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JP2010046074A - 組換えで発現されるカルボキシペプチダーゼbおよびその精製 - Google Patents

組換えで発現されるカルボキシペプチダーゼbおよびその精製 Download PDF

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Abstract

【課題】チモーゲンから、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を生じさせる方法の提供。
【解決手段】ヒスチジン−タグおよびシグナルペプチドにN末端で融合されるラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBからなるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクター。微生物宿主生物を該ベクターで形質転換させ、培養し、増殖培地中にヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを分泌させ、それをヒスチジン−タグに結合可能な粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定し、トリプシン処理により、液相にカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を放出させ、その液相からカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を精製する方法により得られる、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まず、カルボキシペプチダーゼB活性を有し、C末端チロシンを欠いているタンパク質。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイオテクノロジーの分野に関与する。さらに詳細には、本発明は、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質の酵素的に不活性な前駆体の産生およびさらなるプロセシングに関与する。本発明の態様は、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質の活性化およびそれに伴う精製に関与する。
カルボキシペプチダーゼは、C末端ペプチド結合を加水分解する酵素である。カルボキシペプチダーゼ・ファミリーとしては、メタロ、セリンおよびシステイン・カルボキシペプチダーゼが挙げられる。それらの基質特異性により、これらの酵素は、カルボキシペプチダーゼA(脂肪族残基を切断する)またはカルボキシペプチダーゼB(塩基性アミノ残基を切断する)と称される。カルボキシペプチダーゼB(EC3.4.17.2)は、ポリペプチド中のC末端位置から、塩基性アミノ酸であるリジン、アルギニン、およびオルニチンの加水分解を触媒する酵素である。
ペプチジル−L−リジン(−L−塩基性アミノ酸)+H2O →ペプチド+L−リジン(−L−塩基性アミノ酸)
カルボキシペプチダーゼBの前駆体は、ほとんどの脊椎動物の膵臓中のチモーゲンまたはプロ酵素である(非特許文献1により検討された)。カルボキシペプチダーゼAがキモトリプシンの産物に対して特異的であるのと非常に同様に、カルボキシペプチダーゼBは、特異的であるトリプシン消化の産物のさらなる分解で機能する可能性がある。カルボキシペプチダーゼBは、その酵素の金属含有量に関連したエステラーゼ活性も有する(非特許文献2;非特許文献3)。
「チモーゲン」または「プロ酵素」は、酵素の不活性前駆体である。言い換えると、チモーゲンまたはプロ酵素は、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質のような、酵素活性を示すタンパク質の不活性前駆体である。酵素活性を示す多くのタンパク質は、このような不活性前駆体として合成され、そして続いて、1個または数個の特異的なペプチド結合の切断によって活性化される。特異的タンパク質分解による酵素および他のタンパク質の活性化は、生物学的系で頻繁に起こる。例えば:(a)皮膚および骨に存在する繊維性タンパク質であるコラーゲンは、可溶性前駆体であるプロコラーゲンから誘導される。(b)ある種のタンパク質ホルモンは、不活性な前駆体として合成される。例えば、インスリンは、ペプチドのタンパク質分解性除去によってプロインスリンから誘導される。(c)タンパク質を加水分解する消化酵素は、胃および膵臓でチモーゲンとして合成され、そして分泌される。カルボキシペプチダーゼBは、このグループに属する。(d)血液凝固は、外傷に対する迅速で、そして増幅された反応を保証するタンパク質分解活性化のカスケードによって媒介される。
インビボで、「プロ−カルボキシペプチダーゼB」と言われるカルボキシペプチダーゼBのチモーゲンは、「プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼB」と呼ばれるプレ−タンパク質として膵臓細胞で翻訳される。
プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼBは、それのN末端に、シグナルペプチドを含む。プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼBのアミノ酸配列は、一次翻訳産物をいう。シグナルペプチドは、膵臓細胞の分泌経路に、プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼBポリペプチドを導く。分泌過程の間に、リーダーペプチドがタンパク質分解により切り離され、それによりプレ−プロ−カルボキシペプチダーゼBを、プロ−カルボキシペプチダーゼBへと変える。
プロ−カルボキシペプチダーゼBは、酵素活性がない。インビボでは活性化は、通常、小腸で起こる。トリプシンは、プロ−カルボキシペプチダーゼBを切断し、それにより、酵素的に不活性なプロペプチドおよびタンパク質分解的に活性なカルボキシペプチダーゼB酵素を生じさせる。
プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼについての一例として、配列番号1は、非特許文献4に公開されているラットのプレ−プロ−カルボキシペプチダーゼBのアミノ酸配列を示す。したがって、プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼBポリペプチドの最初の13個のアミノ酸はシグナルペプチドを表し、これに続く95個のアミノ酸が、プロペプチドを構成する。活性化された産物、すなわち、活性なラットのカルボキシペプチダーゼB酵素は、35228Daと計算される分子量を示す307個のアミノ酸を含む。
プロ−カルボキシペプチダーゼBも、トリプシンを使用してインビトロで活性化させて、カルボキシペプチダーゼBを形成させることができる。プロペプチドおよび酵素部分の同時形成は、SDSゲル電気泳動、さらには非特許文献5による逆相HPLCのような分析方法によって示されている。
種々の条件下でのインビトロでの活性化実験は、タンパク質分解活性のあるカルボキシペプチダーゼB酵素を容易に生じさせる一方で、非変性条件下では、プロペプチドは、多数のカルボキシペプチダーゼB分子に非共有結合したままであることを示した。これは、変性条件が、プロペプチドおよび酵素の複合体に使用されたときに見ることができた。したがって、非変性精製法、そして特に陰イオン交換クロマトグラフィーは、今までのところは、非共有結合したプロペプチドを、カルボキシペプチダーゼB酵素から分離するのに十分な手段を与えてはいない。
C末端の塩基性アミノ酸に対するそれの高い特異性により、カルボキシペプチダーゼBは、例えば、配列決定のための末端基分析で、広範な用途が見出されている。しかし、経済的重要性の大部分はタンパク質分解プロセシングを含む産業への応用である。特に、カルボキシペプチダーゼBは、医療用のインスリンを生じる産生過程で使用されており、この過程にはプロ−インスリンのタンパク質分解性切断が含まれる。
医療品としてのインスリンに関しては、カルボキシペプチダーゼB酵素に非共有結合するカルボキシペプチダーゼBプロペプチドにより、独特の問題が生じる。上記のインスリン生産過程では、プロ−インスリンのタンパク質分解性切断に続いて、インスリンフラグメントが変性条件下で精製される。結果として、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドをインスリンと同時精製することができる。このような場合には、インスリン分子からのカルボキシペプチダーゼBプロペプチドの分離は骨のおれる過程となり得、同時に、精製されたインスリンの最終収量はおそらく減少する。
ブタ膵臓から精製された市販されているカルボキシペプチダーゼBは、他のタンパク質分解活性を全く含まないというわけではないかもしれない。さらに、ほとんどの動物由来の製品に関してそうであるように、ブタ・カルボキシペプチダーゼBは、ウイルス、プリオンまたはヒトの健康に害を及ぼす可能性がある他の生物学的に活性な成分のような感染性病原体を含む場合がある。したがって、別の供給源からカルボキシペプチダーゼBを得ることが望ましい。さらに、別の供給源由来のカルボキシペプチダーゼBは、実質的に、プロペプチドを含まないことが望ましい。
カルボキシペプチダーゼBは、形質転換された宿主生物体(例えば、非特許文献5)中で組換えにより産生させることができ、それから精製することができることは、当該分野で知られている。
特許文献1では、メチロトローフ酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)でのブタのプロ−カルボキシペプチダーゼBの組換え発現が開示されている。トリプシン切断によるチモーゲンの活性化に続いて、第一の精製段階には、疎水性クロマトグラフィーが含まれる。大豆トリプシン阻害剤の添加に続いて、活性化された酵素がQ−セファロースクロマトグラフィーを使用してさらに精製される。特許文献1の精製方法には、複数の段階が含まれ、これに伴い、カルボキシペプチダーゼB産物が失われる。さらに、生成物から、大豆トリプシン阻害剤およびカルボキシペプチダーゼBプロペプチドを分離する必要がある。
特許文献2には、メチロトローフ酵母ピキア・パストリスでのヒスチジンタグ付きヒト・プロ−カルボキシペプチダーゼBの組換え発現が開示されている。アフィニティークロマトグラフィーを使用し、そしてヒスチジンタグにより、生成物が精製される。続いて、トリプシンを使用して、プロ−カルボキシペプチダーゼBが活性化され、そして大豆トリプシン阻害剤の添加により、活性化反応が終結させられる。約30000Daを超える分子量の粒子を排除する膜を通過させる濾過により、カルボキシペプチダーゼBが、トリプシン、プロペプチド、阻害剤、および精製手順の過程の間に生じた他のフラグメントから分離される。しかし、カルボキシペプチダーゼB酵素の分子量が約37000Daなので、使用されるフィルターの孔のサイズ分布により、濾過段階による損失が予想され得る。さらに、活性化段階が、溶解させられたチモーゲンに対して行われるので、カルボキシペプチダーゼB酵素からプロペプチドをさらに分離する必要がある。
特許文献3に、大腸菌(E.coli)でのラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBの組換え発現が記載されている。不溶性プロ−カルボキシペプチダーゼBの封入体が産生される。チモーゲンが復元され、続いてさらに精製される。活性化段階は溶解させられたチモーゲンに対して行われ、そしてカルボキシペプチダーゼB酵素からプロペプチドがさらに分離される必要がある。変性/復元段階があるので、この方法を用いて得ることができるカルボキシペプチダーゼB酵素の収量は、比較的低い。
本発明者らの知る限りでは、活性化されていない形態から活性化されたカルボキシペプチダーゼBを分離する特異的方法は知られていない。
国際公開公報WO01/51624号パンフレット ドイツ国特許第19915938号明細書 国際公開公報WO96/23064号パンフレット
Folk J. Carboxypeptidase B:The Enzymes 3、P.Boyer、Academic Press、NY、57頁、1971年 Folk,J.およびGladner,J.:Biochim Biophys Acta(1961年)48巻、139−47頁 Zisapel,N.およびSokolovsky,M、Eur J Biochem(1975年)54巻、541−7頁 Clauser E.ら、J.Biol.Chem.1988年、263巻、17837−45頁 Venturaら、J.Biol.Chem.(1999年)274(28)巻、19925−33頁
したがって、本発明が解決しようとする課題は、チモーゲンから、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を生じさせる別の方法を提供することである。それによりカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質へのプロペプチドの非共有結合が回避される。本発明によって解決される別の問題は、プロペプチドから、および活性化段階後に残っているチモーゲンからカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を分離する別の方法を提供することである。本発明によって解決される別の問題は、非変性条件下で、プロペプチドから、および活性化段階後に残っているチモーゲンからカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を分離する別の方法を提供することである。
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕(a)ヒスチジン−タグおよびシグナルペプチドにN末端で融合されるラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBからなるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する工程、ここで、ヒスチジン−タグとシグナルペプチドの間、および/またはヒスチジン−タグとラットのカルボキシペプチダーゼBの間にスペーサー配列が挿入されている、あるいは、スペーサー配列が挿入されていない;
(b)微生物宿主生物を該ベクターで形質転換させる工程;
(c)栄養素および炭素源を含む増殖培地中で該微生物宿主生物を培養し、それにより該微生物宿主生物がプレ−タンパク質を発現し、増殖培地中にヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを分泌する、工程;
(d)工程(c)の増殖培地中の分泌ヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBをヒスチジン−タグに結合可能な粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定し、粒子金属キレート親和性マトリックスを洗浄し、それによりヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBが固定される、工程;
(e)13〜20U/mlのトリプシンを含有するバッファー中で工程(d)の固定されたヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを有する粒子金属キレート親和性マトリックスを150〜300分間インキュベートして、タンパク質分解でプロ−カルボキシペプチダーゼB部分を切断し、液相にカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を放出する、それによりヒスチジン−タグ付プロペプチド部分が固定される、工程;
(f)粒子金属キレート親和性マトリックスからカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を含む液相を分離し、ここでヒスチジン−タグ付プロペプチド部分は固定されている、工程;ならびに
(g)工程(f)の液相からカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を精製する工程
を含む方法により得られ得る、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まず、カルボキシペプチダーゼB活性を有し、C末端チロシンを欠いているタンパク質、
〔2〕該方法は、微生物宿主株がメチロトローフ酵母株であることを特徴とする、〔1〕記載のタンパク質、
〔3〕該方法は、ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBのアミノ酸配列が配列番号:3の14位〜415位のアミノ酸配列であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕記載のタンパク質、
〔4〕該方法は、シグナルペプチドが、ヒスチジン−タグに近接してまたはスペーサー配列に近接して位置するシグナルペプチダーゼ切断部位を含むことを特徴とする、〔1〕〜〔3〕いずれか記載のタンパク質、
〔5〕該方法は、発現したプレ−タンパク質のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列であることを特徴とする、〔1〕〜〔4〕いずれか記載のタンパク質、
〔6〕該方法は、ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBをコードするヌクレオチド配列が配列番号:3の286位〜1497位のヌクレオチド配列であることを特徴とする、〔1〕〜〔5〕いずれか記載のタンパク質、
〔7〕該方法は、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:3のヌクレオチド配列であることを特徴とする、〔1〕〜〔6〕いずれか記載のタンパク質、
〔8〕ペプチド結合のタンパク質分解性切断のための、〔1〕〜〔7〕いずれか記載のタンパク質の使用、
〔9〕〔1〕〜〔7〕いずれか記載のタンパク質を含む試薬溶液
に関する。
本発明によれば、チモーゲンから、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を生じさせる別の方法が提供され得、それによりカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質へのプロペプチドの非共有結合が回避される。また本発明によれば、プロペプチドから、および活性化段階後に残っているチモーゲンからカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を分離する別の方法も提供され得る。また本発明によれば、非変性条件下で、プロペプチドから、および活性化段階後に残っているチモーゲンからカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を分離する別の方法も提供され得る。
図1はベクターpCPB−1の模式図である。ベクターは、サッカロマイセス・セレビッシェ由来のα−因子シグナルペプチド(「α−ファクター(Faktor)−SS」と示されている)およびヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを含む融合タンパク質であるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、AOX1プロモーター(「AOX1−プロモーター」と示されている)およびAOX1ターミネーター(「AOX1−TT」と示されている)の転写制御下にある。ベクターは、ゼオシン(登録商標)に対する耐性を付与する。 図2aは実施例8に記載されているカルボキシペプチダーゼB調製物の例示的な質量スペクトル分析の結果を示す図である。x軸は、m/z値(m=イオン質量;z=イオン荷電)を示す。アスタリスクは、それぞれのカルボキシペプチダーゼB二量体に対応するピークを示す。 図2bは実施例8によるカルボキシペプチダーゼB調製物の例示的な質量スペクトル分析の結果を示す図である。x軸は、イオン分子量を[Da]で示す。 図3の(a)部分は、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドに対応する想定されるm/z値およびピークを示し、これは12,132Daペプチドとも称される。(b)で示される部分は、図1aに記載されているスペクトルに対応する部分を示す。(a)部分および(b)部分のx軸は、並べられ、そして同じ目盛りを有する。 図4の(a)部分は、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドに対応する仮定的なm/z値およびピークを示し、これは10,746Daペプチドとも称される。(b)で示される部分は、図1aに記載されているスペクトルの対応する部分を示す。(a)部分および(b)部分のx軸は、並べられ、そして同じ目盛りを有する。 図5は実施例8に記載されている酵素調製物を用いて得られたスペクトルの部分図である。 図6はカルボキシペプチダーゼB調製物の質量分光分析の結果を示す図である。分析は、実施例9で説明されたように、流動層クロマトグラフィーの後に採取されたサンプルについて行われた。(a)部分のx軸は、m/z値(m=イオン質量;z=イオン荷電)を示す。(b)部分のx軸は、イオン分子量を[Da]で示す。 図7はカルボキシペプチダーゼB調製物の質量分光分析の結果を示す図である。分析は、実施例9で説明されたように、Q−セファロースff(登録商標)の後に採取されたサンプルについて行われた。(a)部分のx軸は、m/z値(m=イオン質量;z=イオン荷電)を示す。(b)部分のx軸は、イオン分子量を[Da]で示す。 図8はカルボキシペプチダーゼB調製物の質量分光分析の結果を示す図である。分析は、実施例9で説明されたように、精製手段の最終産物について行われた(a)部分のx軸は、m/z値(m=イオン質量;z=イオン荷電)を示す。(b)部分のx軸は、イオン分子量を[Da]で示す。
本発明によって、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を生産するための方法が提供される。この方法には、a)ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBから構成されるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターが提供される工程であって、このヌクレオチド配列は、N末端で、ヒスチジンタグとシグナルペプチドに融合されており、ここでは必要に応じて、ヒスチジンタグとシグナルペプチドとの間、またはヒスチジンタグとラットのカルボキシペプチダーゼBとの間に、スペーサー配列が挿入されている工程;(b)微生物である宿主生物がベクターで形質転換される工程;(c)栄養素と炭素源を含む増殖培地中で微生物である宿主生物が培養され、それにより微生物である宿主生物にプレタンパク質を発現させ、そして増殖培地中にヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを分泌させる工程;(d)工程(c)の増殖培地中に分泌されたヒスチジンタグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを、ヒスチジンタグを結合することができる粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定させ、そしてこの粒子金属キレート親和性マトリックスが洗浄され、それによりヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBが固定される工程;(e)トリプシンを含む緩衝液中で粒子金属キレート親和性マトリックスが工程(d)の固定化されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBとともにインキュベートされ、それにより、プロ−カルボキシペプチダーゼB部分がタンパク質分解で切断され、そしてカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質が液相に遊離させられ、それにより、ヒスチジンタグ付きプロペプチド部分が固定される工程;(f)カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を含む液相が粒子金属キレート親和性マトリックスから分離され、それによりヒスチジンタグ付きプロペプチド部分が、粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定される工程;ならびに(g)カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質が工程(f)の液相から精製される工程が含まれる。
所定の用語は特定の意味で使用されるか、または本明細書中で最初に定義される。本発明の目的のために、以下の用語は、それらの技術分野で受入れられている定義がある場合はそれによって定義される。ただし、それらの定義が、以下に説明される定義と対立するか、または部分的に対立する場合を除く。万一、定義で対立する場合、用語の意味は、以下に説明される定義によってまず定義される。
アミノ酸の識別には、アミノ酸の三文字略記、並びに一文字アルファベット、すなわち、Asp D アスパラギン酸、Ile I イソロイシン、Thr T トレオニン、Leu L ロイシン、Ser S セリン、Tyr Y チロシン、Glu E グルタミン酸、Phe F フェニルアラニン、Pro P プロリン、His H ヒスチジン、Gly G グリシン、Lys K リジン、Ala A アラニン、Arg R アルギニン、Cys C システイン、Trp W トリプトファン、Val V バリン、Gln Q グルタミン、Met M メチオニン、Asn N アスパラギンが使用される。アミノ酸配列中の特定の位置にあるアミノ酸は、その三文字略記および数字によって示される。例えば、配列番号1の天然のラットのプレ−プロカルボキシペプチダーゼBのアミノ酸配列に関して、「His14」は、アミノ酸位置14にあるヒスチジン残基を示す。
用語「含む」は、「必ずしも限定されるものではないが、含む」を意味するように、本明細書中および請求項で使用される。
用語「プレ−タンパク質」は、そのN末端に、シグナルペプチドを含む一次翻訳産物をいう。本発明の状況では、「プレ−タンパク質」は、チモーゲンまたはプロ酵素、すなわちプロ−カルボキシペプチダーゼBの前駆体である。プロ酵素は、プレ−タンパク質の翻訳後プロセシングにより生じる。
「シグナルペプチド」は、分泌可能なタンパク質のプレ−タンパク質形態に存在するアミノ酸の切断可能なシグナル配列である。細胞膜を通過して輸送される、すなわち「分泌される」タンパク質は、一般的には、約15から30個までのアミノ酸長の疎水性アミノ酸を多く含むN末端配列を有する。ときには、膜を通過する過程の間に、シグナル配列が、シグナルペプチダーゼによって切断される(Alberts,B.、Johnson,A.、Lewis,J.、Raff,M.,Roberts,K.、Walter,P.(編)、Molecular Biology of the Cell、4版、2002年、Garland Science Publishing)。シグナルペプチドの多くの供給源が当業者に十分に知られており、そして例えば、サッカロマイセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)等由来のα因子シグナルペプチドのアミノ酸配列を挙げることができる。一般に、基本的に全ての分泌タンパク質のプレ−タンパク質のN末端が、本発明での使用に適していると見込まれるシグナルペプチドの供給源である。シグナルペプチドは、第一および第二の細胞区画に対してプレ−タンパク質を向ける2つのシグナルペプチドを含む二つの部分からなる場合もあり得る。分泌経路の過程の間に、二つの部分からなるシグナルペプチドは段階的に切断される。その好ましい例は、サッカロマイセス・セレビッシェ由来のα因子のプレプロペプチドである(Watersら、J.Biol.Chem.263巻(1988年)6209−14頁)。さらにいっそう好ましい例は、配列番号3の1位から255位までのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列である。
分泌N末端シグナルペプチドを有するプレ−タンパク質は、「分泌経路」に入るように向けられている。分泌経路には翻訳後プロセシングの過程が含まれ、最終的に、プロ−カルボキシペプチダーゼBの分泌を生じる。本明細書中では、メチロトローフ酵母株によって分泌されるタンパク質は分泌経路を通過すると理解される。
用語「翻訳後プロセシング」は、プレ−タンパク質が、細胞内または細胞外区画において1つのタンパク質を生じるように供される修飾段階を示す。本発明の文脈では、プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼBの翻訳後プロセシングは、分泌プロ−カルボキシペプチダーゼBを生じる。
例えば、トリプシンによるプロ−カルボキシペプチダーゼBの酵素的タンパク質分解性切断は「活性化」と称される。活性化に至る分子事象がタンパク質分解性プロセシングによることは、当業者に周知である。トリプシンは、プロ−カルボキシペプチダーゼBを切断し、それにより、酵素的に不活性な「プロペプチド」または「プロペプチド部分」と、カルボキシペプチダーゼBと言われるタンパク質分解的に活性な「酵素部分」を生じる。例えば、ラットのプロカルボキシペプチダーゼBポリペプチドの「プロ−カルボキシペプチダーゼB部分」と言われるラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBの酵素部分は、配列番号4の191位から497位までのアミノ酸配列によって示されるポリペプチドである。
プロ−カルボキシペプチダーゼBのプロペプチドは、通常、約95個のアミノ酸を含む。トリプシンによるプロ−カルボキシペプチダーゼBのタンパク質分解性切断は、カルボキシペプチダーゼBを活性化するだけではなく、カルボキシペプチダーゼBのトリプシン性フラグメントをも形成する場合があることもまた知られている。
「メチロトローフ酵母」は、その炭素源としてメタノールを利用することができる酵母として定義される。この用語にはその実験室株も含まれる。メチロトローフ酵母株が栄養要求性であり、その要求性のために、例えば、ヒスチジンのような補助炭素含有物質を補う必要がある場合(十分な量のこのアミノ酸を合成することができないメチロトローフ酵母株の場合)には、この補助物質は、炭素源としてでなく栄養分と見なされる。
「ベクター」は、本発明のDNAフラグメントを含む、すなわち、保持し維持できるDNAと定義され、例えば、ファージおよびプラスミドが含まれる。これらの用語は、遺伝子工学の当業者によって理解される。用語「発現カセット」は、プロモーターおよびターミネーターに作動可能に連結されているプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。発現カセットを含むベクターに関しては、用語「ベクター」および「発現ベクター」は同意語である。
「形質転換」は、DNAを生物に導入し、その結果DNAが、染色体外エレメントとして、または染色体組込のいずれかにより複製できるようにすることを意味する。
用語「エピソーム」は、ある時には、宿主細胞中で独立して存在し、またある時には、細胞の染色体に組込まれて、それ自身が染色体と一緒に複製する一連の遺伝子から構成される遺伝物質の単位を示す。エピソームの一例は、図1のベクターである。
用語「発現」および動詞「発現する」は、宿主生物体中でのDNA配列の転写および/または転写されたmRNAの翻訳を示し、これによりプレ−タンパク質が生じる。すなわち、翻訳後プロセシングは含まない。
ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の少なくとも一部、またはその相補物が直接翻訳されて、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列を提供することができる場合に、または単離されたヌクレオチド配列を単独で、または発現ベクターの一部として使用して、インビトロで、原核生物の宿主細胞で、または真核生物の宿主細胞で、ペプチドまたはタンパク質を発現させることができる場合に、ペプチドまたはタンパク質を「コードする」。
全てのヌクレオチド配列は、5’(プライムを意味する)末端から、3’末端への方向で記載され、5’から3’へとも言われる。
「プロモーター」は、転写を刺激する調節ヌクレオチド配列である。これらの用語は、遺伝子工学の当業者によって理解されている。プロモーターと同様に、「プロモーターエレメント」は転写を刺激するが、しかし、大型プロモーター配列のサブフラグメントを構築する。
用語「作動可能に連結された」は、一方の機能が他方によって影響されるような、単一ベクター上での2以上の核酸フラグメントの結合をいう。例えば、プロモーターは、それがそのコード配列を発現に影響を及ぼすことができる、すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある場合に、コード配列、すなわち、タンパク質またはプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結されている。
「ペプチド結合」は、一方のアミノ酸のα−アミノ基が、他方のアミノ酸のα−カルボキシル基に結合している2つのアミノ酸の間の共有結合である。
発明の詳細な説明
本発明の第一の実施形態は、カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を産生する方法である。この方法には、a)ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBから構成されるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターが提供される工程であって、このヌクレオチド配列は、N末端で、ヒスチジンタグとシグナルペプチドに融合されており、ここでは必要に応じて、ヒスチジンタグとシグナルペプチドとの間、またはヒスチジンタグとラットのカルボキシペプチダーゼBとの間に、スペーサー配列が挿入されている工程;(b)微生物である宿主生物がベクターで形質転換される工程;(c)栄養素と炭素源を含む増殖培地中で微生物である宿主生物が培養され、それにより微生物である宿主生物にプレタンパク質を発現させ、そして増殖培地中にヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを分泌させる工程;(d)工程(c)の増殖培地中に分泌されたヒスチジンタグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを、ヒスチジンタグを結合することができる粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定させ、そしてこの粒子金属キレート親和性マトリックスが洗浄され、それによりヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBが固定される工程;(e)トリプシンを含む緩衝液中で工程(d)の固定化されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを有する粒子金属キレート親和性マトリックスがインキュベートされ、それにより、プロ−カルボキシペプチダーゼB部分がタンパク質分解で切断され、そしてカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質が液相に遊離させられ、ここでは、ヒスチジンタグ付きプロペプチド部分が固定される工程;(f)カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を含む液相が粒子金属キレート親和性マトリックスから分離され、ここではヒスチジンタグ付きプロペプチド部分が、粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定される工程;ならびに(g)カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質が工程(f)の液相から精製される工程が含まれる。
微生物宿主株、例えば、メチロトローフ酵母株の形質転換に使用されるベクターが構築される場合は、ある種の分子クローニング技術には、リンカーまたはスペーサー配列をプレ−タンパク質の機能性エレメントをコードするヌクレオチド配列に付加することが必要であるかもしれない。例えば、プレ−タンパク質の機能性エレメントのコード配列を含むDNAフラグメントが、制限エンドヌクレアーゼを使用してクローニングベクターから切り出されてコード配列より長いフラグメントを生じる場合には、スペーサー配列もまた作製される場合がある。リンカーまたはスペーサーヌクレオチド配列が起こりうる他の理由が可能である。これに関して、プレ−タンパク質の機能性エレメントをコードするヌクレオチド配列は、(a)シグナルペプチド、(b)ヒスチジンタグおよび(c)プロ−カルボキシペプチダーゼB部分をコードする。したがって、このようなリンカーヌクレオチド配列が存在するので、さらなるアミノ酸、すなわち「スペーサー配列」を、プレ−タンパク質のいずれか2つの機能性エレメントの継目に挿入することができる。その例は、配列番号3および配列番号4のアミノ酸位置86、87にあるセリン残基およびアラニン残基から構成されるスペーサー配列である。本発明のプレ−タンパク質においては、4個以下のアミノ酸残基から構成されるスペーサー配列が好ましい。さらに好ましいのは、2つのアミノ酸残基から構成されるスペーサー配列である。スペーサー配列をコードするリンカーヌクレオチド配列の挿入は、上記挿入が、プレ−タンパク質またはその前駆体をコードするヌクレオチド配列を形成するため2つの機能性エレメントをコードする別個のヌクレオチド配列の連結を容易にすることができる場合があるという点で「任意」である。
ヒスチジンタグは、好ましくは、6つの連続しているヒスチジンを含むアミノ酸配列である。ヒスチジンが必須の部分に相当するので、ヒスチジンタグ部分にさらなるアミノ酸が含まれることはほとんどない。本発明で使用されるヒスチジンタグは、別の適切なトリプシン切断部位を分泌タンパク質には加えないことが重要である。したがって、チモーゲンのトリプシン切断部位は、固定されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBのカラム上での活性化の間に供される条件下で、好ましい切断部位を維持する。固定化されたヒスチジンタグ付きプレ−カルボキシペプチダーゼBのカラム上での活性化の際には、プロペプチドはヒスチジンタグを介して粒子金属キレート親和性マトリックスに結合したままである。
分泌ヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBの精製は、固定化された金属アフィニティークロマトグラフィーによって容易にされる。この方法は、ヒスチジン残基から構成される短いアフィニティータグ(ヒスチジンタグ)を含む組換えタンパク質を精製するために広く使用されている方法である。固定化金属−アフィニティークロマトグラフィー(Porath,J.ら、Nature 258巻(1975年)598−599頁によって記載されている)は、粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定された遷移金属イオン(Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+)と、特異的アミノ酸側鎖との間の相互作用をベースとする。ヒスチジンは、ヒスチジンイミダゾール環上の電子供与基が、固定化された遷移金属と配位結合を容易に形成するので、固定化された金属イオンマトリックスと最強の相互作用を示すアミノ酸である。連続しているヒスチジン残基の配列を含むペプチドが、粒子金属キレート親和性で効率よく保持される。マトリックス材料の洗浄に続いて、ヒスチジンタグのようなヒスチジン配列を含むペプチドは、カラム緩衝液のpHを低く(酸性)調節することによるか、または遊離のイミダゾールを添加することのいずれかによって容易に抽出することができる。
ヒスチジン残基を有するタンパク質を精製する方法は、最初に、Hochuli,E.らにより、J.Chromatogr.411巻、177−184頁(1987年)で記載されている。この文書では、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーのためのニトリロ三酢酸(NTA)吸着剤が記載されている。NTA樹脂は、四座キレートを形成し、そして配位数6の金属イオンに特に適している。なぜなら、2つの原子価がバイオポリマーの可逆性結合として残っているからである。ヒスチジンタグを有するジヒドロ葉酸レダクターゼは、Hochuli,E.ら、Bio/Technology 6巻、1321−1325頁(1988年)によって記載されているようにNi2+−NTAマトリックスを用いてうまく精製された。この系の精製効率は、ヒスチジンタグの長さと溶媒系に依存した。この系は、変性条件下でHis6−タグ付きタンパク質を用いると効率よく作用する一方で、His3−タグ付きタンパク質は、生理学的条件下で効率よく精製された。しかし、His6−タグ付きタンパク質は、低塩濃度または高塩濃度の緩衝液中での非変性条件下では、Ni2+−NTAマトリックスに結合させることができた。結合後、標的タンパク質は0.8から250mMまでのイミダゾール勾配によって溶出させることができる。低濃度のイミダゾール(例えば、0.8mM)での洗浄を、ヒスチジンを有する宿主タンパク質の非特異的結合を減少させるために使用することができる。
本発明では、固定化段階は、好ましくは、イミダゾールの存在下で行われる。これらの条件下では、他のヒスチジン含有タンパク質の非特異的結合が減少することが分かった。その際の好ましいイミダゾール濃度は、0.01mMと1mMの間の範囲である。
ヒスチジンタグ付きタンパク質を精製するために開発された別の材料は、TALONである。これは、Co2+−カルボキシルメチルアスパルテート(Co2+−CMA)から構成され、そしてこれは、固形支持樹脂に結合させられている。TALONは、Ni2+−NTA樹脂よりも少ない非特異的タンパク質結合を示し、高い溶出産物純度を生じることが報告されている(Chaga,G.ら、Biotechnol.Appl.Biochem.29巻、19−24頁(1999年);Chaga,G.ら、J.Chromatogr.A 864巻、257−256頁(1999年))。
ヒスチジンタグは、一般に、組換えタンパク質のN−またはC−末端のいずれかに置かれる。タグの最適な位置は、タンパク質特異的である。ヒスチジンタグを使用する精製は、細菌(Chen,B.P.およびHai,T.、Gene 139巻、73−75頁(1994年);Rank,K.B.ら、Protein Expr.Purif.22巻、258−266頁(2001年))、酵母(Borsing,L.ら、Biochem.Biophys.Res.Commun.240巻、586−590頁(1997年);Kaslow,D.C.およびShiloach,J.、Bio/Technology 12巻、494−499頁(1994年))、哺乳類細胞(Janknecht,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88巻、8972−8976頁(1991年);Janknecht,R.およびNordheim,A.、Gene 121巻、321−324頁(1992年))、およびバキュロウイルス感染昆虫細胞(Kuusinen,A.ら、Eur.J.Biochem.233巻、720−726頁(1995年);Schmidt,M.ら、Protein Expr.Purif.12巻、323−330頁(1998年))を含む多数の発現系を使用してうまく行われている。100を超えるヒスチジンタグ付きタンパク質の構造が、プロテイン・データ・バンクに寄託されている。ヒスチジンタグを含むタンパク質は、生来のタンパク質と比較してそれらのモザイク性および回折に関して僅かに異なる可能性がある(Hakansson,K.ら、Acta Crystallogr.D Biol.Crystallogr.56巻、924−926頁(2000年))。比較的小さなサイズおよび荷電のヒスチジンタグによって、タンパク質活性はほとんど影響を受けないことは確実であるけれども、原理的に、ヒスチジンタグがタンパク質活性を妨害する可能性があることは排除できない(Wu,J.およびFilutowicz,M.、Acta Biochim.Pol.46巻、591−599頁(1999年))。ヒスチジンタグを、反対側の末端に移動させること(Halliwell,C.M.ら、Anal Biochem.295巻、257−261頁(2001年))、または変性条件下で精製を行うことにより、多くの場合にはこの問題が解決される。
増殖培地中に分泌されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを、ヒスチジンタグを結合することができる粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定させる。例えば、ヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを、金属キレート樹脂上に固定した金属イオンに吸着させることができる。上に記載されているように、このような樹脂は、当業者に周知である。好ましい粒子金属キレート親和性マトリックスは、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)でコーティングされたクロマトグラフィー材料である。これについては、当業者は、欧州特許第0253303号、欧州特許第0282042号および欧州特許第1069131号を認識している。キアゲンは、固定化段階に使用できるQIAexpress精製系を商品化している。同社は、ヒスチジンタグ付き融合ポリペプチドを産生するために使用することができる発現ベクター(pQE)を提供している。これについては、当業者は、米国特許番号第5,284,933号および米国特許番号第5,310,663号も認識している。
金属中心を有するタンパク質の精製には、特に適した精製方法が要求され得る。なぜなら、金属がNTAによって吸着されうるからである。嫌気性条件下での精製にも、Ni2+−NTAが減少するので、特に適した精製方法が要求され得る。それにもかかわらず、ヒスチジンタグを有するプレ−タンパク質の精製が、最も一般的に使用される方法のうちの1つである。
カルボキシペプチダーゼBは補因子としてZn2+を含む。この理由のため、クロマトグラフィー精製のためのマトリックスとしてNi2+−NTAを使用する代わりに、Zn2+が装填された金属キレート親和性マトリックスが好ましい。それにより、Ni2+によるZn2+補因子のあらゆる偶然の歓迎されない置換が避けられる。
したがって、さらにいっそう好ましい粒子金属キレート親和性マトリックスは、Zn2+が装填された(すなわち、Zn2+イオンがその上に固定されている)StreamlineTMキレート吸着剤(アマシャム・バイオサイエンシズ)である。StreamlineTM吸着剤はアガロースベースである。高度に架橋されたアガロースマトリックスのマクロ細孔性構造は、タンパク質のような大型分子についての優れた結合許容量を、高い化学的および機械的安定性と組み合せる。高い機械的安定性は、粒子が、流動層(expanded bed)中を自由に移動する際の摩擦の影響を減らすために、流動層によるクロマトグラフィーで使用されるマトリックスの重要な特性である。有機材料のみから作られた粒子は、限られた密度を示し、そして速い沈降速度が要求されるために非常に大きな直径を有する必要がある。このような大きな粒子直径は、長い拡散経路長を生じ、そしてそれは、相当な物質移動抵抗を生じ、そして生産性を妨害する。したがって、StreamlineTM吸着剤は、有機材料より密度が高い不活性コア材料を含む複合粒子ベースである。このような粒子は、沈降速度が速く、合理的な粒子サイズで粒子を設計することができる。
流動層による吸着は、所望のタンパク質が、別々に洗浄、濃縮および最初に精製することなく供給原料を含む未精製粒子から精製されるワンパス操作である。吸着剤層の流動により、吸着剤粒子の間に距離、すなわち、層中での増大した隙間(空隙容積画分)を作り出し、これにより、カラムへの粗生成物の供給の間に、細胞、細胞破片および他の粒子を制約なく通過させる。
粒子金属キレート親和性マトリックス(StreamlineTMのような)吸着剤を流動させ、そしてカラムに上向きに液体を流すことによって平衡化する。吸着剤粒子が、粒子沈降速度と上向きの液体の流速の間での均衡によって平衡状態に懸濁されると、安定な流動層が形成される。カラムアダプターは、この相の間にカラムの上部に位置決めされる。未精製の洗浄されていない供給物、すなわち、分泌されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBおよび微生物宿主生物を含む培養培地が、拡張および平衡の間に使用されるのと同様に同じ上向きの流れとして流動層に使用される。ヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBは、ヒスチジンタグにより吸着剤に結合させることにより固定されるが、細胞破片、細胞、粒子および混入物は、制約なく通過する。残っている細胞、細胞破片および他の型の粒子材料のような弱く結合した材料は、上向きの液体の流れを使用して流動層から洗い流される。弱く保持された材料が層から洗い流されると、捕捉されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBがトリプシンでのカラム上での切断により活性化され、ここでは上向きの流れの態様が維持される。カルボキシペプチダーゼBが遊離させられ、そしてこれをカラムから洗い流すことができる。フロースルーは標的タンパク質を含み、これは濃縮され、洗浄され、部分的に精製され、そして充填層クロマトグラフィーによるさらなる精製のために準備される。
好ましい粒子金属キレート親和性マトリックス、すなわち、StreamlineTMキレート吸着剤(アマシャム・バイオサイエンシズ)を使用する方法、ならびに立上げ、最適化、および流動層クロマトグラフィーを行う方法は、ファルマシアバイオテックの手引き「Expanded bed adsorption,principles and methods」(ISBN 91−630−5519−8)にさらに詳細に説明されている。カラムを再生させるための一般的な方法もそこに記載されている。
多数の微生物宿主生物体を本発明に使用することができる。主要な要件は、微生物宿主生物体がヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを増殖培地に分泌するように遺伝子操作され、培養されることである。好ましい実施形態では、微生物宿主生物は原核生物である。これに関して、当業者は、大腸菌(E.coli),バシルス属(Bacillus sp.)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)のような細菌をベースとする組換え発現および分泌のための市販されている細菌系を十分に認識している。さらに好ましい実施形態では、微生物宿主生物は微生物である真核生物である。非常に好ましいものは、酵母種である。さらにいっそう好ましい実施形態では、微生物である生物はメチロトローフ酵母株である。
したがって、本発明の別の実施形態において、ヒスチジンタグ付きのラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBは、動物以外の宿主生物としてメチロトローフ酵母を使用して、組換え体法によって産生される。メチロトローフ酵母は、メタノール利用に必要な生化学的経路を有しており、そして細胞形態学および増殖特性に基づいて、4つの属:ハンセヌラ(Hansenula)、ピキア(Pichia)、カンジダ(Candida)、およびトルロプシス(Torulopsis)に分類される。最も高度に開発されているメチロトローフ宿主系では、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris))およびハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)(ピキア・アングスタ(Pichia angusta))を利用する。
酵母での異種タンパク質の発現は、米国特許番号第5,618,676号、米国特許番号第5,854,018号、米国特許番号第5,856,123号および米国特許番号第5,919,651号に記載されている。
酵母生物は、細胞内で合成されるが、細胞の外側で機能する多数のタンパク質を産生する。これらの細胞外タンパク質は、分泌タンパク質と呼ばれる。最初に、分泌タンパク質は、小胞体の膜を通過して細胞の分泌経路への発現産物の効率的な方向付けを確実にするN末端シグナルペプチドを有する前駆体またはプレ−タンパク質の形態で、細胞内で発現される。シグナルペプチドは、一般に、移動の間に所望の産物から切り離される。切断は、シグナルペプチダーゼによるタンパク質分解により行われる。シグナルペプチドのアミノ酸の特定のサブ配列が、シグナルペプチダーゼによって認識され、切断される。このサブ配列は、シグナルペプチダーゼ切断部位と称される。一旦分泌経路に入ると、タンパク質は、ゴルジ体に輸送される。ゴルジ体から、タンパク質は、原形質膜、リソソームおよび分泌小胞に送られる。
分泌タンパク質は、細胞内タンパク質とは対照的に、異なる環境条件に直面する。分泌経路の過程の一部は、成熟しつつある細胞外タンパク質を安定化させることである。したがって、酵母の分泌経路を通過させられるプレ−タンパク質は、特異的な翻訳後プロセシングを受ける。例えば、プロセシングには、細胞内架橋を形成するジスルフィド結合の形成が含まれる。さらに、タンパク質の特定のアミノ酸がグリコシル化されうる。
いくつかのアプローチが、酵母に対して異種であるタンパク質の酵母での発現および分泌のために提案されている。欧州特許第0116201号では、酵母に対して異種であるタンパク質が、所望のタンパク質、シグナルペプチド、およびシグナルペプチダーゼ切断部位として作用するペプチドをコードするDNAを保有している発現ベクターにより形質転換される方法が記述されている。形質転換された生物体の培養物が調製され、増殖させられ、そしてタンパク質が培養培地から回収される。酵母細胞での使用に適切なシグナルペプチドの1つは、サッカロマイセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)由来のα−因子シグナルペプチドであることがわかっている(米国特許番号第4,870,008号)。
分泌の間、酵母酵素KEX−2は、プレ−タンパク質中のその切断部位としてリジン−アルギニン配列を認識するシグナルペプチダーゼである。KEX−2は、所望のタンパク質の配列への連結部で切断する。結果として、所望の遺伝子産物が遊離させられ、そしてリーダー部分、すなわち、プレ−タンパク質のシグナルペプチドから切り離される。KEX−2エンドプロテアーゼは、それが、接合型α−因子とキラー因子の前駆体を特異的にプロセシングするサッカロマイセス酵母で最初に特徴付けられた(Julius,D.ら、Cell 37巻、1075−1089頁(1984年))。ピキア・パストリスのようなメチロトローフ酵母種は、サッカロマイセス・セレビッシェとKEX−2型プロテアーゼを共有する(類似の役割および機能)(Werten,M.W.ら、Yeast 15巻、1087−1096頁(1999年))。
高レベルの組換えタンパク質発現のための宿主として例として記載されている十分に確立されているメチロトローフ酵母種は、ピキア・パストリス(米国特許番号第4,683,293号、米国特許番号第4,808,537号、米国特許番号第4,812,405号、米国特許番号第4,818,700号、米国特許番号第4,837,148号、米国特許番号第4,855,231号、米国特許番号第4,857,467号、米国特許番号第4,879,231号、米国特許番号第4,882,279号、米国特許番号第4,885,242号、米国特許番号第4,895,800号、米国特許番号第4,929,555号、米国特許番号第5,002,876号、米国特許番号第5,004,688号、米国特許番号第5,032,516号、米国特許番号第5,122,465号、米国特許番号第5,135,868号、米国特許番号第5,166,329号、国際公開公報WO00/56903号)である。グルコースが存在しない場合は、ピキア・パストリスは、炭素源としてメタノールを使用し、これは同時にメチロトローフ生物の特性である。配列番号5に示されるアルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターは、メタノール代謝の第一段階を触媒するアルコールオキシダーゼの発現を制御する。一般には、メタノールで誘導された細胞中の全可溶性タンパク質の30%が、アルコールオキシダーゼである。数種のピキア発現ベクターは、AOX1プロモーターを保有しており、そして所望の異種タンパク質の発現を高レベルに誘導するためにメタノールを使用する。発現構築物は、ピキア・パストリスのゲノムへも組込み、そして形質転換された遺伝子的に安定な宿主を作りだす。
シグナルペプチド、またはシグナルペプチダーゼ切断部位を有するシグナルペプチド、および所望のタンパク質を含む異種のプレ−タンパク質をコードする発現ベクターを使用して、分泌タンパク質が精製されうる増殖培地中に、所望の産物を分泌させるために、ピキア・パストリス株のようなメチロトローフ酵母株を操作することができる。実質的に異なるコドン用法を有しているプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を生じることは有利であり得る。
コードされるプロ−カルボキシペプチダーゼBポリペプチドに関して、配列番号3に含まれるヌクレオチド配列は、遺伝子コードの縮重のため、配列番号1のような以前に公開されているヌクレオチド配列とは異なる。配列番号3の286位から1497位までのヌクレオチド配列は、配列番号1の40位から1248位までのヌクレオチド配列と同じポリペプチドをコードする。しかし、配列番号3は、2つのアミノ酸交換、すなわち、Lys201AsnおよびArg329Aspが組込まれている。これらのアミノ酸交換は、国際公開公報WO96/23064号で立証されている。用語「縮重コード」は、遺伝子コード中の特定のアミノ酸が、2以上の異なるコドンによってコードされうることを示す。縮重は、64個の可能な塩基トリプレットのうち、3つが終止シグナルをコードするように使用され、そして他の61個は、20個しかない種々のアミノ酸をコードするように残されるという事実のために生じる。
したがって、コドンは、プレ−タンパク質の発現が、特定のコドンが宿主によって利用される頻度に一致して、特定の酵母発現宿主で起こる率を増大させるために選択されうる。コードされるアミノ酸配列を変化させることなく、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更させる他の理由には、自然界に存在している配列から産生される転写物よりも長い半減期のような、さらに望ましい特性を示すRNA転写物の産生が含まれる。配列番号3のヌクレオチド配列は、この方法で最適化されたコード配列の一例である。
発現に適格な、すなわち、プロモーターまたはプロモーターエレメントに、およびターミネーターまたはターミネーターエレメントに、さらには効率的な翻訳に必要な配列に作動可能に連結されているプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを使用して、宿主生物体がベクターで形質転換され、そして形質転換体が選択される。その後、形質転換体は、増殖培地に分泌された組換えタンパク質の収量に関して分析される。最も多量の組換えタンパク質を分泌する形質転換体が選択される。したがって、最も多量のヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを分泌する形質転換体が選択される。
一方で、発現量は、所望の産物の適切な標的化、いわゆる、シグナルペプチドの手段による酵母の分泌経路へのプレ−タンパク質の標的化に依存する。シグナルペプチドの一例は、配列番号3の1位から255位までにコードされるサッカロマイセス・セレビッシェ由来のα−因子シグナルペプチドである。他方、発現量は、所望の産物をコードする遺伝子の量を増大させること、すなわち、宿主生物体中の発現構築物のコピー数を増幅することにより、増加させることができる。これを達成するための1つの方法は、所望の産物をコードする発現ベクターの複数回の形質転換によるものである。別の方法は、第一および第二の発現ベクターを使用して、宿主生物体に所望の産物をコードする遺伝子を導入することであり、ここでは、第二の発現ベクターは、第一の発現ベクター中で使用される選択マーカーとは異なる選択マーカーをベースとする。同じ所望の産物をコードする第二の発現ベクターは、宿主生物体がすでに第一の発現ベクターの複数のコピーを保有している場合もなお導入することができる(米国特許番号第5,324,639号;Thill,G.P.ら、「ピキア・パストリスでの複数コピーが組込まれた発現の正および負の効果」、International Symposium on the Genentics of Microorganisms 2巻(1990年)、477-490頁;Vedvick,T.ら、J.Ind.Microbiol.7巻、197-201頁(1991年);Werten,M.W.ら、Yeast 15巻、1087-1096頁(1999年))。
プロ−カルボキシペプチダーゼBの分泌は、細胞質外空間に組換えタンパク質を向け、ここから増殖培地中へと拡散する。したがって、本発明の好ましい実施形態では、メチロトローフ酵母は液体培養基中で増殖させられ、そしてプロ−カルボキシペプチダーゼBが、液体増殖培地、すなわち液体培養培地中に分泌される。これにより、例えば、流動層クロマトグラフィー技術を使用して、組換えタンパク質からの酵母バイオマスの非常に効率的な分離が可能である。結果として、他の望ましくない酵素活性から、供給源である酵母生物体から精製されたプロ−カルボキシペプチダーゼBを、効率よく分けることができる。
好ましい実施形態では、メチロトローフ酵母株が形質転換されるベクターに関して、当業者は、いわゆる「ヒスチジンタグ」、「(ポリ)ヒスチジンタグ」または「ヒスチジン-タグ」を含む融合ポリペプチドを構築できる発現ベクターを熟知している。本発明の好ましいプレ−タンパク質では、ヒスチジンタグがプロ−カルボキシペプチダーゼBポリペプチドのN末端に融合されている。ヒスチジンタグは、全部で6個の連続するヒスチジン残基を含む。これに関して当業者は、プロ−カルボキシペプチダーゼBポリペプチドのN末端アミノ酸がヒスチジンであるということにも注目する。したがって、プレ−タンパク質をコードする注釈付きのヌクレオチド配列中には、ヒスチジンタグの最後のヒスチジンのコドンがプロ−カルボキシペプチダーゼB部分の最初のヒスチジンをも示すという点での、融合されたコード配列の重複がある。
活性化、すなわち、固定化ヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBのトリプシン切断の後も、ヒスチジンタグ付きプロペプチド部分は、粒子金属キレート親和性マトリックスに結合したままである。活性化されたカルボキシペプチダーゼBは、粒子金属キレート親和性マトリックスから段階(f)で遊離させられ、そして分離される。したがって、液相から粒子金属キレート親和性マトリックスを分離することにより、同時に、カルボキシペプチダーゼB酵素からプロペプチドを分離する。この方法が使用されて、カルボキシペプチダーゼB分子へのプロペプチドの非共有結合が回避される。
ベクターは、ヒスチジンタグ(ヒスチジンタグ)にN末端で融合されているラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBおよびシグナルペプチドから構成されるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むことが好ましい。ここでは、ヒスチジンタグとシグナルペプチドとの間に、必要に応じてスペーサー配列を挿入することもできる。ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBのアミノ酸配列が、配列番号3の14位から415位までのアミノ酸配列であることがさらに好ましい。シグナルペプチドが、ヒスチジンタグに隣接して、またはスペーサー配列に隣接して配置されるシグナルペプチダーゼ切断部位を含むこともまた好ましい。発現されるプレ−タンパク質のアミノ酸配列が、配列番号4のアミノ酸配列であることが非常に好ましい。ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBをコードするヌクレオチド配列が、配列番号3の286位から1497位までのヌクレオチド配列であることがなおいっそう好ましい。プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、配列番号3のヌクレオチド配列であることがなおいっそう好ましい。プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列がプロモーターまたはプロモーターエレメントに作動可能に連結されていることがさらにいっそう好ましい。
プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列の転写を可能にするために、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、プロモーターまたはプロモーターエレメントに作動可能に連結されていることが好ましい。ピキア・パストリス由来のプロモーターまたはプロモーターエレメントが非常に好ましく、配列番号5に示されるピキア・パストリスAOX1プロモーターがいっそうさらに好ましい。さらに、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、メチロトローフ酵母株での転写の終結を指示するターミネーター配列と作動可能に連結されることも好ましい。ピキア・パストリス由来のターミネーターが非常に好ましく、ピキア・パストリスAOX1ターミネーターがいっそうさらに好ましい。
ベクターは、メチロトローフ酵母株中でエピソームとして複製され得るプラスミドであることがさらに好ましい。したがって、好ましいプラスミドは、メチロトローフ酵母株中でのエピソームの複製を指示する複製起点を含む環状の核酸分子である。さらに、プラスミドは、メチロトローフ酵母株で発現される選択マーカーを含み、ここでは、選択マーカーにより、メチロトローフ酵母株中にプラスミドが存在するかどうかについて選択できる。非常に好ましい選択マーカーは、ストレプトアロテイクス・ヒンダスタヌス(Streptoalloteichus hindustanus)由来のSh ble遺伝子の天然型、または遺伝子操作された変異体であるゼオシン(登録商標)耐性遺伝子である(Drocourt,D.ら、Nucleic Acids Res. 18巻、4009頁(1990年);Carmels,T.ら、Curr.Genet.20巻、309-314頁(1991年))。別の非常に好ましい選択マーカーは、ハイグロマイシンおよびG418のようなアミノグリコシド抗生物質に対する耐性を付与する(Southern,P.J.およびBerg,P.、J.Mol.Appl.Genet.1巻、327-341頁(1982年))。このような選択マーカーの一例は、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子である。
メチロトローフ酵母株中で複製され得る人工染色体が、ベクターを含むことが、さらに好ましい。したがって、好ましい人工染色体は、少なくとも1つの複製起点、セントロメアおよび末端テロメアを含み、それにより、メチロトローフ酵母株中での人工染色体の複製、完全性、および有糸分裂/減数分裂分布を制御する、直鎖状の核酸分子である。さらに、人工染色体に含まれるベクターは選択マーカーを含む。これはメチロトローフ酵母株中で発現され、そしてメチロトローフ酵母株中で複製される人工染色体中にベクターが存在するかどうかについて選択できる。非常に好ましい選択マーカーは、ストレプトアロテイクス・ヒンダスタヌス(Streptoalloteichus hindustanus)由来のSh ble遺伝子の天然型、または人工変異体であるゼオシン(登録商標)耐性遺伝子である。別の非常に好ましい選択マーカーは、ハイグロマイシンおよびG418のようなアミノグリコシド抗生物質に対する耐性を与える。このような選択マーカーの一例は、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子である。
メチロトローフ酵母株の染色体がベクターを含むことが、さらにいっそう好ましい。ベクターが、染色体配列と同じヌクレオチド配列を有し、これにより、部位特異的組換えによって宿主染色体へのベクターの組込みが可能となることが、非常に好ましい。このためには、ピキア・パストリスAOX1遺伝子座が、部位特異的組換えによる宿主染色体の組込みのための遺伝子座としてなおいっそう好ましい。ベクターがメチロトローフ酵母株中で発現される選択マーカーを含むことも非常に好ましく、これによりメチロトローフ酵母株中にベクターが存在するかどうかについて選択できる。非常に好ましい選択マーカーは、ストレプトアロテイクス・ヒンダスタヌス(Streptoalloteichus hindustanus)由来のSh ble遺伝子の天然型または人工変異体であるゼオシン(登録商標)耐性遺伝子である。別の非常に好ましい選択マーカーは、ハイグロマイシンおよびG418のようなアミノグリコシド抗生物質に対する耐性を与える。このような選択マーカーの一例は、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子である。
当業者は、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列のコピーの数を増加させると、液体増殖培地のような増殖培地から得ることができる分泌されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBの量を増加させることができることを知っている。したがって、メチロトローフ酵母株のゲノム中のベクターのコピーの数を増大させると、増殖培地から得ることができる分泌されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼB分子の量を増加させることができる。例えば、メチロトローフ酵母株をベクターでの形質転換の繰り返し、およびベクター中に含まれる選択マーカーがそれに対する耐性を付与する漸増濃度の選択試薬を使用した選択ラウンドの繰り返しに供することによって、ベクターのコピー数を増加させることができる(米国特許番号第5,324,639号;Thill,G.P.ら、「ピキア・パストリスでの複数コピーが組込まれた発現の正および負の効果」、International Symposium on the Genentics of Microorganisms 2巻(1990年)、477-490頁;Vedvick,T.ら、J.Ind.Microbiol.7巻、197-201頁(1991年))。
当業者は、形質転換の繰り返しを、1つ以上のベクターを使用して行うことができると認識している。例えば、形質転換の繰り返しは、第一および第二のベクターを使用して行うことができる。ここでは、第一および第二のベクターは同じプレ−タンパク質をコードし、第一および第二のベクター中のプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーターまたはプロモーターエレメントに作動可能に連結されており、それにより同じプレ−タンパク質が発現され、そしてヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBが分泌され、そして第一および第二のベクターは、第一および第二の選択マーカーへの耐性を付与する。
第一の選択マーカーの一例は、ゼオシン(登録商標)耐性遺伝子であるSh ble遺伝子である(Drocourt,D.ら、Nucleic Acids Res. 18巻、4009頁(1990年);Carmels,T.ら、Curr.Genet.20巻、309-314頁(1991年))。Sh ble遺伝子によってコードされるタンパク質は、化学量論的に、そして強力な親和性でゼオシン(登録商標)を結合する。ゼオシン(登録商標)の結合はその毒性活性を阻害し、それによりSh ble遺伝子を含む形質転換体を選択する。培地中の選択試薬としてのゼオシン(登録商標)の漸増濃度により、Sh ble遺伝子を発現するベクターのコピーの数の増大について選択することは当業者に知られている。したがって、形質転換を繰り返すことによりそのベクターの複数のコピーを含むメチロトローフ酵母株の多重の形質転換体を作製するためには、選択マーカーとしてSh ble遺伝子を含むベクターを使用することが有利である。さらに、形質転換が繰り返され、そして形質転換されたメチロトローフ酵母株について、ゼオシン(登録商標)に対する耐性のレベルのさらなる増大がもはや得られなくなるまで、または選択培地中のゼオシン(登録商標)濃度をさらに増大させることができなくなるまで、より耐性の強い形質転換体についての選択が繰り返されることが、有利である。
第一および第二のベクターが使用される場合の第二の選択マーカーの一例は、G418のようなアミノグリコシド抗生物質に対する耐性である(Southern,P.J.およびBerg,P.、J.Mol.Appl.Genet.1巻、327-341頁(1982年))。したがって、例示的には第二のベクターは、G418に対する耐性を付与する耐性遺伝子を発現する。例えば、アミノグリコシド抗生物質に耐性を付与する数種のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼが当該分野で知られる(van Treeck,U.ら、Antimicrob Agents Chemother.19巻、371-380頁(1981年);Beck,E.ら、Gene 19巻、327-336頁(1982年))。アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼI(APH−I)酵素は、抗生物質G418を不活化する能力を有し、そして酵母において確立されている選択マーカーである(Chen,X.J.およびFukuhara,H.、Gene、69巻、181-192頁(1988年))。
したがって、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列の量をさらに増大させるためには、第二のベクターが、さらに多くの回数の形質転換および選択に有利に使用され、この場合には、好ましい選択試薬はG418であり、形質転換には、第一のベクターで形質転換されたメチロトローフ酵母株が使用される。
メチロトローフ酵母株が、ハンセヌラ、ピキア、カンジダまたはトルロプシス種であることがさらに好ましい。本発明の非常に好ましい実施形態では、メチロトローフ酵母株は、ピキア・パストリス、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、カンジダ・ボイジニ(Candida boidinii)およびトルロプシス・グラブラタ(Torulopsis glabrata)からなる群より選択される。
なおいっそう好ましいピキア・パストリス株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に、寄託番号第201178号、第201949号、第204162号、第204163号、第204164号、第204165号、第204414号、第204415号、第204416号、第204417号、第20864号、第28485号、第34614号、第60372号、第66390号、第66391号、第66392号、第66393号、第66394号、第66395号、第76273号、第76274号、および第90925号で寄託されている。
さらに、なおいっそう好ましいメチロトローフ酵母株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション寄託番号第76273号のピキア・パストリス株またはその誘導株である。
なおいっそう好ましいハンセヌラ・ポリモルファ株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに、寄託番号第14754号、第200499号、第200500号、第200501号、第200502号、第200503号、第200504号、第200505号、第200506号、第200507号、第200508号、第200509号、第200510号、第200511号、第200512号、第200513号、第200838号、第200839号、第201322号、第204205号、第22023号、第26012号、第34438号、第36669号、第38626号、第44954号、第44955号、第46059号、第48180号、第58401号、第62809号、第64209号、第66057号、第76722号、第76723号、第76760号、第90438号、第96694号、第96695号、MYA-335、MYA-336、MYA-337、MYA-338、MYA-339、およびMYA-340で寄託されている。
なおいっそう好ましいカンジダ・ボイジニ株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに、寄託番号第18810号、第201209号、第20432号、第26175号、第32195号、第32929号、第36351号、第38256号、第38257号、第44637号、第46498号、第48180号、第56294号、第56507号、第56897号、第60364号、第62807号、第90439号、第90441号、第96315号、および第96926号で寄託されている。
なおいっそう好ましいトルロプシス・グラブラタ株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに、寄託番号第15126号、第15545号、第2001号、第22019号、第26512号、第28226号、第28290号、第32312号、第32554号、第32936号、第34147号、第34449号、第36909号、第38326号、第4135号、第46433号、第48435号、第58561号、第66032号、第750号、および第90030号で寄託されている。
本発明の別の実施形態は、配列番号5に記載されているピキア・パストリスAOX1プロモーターまたはそのプロモーターエレメントと作動可能に連結されている、ヒスチジンタグにN末端で融合されたラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBおよびシグナルペプチドから構成されるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを含む染色体を有している、形質転換されたピキア・パストリス株である。ここでは、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列は配列番号3のヌクレオチド配列である。ベクターが、ヒスチジンタグ(ヒスチジンタグ)にN末端で融合されたラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBおよびシグナルペプチドから構成されるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むことが好ましく、ここでは必要に応じて、ヒスチジンタグとシグナルペプチドとの間にスペーサー配列を挿入することも出来る。
本発明のさらに別の実施形態は、本発明の方法により得ることができる、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まないカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質である。用語「実質的に含まない」とは、プロペプチドが、質量分光検出手段を用いた場合の検出レベルよりも低いことを示す。例示的な分析は、実施例8に記載される。
実施例8に示されるように、カルボキシペプチダーゼB活性を示す精製されたタンパク質は、大部分はC末端チロシンを(配列番号4でTyr497)を欠く。精製されたタンパク質の非常に小さな分画のみが、なおこのアミノ酸を含む。したがって、本発明のカルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まないカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質は、配列番号4の191位から496位までのアミノ酸配列を有する。
実施例9は、実施例7による第一の精製段階の後、回収されたプールには、ほぼ等量の、C末端チロシンを有する産物と有さない産物を含む産物が含まれる。その処理の間に、末端チロシン残基は徐々に除去される。第二のクロマトグラフィーによる精製段階の後、優勢なタンパク質種は、C末端チロシンをほぼ完全に欠いている。その説明は試みられていないが、産物を発現および分泌するために使用される宿主生物が、カルボキシペプチダーゼY活性を示すタンパク質を産生する可能性がある。広範な特異性を示すC末端アミノ酸を切除できるサッカロマイセス・セレビッシェ由来のカルボキシペプチダーゼYが知られている。カルボキシペプチダーゼYは、液胞酵素であることが知られている(Kato,M.ら、Eur.J.Biochem 270巻、4587−4593頁(2003年))が、溶解させられた酵母細胞は、発酵ブロス中に注目すべきカルボキシペプチダーゼY活性を生じ得る。しかし、C末端チロシンを除去してもカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質の全体的な酵素的特性は変化させないままであり、それ以上のアミノ酸はC末端から除去されていないので、想定されるカルボキシペプチダーゼY活性の不活化またはさらなる分離は必要ないと考えられる。
本発明のさらに別の実施形態は、本発明のカルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まないカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を、ペプチド結合のタンパク質分解性切断のために使用することである。ペプチド結合の切断は、ポリペプチドのC末端位置からの塩基性アミノ酸であるリジン、アルギニン、およびオルニチンの加水分解を触媒することによって行われる。カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4の191位から496位までのアミノ酸配列であることがさらに好ましい。
非常に好ましいのは、インスリンの前駆体のペプチド結合が切断されることに特徴がある、本発明のカルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まないカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質の使用である。そのための方法は、例えば、欧州特許第0264250号および欧州特許第0195691号に記載されている。したがって、インスリンの前駆体は、トリプシン、およびカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質によってタンパク質分解により切断される。カルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質が、インスリン前駆体のトリプシン性タンパク質分解産物のC末端位置から、塩基性アミノ酸であるリジン、アルギニン、およびオルニチンの加水分解性切断を触媒することが、なおいっそう好ましい。
本発明のさらに別の実施形態は、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まない本発明のカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質を含む試薬溶液である。試薬溶液中にカルボキシペプチダーゼB活性を示すタンパク質が、ペプチドまたはポリペプチドのC末端から塩基性アミノ酸であるリジン、アルギニン、およびオルニチンの加水分解性切断を触媒できることが好ましい。試薬溶液中のカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質のアミノ酸配列が、配列番号4の191位から496位までのアミノ酸配列であることが、なおいっそう好ましい。カルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を含む試薬溶液は、通常、さらに緩衝塩を含む水溶液である。しかし、別の成分が可能であり、そして当業者に周知である。別の成分の一例は、トリプシンである。
以下の実施例、参考文献、配列表および図面は、本発明の理解を助けるために提供され、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲で示されている。本発明の概念から逸脱することなく記載されている手順に変更を加えることができると理解される。
実施例1
プレ−タンパク質をコードする遺伝子の合成
標準的な手順(Sambrook、Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3版、CSHL Press、2001年)によって、DNA技術を行った。供給業者に推奨されている分子生物学的研究のための試薬を使用した。
配列番号3の人工的プレ−プロ−カルボキシペプチダーゼB遺伝子をコードするヌクレオチド配列を新たに合成した。ヌクレオチド配列の一部を、54から90のヌクレオチド長を示す24の一本鎖DNAオリゴヌクレオチドとして合成した。一本鎖オリゴヌクレオチドは、配列番号3のリーディング鎖とラギング鎖の一部が重複している別の形態を示した。各オリゴヌクレオチドを、5’および3’末端が、隣接するオリゴヌクレオチドと重複するように設計した。例外として、配列番号3の5’および3’末端を示すオリゴヌクレオチドは、それぞれ、隣接するフラグメントの3’および5’末端とだけ重複した。重複部分の配列は、アニーリング反応の間の非特異的アニーリングを避けるように選択した。配列番号3の5’および3’末端を示すオリゴヌクレオチドには、人工的に作製したコード配列を発現ベクターに挿入することのような、分子クローニングの別の段階を促進するために、さらに、制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含むリンカー配列を含めた。配列番号3の5’末端を示すオリゴヌクレオチドについての好ましい制限部位は、XhoIであった。配列番号3の3’末端を示すオリゴヌクレオチドについての好ましい制限部位は、NotIであった。
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって、配列番号3のヌクレオチド配列を含む核酸分子を、段階的に合成した。原則的に、リーディングおよびラギング鎖の隣接する部分的に重複する部分を示す最初の2つのオリゴヌクレオチドを、PCR反応混合液に添加した。数回のPCRサイクルの後、リーディングおよびラギング鎖の両方の部分を示す連続する二本鎖フラグメントを得た。二本鎖フラグメントを必要に応じて精製し、連続する隣接する部分的に重複している一本鎖オリゴヌクレオチドと混合し、そして次の回のPCRを行った。
上記の手順を使用して、配列番号3のヌクレオチド配列の3つの大きなフラグメントを別々に合成した。それぞれのフラグメントは、副生成物の混合物として存在し得た。したがって、フラグメントをアガロースゲル上で電気泳動し、そしてそれらのサイズによって同定した。所望のフラグメントを含むアガロースブロックを切取り、そしてDNAフラグメントを、キアクイックゲル抽出キット(キアゲン)を使用して単離した。他の抽出方法も可能である。
3つのフラグメントのうち、第二のフラグメントにはその5’末端に、第一のフラグメントの3’末端との配列重複があり、そして第二のフラグメントにはその3’末端には、第三のフラグメントの5’末端との配列重複がある。配列番号3の全長配列を段階的様式で再度合成した。3つのフラグメントを、PCR反応混合液で単一のものとした。最も低い融点を示す重複配列を考慮して、アニーリング温度を選択した。5サイクルのPCRを行い、続いて所望の全長産物の5’末端および3’末端に相補的なプライマーの別の対を添加した。低融解温度を示す新たに加えられたプライマーのアニーリング温度に関して選択したアニーリング温度を使用して、さらに25サイクルのPCRを行い、そして配列番号3のヌクレオチド配列を含む全長フラグメントを得た。全長フラグメント(すなわち、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を有するリンカー配列を含む全長のプレ−タンパク質をコードするDNA)をベクターに挿入し、そして形質転換した宿主生物中で増殖させた。増殖に好ましい宿主生物は、大腸菌であった。
配列番号4のプレ−タンパク質をコードする配列を含む全長DNAのヌクレオチド配列を、配列決定によって確認した。最終的な全長産物を、PCRを使用して増幅させた。
実施例2
ベクターの構築、形質転換、発現
発現ベクターの構築、形質転換、プレ−タンパク質の発現、およびヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBの増殖培地への分泌に関するその後の段階については、インビトロゲンの手引き「ピキア発現キット」バージョンM011102 25−0043、「pPICZ A、BおよびC」バージョンD110801 25−0148、「pPICZαA、BおよびC」バージョンE010302 25−0150、および「pPIC9K」バージョンE030402 25−0106に提案され、記述されている方法を使用した。ここに明記される別のベクター、酵母株および培地も参考にした。分子生物学の基本的方法は、Sambrook、Fritsch &Maniatis,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3版、CSHL Press、2001年に記載されているように行った。
結果として、数種のベクターを得た。これらのそれぞれが、メチロトローフ酵母株中で配列番号4のプレ−タンパク質を発現させることができる発現カセットを含む。好ましい酵母株は、ピキア・パストリス株であった。各ベクターは、さらに他の遺伝子エレメントの中で、メチロトローフ酵母細胞中で自律的にベクターを複製することができる複製起点を含む。さらに、ベクターを、宿主細胞のゲノムに組込めるように設計した。各ベクター上の別の遺伝子エレメントは、選択マーカーを発現する別の発現カセットであった。
分泌されたヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBの収量を増加させるために、ピキア・パストリ宿主株の形質転換を繰り返し行った。
実施例3
タンパク質の定量
1cm幅のキュベットを使用して、280nmでの吸光度を測定することにより、精製されたラットのカルボキシペプチダーゼBの定量を行った。濃度を、以下の式によって測定した:
Figure 2010046074
実施例4
タンパク質活性
25℃の100mMトリス(pH7.8)中の1.5Mヒプリル−L−アルギニン(バッケム G−2265)、および0.5cm幅のキュベットを使用して、カルボキシペプチダーゼBの活性を測定した。
実施例6および実施例7に従って、3つの異なる産生群から得られた、1、2および3で示される試料を分析した。分析結果を以下の表に示す。
Figure 2010046074
実施例5
HPLC分析
ヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBからのカルボキシペプチダーゼBの活性化を、HPLC(高圧液体クロマトグラフィー)およびゲル濾過分離法(スパーデックス75HR10/30、アマシャム・バイオサイエンシズ)を使用してモニターした。クロマトグラフィー用緩衝液は、0.1Mトリス(pH7.5)、0.3M NaClであった。流速は、0.5ml/分であった。
カルボキシペプチダーゼBとヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBの滞留時間は明らかに異なり(1.2ml)、これにより溶出プロフィールにおけるそれらの認識は容易であった。
実施例6
発酵
文献(Higgins,D.R.、Cregg,J.M.(1998年)Pichia Protocols. Methods in Molecular Biology 103巻で、全文書、しかし特に107−120頁で;Stratton,J.、Chiruvolu,V.、Meagher,M.(1998年)高細胞密度発酵。Pichia Fermentation Guidelines,インビトロゲン)の記載に従って一般的方法を行った。
配列番号4のプレ−タンパク質を発現できる形質転換されたピキア・パストリス株の前培養を、アミノ酸を含まない酵母窒素基本培地(DIFCO)中で30℃で行った。前培養物を用いて、発酵培地に接種した。発酵培地には、無機物質、H3PO4、CaSO4×2H2O、K2SO4、MgSO4×7H2O、KOH、NaOH、微量要素CuSO4×5H2O、KJ、MnSO4×H2O、Na2MoO4×2H2O、H3BO4、ZnCl2、CoCl2×6H2O、およびFeSO4×7H2Oを含めた。発酵培地には、ビオチンとグリセロールも含めた。pHをpH5.0に調節し、そして同時に、窒素源として作用するNH3を使用してその値を維持した。
第一の炭素源であるグリセロールが枯渇すると、メタノールを添加し、それにより、AOX1プロモーターによって駆動されるプレ−タンパク質の発現を誘導した。
実施例7
精製
20mMトリス(pH7.5)、1M NaClおよび1mMイミダゾールを含む緩衝液を加えることによって、発酵ブロスの液体マスの分画を、5−13%に調整した。希釈した発酵ブロスを、粒子金属キレート親和性マトリックスを有するカラムを通過させた。好ましい粒子金属キレート親和性マトリックスは、Zn2+装填StreamlineTMキレート剤(アマシャム・バイオサイエンシズ)であった。流動層クロマトグラフィー技術を使用して、ヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを有するカラム中に粒子金属キレート親和性マトリックスを装填した。上記の条件下で、希釈した発酵ブロス中のヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBは、粒子金属キレート親和性マトリックスに結合、すなわち、吸着する。
結合段階後、(まだ流動)カラム中の粒子金属キレート親和性マトリックスを、20mMトリス(pH7.5)、1M NaCl、および1mMイミダゾールを含む洗浄緩衝液で洗浄した。ヒスチジンタグ付きプロ−カルボキシペプチダーゼBを、粒子金属キレート親和性マトリックスに結合させたままにする条件下で、数回(少なくとも2回)の洗浄段階を行った。11%[体積/体積]のグリセロールをさらに含む洗浄緩衝液を使用して、第一の洗浄段階を行った。グリセロールを含まない洗浄緩衝液を使用して、任意の追加の洗浄段階を行った。
カルボキシペプチダーゼBの活性化は、トリプシンでのカラム上での切断により行った。洗浄段階に続いて、トリプシン(13〜20U/ml)を含む緩衝液(20mMトリス(pH7.5)、1M NaClおよび1mMイミダゾール)を、カラムを通して送り、ここではカラムに残っている緩衝液をカラムに再使用した。150〜300分後、活性化されたカルボキシペプチダーゼBをここでさらに含む緩衝液を取り出した。カラムを、洗浄緩衝液を使用して上向きの流れの形態で洗浄し(2から3回までの洗浄段階)、フロースルーを回収した。活性化されたカルボキシペプチダーゼBをここでさらに含む緩衝液、および洗浄段階によるフロースルーをプールした。1mMの最終濃度まで塩酸ベンズアミジニウムを添加することによって、トリプシン活性を停止させた。
活性化されたカルボキシペプチダーゼBとトリプシンを含む緩衝液を濾過して、最後に残った微量の残渣バイオマスを除去した。濾過した緩衝液を接線のフロー濾過によって透析した。60−100mMの濃度でトリス(pH8.3)を含み、そしてさらに、1mM塩酸ベンズアミジニウム、0.1mM ZnCl2を含む透析緩衝液を使用した。透析により、活性化されたカルボキシペプチダーゼがその中に存在する緩衝液を交換した。
次の段階は、Q−セファロースff(登録商標)クロマトグラフィーであった。活性化されたカルボキシペプチダーゼがその中に存在する緩衝液を、Q−セファロースff(登録商標)を含むカラムにかけた。60〜100mMのトリス(pH8.3)、1mM塩酸ベンズアミジニウム、0.1mM ZnCl2を使用して洗浄段階を行った。洗浄段階後、125mM NaClまでの勾配をかけて、カラムを溶出した。画分を回収した。カルボキシペプチダーゼBを含む画分をプールした。
実施例8
精製されたカルボキシペプチダーゼBの質量スペクトル分析
実施例7によってカルボキシペプチダーゼBを精製した。質量スペクトル分析の前に、自動サンプリング装置(ギルソン234)を備えたマイクロHPLCデバイス(ABI−120A)を使用して、酵素調製物を脱塩した。使用したカラムは、適切なガードホルダーとともにバイダック・タンパク質C4カートリッジ(バイダックのカタログ番号214GD51号)である。50μg〜100μgのタンパク質を含む酵素調製物のアリコートを、カラムにかけ、そして溶出緩衝液A(HPLC等級の水[ベーカー]中の3.5%「プロアナリシ」等級HCOOH[蟻酸])と緩衝液B(HPLC等級の水[ベーカー]中の80%HPLC等級のアセトニトリル、5%HPLC等級のHCOOH)の勾配を使用して溶出した。最初の5分間は、5%緩衝液B、95%緩衝液Aを用いて、その後のさらに3分間は、100%緩衝液Bを用いて溶出するよう勾配をかけた。HPLCの間、カラムの温度を35℃に維持した。酵素を、280nmの波長で検出した。酵素は、t5分およびt8分の間に溶出したことが分かった。タンパク質ピークを回収した(30mAU〜40mAUまで;最大ピーク>800mAU)。
ナノスプレーインターフェースを備えたQ−Tof2(登録商標)(英国マンチェスターのウォーターズ・マイクロマス)で質量スペクトル分析を行った。この装置は、200−2000のm/zを示すペプチドまたはタンパク質イオン、および800−2000のm/zを示すタンパク質イオンを選択できる。スプレーキャピラリティーは、プロキセオン(「メジウム」、カタログ番号ES387号)から得た。キャピラリー電圧、コーン電圧、およびMSプロフィールに関しては変更できるパラメーターを用いて測定を行った。測定範囲を考慮して、分析する各サンプルについて、パラメーターを調節した。分析には、MaxEnt1(登録商標)パッケージ(ウォーターズ)のソフトウエアーMassLynx4.0(登録商標)を使用した。質量スペクトルデータに使用した最大エントロピープロセシングを使用して、タンパク質混合物の分析によって得られた重複する多価スペクトルのデコンボリューションすることによって、MaxEnt1(登録商標)により、複合スペクトルの増強を助けた。10,000Da未満の指示質量は、モノアイソトピックであり、10,000Da以上の質量が、平均質量である。
質量スペクトル分析により、酵素調製物、すなわち、精製されたカルボキシペプチダーゼBが、基本的に3つの異なる質量ピークを生じたことが分かった:(1)35,015Daの(平均)質量に対応する主要ピーク[図2bでAと示す]は、C末端チロシンを欠くカルボキシペプチダーゼBを示している;(2)約70,026Daの質量に対応する小さいピークも見出され(示されない)、これはC末端チロシンを欠くカルボキシペプチダーゼBの二量体を示している;(3)約35,176Daの質量に対応する小さいピークはC末端チロシンを含むカルボキシペプチダーゼBを示している。
理論的には、ヒスチジンタグ付きプロペプチドに対応するピークは、(a)Arg85とSer86の間を切断するKEX−2シグナルペプチダーゼ、および(b)Arg190とAla191の間を切断するトリプシンによって、配列番号4のアミノ酸配列から生じた105個のアミノ酸の12,132Daペプチドを反映しているはずである。さらに、ヒスチジンタグ付きプロペプチドのフラグメントが必要であり得る。これらは、Ser86からArg178までの配列を含む10,746Daのペプチド、およびAsn179からArg190までの配列を含む1,404Daのペプチドを含む。図3および4の「(a)」部分は、12,132Daおよび10,746Daペプチドが、酵素調製物中に存在するかどうかを予想する仮定的ピークを示す。「(b)」部分は、図2aで示されるもののようなスペクトルの拡大図を示す。仮定的ピークの位置で酵素調製物のスペクトルで検出されるものがないことが、見られうる。さらに、図5は、酵素調製物で得られたスペクトルの部分図を示す。想定される1,404Daのペプチドは、m/z=702.8([M+2H]2+)およびm/z=468.9([M+3H]3+)でピークを生じると予想される。しかし、プロペプチドの存在を示す目だったピークは、存在しなかった。
さらに、主要ピークに対応するポリペプチドのN末端アミノ酸配列を決定した。15個のN末端アミノ酸は、「ASGHSYTKYNNWETI」であることが分かった。これらは、配列番号4のアミノ酸191から205までと同じであり、すなわち、これらは、活性化されたカルボキシペプチダーゼB酵素のN末端を示す。
実施例9
C末端チロシンの除去
実施例7によりカルボキシペプチダーゼBを精製した。画分および洗浄溶液を含むプールされたカルボキシペプチダーゼBからサンプルを取り出した。実施例8によって、質量スペクトル分析を行った。結果を図6に示す。図7は、Q−セファロースff(登録商標)クロマトグラフィーの後のサンプルの結果を示し、そして図8は最終産物を示す。最初は、約50%以上のカルボキシペプチダーゼBが、C末端チロシンを含むことが、明らかになる。2回目のクロマトグラフィーの後、大部分のタンパク質種は、すでにC末端チロシンを欠いている。しかし、C末端分解は、C末端チロシンに限定された。
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本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]a)ヒスチジン−タグおよびシグナルペプチドにN末端で融合されるラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBからなるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供し、ここで任意に、ヒスチジン−タグとシグナルペプチドの間、またはヒスチジン−タグとラットのカルボキシペプチダーゼBの間にスペーサー配列が挿入される、工程;
(b)微生物宿主生物を該ベクターで形質転換させる工程;
(c)栄養素および炭素源を含む増殖培地中で該微生物宿主生物を培養し、それにより微生物宿主生物がプレ−タンパク質を発現し、増殖培地中にヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを分泌する、工程;
(d)工程(c)の増殖培地中の分泌ヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBをヒスチジン−タグに結合可能な粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定し、粒子金属キレート親和性マトリックスを洗浄し、それによりヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBが固定される、工程;
(e)トリプシン含有バッファー中で工程(d)の固定されたヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを有する粒子金属キレート親和性マトリックスをインキュベートし、タンパク質分解でプロ−カルボキシペプチダーゼB部分を切断し、液相にカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を放出し、それによりヒスチジン−タグ付プロペプチド部分が固定される、工程;
(f)粒子金属キレート親和性マトリックスからカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を含む液相を分離し、それによりヒスチジン−タグ付プロペプチド部分が固定される、工程;ならびに
(g)工程(f)の液相からカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を精製する工程
を含む、カルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を産生する方法。
[2]微生物宿主株がメチロトローフ酵母株であることを特徴とする、[1]記載の方法。
[3]ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBのアミノ酸配列が配列番号:3の14位〜415位のアミノ酸配列であることを特徴とする、[1]または[2]記載の方法。
[4]シグナルペプチドが、ヒスチジン−タグに近接してまたはスペーサー配列に近接して位置するシグナルペプチダーゼ切断部位を含むことを特徴とする、[1]〜[3]いずれか記載の方法。
[5]発現したプレ−タンパク質のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列であることを特徴とする、[1]〜[4]いずれか記載の方法。
[6]ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBをコードするヌクレオチド配列が配列番号:3の286位〜1497位のヌクレオチド配列であることを特徴とする、[1]〜[5]いずれか記載の方法。
[7]プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:3のヌクレオチド配列であることを特徴とする、[1]〜[6]いずれか記載の方法。
[8][1]〜[7]いずれか記載の方法により得られ得る、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まない、カルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質。
[9][8]記載の、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まない、カルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質の、ペプチド結合のタンパク質分解性切断のための使用。
[10][8]記載の、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まない、カルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を含む試薬溶液。

Claims (9)

  1. (a)ヒスチジン−タグおよびシグナルペプチドにN末端で融合されるラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBからなるプレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する工程、ここで、ヒスチジン−タグとシグナルペプチドの間、および/またはヒスチジン−タグとラットのカルボキシペプチダーゼBの間にスペーサー配列が挿入されている、あるいは、スペーサー配列が挿入されていない;
    (b)微生物宿主生物を該ベクターで形質転換させる工程;
    (c)栄養素および炭素源を含む増殖培地中で該微生物宿主生物を培養し、それにより該微生物宿主生物がプレ−タンパク質を発現し、増殖培地中にヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを分泌する、工程;
    (d)工程(c)の増殖培地中の分泌ヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBをヒスチジン−タグに結合可能な粒子金属キレート親和性マトリックス上に固定し、粒子金属キレート親和性マトリックスを洗浄し、それによりヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBが固定される、工程;
    (e)13〜20U/mlのトリプシンを含有するバッファー中で工程(d)の固定されたヒスチジン−タグ付プロ−カルボキシペプチダーゼBを有する粒子金属キレート親和性マトリックスを150〜300分間インキュベートして、タンパク質分解でプロ−カルボキシペプチダーゼB部分を切断し、液相にカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を放出する、それによりヒスチジン−タグ付プロペプチド部分が固定される、工程;
    (f)粒子金属キレート親和性マトリックスからカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を含む液相を分離し、ここでヒスチジン−タグ付プロペプチド部分は固定されている、工程;ならびに
    (g)工程(f)の液相からカルボキシペプチダーゼB活性を有するタンパク質を精製する工程
    を含む方法により得られ得る、カルボキシペプチダーゼBプロペプチドを実質的に含まず、カルボキシペプチダーゼB活性を有し、C末端チロシンを欠いているタンパク質。
  2. 該方法は、微生物宿主株がメチロトローフ酵母株であることを特徴とする、請求項1記載のタンパク質。
  3. 該方法は、ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBのアミノ酸配列が配列番号:3の14位〜415位のアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1または2記載のタンパク質。
  4. 該方法は、シグナルペプチドが、ヒスチジン−タグに近接してまたはスペーサー配列に近接して位置するシグナルペプチダーゼ切断部位を含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載のタンパク質。
  5. 該方法は、発現したプレ−タンパク質のアミノ酸配列が配列番号4のアミノ酸配列であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載のタンパク質。
  6. 該方法は、ラットのプロ−カルボキシペプチダーゼBをコードするヌクレオチド配列が配列番号:3の286位〜1497位のヌクレオチド配列であることを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載のタンパク質。
  7. 該方法は、プレ−タンパク質をコードするヌクレオチド配列が配列番号:3のヌクレオチド配列であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか記載のタンパク質。
  8. ペプチド結合のタンパク質分解性切断のための、請求項1〜7いずれか記載のタンパク質の使用。
  9. 請求項1〜7いずれか記載のタンパク質を含む試薬溶液。
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