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JP2009256177A - 単結晶シリコン粒子およびその製造方法 - Google Patents

単結晶シリコン粒子およびその製造方法 Download PDF

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JP2009256177A JP2008300608A JP2008300608A JP2009256177A JP 2009256177 A JP2009256177 A JP 2009256177A JP 2008300608 A JP2008300608 A JP 2008300608A JP 2008300608 A JP2008300608 A JP 2008300608A JP 2009256177 A JP2009256177 A JP 2009256177A
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英義 田辺
Jun Fukuda
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Abstract

【課題】高品質な単結晶シリコン粒子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】結晶シリコン粒子101の表層部に窒化珪素膜を形成する第1の工程と、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101を加熱することによって、窒化珪素膜を酸窒化珪素膜とするとともに、結晶シリコン粒子101のシリコン部に接する酸窒化珪素膜の内表面に窒素の高濃度層を形成しながら結晶シリコン粒子101の形状を保持した状態でシリコン部を溶融させ、ついで降温し凝固させて単結晶化する第2の工程と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、特に太陽電池のような光電変換装置に用いるのに好適な単結晶シリコン粒子およびその製造方法に関するものである。
光電変換装置は、光電変換特性等の性能面での効率の良さ、シリコン等の半導体資源の有限性への配慮、製造コストの低さ等といった市場ニーズを捉えて開発が進められている。今後の市場において有望な光電変換装置の一つとして、太陽電池として使用される、結晶シリコン粒子等の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置がある。
結晶半導体粒子である結晶シリコン粒子を作製するための原料としては、単結晶シリコンを粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子または流動床法で気相合成された高純度シリコン等が用いられている。これらの原料から結晶シリコン粒子を作製するには、それらの原料をサイズあるいは重量によって分別した後に、赤外線や高周波を用いて容器内で溶融し、その後に自由落下させる溶融落下方法(いわゆるジェット法)(例えば、特許文献1,2を参照)、または高周波プラズマを用いて容器内で溶融し、その後に自由落下させる方法(例えば、特許文献3を参照。)によって行われる。
国際公開第99/22048号パンフレット 米国特許第4188177号明細書 特開平5−78115号公報 米国特許第4430150号明細書
しかしながら、これらの方法で製造された結晶シリコン粒子は、そのほとんどが多結晶体(多結晶シリコン粒子)である。多結晶シリコン粒子は、微小な単結晶の集合体であるため、それら微小な単結晶間に粒界が存在する。この粒界は、多結晶シリコン粒子を用いた光電変換装置の電気特性を劣化させる。その理由は、粒界にはキャリアの再結合中心が集まっており、それによってキャリアの再結合が生ずることによって少数キャリアのライフタイムが大幅に低減してしまうためである。
結晶性に優れた単結晶シリコン粒子を得る方法として、多結晶シリコン粒子または無定形シリコン粒子の表面にシリコンの酸化膜等の珪素化合物被膜を形成し、その珪素化合物被膜の内側のシリコンを溶融した後に冷却して固化させて、結晶性に優れた単結晶体からなる結晶シリコン粒子を製造する方法が知られている(例えば、特許文献4を参照)。
しかしながら、多結晶シリコン粒子を加熱してその表面に形成された珪素化合物被膜、具体的には酸化珪素膜の内側でシリコンを溶融させ、その後に凝固させた場合、シリコンの溶融の際に隣接した多結晶シリコン粒子同士が合体するという問題点がある。また、この場合、CZ(チョクラルスキー)法またはFZ(フローティングゾーン)法のような一般的なバルク体のシリコン単結晶を育成する方法において使用される種結晶のような凝固起点がないため、一方向に凝固が起こらず、多数核の発生による多結晶化が起り易いことが問題となる。また、この多結晶シリコン粒子を用いた光電変換装置は、特性劣化を引き起こすという問題があった。
また、結晶シリコン粒子の製造にあたって流動床法により気相合成された高純度の多結晶シリコンを原料に用いた場合、多結晶シリコン中に含まれる出発原料に含まれる鉄やニッケル等の金属不純物、また製造工程中に外部から混入する同様の金属不純物による汚染が問題となる。金属不純物はシリコン中では化学的な結合手を持たない格子間拡散をすることから、シリコン格子の隙間を縫って不純物原子が拡散する。そして、この拡散した金属不純物はシリコン内で深い準位を形成してキャリアの再結合中心として作用し、リーク電流の増加や光電変換によって生じたキャリアのライフタイムの低下の原因となって光劣化を引き起こす。
従って、本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、高品質な単結晶シリコン粒子を提供するとともに、多結晶シリコン粒子等の結晶シリコン粒子を安定的かつ高効率に単結晶化する製造方法を提供することにある。
本発明の単結晶シリコン粒子は、表面に酸窒化珪素膜を有する単結晶シリコン粒子であって、前記酸窒化珪素膜は、外表面に比し、内表面の窒素濃度が大きいことを特徴とする。
また、本発明の単結晶シリコン粒子の製造方法は、結晶シリコン粒子の表層部に窒化珪素膜を形成する第1の工程と、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、前記結晶シリコン粒子を加熱することによって、前記窒化珪素膜を酸窒化珪素膜とするとともに、結晶シリコン粒子のシリコン部に接する前記酸窒化珪素膜の内表面に窒素の高濃度層を形成しながら前記結晶シリコン粒子の形状を保持した状態で前記シリコン部を溶融させ、ついで降温し凝固させて単結晶化する第2の工程と、を有することを特徴とする。
本発明の単結晶シリコン粒子によれば、表面に形成された酸窒化珪素膜が、外表面に比し、単結晶シリコン粒子の中核を成すシリコン部と接する内表面の窒素濃度が大きいため、シリコン部に外部からの重金属元素等の不純物が侵入しにくくなり、品質を向上させることができる。
本発明の単結晶シリコン粒子の製造方法では、単結晶シリコン粒子の表面に効率良く酸窒化珪素膜を形成することができる。
また、本発明の単結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、第2の工程において、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子を加熱する際に、500℃乃至1400℃の温度に10時間未満の時間加熱することから、酸窒化珪素膜とその内側のシリコン部との界面に窒素の高濃度層を深さ方向に明確なピーク強度を有するように形成することができる。
また、本発明の単結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、第1の工程において、結晶シリコン粒子の表面に研磨加工を施すことによって結晶シリコン粒子の表層部に加工変質層を形成した後に、窒素ガスから成る雰囲気ガスまたは窒素ガスを主成分として含む雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子をシリコンの融点以下の温度に加熱することから、加工変質層内の多数のマイクロクラックに沿って網目構造の窒化珪素膜が形成される。その結果、例えば多数の結晶シリコン粒子を並べて単結晶化する際に、結晶シリコン粒子同士の合体を効果的に抑制して、合体による結晶シリコン粒子同士の接触面における結晶割れ及びサブグレインの発生がない、高い結晶品質を有する単結晶シリコン粒子を製造することができる。
また、結晶シリコン粒子が表層部に網目構造の窒化珪素膜を有することから、単結晶化の際に結晶シリコン粒子内部のシリコンの溶融固化時の体積変化に対し、結晶シリコン粒子の形状を維持するのに十分な柔軟性を結晶シリコン粒子の表層部に付加することができる。
また、窒化珪素膜は、酸化珪素膜に比べて、汚染物及び不純物等が結晶シリコン粒子内部のシリコン中へ拡散することを抑止する拡散抑止力が大きいため、結晶シリコン粒子の表面に付着した鉄(Fe)等の重金属元素等の拡散による汚染が低減され、高い結晶品質を有する単結晶シリコン粒子を作製することができる。
また、酸窒化珪素膜は、酸素を含まない窒化珪素膜に比べ膜の柔軟性に優れ、膜厚が厚い場合においても、単結晶化の際に結晶シリコン粒子内部のシリコンの溶融固化時の体積変化に対し、結晶シリコン粒子の形状を維持するのに十分な柔軟性を結晶シリコン粒子の表層部に付加することができる。
また、本発明の結晶シリコン粒子の製造方法は好ましくは、第2の工程は、多数個の結晶シリコン粒子を台板上に重層的に載置した状態で行われることから、前処理で結晶シリコン粒子の表面に形成された窒化珪素膜が結晶シリコン粒子同士の合体を効果的に防ぐため、加熱炉での単結晶化の際に多数個の結晶シリコン粒子を台板上に重層的に載置して、結晶シリコン粒子を高密度に配置することにより、多数個の結晶シリコン粒子を一括的に単結晶化することができる。その結果、安価に量産性よく単結晶シリコン粒子を製造することできる。従って、光電変換装置等に使用する単結晶シリコン粒子を効率的に製造できる。
また、多数個の結晶シリコン粒子を台板上に重層的に載置して溶融、固化及び単結晶化する際の凝固起点を、結晶シリコン粒子と台板との接触部分及び結晶シリコン粒子同士の接触部分に設定して、その接触部分から結晶シリコン粒子の上方に向けて単結晶化を進めることができる。そのため、CZ法やFZ法等のように種結晶を用いなくとも結晶シリコン粒子を一方向に凝固させて容易に単結晶化することができ、結晶シリコン粒子の結晶性を大幅に向上させることができる。
即ち、まず結晶シリコン粒子の台板との接触点が凝固起点となり、結晶シリコン粒子の一方向(上方向)に凝固が進行する。この場合、特に台板を冷却しなくても、結晶シリコン粒子の台板との接触点を凝固起点とすることができるが、台板を冷却してもよい。次に、凝固が完了した結晶シリコン粒子と接しているその上の結晶シリコン粒子が、凝固が完了した結晶シリコン粒子との接触点を凝固起点として、一方向(上方向に)に凝固が進行する。その繰り返しで、結果的に下側の結晶シリコン粒子から上側の結晶シリコン粒子に向かって凝固が進行する。
以下、本実施の形態の単結晶シリコン粒子について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(a)〜(d)は、本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法について1例を示す各製造工程の概略的断面図である。図1(a)において、101は結晶シリコン粒子、201,202は、結晶シリコン粒子101の表面に、研磨加工による加工変質層を形成する装置としての、剛性の大きい下側回転定盤及び上側回転定盤であり、203は遊離砥粒である。また、図1(b)〜(d)は、台板上に重層的に載置された多数個の結晶シリコン粒子101を示す製造工程毎の断面図である。図1(b)〜(d)において、301は台板である。
本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法は、窒素ガスから成る雰囲気ガスまたは窒素ガスを主成分として含む雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101をシリコンの融点以下の温度に加熱することによって、結晶シリコン粒子101の表層部に窒化珪素膜を形成する第1の工程(窒化珪素膜の形成工程)と、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101を加熱することによって、窒化珪素膜を酸窒化珪素膜とするとともに、結晶シリコン粒子のシリコン部に接する前記酸窒化珪素膜の内表面に窒素の高濃度層を形成しながら結晶シリコン粒子101の形状を保持した状態でシリコン部を溶融させ、ついで降温し凝固させて単結晶化する第2の工程(再溶融工程及び単結晶化工程)により単結晶化する。
まず、結晶シリコン粒子101の材料として半導体グレードの結晶シリコンを用い、これを赤外線や高周波誘導コイルを用いて容器内で溶融し、しかる後に溶融したシリコンを粒状のシリコン融液として自由落下させる溶融落下法(ジェット法)等(図示せず)によって、多結晶の結晶シリコン粒子101を得る。
作製された多結晶の結晶シリコン粒子101には、所望の導電型及び抵抗値にするために、通常はドーパントがドーピングされる。シリコンに対するドーパントとしては、ホウ素,アルミニウム,ガリウム,インジウム,リン,ヒ素,アンチモンがあるが、シリコンに対する偏析係数が大きい点やシリコン溶融時の蒸発係数が小さい点からは、ホウ素あるいはリンを用いることが好ましい。あるいは、ホウ素は酸素によってライフタイム特性に影響を与え、光劣化を生じ易いことから、ホウ素よりも偏析係数が小さいガリウムを用いてもよい。また、ドーパントは、シリコンの結晶材料に対して1×1014〜1×1018atoms/cm3程度添加される。
溶融落下法によって結晶シリコン粒子101を得た時点では、結晶シリコン粒子101の形状は、ほぼ球形状のものの他にも涙滴型、流線形型、あるいは複数個の粒子が連結した連結型等である。このままの多結晶の結晶シリコン粒子101を用いて光電変換装置を作製した場合、良好な光電変換特性を得られないものとなる。その原因は、多結晶の結晶シリコン粒子101中に通常含有されているFe,Cr,Ni,Mo等の金属不純物、及び多結晶の結晶シリコン粒子101の結晶粒界におけるキャリアの再結合効果によるものである。
これを改善するために、結晶シリコン粒子101における酸窒化珪素膜とその内側のシリコン部との界面に窒素の高濃度層を形成する。窒素の高濃度層を形成するには、上記の第2の工程において、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101を加熱する際に、所定の温度及び時間加熱する。具体的には、500℃乃至1400℃の温度に10時間未満の時間加熱することが好ましい。この温度及び時間の範囲内とすることにより、結晶シリコン粒子のシリコン部に接する酸窒化珪素膜の内表面に窒素の高濃度層を深さ方向に明確なピーク強度を有するように形成することができる。
このような酸窒化珪素膜は、窒素の高濃度層により、単結晶シリコン粒子の中核を成すシリコン部に外部からの重金属元素等の不純物の侵入を低減することができる。その結果、高品質な単結晶シリコン粒子とすることができる。加えて、酸窒化珪素膜の外表面における酸素を高濃度とすれば、パッシベーション効果を高めることができる。なお、酸窒化珪素膜とは、窒化珪素膜の一部の窒素元素が酸素元素に置き換わって成るものである。また、本発明における単結晶シリコン粒子とは、シリコン粒子中にシリコン原子間にある粒界がほとんど存在していないものを指す。
また、上記の第1の工程において、結晶シリコン粒子101の表面に研磨加工を施すことによって結晶シリコン粒子101の表層部に加工変質層を形成した後に、窒素ガスから成る雰囲気ガスまたは窒素ガスを主成分として含む雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101をシリコンの融点以下の温度に加熱することが好ましい。
即ち、溶融落下法によって得られた結晶シリコン粒子101の表面に研磨加工による加工変質層を形成し、次に、窒素ガスから成る雰囲気ガスまたは窒素ガスを主成分として含む雰囲気ガス中で、温度制御した加熱炉の中で多結晶の結晶シリコン粒子101をシリコンの融点(1414℃)以下の温度(500〜1400℃)に加熱して結晶シリコン粒子101の表面に窒化珪素膜を形成し、その後、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で結晶シリコン粒子101を加熱して窒化珪素膜を酸窒化珪素膜とした後、該酸窒化珪素膜の内側のシリコン部を溶融させて降温して凝固させて単結晶化する。
まず、研磨加工による加工変質層の形成について説明する。図1(a)に示された下側回転定盤201及び上側回転定盤202は、結晶シリコン粒子101の表面の研磨装置として機能するものであり、少なくとも一方が回転するようになっていればよく、両方が回転するようになっていてもよい。また、両方が回転する場合、互いに反対方向に回転してもよく、あるいは同方向に回転してそれぞれの回転速度が異なるようにしてもよい。
さらに、下側回転定盤201の回転軸及び上側回転定盤202の回転軸は固定されていてもよく、あるいは一方の回転軸を固定し他方の回転軸を所定の軌跡(円形状、楕円形状等の軌跡)を描くように運動させてもよい。または、両方の回転軸が所定の軌跡(円形状、楕円形状等の軌跡)を描くように運動させてもよい。また、下側回転定盤201及び上側回転定盤202の少なくとも一方は、上下方向に移動可能な構造になっていてもよい。下側回転定盤201及び上側回転定盤202の材料はSUS(ステンレススチール)等である。また、下側回転定盤201及び上側回転定盤202の平面視における形状は、円形、四角形等であり、その他の形状であってもよい。
また、下側回転定盤201及び上側回転定盤202間には、1個または複数個の結晶シリコン粒子101を配置することができ、複数個配置する場合であれば、例えば100〜100000個程度配置する。また、下側回転定盤201及び上側回転定盤202間に複数個の結晶シリコン粒子101を配置する場合、個々の結晶シリコン粒子101の大きさの違いを考慮して、全ての結晶シリコン粒子101にほぼ均一に圧力が加わるように、下側回転定盤201及び上側回転定盤202の押圧面(結晶シリコン粒子101との接触面)の少なくとも一方に、ゴム層、ゴム膜、ゴムシート等の弾性層を設けてもよい。
遊離砥粒203の材料としては、一般的に炭化珪素,アルミナ,ダイヤモンド等が用いられる。遊離砥粒203を使用しない場合は、下側回転定盤201及び上側回転定盤202の少なくとも一方の押圧面に、炭化珪素,アルミナ,ダイヤモンド等から成る砥石や砥石板を設置することも可能である。
結晶シリコン粒子101の表層部に研磨加工によって加工変質層を形成するには、例えば、平均粒径約30μmのSiCから成る遊離砥粒203を用い、下側回転定盤201を固定し、上側回転定盤202を5〜250rpmの回転速度で回転させ、3〜30分研磨加工を行う。このとき、上側回転定盤202を軸方向下方に移動させ、結晶シリコン粒子101に0.01MPa〜0.1MPa程度の圧力をかけてもよい。これにより、結晶シリコン粒子101の表層部に厚み約10μm程度の加工変質層が形成される。
加工変質層は、一般に、表面側から非晶質層、多結晶層、モザイク層、クラック層、歪層等が存在する構成のものであり、これらの5つの層を合わせて加工変質層と呼ぶ。本実施の形態における加工変質層は、実際には、非晶質層、多結晶層、モザイク層及びクラック層から成るものと推測される。また、加工変質層は、結晶シリコン粒子101の単結晶化のための再溶融(リメルト)工程により消失することとなる。
加工変質層の存在は、ラマン分光法等により、ラマンスペクトルの半値幅の広がり等を確認することによって特定することができる。
結晶シリコン粒子101の表層部に加工変質層を形成する方法として、バレル研磨法を用いてもよい。バレル研磨法とは、10〜100000個程度の結晶シリコン粒子101、水等から成る研磨溶液、及びアルミナ,シリカ等の微粒子から成る研磨剤を、円筒状等の形状のバレル(容器)に収容し、50〜300rpm程度の回転数で5〜60分程度バレルを回転させる方法である。
次に、第1の工程(窒化珪素膜の形成工程)における窒素ガスから成る雰囲気ガスまたは窒素ガスを主成分として含む雰囲気ガスの圧力は、0.01〜0.2MPa程度がよい。この圧力の範囲内とすることにより、窒化珪素膜からの窒素または酸素の蒸発により窒化珪素膜の膜厚低減及び膜質劣化が生じることを抑制し、また、窒化珪素膜の膜厚バラツキが生じることを抑制することができる。
結晶シリコン粒子101の表面に形成される窒化珪素膜の厚みは100nm〜10μm程度であればよい。この厚みの範囲内とすることにより、結晶シリコン粒子101内部のシリコンの溶融時に窒化珪素膜が破れにくくなり、また、結晶シリコン粒子101内部のシリコンの溶融時に表面張力で球形化しようとするのに対し、窒化珪素膜が追従して変形し易くなる。
第2の工程(再溶融(リメルト)工程及び単結晶化工程)における酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101を加熱する際には、500℃乃至1400℃の温度に10時間未満の時間加熱するのがよい。
500℃乃至1400℃の温度とすることにより、窒化珪素膜を酸窒化珪素膜とするとともに、酸窒化珪素膜の内表面に窒素の高濃度層を形成する際の時間を短縮することができ、また、酸窒化珪素膜から酸素及び窒素が蒸発することを抑制することができる。
また、10時間未満の時間加熱することにより、多数個の結晶シリコン粒子101における酸窒化珪素膜の膜厚差のバラツキを小さくして、結晶シリコン粒子101の粒子形状を均一なものとし、また、結晶シリコン粒子101内部のシリコンの溶融時に形状を安定に保って形状制御を容易に行うことができる。また、酸窒化珪素膜とその内側のシリコン部との界面に窒素の高濃度層を深さ方向に明確なピーク強度を有するように形成することができる。
また、30分間以上の時間加熱することにより、結晶シリコン粒子101の表層部における窒素の拡散時間を十分に取ることができ、酸窒化珪素膜とその内側のシリコン部との界面に窒素の高濃度層を形成することが容易になる。
従って、30分間以上10時間未満の時間加熱することがより好ましい。
酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガスの圧力は、0.01〜0.2MPa程度がよい。この圧力の範囲内とすることにより、酸窒化珪素膜からの窒素及び酸素の蒸発により酸窒化珪素膜の膜厚低減及び膜質劣化が生じることを抑制し、また、結晶シリコン粒子101内部のシリコンの溶融時に形状を安定に保って形状制御を容易に行うことができる。
第2の工程において酸素ガス及び不活性ガスを使用する場合、酸素ガスを20体積%以上含むものであればよく、アルゴンガス等の不活性ガスを80体積%以下含むものであればよい。
単結晶の結晶シリコン粒子101を作製するには、図1(b)に示すように、多数個(例えば、数100〜数1000個程度)の多結晶の結晶シリコン粒子101を台板301の上面に二層以上に重層的に載置する。本実施の形態でいう重層的な載置とは、図1(b)の縦断面図でみた場合、略球状の結晶シリコン粒子101が厚み方向に複数の層を成すように載置された状態であり、最密に充填されて積層され載置された状態を示す。
台板301上への多数個の結晶シリコン粒子101の載置は、一層で載置してもかまわないが、重層的に載置した方がよい。重層的に載置することにより、結晶シリコン粒子101を高密度に配置することができ、多数個の結晶シリコン粒子101を一度に単結晶化することができ、安価に量産性よく単結晶化された結晶シリコン粒子101を製造することが可能となる。従って、光電変換装置等に使用する結晶シリコン粒子101を効率的に製造できる。
多数個の結晶シリコン粒子101を台板301上に重層的に載置する場合、その層数は特に限定するものではないが、例えば2〜150層程度とすればよい。
台板301上に載置された多数個の結晶シリコン粒子101は、それら同士が横方向で接触していても構わない。台板301は、上蓋がない箱状か板状のものが望ましく、板状の場合には複数段に積み上げて使用してもよい。台板301の材質は、結晶シリコン粒子101との反応を抑えるために、石英ガラス,ムライト,酸化アルミニウム,炭化珪素,炭化窒素,単結晶サファイヤ等が適するが、耐熱性,耐久性,耐薬品性に優れコストも安く、かつ扱い易いという点からは、石英ガラスが好適である。
次に、結晶シリコン粒子101を載置した台板301を加熱炉(図示せず)内に導入し、結晶シリコン粒子101を加熱していく。加熱炉としては、半導体材料の種類に応じて種々のものが使用できるが、半導体材料としてシリコンを用いるので、セラミックスの焼成等に用いられる抵抗加熱型または誘導加熱型の雰囲気焼成炉、あるいは半導体素子の製造工程で一般的に用いられる横型酸化炉等が適している。セラミックスの焼成等に用いられる抵抗加熱型の雰囲気焼成炉は、1500℃以上の昇温も比較的容易であり、結晶シリコン粒子101の量産が可能な大型のものも比較的安価に入手できるので好ましい。
雰囲気焼成炉による加熱を行う前に、結晶シリコン粒子101の表面に付着した金属及び異物等を除去するために、RCA法(RCA社による洗浄方法)で予め溶液洗浄をしておくことが良い。RCA法とは、シリコンウェハの標準的洗浄工程として半導体素子の製造工程で一般的に用いられている洗浄方法であり、3段の工程のうち1段目の工程において水酸化アンモニウムと過酸化水素との水溶液により、シリコンウェハ表面の酸化膜とシリコン表層部とを除去し、2段目の工程においてフッ化水素水溶液により前段の工程で付いた酸化膜を除去し、3段目の工程において塩化水素と過酸化水素との水溶液により重金属等を除去して自然酸化膜を形成するというものである。
また、加熱炉内における炉材や発熱体等からの汚染を防止するためには台板301上に載置した結晶シリコン粒子101を覆うようなベルジャーを加熱炉内に設置することが好ましい。ベルジャーの材質は、石英ガラス,ムライト,酸化アルミニウム,炭化珪素,炭化窒素,単結晶サファイヤ等が適するが、耐熱性,耐久性,耐薬品性に優れコストも安く扱い易いという点からは、石英ガラスが好適である。
加熱炉内で結晶シリコン粒子101を窒素ガスから成る雰囲気ガスまたは窒素ガスを主成分として含む雰囲気ガス中で加熱して、シリコンの融点(1414℃)より低い温度へ昇温していく過程で、結晶シリコン粒子101の表面には窒化珪素膜が形成される。上記の通り、窒化珪素膜の形成温度は500℃以上1400℃以下が好ましい。
結晶シリコン粒子101の表面に形成される窒化珪素膜は、酸化珪素膜等と比べて、被膜の密度が高くて単位膜厚当りの強度が高いため、汚染物及び不純物等の結晶シリコン粒子101の内部への拡散抑止力が大きい。
また、窒化珪素膜は酸素を含んでいることがよい。酸素含有量は、10モル%程度以下がよい。10モル%程度以下とすることにより、窒化珪素膜中の結晶構造の変化や結晶欠陥の増加によって膜質が劣化することを抑えることができる。また、窒化珪素膜は酸素を含んでいると、膜の柔軟性がより向上する。窒化珪素膜に酸素を含ませるには、窒素ガスに酸素ガスを適量混合した雰囲気ガス中で熱処理するという方法等がある。
また、結晶シリコン粒子101の表面に窒化珪素膜を形成する際の加熱炉内の雰囲気ガスは、窒素ガス分圧が70%以上であることが好ましい。雰囲気ガス中の窒素ガス分圧を70%以上とすることにより、後の単結晶化工程において、結晶シリコン粒子101同士の合体が発生することを抑制し、また、窒化珪素膜の強度が向上し、さらに、結晶シリコン粒子101を重層的に載置した状態で上部の結晶シリコン粒子101の重さにより下部の結晶シリコン粒子101が溶融時につぶれることを有効に抑制することができる。
なお、加熱炉内の雰囲気ガス中の各ガス分圧は、全ガス流量に対する各ガス流量で調整できる。雰囲気ガスは、例えばガス流量計、マスフロー計等のガス供給手段からガスフィルタを通してベルジャー内に供給されるが、このガス供給手段にガスを供給する装置がガス圧力とガス濃度とを調整可能な機構を持つものであればよい。
次に、図1(c)に示すように、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101をシリコンの融点(1414℃)より高い温度(1414℃を超え1480℃以下)へ昇温していく。図1(b),(c)の工程は、それぞれ別に行っても連続して行ってもかまわない。
台板301は、結晶シリコン粒子101を溶融後に冷却し固化させて結晶化させるときの固化起点を生じさせるものとしても機能する。このように台板301の上面に多数個の結晶シリコン粒子101を載置することにより、それぞれの結晶シリコン粒子101と台板301との接触部分に固化起点を設定することができるため、固化起点を一方の極としてこの一方の極から上方の対向する極に向けて固化(単結晶化)方向を設定することができる。その結果、種結晶を用いることなく一方向に凝固させることが可能となり、サブグレイン等の発生を抑制して結晶シリコン粒子101の結晶性を大幅に向上させることができる。
また、多数個の結晶シリコン粒子101を重層的に載置させた状態であるので、先に結晶化した台板301上の結晶シリコン粒子101との接触部分を固化起点にして、その上に隣接する結晶シリコン粒子101が固化することが可能となり、重層的に載置されたより上側の方へ固化が連鎖反応的に広がるので、多数個の結晶シリコン粒子101の結晶性を大幅に向上させることができる。
結晶シリコン粒子101の大きさは、通常は形状がほぼ球状であることから、その平均粒径は直径1500μm以下が良く、その形状が球により近いことが好ましい。ただし、結晶シリコン粒子101の形状は球状に限られるものではなく、立方体状、直方体状、その他の不定形の形状であってもよい。
結晶シリコン粒子101の大きさが1500μm以下であることにより、結晶シリコン粒子101の表面に形成される窒化珪素膜の厚みが結晶シリコン粒子101本体に対して相対的に厚くなることによって、結晶シリコン粒子101の内側のシリコンの溶融時における結晶シリコン粒子101の形状を安定に保つことができる。また、結晶シリコン粒子101の内側のシリコンを完全に溶融させることができ、結晶シリコン粒子101にサブグレインが生じることを低減できる。
また、結晶シリコン粒子101の直径を30μm以上とすることにより、結晶シリコン粒子101の内側のシリコンの溶融時に結晶シリコン粒子101の形状を安定に維持することができる。
従って、結晶シリコン粒子101の直径は30μm乃至1500μmであることが好ましく、これによって結晶シリコン粒子101の形状を安定に維持して、サブグレインの発生がない球形状で良質な結晶性を有する結晶シリコン粒子101を安定して作製することができる。
結晶シリコン粒子101をシリコンの融点(1414℃)より高い温度へ昇温していく第2の工程(単結晶化工程:後工程)での加熱炉内の雰囲気ガスは、酸素ガスから成る雰囲気ガスか酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガスとする。不活性ガスとしては、アルゴンガス,窒素ガス,ヘリウムガスが適するが、コストが低いという点や扱い易いという点からは、アルゴンガスあるいは窒素ガスが好適である。
なお、加熱炉内の雰囲気ガス中の各ガス分圧は、全ガス流量に対する各ガス流量で調整できる。雰囲気ガスは例えばガス供給手段からガスフィルタを通してベルジャー内に供給されるが、このガス供給手段にガスを供給する装置がガス圧力とガス濃度とを調整可能な機構を持つものであればよい。
第2の工程での加熱炉内の雰囲気ガスが酸素ガス及び不活性ガスから成る場合、酸素ガス分圧が20%以上であることが好ましい。雰囲気ガス中の酸素ガス分圧を20%以上とすることにより、酸窒化珪素膜からの酸素蒸発を抑制し、また、結晶シリコン粒子101内部のシリコンの溶融時に形状を安定に保って形状制御を容易に行うことができる。
結晶シリコン粒子101はシリコンの融点(1414℃)以上で、好ましくは1480℃以下の温度まで加熱される。この間に結晶シリコン粒子101において表面の酸窒化珪素膜の内側のシリコンが溶融する。このとき、結晶シリコン粒子101の表面に形成された酸窒化珪素膜によって、内側のシリコンを溶融させながらも結晶シリコン粒子101の形状を維持することが可能である。ただし、結晶シリコン粒子101の形状を安定に維持するのが困難となるような温度、例えば結晶シリコン粒子101の場合であれば1480℃を超える温度まで昇温させた場合、結晶シリコン粒子101の内部のシリコンの溶融時に結晶シリコン粒子101の形状を安定に保つことが難しくなり、隣接する結晶シリコン粒子101同士の合体が生じやすくなり、また結晶シリコン粒子101が台板301と融着し易くなる。
なお、結晶シリコン粒子101の表面に形成される酸窒化珪素膜の厚みは、結晶シリコン粒子101の上記平均粒径の範囲において、100nm以上であることが好ましい。酸窒化珪素膜の厚みを100nm以上とすることによって、結晶シリコン粒子101内部のシリコンの溶融時に、結晶シリコン粒子101表面の窒化珪素膜が破れることを抑制することができる。また、厚みが100nm以上で必要な強度を有する酸窒化珪素膜であれば、結晶シリコン粒子101内部のシリコンがその溶融時には表面張力で球形化しようとするのに対し、上記の温度領域であれば酸窒化珪素膜は充分に変形可能であるため、内部を単結晶化して得られる単結晶シリコン粒子を真球に近い形状とすることができる。
一方、酸窒化珪素膜の厚みは10μm以下がよく、その場合、酸窒化珪素膜が上記の温度領域で変形し易くなり、得られる単結晶シリコン粒子の形状が真球に近い形状になる。
従って、結晶シリコン粒子101の表面の酸窒化珪素膜の厚みは、上記の平均粒径の範囲(30μm〜1500μm)に対して、100nm〜10μmであることが好ましく、これによって、真球に近い良好な形状の単結晶シリコン粒子を安定して得ることができる。また、この単結晶シリコン粒子を光電変換装置に用いることによって変換効率に優れた光電変換装置を得ることができる。
次に、図1(d)に示すように、結晶シリコン粒子101における酸窒化珪素膜の内側の溶融したシリコンを固化させるために、シリコンの融点以下の約1400℃以下の温度まで降温させて固化させる。この際、シリコンの融点以下の比較的高温の温度(1360℃程度)に維持して固化させるが、この場合結晶シリコン粒子101と台板301との接触部分を固化起点(一方の極)として上方の対向する極へ向けて一方向に固化が進行する。その結果、すでに固化した結晶シリコン粒子101との接触点を固化の起点として一方向性の固化が発生し、そのまま結晶シリコン粒子101の全体に継承されて結晶が成長し、得られる結晶シリコン粒子101が単結晶となり、結晶性を大幅に向上させることができる。
また、多数個の結晶シリコン粒子101が重層的に載置された状態であれば、先に結晶化した台板301上の結晶シリコン粒子101との接触部分を固化起点にして、上に隣接する結晶シリコン粒子101が固化することが可能となり、重層的に載置されたより上側の方へ固化が連鎖的に広がるので、多数個の結晶シリコン粒子101の結晶性を大幅に向上させることができる。
また、内部が溶融した結晶シリコン粒子101を固化させる途中で結晶シリコン粒子101に対して熱アニール処理、例えば1000℃以上の一定温度で30分間以上の熱アニール処理を行うことが好ましい。この熱アニール処理を行うことによって、固化時に発生した結晶シリコン粒子101の結晶中の歪み、結晶シリコン粒子101の表面の酸窒化珪素膜と内側の結晶シリコンとの界面に発生した界面歪み等を緩和除去して、良好な結晶性の単結晶シリコン粒子とすることができる。
本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法によれば、以上のようにして、良好な結晶性を有し、かつ不要な不純物量が低減された単結晶シリコン粒子を安定して製造することができる。
また、本実施の形態の製造方法においては、結晶シリコン粒子101を単結晶化した後に酸窒化珪素膜を除去することが好ましい。これにより、単結晶シリコン粒子の表層部に偏析した、Fe,Cr,Ni,Mo等の金属不純物含有部を除去することができ、本実施の形態の製造方法によって得られた単結晶シリコン粒子を光電変換装置に用いた場合、良好な光電変換特性を得ることができる。
次に、図2の断面図に、本実施の形態の光電変換装置の一例を示す。図2において、406は第1導電型(例えばp型)の結晶シリコン粒子、407は導電性基板、408は結晶シリコン粒子406と導電性基板407との接合層、409は絶縁物質、410は第2導電型(例えばn型)の半導体層(半導体部)、411は透光性導体層、412は電極である。
本実施の形態の結晶シリコン粒子(単結晶シリコン粒子)406を用いた光電変換装置においては、導電性基板407の一主面、この例では上面に、第1の導電型(例えばp型)の結晶シリコン粒子406が多数個、その下部を例えば接合層408によって導電性基板407に接合され、結晶シリコン粒子406の隣接するもの同士の間に絶縁物質409を介在させるとともにそれら結晶シリコン粒子406の上部を絶縁物質409から露出させて配置されて、これら結晶シリコン粒子406に第2の導電型の半導体層410及び透光性導体層411が順次設けられた構成となっている。
なお、電極412は、この光電変換装置を太陽電池として使用する際に、透光性導体層411の上に所定のパターン形状に被着形成されるものであり、例えばフィンガー電極及びバスバー電極である。
そして、上記構成の本実施の形態の光電変換装置における結晶シリコン粒子406は、上記の本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法によって製造されたものである。結晶シリコン粒子406が本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法によって製造されたものであることから、不純物濃度が極めて低い高い結晶品質の結晶シリコン粒子406を得ることができるので、高い光電変換効率を得るために重要な因子となる少数キャリアの寿命を向上させることができる。従って、光電変換装置の構成部品として好ましい結晶シリコン粒子406を得ることができる。
本実施の形態の光電変換装置における結晶シリコン粒子406の製造方法は、上述した単結晶シリコン粒子の製造方法と同様である。結晶シリコン粒子406の出発材料である結晶シリコン粒子101は、所望の抵抗値になるように第1の導電型のドーパントとしてp型の半導体不純物がドーピングされていることが好ましい。p型ドーパントとしては、ホウ素,アルミニウム,ガリウム等が好ましく、その添加量は1×1014〜1×1018atoms/cm2が好ましい。以上の本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法によって製造された結晶シリコン粒子406は、本実施の形態の光電変換装置を作製するために使用される。そして、この光電変換装置を発電手段として用い、この発電手段からの発電電力を負荷に供給するように成した光発電装置とすることができる。
図2に示した例は、以上のようにして得られた結晶シリコン粒子406を用いて作製された光電変換装置である。この光電変換装置を得るには、まず、結晶シリコン粒子406の表面に形成された酸窒化珪素膜をフッ酸でエッチング除去する。さらに、酸窒化珪素膜と結晶シリコン粒子406との界面歪み、及び結晶シリコン粒子406の表面に偏析されたp型ドーパントや酸素,炭素及び金属等の不純物を除去するために、結晶シリコン粒子406の表面をフッ硝酸等でエッチング除去しても構わない。その際に除去される結晶シリコン粒子406の表面層の厚みは、径方向で100μm以下であることが好ましい。
次に、アルミニウム等から成る導電性基板407の上に結晶シリコン粒子406を多数個配置する。そして、これを還元雰囲気中にて全体的に加熱して生じた接合層408を介して、結晶シリコン粒子406を導電性基板407に接合させる。なお、接合層408は、例えばアルミニウムとシリコンとの合金である。
このとき、導電性基板407を、アルミニウム基板とするか、または表面にアルミニウムを少なくとも含む金属基板にすることにより、低温で結晶シリコン粒子406を接合することができ、軽量かつ低価格の光電変換装置を提供することができる。また、導電性基板407の表面を粗面にすることにより、導電性基板407の表面の非受光領域に到達する入射光の反射をランダムにすることができ、非受光領域で入射光を斜めに反射させて、光電変換装置表面側へ再反射させることができ、これを結晶シリコン粒子406の光電変換部でさらに光電変換することにより、入射光を有効に利用することができる。
次に、接合された結晶シリコン粒子406の隣接するもの同士の間に介在するように、導電性基板407上に絶縁物質409を、これら結晶シリコン粒子406の上部、少なくとも天頂部を絶縁物質409から露出させて配置する。
ここで、隣接する結晶シリコン粒子406同士の間の絶縁物質409の表面形状を、結晶シリコン粒子406側が高くなっている凹形状をしているものとすることにより、絶縁物質409とこの上を被って形成される透明封止樹脂との屈折率の差により、結晶シリコン粒子406の無い非受光領域における、結晶シリコン粒子406への入射光の乱反射を促進することができる。
次に、これら結晶シリコン粒子406の露出した上部に第2の導電型(例えばn型)の半導体層410及び透光性導体層411を設ける。半導体層410は、アモルファスまたは多結晶の半導体層410を成膜することにより、あるいは熱拡散法等により半導体層410を形成することにより設けられる。このとき、結晶シリコン粒子406はp型であるので、半導体層410であるシリコン層はn型の半導体層410とする。さらに、その半導体層410上に透光性導体層411を形成する。そして、太陽電池として所望の電力を取り出すために所定のパターン形状に銀ペースト等を塗布して、グリッド電極あるいはフィンガー電極及びバスバー電極等の電極412を形成する。このようにして、導電性基板407を一方の電極にし、電極412を他方の電極とすることにより、太陽電池としての光電変換装置が得られる。
なお、第2の導電型の半導体層410を形成するには、結晶シリコン粒子406の導電性基板407への接合に先立って、結晶シリコン粒子406の表面に工程コストの低い熱拡散法により形成してもよい。この場合、例えば、第2の導電型のドーパントとして、V族のP,As,SbやIII族のB,Al,Ga等を用い、石英からなる拡散炉に結晶シリコン粒子406を収容し、ドーパントを導入しながら加熱して結晶シリコン粒子406の表面に第2の導電型の半導体層410を形成する。
次に、本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法について実施例を製造工程に沿って説明する。
<加工変質層の形成工程>
図1(a)に示すように、まずホウ素濃度が0.6×1016atoms/cm3であり、平均粒径が500μmの結晶シリコン粒子101の1000個を、ラップ研磨装置の下側回転定盤201上に配置し、上側回転定盤202を降下させた。
次に、上側回転定盤202を5rpm、下側回転定盤201を20rpmとして、上側回転定盤202及び下側回転定盤201が互いに逆方向に回転するように回転させ、平均粒子径が30μmのSiCの遊離砥粒203を用いて、5分間結晶シリコン粒子101の表面の研磨処理をした。
表面が研磨処理された結晶シリコン粒子101の厚み約10μmの表層部に、多数のマイクロクラック等を有する加工変質層が形成されていることが、ラマン分光法によって特定できた。
<窒化珪素膜の形成工程>
次に、図1(b)に示すように、石英ガラス製の箱状の台板301上に、多数(1000個)の結晶シリコン粒子101を重層的に載置し、加熱炉である雰囲気焼成炉の内部に設置した石英ガラス製のベルジャー内に収容した。そして、窒素ガスをガス供給装置から導入しながら加熱し、窒素ガス圧力0.1MPaでシリコンの融点以下の1300℃まで加熱し60分間保持して、結晶シリコン粒子101の表面に窒化珪素膜を形成した。1300℃で60分間の加熱を行った後、室温まで降温させた。
<酸窒化珪素膜の形成工程>
次に、図1(c),(d)に示すように、酸素ガスまたは混合ガス(酸素ガスと窒素ガス)をガス供給装置から導入しながら、酸素ガス圧力0.02MPaでシリコンの融点以下の1350℃まで加熱し5時間保持して、窒化珪素膜を酸窒化珪素膜とするとともに、酸窒化珪素膜とその内側のシリコン部との界面に窒素の高濃度層を形成した。その後、シリコンの融点以上の1450℃まで結晶シリコン粒子101を加熱し10分間保持して、結晶シリコン粒子101表面の酸窒化珪素膜の内側のシリコンを溶融させた。
<単結晶化工程>
次に、降温速度を毎分4℃として冷却しながら結晶シリコン粒子101を固化させた。その後、さらに1250℃まで降温させてから、不活性ガスとしてのアルゴンガスを導入しながら120分間の熱アニール処理を行った。この熱アニール処理後に室温付近まで降温させ、単結晶シリコン粒子を製造した。
図4、図5に、単結晶シリコン粒子の酸窒化珪素膜の表面から深さ方向に酸素(O),窒素(N)の各濃度を2次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy)法で分析した結果を示す。atoms/ccは、1cc(1cm3)当りの原子数を表す。
図5に示すように、「酸窒化珪素膜の形成工程」における1350℃に加熱する加熱時間が1時間,5時間,7時間である場合、酸窒化珪素膜とその内側のシリコン部との界面に窒素の高濃度層、即ち深さ方向での窒素の高濃度ピークが明確に形成されていた。
一方、図4に示すように、加熱時間が10時間である場合、窒素の高濃度層(深さ方向での窒素の高濃度ピーク)が形成されておらず、窒素の高濃度層は形成されていたが、ブロードな窒素の濃度分布となった。
図3(a)に加熱時間が5時間である場合の単結晶シリコン粒子の外観写真、図3(b)に加熱時間が10時間である場合の単結晶シリコン粒子の外観写真を示す。加熱時間が5時間である場合、光沢のある単結晶シリコン粒子が得られたが、加熱時間が10時間である場合、光沢がなくかつ球形状になっていない単結晶シリコン粒子が得られた。
図3(b)に示す単結晶シリコン粒子の断面をJIS規格Bエッチング液(HF:HNO3:CH3COOH:H2O=1:12.7:3:5.7(容積比))によりエッチングしたところ、粒界及びピットなどの結晶欠陥が観察され、完全な単結晶シリコン粒子となっていないことが判った。
<光電変換装置の製造工程>
上記の工程により製造した単結晶シリコン粒子を用いて、図2に示す光電変換装置を作製した。単結晶シリコン粒子としての結晶シリコン粒子406の表面に形成された酸窒化珪素膜をフッ酸によって除去し、フッ硝酸によって結晶シリコン粒子406の表面を深さ方向に10μmの厚み分をエッチングし除去した。
次に、結晶シリコン粒子406を石英製ボートに載せて、900℃に温度制御された石英管の中に導入し、POCl3ガスを窒素ガスでバブリングさせて石英管に送り込み、熱拡散法によって30分で結晶シリコン粒子406の表面に約1μmの厚さのn型の半導体層410を形成し、その後、フッ酸によって表面の酸窒化珪素膜を除去した。
次に、導電性基板407として、縦50mm×横50mm×厚さ0.3mmのアルミニウム基板を用い、この上面に1000個の結晶シリコン粒子406を最密充填して配置した。その後、アルミニウムとシリコンとの共晶温度である577℃を超える600℃で、5体積%の水素ガスを含む窒素ガスの還元雰囲気炉中で加熱して、結晶シリコン粒子406の下部をアルミニウム基板に接合させた。このとき、結晶シリコン粒子406がアルミニウム基板と接触している部分には、アルミニウムとシリコンとの共晶から成る接合層408が形成されており、強い接着強度を呈していた。
さらに、この上から結晶シリコン粒子406同士の間に、それらの上部を露出させてポリイミド樹脂から成る絶縁物質409を塗布し乾燥させて、下部電極となるアルミニウム基板と、上部電極となる透光性導体層411とを電気的に絶縁分離するようにした。この上に上部電極膜としてのITOから成る透光性導体層411を、スパッタリング法によって全面に約100nmの厚みで形成した。
最後に、銀ペーストをディスペンサーでグリッド状にパターン形成して、フィンガー電極及びバスバー電極からなる電極412を形成した。なお、この銀ペーストのパターンは、大気中500℃で焼成を行って形成した。
そして、上記のように光電変換装置を製造するに際して、第2の工程において、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101を加熱する際の温度と時間を種々の値とした場合の光電変換効率を測定した結果を表1に示す。光電変換効率は、AM1.5のソーラーシミュレーターにより測定した。
Figure 2009256177
表1に示す通り、第2の工程において、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、結晶シリコン粒子101を加熱する際に500℃乃至1400℃の温度で10時間未満の時間加熱して作製した単結晶シリコン粒子(実施例1〜4)は、光電変換効率が高い値であった。これに対して比較例1〜3の光電変換装置は、光電変換効率が低くなった。
なお、本発明は以上の実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、結晶シリコン粒子を加熱して溶融させる方法として、加熱炉を用いずに、台板の上面に載置した結晶シリコン粒子に上方から光エネルギーを照射することによって溶融させる方法を用いてもよい。
(a)〜(d)は本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法の一例を示す各製造工程における結晶シリコン粒子の断面図である。 本実施の形態の結晶シリコン粒子の製造方法によって得られた単結晶シリコン粒子を用いて作製される光電変換装置について、一例を示す断面図である。 (a),(b)は本実施の形態の単結晶シリコン粒子の製造方法によって得られた単結晶シリコン粒子の外観を示す写真である。 第2の工程において結晶シリコン粒子を10時間加熱したときの単結晶シリコン粒子の表面から深さ方向に酸素及び窒素の濃度を測定した結果のグラフである。 第2の工程において結晶シリコン粒子を1時間,5時間または7時間加熱したときの単結晶シリコン粒子の表面から深さ方向に酸素及び窒素の濃度を測定した結果のグラフである。
符号の説明
101:結晶シリコン粒子
301:台板

Claims (5)

  1. 表面に酸窒化珪素膜を有する単結晶シリコン粒子であって、
    前記酸窒化珪素膜は、外表面に比し、内表面の窒素濃度が大きいことを特徴とする単結晶シリコン粒子。
  2. 結晶シリコン粒子の表層部に窒化珪素膜を形成する第1の工程と、
    酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、前記結晶シリコン粒子を加熱することによって、前記窒化珪素膜を酸窒化珪素膜とするとともに、前記結晶シリコン粒子のシリコン部に接する前記酸窒化珪素膜の内表面に窒素の高濃度層を形成しながら前記結晶シリコン粒子の形状を保持した状態で前記シリコン部を溶融させ、ついで降温し凝固させて単結晶化する第2の工程と、
    を有する単結晶シリコン粒子の製造方法。
  3. 前記第2の工程において、酸素ガスから成る雰囲気ガスまたは酸素ガス及び不活性ガスから成る雰囲気ガス中で、前記結晶シリコン粒子を加熱する際に、500℃乃至1400℃の温度に10時間未満の時間加熱する請求項2記載の単結晶シリコン粒子の製造方法。
  4. 前記第1の工程において、前記結晶シリコン粒子の表面に研磨加工を施すことによって前記結晶シリコン粒子の表層部に加工変質層を形成した後に、窒素ガスから成る雰囲気ガスまたは窒素ガスを主成分として含む雰囲気ガス中で、前記結晶シリコン粒子をシリコンの融点以下の温度に加熱する請求項2または3記載の単結晶シリコン粒子の製造方法。
  5. 前記第2の工程は、多数個の前記結晶シリコン粒子を台板上に重層的に載置した状態で行われる請求項1乃至4のいずれか記載の単結晶シリコン粒子の製造方法。
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