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JP2009231777A - 圧電アクチュエータ、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに圧電アクチュエータの駆動方法 - Google Patents

圧電アクチュエータ、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに圧電アクチュエータの駆動方法 Download PDF

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JP2009231777A
JP2009231777A JP2008078712A JP2008078712A JP2009231777A JP 2009231777 A JP2009231777 A JP 2009231777A JP 2008078712 A JP2008078712 A JP 2008078712A JP 2008078712 A JP2008078712 A JP 2008078712A JP 2009231777 A JP2009231777 A JP 2009231777A
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piezoelectric film
lower electrode
upper electrode
diaphragm
young
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Tatsuji Tsukamoto
竜児 塚本
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Fujifilm Corp
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Fujifilm Corp
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Abstract

【課題】スパッタ法などのエピタキシャル成長法或いは配向成長法によって成膜された圧電体膜を有する圧電アクチュエータの好ましい駆動を可能とする、圧電アクチュエータ、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに圧電アクチュエータの駆動方法を提供する。
【解決手段】基板の上面に下部電極118を成膜し、下部電極118上にスパッタ法で圧電体膜120を成膜し、圧電体膜120の上面に上部電極122を成膜する。更に、上部電極122の上面に拘束板123を設ける。拘束板123を設けていない場合には、圧電体膜120の分極方向と反対向きの電界を印加すると、圧電アクチュエータ125は上向きに凸となるように変形するのに対して、拘束板123を設けることで圧電体膜120の分極方向と反対向きの電界を印加すると、圧電アクチュエータ125は下向きに凸となるように変形する。
【選択図】図12

Description

本発明は圧電アクチュエータ、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに圧電アクチュエータの駆動方法に係り、特にスパッタ法などの手法により成膜された配向性を有する圧電素子の駆動技術に関する。
汎用の画像形成装置として、インクジェットヘッドから記録媒体上にインク液滴を吐出して所望の画像を形成するインクジェット記録装置が広く用いられている。インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドからインク液滴を吐出させるための圧力付与手段として圧電素子(圧電アクチュエータ)が好適に用いられる。
インクジェットヘッドには、印字性能の向上、特に、高解像度化及び印字速度の高速化が求められている。そのために、ノズルを微細化するとともに高密度に配置したマルチノズルヘッド構造を用いて、高解像度化及び印字速度の高速化が試みられている。ノズルの高密度配置化を実現するために圧力発生素子である圧電素子の小型化が強く求められている。
圧電素子の小型化のためには、その厚みを薄くすることが有効であり、圧電素子の薄膜化を実現するために、例えば、特許文献1にはスパッタ法により圧電体層(圧電体膜)を成膜する技術が開示されている。
特開2003−188429号公報
特許文献1に記載されているようなスパッタ法で作製した圧電体膜は、図22(a)に示すように、基板(振動板)315に下部電極318を成膜し、下部電極318に圧電体膜320をスパッタ法で成膜し、更に、圧電体膜320に上部電極322を成膜して形成された圧電素子323を考えると、当該圧電体膜320の成膜時の分極方向Aは下部電極318から上部電極322に向かう方向となっている。
一方、圧電素子323をインクジェットヘッドに用いる場合には、上部電極322及び下部電極318への配線を形成する観点から、上部電極322をアドレス電極、下部電極318をグランド電極とする構造が好ましい。
しかし、図22(a)に示す圧電素子323の上部電極322をアドレス電極、下部電極318をグランド電極とし、上部電極322にプラス電圧を印加すると(圧電体膜320の分極方向と反対方向の電界を印加すると)、図22(b)に示すように、圧電素子323は伸張する方向(図22(b)に符号Bで図示)にたわみ変形し、振動板315が圧力室324の外側に(圧力室324の体積を増加させる方向に)変形してしまい、ノズル(不図示)からインクを吐出させることができない。
一方、上部電極322をアドレス電極、下部電極318をグランド電極とし、上部電極322にマイナス電圧を印加すると(圧電体膜320の分極方向と同一方向の電界を印加すると)、図22(c)に示すように、圧電素子323は収縮する方向(図22(c)に符号B’で図示)にたわみ変形し、振動板315が圧力室324の内側に(圧力室324の体積を減少させる方向に)変形し、ノズルからインクを吐出させることができる。
図23には、図22(a)〜(c)に図示した構造を有する圧電アクチュエータの印加電圧(V)と変位量(nm)との関係を示す。なお、「圧電アクチュエータ」とは、振動板315に圧電素子323が接合された構造体を表している。
図23において、印加電圧は下部電極318をグランド電位としたときの上部電極322の電圧であり、変位量は振動板315の静定状態からの変位量であり、圧力室324の内側に変形するときの変位方向をプラス方向としている。
図23に示すように、スパッタ法によって成膜された圧電体膜320(圧電素子323)は、下部電極318を基準電位(グランド電位)として上部電極322にプラス電圧を印加した場合と、下部電極318を基準電位として上部電極322にマイナス電圧を印加した場合とは、特性が変わってしまう。
例えば、−40V印加時の変位量は略600(nm)であるのに対して、+40V印加時の変位量は略150(nm)である。即ち、印加される電界の方向によって変位量が減少するとともに変位方向が逆転してしまう。即ち、図23において、マイナス電圧を印加する場合とプラス電圧を印加する場合とは、特性が異なっている。
図23のマイナス電圧に対応する方向の電界を圧電素子323に印加する方法には、マイナス電圧用の電源装置や駆動IC(駆動回路)を使用する方法や、上部電極322をグランド電極とし、下部電極318をアドレス電極として、下部電極318にプラス電圧を印加する方法が挙げられる。
しかしながら、上部電極322にマイナス電圧を印加する方法は、マイナス電圧用の電源装置や駆動回路はプラス電圧用のものに比べて価格が極端に高くなってしまうので、コスト面で不利である。また、下部電極318をアドレス電極としてプラス電界を印加する方法は、振動板315を通じて隣接する下部電極間にリーク電流が発生してしまい、電界を印加していない非駆動の圧電素子でも振動板が変位してしまう。その結果、意図しない圧力室(ノズル)からインクが吐出してしまう電気的クロストークが問題となる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、スパッタ法などのエピタキシャル成長法或いは配向成長法によって成膜された圧電体膜を有する圧電アクチュエータの好ましい駆動を可能とする、圧電アクチュエータ、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置並びに圧電アクチュエータの駆動方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る圧電アクチュエータは、振動板と、前記振動板の上面に形成される下部電極と、エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有し、前記下部電極の前記振動板と反対側の上面に成膜される圧電体膜と、前記圧電体膜の前記下部電極と反対側の上面に形成される上部電極と、前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、を備え、各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vは、次式(1)
Figure 2009231777
の関係を満たすことを特徴する。
本発明によれば、圧電アクチュエータの上部電極の圧電体膜と反対側に拘束板を備え、圧電アクチュエータを構成する各部材が上記式(1)を満たすように構成することで、上部電極の圧電体膜と反対側に拘束面が設けられるので、圧電体膜を伸張させるようにたわみ変形する方向の電界を印加すると、当該圧電アクチュエータは圧電体膜の拘束板と反対側に変形する。したがって、下部電極から上部電極に向かう方向の配向方向を有する圧電体膜に対して、下部電極を基準電位とし上部電極にプラス電圧を印加して配向方向と反対方向の電界を付与すると、圧電体膜は伸長する方向にたわみ変形し、当該圧電アクチュエータは振動板側に変形する。
各部材の厚み方向とは、各部材の積層接合してゆくときの接合方向である。
圧電体膜を成膜する際に、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法のうち少なくとも何れか1つの手法を用いると、膜厚が非常に薄い圧電体膜を成膜することができ、好ましい。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の圧電アクチュエータの一態様に係り、前記振動板と前記下部電極は兼用されることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、振動板と下部電極を兼用することで、拘束板の厚みをより薄くすることができ、圧電アクチュエータの小型化に寄与する。また。圧電アクチュエータの構造自体が簡素化される。
振動板と下部電極と兼用する態様では、上記式(1)のAを省略し、A+A<A+Aの関係を満たせばよい。なお、絶縁層などの中間層を考慮する場合には、当該中間層のヤング率とポアソン比から算出される指標値を求め、圧電体膜の拘束板側の指標値の合計が、拘束板の反対側(圧電体膜を含む)の指標値の合計よりも大きくなればよい。
また、上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明に係る液体吐出ヘッドは、液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通し、前記ノズルから吐出する液体を収容する圧力室と、前記圧力室の1つの壁面を構成する振動板と、前記振動板の前記圧力室と反対側面に形成される下部電極と、前記下部電極の前記振動板と反対側面に成膜され、エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有する圧電体膜と、前記圧電体膜の前記下部電極と反対側面に形成される上部電極と、前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、を備え、各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vは、次式(1)
Figure 2009231777
の関係を満たすことを特徴する。
請求項3に記載の発明によれば、下部電極を基準電位として上部電極にプラス電圧を印加し、圧電体膜の配向方向(分極方向)と反対方向に電界を印加した場合にも、振動板を圧力室の内側に変形させることができるとともに、印加される電界強度に比例した変位量を得ることができる。したがって、上部電極をアドレス電極とし、下部電極をグランド電極として、プラス電圧を用いて圧電アクチュエータを駆動して、ノズルから液体を吐出させることが可能となる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3記載の液体吐出ヘッドの一態様に係り、前記振動板と前記下部電極は兼用されることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、複数のノズル及び複数の圧力室に対応して、複数の圧電アクチュエータを備える態様では、下部電極をグランド電極として共通化することができ、配線構造の簡素化に寄与する。
また、上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルと、前記ノズルと連通し、前記ノズルから吐出する液体を収容する圧力室と、前記圧力室の1つの壁面を構成する振動板と、前記振動板の前記圧力室と反対側面に形成される下部電極と、前記下部電極の前記振動板と反対側面に成膜され、エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有する圧電体膜と、前記圧電体膜の前記下部電極と反対側面に形成される上部電極と、前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、を具備する液体吐出ヘッドと、前記圧電体膜の配向方向と反対方向の電界を付与する電界付与手段と、を備え、前記液体吐出ヘッドは、各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vは、次式(1)
Figure 2009231777
の関係を満たすことを特徴とする。
液体吐出装置の一例として、ノズルからインクを吐出して記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置が挙げられる。
また、請求項6に記載の発明は、請求項5記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記振動板と前記下部電極は兼用されることを特徴とする。
下部電極の圧力室内の液体と接触する部分には、保護処理(絶縁処理)を施す態様が好ましい。
また、請求項7に記載の発明は、請求項5又は6記載の液体吐出装置の一態様に係り、前記圧電体膜は、前記下部電極から前記上部電極に向かう配向方向を有し、前記電界付与手段は、前記下部電極を基準電位として前記上部電極に正極性の電圧を印加して、前記圧電体膜の配向方向と反対方向の電界を付与することを特徴する。
請求項7に記載の発明によれば、下部電極をグランド電極とし、上部電極をアドレス電極として上部電極にプラス電圧を印加して圧電アクチュエータを所望の動作モードで駆動することができるので、上部電極の配線構造が複雑にならずにすむ。
また、本発明は上記目的を達成するための方法発明を提供する。即ち、請求項8に記載の圧電アクチュエータの駆動方法は、振動板と、前記振動板の上面に形成される下部電極と、エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有し、前記下部電極の前記振動板と反対側の上面に成膜される圧電体膜と、前記圧電体膜の前記下部電極と反対側の上面に形成される上部電極と、前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、を備え、各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vが、次式(1)
Figure 2009231777
の関係を満たす圧電アクチュエータを駆動する際に、前記上部電極と前記下部電極の間に前記圧電体膜の配向方向と反対方向の電界を印加することを特徴とする。
本発明の圧電アクチュエータの駆動方法は、当該圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドの駆動方法に適用可能である。
請求項9に記載の発明は、請求項8記載の圧電アクチュエータの駆動方法の一態様に係り、前記圧電体膜は前記下部電極から前記上部電極に向かう配向方向を有し、前記下部電極を基準電位として前記上部電極に正極性の電圧を印加して、前記圧電体膜に前記上部電極から前記下部電極へ向かう方向の電界を付与することを特徴とする。
本発明によれば、圧電アクチュエータの上部電極の圧電体膜と反対側に拘束板を備え、圧電アクチュエータを構成する各部材が上記式(1)を満たすように構成することで、上部電極の圧電体膜と反対側に拘束面が設けられるので、圧電体膜を伸張させるようにたわみ変形する方向の電界を印加すると、当該圧電アクチュエータは圧電体膜の拘束板と反対側に変形する。したがって、下部電極から上部電極に向かう方向の配向方向を有する圧電体膜に対して、下部電極を基準電位とし上部電極にプラス電圧を印加して配向方向と反対方向の電界を付与すると、圧電体膜は伸長する方向にたわみ変形し、当該圧電アクチュエータは振動板側に変形する。
また、当該圧電アクチュエータを液体吐出ヘッドに適用すると、下部電極を基準電位として上部電極にプラス電圧を印加し、圧電体膜の配向方向(分極方向)と反対方向に電界を印加して当該圧電アクチュエータを駆動する場合にも、振動板を圧力室の内側に変形させることができるとともに、印加される電界強度に比例した変位量を得ることができる。したがって、上部電極をアドレス電極とし、下部電極をグランド電極として、プラス電圧を用いて圧電アクチュエータを駆動して、ノズルから液体を吐出させることが可能となる。
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔液体吐出ヘッドの製造方法の説明〕
図1〜図11を用いて、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法(圧電アクチュエータの製造方法)を説明する。
(1)下部電極形成工程
図1には、表面絶縁基板であるSOI基板(SiOの絶縁膜を備えたシリコン基板、以下、基板と記載する。)110を図示する。図1に示す基板110は、シリコン基材111と、シリコン酸化膜からなる絶縁層112と、シリコン基材114と、シリコン酸化膜からなる絶縁層116と、を下から順に積層した構造を有している。
図2には、図1に示す基板110に下部電極となる金属膜118を成膜した状態を図示する。基板110の上面(絶縁層116が形成されている面)に、スパッタ、蒸着等の手法を用いて下部電極となる金属膜118が成膜される。その後、図3に示すように、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて金属膜118は所定の形状に加工される。金属膜(下部電極)118には、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)、チタン(Ti)などが好適に用いられる。
なお、下部電極118の配置パターンが圧電素子を含む圧電アクチュエータ(図8〜11に符号125で示す構造体)の配置パターンとなり、この圧電アクチュエータの配置パターンに対応してインクを吐出ノズルや圧力室(図10,11に符号124で図示)が配置される。言い換えると、インクを吐出するノズルや圧力室の配置に対応して下部電極118の配置パターンが決められる。
(2)圧電体膜成膜工程
下部電極(金属膜)118が所定の形状(パターン)に加工されると、下部電極118の上側(下部電極118の絶縁層116と反対側)の面には、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法等のエピタキシャル成長法による薄膜形成プロセスを用いて、配向性を持つ圧電体膜120が成膜される。圧電体膜120には、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛、Pb(Zr,Ti)O)が好適に用いられる。図4には、圧電体膜120が成膜された状態を図示する。
(3)上部電極成膜工程
圧電体膜120が成膜されると、圧電体膜120の上側(圧電体膜120の下部電極118と反対側)の面には、スパッタ、蒸着等の手法を用いて上部電極となる金属膜122が成膜される。金属膜(上部電極)122には、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)、チタン(Ti)、金(Au)などが好適に用いられる。図5には、上部電極となる金属膜122が成膜された状態を図示する。
その後、図6に示すように、金属膜(上部電極)122は所定の形状にパターンニングされる。なお、上部電極122のパターンニングや下部電極118のパターンニングにはエッチングが好適に用いられ、当該上部電極122(下部電極118)のパターンニング(エッチング処理)は150℃程度の温度で行われる。
(4)拘束板成膜工程
次に、上部電極122の圧電体膜120の反対側面に拘束板123が成膜される。拘束板123の成膜には、スパッタ法、CVD法などの薄膜成膜技術が用いられ、拘束板123の材料にはSiO、Al、ZrOなどの酸化金属が用いられる。なお、拘束板123の構造及び機能等の詳細については後述する。
(5)配線層形成工程
拘束板123が成膜されると、下部電極118の取出となる部分の拘束板123及び圧電体膜120がエッチングによって除去される(配線層形成工程)。当該配線層形成工程は、200℃〜350℃の温度で行われる。なお、配線層形成工程の図示は省略する。
(6)拘束板エッチング工程
次に、上部電極122の取出となる部分(後述するFPCが接合される部分)の拘束板123がエッチングにより除去される。図8には、拘束板123が除去されて上部電極122の一部が露出した状態を図示する。
本明細書では、下部電極118と上部電極122に圧電体膜120がはさまれた構造体を「圧電素子」と呼び、該圧電素子を駆動して、圧電素子自体または他の部材を変形(振動)させる構成を圧電アクチュエータと呼ぶことにする。本例では、圧電素子の上部電極122の上面に拘束板123が設けられた構造体が圧電アクチュエータ125である。
(7)圧力室形成工程
次に、エッチング等の手法を用いて、シリコン基材111に圧力室となる開口(形状)124が形成される。図9には、圧力室となる開口124が形成された状態を図示する。
(8)流路基板接合工程、ノズル基板接合工程
図9に示すように、圧力室124が形成されると、基板110の圧力室124が形成される側には、インク流路となる構造(溝、穴等)を有する流路基板126が接合される。基板110と流路基板126とを接合する際には、インク流路と圧力室124が正確に位置合わせされる。
更に、ノズルとなる微細孔127が形成されたノズル基板128を流路基板126の基板110と反対側に接合し、ヘッド構造体129となる。ノズル基板128と流路基板126とを接合する際には、微細孔127と吐出側流路が正確に位置合わせされる。図10には、流路基板126及びノズル基板128が接合された状態を図示する。
(9)フレキシブルケーブル(FPC)接着工程
上記(1)〜(8)の各工程を経て、圧電アクチュエータ125を備えたヘッド構造体129が形成されると、圧電アクチュエータ125に印加される駆動電圧の配線が形成されたフレキシブルケーブル(FPC)132が、上記(5)の配線層形成工程で形成された下部電極118のコンタクト、及び(6)の拘束板エッチング工程によって形成された上部電極122コンタクトと接合される。上部電極122のコンタクト及び下部電極118のコンタクトとFPCとの接合には導電性接着剤が好適に用いられ、FPC接合工程は、100℃程度の温度環境下で行われる。
図11には、FPC132とヘッド構造体129の接合状態を模式的に図示する。なお、上部電極122からヘッド構造体129の端部に配線を引き出して、ヘッド構造体129の端部に設けられたコネクタを介して上部電極122とFPC132とを接合してもよい。
上記(1)〜(9)の各工程を経て作製されたヘッド構造体129の寸法の一例を挙げると、振動板(絶縁層112、シリコン基材114、絶縁層116から成る構造体)の厚みは1μm、上部電極122及び下部電極118の厚みは0.3μm、圧電体膜120の厚みは4μm、圧力室124の開口サイズは300μmである。
〔圧電アクチュエータの説明〕
次に、上記(1)〜(9)の各工程を経て作製された圧電アクチュエータ125について説明する。
図12(a),(b)には、本発明の実施形態に係る圧電アクチュエータ125の動作モードを模式的に図示する。図12(a)に示すように、圧電アクチュエータ125は、上部電極122をアドレス電極、下部電極118をグランド電極として、電源装置130から上部電極122にプラス電圧を印加すると(圧電体膜120の成膜時の分極方向Aと反対方向の電界を印加すると)、圧電体膜120は伸張する方向(符号Bで図示する方向)にたわみ変形する。
圧電アクチュエータ125は、上部電極122の上面に拘束板123が設けられているので、上部電極122よりも上に拘束面が存在し、振動板115は(圧電アクチュエータ125は全体として)圧力室124の内側に変形する。
一方、図12(b)に示すように、電源装置130から下部電極118を基準電位として上部電極122にマイナス電圧を印加すると(圧電体膜120の成膜時の分極方向Aと同一方向の電界を印加すると)、圧電体膜120は収縮する方向(符号B’で図示する方法)にたわみ変形し、振動板115は圧力室の外側に変形する。
即ち、本例に示す圧電アクチュエータ125は、d31モードの方向に変形する圧電体膜120を含み、上部電極122の上面に拘束板123を設けることで、従来技術に係る圧電アクチュエータ(図22に示す圧電素子325と振動板315から構成される構造体)に対して変形方向が反転するものである。
本例では、圧電アクチュエータ125の上部電極122よりも上に拘束面を設け、圧電アクチュエータ125の上部電極122側を拘束して圧電アクチュエータ125の上部電極122側の剛性を下部電極118側よりも大きくすることで、圧電体膜120が横方向(d31方向)に縮んだときには、振動板115は上方向に凸となり、圧電体膜120が横方向に伸びたときには、振動板115は下方向に凸となる。
図13には、圧電アクチュエータ125の印加電圧と変位量との関係を示す。同図に示すように、印加電圧が0(V)〜20(V)の範囲では、印加電圧に比例した変位量を得ることができる。また、図22に示した従来技術に係る圧電アクチュエータを、下部電極318を基準電位として上部電極322にマイナス電圧を印加して振動板315を圧力室324の内部に変形させたときと、同程度の変位量を得ることができる。
なお、図13に示す変位量は、振動板115の下面(圧力室124の内側面)の鉛直方向の変位量であり、図12(a),(b)における下方向をプラス方向として、静定状態(印加電圧が0(V)の振動板がフラットな状態)を基準としたときの変位量である。
ここで、本例に示す圧電アクチュエータ125の変形モードについて、更に詳細に説明する。圧電アクチュエータ125を構成する各部材の接合方向(厚み方向、図14における上下方向)をy方向として、圧電アクチュエータ125を構成する各部材のy方向の位置を図14に図示するように規定する。
振動板115の下面(圧電アクチュエータ125の最下面)をy、下部電極118の下面(振動板115と下部電極118の境界面)をy、圧電体膜120の下面(下部電極118と圧電体膜120の境界面)をy、上部電極122の下面(圧電体膜120と上部電極122の境界面)をy、拘束板123の下面(上部電極122と拘束板123の境界面)をy、拘束板123の上面(圧電アクチュエータ125の最上面)をyとする。
また、振動板115のヤング率をY、ポアソン比をV、下部電極118のヤング率をY、ポアソン比をV、圧電体膜120のヤング率をY、ポアソン比をV、上部電極122のヤング率をY、ポアソン比をVとし、拘束板123のヤング率をY、ポアソン比をVとすると、次式(1)の関係を満足するときに、図12(a),(b)及び図13に示す特性を有する圧電アクチュエータ125を得ることができる。
Figure 2009231777
上記式(1)は、圧電アクチュエータ125を構成する部材のうち、圧電体膜120の下側(圧電体膜120を含む)の部材の指標値の合計よりも、圧電体膜120の上側の部材の指標値の合計が大きくなるように拘束板123の物性及び厚みが決められる。
下記〔表1〕には、拘束板123の厚み及びヤング率Yを変えたときに振動板の変位量を測定した測定結果を示す。下記〔表1〕に結果を示す評価実験では、振動板115(Si)の膜厚は1.0(μm)、ヤング率Yは73(GPa)、下部電極118(Pt)の膜厚は0.3(μm)、ヤング率Yは150(GPa)、圧電体膜(PZT)120の膜厚は4.0μm、ヤング率Yは70(GPa)、上部電極(Pt)122の膜厚は0.3μm、ヤング率Yは150(GPa)とした。なお、各部材のポアソン比はすべて0.3とした。
また、拘束板123には、ポリイミド(実施例1〜4)、Al(実施例5)、SiC(実施例6)を用い、比較例として膜厚1.0μmのポリイミドを用いた。
Figure 2009231777
上記〔表1〕の実施例1〜4に示すように、拘束板123の厚みを相対的に大きくすると振動板の変位は相対的に大きくなる。また、製造上の制約や構造上の制約によって拘束板123の厚みを大きくすることができないときには、ヤング率が大きい材料を用いるとよい。
本例では、圧力室124の上面を構成する振動板115を含む圧電アクチュエータ125を例示したが、振動板115を省略する態様も可能である。
例えば、(7)圧力室形成工程において、振動板115となる絶縁層112、シリコン基材114、絶縁層116を除去してもよい。かかる構造では、上記式(1)のAが省略され(A+A<A+A)、拘束板123の厚みをより薄くすることができる。なお、下部電極118が圧力室内の液体に接触すると絶縁不良や下部電極118の腐食といった問題が起こるので、絶縁層116を除去せずに残すか、下部電極118の圧力室124内の液体と接触する部分に保護処理を施す必要がある。
即ち、圧電アクチュエータ125の圧電体膜120の圧力室124側を、第1の膜から第n−1の膜と圧電体膜120のn層の膜で構成し、一方、圧電体膜120の圧力室124と反対側を第n+1の膜から第mの膜の(m−n−1)層の膜で構成すると、上部電極122の上面に拘束面が設けられ、圧電体膜120の分極方向と逆方向の電界を印加して圧電アクチュエータ125を駆動したときに、圧電アクチュエータ125を圧力室124の内側向きに変形させるとともに、印加される電界強度(電圧)に比例した変位量を得ることが可能となる。
言い換えると、上部電極122の上面に拘束面が設けられる条件は、各部材の指標値(式(1)参照)AからAの合計とAn+1からAの合計との関係が、次式(2)を満たすときである。
+A+…+A<An+1+An+2+…+A …(2)
なお、上記式(2)において、第n−1の膜は下部電極118であり、第n+1の膜は上部電極122である。
上記の如く構成された圧電アクチュエータ125は、最上面に拘束板123を備えることで、上部電極122の上側に拘束面が設けられるので、拘束板123(拘束面)がない場合に上方向に変形するように駆動されても、振動板115は下側に変形するとともに、印加電圧に比例した変位量を得ることができる。
即ち、下部電極118から上部電極122へ向かう方向の配向方向(分極方向)を有する圧電体膜120に対して、配向方向と反対方向の電界を印加したときに、拘束板がない場合と変形方向を反転させることができ、かつ、
拘束板がない場合の変位量と同程度の変位量を得ることができる。
〔装置例〕
次に、本発明の実施形態に係る圧電アクチュエータ(圧電素子)を吐出発生素子に適用したインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)を備えたインクジェット記録装置(液体吐出装置)について説明する。
(全体構成)
図15は、インクジェット記録装置200の全体構成を示す概略図である。同図に示すように、インクジェット記録装置200は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェットヘッド(以下、ヘッドという。)212K,212C,212M,212Yを有する印字部212と、各ヘッド212K,212C,212M,212Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部214と、記録媒体(被吐出媒体)たる記録紙216を供給する給紙部218と、記録紙216のカールを除去するデカール処理部220と、各ヘッド212K,212C,212M,212Yのノズル面に対向して配置され、記録紙216の平面性を保持しながら記録紙216を搬送する吸着ベルト搬送部222と、印字部212の印字結果を読み取る印字検出部224と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部226と、を備えている。
図15には図示しないが、印字部212に含まれる各ヘッド212K,212C,212M,212Yのそれぞれの上面(記録紙216と対向する面と反対側の面)には、各ヘッド212K,212C,212M,212Yの制御基板が立てた状態で配置される。
インク貯蔵/装填部214は、各ヘッド212K,212C,212M,212Yに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンク(図15中不図示、図20に符号260で図示)を有し、各色のインクは所要のインク流路を介してヘッド212K,212C,212M,212Yと連通されている。
また、インク貯蔵/装填部214は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
詳細は後述するが、本例のインクジェット記録装置200は、各ヘッド212K,212C,212M,212Yの上面にインク供給部を備え、インク貯蔵/装填部214からインク供給部を介して各ヘッド212K,212C,212M,212Yにインクが供給される。
図15では、給紙部218の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部218から送り出される記録紙216はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部220においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム330で記録紙216に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図15のように、裁断用のカッター(第1のカッター)228が設けられており、該カッター228によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター228は、記録紙216の搬送路幅以上の長さを有する固定刃228Aと、該固定刃228Aに沿って移動する丸刃228Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃228Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃228Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター228は不要である。
デカール処理後、カットされた記録紙216は、吸着ベルト搬送部222へと送られる。吸着ベルト搬送部222は、ローラ231、232間に無端状のベルト233が巻き掛けられた構造を有し、少なくともヘッド212K,212C,212M,212Yのノズル面(ノズル開口が形成されるインク吐出面)に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト233は、記録紙216の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図15に示したとおり、ローラ231、232間に掛け渡されたベルト233の内側においてヘッド212K,212C,212M,212Yのノズル面に対向する位置には吸着チャンバ234が設けられており、この吸着チャンバ234をファン235で吸引して負圧にすることによって記録紙216がベルト233上に吸着保持される。
ベルト233が巻かれているローラ231、232の少なくとも一方にモータ(図15中不図示、図21に符号288で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト233は図15上の時計回り方向に駆動され、ベルト233上に保持された記録紙216は図15の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト233上にもインクが付着するので、ベルト233の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部236が設けられている。ベルト清掃部236の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部222に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が染み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部222により形成される用紙搬送路上において印字部212の上流側には、加熱ファン240が設けられている。加熱ファン240は、印字前の記録紙216に加熱空気を吹き付け、記録紙216を加熱する。印字直前に記録紙216を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部212のヘッド212K,212C,212M,212Yは、当該インクジェット記録装置200が対象とする記録紙216の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図16参照)。
ヘッド212K,212C,212M,212Yは、記録紙216の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド212K,212C,212M,212Yが記録紙216の搬送方向(紙送り方向)延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部222により記録紙216を搬送しつつ各ヘッド212K,212C,212M,212Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙216上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド212K,212C,212M,212Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向について記録紙216と印字部212を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち、1回の副走査で)、記録紙216の全面に画像を記録することができる。このようなシングルパス印字が可能な構成により、ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。更に、記録紙216に処理液とインクとを付着させた後に、記録紙216上でインク色材を凝集又は不溶化させて、記録紙216上でインク溶媒とインク色材とを分離させる2液系のインクジェット記録装置では、処理液を記録紙216に付着させる手段としてインクジェットヘッドを備えてもよい。
また、ヘッド212K,212C,212M,212Yは、それぞれ複数のヘッドモジュール(不図示)を記録紙216の幅方向につなぎ合わせた構造を有しているが、各ヘッドは一体に形成された構造を有していてもよい。
印字部212の後段に設けられる印字検出部224は、印字部212の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他吐出異常をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部224は、少なくとも各ヘッド212K,212C,212M,212Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたR受光素子列と、緑(G)の色フィルタが設けられたG受光素子列と、青(B)の色フィルタが設けられたB受光素子列と、から成る色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部224は、各色のヘッド212K,212C,212M,212Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッド212K,212C,212M,212Yの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドットの着弾位置の測定などで構成される。
印字検出部224の後段には後乾燥部242が設けられている。後乾燥部242は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部242の後段には、加熱・加圧部244が設けられている。加熱・加圧部244は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ245で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
加熱・加圧部244によって記録紙216を押圧すると、多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
こうして生成されたプリント物は排紙部226から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置200では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部226A、226Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)248によってテスト印字の部分を切り離す。カッター248は、排紙部226の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター248の構造は前述した第1のカッター228と同様であり、固定刃248Aと丸刃248Bとから構成される。
また、図15には示さないが、本画像の排出部226Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
(ヘッドの構造)
次に、ヘッドの構造について説明する。色別のヘッド212K,212C,212M,212Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
図17(a)はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図17(b)はその一部の拡大図である。また、図17(c)はヘッド250の他の構造例を示す平面透視図、図18はヘッド250の立体的構成を示す断面図(図17(a),(b)中のXVIII−XVIII線に沿う断面図である。
記録紙216上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド250におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド250は、図17(a),(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット253を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド250の長手方向(紙送り方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙216の送り方向と略直交する主走査方向に記録紙216の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図17(a)の構成に代えて、図17(c)に示すように、複数のノズル251が2次元的に配列された短尺のヘッドユニット250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙216の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。また、図示は省略するが、短尺のヘッドユニットを一列に並べてラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル251と供給口254が設けられている。各圧力室252は供給口254を介して共通流路255と連通されている。共通流路255はインク供給源たるインク供給タンク(図17(a)〜(c)中不図示、図20に符号260で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図18の共通流路255を介して各圧力室252に分配供給される。
圧力室252の天面を構成する振動板256には下部電極(グランド電極、共通電極)257Aと上部電極(アドレス電極、個別電極)257Bと圧電体膜258Aを備えた圧電素子258が接合されている。
先に説明したように、本例の圧電素子258は、上部電極257Bの上面に拘束板123が設けられ、振動板256、圧電素子258及び拘束板123によって、圧電アクチュエータ125を構成している。
本例に示す圧電アクチュエータ125は、下部電極257Aをグランドとして上部電極257Bにプラス電圧を印加することで、圧電素子258の分極方向と反対方向の電界を圧電素子258に付与し、振動板256を圧力室252の内側に変形させるように駆動される。
即ち、上部電極257Bと下部電極257Aに所定の駆動電圧を印加することによって圧電素子258が変形してノズル251からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に供給される。なお、振動板256と下部電極257Aとを共通化する態様も可能である。
また、振動板256の圧力室252側の面には、絶縁層(SiO層)259が設けられ、圧力室252内のインクと振動板256との絶縁性能を確保するとともに、圧力室252内のインクが振動板256に接触することによる振動板256の腐食を防止する。
かかる構造を有するインク室ユニット253を図19に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット253を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル251が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録紙216の幅方向(記録紙216の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図17(a),(b)、図19に示すようなマトリクス状に配置されたノズル251を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル251−11、251−12、251−13、251−14、251−15、251−16を1つのブロックとし(他にはノズル251−21、…、251−26を1つのブロック、ノズル251−31、…、51−36を1つのブロック、…として)、記録紙216の搬送速度に応じてノズル251−11、51−12、…、51−16を順次駆動することで記録紙216の幅方向に1ラインを印字する。
一方、上述したフルラインヘッドと記録紙216とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるラインまたは複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録紙216の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する記録紙216の幅方向が主走査方向ということになる。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
(インク供給系の構成)
図20はインクジェット記録装置200におけるインク供給系の構成を示した概要図である。インク供給タンク260はヘッド250にインクを供給する基タンクであり、図15で説明したインク貯蔵/装填部214に含まれる。インク供給タンク260の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図20に示すように、インク供給タンク260とヘッド250の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ262が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図20には示さないが、ヘッド250の近傍又はヘッド250と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置200には、ノズル251の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ264と、ヘッド250のインク吐出面の清掃手段としてクリーニングブレード266が設けられている。キャップ264は、不図示の移動機構によってヘッド250に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド250下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ264は、図示せぬ昇降機構によってヘッド250に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ264を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド250に密着させることにより、ノズル面をキャップ264で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル251の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子258が動作してもノズル251からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(圧電素子258の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電素子258を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ264(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、ヘッド250内のインク(圧力室252内)に気泡が混入した場合、圧電素子258が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはヘッド250にキャップ264を当て、吸引ポンプ267で圧力室252内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク268へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室252内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
(制御系の説明)
図21は、インクジェット記録装置200のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置200は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278、プリント制御部280、画像バッファメモリ282、ヘッドドライバ284等を備えている。
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ286から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース270にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ286から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置200に取り込まれ、一旦メモリ274に記憶される。
メモリ274は、通信インターフェース270を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ274は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置200の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ272は、通信インターフェース270、メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278等の各部を制御し、ホストコンピュータ286との間の通信制御、メモリ274の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ288やヒータ289を制御する制御信号を生成する。
メモリ274には、システムコントローラ272のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ274は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ274は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ276は、システムコントローラ272からの指示にしたがってモータ288を駆動するドライバである。図21では、装置内の各部に配置されるモータ(アクチュエータ)を代表して符号288で図示している。例えば、図21に示すモータ288には、図15のベルト233の駆動ローラ231(232)を駆動するモータや、図20のキャップ264を移動させる移動機構のモータなどが含まれている。
ヒータドライバ278は、システムコントローラ272からの指示にしたがって、図15に示す加熱ファン240の熱源たるヒータや、後乾燥部242のヒータなどを含むヒータ289を駆動するドライバである。
プリント制御部280は、システムコントローラ272の制御に従い、メモリ274内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ284に供給する制御部である。プリント制御部280において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ284を介してヘッド250のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部280には画像バッファメモリ282が備えられており、プリント制御部280における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ282に一時的に格納される。また、プリント制御部280とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ284は、プリント制御部280から与えられる画像データに基づいてヘッド250の圧電素子258に印加される駆動信号を生成するとともに、該駆動信号を圧電素子258に印加して圧電素子258駆動する駆動回路(図12(a),(b)の電源装置130)を含んで構成される。なお、図21に示すヘッドドライバ284には、ヘッド250の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部224は、図15で説明したようにラインセンサを含むブロックであり、記録紙216に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部280に提供する。
プリント制御部280は、必要に応じて印字検出部224から得られた情報に基づいてヘッド250に対する各種補正やヘッド250のメンテナンスを行うように各部を制御する。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース270を介して外部から入力され、メモリ274に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ274に記憶される。
メモリ274に蓄えられた画像データは、システムコントローラ272を介してプリント制御部280に送られ、該プリント制御部280においてインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部280は、入力されたRGB画像データをKCMYの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部280で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ282に蓄えられる。
プログラム格納部290には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ272の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部290はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部290は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
なお、図15〜21に示した装置構成は、本発明に係る圧電アクチュエータを適用した液体吐出ヘッド(圧電素子)を具備する装置の一例であって、適宜変更可能である。例えば、図15には、記録紙216をベルト搬送する態様を例示したが、ドラム形状の搬送部材を用いて記録紙216を搬送しながら、ドラムの周面に配置された印字部212によって画像記録を行う態様も可能である。
本例では、本発明が適用される装置例として、インクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を例示したが、吐出発生素子として圧電アクチュエータを用いる液体吐出ヘッド及び装置に対して、広く本発明を適用することが可能である。他の装置例としては、基板(媒体)上に液体を吐出して所望の形状、パターンを形成する液体吐出装置(例えば、ディスペンサー)などが挙げられる。
本発明の実施形態に係る圧電アクチュエータが形成される基板を説明する図 下部電極形成工程を説明する図 下部電極のパターンニング工程を説明する図 圧電体膜成膜工程を説明する図 上部電極形成工程を説明する図 上部電極のパターンニング工程を説明する図 拘束板製膜工程を説明する図 拘束板エッチング工程を説明する図 圧力室形成工程を説明する図 流路プレート接合工程及びノズルプレート接合工程を説明する図 FPC接合工程を説明する図 本発明の実施形態に係る圧電アクチュエータの動作を説明する図 図12に示す圧電アクチュエータの印加電圧と変位量の関係を説明する図 図12に示す圧電アクチュエータの構造を説明する図 図12に示す圧電アクチュエータを備えた液体吐出ヘッドを具備するインクジェット記録装置の全体構成図 図15に示すインクジェット記録装置の印字部周辺の要部平面図 図15に示すヘッドの構成例を示す平面透視図 図17中XVIII−XVIII線に沿う断面図 図17に示すヘッドのノズル配列を示す拡大図 図15に示すインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示す概要図 図15に示すインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図 従来技術に係る圧電アクチュエータの動作を説明する図 従来技術に係る圧電アクチュエータの電界強度に対する変位量の関係を示す特性図
符号の説明
118,275A…下部電極、120,258A…圧電体膜、122,257B…上部電極、123,258…圧電素子、125…圧電アクチュエータ、29,212K,212C,212M,212Y,250…ヘッド、30…電源装置、200…インクジェット記録装置、284…ヘッドドライバ

Claims (9)

  1. 振動板と、
    前記振動板の上面に形成される下部電極と、
    エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有し、前記下部電極の前記振動板と反対側の上面に成膜される圧電体膜と、
    前記圧電体膜の前記下部電極と反対側の上面に形成される上部電極と、
    前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、
    を備え、
    各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、
    前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vは、次式(1)
    Figure 2009231777
    の関係を満たすことを特徴する圧電アクチュエータ。
  2. 前記振動板と前記下部電極は兼用されることを特徴とする請求項1記載の圧電アクチュエータ。
  3. 液体を吐出するノズルと、
    前記ノズルと連通し、前記ノズルから吐出する液体を収容する圧力室と、
    前記圧力室の1つの壁面を構成する振動板と、
    前記振動板の前記圧力室と反対側面に形成される下部電極と、
    前記下部電極の前記振動板と反対側面に成膜され、エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有する圧電体膜と、
    前記圧電体膜の前記下部電極と反対側面に形成される上部電極と、
    前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、
    を備え、
    各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、
    前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vは、次式(1)
    Figure 2009231777
    の関係を満たすことを特徴する液体吐出ヘッド。
  4. 前記振動板と前記下部電極は兼用されることを特徴とする請求項3記載の液体吐出ヘッド。
  5. 液体を吐出するノズルと、
    前記ノズルと連通し、前記ノズルから吐出する液体を収容する圧力室と、
    前記圧力室の1つの壁面を構成する振動板と、
    前記振動板の前記圧力室と反対側面に形成される下部電極と、
    前記下部電極の前記振動板と反対側面に成膜され、エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有する圧電体膜と、
    前記圧電体膜の前記下部電極と反対側面に形成される上部電極と、
    前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、
    を具備する液体吐出ヘッドと、
    前記圧電体膜の配向方向と反対方向の電界を付与する電界付与手段と、
    を備え、
    前記液体吐出ヘッドは、各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、
    前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vは、次式(1)
    Figure 2009231777
    の関係を満たすことを特徴とする液体吐出装置。
  6. 前記振動板と前記下部電極は兼用されることを特徴とする請求項5記載の液体吐出装置。
  7. 前記圧電体膜は、前記下部電極から前記上部電極に向かう配向方向を有し、
    前記電界付与手段は、前記下部電極を基準電位として前記上部電極に正極性の電圧を印加して、前記圧電体膜の配向方向と反対方向の電界を付与することを特徴する請求項5又は6記載の液体吐出装置。
  8. 振動板と、
    前記振動板の上面に形成される下部電極と、
    エピタキシャル成長或いは配向成長させた一方向に配向性を有し、前記下部電極の前記振動板と反対側の上面に成膜される圧電体膜と、
    前記圧電体膜の前記下部電極と反対側の上面に形成される上部電極と、
    前記上部電極の前記圧電体膜と反対側面に設けられる拘束板と、
    を備え、
    各部材の厚みの方向をy方向とし、前記y方向における前記振動板の下面の位置をy、前記振動板と前記下部電極の境界面の位置をy、前記下部電極と前記圧電体膜の境界面の位置をy、前記圧電体膜と前記上部電極の境界面の位置をy、前記上部電極と前記拘束板の境界面の位置をy、前記拘束板の上面位置をyとするときに、
    前記振動板のヤング率Y、前記振動板のポアソン比V、前記下部電極のヤング率Y、前記下部電極のポアソン比V、前記圧電体膜のヤング率Y、前記圧電体膜のポアソン比V、前記上部電極のヤング率ポアソン比V、前記上部電極のヤング率Y、前記上部電極のポアソン比V、前記拘束板のヤング率Y、前記拘束板のポアソン比Vが、次式(1)
    Figure 2009231777
    の関係を満たす圧電アクチュエータを駆動する際に、前記上部電極と前記下部電極の間に前記圧電体膜の配向方向と反対方向の電界を印加することを特徴とする圧電アクチュエータの駆動方法。
  9. 前記圧電体膜は前記下部電極から前記上部電極に向かう配向方向を有し、
    前記下部電極を基準電位として前記上部電極に正極性の電圧を印加して、前記圧電体膜に前記上部電極から前記下部電極へ向かう方向の電界を付与することを特徴とする請求項8記載の圧電アクチュエータの駆動方法。
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