ましくは0.30以上0.80(g/g/sec)以下とされる。FSRが0.15以下では吸収速度が遅くなり、おむつのもれなどの原因となる。また、FSRが2.00を超える場合、おむつ中の液拡散が低下する恐れがある。
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
(1) 粒度分布
吸水性樹脂粒子又は吸水剤10gを直径75mm、目開き850μm、600μm、300μm、150μmのテストふるい(IIDA製作所製)で篩い分けし、それぞれの質量を測定し、各粒度の重量%を求めた。篩い分けは、IIDA製作所製のSIEVE SHAKER ES−65型を用いて5分間振とうすることにより行った。なお、吸水性樹脂は、予め60±5℃で減圧(1mmHg(133.3pa)未満)下で24時間乾燥してから測定した。
(2) 固形分の測定
底面の直径が4cm、高さ2cmのアルミ製カップに吸水性樹脂1gをアルミ袋カップ底面に均一に広げた。これを、180℃に調温した熱風乾燥機中に3時間放置し、前後の重量減少より、吸水性樹脂の固形分(%)を算出した。
(3) 自由膨潤倍率(GV)
吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22、大きさ:60mm×60mm)に均一に入れ、大過剰(通常は500mL)の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に室温(25±2℃)で浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gの遠心力で3分間水切りを行った後、袋の質量W(g)を測定した。また、同様の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、その時の袋の質量W(g)を測定した。そして、W、Wから、次式によって自由膨潤倍率(GV)(g/g)を算出した。
自由膨潤倍率(g/g)=[W(g)−W(g)−吸水性樹脂の質量(g)]/吸水性樹脂の質量(g)
(4) 加圧下吸収倍率(AAP)
内径60mmのプラスチックの支持円筒の底に、ステンレス製400メッシュの金網(目開きの大きさ38μm)を融着させ、室温(25±2℃)、湿度50RH%の条件下で、金網上に吸水性樹脂0.900gを均一に散布し、その上に、吸水性樹脂に対して4.83kPaの荷重を均一に加えることができるよう調整された、外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒の内壁面との間に隙間が生じず、かつ上下の動きが妨げられないピストンと荷重とをこの順に載置して、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmのガラスフィルター(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)(20〜25℃)をガラスフィルターの上面と同じレベルになるように加えた。その上に、直径90mmの濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社製、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を載せ、表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を荷重下で所定時間吸収させた。この吸収時間は、測定開始から算出して、1時間後とした。具体的には、1時間後、測定装置一式を持ち上げ、その質量W(g)を測定した。この質量測定はできるだけすばやく、かつ振動を与えないように行わなくてはならない。そして、W、Wから、次式によって加圧下吸収倍率(AAP)(g/g)を算出した。
AAP(g/g)=[W(g)−W(g)]/吸水性樹脂の質量(g)
(5) 食塩水流れ誘導性(SFC)
食塩水流れ誘導性(SFC)は吸水性樹脂の膨潤時の液透過性を示す値である。SFCの値が大きいほど高い液透過性を有することを示している。
特表平9−509591号公報記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験に準じて行った。
図1に示す装置を用い、容器40に均一に入れた吸水性樹脂(0.900g)を人工尿中で0.3psi(2.07kPa)の加圧下、60分間膨潤させ、ゲル44のゲル層の高さを記録し、次に0.3psi(2.07kPa)の加圧下、0.69重量%食塩水33を、一定の静水圧でタンク31から膨潤したゲル層を通液させた。このSFC試験は室温(20〜25℃)で行った。コンピューターと天秤を用い、時間の関数として20秒間隔でゲル層を通過する液体量を10分間記録した。膨潤したゲル44(の主に粒子間)を通過する流速Fs(T)は増加質量(g)を増加時間(s)で割ることによりg/sの単位で決定した。一定の静水圧と安定した流速が得られた時間をTsとし、Tsと10分間の間に得たデータだけを流速計算に使用して、Tsと10分間の間に得た流速を使用してFs(T=0)の値、つまりゲル層を通る最初の流速を計算した。Fs(T=0)はFs(T)対時間の最小2乗法の結果をT=0に外挿することにより計算した。
食塩水流れ誘導性(SFC)
=(Fs(t=0)×L0)/(ρ×A×ΔP)
=(Fs(t=0)×L0)/139506
ここで、
Fs(t=0):g/sで表した流速、
L0:cmで表したゲル層の高さ、
ρ:NaCl溶液の密度(1.003g/cm)、
A:セル41中のゲル層上側の面積(28.27cm)、
ΔP:ゲル層にかかる静水圧(4920dyne/cm)、および
SFC値の単位は(10−7・cm・s・g−1)である。
図1に示す装置としては、タンク31には、ガラス管32が挿入されており、ガラス管32の下端は、0.69重量%食塩水33をセル41中の膨潤ゲル44の底部から、5cm上の高さに維持できるように配置した。タンク31中の0.69重量%食塩水33は、コック付きL字管34を通じてセル41へ供給された。セル41の下には、通過した液を補集する容器48が配置されており、補集容器48は上皿天秤49の上に設置されていた。セル41の内径は6cmであり、下部の底面にはNo.400ステンレス製金網(目開き38μm)42が設置されていた。ピストン46の下部には液が通過するのに十分な穴47があり、底部には吸水性樹脂あるいはその膨潤ゲルが、穴47へ入り込まないように透過性の良いガラスフィルター45が取り付けてあった。セル41は、セルを乗せるための台の上に置かれ、セルと接する台の面は、液の透過を妨げないステンレス製の金網43の上に設置した。
なお、上記人工尿は、塩化カルシウムの2水和物0.25g、塩化カリウム2.0g、塩化マグネシウムの6水和物0.50g、硫酸ナトリウム2.0g、りん酸2水素アンモニウム0.85g、りん酸水素2アンモニウム0.15g、および、純水994.25gを加えたものである。
(6)吸収速度(FSR)
吸水性樹脂1.00gを25mlガラス製ビーカー(直径32〜34mm、高さ50mm)に入れた。この際、ビーカーに入れた吸水性樹脂の上面が水平となるようにした。(必要により、慎重にビーカーをたたくなどの処置を行うことで吸水性樹脂表面を水平にしても良い。)次に、23℃±2℃に調温した生理食塩水20gを50mlのガラス製ビーカーに量り取り、生理食塩水とガラス製ビーカーの合計重さ(単位:g)を測定した(W3)。量り取った生理食塩水を、吸水性樹脂の入った25mlビーカーに丁寧に素早く注いだ。注ぎ込んだ生理食塩水が吸水性樹脂と接触したと同時に時間測定を開始した。そして、生理食塩水を注ぎ込んだビーカー中の生理食塩水液上面を約20゜の角度で目視した際、始め生理食塩水液表面であった上面が、吸水性樹脂が生理食塩水を吸収することにより、生理食塩水を吸収した吸水性樹脂表面に置き換わる時点で、時間測定を終了した(単位:秒)(t)。次に、生理食塩水を注ぎ込んだ後の50mlガラス製ビーカーの重さ(単位:g)を測定した(W4)。注ぎ込んだ生理食塩水の重さ(W5、単位:g)を下記式により求めた。吸収速度(FSR)は、続く下記式によって計算した。
式: W5(g)=W3(g)−W4(g)
式: FSR(g/g/s)=W5/(t×吸水性樹脂の質量(g))
(7) 可溶分量
250ml容量の蓋付きプラスチック容器(直径6cm×高さ9cm)に、0.900重量%塩化ナトリウム水溶液の184.3gを測り取り、その水溶液中に粒子状吸水性樹脂1.00gを加え、16時間、直径8mm、長さ25mmの磁気攪拌子を用いて500rpmの回転数で攪拌することにより、樹脂中の可溶分を抽出した。この抽出液を濾紙1枚(ADVANTEC東洋株式会社、品名:JIS P 3801 No.2、厚さ:0.26mm、保留粒子径5μm)を用いて濾過することにより得られた濾液の50.0gを測り取り、測定溶液とした。
はじめに0.900重量%塩化ナトリウム水溶液だけを、まず、0.1NのNaOH水溶液でpH10まで滴定を行い、その後、0.1NのHCl水溶液でpH2.7まで滴定して空滴定量([bNaOH]ml、[bHCl]ml)を得た。
同様の滴定操作を測定溶液についても行なうことにより、滴定量([NaOH]ml、[HCl]ml)を求めた。
例えば、既知量のアクリル酸とそのナトリウム塩からなる吸水性樹脂の場合、そのモノマーの平均分子量と上記操作により得られた滴定量をもとに、吸水性樹脂中の可溶分量を下式により算出することができる。未知量の場合は滴定により求めた中和率を用いてモノマーの平均分子量を算出した。
可溶分量(重量%)=0.1×(平均分子量)×184.3×100×([HCl]−[bHCl])/1000/1.0/50.0
中和率(mol%)=[1−([NaOH]−[bNaOH])/([HCl]−[bHCl])]×100
(8)比表面積
吸水剤の比表面積は、「BET(Brunauer−Emmett−Teller)一点法」により求めることができる。測定装置は、「検体全自動比表面積測定装置4−ソーブU−1」(湯浅アイオニクス社製)を使用する。まず、粉末約5gを内容量約13cm3 のマイクロセル(TYPE:QS−400)中に入れ、窒素ガス気流下に試料入りマイクロセルを150℃に加熱し、試料の脱気および脱水を充分に行う。次いで、ヘリウムガスと0.1%のクリプトンガスからなる混合ガス気流下に試料入りマイクロセルを−200℃に冷却し、混合ガスを試料に平衡になるまで吸着させる。その後、試料入りマイクロセルの温度を室温まで戻し、混合ガスの試料から脱離を行い、クリプトン混合ガスの脱離量より吸水性樹脂粉末の比表面積を求める。なお、試料入りマイクロセルの吸着−脱離工程は3回行い、その平均量より吸水剤の比表面積(m2 /g)を求める。
(製造例)
シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中に、70モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5433g(単量体濃度:43重量%)を仕込み、当該水溶液に内部架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレンオキサイドユニット数:n=9)12.83gを溶解させて反応液とした。次いで、この反応液を窒素ガス雰囲気下において脱気した。続いて、重合開始剤である過硫酸ナトリウムの10重量%水溶液29.43gおよびL−アスコルビン酸の0.1重量%水溶液24.53gを撹拌しながら反応液に添加した。その結果、約1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃にて重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。得られた含水ゲル状架橋重合体の粒径は5mm以下であった。この粉砕された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、175℃にて50分間熱風乾燥した。このようにして、不定形で、容易に粉砕されうる粉末状凝集体を得た。
得られた粉末状凝集体をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き300μmと600μmのJIS標準ふるいを用いて分級することで粒子径が300〜600μmの吸水性樹脂粒子(サンプルA)を得た。次いで、前記の操作で目開き300μmのふるいを通過した粒子を目開き45μmのJIS標準ふるいを用いて分級し、目開き45μmのふるいを通過した微粒子(サンプルB)を得た。
また、異なる微粒子として、別途ベースポリマーを製造し、多価アルコールで加熱表面処理後、目開き45μmのJIS標準ふるいを用いて分級し、目開き45μmのふるいを通過した表面処理された微粒子(サンプルC)を得た。
これらの分級された吸水性樹脂粒子と微粒子を調合して、以下の比較実験を行った。
実施例1;サンプルA(90wt%)とサンプルB(10wt%)を混合し、その後紫外線を照射することにより表面処理した。
比較例1;サンプルA(90wt%)とサンプルB(10wt%)を混合した。
比較例2;サンプルAのUV表面処理品(90wt%)とサンプルC(10wt%)を混合した。
なお、表面処理は以下の方法で行った。
(紫外線線照射による表面処理の方法)
ベースポリマーとしての吸水性樹脂粒子(サンプルAとサンプルBの混合品又はサンプルA単独)30gを500mLの石英製セパラブルフラスコに加え、撹拌羽根で撹拌下、2ーヒドロキシー3―アクリロイロキシプロピルメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステル701A)0.03g、アクリル酸1.20g、水2.10g、イルガキュア2959(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.003g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(数平均分子量 約2,000)0.003gを予め混合した処理液を加えた。10分間撹拌を続けた後、メタルハライドランプ(ウシオ電機製、UVL−1500M2−N1)を取り付けた紫外線照射装置(同、UV−152/1MNSC3−AA06)を用いて、照射強度65mW/cm(石英製セパラブルフラスコの壁面のUVランプに最も近い位置で、ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT−150、受光部UVD−S254を用いて測定)で1分間室温で紫外線を照射した。その後、サンプリングを行い、表面処理された吸水性樹脂(UV表面処理品)を得た。
得られた上記3つの混合物を透明なプレート上に置き、室温下で0.9重量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)を適下し飽和膨潤させた。(吸水量は約25倍)
その飽和膨潤後の様子を光学顕微鏡で観察した。観察した様子を表1に示す。
また、実施例1の混合物の物性は表2の通り、表面積が大きく吸収特性に優れるものであった。また、図3の光学顕微鏡写真を見ると微粒子が固着していることが分かる。
本発明の実施例1で得られる混合物は、表面がアクリル酸(中和率0%)で表面処理されている。中和されていないアクリル酸部分により塩基性悪臭成分(例えば、アンモニア、アミン類)を中和することができる。さらに、表面積が大きい。よって、消臭性が高い。
また、吸水して膨潤後も微粒子が脱離していないことから、種々の環境下で用いられても性能を長く維持することができる。
Figure 2010094656
Figure 2010094656
本発明の吸水剤は強固に固着した微粒子が表面に存在し、表面積が大きいため吸水特性に優れる。そのため紙おむつ等として利用することができ、産業上有用である。
食塩水流れ誘導性(SFC)の測定に用いる測定装置の概略図である。 本発明の微粒子が固着した吸水剤のイメージ図である。 実施例1で得られる膨潤前の吸水剤を示す光学顕微鏡写真である。
符号の説明
31 タンク、
32 ガラス管、
33 0.69重量%塩化ナトリウム水溶液、
34 L字管、
35 コック、
40 容器、
41 セル、
42、43 金網、
44 膨潤したゲル、
45 ガラスフィルター、
46 ピストン、
47 穴、
48 捕集容器、
49 上皿天秤、

Claims (7)

  1. 酸基含有吸水性樹脂粒子の表面に、有機微粒子及び/又は無機微粒子が固着してなる吸水剤であって、該吸水剤の表面の酸基中和率は該吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率未満であることを特徴とする吸水剤。
  2. 前記吸水剤は酸基含有ラジカル重合性化合物を含む処理液で表面処理されたものであることを特徴とする請求項1に記載の吸水剤。
  3. 前記吸水性樹脂粒子内部の酸基中和率が40モル%を超えて90モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水剤。
  4. 前記処理液に含まれる酸基含有ラジカル重合性化合物の中和率が0〜30モル%であることを特徴とする請求項2又は3に記載の吸水剤。
  5. 前記吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は、150μm以上850μm以下であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の吸水剤。
  6. 前記微粒子の質量平均粒子径は150μm未満であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の吸水剤。
  7. 請求項1〜6までの何れか一つに記載の吸水剤を含む吸収性物品。
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