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JP2009242325A - アポトーシス抑制剤 - Google Patents

アポトーシス抑制剤 Download PDF

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JP2009242325A JP2008092473A JP2008092473A JP2009242325A JP 2009242325 A JP2009242325 A JP 2009242325A JP 2008092473 A JP2008092473 A JP 2008092473A JP 2008092473 A JP2008092473 A JP 2008092473A JP 2009242325 A JP2009242325 A JP 2009242325A
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Abstract

【課題】本発明は、アポトーシスを抑制する活性を有し、かつ安全で安定性の高い物質の提供を目的としている。このような物質は、皮膚を構成する細胞のアポトーシス亢進に起因する肌荒れなど皮膚疾患、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などの予防薬・治療薬として有用な医薬品、食品、化粧品組成物になり得る、または美容方法にも役立つと考えられる。
【解決の手段】課題を解決すべく本発明者らは、皮膚ケラチノサイト細胞株を用いた抗アポトーシス活性物質のスクリーニングによりアポトーシス抑制剤を自然界に求めて広く探索し、ホンダワラ属(Sargassum)の海藻の抽出物(例えば、オオバモク(Sargassum ringgoldianum)、アカモク(Sargassum horneri)及びホンダワラ(Sargassum fulvellum)からなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上の抽出物)、またはイチョウ抽出物およびクロレラ抽出物およびβ-グリチルレチン酸およびオオバモク抽出物に皮膚ケラチノサイト細胞株のアポトーシスを抑制する活性を見いだし、本発明を完成するに至った。

Description

本発明は、皮膚を構成する細胞のアポトーシス亢進に起因する肌荒れ、乾皮症、炎症、掻痒症、敏感肌、湿疹、色素沈着症状または関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー症およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症、などの予防または改善に有用な医薬品、食品、化粧品組成物および美容方法に関する。
アポトーシス(apoptosis,自死 )は、病理的要因のみならず、発生、免疫、ホルモン作用など、多様な生理的要因によっても生じる“生理的細胞死”で、時間的にも部位的にも、散発的にランダムに起こり、生命現象に必須の細胞死として重要な役割を果たしている。アポトーシスの異常は、さまざまな疾患の発症に深くかかわっている。
アポトーシスを司るカスパーゼの一部が炎症をはじめとする病変の発症・進展に関与することが示されている(非特許文献1)。従って、アポトーシスの抑制によりある種の炎症性反応に対して抑制効果が期待される。事実、Fas L(Fasリガンド)中和抗体が実験的炎症性肺線維症や炎症性腸疾患モデル動物に対して優れた効果を有することが報告されており(非特許文献2)、アポトーシス抑制剤は各種炎症性疾患での症状、病態、組織障害の予防もしくは治療に優れた効果が期待されている。
皮膚においては、急性および慢性炎症時に皮膚に浸潤したリンパ球の産生するIFN-γの作用により角質細胞上のFas分子の発現が顕著に誘導され、リンパ球の発現するFasLとの反応によってアポトーシスを引き起こすことが明らかにされている(非特許文献3)。また、角質細胞は互いにデスモソームと呼ばれる結合装置で強く結合されており、角質細胞のアポトーシスによってスポンジ様の水泡形成を引き起こし、海綿状態と呼ばれる特徴的な病理変化をもたらして湿疹症状を呈すると考えられている(非特許文献4)。こうしたアポトーシスによる表皮のバリア機能障害は、外界からの様々な刺激物質の生体内への侵入を容易にし、さらなる炎症反応を惹起させ症状悪化を招く要因となるものと考えられる。加えて表皮に障害を生じると角質細胞のターンオーバーが促進されるが、慢性的炎症状態ではそのターンオーバーの規則性が失われ、未分化な角質層を形成しやすい。このような未分化な角質細胞上では、保湿性の水溶性アミノ酸の産生が低下し、皮膚の保湿能が失われやすくなることから乾燥肌傾向を呈すると推測され、知覚異常などの敏感肌になると考えられている(非特許文献5)。
放射線、紫外線、抗がん剤処理などの外界からの刺激によっても生体内においては、例えば、Fas抗体、FasL、TNF−α、TGF−βなどが、受容体を介してアポトーシスを誘導する。アポトーシスを抑制する化合物は、過度のアポトーシスが原因で起こるとされている様々な疾病、例えば、上記に示した肌荒れ、乾皮症、炎症、掻痒症、敏感肌、湿疹、色素沈着症状、それ以外にも関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などの予防薬・治療薬となりうる(非特許文献6を参照)。例えば、アポトーシス誘導経路に重要な役割を担っているFas受容体の機能を抑制する抗体などが開発されつつあるが、蛋白質ゆえに、投与方法、生体内での安定性、副作用などに問題があるとされている。
Daemen M.A.et al.,Clin.Invest.,104,541−549(1999);Miwa K.et al.,At.Med.,4,1287−1292(1998);LawsonJ.A.et al.,Hepatol.,28,761−767(1998) Via C.S.et al.,J.Immunol.,157,5387−5393(1996);Miwa K.et al.,Int.Immunol.,11,925−931(1999);KuwanoK.et al.,J.Clin.Invest.,104,13−19(1999) Trautmann A.etal.,J.Clin.Invest.,106,25−35(2000);TakahashiH.et al.,J.Invest.Dermatol.,105,810−815(1995);MoersC.et al.,Int.J.Cancer,80,564−572(1999) Trautmann A.etal.,J.Allergy Clin.Immunol.,108,839−846(2001) Fragrance Journal,vol.10(2002);田上八郎,皮膚の医学,中公新書(1999) Nature Med., 6, 389−395 (2000). Science, 267, 1456−1462 (1995).
本発明は、アポトーシスを抑制する活性を有し、かつ安全で安定性の高い物質の提供を目的としている。このような物質は、皮膚を構成する細胞のアポトーシス亢進に起因する肌荒れなど皮膚疾患、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などの予防薬・治療薬として有用な医薬品、食品、化粧品組成物になり得る、または美容方法としても有用と考えられる。
上皮系細胞は、皮膚の表皮や消化管上皮や毛母細胞等のようにアポトーシスと再生を繰り返す形で、常に新しい細胞を供給し、組織として機能を保っている。生体の組織の各種細胞が引き起こすアポトーシス反応をみるためには、上皮系細胞の代表として皮膚ケラチノサイトを用いるのが適当であると考えた。課題を解決すべく本発明者らは、皮膚ケラチノサイト細胞株を用いた抗アポトーシス活性物質のスクリーニングによりアポトーシス抑制剤を自然界に求めて広く探索し、ホンダワラ属(Sargassum)の海藻の抽出物(例えば、オオバモク(Sargassum ringgoldianum)、アカモク(Sargassum horneri)及びホンダワラ(Sargassum fulvellum)からなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上の抽出物)、またはオオバモク抽出物及びイチョウ抽出物及びクロレラ抽出物及びβ-グリチルレチン酸に皮膚ケラチノサイト細胞株のアポトーシスを抑制する活性を見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明の物質は、後述の試験例に示すように抗アポトーシス活性を有しているため、例えばアポトーシス関連性炎症の抗炎症剤として用いる医薬組成物、または、肌荒れを予防、改善するための皮膚外用剤として有用である。
このような本発明の医薬組成物は、関節リウマチ、B型肝炎およびC型肝炎
等のウイルス感染に伴う肝炎、劇症肝炎、糖尿病、心筋梗塞、潰瘍性大腸炎、慢性腎炎、脱毛症、アルツハイマー病およびパーキンソン氏病などの神経変性疾患、虚血性脳障害、後天性免疫不全症候群、拡張性心筋症などのアポトーシス関連性疾患の予防・治療薬として用いることができる。また、このような本発明の皮膚外用剤は、肌荒れ、乾皮症、炎症、掻痒症、敏感肌、湿疹、色素沈着症状を予防、改善する皮膚外用剤として用いることができる。
さらに、上記化合物の治療有効量を、ヒトを含む哺乳類動物に投与する行程を含む方法、上記物質の有効量を細胞に接触させる行程を含む方法が本発明により提供される。
本発明の物質を有効成分とする医薬組成物は、その使用目的にあわせて投与方法、剤型、投与量を適宜決定することが可能である。例えば、本発明の物質を有効成分とする医薬の投与形態は、経口投与でも非経口投与でもよい。剤型としては、例えば錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤、または注射剤、点滴剤、もしくは坐剤等の非経口投与剤を挙げることができる。これらの製剤は、賦形剤、結合剤等の製薬上許容される添加剤を用いて既知の方法で製造することができる。本発明の物質を有効成分として含む医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、感受性、症状の程度などにより異なるが、通常効果的な量は、有効成分量として成人1日あたり経口投与では、0.1
mg〜100 mg
/kg、好ましくは1 mg〜 20 mg/kg程度であり、非経口投与では、0.01mg〜10mg/kg, 好ましくは、0.1 mg〜2
mg/kg程度である。上記の投与量を1日1回または数回にわけて投与することも可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。
本発明に係る皮膚外用剤の剤型は、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、粉末剤、顆粒剤など、種々の剤型で提供することができる。また、化粧水、乳液、クリーム、美容液、パックなどの皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップベースクリームなどの下地化粧料、乳液状、油性、固形状などの各剤型のファンデーション、アイカラーなどのメイクアップ化粧料、リップクリーム、ハンドクリーム、レッグクリーム、ネッククリーム、ボディローションなどの身体用化粧料として提供することができる。
本発明による組成物はまた、圧縮推進剤を含有するエアゾール組成物としてパッケージ可能である。本発明による組成物はまた、医薬部外品として口腔内で使用されても良く、具体的には歯磨きペーストに添加可能である。この場合、組成物は通常の歯磨きペーストの添加物、特に界面活性剤類、増粘剤類、研磨剤類、フッ化ナトリウムなどのフッ化物、甘味剤類を含有可能である。
また、本発明の化合物を研究試薬として使用する場合には、有機溶剤または含水有機溶剤に溶解して用いることができ、使用可能な有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノールやジメチルスルホキシド等を挙げることができる。剤型としては、例えば、粉末などの固形剤、又は有機溶剤若しくは含水有機溶剤に溶解した液体剤などを挙げることができる。通常、上記の化合物を研究試薬として用いてアポトーシス抑制活性を発揮させるための効果的な使用量は、培養細胞系中において0.1〜100 μg/mLであるが、適切な使用量は培養細胞系の種類や使用目的により異なり、適宜選択可能である。また、必要により上記範囲外の量を用いることができる。本発明のアポトーシスの抑制剤ならびにアポトーシスの促進に起因する疾患の予防剤および/または治療剤の投与形態は特に制限されず、経口的・非経口的に投与することができる。好ましくは、非経口的に、注射あるいは点滴により静脈内に投与、または経皮投与すればよい。本発明のアポトーシスの抑制剤ならびにアポトーシスの促進に起因する疾患の予防剤および/または治療剤としての有効成分であるホンダワラ属(Sargassum)の海藻の抽出物、例えば、オオバモク(Sargassum ringgoldianum)、アカモク(Sargassum horneri)及びホンダワラ(Sargassum fulvellum)からなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上の抽出物、またはイチョウ抽出物およびクロレラ抽出物およびβ-グリチルレチン酸およびオオバモク抽出物をそのまま患者に投与してもよいが、好ましくは、有効成分と薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物を加え、周知な形態の製剤として提供されるべきである。
本発明の抗アポトーシス剤は、細胞のアポトーシス死が関与する、あるいはアポトーシスの亢進に起因する組織障害、疾患、病態の予防もしくは治療に有用である。更に、皮膚を構成する細胞の新陳代謝、すなわちアポトーシスと細胞新生のバランスを正常化し、皮膚を構成する細胞のアポトーシスの亢進に起因する皮膚疾患、症状、病態、組織障害の予防もしくは治療に有用である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に用いられるホンダワラ属の海藻とは、例えば、タルクリ(Sargassum tosaense)、ヤツマタモク(Sargassum patens)、アカモク(Sargassum horneri)、シダモク(Sargassum filicinum)、ノコギリモク(Sargassum serratifolium)、yヨレモク(Sargassum tortile)、オオバノコギリモク(Sargassum giganteifolium)、オオバモク(Sargassum ringgoldianum)、ネジモク(Sargassum sagamianum)、フジスジモク(Sargassum confusum)、ホンダワラ(Sargassum fulvellum)、ウミトラノオ(Sargassum thunbergii)、ハハキモク(Sargassum kjellmanianum)、タマナシモク(Sargassum nipponicum)、イソモク(Sargassum hemiphyllum)、トゲモク(Sargassum micracanthum)、ナラサモ(Sargassum nigrifolium)、ウスバモク(Sargassum tenuifolium)、ナガシマモク(Sargassum racemosum)、エンドウモク(Sargassum yendoi)、コブクロモク(Sargassum crispifolium)、ナンカイモク(Sargassum sandei)などが挙げられるが、ホンダワラ属に属する海藻であれば特にこの植物に限定されるものではない。
本発明に使用されるオオバモク抽出物は、ホンダワラ科ホンダワラ属オオバモク(Sargassum ringgoldianum)の全草(以下「原体」と称する)を乾燥した後、常温若しくは加温下に、溶剤により抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。
本発明に使用されるアカモク抽出物は、ホンダワラ科ホンダワラ属アカモク(Sargassum horneri)の全草(以下「原体」と称する)を乾燥した後、常温若しくは加温下に、溶剤により抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。
本発明に使用されるホンダワラ抽出物は、ホンダワラ科ホンダワラ属ホンダワラ(Sargassum fulvellum)の全草(以下「原体」と称する)を乾燥した後、常温若しくは加温下に、溶剤により抽出するか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出することにより得ることができる。
ここで、使用される溶剤としては水または/及び有機溶媒が挙げられるが、特に有機溶媒が好ましい。有機溶媒の好ましい具体例としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、等の多価アルコール類、これら多価アルコール類と水との混合液(好ましくは5〜30%水溶液);アニオン界面活性剤水溶液、ノニオン界面活性剤水溶液、両性界面活性剤;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;これらアルコール類と水との混合液(10〜99.5%、好ましくは20〜90%水溶液);ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル等の炭化水素類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン類のエーテル類;酢酸エチル、イソプロピルミリステート等のエステル類;流動パラフィン、ダイズ油、ゴマ油等の各種鉱物油、動物油、植物油、及びこれらの混合物などが挙げられる。
原体からの好ましい抽出方法の具体例としては、(a)原体を粉砕した後、エタノール溶媒で抽出し、溶媒を留去する方法;(b)(a)で得た抽出物を、脱色等のため活性炭、ポリアミド樹脂、HP−20等のポリスチレン樹脂及びポリエチレンメタクリレート樹脂から選ばれる一種又は二種以上で処理する方法;(c)原体を粉砕した後、無水又は含水の低級アルコール等の溶媒で抽出し、次いで抽出物を含水低級アルコールと炭化水素類等を用いる液−液抽出に付し、更に活性成分の移行した炭化水素類相から溶媒を留去する方法;(d)原体を粉砕した後、無水又は含水の低級アルコール等の溶媒で抽出し、次いで抽出物を酢酸エチル等の水と混和しない溶媒と水を用いる液−液抽出に付し、更に有機相又は水相から溶媒を留去する方法;(e)前記(d)で得た水相をブタノールと水を用いる液−液抽出に付し、更にブタノール相から溶媒を留去する方法;(f)前記(d)又は(e)において、液−液抽出を行う前又は行った後に、抽出液を活性炭、ポリアミド樹脂、HP−20等のポリスチレン樹脂及びポリエチレンメタクリレート樹脂から選ばれる一種又は二種以上で処理する方法;(g)原体を粉砕した後適当な溶媒で抽出し、次いで抽出相を活性炭、ポリアミド樹脂、HP−20等のポリスチレンメタクリレート樹脂から選ばれる一種又は二種以上で処理して、活性成分を吸着させ、次いでメタノール、エタノール、アセトン、又はこれらと水の混合液で活性成分を抽出し、溶媒を留去する方法などが挙げられる。これらの方法は、目的、用途により適宜選択すればよい。また、例えばエタノール、水、含水エタノール等を抽出溶媒としたときには、溶媒を完全に留去することなく、エタノール、水等を適宜加えることにより濃度調整して用いることもできる。さらに室温以下において不純物を生ぜしめ、これを濾過等により除去した後用いることもできる。
抽出物は、そのままで本発明の有効成分として用いることもできるが、当該抽出物を更に、適当な分離手段、例えばゲル濾過法やシリカゲルカラムクロマト法又は逆相若しくは順相の高速液体クロマト法により活性の高い画分を分画して用いることもできる。
クロレラ(Chlorella vulgaris)抽出物は、一丸ファルコス株式会社製のクロレラエキス(水抽出液)の乾固物を用いた。
イチョウ(Ginkgo biloba)の葉の抽出物は、株式会社常磐植物化学研究所製
のイチョウ葉エキス(50%エタノール抽出液)を用いた。
β-グリチルレチン酸は、丸善製薬株式会社製のものを用いた。
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定を受けないことは、言うまでもない。
<実施例1>乾燥した海藻オオバモク(細切されたもの)121gに1210gの50 %(wt/wt)エタノール水溶液または95%(wt/wt)エタノール水溶液を加えて室温で5日間抽出し、ろ紙でろ過する。ろ液を回収する(濃度0.5%wt/v固形分)。2日間5℃でオリ出し、ろ紙でろ過してそれぞれオオバモク抽出物(50%EtOH)、オオバモク抽出物(95%EtOH)を得る。
<実施例2>乾燥した海藻アカモク(細切されたもの)100gに1000gの50 %(wt/wt)エタノール水溶液を加えて室温で5日間抽出し、ろ紙でろ過する。ろ液を回収する(濃度0.5%wt/v固形分)。2日間5℃でオリ出し、ろ紙でろ過してアカモク抽出物を得る。
<実施例3>乾燥した海藻ホンダワラ(細切されたもの)100gに1000gの50 %(wt/wt)エタノール水溶液を加えて室温で5日間抽出し、ろ紙でろ過する。ろ液を回収する(濃度0.5%wt/v固形分)。2日間5℃でオリ出し、ろ紙でろ過してホンダワラ抽出物を得る。
前記各種物質を後記の試験に供した。
<実施例4>
(1)アポトーシスの誘導方法
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(ケラチノサイト)(クラボウ社製:4継代PDL24)を用いてTGF-β1、TGF-β2を表1に示す濃度になるようにEpilife培地に加えてアポトーシスが誘導するかどうかの確認実験を行った。アポトーシスの評価はELISA法(ApoStrand ELISA Apoptosis
Detection Kit AK-120:BIOMOL社製)にて行った。ApoStrand ELISA Apoptosis
Detection Kit AK-120ではアポトーシスが促進していれば、吸光度の値が高くなる。
結果を表1に示す。
表1の結果から、TGFβ-1 1000pg/mL、TGFβ‐2 1000pg/mLを加えると、ケラチノサイトでアポトーシスの促進が認められた。
<実施例5>
(2)抗アポトーシス活性の評価方法
ケラチノサイト(4継代PDL24)を用いてTGF-β1 1000pg/mLでアポトーシスを誘導し、そのアポトーシスを抑制する成分の探索をELISA法(ApoStrand ELISA Apoptosis
Detection Kit AK-120:BIOMOL社製)にて行った。
表2の結果から、TGF-β1 1000pg/mLを加えて、ケラチノサイトでアポトーシスを誘導した状態に、ホンダワラ抽出物(50% EtOH)10ppm、アカモク抽出物(50% EtOH)10ppmを加えるとTGF-β1で誘導されたアポトーシスを有意に抑制した。また、TGF-β1 300pg/mLにオオバモク50% EtOH 0.001ppmを加えると、有意にアポトーシスを抑制した。また、TGF-β1 1000pg/mLを加えて、アポトーシスを誘導した状態に、オオバモク50% EtOH 10ppmを加えると誘導されたアポトーシスを抑制する傾向がみられた。しかし、オオバモク50% EtOH の添加濃度を0.1ppm、0.001ppmに下げた場合には、誘導されたアポトーシスの抑制はみられなかった。一方、TGFβ-1 300pg/mLを加えた状態に、イチョウBGエキス(100ppm)+クロレラエキス(100ppm)+グリチルレチン酸(10ppm)を加えると、アポトーシスの抑制はみられなかったが、そこにオオバモク50% EtOH 0.001ppmを加えると、アポトーシスを有意に抑制した。さらにTGF-β1 1000pg/mLを加えて、アポトーシスを誘導した状態に、イチョウBGエキス(100ppm)+クロレラエキス(100ppm)+グリチルレチン酸(10ppm)+オオバモク50%EtOH 0.001ppmを加えると、ケラチノサイトのアポトーシスを著明に抑制することが明らかになった。ミノキシジルのアポトーシス抑制作用が報告されているので、TGF-β1 1000pg/mLを加えて、ケラチノサイトでアポトーシスを誘導した状態にミノキシジル0.1ppmを加えたが、TGF-β1で誘導されたアポトーシスは抑制されなかった。以上よりホンダワラ属の海藻の抽出物がケラチノサイトのアポトーシスを著明に抑制することが明らかになった。
<実施例6>
本発明品のアポトーシス抑制皮膚化粧水と比較品の化粧水についての処方をまとめて表3に示す。
<製法>
エチルアルコールに活性剤(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O))、防腐剤を加えて均一に溶解する。これに、あらかじめ溶解していた水層部(精製水、被験物質、グリセリン)を加え溶解する。
<実施例7>
<使用試験>
続いて本発明の実施例及び比較例について使用試験を行った。アポトーシスが抑制されると、肌荒れが改善されることが推察されるため、以下の試験を行った。肌荒れを感じているパネラー20名を1群とし、各群にそれぞれ実施例および比較例をブラインドにて顔面に使用させ、肌荒れの改善及び水分量の変化を観察またはスキコンで測定し、評価した。使用期間は1ヶ月とした。肌荒れについては、「改善」、「やや改善」「変化なし」、「やや悪化」、「悪化」の5段階、水分量については「上昇」、「変化なし」、「低下」の3段階で評価し、各評価を得たパネラー数は下記表4に示した。
表4に示すように、比較例と比べ、オオバモク抽出物を含有する本発明の実施例の使用により、肌荒れが改善し、水分量が顕著に上昇することが認められた。
次に本発明の各種成分を配合した化粧料、皮膚外用剤の処方例および食品、医薬品の例を示すが本発明はこれに限定されるものでない。
化粧料の処方例
(1)化粧用クリーム(重量%)
a)ミツロウ・・・2.0
b)ステアリルアルコール・・・5.0
c)ステアリン酸・・・8.0
d)スクワラン・・・10.0
e)自己乳化型グリセリルモノステアレート・・・3.0
f)ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・1.0
g)オオバモクの抽出物・・・2.5
h)水酸化カリウム・・・0.3
i)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
j)1,3-ブチレングリコール・・・5.0
k)精製水・・・残部
<製法>
a)〜f)までを加熱溶解し、80℃に保つ。i)〜k)までを加熱溶解し、
80℃に保ち、a)〜f)に加えて乳化し、h)を加える。40℃でg)を加えて、さらに撹拌しながら35℃まで冷却する。
(2)乳液(重量%)
a)ミツロウ・・・0.5
b)ワセリン・・・2.0
c)スクワラン・・・8.0
d)ソルビタンセスキオレエート・・・0.8
e)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.)・・・1.2
f)アカモクの抽出物・・・1.0
g)カルボキシビニルポリマー・・・0.2
h)水酸化カリウム・・・0.1
i)1,3-ブチレングリコール・・・7.0
j)精製水・・・残部
k)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
l)エタノール・・・7.0
<製法>
a)〜e)までを加熱溶解し、80℃に保つ。f)〜k)まで(hを除く)を加熱溶解し、
80℃に保ち、a)〜e)に加えて乳化し、h)を加える。50℃まで撹拌しながら冷却する。 50℃でl)を添加し、40℃まで冷却する。
(3)化粧水(重量%)
a)アカモクの抽出物・・・5.0
b)グリセリン・・・5.0
c)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.)・・・0.5
d)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
e)精製水・・・残部
<製法>
a)〜e)までを混合し、均一に溶解する。
(4)パック剤(重量%)
a)オオバモクの抽出物・・・0.5
b)アカモクの抽出物・・・0.1
c)酢酸ビニル樹脂エマルジョン・・・15.0
d)ポリビニルアルコール・・・10.0
e)オリーブ油・・・3.0
f)グリセリン・・・5.0
g)酸化チタン・・・8.0
h)カオリン・・・7.0
i)エタノール・・・8.0
j)香料・・・適量
k)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
l)精製水・・・残部
<製法>
a)〜l)までを混合し、よく撹拌、分散させ均一にする。
(5)ヘアトニック(重量%)
a)エタノール・・・60
b)アカモクの抽出物・・・5.0
c)グリセリン・・・3.0
d)メントール・・・0.2
e)精製水・・・残部
<製法>
a)〜e)までを混合し、よく撹拌、分散させ均一にする。
(6)軟膏(重量%)
a)アスコルビン酸パルミテート・・・2.0
b)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)・・・10.0
c)ポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)・・・10.0
d)ステアリルアルコール・・・10.0
e)プロピレングリコール・・・30.0
f)グリセリン・・・34.6
g)β-グリチルレチン酸・・・0.1
h)クロレラ抽出物 ・・・1.0
i)イチョウ抽出物 ・・・2.0
j)オオバモク抽出物・・・0.1
j)パラベン・・・0.2
<製法>
a)〜j)を加熱溶解し、35℃まで攪拌しながら冷却する。
(7)カプセル(重量%)
a)オオバモクの抽出物・・・5.0
b)β-グリチルレチン酸・・・0.1
c)クロレラ抽出物・・・2.0
d)イチョウ抽出物・・・2.0
e)グルコース・・・残部
<製法>
a)〜e)までを良く混合し、カプセルに成形する。
(8)ドリンク剤(重量%)
a)ホンダワラの抽出物・・・1.0
b)β-グリチルレチン酸・・・0.1
c) クロレラ抽出物・・・1.0
d)イチョウ抽出物 ・・・2.0
e)香料・・・適量
f)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
g)精製水・・・適量
<製法>
a)〜g)を混合し溶解させる。
(9)注射・点滴剤
ホンダワラ抽出物 10 mgを含有するように、粉末ブドウ糖5
gを加えてバイアルに無菌的に分配して密封し、窒素、ヘリウムなどの不活性ガスを封入して冷暗所に保存した。使用前にエタノールに溶解し、0.85%生理的食塩水100
mlを添加して静脈内注射剤とし、一日あたり10〜100 mlを症状に応じて静脈内注射または点滴で投与する。
(10)顆粒剤
オオバモク抽出物 1g、乳糖98g、およびヒドロキシプロピルセルロース1gをそれぞれ取り、よく混和した後、定法にしたがって粒状に成形し、それをよく乾燥して、瓶やヒートシール包装などに適した顆粒剤を製造した。一日あたり100〜1000
mgを症状に応じて経口投与できる。
本発明のアポトーシス抑制剤は細胞のアポトーシス死が関与する、あるいはアポトーシスの亢進に起因する組織障害、疾患、病態の予防もしくは治療に有用である。

Claims (5)

  1. ホンダワラ属(Sargassum)の海藻の抽出物からなるアポトーシス抑制剤。
  2. ホンダワラ属の海藻がオオバモク(Sargassum ringgoldianum)、アカモク(Sargassum horneri)及びホンダワラ(Sargassum fulvellum)からなる群から選ばれる少なくとも1種または2種以上である請求項1記載のアポトーシス抑制剤。
  3. オバモク抽出物及びイチョウ抽出物及びクロレラ抽出物及びβ-グリチルレチン酸からなるアポトーシス抑制剤。
  4. 皮膚の掻痒および/または上皮外層の剥離および/または紅班および/または異常感覚および/または炎症感覚および/または皮膚刺激に対する知覚過敏および/または肌荒れおよび/または敏感肌を治療するための請求項1から請求項3に記載の組成物を含む皮膚外用剤。
  5. 請求項1から請求項3に記載の組成物を含有するアポトーシスの促進に起因する疾患の予防剤および/または治療剤。
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