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JP4812463B2 - 免震床構造 - Google Patents

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JP4812463B2
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Description

本発明は建築構造体に適用する免震床構造に関する。
免震床構造とは、例えば特許第2541871号に開示されているように、大型コンピュータなど、床上の重要積載物を地震時の転倒や衝突から守るための構造である。一般に、鉄筋コンクリート造の主要構造体としての床スラブ構造体の上方空間に、仕上げ用床パネルを設置した仕上げ床を形成して、床スラブ構造体と仕上げ床との間のクリアランスに免震装置を設置して免震床構造を構成することによって、仕上げ床上の振動加速度を低減する構造である。
また、特許第3160659号に開示されているような人工地盤の免震構造では道路橋の免震構造に類似しており、柱の頂部に免震装置を設置して、柱状の人工地盤構造体を免震構造とする発明である。
特許第2541871号 特許第3160659号
このような構造では、仕上げ床は軽微な構造で形成されるので、床パネル上の積載物の大きさや重量に制約があり、また二重床となるので建物の階高に対する天上高が低くなる問題がある。さらに、鉄筋コンクリート造の床スラブ構造体は免震されないので地震時のひび割れなどの損傷を受ける可能性がある。
(1)上記課題を解決するために、本発明は大梁および/または小梁によって構成される梁構造部と、該梁構造部上に配設される複数の滑動支承部と、該滑動支承部の上に配設される床スラブを有する免震床構造であって、地震時に床スラブに加わる慣性力が、前記滑動支承部上の床スラブを水平方向に滑動させる免震床構造を構成する。
(2)前記免震床構造は、床スラブと柱との間にクリアンランスを設け、該クリアランスに衝撃緩和材を設け、床スラブを衝撃緩和材に衝突させることによって床スラブの慣性力を制御する構造が好ましい。
(3)前記滑動支承部は、金属製の第1の面状部材と、第2の面状部材を上下方向に重ねて、第2の面状部材の上面および/または下面に所定の摩擦係数となる滑動面が形成され、滑動支承部は地震時に滑動面において水平方向にずれることが好ましい。
(4)前記滑動支承部は、第1の面状部材と第3の面状部材の間に第2の面状部材がサンドイッチ状に重ねて形成され、第2の面状部材の上面および/または下面に滑動面が形成されていることが好ましい。
(5)複数の床スラブを1つの第1の面状部材および定着部材を介して互いに接続し、第2の面状部材上に設置する。
(1)本発明は、大梁および/または小梁によって構成される梁構造部と、該梁構造部上に配設される複数の滑動支承部と、該滑動支承部の上に配設される床スラブを有する免震床構造であって、地震時に床スラブに加わる慣性力が、前記滑動支承部上の床スラブを水平方向に滑動させる免震床構造を構成しているので、例えば質量の大きなコンクリ−ト製の床スラブを滑動支承部によって水平方向に滑動させることによって、コンクリート製の床スラブと梁構造部とは互いに独立して水平変位を生じる構成にして、コンクリート製の床スラブに生ずる水平方向の慣性力を減少させる床免震能を向上させることができる。したがって、地震時に床スラブ上の人的被害、備品の倒壊などの物的被害を少なくすることができる。
コンクリート製の床スラブは、床スラブの自重、床スラブに加わる積載荷重(人、備品などの荷重)などの鉛直力)を支持しうる断面耐力、剛性を有する主要構造体としての床スラブ構造体であるので、設計上許容する積載荷重を大きくして重量物も積載することができる。仕上げ床(上部床)と鉄筋コンクリート造の床スラブ構造体(下部床)とを設けた二重床構造とする必要がないので、建築物の階高(1階分の高さ)を小さくし、建物の高層化、建設コストの削減を促進することができる。
(2)前記免震床構造は、床スラブと柱との間にクリアンランスを設け、該クリアランスに衝撃緩和材を設け、床スラブを衝撃緩和材に衝突させることによって床スラブの慣性力を制御す免震床構造が好ましい。
前記滑動支承部が地震時に滑動面において水平方向にずれることによって、床スラブに生ずる水平方向の慣性力を減少させる床免震能を有し、床スラブと梁構造部とは互いに独立して水平変位を生じ、免震床構造は、床スラブに生ずる水平方向の慣性力を減少させる床免震能を有すると共に、床スラブをマスダンパーとして利用して梁構造部に生ずる水平方向の慣性力を減少させる制震能を有するので、耐震性能を有する建築物の骨組構造体の一部を構成する梁構造部に生じる水平方向(横方向)の慣性力を減少させる「制震能」によって、建築物の全体の耐震性能を向上させることができる。
(3)前記滑動支承部は、金属製の第1の面状部材と、第2の面状部材を上下方向に重ねて、第2の面状部材の上面および/または下面に所定の摩擦係数となる滑動面が形成され、滑動支承部は地震時に滑動面において水平方向にずれるので、高価な積層ゴム製の免震装置を使用せずに、大きな水平変位を許容することができる。さらに、滑動支承部の高さは、第1の面状部材と第2の面状部材の厚さの和として算定されるので小さなものになり、梁構造部と床スラブの間の床下クリアランスも小さくなり、天井高さを大きくすることができる。
(4)前記滑動支承部は、第1の面状部材と第3の面状部材の間に第2の面状部材がサンドイッチ状に重ねて形成され、第2の面状部材の上面および/または下面に滑動面が形成されているので、第2の面状部材と第1および/または第3の面状部材との摩擦係数を自由に設定できる。また、第2の面状部材の上面および下面に滑動面を形成した場合はより大きな水平変位を得ることができる。
(5)複数の床スラブを1つの第1の面状部材および定着部材を介して互いに接続し、第2の面状部材上に設置することで、梁の交点上に滑動支承を設置することができる。
本発明の好ましい実施の形態について実施例を挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図において同じ要素には同じ符号を用い、適宜その説明を省略する場合がある。
以下、本発明にかかる実施例を、図1ないし図8を参照して説明する。図1(a)は本発明の免震床構造1の縦断面図である。
本発明の免震床構造は、大梁12または小梁11によって構成される梁構造部10と、梁構造部10の上に所定の高さ寸法の床下クリアランスCLを介して配設されたコンクリ−ト製の床スラブ30と、梁構造と床スラブ30との間に配設された、複数の滑動支承部20によって構成される。
図1(a)に示す梁構造部10は、平面視直交する小梁11と小梁11との接合部分を示すもので、H型鋼を使用した鉄骨造によって小梁11を構成している。梁構造部10(大梁12または小梁11)は鉄骨造に限定されず、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)などの構造種別でも良い。
梁構造部10は、梁部材(大梁12または小梁11)を組み合わせた床面支持構造体であって、コンクリ−ト製の床スラブ30の自重、積載荷重(人、備品など)などの鉛直力(鉛直荷重)を支持するとともに、この鉛直力を柱13に伝達させる機構を有する。
図1(a)に示す床スラブ30は、複数のプレキャストコンクリート板(PCa板)31を接合して構成されている。
コンクリ−ト製の床スラブ30は、鉄筋コンクリート造(RC造)で構築された所定のスラブ厚さを有する板状の床構造部材であって、床スラブ30の自重、床スラブ30に加わる積載荷重(人、備品などの荷重)などの鉛直力(鉛直荷重)を支持しうる断面耐力、剛性を有する主要構造体としての「床スラブ構造体」である。
床スラブ30は、プレキャストコンクリート板(PCa板)31に限定されず、その他の床スラブの構築方法、たとえば、現場打ちRC造床スラブ、鋼製のデッキプレートと現場打ちコンクリートからなる合成床構造、半PCa板の上に現場打ちコンクリートを打設した床スラブなどでも良い。
従来技術では、仕上げ用床パネルを設置した仕上げ床(上部床)と鉄筋コンクリート造の床スラブ構造体(下部床)とを設けた二重床構造としたが、本発明の床スラブ30は、仕上げ床を廃して床スラブ構造体のみとしたものであって、従来技術の仕上げ床と床スラブ構造体としての機能を兼備したものである。
コンクリ−ト製の床スラブ30は、梁構造部10の上に所定の高さ寸法の床下クリアランスCLを介して配設されている。この床下クリアランスCLの高さ寸法は、滑動支承部20の高さによって決定される。
図1(a)に示すように、滑動支承部20は、梁構造部10の上面(図1(a)では小梁11のH型鋼の上フランジの上面)に設置されている第2の面状部材22の上に、第1の面状部材21を上下方向に重ねて構成され、第2の面状部材22の下面に水平方向にずれる滑動面を形成している。
滑動支承部20は、梁構造部10の上面に設置されており、梁構造部10の上に所定の高さ寸法の床下クリアランスCLを介して配設されたコンクリ−ト製の床スラブ30を支持する支承部である。
滑動支承部20は、金属製の板状に形成された第1の面状部材21と所定の摩擦係数を有する板状に形成された第2の面状部材22とを上下方向に重ねて、第2の面状部材22の下面および/または上面に滑動面を形成することができる。滑動支承部20は、地震時に滑動面において第2の面状部材22が水平方向(横方向)にずれる(水平変位を生じる)構成を有する。
図1(a)に示すように、第1の面状部材21は金属製の板状に形成され、床スラブ30のコンクリート下面に一体的に接合されている。
金属製材料として、ステンレス、鋼製などが好ましい。図1(a)に示すように、第1の面状部材21は、ボルト、鉄筋などの定着部材23を床スラブ30のコンクリートの内部に埋設しているので、第1の面状部材21と床スラブ30とは一体化して固定されている。したがって、第1の面状部材21と床スラブ30との間には滑動面を形成しないので、第1の面状部材21は、地震時に床スラブ30のコンクリート下面と同一の水平変位をする。また複数の床スラブ30を前記第1の面状部材21と定着部材で接続することもできる。
第2の面状部材22は、第1の面状部材21との間の接触面が所定の摩擦係数を有するような材料によって板状に形成されている。好ましい材料としては、優れた滑動性・対磨耗性を有する材料の中から、設計上必要とされる摩擦係数になるように材料を選択する。例えば、ステンレス板との間で(静止)摩擦係数が約0.1以上の材料としては、自動車のブレーキパッド、フリクションライナーなどが好適であり、摩擦係数が約0.05以下の材料としては、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)が好ましい。
第1の面状部材21、第2の面状部材22は、所定の板厚の板状部材(プレート)として形成されるのが一般的であるが、これに限定されず、第1の面状部材21と第2の面状部材22との間に、所望の広さの接触面を形成しうるものであればよく、凹凸のある立体形状でも良い。
図1(b)は、図1(a)のA−A線における切断面を上から見た横断面図である。小梁11、11の部材軸方向(長さ方向)の平面視交点に、梁構造部10の上面に設置されている第2の面状部材22の上に、第1の面状部材21を重ねた形で設置されている。本実施例では第1の面状部材21は正方形平面であり、対角線がそれぞれ小梁11の部材軸方向と一致している。また、第2の面状部材22は円形平面である。これは地震時に第2の面状部材22が水平方向にずれる方向性を考慮したものである。
図2〜図4を参照して、本実施例の免震床構造を、建築物の骨組構造体に適用した場合を説明する。
図2〜図4は、多層の骨組構造体の任意階において、平面視2方向の1スパン分を抽出した平面図である。
図2〜図4において、X方向は図の横方向、Y方向は図の縦方向を、S1はX方向のスパン長さ、S2はY方向のスパン長さを示す。
図2は平面視2方向の1スパン分の梁構造部10の配置を示す平面図(梁伏図)である。梁構造部10は、4本の柱13によってX方向がスパン長さS1、Y方向がスパン長S2に区画された矩形平面に区画されている。大梁12は隣り合う柱13を連結するように矩形平面の周囲に配置され、その内部にX方向のスパン長さS1、Y方向のスパン長S2を4分割するように小梁11をX方向、Y方向にそれぞれ3列に配置する「格子梁配置」としている。尚、梁構造部10の大梁12、小梁11の平面配置は、格子梁配置に限定されない。
格子梁配置をされた大梁12、小梁11との間に、床ブレース14が配置されている。床ブレース14は、梁構造部10の水平面(床面)の水平剛性、水平耐力を高めるためである。
柱13と大梁12とは部材端部で接合されて、ラーメン骨組を構成するので、梁構造部10は耐震性能を有する骨組構造体の一部を構成する。
建築物の骨組構造体は、柱、梁などのラーメン骨組が一般的であるが、耐震壁、制震壁、壁ブレース、壁式ラーメン構造などの面部材を組み合わせた架構であっても良く、地震力などの外力に対して抵抗する所定の耐震性能を有する主構造体を言う。
図3は平面視2方向の1スパン分の滑動支承部20の配置を示す平面図である。
図3では、梁構造部10の格子梁配置に対応して、複数の滑動支承部20(図中、黒い菱形記号で示す)が大梁12と小梁11との交点、小梁11と小梁11との交点の他に、大梁12及び小梁11の部材軸方向(長さ方向)の中間部にも設置されている。滑動支承部20は、梁構造部10の上面に設置されている。滑動支承から梁へ伝達される摩擦力は梁構造部のXY座標の任意方向に発生する。梁交点上に支承を設置することで、任意方向の摩擦力をX方向とY方向に分解して梁の軸方向力として伝達可能である。また支承を梁交点に設けないとすると、梁の軸方向以外の方向の摩擦力が生じた場合に梁を横方向に曲げ変形をもたらすので、滑動支承は格子梁の交点上に設けるほうが好ましい。しかし柱の近傍では、梁の面外剛性も多少あるので、交点上でなくても良い。
図4は平面視2方向の1スパン分のコンクリ−ト製の床スラブ30の配置を示す平面図(床伏図)である。
図4では、梁構造部10の格子梁配置に対応して、複数のプレキャストコンクリート板(PCa板)31を接合して床スラブ30を構成している。
図4では、16個のプレキャストコンクリート板31で構成されていて、1ピースのプレキャストコンクリート板31は、略矩形平面形に形成されていて、その辺長は、X方向のスパン長さS1、Y方向のスパン長S2を4分割した長さを有する。ここでは、隣接するプレキャストコンクリート板31,31同士の接合部は、大梁12及び小梁11の部材軸の位置に形成されている。
尚、プレキャストコンクリート板31の平面配置方法(割付け)は任意に選択することができる。
図5を参照して、図1に示す免震床構造の力学的メカニズム(機構)を説明する。
本発明の免震床構造において、コンクリ−ト製の床スラブ30の自重、積載荷重(人、備品など)などの常時の鉛直力(鉛直荷重)は梁構造部10の上面に設置された複数の滑動支承部20を介して梁構造部10に支持されている。
図1、図5に示す本実施例の滑動支承部20は、梁構造部10の上面(図1(a)では小梁11のH型鋼の上フランジの上面)に設置されている第2の面状部材22の上に、第1の面状部材21を上下方向に重ねて構成され、第2の面状部材22の下面と梁構造部10の上面との間に、第2の面状部材22が水平方向にずれることができる滑動面を形成している。
第2の面状部材22は、第1の面状部材21との間で所定の摩擦係数を有する材料によって板状に形成されているので、滑動支承部20は、滑動支承部20に作用する常時の鉛直力に所定の摩擦係数を乗じた水平方向の摩擦抵抗力Frを滑動面において形成し、最初は水平力を伝達する支承部として機能する。
しかし、地震時において、滑動支承部20に作用する水平方向の慣性力HF1が水平方向の摩擦抵抗力Frを超えると、第2の面状部材22が滑動面において水平変位LDだけ水平方向にずれて、滑動支承部20がすべり支承部に変化する。すべり支承部は水平方向に自由に滑動するので、床スラブ30の慣性力を小さくする。
尚、図5に示す金属製の第1の面状部材21と第2の面状部材22とを上下方向に重ねて構成した滑動支承部20において、滑動面を、第2の面状部材22の下面のみならず、上面、または上下両面に形成することができる。
本発明は、滑動支承部20が地震時に滑動面において水平方向にずれることによって、コンクリート製の床スラブ30と梁構造部10とは互いに独立して水平変位を生じる。よって免震床構造1は、コンクリート製の床スラブ30に生ずる水平方向の慣性力HF1を減少させる「床免震能」を有すると共に、コンクリート製の床スラブ30をマスダンパーとして利用して梁構造部10に生ずる水平方向の慣性力HF2を減少させる「制震能」を有することにも特徴がある。
本発明の免震床構造では、梁構造部10と、梁構造部10の上に所定の高さ寸法の床下クリアランスCLを介して配設されたコンクリ−ト製の床スラブ30とは、梁構造部10と床スラブ30との間に配設された複数の滑動支承部20によって上下方向で分離した構造体として構成されている。
すなわち、本発明は、質量の大きなコンクリ−ト製の床スラブ30を滑動支承部20によって水平方向に滑動させることによって、コンクリート製の床スラブ30と梁構造部10とは互いに独立して水平変位を生じる構成に特徴がある。
したがって、コンクリート製の床スラブ30と梁構造部10とが地震時に互いに独立して水平変位を生じるためには、滑動支承部20が、梁構造部10に対して鉛直方向(縦方向)には反力を生じるが、水平方向(横方向)には自由に滑動できる支持装置(すべり支承部)であれば良い。
また、梁上にはPTFE等の板を第2の面状部材として固定設置し、その上に面積の広いステンレス板が滑動自在に置かれ、そのステンレス版の上に接合手段(金物)を介して床スラブを乗せる。ここで、PTFE側支承とステンレス版の上下関係において、PTFE側支承の上にステンレス版を置く。
ここで、慣性力は質量に加速度を乗じたものとして算定されるので、質量が大きければ地震時に生じる水平方向の慣性力は大きなものになる。
コンクリ−ト製の床スラブ30は、床スラブ30の自重、積載荷重などの鉛直力(鉛直荷重)を支持する断面耐力、剛性を有する「床スラブ構造体」である。コンクリ−ト製の床スラブ30は、そのスラブ厚さは通常12cm〜30cm程度であり単位比重も大きく、しかも、床スラブ30上の積載荷重も大きいので、質量が従来技術の仕上げ床(上部床)に比べて極めて大きなものになる。すなわち、コンクリ−ト製の床スラブ30の質量が大きければ、床スラブ30に地震時に生じる水平方向の慣性力HF1は大きなものになる。このとき、例えば床スラブと柱との間にクリアランス(水平方向クリアランス)を設け、該クリアランスに衝撃緩和剤として、プラスチック、発泡スチロール、砂、粘土などのコンクリート床スラブより低強度の材料を設置することによって床スラブを衝撃緩和材に衝突させて柱への損傷を防止したり床スラブへ加わる急激な加速度を緩和することができる。床スラブと柱との間のクリアンランスの形状は当業者であれば任意に設定することができ、いかなる形状でも水平方向クリアランスを設け衝撃を緩和する材料を設置すれば本発明の範囲に含まれる。この衝撃緩和剤は上記のような材料だけでなく、例えばダンパーのような機械的構造によって衝撃を緩和する装置であっても良い。またクリアランスの大きさは30cm以上であれば好ましいがこれに限定されるものではない。
本発明は質量が大きなコンクリ−ト製の床スラブ30が、梁構造部10に対してマスダンパーとして機能するので、梁構造部10に生じる水平方向(横方向)の慣性力HF2をも減少させる「制震能」を有する。
梁構造部10は、耐震性能を有する骨組構造体の一部を構成するので、梁構造部10に生じる水平方向(横方向)の慣性力HF2を減少させる「制震能」によって、建築物の全体の耐震性能を向上させることができる。
図6は、図5と異なり、第2の面状部材22と第1の面状部材21との間に滑動面が形成されている変形例を示す。その他は、図5と同様である。
図7は、図1と異なる滑動支承部20の変形例であり、第2の面状部材22が第1の面状部材21と第3の面状部材24とで挟まれ、サンドイッチ状に構成されている。滑動面は第2の面状部材22と第3の面状部材24の間に形成されている。その他は、図1と同様である。
図8(a)、(b)は、図1(b)の滑動支承部20の第1の面状部材21、第2の面状部材22と異なる変形例を示す。
図8(a)、(b)は小梁11上に第2の面状部材22が設置され、さらにその上に第1の面状部材21が配置された状態を上から見た横断面図である。図8(a)に示す第1の面状部材21、第2の面状部材22はともにほぼ正方形の平面形状を有している。一方、図8(b)では第1の面状部材21、第2の面状部材22はともには円形の平面形状を有している。第1の面状部材21、第2の面状部材22の形状はこれらに限定されるものではなく、当業者であれば任意に形状を決定することができる。特に、軸対称の形状であれば好適である。また、第1の面状部材21、第2の面状部材22は互いに相似な図形である必要はなく異なる平面形状のものを組み合わせてもよい。
図示しないが、第1の面状部材21において、第2の面状部材22との接触面が、例えば凹面鏡のように凹状の形状であることが好ましい。これによって、地震時に揺れによって床スラブ30にずれが生じても、揺れの収束に伴い床スラブ30と小梁11の位置が元の状態にもどる、いわゆる復元力を発生させることができる。
次に、図2〜図4は、平面視2方向の1スパン分を抽出した平面図において、すべて本実施例に係わる免震床構造1を適用した場合について説明したが、本実施例の「床免震型」コンクリ−ト製の床スラブ30と、滑動支承部20を使用せずに床スラブ30を直接に梁構造部10に固定した「固定型」コンクリ−ト製の床スラブを混在して配置してもよい。
以上、実施例を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で適宜、付加、変形等なし得るものである。
(a)は本発明の免震床構造の縦断面図、(b)は(a)のA−A線における切断面を上から見た横断面図である。 平面視2方向の1スパン分の梁構造部の配置を示す平面図(梁伏図)である。 平面視2方向の1スパン分の滑動支承部の配置を示す平面図である。 平面視2方向の1スパン分のコンクリ−ト製の床スラブの配置を示す平面図(床伏図)である。 図1(a)に示す免震床構造の力学的メカニズム(機構)を説明する縦断面図である。 第2の面状部材と第1の面状部材との間に滑動面が形成されている変形例を示す縦断面図である。 第2の面状部材が第1の面状部材と第3の面状部材により挟まれている滑動支承部の変形例を示す縦断面図である。 滑動支承部の第1の面状部材、第2の面状部材の異なる変形例を示す、横断面図である。
符号の説明
1 免震床構造
10 梁構造部
11 小梁
12 大梁
13 柱
14 床ブレース
20 滑動支承部
21 第1の面状部材
22 第2の面状部材
23 定着部材
24 第3の面状部材
30 コンクリ−ト製の床スラブ
31 プレキャストコンクリート板(PCa板)
Fr 摩擦抵抗力
VF 滑動支承部の常時の鉛直力
HF1 コンクリ−ト製の床スラブの生じる水平方向の慣性力
HF2 梁構造部に生じる水平方向の慣性力
CL 床下クリアランス
LD ずれ変形量(水平変位量)

Claims (3)

  1. 大梁および/または小梁によって構成される梁構造部と、該梁構造部上に配設される複数の滑動支承部と、該滑動支承部の上に配設される床スラブを有する免震床構造であって、前記滑動支承部は、金属製の第1の面状部材と、第2の面状部材を上下方向に重ねて、第2の面状部材の上面および/または下面に所定の摩擦係数となる滑動面が形成され、複数の床スラブを1つの第1の面状部材および定着部材を介して互いに接続し、地震時に床スラブに加わる慣性力が、前記滑動支承部上の床スラブを水平方向に変位させる免震床構造。
  2. 前記免震床構造は、床スラブと柱との間にクリアンランスを設け、該クリアランスに衝撃緩和材を設け、床スラブを衝撃緩和材に衝突させることによって床スラブの慣性力を制御する請求項1に記載の免震床構造。
  3. 前記滑動支承部は、第1の面状部材と第3の面状部材の間に第2の面状部材がサンドイッチ状に重ねて形成され、第2の面状部材の上面および/または下面に滑動面が形成されている請求項1または2に記載の免震床構造。
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