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JP2010086866A - 電極シートおよびその製造方法 - Google Patents

電極シートおよびその製造方法 Download PDF

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JP2010086866A JP2008256605A JP2008256605A JP2010086866A JP 2010086866 A JP2010086866 A JP 2010086866A JP 2008256605 A JP2008256605 A JP 2008256605A JP 2008256605 A JP2008256605 A JP 2008256605A JP 2010086866 A JP2010086866 A JP 2010086866A
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陽三 内田
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Abstract

【課題】電極シートの導電性の向上。
【解決手段】この電極シート100は、電極活物質を含む電極材料108が集電体311cに保持された電極シートである。集電体311cは、シート状の基材102と、該基材102の表面に設けられた中間層104、106とを備えている。中間層104、106は、導電性を有する金属からなる第1膜104と、金属炭化物からなる第2膜106とが、基材102の表面上にこの順で重なった積層構造を有している。そして、第2膜106の上に電極材料108が保持されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、電極活物質を含む電極材料が集電体の表面に塗工された電極シートに関する。かかる電極シートは、例えば、電池に用いられる。
電池(例えば、リチウムイオン二次電池などの二次電池)の構成要素として、電極活物質を含む電極材料が集電体の表面に保持された構成の電極シートを用いることが知られている。集電体としては、少なくともその表面部分が導電性を有する材料により構成されたものが用いられる。代表的な集電体として、アルミニウム(Al)等の導電性金属からなる箔状体(金属箔)が挙げられる。
ところで、電池の内部抵抗を低減して電池性能を向上させるためには、電極材料と集電体との間の導電性を向上させることが望ましい。しかし、金属箔の表面は圧延加工の際等に形成された酸化膜で覆われている場合があり、また金属表面は酸化されやすいので自然酸化膜も形成されやすい。このような酸化膜(すなわち金属酸化物)の存在は、電極材料と集電体の導電性を低下させる要因となり得る。
特許文献1には、集電体上に電極層を形成する工程の前に、減圧雰囲気中で、プラズマエッチング、スパッタエッチングおよびイオンビームエッチングのいずれか1つの方法を用いて集電体表面をエッチングし、集電体表面に導電性を有する被膜層を形成することが記載されている。この場合、エッチングによって集電体表面の酸化膜などが除去されるとともに、酸化膜などが除去された集電体上に良好な導電性を有する被膜層が形成されるので、後に集電体上に形成される電極層との間の導電性の向上を図ることができるとされている。
特開平11−250900号公報
しかし、特許文献1に記載の方法によって酸化膜を除去するには、相当の時間とエネルギを必要とする。しかも、せっかく相当の時間とエネルギを費やして酸化膜を除去しても、除去後の集電体を空気に触れる状態で放っておくと直ぐにまた酸化膜ができてしまう。このため集電体表面の酸化膜を完全に除去した状態で該集電体上に電極層を設けることは難しく、かかる酸化膜によって電極材料と集電体との導電性がある程度低下するのはやむを得ないとされているのが実情である。
本発明は、かかる酸化膜の影響を低く抑え、電極材料と集電体の導電性を良好な状態にすることのできる新たな電極シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、このような電極シートを用いてなる二次電池その他の電池ならびにその製造方法の提供である。さらに他の目的は、上記電池を用いた組電池および該組電池を有する車両を提供することである。
本発明に係る電極シートは、電極活物質を含む電極材料が集電体に保持されている。この電極シートでは、集電体は、シート状の基材と、該基材の表面に設けられた中間層とを備えている。かかる中間層は、導電性を有する金属からなる第1膜と、金属炭化物からなる第2膜とが基材の表面上にこの順で重なった積層構造を有している。そして、第2膜上に電極材料が保持されている。
かかる電極シートによれば、酸化され難い金属炭化物からなる第2膜が集電体表面(電極材料との界面)に配置されていることにより、この第2膜を介して電極材料と第1膜との導電性を良好な状態にすることができる。
上記基材は、例えば、中間層との界面に酸化膜を有する金属箔であり得る。この場合、集電体に外力が作用すると上記酸化膜に欠損が生じる。この際、酸化膜は中間層で被覆されているので、基材(金属箔)の表面が剥き出しになった構成の集電体とは異なり、欠損が生じた部位から露出した金属が再び酸化されることはない。かかる欠損部位は、第1膜と集電体の基材内部との導電性を良好な状態にするために役立ち得る。従って、本発明の構成によると、酸化膜の存在にかかわらず、電極材料と集電体との導電性を良好な状態にすることができる。換言すれば、酸化膜を除去するための時間とエネルギの一部または全部を省いても、電極材料と集電体との良好な導電性を実現することができる。すなわち、酸化膜を除去する処理を無くすか、簡易な処理(エッチング処理など)で済ませることによって、電極シートの生産性を向上させることができる。
第1膜の構成材料としては、例えば、Alを主成分とする金属を用いることができる。また、第2膜は、WCを主成分とする金属炭化物で形成することができる。また、基材としては、例えば、アルミニウム箔を好ましく採用することができる。
かかる電極シートは、正負の電極シートの間にセパレータを挟んで重ねた電極体を有する二次電池において、少なくとも正負いずれかの電極シートとして用いることができる。
以下、本発明の一実施形態に係る電極シートおよびその製造方法を図面に基づいて説明する。
電極シートは、電極活物質を含む電極材料が集電体の表面に塗工されている。集電体としては、例えば、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔がよく用いられている。かかる金属箔の表面はそのままの状態で放置すると酸化膜が形成される。酸化膜は、電極材料と集電体(金属箔)との導電性を低下させる場合がある。酸化膜を除去する処理を行ったうえで電極材料を塗工しようとしても、上記処理により露出した金属も空気に触れると直ぐに酸化されてしまうなど、集電体の表面の酸化膜が完全に除去された電極シートを得ることは難しい。そこで、本発明者は、酸化膜が残留していても、電極材料と集電体の導電性は向上させることができないかと考え、鋭意検討を重ねて本発明を創案した。
この実施形態では、電極シート100の集電体は、図1に示すように、シート状の基材102と、該基材102の表面に設けられた中間層104、106とを備えている。中間層104、106は、導電性を有する金属からなる第1膜104と、金属炭化物からなる第2膜106とが基材102の表面上にこの順で重なった積層構造を有している。そして、第2膜106上に電極材料108が保持されている。
なお、第1膜104、第2膜106はそれぞれ基材102に比べて格段に薄い薄膜であるが、図1では、図示の便宜上、第1膜104、第2膜106を実際よりも厚く描いている。
この実施形態では、集電体の基材102にはアルミニウム製の金属箔(アルミニウム箔)が用いられている。アルミニウム箔102は、放っておくと表面がすぐに酸化され、酸化膜(自然酸化膜)が形成される。アルミニウム酸化膜は、導電性が低く、また、少しの衝撃で欠損が生じ得る。
この電極シート100は、図1に示すように、集電体の基材としてのアルミニウム箔102の表面に、導電性を有する金属からなる第1膜104と、金属炭化物からなる第2膜106とを、この順に重ねた積層構造を有している。そして、当該第2膜106の表面に電極材料108を塗工している。
かかる構成の電極シート100によると、導電性金属からなる第1膜104の内部では良好な導電性が発揮される。また、第1膜104は第2膜106で覆われているので第1膜104の表面に酸化膜が形成されるのを防止し、第1膜104と第2膜106との良好な導電性を確保できる。また、第2膜106は、金属炭化物からなるので酸化され難く、電極材料108と第1膜104との導電性を良好な状態にできる。
第1膜104としては、例えば、アルミニウム(Al)が好ましく用いられる。アルミニウム(Al)は、第1膜104を形成する材料として安価に入手でき、製造コストを低く抑えることができる。なお、第1膜104は、アルミニウム(Al)に限らず、例えば、鉄(Fe)を主成分とする金属(例えば、ステンレス(SUS))を用いてもよい。第1膜104として用いられるステンレス(SUS)には、種々のステンレス鋼を採用でき、例えば、SUS316、SUS304などを用いることができる。これらのステンレス(SUS)は、電解液に対する耐食性が高いことから、第1膜104の構成材料として好適である。また、第1膜の構成材料としては、AlやSUSの他、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、クロム(Cr)などでもよい。これら以外のいわゆるバルブメタル(弁金属)を用いてもよい。
第2膜106としては、例えば、炭化タングステン(WC)を用いることができる。炭化タングステン(WC)は、導電性、耐酸性の点で、電極シート100の第2膜106に用いるのに好適である。なお、第2膜106に用いられる金属炭化物としては、炭化タングステン(WC)に限らず、例えば、炭化タンタル(TaC)、炭化ハフニウム(HfC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化モリブデン(MoC)、炭化バナジウム(VC)、炭化クロム(Cr)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)でもよい。また、これらの金属炭化物の何れかを主成分とする金属炭化物で形成してもよい。
この実施形態では、集電体の基材にアルミニウム箔102が採用されている。なお、一般に電池の集電体用として流通しているアルミニウム箔の表面には、ナノメートルオーダー(例えば概ね5nm程度)の厚みの酸化膜(Al)が形成されている。この実施形態では、かかる酸化膜102aが形成されたままのアルミニウム箔102を基材として使用することができる。
さらに、この実施形態では、第1膜104にアルミニウム(Al)が用いられ、第2膜106に炭化タングステン(WC)が用いられている。
第1膜104の厚さは、5nm〜1μm程度であればよく、適当な導電性を確保するべく好ましくは30nm〜100nm程度にするとよい。この実施形態では、概ね40nmにしている。なお、第1膜104の厚さは、第1膜104に用いられる金属の種類や、第2膜106、基材102の種類なども勘案して、適当に調整するとよい。また、第2膜106の厚さは、5nm〜50nmくらいであるとよく、この実施形態では、概ね10nmにしている。
かかる電極シート100では、シート状の基材102の表面に、減圧雰囲気中にて、導電性を有する金属からなる第1膜と、金属炭化物からなる第2膜とをこの順に形成するとよい。
図2は、かかる成膜工程の実施に好ましく使用可能な成膜装置10の一例を示している。この成膜装置10は、減圧室12と、減圧装置14と、処理雰囲気供給部16と、供給リール22と、膜形成ロール24と、巻取リール26と、第1膜形成部32、第2膜形成部34とを備えている。
減圧室12は、所望の耐圧性を有する気密な容器で構成されている。減圧装置14は、減圧室12から排気することで減圧室12内を減圧し、減圧雰囲気を形成する。処理雰囲気供給部16は、適宜、アルゴンなどの不活性ガスなど、減圧室12内に成膜形成に適した雰囲気を形成するのに必要な気体を供給する。
この実施形態では、集電体の基材102は帯状であり、供給リール22に巻き取られており、膜形成ロール24の外周に沿わせた後、巻取リール26に巻き取られる。
この実施形態では、第1膜形成部32は、スパッタリングによって、膜形成ロール24の外周に沿わせた基材102の表面に第1膜(図示省略)を形成する。第2膜形成部34は、基材102の経路において第1膜形成部32よりも下流側に配設されている。この第2膜形成部34は、スパッタリングによって、基材102に形成された第1膜(図示省略)の上に、第2膜(図示省略)を形成している。
なお、この実施形態では、かかる成膜工程において、第1膜104および第2膜106を形成する方法として、スパッタリングを採用している。
なお、このような第1膜104と第2膜106を形成する方法として、スパッタリング法による蒸着法では、減圧室(真空チャンバー)内に薄膜としてつけたい所定の金属種からなる蒸着用金属材料をターゲットとして設置する。そして、高電圧を印加して放電することでイオン化して加速された希ガス元素(スパッタガス、典型的にはアルゴン)をターゲットに衝突させる、又は直接イオン銃でスパッタガスイオンをターゲットに衝突させる。これにより、ターゲット原子を叩き出し、該ターゲット表面から叩き出されたターゲット原子を基材に堆積させて薄膜を形成する。かかるスパッタ蒸着法の方式として、上記スパッタガスをイオン化させる方法に応じて、直流スパッタ、高周波スパッタ、マグネトロンスパッタ、イオンビームスパッタ等が挙げられる。上記スパッタ蒸着法のいずれの方式を用いてもよいが、例えばマグネトロンスパッタ法は、スパッタガスのガス圧を広範囲に制御できる等の利点を有する。
また、成膜装置10については、図2に示すものに限定されず、このような蒸着法による金属中間層の形成は、バッチ処理方式又は連続処理方式の一般的な市販の真空蒸着装置を使用することで実施される。また、このような真空蒸着装置には、アッシング処理等の付随処理が同じ減圧室内で実施できる機能を備えていてもよい。この場合には、例えば、スパッタ蒸着前の金属箔体表面に対して、アルゴン等によるアッシング処理を実施することができるので好ましい。1〜5分程度のアッシング処理を行うとアルミニウムの金属箔体表面に付着している圧延油等を洗浄し得る効果が認められるからである。また、図示は省略するが、第1膜104を形成する処理の前に、同じ減圧室内で簡易なエッチング処理を実施してもよい。これにより、金属箔表面の酸化膜の一部または全部を簡易に除去でき、第1膜104の蒸着を良好に行なうことができる。
なお、第1膜104と第2膜106を形成する方法としては、スパッタリングに限定されず、例えば、真空蒸着、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマCVD、イオン注入などの方法を採用してもよい。
この実施形態では、図1に示すように、集電体の基材としてのアルミニウム箔102の表面に、導電性を有する金属からなる第1膜104と、金属炭化物からなる第2膜106とが、この順で重ねられている。そして、電極材料108は、かかる第2膜106の表面に保持されている。
なお、電極材料108を塗工する前に、第2膜106にコロナ放電処理を施しても良い。かかるコロナ放電処理は、窒素ガスと水素ガスの混合雰囲気下で施すと良い。これにより、第2膜106の表面に電極材料108が塗工する際、電極材料108の密着性を向上させることができる。
この電極シート100は、第2膜106が金属の炭化物からなり、酸化され難く、電極材料108と第1膜104との導電性を良好な状態にすることができる。
また、この実施形態では、電極シート100は、集電体の基材として、アルミニウム箔102が用いられている。アルミニウム箔102の表面には、酸化膜102aが形成されている。かかる酸化膜102aは、外力が加わると部分的に欠損が生じる。本発明者が推測するところでは、例えば、電極シート100は、電極材料108が塗工された後で、プレスされ、また、ガイドローラを転動する際などにも圧力が掛かる。このような圧力によって、酸化膜102aに欠損が生じる。酸化膜102aは第1膜104で被覆されているので、欠損が生じた部位が再び酸化されることはない。このため、かかる欠損部位を通じて第1膜104と集電体の基材102内部との導電性が良好な状態になると考えられる。
また、この場合、エッチングなどによって酸化膜102aを除去する必要は必ずしもなく、かかる酸化膜102aの存在にかかわらず、第1膜104と集電体の基材102内部との導電性を良好な状態にすることができる。すなわち、酸化膜102aが残留していても、電極材料108と集電体との所要の導電性は確保することができる。従って、エッチングなどによって酸化膜102aを除去する工程を無くしてもよく、あるいは簡易なエッチング処理で済ませてもよいので、電極シートの生産性を向上させることができる。
かかる電極シート100は、二次電池用の電極シートとして用いられる。二次電池の一態様として、捲回型の電極体を有する二次電池が挙げられる。かかる二次電池には、例えば、リチウムイオン二次電池(lithium-ion secondary battery)や、ニッケル水素二次電池(nickel-hydride secondary battery)などがある。以下、リチウムイオン二次電池を一例にして説明する。なお、ニッケル水素二次電池など他の二次電池の場合は、集電箔や電極活物質や電解液などを適宜変更するとよい。
リチウムイオン二次電池1000は、例えば、図4に示すように、矩形の金属製の電池ケース300に構成されている。捲回電極体310は当該電池ケース300に収容されている。
この実施形態では、捲回電極体310は、図5に示すように、帯状電極として、正極シート311と、負極シート313を備えている。また、帯状セパレータとして、第1セパレータ312と、第2セパレータ314を備えている。そして、正極シート311と、第1セパレータ312と、負極シート313と、第2セパレータ314の順で重ねられて巻き取られている。ここで、正極シート311と負極シート313は、それぞれ本発明に係る電極シートに相当する。正極シート311は正の電極シートであり、負極シート313は負の電極シートである。
正極シート311は、この実施形態では、集電体311cの両面に正極活物質(電極活物質)を含む電極材料311dが塗工されている。当該電極材料311dに含まれる正極活物質としては、例えば、3元系活物質(LiNiMnCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)などが挙げられる。
この実施形態では、集電体311cは、図1に示すように、アルミニウム箔からなる基材102の表面に、中間層として、導電性を有する金属(ここではAl)からなる第1膜104と、金属炭化物(ここではWC)からなる第2膜106とが、この順に重ねられた積層構造を有している。この正極シート311は、かかる第2膜106の表面に電極材料311dが塗工されている。
負極シート313は、この実施形態では、銅箔からなる帯状の集電体313cの両面に負極活物質(電極活物質)を含む電極材料313dが塗工されている。当該電極材料313dに含まれる負極活物質としては、例えば、グラファイト(Graphite)やアモルファスカーボン(Amorphous Carbon)などの炭素系材料、リチウム含有遷移金属酸化物や遷移金属窒化物等などが挙げられる。
なお、電極材料311d、313dは、例えば、水系または溶剤系のペーストに、電極活物質を混ぜ込んで、集電体311c、313cに塗工し、乾燥させるとよい。
セパレータ312、314は、イオン性物質が透過可能な膜であり、この実施形態では、ポリプロピレン製の微多孔膜が用いられている。
この実施形態では、電極材料311d、313dは集電体311c、313cの幅方向片側に偏って塗工されており、集電体311c、313cの幅方向反対側の縁部には塗工されていない。集電体311c、313cに電極材料311d、313dが塗工された部位を塗工部311a、313aといい、集電体311c、313cに電極材料311d、313dが塗工されていない部位を未塗工部311b、313bという。
捲回電極体310は、図5に示すように、正極シート311と、第1セパレータ312と、負極シート313と、第2セパレータ314とが順に重ねられた状態を示す幅方向の断面図である。正極シート311の塗工部311aと負極シート313の塗工部313aは、それぞれセパレータ312、314を挟んで対向している。図5に示すように、捲回電極体310の捲回方向に直交する方向(巻き軸方向)の両側において、正極シート311と負極シート313の未塗工部311b、313bが、セパレータ312、314からそれぞれはみ出ている。当該正極シート311と負極シート313の未塗工部311b、313bは、捲回電極体310の正極と負極の集電部311b1、313b1をそれぞれ形成している。
かかる捲回電極体310は、図4に示すように、電池ケース300に収容される。電池ケース300には、図4に示すように、正極端子301と負極端子303が設けられている。正極端子301は捲回電極体310の正極集電部311b1(図5参照)に電気的に接続されている。負極端子303は捲回電極体310の負極集電部313b1(図5参照)に電気的に接続されている。かかる電池ケース300には電解液が注入される。電解液は、適当な電解質塩(例えばLiPF等のリチウム塩)を適当量含むジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等の混合溶媒のような非水電解液で構成できる。
かかるリチウムイオン二次電池1000では、正極端子301と負極端子303を介して充放電が行なわれる。充放電時には、正極シート311の塗工部311aと負極シート313の塗工部313aの間で、帯状セパレータ312、314を通してリチウムイオンが行き来する。
以下、このリチウムイオン二次電池1000の正極シート311を説明する。
この実施形態では、正極シート311を構成する集電体311cは、図1に示すように、表面に酸化膜102aを有するアルミニウム箔102に、該酸化膜102aの上から、中間層として、導電性を有する金属からなる第1膜104と、金属炭化物からなる第2膜106とが、この順で重ねられた積層構造を有している。そして、かかる第2膜106の表面に電極材料311dが塗工されている。この正極シート311と、図6に示すように、表面に酸化膜102aを有するアルミニウム箔102に、該酸化膜102aを除去せず且つその上に第1膜104と第2膜106を形成することもせずに(すなわち、表面に酸化膜102aを有するアルミニウム箔102をそのまま集電体311cBとして使用し)、酸化膜102aの上から直接的に電極材料311dBが塗工された構成の電極シート100Bとを比較する。
図6に示される電極シート100Bは、アルミニウム箔102(集電体311cB)の表面に形成された酸化膜102aを未処理のまま、その上から直接的に電極材料311dが塗工されている。この場合は、アルミニウム箔102の表面に存在する酸化膜102aによって電極材料311dBとアルミニウム箔102(集電体311cB)との導電性が低下する。さらに、アルミニウム箔102の表面には、酸化膜102aだけでなく、圧延処理の際に用いられた圧延油が付着している場合があり、かかる圧延油(図示せず)も、電極材料311dBとアルミニウム箔102との導電性を低下させる要因となり得る。また、電極シート100Bの構成において、集電体311cBと電極材料311dBとの界面に存在する酸化膜102aに充放電による電位が繰り返し作用すると、電極材料311dBと集電体311cBとの接合力が低下したり、酸化膜102aが溶解したりするなど、電池の経年的な劣化が早く進行する場合がある。
これに対して、図1に示す正極シート311では、第1膜104と第2膜106を形成する成膜工程において、アルミニウム箔102の表面に付着した圧延油などを除去することができる。また、アルミニウム箔102の表面に上述した第1膜104と第2膜106が順に形成されているので、この第2膜106を酸化防止層として利用することにより、第1膜104の酸化を防止することができる。また、集電体311cの表面には、第2膜106として、基材のアルミニウム箔102よりも硬い金属炭化物(ここではWC)からなる薄膜が形成されている。このため、電極シート100の捲回工程やプレス工程などの後工程でアルミニウム箔102の表面に外力が作用し易く、この際、アルミニウム箔102の表面に形成された酸化膜102aに欠損が生じ易いと考えられる。このため、当該酸化膜102aの欠損や、第1膜104、第2膜106を通じて、電極材料108とアルミニウム箔102との導電性を良好な状態にすることができる。
また、アルミニウム箔102および第1膜104は、第2膜106により覆われており、再び酸化膜が形成され難い。また、電極材料108とアルミニウム箔102とが直接接合している場合に比べて、充放電時にアルミニウム箔102に作用する電位も低く抑えられる。このため、アルミニウム箔102の表面の酸化膜102aが溶解する可能性も低く、電池の経年的な劣化の進行を抑え、電池の長寿命化を図ることができる。
かかる二次電池は、模式的に示すと図7に示すようになる。図7中、符号311は正極の電極シートを、符号313は負極の電極シートを示している。また、符号312、314はセパレータを示している。また、符号311cは正極の集電体を、符号313cは負極の集電体をそれぞれ示している。また、符号311dは正極の電極材料を、符号311d1は正極活物質をそれぞれ示しており、符号313dは負極の電極材料を、符号313d1は負極活物質をそれぞれ示している。この実施形態では、上述したように正極の電極シート311に、本発明にかかる電極シート100の構造を採用しており、符号104は第1膜を示し、符号106が第2膜を示している。
正極の電極材料311dと負極の電極材料313dとは、セパレータ312又は314を介して重ねられている。そして、リチウムイオン二次電池では、充放電時に、かかる正極の電極材料311dと負極の電極材料313dとの間でリチウムイオンが移動する。また、図8は、かかるリチウムイオン二次電池の等価回路を示している。ここで、Rsは、正極の集電体を流れる直流抵抗を示している。R1は正極の反応抵抗を示し、Wは、正極の拡散抵抗を示している。ここで拡散抵抗とは、活物質や電解液中のリチウムイオンが拡散移動するときの抵抗をいう。また、R2は、負極の反応抵抗を示している。また、C1は、正極の静電容量(キャパシタンス)を示しており、C2は、負極の静電容量(キャパシタンス)を示している。
本発明者の得ている知見では、かかる二次電池の抵抗は、例えば、常温(20℃)では、正極の反応抵抗R1が14%、負極の反応抵抗R2が11%、正極の拡散抵抗Wが36%、直流抵抗Rsが39%である。また、低温(−30℃)では、正極の反応抵抗R1が55%、負極の反応抵抗R2が42%、正極の拡散抵抗Wが2%、直流抵抗Rsが1%である。
この実施形態では、正極の電極シート311に、本発明にかかる電極シート100の構造を採用しており、正極の電極材料311dと集電体311cとの導電性が良いので、正極の反応抵抗R1や直流抵抗Rsを小さくすることができる。
例えば、正極の集電体311cの基材(アルミニウム箔102)を未処理のまま電極材料311dを塗工した場合(比較例)と、この実施形態のように、アルミニウム箔102の表面にAlからなる第1膜104と、WCからなる第2膜106を順に形成した場合(実施例)とでは、この実施形態のほうが正極の反応抵抗R1や直流抵抗Rsを小さくすることができる。
本発明者が得ている実験結果の一例を示す。この場合、図9のように、常温(25℃)でのナイキストプロットにおいて、実施例のプロットAは、比較例のプロットBに比べて良好な結果を示す。また、常温(25℃)では、実施例は比較例に比べて、二次電池のセル内部抵抗を10.8%程度低減する。また、この場合、低温(−30℃)におけるナイキストプロットは、図10のようになり、この場合も実施例のプロットAは、比較例のプロットBに比べて良好な結果を示す。また、低温(−30℃)では、実施例は比較例に比べて、二次電池のセル内部抵抗を6.5%程度低減する。
以上のように、本発明にかかる電極シート100は、二次電池のセル内部抵抗を低減させる効果が認められる。
以上の実施形態では、正極シート311に、本発明にかかる電極シート100を適用した。本発明にかかる電池は、少なくとも正負いずれかの電極シートにおいて、図1に示すような構成の電極シート100を適用するとよい。
例えば、集電体の基材102は、上述した実施形態ではアルミニウム箔であるが、アルミニウム箔に限らず、種々の金属箔、例えば、銅箔であってもよい。例えば、リチウムイオン二次電池で、電極シート100が正極に用いられる場合には、集電体の基材102に、アルミニウム箔を用いるとよい。これに対して、電極シート100が負極に用いられる場合には、集電体の基材102に、銅箔を用いるとよい。
また、集電体の基材は金属に限られず、例えば図3に示すように、樹脂製の基材102Aであってもよい。かかる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)を採用することができる。このように樹脂製の基材102Aを備える集電体では、導電性金属からなる第1膜104Aの表面が第2膜106Aによって覆われている。従って、第1膜104Aの表面に酸化膜が形成されることを防止し、電極材料108Aと第1膜104Aとの良好な導電性を確保することができる。かかる構成では、主として第1膜104Aによって集電体の導電性を確保するとよく、所望の導電性が得られるように第1膜104の材質や厚さを適当なものにするとよい。
図1または図3に示す電極シート100、100Aを、二次電池の正の電極シート(正極シート)として用いる場合、当該電極シートの第1膜104、104Aは、二次電池の充電時における正極電位の下で溶解しない金属種とすることが好ましい。好ましい金属種は、二次電池の種類にもよるが、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、及びタングステン(W)から成る群から選択される1種又は2種以上であるとよい。
また、図1または図3に示す電極シート100、100Aを、二次電池の負の電極シート(負極シート)として用いる場合には、当該電極シートの第1膜104、104Aは、二次電池の放電時における負極電位の下で溶解しない金属種、または充電時における負極電位の下でリチウムと合金化しない金属種により構成してもよい。好ましい金属種は、二次電池の種類にもよるが、例えば、銅(Cu)及び/又はニッケル(Ni)であるとよい。
かかる電極シートは、上述したように、電極シートとセパレータを挟んで重ねた電極体を有する二次電池の電極シートとして好適である。かかる二次電池としては、例えば、図4に示すように、捲回電極体310を構成し、電池ケースに収容した電池でもよい。また、図示は省略するが、電極シートとセパレータを挟んで重ねた積層型の電極体を、ラミネートフィルムで覆った、いわゆるラミネート型の二次電池でもよい。
また、かかる二次電池1000は、例えば、図11に示すように、複数個が組み合わされて組電池1000Aが構成され、車両1の電源として搭載される。車両用の電源は、充電や放電が繰り返されるが、上述した電極シートの製造方法によれば、二次電池の性能向上および長寿命化を図ることができるので、車両用の電源として用いられる二次電池の製造方法および製造装置として有益である。
以上、電極シートの製造方法および製造装置の一例を例示したが、本発明に係る電極シートの製造方法および製造装置は、上述した実施形態に限定されない。
例えば、本発明の電極シートの製造方法を利用して製造された二次電池については、車両に電源として搭載される用途を例示したが、本発明は、二次電池の性能向上および長寿命化に寄与する。このため、本発明は、車両用に限らず種々の用途に用いられる二次電池の製造方法に好適である。
本発明の一実施形態に係る電極シートの断面図。 成膜装置の一例を示す図。 本発明の他の実施形態に係る電極シートの断面図。 二次電池の一例を示す図。 捲回電極体の一例を示す図。 比較例に係る電極シートの断面図。 二次電池の構造を示す図。 二次電池の等価回路を示す回路図。 常温でのナイキストプロットを示す図。 低温でのナイキストプロットを示す図。 二次電池を電源として搭載した車両を示す側面図。
符号の説明
1 車両
10 成膜装置
12 減圧室
14 減圧装置
16 処理雰囲気供給部
22 供給リール
24 膜形成ロール
26 巻取リール
32 第1膜形成部
34 第2膜形成部
100、100A 電極シート(実施例)
100B 電極シート(比較例)
102 アルミニウム箔(集電体の基材)
102A 集電体の基材
102a 酸化膜
104、104A 第1膜
106、106A 第2膜
108、108A 電極材料
300 電池ケース
301 正極端子
303 負極端子
310 捲回電極体
311 正極シート(電極シート)
311a 塗工部
311b 未塗工部
311b1 正極集電部
311c 集電体(正極集電体)
311d 電極材料
312、314 セパレータ
313 負極シート
313a 塗工部
313b 未塗工部
313b1 負極集電部
313c 集電体(負極集電体)
313d 電極材料
1000 リチウムイオン二次電池
1000A 組電池

Claims (15)

  1. 電極活物質を含む電極材料が集電体に保持された電極シートであって、
    前記集電体は、シート状の基材と、該基材の表面に設けられた中間層とを備え、
    前記中間層は、導電性を有する金属からなる第1膜と、金属炭化物からなる第2膜とが前記基材の表面上にこの順で重なった積層構造を有し、
    前記第2膜上に電極材料が保持されている、電極シート。
  2. 前記基材は、前記中間層との界面に酸化膜を有する金属箔である、請求項1に記載の電極シート。
  3. 前記第1膜は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属からなる、請求項1又は2に記載の電極シート。
  4. 前記第2膜は、炭化タングステン(WC)を主成分とする金属炭化物で形成されている、請求項1から3の何れかに記載の電極シート。
  5. 前記基材は、アルミニウム箔である、請求項1から4の何れかに記載の電極シート。
  6. 正負の電極シートの間にセパレータを挟んで重ねた電極体を有する二次電池であって、
    少なくとも正負いずれかの電極シートとして、請求項1から5の何れかに記載の電極シートを有する、二次電池。
  7. 請求項6に記載の二次電池が複数個組み合わされた組電池。
  8. 請求項7に記載の組電池が電源として搭載された車両。
  9. 電極活物質を含む電極材料が集電体の表面に塗工された電極シートを製造する電極シートの製造方法であって、
    前記集電体は、シート状の基材と、該基材の表面に設けられた中間層とを備え、
    前記シート状基材の表面に、減圧雰囲気中にて、導電性を有する金属からなる第1膜と、金属炭化物からなる第2膜とをこの順に形成する成膜工程と、
    前記成膜工程で形成された第2膜の表面に電極材料を塗工する塗工工程と
    を含む、電極シートの製造方法。
  10. 前記基材は、表面に酸化膜を有する金属箔であり、該酸化膜の上から前記第1膜を形成する、請求項9に記載の電極シートの製造方法。
  11. 前記成膜工程は、真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、プラズマCVD、イオン注入のうち何れかの方法によって、前記第1膜と第2膜を形成する、請求項9又は10に記載の電極シートの製造方法。
  12. 前記第1膜は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属からなる、請求項9から11の何れかに記載の電極シートの製造方法。
  13. 前記第2膜は、炭化タングステン(WC)を主成分とする金属炭化物で形成されている、請求項9から12の何れかに記載の電極シートの製造方法。
  14. 前記基材は、アルミニウム箔である、請求項9から13の何れかに記載の電極シートの製造方法。
  15. 正負の電極シートの間にセパレータを挟んで重ねた電極体を有する電池の製造方法であって、
    少なくとも正負いずれかの電極シートの製造方法に、請求項9から14の何れかに記載の電極シートの製造方法を含む、電池の製造方法。
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