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JP2009257094A - 軸流水力機械のランナベーン - Google Patents

軸流水力機械のランナベーン Download PDF

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Abstract

【課題】ランナベーンの形状を適正化することによってフィレットと同様の効果を得ることができるばかりでなく、ランナベーン出口の流速分布を適正化して性能向上を図る。
【解決手段】ランナベーンの径方向断面図形のキャンバーラインのうちチップ側の部分をランナベーンの表面に向かって凸となる曲線で形成し、かつランナベーンの表面の曲率半径をρ、裏面の曲率半径をρとしたときに、ρ<ρとなるように構成する。これにより、チップ端へ偏る流れが抑制されるため、旋回方向速度の変化が従来よりも緩やかになる結果、吸出管の圧力回復を妨げることがなく損失を低減できる。
【選択図】図4

Description

本発明は、軸流水力機械のランナベーンに関し、より詳しくは、ランナベーンの形状を適正化することによって性能向上を図る技術に関する。
従来、軸流水力機械にはカプラン水車、バルブ水車などがあるが、これらの軸流水車を設けた水力発電所においては、図14にその要部を断面で示したように、上流からケーシング1内に流入した流水はステー2を通り、流量を調整するための開閉機能を有したガイドベーン3を流れ、発電機と主軸で連結されたランナベーン4へと到達する。
するとこの流水は、ランナベーン4に作用してボス5を回転させることにより発電機を回転させて発電した後、ランナベーン4から流出して吸出管6を通り、下流もしくは下池へと放出される。
このとき、図15に示したランナベーン4のチップ端7と、ディスチャージリング8との間に隙間が存在するため、流水はランナベーン4とディスチャージリング8の間に漏れて流れる。そして、この漏れ流れが大きいと、ランナベーン4に作用する流体力を回収しきれなくなって損失が増大する。
一方、ランナ回転軸Cに直交する断面でランナベーン4を見た時、ランナベーン4同士がオーバーラップしない場合には、特に流速の早い外周側(ランナベーン4のチップ端7)においてランナベーン4に作用しない通り抜け流れが発生する。
この通り抜け流れとランナベーン4およびディスチャージリング8の間の隙間の影響により、ランナベーン出口における流速分布はチップ端7側において乱れやすく、乱れた流れは吸出管6において十分圧力回復を図ることができずに性能低下をもたらす。
また、遠心力の影響により外周側(チップ端7)へ偏った流れとなり易いだけでなく、外周側は流速が大きくランナベーン4の負圧面(裏面)での圧力低下を発生させる。
そのためランナベーン4とディスチャージリング8間の間隙が存在するこの部位は、キャビテーションが発生しやすく壊食されやすいため、このキャビテーションを抑制することは、性能低下をもたらす損失を低減させることと合わせて、ランナベーン4の延命化を図る上で重要である(例えば、下記特許文献1、2、3を参照)
特開平3−151570号 特開平7−54752号 特開2005−315216号
ところで、上記特許文献3に記載されている軸流水車は、キャビテーションによる水車性能の低下を抑制するため、ランナベーンの外周部にフィレットを設けたものである。
しかしながら、フィレットを設けることによりキャビテーションの発生を抑制することはできるが、ランナベーン出口の流速分布を適正化することはできず、また別途フィレットを溶接する必要があって製作性も悪化する。
そこで、本発明の目的は、ランナベーンの形状を適正化することによってフィレットと同様の効果を得ることができるばかりでなく、ランナベーン出口の流速分布を適正化して性能向上を図ることのできる軸流水力機械のランナベーンを提供することにある。
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、軸流水力機械のランナベーンであって、
ランナ回転軸と同軸な複数の円筒面によって前記ランナベーンをボス部からチップ部にかけてそれぞれ周方向に切断して複数の周方向断面図形を得るとともに、
これらの周方向断面図形のうち前記ランナベーンの表面および裏面をそれぞれ表す流線を前記ランナベーンの入口端から出口端にかけて周方向に等しい長さに等分し、
各流線のうち周方向に等分された位置同士を径方向に結んだ線に沿って前記ランナベーンを径方向に切断したときに現れる径方向断面図形を見たときに、
前記径方向断面図形のキャンバーラインのうちチップ部側の部分を前記ランナベーンの表面に向かって凸となる曲線で形成し、
かつ前記ランナベーンの表面の曲率半径をρ、裏面の曲率半径をρとしたときに、
ρ<ρ
となるように構成したことを特徴とする。
本発明によれば、ランナベーンの形状を適正化することによりフィレットと同様の効果を得ることができるばかりでなく、ランナベーン出口の流速分布を適正化して性能向上を図ることのできる軸流水力機械のランナベーンを提供することができる。
以下、図1〜図13を参照し、本発明に係る軸流水力機械のランナベーンの各実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、同一の部分に同一の符号を用いて重複した説明を省略する。
第1実施形態
まず最初に図1〜図6を参照し、第1実施形態のランナベーンについて説明する。
図1に示した軸流水力機械100は、本第1実施形態のランナベーン10を備えたもので、それ以外の部分は図14に示した従来の軸流水力機械と同一構造となっている。
本第1実施形態のランナベーン10においては、図2に示したように、ボス端11からチップ端12にかけてランナ回転軸Cと同軸な等間隔の複数の円筒面でそれぞれ周方向に切断することにより、図3に示したような複数の周方向断面図形(A−A断面)を得る。
そして、これらの周方向断面図形のうち、ランナベーン10の表面10aおよび裏面10bをそれぞれ表す曲線をA−A断面の流線とする。
なお、参照符号13で表す流線をボス側流線、同14で表す流線を中央流線、同15で表す流線をチップ側流線とする。
また、図2に示したように、ランナベーン10の入口端16から出口端17にかけて各流線を周方向に等分するとともに、各流線のうち周方向に等分された位置同士を径方向に結んだ線に沿ってランナベーン10を切断したときに現れる径方向断面図形(B−B断面)を得る。
そして、この径方向断面図形を見たときに、ランナベーン10のキャンバーラインCaのうちチップ部12側の部分をランナベーン10の表面10aに向かって凸となる曲線で形成する。
さらに、ランナベーン10の表面10aおよび裏面10bにおいて、ボス側流線13、中央流線14、チップ側流線15の3点を結ぶことで得られる表面10aの曲率半径をρ、裏面10bの曲率半径をρとしたときに、
ρ<ρ (式 1)
となるように構成する。
このとき、図15に示した通常羽根4の場合には、図5に示したように、ランナベーン出口端における流速分布の旋回方向速度成分は、チップ側の漏れ流れ、通り抜け流れ、および遠心力によってチップ端側へ偏る傾向のある流速分布となる。
これに対して、本第1実施形態のランナベーン10においては、図5に示したように、その裏面10bのチップ端側8の湾曲が、ボス側11からチップ端12側に向かってランナベーン表面10aに凸となっている。
これにより、チップ端12側へ偏る流れが抑制されるため、旋回方向速度の変化が従来よりも緩やかになる。
その結果、流れの剥離に伴う吸出管6での圧力回復を妨げることがないから、損失を低減することが可能である。
なお、図6に示した変形例のランナベーン10’のように、キャンバーラインCaのうち、中央流線14とチップ側流線15との間に変極点18,18を設けることによっても同様の効果を得ることができる。
第2実施形態
次に図7および図8を参照し、第2実施形態のランナベーンについて説明する。
図7に示した本第2実施形態2のランナベーン20は、上述した第1実施形態のランナベーン10において、ランナ回転軸Cよりボス端11までの距離をRB、ランナ回転軸Cよりチップ部12までの距離をRTとしたとき、キャンバーラインCaのうちランナベーン表面に向かって凸となる湾曲を持つ部分のランナ回転軸Cからの位置Lを、
L−RB≧0.5×(RT−RB) (式 2)
となるように構成したものである。
すなわち、軸流水力機械のランナベーンにおいて流速分布が乱れやすいのは、ランナベーン10の径方向の中央部からチップ端の範囲である。
このとき、本第2実施形態のランナベーン20は、式2で規定する径方向の範囲において第1実施形態のランナベーン10で説明した形態を実施するものであるから、流速分布の適正化を図ることができ、図8に示したように損失の低減を図ることが可能となる。
第3実施形態
次に図9および図10を参照し、第3実施形態のランナベーンについて説明する。
図9は、第3実施形態のランナベーン30の図2におけるA−A断面の流線に沿った断面を示している。
このとき、本第3実施形態のランナベーン30においては、第1実施形態のランナベーン10において説明したような、そのキャンバーラインCaがランナベーン表面10aに向かって凸となる湾曲を持つ部分のランナベーン30の入口端16からの距離lを、
l≦0.8×ls (式 3)
となるように構成したものである。
すなわち、第1実施形態のランナベーン10において、そのキャンバーラインCaがランナベーン表面10aに向かって凸となる湾曲を持つ部分の周方向の範囲を、ランナベーン入口端16から出口端17に至る全範囲とすると、図10に示したように、ランナベーン出口端から流れ出る後流が大きくなって損失が増大する。
これに対し、本第3実施形態のランナベーン30は、第1実施形態のランナベーン10において説明したような、そのキャンバーラインCaがランナベーン表面10aに向かって凸となる湾曲を持つ部分の周方向の範囲を、上記の式3で規定される範囲としたものであるから、後流発生による損失を抑制することが可能となる。
第4実施形態
次に図11を参照し、第4実施形態のランナベーンについて説明する。
本第4実施形態のランナベーン40は、第1実施形態のランナベーン10において、中央流線14におけるランナベーン厚みをTCとし、チップ端12におけるランナベーン厚みをTTとした時、
1.2TC≦TT≦1.6TC (式 4)
となるように構成したものである。
すなわち、図11に示したように、第1実施形態のランナベーン10においてその効果を得ることができるのは、1.2TC≦TTのときであり、1.6TC≦TTとなると衝突損失が増大するととともに翼面負荷分布が不適正となって損失が増大する。
これに対し、本第4実施形態のランナベーン40においては、TTの値を上記の式4で規定される範囲とするので、ランナベーン40の裏面においてチップ側へ偏る流れが抑制されて旋回方向速度の変化が従来よりも緩やかになる。
その結果、流れの剥離に伴う吸出管6における圧力回復を妨げることがないから、損失を低減することが可能である。
第5実施形態
次に図12および図13を参照し、第5実施形態のランナベーンについて説明する。
本第5実施形態のランナベーン50は、第3実施形態のランナベーン30において、
L−RB≧0.8×(RT−RB) (式 5)
で規定される位置Lからチップ端側の最大厚み部19までの曲率半径をρsTとしたときに、
0.5≦(RT−L)/ρsT<1.0 (式 6)
となるように構成されている。
すなわち、本第5実施形態のランナベーン50においては、式6で規定される範囲外のときに、チップ側におけるキャビテーション抑制効果および漏れ流れの抑制効果を得ることはできるが、羽根形状として意味を成さず、出口の流速分布適正化を図ることができなくなる。
したがって、式6で規定される式範囲内において、本発明の十分な効果を得ることができる。
第1実施形態のランナベーンを備えた軸流水力機械の部分断面図。 第1実施形態のランナベーンの形状を示す図 図2のA−A破断線に沿った断面図。 図2のB−B破断線に沿った断面図。 第1実施形態のランナベーンの効果を示す図。 第1実施形態の変形例のランナベーンを示す図。 第2実施形態のランナベーンを示す図。 第2実施形態のランナベーンの効果を示す図。 第3実施形態のランナベーンを示す図。 第3実施形態のランナベーンの効果を示す図。 第4実施形態のランナベーンの効果を示す図。 第5実施形態のランナベーンを示す図。 第5実施形態のランナベーンの効果を示す図。 軸流水力機械の部分断面図。 従来のランナベーンの断面形状を示す図。
符号の説明
1 ケーシング
2 ステー
3 ガイドベーン
4 ランナベーン
5 ボス
6 吸出管
7 チップ端
8 ディスチャージリング
10 第1実施形態のランナベーン
10’ 変形例のランナベーン
10a 表面
10b 裏面
11 ボス端
12 チップ端
13 ボス側流線
14 中央流線
15 チップ側流線
16 入口端
17 出口端
18 キャンバーライン変曲点
19 チップ側最大厚み部
20 第2実施形態のランナベーン
30 第3実施形態のランナベーン
40 第4実施形態のランナベーン
50 第5実施形態のランナベーン
C ランナ回転軸
ρ ランナベーン表面の曲率半径
ρ ランナベーン裏面の曲率半径
TT チップ端厚み
TC 中央厚み
RB ランナ回転軸からボス側流線までの距離
RT ランナ回転軸からチップ側流線までの距離
Ca キャンバーライン
L キャンバーラインが凸となる位置のチップ端からの距離
l キャンバーラインが凸となる位置のランナベーン入口端からの距離
ls 流線上の羽根長さ

Claims (6)

  1. 軸流水力機械のランナベーンであって、
    ランナ回転軸と同軸な複数の円筒面によって前記ランナベーンをボス部からチップ部にかけてそれぞれ周方向に切断して複数の周方向断面図形を得るとともに、
    これらの周方向断面図形のうち前記ランナベーンの表面および裏面をそれぞれ表す流線を前記ランナベーンの入口端から出口端にかけて周方向に等しい長さに等分し、
    各流線のうち周方向に等分された位置同士を径方向に結んだ線に沿って前記ランナベーンを径方向に切断したときに現れる径方向断面図形を見たときに、
    前記径方向断面図形のキャンバーラインのうちチップ部側の部分を前記ランナベーンの表面に向かって凸となる曲線で形成し、
    かつ前記ランナベーンの表面の曲率半径をρ、裏面の曲率半径をρとしたときに、
    ρ<ρ
    となるように構成したことを特徴とする軸流水力機械のランナベーン。
  2. 前記径方向断面図形のキャンバーラインは、前記ランナベーンの径方向の中央部とチップ部の間に変曲点を有していることを特徴とする請求項1に記載した軸流水力機械のランナベーン。
  3. 前記ランナベーンのうちランナ回転軸よりボス部までの径方向の距離をRB、ランナ回転軸よりチップ部までの径方向の距離をRTとしたときに、
    前記キャンバーラインのうち前記ランナベーンの表面に向かって凸となる曲線部分は、ランナ回転軸からの径方向の距離をLとするときに、
    L−RB≧0.5×(RT−RB)
    で規定される範囲にあることを特徴とする請求項1に記載した軸流水力機械のランナベーン。
  4. 前記ランナベーンの入口端から出口端へと周方向に向かう各流線の長さlsに対し、
    前記キャンバーラインのうち前記ランナベーンの表面に向かって凸となる湾曲を持つ部分は、前記ランナベーン入口端からの周方向距離をlとしたときに、
    l≦0.8×ls
    で規定される範囲にあることを特徴とする請求項1に記載した軸流水力機械のランナベーン。
  5. 前記ランナベーンのうち径方向の中央部における厚みをTCとし、チップ部における厚みをTTとしたときに、
    1.2TC≦TT≦1.6TC
    であることを特徴とする請求項1に記載した軸流水力機械のランナベーン。
  6. 前記ランナベーンのうちランナ回転軸よりボス部までの径方向の距離をRB、ランナ回転軸よりチップ部までの径方向の距離をRTとしたときに、
    前記キャンバーラインのうち前記ランナベーンの表面に向かって凸となる曲線部分は、ランナ回転軸からの径方向の距離をLとするときに、
    L−RB≧0.8×(RT−RB)
    で規定される範囲にあり、
    かつ前記ランナベーンのうち位置Lからチップ側の最大厚み部までの曲率半径をρsTとすると、
    0.5≦(RT−L)/ρsT<1.0
    であることを特徴とする請求項1に記載した軸流水力機械のランナベーン。
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