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JP2009242365A - 経口医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬を有する経口医薬組成物であって、当該鎮痛薬の胃粘膜障害が軽減されてなる経口医薬組成物を提供する。また本発明は、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の効果の持続性に優れた経口医薬組成物を提供する。
【解決手段】(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)トラネキサム酸、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用する。
【選択図】なし

Description

本発明は経口医薬組成物に関する。より詳細には、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬を有効成分とする経口医薬組成物であって、当該消炎鎮痛薬による胃粘膜障害が軽減され、また持続性が向上してなる医薬組成物に関する。さらに、本発明はフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬による胃粘膜障害を軽減する方法に関する。
イブプロフェンなどのフェニルプロピオン酸系の解熱鎮痛消炎剤は、優れた鎮痛および消炎作用を有するため、炎症性疾患やそれに伴う疼痛や発熱に対する薬物(解熱鎮痛薬)として広く用いられている。特にイブプロフェンは、公知の解熱鎮痛消炎剤のなかでもとりわけ末梢での消炎作用が高いことから、炎症を伴う関節痛の治療薬として好適に使用されている。しかし、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬は、胃粘膜の損傷を引き起こし易く消化性潰瘍や胃腸出血などの副作用を発生しやすいことから、使用量を減らす目的でフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬自体の作用効果を増強するための工夫や、その胃腸障害自体を軽減するための工夫が種々試みられている(例えば、特許文献1〜10等参照)。
また、上記副作用を抑制するために、重篤な疼痛や発熱の場合であっても、服用間隔を長くしなければならない(例えば、服用間隔4時間以上)とか、服用量を少なくしなければならないなどといった制約があった。
このため、イブプロフェン等のフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の胃腸障害を軽減するための有効な方法が依然として求められている。
特公昭64−8602号公報 特公平1−24131号公報 特開平5−148139号公報 特開平9−48728号公報 特開平7−188004号公報 特開平10−259130号公報 特開平11−12187号公報 特開平11−158066号公報 特開2006−1920号公報 特開2004−59579号公報
本発明は、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬による胃粘膜障害が軽減されてなる経口医薬組成物を提供することを目的とする。また本発明は、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の作用が長期にわたって持続する、効果持続型の経口医薬組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬について、その胃粘膜障害を軽減する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討していたところ、イブプロフェンなどのフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬にトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用することによって、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬による胃粘膜障害が顕著に軽減することを見出した。
また本発明者らは、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬にトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルを組み合わせると、消炎鎮痛作用が長期にわたって持続するようになることを見出し、これによってフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の服用回数を減らして副作用の発生機会を削減できることを確認した。
すなわち、本発明者らは、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬にトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用してなる医薬組成物は、少ない服用回数で有効な解熱鎮痛消炎作用を発揮し、しかも服用時の胃粘膜障害が軽減されてなる、安全性の高い解熱鎮痛消炎剤として有用であることを確認して本発明を完成するにいたった。
本発明は、下記の態様を有する:
(I)経口医薬組成物
(I-1)(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬、(b)トラネキサム酸、及び(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有することを特徴とする経口医薬組成物。
(I-2)(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬がイブプロフェンである(I-1)に記載する経口医薬組成物。
(I-3)解熱鎮痛消炎剤である(I-1)または(I-2)に記載する経口医薬組成物。
(II)胃粘膜障害を軽減する方法
(II-1)(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)トラネキサム酸、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用することを特徴とする、当該フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の胃粘膜障害を軽減する方法。
(II-2)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬がイブプロフェンである(II-1)に記載する方法。
本発明の経口医薬組成物によれば、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)トラネキサム酸、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用することによって、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の問題である胃粘膜障害という副作用を軽減することができる。また、本発明の経口医薬組成物によれば、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)トラネキサム酸、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用することによって、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の作用効果が持続するようになるため、服用回数を低減することができ、その結果、胃粘膜障害という副作用の発生機会を低減することができる。すなわち、本発明の経口医薬組成物はフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に起因する胃粘膜障害という副作用の発生を抑制してなる安全性の高い経口医薬組成物として有用である。
I.経口医薬組成物
本発明の経口医薬組成物は、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬(以下、これを「(a)成分」ともいう)に加えて、(b)トラネキサム酸(以下、これを「(b)成分」ともいう)、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲル(以下、これを「(c)成分」ともいう)を含有することを特徴とする。
(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬
本発明においてフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬((a)成分)とは、フェニルプロピオン酸骨格を有する消炎作用、鎮痛作用または/および解熱作用を有する薬物を意味し、例えばアルミノプロフェン、イブプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナブメトン、ナプロキセン、フェノプロフェン(カルシウム塩)、プラノプロフェン、フルルビプロフェンまたはロキソプロフェン(ナトリウム塩)を挙げることができる。これらは一種単独、または二種以上を任意に組み合わせて使用することができる。好ましくは、フルルビプロフェン、イブプロフェン、プラノプロフェンであり、より好ましくはイブプロフェン〔化学名:2-(4-イソブチルフェニル)プロピオン酸〕である。
これらの成分は、水和物または溶媒和物として配合されていてもよく、例えばロキソプロフェンは、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物として用いることができる。
本発明の経口医薬組成物中に含まれる(a)成分の割合としては、制限はされないが、成人一日投与あたりの経口医薬組成物に含まれる(a)成分の量として、100〜1200mg、好ましくは100〜600mg、より好ましくは150〜600mgを挙げることができる。
この範囲となるように、経口医薬組成物100重量%中の(a)成分の含有割合は、2〜92重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲から適宜調整することができる。
(b)トラネキサム酸
トラネキサム酸〔4-(aminomethyl)cyclohexane-1-carboxylic acid〕〔(b)成分〕は、従来より止血作用、抗炎症作用および抗アレルギー作用が知られているアミノ酸の一種である。
本発明の経口医薬組成物中に含まれる(b)成分の割合としては、特に制限されないが、成人一日投与あたりの経口医薬組成物に含まれる(b)成分の量として、50〜1000mg、好ましくは50〜800mg、より好ましくは100〜800mgを挙げることができる。この範囲となるように、経口医薬組成物100重量%中の(b)成分の含有割合を、0.5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲から適宜調整することができる。
フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬〔(a)成分〕の胃粘膜障害を軽減し、また消炎鎮痛効果の持続性を向上させるために好適に用いられる(b)成分の割合として、(a)成分100重量部に対して4〜1000重量部、好ましくは8〜800重量部、より好ましくは17〜533重量部を挙げることができる。
(c)乾燥水酸化アルミニウムゲル
乾燥水酸化アルミニウムゲル〔(c)成分〕は、従来より制酸剤や消化器官用薬として汎用されている医薬品である。主に散剤(粉末)および細粒の2つの形態があるが、特に制限されることなくいずれの形態のものも使用することができる。
本発明の経口医薬組成物中に含まれる(c)成分の割合としては、特に制限されないが、成人一日投与あたりの経口医薬組成物に含まれる(c)成分の量として、65〜1200mg、好ましくは60〜1000mg、より好ましくは100〜1000mgを挙げることができる。この範囲となるように、経口医薬組成物100重量%中の(c)成分の含有割合を、1〜90重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲から適宜調整することができる。
(a)成分が有する胃粘膜障害を、(b)成分とともに軽減し、また作用効果の持続性を向上させるために好適な(c)成分の割合として、(a)成分100重量部に対して5〜1200重量部、好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは16〜667重量部を挙げることができる。
本発明の経口医薬組成物は、上記(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に加えて、(b)トラネキサム酸、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有するものであればよいが、本発明の胃粘膜障害の軽減効果および持続性効果に悪影響を与えるものでなければ、例えば消炎、鎮痛または解熱の用途で用いられる薬効成分など、他の薬効成分配合の有無を制限するものではない。
より具体的には、ビタミン類(ビタミンA,D,E,K,Uなどの脂溶性ビタミン類;ビタミンB,C,Pなどの水溶性ビタミン類);解熱・鎮痛・消炎薬(スルピリンなどのピリン系解熱鎮痛薬;サリチル酸ナトリウム、アスピリン、エテンザミド、サリチルアミド、サザピリンなどのサリチル酸系薬剤、アセトアミノフェンなどのアニリン系薬剤、フルフェナム酸、メフェナム酸などのフェナム酸系薬剤、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシンなどのアリール酢酸系薬剤、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾンなどのピラゾリジン系薬剤、ブコロームなどのピリミジン系薬剤、ピロキシカムなどのオキシカム系薬剤、イソプロピルアンチピリンなど);抗ヒスタミン薬(フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなど);鎮咳薬(例えば、リン酸コディン、リン酸ジヒドロコディン、クロペラスチン、デキストロメトルファン、ベンゾナテートなど);去痰薬(例えば、塩酸ブロムヘキシン);塩酸L−システイン、塩酸L−メチルシステイン、アセチルシステインなどの粘膜溶解液;カルボシステインなどの粘液修復薬;塩化リゾチームなどの消炎酵素剤;グリチルリチン酸などの抗炎症剤;アリルイソプロピルアセチル尿素などの催眠鎮静剤;塩酸アンブロキソールなどの粘液潤滑薬;塩酸テルビナフィンなどの抗真菌剤;気管支拡張薬又は喘息治療薬(例えばシュードエフェドリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸テルブタリン、イソプロテレノール、サルブタモール、テルブタリンなどのβ2−アドレナリン受容体刺激薬、テオフィリン、アミノフィリン、プロキシフィリンなどのキサンチン系薬剤、クロモグリク酸など);制酸剤;アミノ酸類;生薬などが例示できる。これらの薬効成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の経口医薬組成物の剤型は、経口投与固体製剤であれば特に制限されない。例えば、散剤、錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、トローチ、チュアブル錠およびドライシロップ剤などが挙げられる。また、薬効成分の放出性を制御した製剤形態を有するものであってもよい(例えば、速放性製剤、徐放性製剤など)。また、好ましくは錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)である。かかる剤型を有する製剤は、当業界の慣用法に従って調製することができる。
本発明の経口医薬組成物は、上記の経口投与形態に製剤化するため、またその安定化のために、薬学上経口投与に許容される各種の担体並びに添加剤を配合することもできる(例えば、局方または「医薬品添加物事典」(薬事日報社発行)などが参照できる。)。
経口投与剤用の担体または添加剤としては、コハク化ゼラチン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、炭酸カルシウム、カルメロースナトリウムなどの基剤;グリセリン脂肪酸エステル、大豆レシチン、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリンなどの乳化剤;乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビトール、トウモロコシデンプン、部分α化デンプン、結晶セルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウム、タルク、マクロゴール400などの賦形剤;デンプン、α−デンプン、寒天、ゼラチン、アラビアガム、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはその塩、結晶セルロースなどの結合剤;炭酸カルシウム、クロスポピドン、デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、無水ケイ酸などの滑沢剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びプルロニックなどの懸濁化剤;ポリソルベート80、ラウロマクロゴール、コレステロールなどの界面活性剤;沈降炭酸カルシウム、アラビアゴム、プルラン、カルナウバロウ、ヒドロキシプロピルメチルフタレートなどのコーティング剤;白糖、ブドウ糖、サッカリンナトリウム、ソルビトール、クエン酸、及びアスパルテームなどの矯味剤;濃グリセリン、トリアセチン、D-ソルビトールなどの可塑剤;パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クエン酸水和物などの保存剤;酸化チタン、薬用炭、銅クロロフィリンナトリウムなどの着色剤等を挙げることができる。また上記成分の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、通常医薬品の添加物として許容される安定剤、分散剤、流動化剤、緩衝剤、湿潤剤、粘稠剤、防腐剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤などの任意成分を所望に応じて添加することもできる。
本発明の経口医薬組成物は、前述する固体または液体の経口製剤(内服製剤)として調製され、投与することができる。本発明の経口医薬組成物の投与量は、患者の年齢、性別、治療すべき症状の程度、及び投与方法により左右されるが、中に含まれている(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の成人に対する1日あたりの投与量が100〜1200mg、好ましくは100〜600mg、より好ましくは150〜600mg;(b)トラネキサム酸の成人に対する1日あたりの投与量が50〜1000mg、好ましくは50〜800mg、より好ましくは100〜800mg:(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルの成人に対する1日あたりの投与量が65〜1200mg、好ましくは65〜1000mg、より好ましくは100〜1000mgを挙げることができる。この投与範囲であれば、1日に1〜数回に分けて投与することもできる。
本発明の経口医薬組成物は、好適には炎症を抑制する目的で使用することができる。しかし有効成分であるフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬、好ましくはイブプロフェンは、消炎作用に加えて、鎮痛作用および解熱作用をも有しているため、炎症を伴う疼痛や発熱に対しても、疼痛を鎮め(鎮痛)発熱を抑える(解熱)目的で使用することもできる。
本発明の経口医薬組成物、特にフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬としてイブプロフェンを含有する経口医薬組成物は、関節炎、腱鞘炎、または炎症を伴う関節痛、腰痛、頭痛、月経痛(生理痛)、歯痛、抜歯後の疼痛、打撲痛、ねんざ痛、骨折痛、外傷痛、咽喉痛、耳痛、神経痛、筋肉痛若しくは肩こりなどの末梢における炎症の改善(消炎)や鎮痛を目的として好適に使用することができる。
II.フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の胃腸粘膜障害の軽減方法
本発明の方法は、(a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、前述する(b)トラネキサム酸、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを組み合わせて使用することによって実施することができる。
対象とする(a)成分としては、前記(I)に記載する薬物を挙げることができる。好ましくは、イブプロフェン、ケトプロフェンおよびプラノプロフェンであり、より好ましくはイブプロフェンである。
当該(a)成分と組み合わせて用いられる(b)成分の割合としては、(a)成分の解毒鎮痛消炎作用に悪影響を与えることなく、(a)成分の胃粘膜障害を軽減することのできる範囲であれば、特に制限されない。例えば(a)成分100重量部に対する(b)成分の使用割合として、通常4〜1000重量部の範囲から適宜選択することができる。好ましくは8〜800重量部、より好ましくは17〜533重量部の範囲である。
また(a)成分および(b)成分と組み合わせて用いられる(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルの割合としては、3成分を併用することによって、(a)成分の解毒鎮痛消炎作用に悪影響を与えることなく、(a)成分の胃粘膜障害を軽減することのできる範囲であれば、特に制限されない。例えば(a)成分100重量部に対する(c)成分の使用割合として、通常5〜1200重量部の範囲から適宜選択することができる。好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは16〜667重量部の範囲である。
本発明の方法によれば、(a)成分に、前述する(b)成分と(c)成分とを組み合わせて使用することにより、(a)成分の作用効果の持続性を向上させながら、その副作用である胃粘膜障害を軽減することができる。よって本発明は、胃腸障害の軽減された安全性の高い経口投与形態の解熱鎮痛消炎剤を調製し、提供するために有効に利用することができる。
以下、実験例および実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
実験例1
トラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルの併用によるフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の胃粘膜障害軽減効果を、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬としてイブプロフェンを用いて評価した。
<試験試料の調製>
各試験試料(実施例1〜13、比較例1〜8)の組成を表1に示す。各試験試料は、各成分を1%アラビアゴム水溶液に懸濁して、その5mL中に含まれる各成分の量が表1に示すmg数になるように調製した。すなわち、表1は、試験試料をラット体重1kgあたり5mL投与したときの各成分のmg数を示す。
<実験方法>
(1)体重140−170gのDonryu系ラット(6週齢)(日本エスエルシー株式会社)147匹(21群×7匹)を、20〜25℃、12時間明条件−12時間暗条件、自由飲水、自由摂取の条件下で、1週間馴化させた後、18時間絶食させる。
(2)その後4時間おきに計3回、表1に記載する各試験試料(実施例1〜13、比較例1〜8)を体重1kgあたり5mLの割合で経口投与する。
(3)最終投与から4時間後に、死亡したラット数を計測するとともに、生存するラットについてはエーテルで安楽死させて、胃を摘出する。
(4)摘出した胃を切開し、撮影して、ノギスを用いて内部潰瘍形成部の長径(潰瘍長径)を測定する。
<実験結果>
各ラット群(実施例1〜13、比較例1〜8)について測定した死亡率と潰瘍長径を表1に合わせて示す。
Figure 2009242365
この結果から、イブプロフェン単独投与によって胃粘膜障害が生じること(比較例1)、このイブプロフェンにトラネキサム酸を併用することによってイブプロフェンの胃粘膜障害が増大すること(比較例2)がわかる。また、乾燥水酸化アルミニウムゲルは、イブプロフェンによる胃粘膜障害に対しては保護効果に欠けることが分かる(比較例3、5〜8)。比較例4は、従来、イブプロフェンと併用されることが多い成分との組み合わせであるが(消炎鎮痛薬、トラネキサム酸および無水カフェイン)、この場合も、胃粘膜障害が増大することが分かった。これに対して、イブプロフェンにトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルの両方を組み合わせると、個々の併用では改善がみられなかったイブプロフェンの胃粘膜障害が顕著に軽減し改善することが判明した。また、全く死に至る個体の見られず、潰瘍長径も小さい格別顕著な結果も得られた。
これらのことから、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬であるイブプロフェンにトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルを組み合わせることにより、イブプロフェンが有する胃粘膜障害といった副作用の発生を防止できることが判明した。
したがって、本発明の経口医薬組成物によれば、従来のフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬によって発生していた胃粘膜障害などの副作用を生じることがないため、重篤な疼痛や発熱時に服用間隔をこれまでよりも短く(例えば、服用間隔4時間未満)したり、服用量を多くしたりすることが可能であることが判明した。
実験例2
本発明の経口医薬組成物におけるフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の効果の持続性を評価するために、抗炎症作用を指標として下記の実験を行った。なお、フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬としてイブプロフェンを用いた。
<試験試料の調製>
各試験試料(実施例1、比較例1、3、9および10)の組成を表2に示す。各試験試料は、各成分を1%アラビアゴム水溶液に懸濁して、その5mL中に含まれる各成分の量が表2に示すmg数になるように調製した。すなわち、表2は、試験試料をラット体重1kgあたり5mL投与したときの各成分のmg数を示す。
Figure 2009242365
<実験方法>
(1)体重120g前後のWistar系ラット(6週齢)(日本エスエルシー株式会社)35匹(5群×7匹)を、20〜25℃、12時間明条件−12時間暗条件、自由飲水、自由摂取の条件下で、1週間馴化させた後、15時間絶食させた。
(2)その後、表2に記載する各試験試料(実施例1、比較例1、3、9および10)を体重1kgあたり5mLの割合で経口投与した。
(3)経口投与から60分後に、足体積(注射直前の足体積)を測定するとともに、炎症惹起物質(カラゲニン)を当該足の裏の膨らみ部分に注射した。
(4)注射から1.5、3および5時間後に足体積を測定した(注射後の足体積)。
注射前と注射後の各時点で測定した足容積から、下式に従って浮腫率を算出した。
Figure 2009242365
なお、コントロールとして、試験試料を投与しないラット群(7匹)(無処置群)に対しても(3)〜(4)の実験を行い、浮腫率を算出した。
<実験結果>
各被験動物〔試験試料(実施例1、比較例1、3、9および10)投与群、無処理群〕について、経時的に浮腫率(%)を算出した結果を、図1に示す。図1から、イブプロフェンにトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用することによって(実施例1)、浮腫(浮腫率の上昇)を長期にわたって抑制することができることがわかる。
通常、イブプロフェンの血中最高濃度到達期は服用後1時間、生物学的半減期は2時間であり、トラネキサム酸の血中最高濃度到達期は服用後2時間、生物学的半減期は3時間である。つまり、薬効は服用後1〜2時間で最大に達し、2〜3時間で半減し、その後暫時低減する。これに反して、イブプロフェンにトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用すると、図1に示すように3時間を超えても薬効が維持された。このことから、イブプロフェンにトラネキサム酸と乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用することによって、イブプロフェンの作用効果が持続的に維持されることがわかる(持続性の付与)。
処方例1〜28:軟カプセル剤
表3および4に記載の処方例に従い、軟カプセル剤を調製した(処方例1〜28)。具体的には中鎖脂肪酸トリグリセリドに、グリセリン脂肪酸エステルを溶解・混合した後、有効成分を均一に懸濁させた内容物を、ゼラチンに適切な可塑剤、保存剤、着色剤を加えて、製したカプセル剤皮に充てんし、軟カプセル剤を得た。
Figure 2009242365
Figure 2009242365
処方例29:顆粒剤
表5の処方例29に従って顆粒剤を調製した。具体的には、表5の処方例29に示す全成分を押し出し造粒法により造粒し、乾燥後整粒して顆粒剤を得た。
処方例30:錠剤
表5の処方例30に従って錠剤を調製した。具体的には、表5の処方例30に示す全成分を回転式の打錠機で打錠し錠剤を得た。
処方例31:硬カプセル剤
表5の処方例31に従って硬カプセル剤を調製した。具体的には、表5の処方例31に示す全成分を常法により硬カプセル剤を得た。
Figure 2009242365
実験例2において、試験物質投与群(実施例1、比較例1、3、9〜10)および無処置群について、カラゲニン接種後の経時的な浮腫率(%)を対比したグラフを示す。

Claims (5)

  1. (a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬、(b)トラネキサム酸、及び(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有することを特徴とする経口医薬組成物。
  2. (a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬がイブプロフェンである請求項1または2に記載する経口医薬組成物。
  3. 解熱鎮痛消炎剤である請求項1乃至2のいずれかに記載する経口医薬組成物。
  4. (a)フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬に、(b)トラネキサム酸、および(c)乾燥水酸化アルミニウムゲルを併用することを特徴とする、当該フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬の胃粘膜障害を軽減する方法。
  5. フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛薬がイブプロフェンである請求項4に記載する方法。
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