以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両に搭載された駆動装置100のエンジン200の出力は、トルクコンバータ300および前後進切換装置400を経由して、ベルト式の無段変速機500に入力される。無段変速機500の出力は、減速歯車600および差動歯車装置700に伝達され、左右の駆動輪800へ分配される。駆動装置100は、後述するECU(Electronic Control Unit)8000により制御される。本実施の形態に係る制御装置は、たとえばECU8000により実行されるプログラムにより実現される。なお、ベルト式の無段変速機500の代わりに、チェーン式の無段変速機を用いるようにしたり、トロイダル式の無段変速機を用いるようにしたりしてもよい。
トルクコンバータ300は、エンジン200のクランク軸に連結されたポンプ翼車302と、タービン軸304を経由して前後進切換装置400に連結されたタービン翼車306とから構成されている。ポンプ翼車302およびタービン翼車306の間にはロックアップクラッチ308が設けられている。ロックアップクラッチ308は、係合側油室および解放側油室に対する油圧供給が切換えられることにより、係合または解放されるようになっている。
ロックアップクラッチ308が完全係合させられることにより、ポンプ翼車302およびタービン翼車306は一体的に回転させられる。ポンプ翼車302には、無段変速機500を変速制御したり、ベルト挟圧力を発生させたり、各部に潤滑油を供給したりするための油圧を発生する機械式のオイルポンプ310が設けられている。
前後進切換装置400は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置から構成されている。トルクコンバータ300のタービン軸304はサンギヤ402に連結されている。無段変速機500の入力軸502はキャリア404に連結されている。キャリア404とサンギヤ402とはフォワードクラッチ406を経由して連結されている。リングギヤ408は、リバースブレーキ410を経由してハウジングに固定される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410は油圧シリンダによって摩擦係合させられる。フォワードクラッチ406の入力回転数は、タービン軸304の回転数、すなわちタービン回転数NTと同じである。
フォワードクラッチ406が係合させられるとともに、リバースブレーキ410が解放されることにより、前後進切換装置400は前進用係合状態となる。この状態で、前進方向の駆動力が無段変速機500に伝達される。リバースブレーキ410が係合させられるとともにフォワードクラッチ406が解放されることにより、前後進切換装置400は後進用係合状態となる。この状態で、入力軸502はタービン軸304に対して逆方向へ回転させられる。これにより、後進方向の駆動力が無段変速機500に伝達される。フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410が共に解放されると、前後進切換装置400は動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。
無段変速機500は、入力軸502に設けられたプライマリプーリ504と、出力軸506に設けられたセカンダリプーリ508と、これらのプーリに巻き掛けられた伝動ベルト510とから構成される。各プーリと伝動ベルト510との間の摩擦力を利用して、動力伝達が行われる。
各プーリは溝幅が可変であるように、油圧シリンダから構成されている。プライマリプーリ504の油圧シリンダの油圧が制御されることにより、各プーリの溝幅が変化する。これにより、伝動ベルト510の掛かり径が変更され、変速比γ(=プライマリプーリ回転数NIN/セカンダリプーリ回転数NOUT)が連続的に変化させられる。
図2に示すように、ECU8000には、エンジン回転数センサ902、タービン回転数センサ904、車速センサ906、スロットル開度センサ908、冷却水温センサ910、油温センサ912、アクセル開度センサ914、フットブレーキスイッチ916、ポジションセンサ918、プライマリプーリ回転数センサ922およびセカンダリプーリ回転数センサ924が接続されている。
エンジン回転数センサ902は、エンジン200の回転数(エンジン回転数)NEを検出する。タービン回転数センサ904は、タービン軸304の回転数(タービン回転数)NTを検出する。車速センサ906は、車速Vを検出する。スロットル開度センサ908は、電子スロットルバルブの開度θ(TH)を検出する。冷却水温センサ910は、エンジン200の冷却水温T(W)を検出する。油温センサ912は、無段変速機500などの油温T(C)を検出する。アクセル開度センサ914は、アクセルペダルの開度(アクセル開度)A(CC)を検出する。フットブレーキスイッチ916は、フットブレーキの操作の有無を検出する。ポジションセンサ918は、シフトポジションと対応する位置に設けられた接点がONであるかOFFであるかを判別することにより、シフトレバー920のポジションP(SH)を検出する。プライマリプーリ回転数センサ922は、プライマリプーリ504の回転数NINを検出する。セカンダリプーリ回転数センサ924は、セカンダリプーリ508の回転数NOUTを検出する。各センサの検出結果を表す信号が、ECU8000に送信される。タービン回転数NTは、フォワードクラッチ406が係合された前進走行時にはプライマリプーリ回転数NINと一致する。車速Vは、セカンダリプーリ回転数NOUTと対応した値になる。したがって、車両が停車状態にあり、かつフォワードクラッチ406が係合された状態では、タービン回転数NTは0となる。
ECU8000は、エンジン200の出力制御、無段変速機500の変速制御、ベルト挟圧力制御、フォワードクラッチ406の係合/解放制御およびリバースブレーキ410の係合/解放制御などを実行する。
エンジン200の出力制御は電子スロットルバルブ1000、燃料噴射装置1100、点火装置1200などによって行なわれる。無段変速機500の変速制御、ベルト挟圧力制御、フォワードクラッチ406の係合/解放制御およびリバースブレーキ410の係合/解放制御は、油圧制御回路2000によって行なわれる。
図3−7を参照して、油圧制御回路2000について説明する。なお、以下に説明する油圧制御回路2000は一例であって、これに限らない。
図3に示すように、オイルポンプ310が発生した油圧は、ライン圧油路2002を経由してプライマリレギュレータバルブ2100、モジュレータバルブ(1)2310およびモジュレータバルブ(3)2330に供給される。
プライマリレギュレータバルブ2100には、SLTリニアソレノイドバルブ(以下「SLT」と記載する)2200およびSLSリニアソレノイドバルブ(以下「SLS」と記載する)2210のいずれか一方から選択的に制御圧が供給される。
SLT2200およびSLS2210は、ノーマルオープン(非通電時に出力される油圧が最大になる)型のソレノイドバルブである。
なお、以下の説明においては、ソレノイドバルブが常にオン(通電)時の油圧を出力してしまう故障を「オン故障」といい、ソレノイドバルブが常にオフ(非通電)時の油圧を出力してしまう故障を「オフ故障」というものとする。
たとえば、SLT2200およびSLS2210のようなノーマルオープン型のソレノイドバルブにおいて、「オン故障」とは、出力油圧が常に最大油圧より小さな値(たとえば0)となる故障を意味し、「オフ故障」とは、出力油圧が常に最大油圧となる故障を意味する。
一方、ノーマルクローズ(非通電時に出力される油圧が最小(「0」)になる)型のソレノイドバルブにおいて、「オン故障」とは、出力油圧が常に0より大きい値(たとえば最大油圧)となる故障を意味し、「オフ故障」とは、出力油圧が常に0となる故障を意味する。
プライマリレギュレータバルブ2100のスプールは、供給された制御圧に応じて上下に摺動する。これにより、オイルポンプ310で発生した油圧がプライマリレギュレータバルブ2100により調圧(調整)される。プライマリレギュレータバルブ2100により調圧された油圧がライン圧PLとして用いられる。本実施の形態においては、プライマリレギュレータバルブ2100に供給される制御圧が高いほど、ライン圧PLがより高くなる。なお、プライマリレギュレータバルブ2100に供給される制御圧が高いほど、ライン圧PLがより低くなるようにしてもよい。
SLT2200およびSLS2210には、ライン圧PLを元圧としてモジュレータバルブ(3)2330により調圧された油圧が供給される。
SLT2200およびSLS2210は、ECU8000から送信されたデューティ信号(デューティ値)によって決まる電流値に応じた油圧(制御圧)を出力する。
SLT2200の制御圧(出力油圧)およびSLS2210の制御圧(出力油圧)うち、プライマリレギュレータバルブ2100へ供給される制御圧は、コントロールバルブ2400により選択される。
コントロールバルブ2400のスプールが図3において(A)の状態(左側の状態)にある場合、SLT2200からプライマリレギュレータバルブ2100へ制御圧が供給される。すなわち、SLT2200の制御圧に応じて、ライン圧PLが制御される。
コントロールバルブ2400のスプールが図3において(B)の状態(右側の状態)にある場合、SLS2210からプライマリレギュレータバルブ2100へ制御圧が供給される。すなわち、SLS2210の制御圧に応じて、ライン圧PLが制御される。
なお、コントロールバルブ2400のスプールが図3において(B)の状態にある場合、SLT2200の制御圧は、後述するマニュアルバルブ2600に供給される。
コントロールバルブ2400のスプールは、スプリングにより一方向へ付勢される。このスプリングの付勢力に対向するように、変速制御用デューティソレノイド(1)(以下「DS(1)」と記載する)2510および変速制御用デューティソレノイド(2)(以下「DS(2)」と記載する)2520から油圧が供給される。
DS(1)2510およびDS(2)2520は、ノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。
DS(1)2510およびDS(2)2520は、ECU8000から送信されたデューティ信号(デューティ値)によって決まる電流値に応じた油圧(制御圧)を出力する。
DS(1)2510およびDS(2)2520の両方からコントロールバルブ2400に油圧が供給された場合、コントロールバルブ2400のスプールは図3において(B)の状態になる。
DS(1)2510およびDS(2)2520の少なくともいずれか一方からコントロールバルブ2400に油圧が供給されていない場合、コントロールバルブ2400のスプールは、スプリングの付勢力により図3において(A)の状態になる。
DS(1)2510およびDS(2)2520には、モジュレータバルブ(4)2340により調圧された油圧が供給される。モジュレータバルブ(4)2340は、モジュレータバルブ(3)2330から供給された油圧を一定の圧力に調圧する。
モジュレータバルブ(1)2310には、SLT2200あるいはSLS2210の制御圧によって制御されたライン圧PLが導入されている。
モジュレータバルブ(1)2310は、SLS2210の出力油圧をパイロット圧として、導入されたライン圧PLを調圧し、セカンダリプーリ508の油圧シリンダに供給する。モジュレータバルブ(1)2310からの出力油圧に応じてベルト挟圧力が増減させられる。
ECU8000は、アクセル開度A(CC)および変速比γをパラメータとしてベルト滑りが生じないベルト挟圧力となるようにSLS2210の出力油圧を制御している。
上述したように、SLT2200およびSLS2210は、ノーマルオープン型のソレノイドバルブである。
したがって、SLT2200またはSLS2210のオン故障が生じる(たとえば出力油圧が常に0となる)と、ライン圧PLあるいはSLS2210の出力油圧がECU8000の指令どおりの油圧に制御できなくなる。これにより、モジュレータバルブ(1)2310からセカンダリプーリ508の油圧シリンダに適正なベルト挟圧力を生じさせる油圧を供給できなくなる。そのため、伝動ベルト510がプライマリプーリ504あるいはセカンダリプーリ508に対して滑ってしまう現象(以下「ベルト滑り現象」と記載する)が生じる。
セカンダリプーリ508の油圧シリンダに供給される油圧は、プレッシャセンサ2312により検出される。
図4を参照して、マニュアルバルブ2600について説明する。マニュアルバルブ2600は、シフトレバー920の操作に従って機械的に切換えられる。これにより、フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410は係合させられたり、解放させられたりする。
シフトレバー920は、駐車用の「P」ポジション、後進走行用の「R」ポジション、動力伝達を遮断する「N」ポジション、前進走行用の「D」ポジションおよび「B」ポジションへ操作される。
「P」ポジションおよび「N」ポジションでは、フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410内の油圧は、マニュアルバルブ2600からドレンされる。これにより、フォワードクラッチ406およびリバースブレーキ410は解放される。
「R」ポジションでは、マニュアルバルブ2600からリバースブレーキ410に油圧が供給される。これによりリバースブレーキ410が係合させられる。一方、フォワードクラッチ406内の油圧がマニュアルバルブ2600からドレンされる。これによりフォワードクラッチ406が解放される。
コントロールバルブ2400が図4において(A)の状態(左側の状態)にある場合、図示しないモジュレータバルブ(2)から供給されたモジュレータ圧PMが、コントロールバルブ2400を経由してマニュアルバルブ2600に供給される。このモジュレータ圧PMによりリバースブレーキ410が係合状態に保持される。
コントロールバルブ2400が図4において(B)の状態(右側の状態)にある場合、SLT2200により調圧された油圧が、マニュアルバルブ2600に供給される。SLT2200により油圧を調圧することにより、リバースブレーキ410が緩やかに係合され、係合時のショックが抑制される。
また、コントロールバルブ2400が図4において(B)の状態(右側の状態)にある場合において、SLT2200のデューティ比を100%にし、通電量を最大にすると、SLT2200から油圧が出力されなくなり、リバースブレーキ410に供給される油圧が「0」になる。すなわち、SLT2200を経由してリバースブレーキ410から油圧がドレンされ、リバースブレーキ410が解放される。
「D」ポジションおよび「B」ポジションでは、マニュアルバルブ2600からフォワードクラッチ406に油圧が供給される。これによりフォワードクラッチ406が係合させられる。一方、リバースブレーキ410内の油圧がマニュアルバルブ2600からドレンされる。これによりリバースブレーキ410が解放される。
コントロールバルブ2400が図4において(A)の状態(左側の状態)にある場合、図示しないモジュレータバルブ(2)から供給されたモジュレータ圧PMが、コントロールバルブ2400を経由してマニュアルバルブ2600に供給される。このモジュレータ圧PMによりフォワードクラッチ406が係合状態に保持される。
コントロールバルブ2400が図4において(B)の状態(右側の状態)にある場合、SLT2200により調圧された油圧が、マニュアルバルブ2600に供給される。SLT2200により油圧を調圧することにより、フォワードクラッチ406が緩やかに係合され、係合時のショックが抑制される。
図5を参照して、変速制御を行なう構成について説明する。変速制御は、プライマリプーリ504の油圧シリンダに対する油圧の供給および排出を制御することにより行なわれる。プライマリプーリ504の油圧シリンダに対する作動油の給排は、レシオコントロールバルブ(1)2710およびレシオコントロールバルブ(2)2720を用いて行なわれる。
プライマリプーリ504の油圧シリンダには、ライン圧PLが供給されるレシオコントロールバルブ(1)2710と、ドレンに接続されたレシオコントロールバルブ(2)2720とが連通されている。
レシオコントロールバルブ(1)2710は、アップシフトを実行するためのバルブである。レシオコントロールバルブ(1)2710は、ライン圧PLが供給される入力ポートとプライマリプーリ504の油圧シリンダに連通された出力ポートとの間の流路をスプールによって開閉するように構成されている。
レシオコントロールバルブ(1)2710のスプールの一端部にはスプリングが配置されている。スプールを挟んでスプリングとは反対側の端部に、DS(1)2510からの制御圧が供給されるポートが形成されている。また、スプリングが配置されている側の端部に、DS(2)2520からの制御圧が供給されるポートが形成されている。
DS(1)2510をオンするとともに、DS(2)2520をオフすると、レシオコントロールバルブ(1)2710のスプールが図5において(D)の状態(右側の状態)になる。
この状態では、プライマリプーリ504の油圧シリンダに供給される油圧が増加してプライマリプーリ504の溝幅が狭くなる。そのため、変速比γが低下する。すなわちアップシフトする。
上述したように、SLT2200はノーマルオープン型のソレノイドバルブであり、DS(1)2510およびDS(2)2520はノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。
したがって、DS(1)2510のオフ故障(出力油圧が常に0となる故障)、DS(2)2520のオン故障(たとえば出力油圧が常に最大油圧となる故障)、SLT2200のオン故障(出力油圧が常に0となる故障)のいずれかの故障が生じると、アップシフトができない現象(以下「アップシフト不可現象」と記載する)が生じる。
レシオコントロールバルブ(2)2720は、ダウンシフトを実行するためのバルブである。レシオコントロールバルブ(2)2720のスプールの一端部にはスプリングが配置されている。スプリングが配置されている側の端部に、DS(1)2510からの制御圧が供給されるポートが形成されている。スプールを挟んでスプリングとは反対側の端部に、DS(2)2520からの制御圧が供給されるポートが形成されている。
DS(1)2510をオフするとともに、DS(2)2520をオンすると、レシオコントロールバルブ(2)2720のスプールが図5において(C)の状態(左側の状態)になる。同時に、レシオコントロールバルブ(1)2710のスプールが図5において(C)の状態(左側の状態)になる。
この状態では、レシオコントロールバルブ(1)2710およびレシオコントロールバルブ(2)2720を経由して、プライマリプーリ504の油圧シリンダから作動油が排出される。そのため、プライマリプーリ504の溝幅が広くなる。その結果、変速比γが増大する。すなわちダウンシフトする。またその際の作動油の排出流量を増大させることにより、変速速度が速くなる。
上述したように、DS(1)2510およびDS(2)2520は、ノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。したがって、DS(1)2510のオン故障(たとえば出力油圧が常に最大油圧となる故障)、またはDS(2)2520のオフ故障(出力油圧が常に0となる故障)が生じると、ダウンシフトができない現象(以下「ダウンシフト不可現象」と記載する)が生じる。
図6に、プライマリプーリ504の油圧シリンダに供給される油圧(以下、「プライマリ圧」ともいう)、セカンダリプーリ508の油圧シリンダに供給される油圧(以下、「セカンダリ圧」ともいう)、ライン圧PL、および変速比γの関係を示す。
ECU8000は、変速比γが目標変速比に近づくように、DS(1)2510、DS(2)2520、SLS2210およびSLT2200に対して制御信号を出力する。
たとえば、車両の発進時において目標変速比は最減速側の変速比γmaxとされる。このとき、DS(2)2520の制御によりプライマリ圧は低下した状態となる。そのため、プライマリプーリ504において伝動ベルト510の巻き掛け半径は最小の径となる。
プライマリ圧が低い場合には、伝動ベルト510の伝達トルクを確保する必要がある。そのため、プライマリ圧が低下するほどセカンダリ圧が上昇するようにSLS2210が制御される。すなわち、プライマリ圧が低いほど、セカンダリプーリ508によるベルト挟圧力は上昇する。このとき、ライン圧PLは、セカンダリ圧を確保するために、セカンダリ圧よりも予め定められた値だけ大きい値とされる。
車両の発進後の車速Vの増加あるいはアクセル開度A(CC)の増加により、目標変速比はγmaxよりも低い値(図6の右側の値)に設定される。DS(1)2510の制御によりプライマリ圧が上昇する。プライマリ圧の上昇により伝動ベルト510のプライマリプーリ504に対する巻き掛け半径が大きくなる。さらに、セカンダリ圧の低下とともに、ベルト挟圧力が低下する。これにより、セカンダリプーリ508に対する伝動ベルト510の巻き掛け半径が小さくなる。このため、変速比γは小さくなる。
プライマリ圧は、変速比γが増速側に変速するほど増大し、変速比a以下の変速比の領域(図6の変速比aよりも右側の領域)になると、セカンダリ圧以上となる。ライン圧PLは、プライマリ圧を確保するため、プライマリ圧に予め定められた値を加えた値とされる。
すなわち、最増速側の変速比γminを実現するためには、少なくともセカンダリ圧よりもプライマリ圧が高く制御し、かつプライマリ圧よりもライン圧PLを高く制御する必要がある。
上述したように、SLT2200およびSLS2210はノーマルオープン型のソレノイドバルブであり、DS(1)2510およびDS(2)2520はノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。
したがって、DS(1)2510のオフ故障(出力油圧が常に0となる故障)、DS(2)2520のオン故障(たとえば出力油圧が常に最大油圧となる故障)、SLS2210のオフ故障(たとえば出力油圧が常に最大油圧となる故障)、およびSLT2200のオン故障(出力油圧が常に0となる故障)のいずれかの故障が生じると、変速比γを最増速側の変速比γminにできない現象(以下「γmin未達現象」と記載する)が生じる。
図7を参照して、ロックアップクラッチ308の状態を制御するためにトルクコンバータ300に供給される油圧の経路を切換えるロックアップコントロールバルブ2900について説明する。
ロックアップコントロールバルブ2900は、セカンダリ圧の供給先を、トルクコンバータ300の係合側油室(ポンプ翼車302側)と解放側油室(ロックアップクラッチ308とコンバータカバー312とで区画される空間)との間で選択的に切換える。セカンダリ圧は、セカンダリレギュレータバルブ2102により調圧される。
ロックアップコントロールバルブ2900のスプールの一端部には、DSUソレノイドバルブ(以下「DSU」と記載する)2902により調圧された油圧が供給される。ロックアップコントロールバルブ2900は、DSU2902から供給される油圧をパイロット圧として作動する。
また、DSU2902から油圧が供給される端部とは反対側の端部には、スプリングが設けられるとともに、コントロールバルブ2400を経由してDS(2)2520から油圧が供給される。DS(1)2510およびDS(2)2520の両方からコントロールバルブ2400に油圧を供給するように制御すると、コントロールバルブ2400のスプールは図7において(B)の状態になり、ロックアップコントロールバルブ2900にDS(2)2520から油圧が供給される。
DSU2902は、ノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。DSU2902は、ECU8000から送信されたデューティ信号(デューティ値)によって決まる電流値に応じた油圧(制御圧)を出力する。
DSU2902をオンすると、DSU2902からロックアップコントロールバルブ2900に対して油圧が供給されて、ロックアップコントロールバルブ2900のスプールは、図7において(F)に示す状態(右側の状態)になる。
この場合、セカンダリ圧が、トルクコンバータ300の係合側油室に供給され、トルクコンバータ300の解放側油室から油圧がドレンされる。そのため、ロックアップクラッチ308がコンバータカバー312側に押し付けられ、ロックアップクラッチ308が係合状態になる。
上述したように、DSU2902は、ノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。したがって、DSU2902のオン故障(たとえば出力油圧が常に最大油圧となる故障)が生じると、ロックアップクラッチ308が常に係合されて解放できない現象(以下「ロックアップ解放不可現象」と記載する)が生じる。
一方、DSU2902をオフすると、DSU2902からロックアップコントロールバルブ2900に対して油圧が供給されず、スプリングの付勢力により、ロックアップコントロールバルブ2900のスプールは、図7において(E)に示す状態(左側の状態)になる。
この場合、セカンダリ圧が、トルクコンバータ300の解放側油室に供給され、トルクコンバータ300係合側油室の油圧がオイルクーラ(図示せず)に供給される。そのため、ロックアップクラッチ308がコンバータカバー312から引き離され、ロックアップクラッチ308が解放状態になる。
また、DS(2)2520からロックアップコントロールバルブ2900に油圧が供給されている場合、DSU2902からロックアップコントロールバルブ2900に対して油圧が供給されていても、ロックアップコントロールバルブ2900のスプールは、図7において(E)に示す状態(左側の状態)になる。したがって、ロックアップクラッチ308が解放状態になる。すなわち、DS(1)2510をオンするとともに、DS(2)2520をオンすることによって、ロックアップクラッチ308を解放状態にすることができる。
上述したように、DSU2902、DS(1)2510およびDS(2)2520はノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。
したがって、DSU2902のオフ故障(出力油圧が常に0となる故障)が生じるか、DS(1)2510およびDS(2)2520のオン故障(たとえば出力油圧が常に最大油圧となる故障)が生じると、ロックアップクラッチ308が常に解放されて係合できない現象(以下「ロックアップ係合不可現象」と記載する)が生じる。
上述した各異常現象と各ソレノイドバルブのオン故障/オフ故障との対応関係をまとめると、図8に示すような関係となる。図8においては、各ソレノイドバルブのオン故障/オフ故障によって生じる異常現象の欄に「○」が付与されている。
図8に示すように、ソレノイドバルブのオン故障/オフ故障によって生じる異常現象の組合せ(前述の図8において、各ソレノイドバルブのオン故障/オフ故障に対して「○」が付与された異常現象の組合せ)は、各ソレノイドバルブごとにそれぞれ異なっている。
また、たとえば、駆動装置100に「ロックアップ解放不可現象」が生じている場合、「○」印が付与されているのは、DSU2902のオン故障のみであるため、DSU2902がオン故障していると特定することができる。
しかしながら、たとえば、「アップシフト不可現象」が生じている場合、DS(1)2510のオフ故障、DS(2)2520のオン故障、SLT2200のオン故障のいずれかの故障が生じている可能性がある。言い換えれば、「アップシフト不可現象」という1つの現象のみを検出しても、DSU2902のオフ故障、DS(1)2510のオン故障、DS(2)2520のオン故障のいずれの故障が生じているのかを特定することができない。
「ロックアップ解放不可現象」を除く他の現象(「ロックアップ係合不可現象」、「ダウンシフト不可現象」、「γmin未達現象」、「ベルト滑り現象」)も同様に、故障している可能性があるソレノイドが複数存在しているため、各異常現象を単独で検出しただけでは、いずれのソレノイドの故障(オン故障/オフ故障)が生じているのかを特定することはできない。
そこで、本実施の形態に係る故障診断装置においては、図8に示した各ソレノイドバルブのオン故障/オフ故障によって生じる異常現象の組合せを各ソレノイドバルブごとに予め記憶しておき、記憶された組合せと実際に生じている異常現象の組合せとを比較した結果に基づいて、いずれのソレノイドバルブのオン故障/オフ故障が生じているのかを特定する。
図9に、本実施の形態に係る故障診断装置であるECU8000が故障診断を行なう際の機能ブロック図を示す。ECU8000は、入力インターフェイス(入力I/F)8100と、演算処理部8200と、記憶部8300と、出力インターフェイス(出力I/F)8400とを含む。
入力I/F8100は、エンジン回転数センサ902からのエンジン回転数NE、タービン回転数センサ904からのタービン回転数NT、アクセル開度センサ914からのアクセル開度A(CC)、プライマリプーリ回転数センサ922からのプライマリプーリ回転数NIN、セカンダリプーリ回転数センサ924からのセカンダリプーリ回転数NOUTを受信して、演算処理部8200に送信する。
記憶部8300には、各種情報、プログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部8200からデータが読み出されたり、格納されたりする。
演算処理部8200は、現象発生判断部8210と、現象組合せ判断部8220と、故障部品特定部8230とを含む。
現象発生判断部8210は、上述した「ロックアップ解放不可現象」が生じているか否かを判断し、「ロックアップ解放不可現象」が生じていると判断する場合には、ロックアップ係合不可フラグF(1)を「1」に設定し、「ロックアップ解放不可現象」が生じていないと判断する場合には、ロックアップ係合不可フラグF(1)を「0」に設定する。「ロックアップ係合不可現象」、「アップシフト不可現象」、「ダウンシフト不可現象」、「γmin未達現象」、「ベルト滑り現象」の各現象についても同様に判断し、判断結果を、記憶部8300に記憶されたロックアップ解放不可フラグF(2)、アップシフト不可フラグF(3)、ダウンシフト不可フラグF(4)、γmin未達フラグF(5)、ベルト滑りフラグF(6)に設定する。これらのF(1)〜F(6)の各フラグは、記憶部8300に記憶される。なお、F(1)〜F(6)の各フラグは、初期状態において「0」に設定される。
現象組合せ判断部8220は、各ソレノイドバルブのオン故障/オフ故障によって生じる異常現象の組合せが(前述の図8において、各ソレノイドのオン故障/オフ故障に対して「○」が付与された異常現象の組合せ)のうち、いずれの組合せが現象発生判断部8210の判断結果の組合せと一致するのかを判断する。
ここで、各ソレノイドバルブのオン故障/オフ故障によって生じる異常現象の組合せ(前述の図8において、各ソレノイドのオン故障/オフ故障に対して「○」が付与された異常現象の組合せ)は、各ソレノイドバルブの各々に対応する特定情報として記憶部8300に予め記憶されている。たとえば、「DS(1)2510のオン故障」に対する組合せは、「ロックアップ係合不可現象」と「ダウンシフト不可現象」との組合せ(すなわちロックアップ係合不可フラグF(1)およびダウンシフト不可フラグF(4)のみが1である組合せ)である。
故障部品特定部8230は、現象組合せ判断部8220の判断結果に基づいて、いずれのソレノイドのオン故障/オフ故障が生じているのかを特定する。故障部品特定部8230は、特定結果をインフォメーションパネル(図示せず)に表示させる警告信号を、出力インターフェイス8400を経由してインフォメーションパネルに出力する。なお、特定結果を、たとえばスピーカ(図示せず)などから音声で出力させるようにしてもよい。
本実施の形態において、現象発生判断部8210と、現象組合せ判断部8220と、故障部品特定部8230とは、いずれも演算処理部8200であるCPUが記憶部8300に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
図10〜図13を参照して、本実施の形態に係る故障診断装置であるECU8000が、異常現象が駆動装置100で実際に生じているか否かを各異常現象ごとに判断して、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)の各フラグに値を設定する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、これらのプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
図10を参照して、ECU8000が「ロックアップ解放不可現象」および「ロックアップ係合不可現象」が生じているか否かを判断する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU8000は、ロックアップクラッチ308を係合させるためのロックアップ係合指令が油圧制御回路2000に出力されているか否かを判断する。ロックアップ係合指令が出力されていると(S100にてYES)、処理はS102に移される。そうでないと(S100にてNO)、ロックアップクラッチ308を解放させるためのロックアップ解放指令が油圧制御回路2000に出力されているものとして、処理はS108に移される。
S102にて、ECU8000は、エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの差の絶対値がしきい値N(1)を超えているか否かを判断する。エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの差の絶対値がしきい値N(1)を超えていると(S102にてYES)、処理はS104に移される。そうでないと(S102にてNO)、処理はS106に移される。
S104にて、ECU8000は、ロックアップ係合不可現象が生じていると判断して、ロックアップ係合不可フラグF(1)を「1」に設定する。S106にて、ECU8000は、ロックアップ係合不可現象が生じていないと判断して、ロックアップ係合不可フラグF(1)を「0」に設定する。
S108にて、ECU8000は、エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの差の絶対値がしきい値N(2)より小さいか否かを判断する。エンジン回転数NEとタービン回転数NTとの差の絶対値がしきい値N(2)より小さいと(S108にてYES)、処理はS110に移される。そうでないと(S108にてNO)、処理はS112に移される。
S110にて、ECU8000は、ロックアップ解放不可現象が生じていると判断して、ロックアップ解放不可フラグF(2)を「1」に設定する。S112にて、ECU8000は、ロックアップ解放不可現象が生じていないと判断して、ロックアップ解放不可フラグF(2)を「0」に設定する。
図11を参照して、本実施の形態に係る故障診断装置であるECU8000が「アップシフト不可現象」および「ダウンシフト不可現象」が生じているか否かを判断する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
S200にて、ECU8000は、アクセル開度A(CC)が増加している(すなわちアップシフト指令が油圧制御回路2000に出力されている)か否かを判断する。アクセル開度A(CC)が増加していると(S200にてYES)、処理はS202に移される。そうでないと(S200にてNO)、処理はS208に移される。
S202にて、ECU8000は、変速比γ(=プライマリプーリ回転数NIN/セカンダリプーリ回転数NOUT)が減少している(すなわちアップシフトしている)か否かを判断する。変速比γが減少していると(S202にてYES)、処理はS204に移される。そうでないと(S202にてNO)、処理はS206に移される。
S204にて、ECU8000は、「アップシフト不可現象」が生じていないと判断して、アップシフト不可フラグF(3)を「0」に設定する。S206にて、ECU8000は、「アップシフト不可現象」が生じていると判断して、アップシフト不可フラグF(3)を「1」に設定する。
S208にて、ECU8000は、アクセル開度A(CC)が減少している(すなわちダウンシフトシフト指令が油圧制御回路2000に出力されている)か否かを判断する。アクセル開度A(CC)が減少していると(S208にてYES)、処理はS210に移される。そうでないと(S208にてNO)、この処理は終了する。
S210にて、ECU8000は、変速比γが増加している(すなわちダウンシフトしている)か否かを判断する。変速比γが増加していると(S210にてYES)、処理はS212に移される。そうでないと(S210にてNO)、処理はS214に移される。
S212にて、ECU8000は、「ダウンシフト不可現象」が生じていないと判断して、ダウンシフト不可フラグF(4)を「0」に設定する。S214にて、ECU8000は、「ダウンシフト不可現象」が生じていると判断して、ダウンシフト不可フラグF(4)を「1」に設定する。
図12を参照して、本実施の形態に係る故障診断装置であるECU8000が「γmin未達現象」が生じているか否かを判断する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
S300にて、ECU8000は、目標変速比が変速比aより小さい(前述の図6の変速比aよりも右側の値)であるか否かを判断する。なお、本処理において、目標変速比が最増速側の変速比γminであるか否かを判断するようにしてもよい。目標変速比が変速比aより小さいと(S300にてYES)、処理はS302に移される。そうでないと(S300にてNO)、この処理は終了する。
S302にて、ECU8000は、実際の変速比γが変速比aより小さいか否かを判断する。なお、S300の処理にて目標変速比が最増速側の変速比γminであるか否かを判断した場合には、本処理で実際の変速比γが最増速側の変速比γminに達しているか否かを判断するようにしてもよい。実際の変速比γが変速比aより小さいと(S302にてYES)、処理はS304に移される。そうでないと(S302にてNO)、処理はS306に移される。
S304にて、ECU8000は、「γmin未達現象」が生じていないと判断して、γmin未達フラグF(5)を「0」に設定する。S306にて、ECU8000は、「γmin未達現象」が生じていると判断して、γmin未達フラグF(5)を「1」に設定する。
図13を参照して、本実施の形態に係る故障診断装置であるECU8000が「ベルト滑り現象」が生じているか否かを判断する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
S400にて、ECU8000は、車両発進時に変速比γが最減速側の変速比γmaxであるか否かを判断する。車両発進時に変速比γが最減速側の変速比γmaxであると(S400にてYES)、処理はS402に移される。そうでないと(S400にてNO)、処理はS404に移される。
S402にて、ECU8000は、ベルト滑りが発生していないと判断して、ベルト滑りフラグF(6)を「0」に設定する。S404にて、ECU8000は、ベルト滑りが発生していると判断して、ベルト滑りフラグF(6)を「1」に設定する。
図14を参照して、本実施の形態に係る故障診断装置であるECU8000がいずれのソレノイドのオン故障/オフ故障が生じているのかを特定する際に実行するプログラムの制御構造について説明する。このプログラムは、たとえば、1トリップ中においてF(1)〜F(6)のフラグの設定処理(図10〜図13に示した処理)が完了した後に実行される。
S500にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、ロックアップ解放不可フラグF(2)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたDSU2902のオン故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(2)のみが「1」であると(S500にてYES)、処理はS502に移される。そうでないと(S500にてNO)、処理はS504に移される。S502にて、ECU8000は、DSU2902のオン故障が生じていると特定する。
S504にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、ロックアップ係合不可フラグF(1)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたDSU2902のオフ故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(1)のみが「1」であると(S504にてYES)、処理はS506に移される。そうでないと(S504にてNO)、処理はS508に移される。S506にて、ECU8000は、DSU2902のオフ故障が生じていると特定する。
S508にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、ロックアップ係合不可フラグF(1)およびダウンシフト不可フラグF(4)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたDS(1)2510のオン故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(1)およびF(4)のみが「1」であると(S508にてYES)、処理はS510に移される。そうでないと(S508にてNO)、処理はS512に移される。S510にて、ECU8000は、DS(1)2510のオン故障が生じていると特定する。
S512にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、アップシフト不可フラグF(3)およびγmin未達フラグF(5)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたDS(1)2510のオフ故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(3)およびF(5)のみが「1」であると(S512にてYES)、処理はS514に移される。そうでないと(S512にてNO)、処理はS516に移される。S514にて、ECU8000は、DS(1)2510のオフ故障が生じていると特定する。
S516にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、ロックアップ係合不可フラグF(1)、アップシフト不可フラグF(3)およびγmin未達フラグF(5)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたDS(2)2520のオン故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(1)、F(3)およびF(5)のみが「1」であると(S516にてYES)、処理はS518に移される。そうでないと(S516にてNO)、処理はS520に移される。S518にて、ECU8000は、DS(2)2520のオン故障が生じていると特定する。
S520にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、ダウンシフト不可フラグF(4)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたDS(2)2520のオフ故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(4)のみが「1」であると(S520にてYES)、処理はS522に移される。そうでないと(S520にてNO)、処理はS524に移される。S522にて、ECU8000は、DS(2)2520のオフ故障が生じていると特定する。
S524にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、ベルト滑りフラグF(6)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたSLS2210のオン故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(6)のみが「1」であると(S524にてYES)、処理はS526に移される。そうでないと(S524にてNO)、処理はS528に移される。S526にて、ECU8000は、SLS2210のオン故障が生じていると特定する。
S528にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、γmin未達フラグF(5)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたSLS2210のオフ故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(5)のみが「1」であると(S528にてYES)、処理はS530に移される。そうでないと(S528にてNO)、処理はS532に移される。S530にて、ECU8000は、SLS2210のオフ故障が生じていると特定する。
S532にて、ECU8000は、記憶部8300に記憶されたF(1)〜F(6)のフラグのうち、アップシフト不可フラグF(3)、γmin未達フラグF(5)およびベルト滑りフラグF(6)のみが「1」であるか否かを判断する。すなわち、ECU8000は、駆動装置100で実際に生じている異常現象の組合せと、記憶部8300に記憶されたSLT2200のオン故障に対応する異常現象の組合せとが一致するか否かを判断する。F(3)、F(5)およびF(6)のみが「1」であると(S532にてYES)、処理はS534に移される。そうでないと(S532にてNO)、処理はS536に移される。S534にて、ECU8000は、SLT2200のオン故障が生じていると特定する。
S536にて、ECU8000は、S502〜S534の処理による特定結果をインフォメーションパネルに表示させる警告信号を出力する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る故障診断装置であるECU8000の動作について説明する。
たとえば「アップシフト不可現象」が生じている場合を想定する。この場合、上述したように、「アップシフト不可現象」という1つの現象のみを検出しても、DSU2902のオフ故障、DS(1)2510のオン故障、DS(2)2520のオン故障のいずれの故障が生じているのかを特定することができない(図8参照)。
そこで、本実施の形態においては、図11〜図13のフローチャートに示したように、各ソレノイドのオン故障/オフ故障で生じ得る各異常現象が実際に生じているか否かが判断され、これらの判断結果が、ロックアップ係合不可フラグF(1)、ロックアップ解放不可フラグF(2)、アップシフト不可フラグF(3)、ダウンシフト不可フラグF(4)、γmin未達フラグF(5)、ベルト滑りフラグF(6)の各フラグに予め設定される。
そして、F(1)〜F(6)のフラグのうち、アップシフト不可フラグF(3)およびγmin未達フラグF(5)のみが「1」である場合(S512にてYES)には、DS(1)2510のオフ故障が生じていると特定される(S514)。
F(1)〜F(6)のフラグのうち、ロックアップ係合不可フラグF(1)、アップシフト不可フラグF(3)およびγmin未達フラグF(5)のみが「1」である場合(S516にてYES)には、DS(2)2520のオン故障が生じていると特定される(S518)。
F(1)〜F(6)のフラグのうち、アップシフト不可フラグF(3)、γmin未達フラグF(5)およびベルト滑りフラグF(6)のみが「1」である場合(S532にてYES)、SLT2200のオン故障が生じていると特定される(S534)。
以上のように、本実施の形態に係る故障診断装置によれば、各ソレノイドのオン故障/オフ故障で生じる異常現象が実際に生じているか否かを各異常現象ごとに判断し、実際に生じていると判断された異常現象の組合せに基づいて、いずれのソレノイドのオン故障/オフ故障が生じているのかが特定される。そのため、1つの異常現象に複数のソレノイドが関与している場合においても、それらのうちのいずれのソレノイドが故障しているのかを精度よく特定することができる。
なお、本実施の形態においては、各ソレノイドのオン故障/オフ故障の特定処理をF(1)〜F(6)のフラグの設定完了後の同じタイミングで行なう場合について説明したが、各ソレノイドのオン故障/オフ故障の特定が可能なタイミングであれば、異なるタイミングで特定処理を行なうようにしてもよい。
たとえば、上述したように、DS(1)2510のオフ故障、DS(2)2520のオン故障、SLT2200のオン故障の特定は、F(1)、F(3)、F(5)、F(6)の設定完了後であれば可能である。そのため、DS(1)2510のオフ故障、DS(2)2520のオン故障、SLT2200のオン故障の特定処理を、F(1)、F(3)、F(5)、F(6)の設定が完了した時点で行なうようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100 駆動装置、200 エンジン、300 トルクコンバータ、310 オイルポンプ、312 コンバータカバー、400 前後進切換装置、402 サンギヤ、404 キャリア、406 フォワードクラッチ、408 リングギヤ、410 リバースブレーキ、500 無段変速機、502 入力軸、504 プライマリプーリ、506 出力軸、508 セカンダリプーリ、510 伝動ベルト、600 減速歯車、700 差動歯車装置、800 駆動輪、902 エンジン回転数センサ、904 タービン回転数センサ、906 車速センサ、908 スロットル開度センサ、910 冷却水温センサ、912 油温センサ、914 アクセル開度センサ、916 フットブレーキスイッチ、918 ポジションセンサ、920 シフトレバー、922 プライマリプーリ回転数センサ、924 セカンダリプーリ回転数センサ、930 ストール判定部、932 フェールセーフ制御部、934 車速検出部、936 フェールセーフ終了部、938 係合禁止部、940 異常判定部、1000 電子スロットルバルブ、1100 燃料噴射装置、1200 点火装置、2000 油圧制御回路、2002 ライン圧油路、2100 プライマリレギュレータバルブ、2102 セカンダリレギュレータバルブ、2200 SLTリニアソレノイドバルブ、2210 SLSリニアソレノイドバルブ、2310 モジュレータバルブ(1)、2330 モジュレータバルブ(3)、2340 モジュレータバルブ(4)、2312 プレッシャセンサ、2400 コントロールバルブ、2510 変速制御用デューティソレノイド(1)、2520 変速制御用デューティソレノイド(2)、2600 マニュアルバルブ、2710 レシオコントロールバルブ(1)、2720 レシオコントロールバルブ(2)、2800 バイパスコントロールバルブ、2900 ロックアップコントロールバルブ、2902 DSUソレノイドバルブ、8000 ECU、8100 入力インターフェイス、8200 演算処理部、8210 現象発生判断部、8220 判断部、8230 故障部品特定部、8300 記憶部、8400 出力インターフェイス。