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JP2010065502A - 構造物 - Google Patents

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JP2010065502A JP2008235151A JP2008235151A JP2010065502A JP 2010065502 A JP2010065502 A JP 2010065502A JP 2008235151 A JP2008235151 A JP 2008235151A JP 2008235151 A JP2008235151 A JP 2008235151A JP 2010065502 A JP2010065502 A JP 2010065502A
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Abstract

【課題】免震装置の免震効果を阻害することなく、ロッキング及び転倒モーメントに伴う引き抜き力に抵抗できるとともに、過大変形時にフェールセーフ機構を有する構造物を得る。
【解決手段】建物10は、一般的な変形時の水平剛性が、免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下で、過大変形時の水平剛性が免震装置16より大きい支持手段18を有する。ここで、建物10に水平力が作用したとき、一般的な変形時では、支持手段18の水平剛性が免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下であるため、免震装置16の水平方向のせん断変形が支持手段18によって阻害されず、十分に免震効果が得られる。また、建物10に引き抜き力が発生しても、支持手段18が引き抜き力(引張力)に抵抗するため、建物10の倒壊を防ぐことができる。さらに、過大変形時には、支持手段18の水平剛性が増大し、変形を抑制することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、上部構造体と下部構造体の間に免震装置が設けられた構造物に関する。
従来、上部構造体と下部構造体の間に免震装置を設けた構造物がある。免震装置は、通常、上部構造体の長期荷重を支える支承部(例えば、積層ゴム支承)と、地震エネルギーを吸収する減衰部(例えば、オイルダンパー)と、上部構造体を元の水平位置に戻す復元部(例えば、積層ゴム支承)とによって構成されており、地震時における上部構造体の揺れを長周期化して応答加速度を低減することにより免震効果を発揮している。このような構造物に免震装置の他に付加材を設けた例として、次のものがある(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1の構造物は、免震装置(積層ゴム)を構造物の内側の柱に配置し、構造物の外側(外周側)の柱に、付加材として一般の柱よりも靭性の高い柱を用いている。特許文献1の構造物では、免震装置で地震の横揺れエネルギーを吸収すると共に、靭性の高い柱によってダンパー効果を発揮させ、水平変位を低減している。
一方、特許文献2の構造物は、構造物の複数の柱に免震装置(積層ゴム)を設け、さらにこれらの柱よりも外側に、上部構造体と下部構造体を繋ぐケーブル材を設けている。特許文献2の構造物では、積層ゴムに大きな引張力が作用するのを抑えると共に、上部構造体と下部構造体の水平方向の相対移動を許容して、積層ゴムによる長周期化を阻害しないようにしている。特許文献1の構造物及び特許文献2の構造物は、いずれも、ロッキング(免震建物が地震動を受けて振動する時、上部構造体全体が回転する現象)、及び転倒モーメント(上部構造体の水平力により免震装置に作用するモーメント)に伴う引き抜き力に抵抗可能な構造となっている。
しかし、特許文献1の構造物は、一般の柱に比べて靭性の高い柱を設けてあるだけであり、免震装置の水平剛性を考慮したものではない。このため、免震装置の水平剛性が高くなり、免震効果が阻害される。
また、特許文献2の構造物は、ケーブル材が鉛直荷重を負担するものではないため、柱の他にケーブル部材を設けなくてはならなかった。
特開2000−64653 特開2002−138706
本発明は、免震装置の免震効果を阻害することなく、ロッキング及び転倒モーメントに伴う引き抜き力に抵抗できるとともに、免震装置の過大な変形を抑制する機構を有する構造物を得ることを目的とする。
本発明の請求項1に係る構造物は、下部構造体と、前記下部構造体の上側に構築された上部構造体と、前記下部構造体と前記上部構造体の間に設けられた免震装置と、前記下部構造体と前記上部構造体とを連結して連結間の圧縮及び引張方向の変形に抵抗をして、水平剛性が、一般的な変形時では前記免震装置の水平剛性と同等又はそれ以下であり、過大変形時では前記免震装置の水平剛性よりも大きな剛性となる支持手段と、を有する。
上記構成によれば、構造物に水平力が作用していないときは、免震装置及び支持手段によって上部構造体の鉛直荷重が負担され、支持されている。
一方、地震等により構造物に水平力が作用すると、免震装置が上部構造体の固有周期を長くして免震効果を発揮する。ここで、構造物の振動の初期状態では、支持手段の水平剛性が、免震装置の水平剛性と同等又はそれ以下であるため、免震装置の水平方向のせん断変形が支持手段によって阻害されない。これにより、免震装置が十分にせん断変形され免震効果が得られる。
続いて、地震動が続くと、構造物にロッキング及び転倒モーメントによる引き抜き力が発生するが、上部構造体と下部構造体に連結された支持手段が引き抜き力(引張力)に抵抗するため、免震装置の引き抜き力を抑制することができる。さらに続いて、過大な変形が生じる場合、支持手段が免震装置の水平剛性よりも大きな水平剛性をもつため、水平変形を抑制することができる。
本発明の請求項2に係る構造物は、前記免震装置が内側に配置され、前記支持手段が最外周に配置されている。この構成によれば、効果的に引き抜き力に抵抗できる。
本発明の請求項3に係る構造物は、前記支持手段は、前記下部構造体と前記上部構造体の少なくとも一方にピンで連結された支持柱である。この構成によれば、支持柱をピンで下部構造体と上部構造体の少なくとも一方に連結するだけでよいので、構造物の施工が容易となる。
本発明の請求項4に係る構造物は、前記支持柱は、一端が前記下部構造体に第1ピンで連結され、他端が前記上部構造体に第2ピンで連結され、前記第1ピンと前記第2ピンが、平面視にて直交配置されている。
上記構成によれば、一例として、第1ピンによって支持柱がY方向に回転可能となり、支持柱のY方向の水平剛性が低くなっている。さらに、第2ピンによって支持柱がX方向に回転可能となり、支持柱のX方向の水平剛性が低くなっている。これにより、X方向、Y方向いずれの方向の振動にも対応可能となる。
本発明の請求項5に係る構造物は、前記上部構造体の柱1本に対し、前記支持手段を複数設けている。この構成によれば、支持手段の数を変更できるため、上部構造体の大きさに合わせて支持手段を設けることができる。また、一般的変形に対してピンを使用することなく、支持柱の水平剛性の増大を低く抑えることができる。
本発明の請求項6に係る構造物は、前記支持柱と前記上部構造体の柱の間に、前記上部構造体の水平方向の振動を減衰させる減衰手段が架設されている。この構成によれば、構造物の振動を減衰手段で抑えることができる。
本発明は、上記構成としたので、免震装置の免震効果を阻害することなく、ロッキング及び転倒モーメントに伴う引き抜き力に抵抗できる。また、免震装置の限界変形を超えるような過大地震に対して、過大変形を抑制することができる。
本発明の構造物の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1には、地盤(図示省略)上に構築された建物10の一部が示されている。建物10は、地盤上に構築された下部構造体12と、下部構造体12の上側に構築された上部構造体14と、下部構造体12と上部構造体14の間に設けられた免震装置16と、下部構造体12と上部構造体14とを連結する支持手段18(18A、18B)とを有している。
下部構造体12は、地盤に形成された杭(図示省略)上に、複数の柱壁20と複数の梁22が組み上げられ固定されることで構築されている。同様にして、上部構造体14は、複数の柱24と複数の梁26が組み上げられ固定されることで構築されている。
下部構造体12と上部構造体14の間は、建物10の免震が行われる免震層Lとなっている。この免震層Lにおいて、下部構造体12の上面から上方に向けて所定の大きさの台座部34が突設されている。台座部34上には、複数の免震装置16が取付けられている。
免震装置16は、円板状の下フランジ鋼板16A及び円板状の上フランジ鋼板16Cを有しており、下フランジ鋼板16Aと上フランジ鋼板16Cの間に積層ゴム16Bが設けられた構成となっている。下フランジ鋼板16Aは、ボルト締結等により台座部34に固定されている。
一方、上フランジ鋼板16Cの上方には、建物10の平断面内中央で略水平方向に広がるコンクリート造の床版30が設けられており、床版30の下面から下方に向けて台座部34と対向する位置に、複数の取付部32が突設されている。ここで、上フランジ鋼板16Cは、ボルト締結等により取付部32に固定されている。また、床版30の上面には、複数の柱28が立設されており、柱28の上端が、上部構造体14の梁26に接合されている。なお、柱28、床版30、及び取付部32は、上部構造体14の一部を構成するものである。
床版30の外側で且つ建物10の平断面最外周位置では、下部構造体12の梁22上に複数の支持手段18が立設されている。ここでは、複数の支持手段18のうち、支持手段18A、18Bについて説明する。
支持手段18Aは、建物10の正面視にて左側端部に位置しており、柱部36Aを有している。柱部36Aの下端には、下部構造体12にピン連結される第1連結部36Bが設けられており、柱部36Aの上端には、上部構造体14にピン連結される第2連結部36Cが設けられている。
図2に示すように、下部構造体12の最上部にある梁22上には、2枚のプレート材40A、40Bが所定の隙間をあけて立設されている。プレート材40A、40Bは、図2の手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。また、柱部36Aの底面には、2枚のプレート材42A、42Bが、プレート材40A、40Bの隙間よりも狭い所定の隙間をあけて立設されている。プレート材42A、42Bは、図2の手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。
ここで、プレート材40A、40Bの間にプレート材42A、42Bが差し込まれ、それぞれに形成された貫通穴の位置を合わせてピン44を連通させることにより、下部構造体12に対して柱部36Aが回転可能に連結されている。なお、柱部36Aの回転方向は、プレート材40A、40B、42A、42Bの面内方向(+R、−R方向)となっている。
一方、上部構造体14の最下部にある梁26の下面には、2枚のプレート材46A、46Bが所定の隙間をあけて立設されている。プレート材46A、46Bは、図2の手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。また、柱部36Aの上面には、2枚のプレート材48A、48Bが、プレート材46A、46Bの隙間よりも狭い所定の隙間をあけて立設されている。プレート材48A、48Bは、図2の手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。
ここで、プレート材46A、46Bの間にプレート材48A、48Bが差し込まれ、それぞれに形成された貫通穴の位置を合わせてピン50を連通させることにより、上部構造体14に対して柱部36Aが回転可能に連結されている。なお、柱部36Aの回転方向は、プレート材46A、46B、48A、48Bの面内方向(+R、−R方向)となっている。
図1に示すように、支持手段18Bは、建物10の正面視にて右側端部に位置しており、支持手段18Aと同様に柱部36Aを有している。柱部36Aの下端には、下部構造体12にピン連結される第1連結部36Bが設けられており、柱部36Aの上端には、上部構造体14にピン連結される第2連結部36Cが設けられている。
上記構成により、支持手段18A、18Bの各柱部36Aが回転することで、上部構造体14が下部構造体12に対して相対移動可能となっている。なお、支持手段18A、18Bは、水平方向の初期剛性(免震装置16がせん断変形を開始するときまでの剛性)が免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下となるように、予め設定され構築されている。
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
図3(a)に示すように、地震、風等による水平力(矢印X方向の力)が建物10に作用していない通常時には、支持手段18A、18B、及び複数の免震装置16が、上部構造体14による鉛直荷重を支持している。
続いて、図3(b)に示すように、地震、風等によって建物10に水平力が作用して、スウェイ(上部構造体14のスライド移動)が発生すると、上部構造体14の下部構造体12に対する水平変位uが大きくなる。このとき、免震装置16がせん断変形する。
ここで、建物10では、支持手段18A、18Bの初期水平剛性が、免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下であるため、免震装置16の水平方向のせん断変形が支持手段18A、18Bによって阻害されない。これにより、免震装置16が十分にせん断変形され、免震効果が得られる。
さらに地震動が続くと、建物10にロッキング(引き抜き動作)及び転倒モーメントによる引抜力が発生する。ここで、支持手段18A、18Bが、第1連結部36B、第2連結部36Cの回転によりスウェイに追従しつつ、ロッキング及び転倒モーメントによる引抜力(引張力・圧縮力)に抵抗する。
建物10が極大地震や長周期地震動を受けた場合は、傾斜した支持手段18A、18Bの引張力による水平抵抗により、建物10の過大な水平変位が抑制されることになる。
このように、建物10では、支持手段18A、18Bが初期水平剛性にほとんど寄与しないので、免震装置16の免震効果がほとんど阻害されない。また、鉛直力を支持する支持手段18A、18Bが、そのまま建物10の引き抜き抵抗要素となるので、大きな引抜力に耐えることができる。さらに、建物10の水平変位uが過大に大きくなると、支持手段18A、18Bの軸力の水平成分も大きくなるので、過大な水平変位が抑制される。
また、建物10では、支持手段18A、18Bが最外周に配設されているため、中央に支持手段を設けたものと比較すると、効果的に引き抜き力に抵抗できる。
図4は、通常免震(免震装置16又は柱で構成され支持手段18A、18Bの無いもの)の建物の免震層と、本構成の建物10の免震層Lについて、免震層の上部に鉛直力を載荷した上で水平力を漸増載荷し、水平力Fと免震層の水平変位uの関係を求めたグラフを模式化したものである。なお、グラフA(実線)が、本構成の建物10の免震層Lについての結果で、グラフB(破線)が、通常免震の建物の免震層についての結果である。
図4に示すように、水平変位uがu1までの領域では、本構成の平均的な剛性が通常免震の水平剛性F1/u1と同程度で、通常免震と同等の免震効果を発揮することが分かる。また、支持手段18A、18Bは、初期水平剛性をほとんど持たない上、圧縮力が発生している状態においては、傾きによって負剛性側に寄与し、支持手段18A、18Bの負担鉛直荷重が免震装置16に移行する。
ここで、免震装置16の限界の水平変位をu2とすると、支持手段18A、18Bは、引張力が作用し、大きな水平剛性により水平変位を抑制することが分かる。
水平変位uがu2より大きくなる極大地震や長周期地震時の領域では、通常免震の構成は、過大な変形に対応することができない。一方、本構成では、傾斜した支持手段18A、18Bの引張力により高い水平剛性を有しているため、極大地震や長周期地震時に過大な変形を抑制することができ、いわゆるフェールセーフ機能を有している。
次に、本発明の構造物の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図5(a)、(b)には、地盤(図示省略)上に構築された建物60の一部が、X方向とY方向の2方向で示されている。建物10は、下部構造体12と、上部構造体14と、下部構造体12と上部構造体14の間に設けられた免震装置16と、下部構造体12と上部構造体14とを連結する複数の支持手段62とを有している。
免震層Lの床版30の外側で且つ建物60の平断面最外周位置では、下部構造体12の梁22上に複数の支持手段62が立設されている。なお、図5(a)、(b)では、複数の支持手段62のうち、X方向は支持手段62A、62B、Y方向は支持手段62B、62Cについて表示しており、他の支持手段の表示を省略している。また、支持手段62A、62B、62Cは同様の構成であるため、以後は支持手段62Aについて説明し、支持手段62B、62Cの説明を省略する。
支持手段62Aは、建物60の正面視(XZ面)にて左側端部に位置しており、柱部64Aを有している。柱部64Aの下端には、下部構造体12にピン連結される第1連結部64Bが設けられており、柱部64Aの上端には、上部構造体14にピン連結される第2連結部64Cが設けられている。
図6に示すように、下部構造体12の最上部の梁22上には、プレート材66A、66Bが所定の隙間をあけて立設されている。プレート材66A、66Bは、矢印X方向手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。また、柱部64Aの底面には、2枚のプレート材68A、68Bが、プレート材66A、66Bの隙間よりも狭い所定の隙間をあけて立設されている。プレート材68A、68Bは、矢印X方向手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。
ここで、プレート材66A、66Bの間にプレート材68A、68Bが差し込まれ、それぞれに形成された貫通穴の位置を合わせて第1ピン63を連通させることにより、下部構造体12に対して柱部64Aが矢印Y方向に回転可能に連結されている。
一方、上部構造体14の最下部にある梁26下面には、プレート材66C、66Dが所定の隙間をあけて立設されている。プレート材66C、66Dは、矢印Y方向手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。また、柱部64Aの上面には、2枚のプレート材68C、68Dが、プレート材66C、66Dの隙間よりも狭い所定の隙間をあけて立設されている。プレート材68C、68Dは、矢印Y方向手前側と奥側に並列配置(対向配置)されており、それぞれに同じ大きさの貫通穴が形成されている。
ここで、プレート材66C、66Dの間にプレート材68C、68Dが差し込まれ、それぞれに形成された貫通穴の位置を合わせて第2ピン65を連通させることにより、上部構造体14に対して柱部64Aが矢印X方向に回転可能に連結されている。なお、第1ピン63と第2ピン65は、それぞれの中心軸が平面視にて直交配置となっている。
このように、矢印X方向では、支持手段62A〜62Cの第1連結部64Bが回転不能となっており、第2連結部64Cが回転可能となっている。一方、矢印Y方向では、支持手段62A〜62Cの第1連結部64Bが回転可能となっており、第2連結部64Cが回転不能となっている。
なお、図5(a)、(b)において、支持手段62A〜62Cは、水平方向の初期剛性が免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下となるように、予め設定され構築されている。
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
図5(a)、(b)に示すように、地震、風等による水平力(矢印X、Y方向の力)が建物60に作用していない通常時には、支持手段62A〜62C、及び複数の免震装置16が、上部構造体14による鉛直荷重を支持している。
続いて、図7(a)に示すように、地震、風等によって建物60に水平力が作用して、矢印X方向のスウェイ(上部構造体14のスライド移動)が発生したとする。ここで、柱部64Aは、第1連結部64BでX方向に回転不能であり、第2連結部64CでX方向に回転可能となっているため、第2連結部64Cにおいて回転移動することになる。これにより、上部構造体14の下部構造体12に対するX方向の水平変位がu3となる。このとき、免震装置16の積層ゴム16Bがせん断変形する。
同様にして、図7(b)に示すように、地震によって建物60に水平力が作用して、矢印Y方向のスウェイ(上部構造体14のスライド移動)が発生したとする。ここで、柱部64Aは、第2連結部64CでY方向に回転不能であり、第1連結部64BでY方向に回転可能となっているため、第1連結部64BにおいてY方向に回転移動することになる。これにより、上部構造体14の下部構造体12に対するY方向の水平変位がu4となる。このとき、免震装置16の積層ゴム16Bがせん断変形する。
ここで、建物60では、支持手段62A〜62Cの初期水平剛性が、免震装置16の水平剛性と同等であるため、免震装置16の水平方向(矢印X方向又は矢印Y方向)のせん断変形が、支持手段62A〜62Cによって阻害されない。これにより、免震装置16が十分にせん断変形され、免震効果が得られる。
図7(a)、(b)に示す状態において、さらに地震動が続くと、建物60にロッキング(引き抜き動作)及び転倒モーメントによる引抜力が発生する。ここで、支持手段62A〜62Cが、第1連結部64B又は第2連結部64Cの回転によりスウェイに追従しつつ、ロッキング及び転倒モーメントによる引抜力(引張力・圧縮力)に抵抗するため、建物60の倒壊を防ぐことができる。
なお、建物60が極大地震や長周期地震動を受けた場合は、傾斜した支持手段62A〜62Cの引張力による水平抵抗により、建物60の過大な水平変位が抑制されることになる。
このように、支持手段62A〜62Cが初期水平剛性にほとんど寄与しないので、免震装置16の免震効果がほとんど阻害されない。また、鉛直力を支持する支持手段62A〜62Cが、そのまま建物60の引き抜き抵抗要素となるので、大きな引抜力に耐えることができる。さらに、建物60の水平変位uが大きくなると、支持手段62A〜62Cの軸力の水平成分も大きくなるので、過大な水平変位が抑制される。
また、第1ピン63によって支持柱がY方向に回転可能となり、支持柱のY方向の水平剛性が低くなっている。そして、第2ピン65によって支持柱がX方向に回転可能となり、支持柱のX方向の水平剛性が低くなっている。これにより、X方向、Y方向いずれの方向の振動にも対応することができる。
なお、上記のように、支持手段62A〜62Cを下部構造体12と上部構造体14の一方に、第1ピン63又は第2ピン65で連結しても免震効果が得られるので、建物60の施工が容易となる。
次に、本発明の構造物の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図1には、地盤(図示省略)上に構築された建物70の一部が示されている。建物70は、第1実施形態の建物10(図1参照)の支持手段18に換えて、複数の支持手段74A、74Bを設けたものである。
支持手段74A、74Bは、柱であり、床版30の外側で且つ建物70の平断面最外周位置において、下部構造体12の上面の梁22上と、上部構造体14の下面の梁26とに接合され立設されている(ピン連結ではない)。また、支持手段74は、第1実施形態の柱部36Aよりも細い柱(座屈の可能性がある場合は、支持手段74の周囲を座屈補剛する)で構成され、水平方向の初期剛性が免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下であり免震装置16の免震効果を阻害せず、且つ上部構造体14の鉛直荷重は支持する曲げ剛性の小さい柱となっている。
ここで、上部構造体14の柱24の1本に対して、2つの支持手段74A、74Bが設けられており、支持手段74A、74Bによって、上部構造体14を支持する支持部72(72A、72B)が構成されている。なお、支持部72は建物70に複数設けられているが、支持部72A(左側)、72B(右側)のみを表示してある。
次に、本発明の第3実施形態の作用について説明する。
図9(a)に示すように、地震による水平力(矢印X方向の力)が建物70に作用していない通常時には、支持手段74A、74B、及び複数の免震装置16が、上部構造体14による鉛直荷重を支持している。
続いて、図9(b)に示すように、地震によって建物70に水平力が作用して、スウェイ(上部構造体14のスライド移動)が発生すると、上部構造体14の下部構造体12に対する水平変位u5が大きくなる。このとき、免震装置16の積層ゴム16Bがせん断変形する。
ここで、建物70では、支持手段74A、74Bの水平剛性が、免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下であるため、免震装置16の水平方向のせん断変形が支持手段74A、74Bによって阻害されない。これにより、免震装置16が十分にせん断変形され、免震効果が得られる。
さらに地震動が続くと、建物70にロッキング(引き抜き動作)及び転倒モーメントによる引抜力が発生する。ここで、支持手段74A、74Bが、スウェイに追従しつつ、ロッキング及び転倒モーメントによる引抜力(引張力・圧縮力)に抵抗するため、建物70の倒壊を防ぐことができる。建物70が極大地震や長周期地震動を受けた場合は、傾斜した支持手段74A、74Bの引張力による水平抵抗により、建物70の過大な水平変位が抑制されることになる。
このように、支持手段74A、74Bが初期水平剛性にほとんど寄与しないので、免震装置16の免震効果がほとんど阻害されない。また、鉛直力を支持する支持手段74A、74Bが、そのまま建物70の引き抜き抵抗要素となるので、大きな引抜力に耐えることができる。さらに、建物70の水平変位u5が大きくなると、支持手段74A、74Bの軸力の水平成分も大きくなるので、過大な水平変位が抑制される。なお、支持手段74は数を変更できるため、上部構造体14の大きさに合わせて複数の支持手段を設けることができる。
次に、本発明の構造物の第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図10には、地盤(図示省略)上に構築された建物80の一部が示されている。建物80は、地盤上に構築された下部構造体12と、下部構造体12の上側に構築された上部構造体82と、下部構造体12と上部構造体82の間に設けられた免震装置16と、下部構造体12と上部構造体82とを連結する支持手段90(90A、90B)とを有している。さらに、支持手段90と上部構造体82の間に、減衰手段としてのオイルダンパー96(96A、96B、96C、96D)が架設されている。
上部構造体82は、複数の柱84と複数の梁86が組み上げられ固定されることで構築されている。また、下部構造体12上には、免震装置16と、免震装置16が下面に取付けられた床版30が配設されている。ここで、床版30上には、複数の柱88が立設されており、柱88の上端が上部構造体82の梁86に接合されている。また、柱88には、梁92が水平方向に接合されており、下部構造体12と上部構造体82の間に、床版30を含めて3階層が形成されている。なお、柱88、梁92、床版30、及び取付部32は、上部構造体82の一部を構成するものである。
床版30の外側で且つ建物80の平断面最外周位置では、下部構造体12の梁22上に複数の支持手段90が立設されている。ここでは、複数の支持手段90のうち、支持手段90A、90Bについて説明する。
支持手段90Aは、建物80の正面視にて左側端部に位置しており、柱部94を有している。柱部94の下端には、下部構造体12にピン連結される第1連結部36Bが設けられており、柱部94の上端には、上部構造体82にピン連結される第2連結部36Cが設けられている。
また、支持手段90Bは、建物80の正面視にて右側端部に位置しており、支持手段90Aと同様に柱部94を有している。柱部94の下端には、下部構造体12にピン連結される第1連結部36Bが設けられており、柱部94の上端には、上部構造体82にピン連結される第2連結部36Cが設けられている。
上記構成により、支持手段90A、90Bの各柱部94が回転することで、上部構造体82が下部構造体12に対して相対移動可能となっている。なお、支持手段90A、90Bは、水平方向の初期剛性が免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下となるように、予め設定され構築されている。
次に、本発明の第4実施形態の作用について説明する。
図11(a)に示すように、地震による水平力(矢印X方向の力)が建物80に作用していない通常時には、支持手段90A、90B、及び複数の免震装置16が、上部構造体82による鉛直荷重を支持している。
続いて、図11(b)に示すように、地震、風等によって建物80に水平力が作用して、スウェイ(上部構造体82のスライド移動)が発生すると、上部構造体82の下部構造体12に対する水平変位u6が大きくなる。このとき、免震装置16の積層ゴム16Bがせん断変形し、上部構造体82の固有周期を長くすることで建物80の振動を低減する。
また、上部構造体82の変位に伴い、上部構造体82の柱88と支持手段90A、90Bの柱部94との間隔(距離)が変化するため、オイルダンパー96が作動し、建物80の振動を抑えることができる。
ここで、建物80では、支持手段90A、90Bの初期水平剛性が、免震装置16の水平剛性と同等又はそれ以下であるため、免震装置16の水平方向のせん断変形が支持手段90A、90Bによって阻害されない。これにより、免震装置16が十分にせん断変形され、免震効果が得られる。
さらに地震動が続くと、建物80にロッキング(引き抜き動作)及び転倒モーメントによる引抜力が発生する。ここで、支持手段90A、90Bが、第1連結部36B、第2連結部36Cの回転によりスウェイに追従しつつ、ロッキング及び転倒モーメントによる引抜力(引張力・圧縮力)に抵抗するため、建物80の倒壊を防ぐことができる。
建物80が極大地震や長周期地震動を受けた場合は、傾斜した支持手段90A、90Bの引張力による水平抵抗により、建物80の過大な水平変位が抑制されることになる。
このように、支持手段90A、90Bが初期水平剛性にほとんど寄与しないので、免震装置16の免震効果がほとんど阻害されない。また、鉛直力を支持する支持手段90A、90Bが、そのまま建物80の引き抜き抵抗要素となるので、大きな引抜力に耐えることができる。さらに、建物80の水平変位u6が大きくなると、支持手段90A、90Bの軸力の水平成分も大きくなるので、過大な水平変位が抑制される。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
免震装置16は、積層ゴム支承だけでなく、例えば、水平方向に配置され、一端が上部構造体14、他端が下部構造体12に取付けられたすべり支承、レール型支承であってもよい。また、免震層Lは、基礎免震、中間階層の免震、いずれであってもよい。
支持部72における支持手段74の数は、支持手段74A、74Bの2つに限らず、支持部72における必要な曲げ剛性に基づいて、3つ以上設けてもよい。また、支持手段90は、上部構造体82の3階層にわたるものだけでなく、1、2階層あるいは4階層以上にわたるものであってもよい。
本発明の第1実施形態に係る建物の模式図である。 本発明の第1実施形態に係る支持手段の模式図である。 (a)、(b)本発明の第1実施形態に係る建物の免震層の変位状態を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る建物の免震層の水平変位に対する水平力のグラフである。 (a)、(b)本発明の第2実施形態に係る建物の模式図である。 本発明の第2実施形態に係る支持手段の模式図である。 (a)、(b)本発明の第2実施形態に係る建物の免震層の変位状態を示す模式図である。 (a)、(b)本発明の第3実施形態に係る建物の模式図である。 (a)、(b)本発明の第3実施形態に係る建物の免震層の変位状態を示す模式図である。 (a)、(b)本発明の第4実施形態に係る建物の模式図である。 (a)、(b)本発明の第4実施形態に係る建物の免震層の変位状態を示す模式図である。
符号の説明
10 建物(構造物)
12 下部構造体(下部構造体)
14 上部構造体(上部構造体)
16 免震装置(免震装置)
18 支持手段(支持手段)
36A 柱部(支持柱)
44 ピン(ピン)
50 ピン(ピン)
60 建物(構造物)
62 支持手段(支持手段)
63 第1ピン(第1ピン)
64A 柱部(支持柱)
65 第2ピン(第2ピン)
70 建物(構造物)
74 支持手段(支持手段)
80 建物(構造物)
82 上部構造体(上部構造体)
90 支持手段(支持手段)
94 柱部(支持柱)
96 オイルダンパー(減衰手段)

Claims (6)

  1. 下部構造体と、
    前記下部構造体の上側に構築された上部構造体と、
    前記下部構造体と前記上部構造体の間に設けられた免震装置と、
    前記下部構造体と前記上部構造体とを連結して連結間の圧縮及び引張方向の変形に抵抗をして、水平剛性が、一般的な変形時では前記免震装置の水平剛性と同等又はそれ以下であり、過大変形時では前記免震装置の水平剛性よりも大きな剛性となる支持手段と、
    を有する構造物。
  2. 前記免震装置が内側に配置され、前記支持手段が最外周に配置された請求項1に記載の構造物。
  3. 前記支持手段は、前記下部構造体と前記上部構造体の少なくとも一方にピンで連結された支持柱である請求項1又は請求項2に記載の構造物。
  4. 前記支持柱は、一端が前記下部構造体に第1ピンで連結され、他端が前記上部構造体に第2ピンで連結され、前記第1ピンと前記第2ピンが、平面視にて直交配置されている請求項3に記載の構造物。
  5. 前記上部構造体の柱1本に対し、前記支持手段を複数設けた請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の構造物。
  6. 前記支持柱と前記上部構造体の柱の間に、前記上部構造体の水平方向の振動を減衰させる減衰手段が架設されている請求項3又は請求項4に記載の構造物。
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