JP2009249584A - 耐汚染性付与塗料組成物及び汚染防止方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塗料組成物は(I)炭素数10以上の脂肪族又は脂環式アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマー(A)、及び硬化可能な官能基を有するモノマーを必須成分とし、更に必要性に応じて(A)及び(B)以外のモノマーを共重合してなるグラフト共重合体;及び(II)硬化剤を含有してなり、汚染防止方法は該塗料組成物を塗装してなる。
【選択図】なし
Description
(1)低表面エネルギーのパーフルオロアルキル基を有する重合体を塗装し、表面に撥水・撥油性を付与する手法(特許文献1)。
(2)同様に低表面エネルギーであるポリジメチルシロキサンを含む重合体を塗装し、表面に撥水・撥油性を付与する手法(特許文献2)。
(3)表面に微細な凹凸をつけて撥水撥油性を更に向上させ、同時に油分の接触面積を減らすことによって汚れを付きにくくする方法(特許文献3)。
このような方法では、その塗膜が撥油性であるために付着した皮脂、指紋等の油分をはじいてしまい、よけいに汚れが目立つのが欠点であった。また特に(3)の方法によると、液晶バックライトの光を散乱してしまい、輝度が低下するという問題点があった。
(4)表面を超親水化することにより汚れを付着しにくくする方法(特許文献4)。
(5)前記したパーフルオロアルキル基やポリジメチルシロキサンを導入して撥水・撥油化すると同時にある特定の親水基をも導入して汚れの除去性を改良する方法(特許文献5)。
(6)表面を撥水・親油化することによって、例え皮脂成分が付着した場合でも目立たなくする方法(特許文献6)。
このうち、(4)の方法によると汚れは付着しにくくなるが、一旦付着してしまった汚れは逆にとりにくくなってしまう。(5)の方法では前記(1)から(3)の方法と同じく汚れが目立つのが欠点である。また(6)の方法では付着した指紋が目立たなくはなるが本質的な解決ではなく、また、塗膜を作製するときに非常に煩雑な操作を必要とするのが欠点である。
本発明による塗料組成物の好ましい態様においては、前記モノマー(A)が、炭素数10以上の直鎖脂肪族アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマーである。
また、本発明による塗料組成物の好ましい態様においては、前記モノマー(B)の硬化性官能基が、紫外線カチオン硬化が可能である3,4−エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基、テトラヒドロフルフリル基、オキセタニル基、トリ又はジアルコキシシリル基からなる群から選ばれる、少なくとも一種の基であり、前記硬化剤(II)が紫外線カチオン硬化剤である。
また、本発明による塗料組成物の好ましい態様においては、前記モノマー(C)が、オルガノポリシロキサンを有するモノマー及びフッ化アルキル基を有するモノマー以外のモノマーである。
加えて本発明の塗料組成物によって形成された塗膜は、耐薬品性、耐候性、塗膜硬度に優れている。
更に、本発明の塗料組成物は、カチオン紫外線(UV)硬化が可能であるために、熱による硬化(加熱硬化)よりも少ないエネルギーで硬化塗膜を形成できる。
本発明のグラフト共重合体(I)は、(A)炭素数10以上の脂肪族又は脂環式アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマー(以下、モノマー(A)と称することがある)、(B)硬化性官能基を有するモノマー(以下、モノマー(B)と称することがある)、及び必要に応じて(C)前記モノマー(A)及び前記モノマー(B)に属さないモノマー(以下、モノマー(C)と称することがある)を共重合するという製造方法によって得られる。
モノマー(A)は炭素数10以上の脂肪族又は脂環式アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマーであれば、特に限定されず、後述のグラフト共重合体の製造に用いることができる。
前記重合体の脂肪族又は脂環式アルキル基の炭素数の上限も、特に限定されないが、好ましくは24以下である。
成分(A−3)は、成分(A−1)の残余の官能基と反応する官能基とラジカル重合性二重結合を有しているモノマーであれば特に制限なく用いることができる。例えば成分(A−1)の残余の官能基がカルボキシル基である場合には、例えばエポキシ基とラジカル重合性二重結合を有していればよく、具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また例えば成分(A−1)の残余の官能基が水酸基である場合には、例えば酸無水物基とラジカル重合性二重結合、又はイソシアネート基とラジカル重合性二重結合を有していればよく、具体例としては、無水マレイン酸、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また例えば成分(A−1)の残余の官能基がアルコキシシリル基である場合には、例えば水酸基とラジカル重合性二重結合、又はアルコキシシリル基とラジカル重合性二重結合を有していればよく、具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。中でも耐候性、及び反応の容易さという観点からイソシアネート基とラジカル重合性二重結合を有しているモノマーが好ましい。
モノマー(B)は硬化性官能基を有するモノマーであれば、特に限定されないが、グラフト共重合体の重合反応のために、ラジカル重合性二重結合を有している。硬化性官能基としては、熱硬化、又はエネルギー線、例えば紫外線(UV)若しくは電子線(EB)により架橋する官能基を挙げることができ、重合、縮合、又は付加反応により架橋される官能基を含む。紫外線による硬化は、ラジカル紫外線硬化とカチオン紫外線硬化を挙げることができるが、カチオン紫外線硬化により架橋する官能基が好ましい。
このようなカチオン紫外線(UV)硬化が可能である官能基を有するモノマーとしては、3,4−エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基、テトラヒドロフルフリル基、オキセタニル基、トリ又はジアルコキシシリル基を有するモノマーが挙げられる。
モノマー(C)は必ずしも必須成分ではないが、使用する場合には少なくとも、オルガノポリシロキサンを有するモノマー及びフッ化アルキル基を有するモノマー以外から選択される必要がある。
オルガノポリシロキサンを有するモノマー及び/又はフッ化アルキル基を有するモノマーを含有させてしまうと、得られる塗膜が撥水・撥油性となってしまい、所期の目的である撥水・親油性、即ち特に皮脂、指紋等の油分に対して汚染除去性が得られなくなる。
本発明の塗料組成物に用いることのできる硬化剤(II)は、グラフト共重合体(I)におけるモノマー(B)の硬化性官能基を架橋させることができる硬化剤であれば、特に限定されないが、熱硬化、又はエネルギー線、例えば紫外線(UV)若しくは電子線(EB)により硬化性官能基を架橋させることのできる硬化剤を挙げることができる。紫外線による硬化性官能基を架橋させることのできる硬化剤は、ラジカル紫外線(UV)硬化剤とカチオン紫外線(UV)硬化剤を挙げることができるが、カチオン紫外線(UV)硬化剤が好ましい。
本明細書において、「カチオン紫外線(UV)硬化剤」とは、紫外線の照射により酸を発生し、特定の官能基の重合又は縮合を起こすことにより、その官能基を含む化合物を架橋させることができる硬化剤を意味する。
本発明の塗料組成物には、硬化剤(II)の硬化を補助するための光増感剤を含むことができる。カチオン紫外線(UV)硬化させる場合には、装置(光源)の種類により照射光の波長特性が異なる場合があるため、その波長に合致した光増感剤を用いることが好ましい。光増感剤の添加量はその種類によって構造や吸収波長特性、光量子収率が異なるため一概には規定できないが、通常0.1重量部以上5重量部以下の範囲で用いられる。
本発明の汚染防止方法は、前記の塗料組成物を塗装、及び乾燥、硬化して塗膜を形成するものである。
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、メルカプトエタノール〔成分(A−1)、1.8部〕及びステアリルメタクリレート(成分(A−2)、100部〕、アゾビスイソブチロニトリル(0.5部)及びメチルイソブチルケトン(100部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下120℃に加熱した。120℃で4時間反応した後室温まで冷却した。反応器に更にヒドロキノンモノメチルエーテル(0.04部)、2−イソシアナトエチルメタクリレート〔成分(A−3)、4部〕を入れて乾燥空気を通じながら100℃で反応させ、サンプリング物の赤外吸収スペクトル(IR)においてイソシアネート基の量が一定になった時点で反応を終了して冷却し、不揮発分50%のモノマー(A)を得た。
参考例におけるステアリルメタクリレート(100部)をn−ノニルメタクリレート(100部)に変更した以外は、参考例の操作を繰り返して、不揮発分50%のモノマー(A’)を得た。モノマー(A’)は、本発明の塗料組成物に用いる、炭素数10以上の脂肪族又は脂環式アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマーとは、異なるモノマーである。
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、参考例で合成したモノマー(A)(固形分換算10部)、メチルメタクリレート(40部)、2−エチルヘキシルアクリレート(10部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(10部)、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(30部)、アゾビスイソブチロニトリル(1部)、メチルイソブチルケトン(不揮発分50%となる量)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で5時間保持することによって、不揮発分が50%である目的とするグラフト共重合体(I)の溶液を得た。
溶剤、モノマー、開始剤類の仕込量を表1に示したように変更したこと以外は、製造例1と同様に操作してグラフト共重合体(I)の溶液を得た。製造例2〜5では本発明によるグラフト共重合体が得られる。
溶剤、モノマー、開始剤類の仕込量を表1に示したように変更したこと以外は、製造例1と同様に操作してグラフト共重合体の溶液を得た。比較製造例1、2ではモノマー(A)の量が本発明の範囲外であるもの、比較製造例4、5ではモノマー(B)の量が本発明の範囲外であるものについて示した。比較製造例1、2、4、5では本発明の範囲外であるグラフト共重合体が得られる。比較製造例3ではモノマー(A)を用いない、即ちグラフト共重合体ではなく、リニアなランダム共重合体について示した。比較製造例6では、炭素数9の脂肪族アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマーを用いて製造したグラフト共重合体が得られた。
製造例1で得られたグラフト共重合体(I)の固形分100部に対して、カチオン紫外線開始剤であるイルガキュアー250〔硬化剤(II)、チバスペシャリティケミカルズ(株)製〕を2部、増感剤として9,10−ジブトキシアントラセン(1部)を混合し、塗料中の不揮発分が25重量%になるようにメチルイソブチルケトンで希釈して塗料組成物を得た。
グラフト共重合体(I)の量と種類、イルガキュアー250〔硬化剤(II)〕、9,10−ジブトキシアントラセンの量を表2に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜5及び比較例1〜6の塗料組成物を得た。
予めトルエン/イソプロピルアルコール(2/1)混合溶剤で脱脂、乾燥したガラス板上に実施例1〜5及び比較例1〜5で得られた塗料組成物をバーコーター#6を用いて塗布した後室温で10分間乾燥した後、下記条件で硬化して乾燥膜厚約3μmの塗膜を得た。
光源 水銀ランプ+メタルハライドランプ
照度 100mJ/cm2
コンベアスピード 35m/分
照射回数 3パス
下記項目について評価した。結果は表2に併せて示した。
作製直後の塗膜上にキシレンを1滴落とし、室温で乾燥するまで放置して、塗膜の異状の有無を目視で観察した。
作製後1日室温で放置した塗膜についてJIS K5600−5−5:1999(手掻き法)に準じて鉛筆硬度を評価した。ガラスの素地に達するひとつ前の鉛筆硬度で評価した。
作製後1日室温で放置した塗膜についてCA−W型自動接触角計〔協和界面科学(株)製〕を使用し、約5μLの各液の接触角を5点以上測定し平均した。
作製後1日室温で放置した塗膜に指紋を付着させ、ティッシュペーパーで拭き取って指紋の除去性を評価した。指紋が除去されるまでのティッシュペーパーの拭き取り回数を示した。
Claims (6)
- (I)(A)炭素数10以上の脂肪族又は脂環式アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマー1〜50重量%、
(B)硬化性官能基を有するモノマー5〜50重量%、及び必要に応じて
(C)前記モノマー(A)及び前記モノマー(B)に属さないモノマー0〜94重量%、
を反応させて得られるグラフト共重合体、並びに
(II)前記モノマー(B)の硬化性官能基を架橋させることができる硬化剤、
を含有する塗料組成物。 - 前記モノマー(A)が、炭素数10以上の直鎖脂肪族アルキル基の重合体末端にラジカル重合性二重結合を有するモノマーである、請求項1に記載の塗料組成物。
- 前記モノマー(B)の硬化性官能基が、紫外線カチオン硬化が可能である3,4−エポキシシクロヘキシル基、グリシジル基、テトラヒドロフルフリル基、オキセタニル基、トリ又はジアルコキシシリル基からなる群から選ばれる、少なくとも一種の基である、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
- 前記硬化剤(II)が紫外線カチオン硬化剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
- 前記モノマー(C)が、オルガノポリシロキサンを有するモノマー及びフッ化アルキル基を有するモノマー以外のモノマーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料組成物を塗装して塗膜を形成することを特徴とする汚染防止方法。
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