JP2009121861A - センサーチップとそれを用いた標的物質検出法 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗体等を担持させた粒子を含む分析試薬を用いて試料液中の特定物質を分析するセンサーチップにおいて、標的が高濃度あるいは低濃度の場合に2つの測定手法を選択し、広い濃度幅で測定値を算出するための測定方法を提供する。
【解決手段】抗体等を担時させた粒子をフィルターに含浸させ、粒子を含む試薬の溶解とともに発生した凝集体をフィルターに捕捉し、フィルターから流出する粒子数を計測することで、標的物質の定量を行う。あるいは低濃度で流出粒子数が少ない場合には第2の測定手法を選択することで、広い濃度幅で測定値を算出する。
【選択図】図5
【解決手段】抗体等を担時させた粒子をフィルターに含浸させ、粒子を含む試薬の溶解とともに発生した凝集体をフィルターに捕捉し、フィルターから流出する粒子数を計測することで、標的物質の定量を行う。あるいは低濃度で流出粒子数が少ない場合には第2の測定手法を選択することで、広い濃度幅で測定値を算出する。
【選択図】図5
Description
本発明は、液体試料中の特定物質の分析、特に免疫学的反応を用いた分析装置に関する。
医療などの分野において、生体中の特定物質の存在及びその量を分析することは有益である。中でも、分析対象物質に特異的に反応する抗体を用いた免疫学的分析法は最もよく用いられる方法の一つである。免疫学的分析法には、反応の検出方法により様々な測定法が存在する。例えば、標識物質を抗体に連結させた試薬を用い抗原抗体反応が生じたかどうかを標識物質により検知する標識免疫測定法が知られている。
標識免疫測定法は、標識物質に酵素、蛍光物質、放射性同位体を用いた方法が知られている。これらはそれぞれ、酵素免疫測定法、蛍光物質標識免疫測定法、放射線免疫測定法と呼ばれている。また、抗体を担持させた粒子状試薬を用い、抗原抗体反応が生じたかどうかを粒子状試薬の凝集状態により検知する、凝集反応に基づく免疫測定法が知られている。この代表的なものとしてラテックス粒子を用いるラテックス凝集法等がある。
標識免疫測定法は高精度の分析が可能であるが、用いる試薬が不安定であることや、測定時間が比較的長いという問題がある。一方、凝集反応にもとづく免疫測定法であるラテックス凝集法は、分析精度はあまり高くないものの、測定時間が比較的短いという利点を有している。
ラテックス凝集法は次のように行われる。まず、分析対象物質に特異的に反応する抗体をラテックス粒子に担持(固定)する。当該ラテックス粒子と試料を反応させ、試料中に含まれる分析対象物質とラテックス粒子に担持された抗体を反応させる(抗原抗体反応)。当該反応の進行に従いラテックス粒子は凝集するので、その凝集塊を光学的に検出して分析対象物の濃度を測定する。
この方法における測定精度・測定時間は、用いるラテックス粒子の粒子径により異なる。ラテックス粒子径が大きければ測定精度は高くなるが、測定時間が長くなる。粒子径が小さければ測定精度は低くなるが、測定時間が短くなる。通常、当該方法で用いられるラテックス粒子の粒子径は数百nmであり、測定可能な領域はnM程度である。
ラテックス凝集法はいくつかの改良方法が報告されている。特許文献1には、ラテックス粒子の代わりに粒径200Å〜2μmの磁性粒子を用い、試料液中で粒子が凝集する際に外部磁場を適用して凝集を促進させる方法が開示されている。この方法によれば測定は10分程度で行うことができる。
特許文献2には粒径0.5μm〜10μmのラテックス粒子を用い、試料液に交流電圧を印加して電場をかけることにより、粒子を一直線上に並べる方法が開示されている。この方法によれば1分で全粒子の90%を凝集させることが可能である。
生体中の特定物質の存在及びその量を分析する様々な方法が存在する中で、分析対象物特異的に反応する物質を担時させた粒子は、凝集法以外にも広く汎用させている。粒子を用いることで反応場面積を増やすことができ、高感度化にもつながるからである。例えば、特許文献3には、粒子と標的物質との反応または相互作用を、フィルターを使って検出する方法が開示されている。しかし、未反応粒子を含む粒子群から対象と結合した粒子の選別操作を標識酵素などで行うなどの操作が必要となる。見かけ上の未反応粒子はバックグラウンド成分であり、計測の対象ではない。
ラテックス凝集反応を特許文献3のように行えば、フィルター上に既反応粒子のみを残し、未反応粒子のみを洗い流すことは可能かもしれない。しかし、その場合も未反応粒子はバックグラウンド成分であり、計測の対象とはならない。
未反応粒子を計測することによっても種々の情報が得られることは明らかである。凝集体量が分析対象物濃度を反映するのと同様に、未反応粒子の減少量も濃度を反映する。また、未反応粒子が多く存在した場合に、これを次のさらに高感度な測定系に送るなど段階的な反応系構築による高感度化への応用を考えれば、未反応粒子計測の重要性は明らかであるにも関わらず、このような手法の報告はこれまでなかった。
特開昭62−287159号公報
特開平7−83928号公報
特開昭63−270000号公報
これまで、ラテックス凝集反応では凝集を形成しない粒子の計測はほとんど行われていなかった。このような未反応粒子の計測によって、測定系に重要な情報が得られると期待される。
ところで抗体等の物質を担持させた粒子を試薬として用いた分析チップでは、試薬の保存安定性を保持するために前記粒子を分析チップに乾燥状態で配置することがある。ラテックス粒子を含む試薬を乾燥処理すると、ラテックス粒子は見かけ上凝集した状態となる。ここで試料液による溶解を行えば、検体に含まれる標的物質により抗体を担持した粒子は抗原抗体反応により凝集体を形成する。前記粒子を乾燥状態で配置した分析チップを使用した場合、特に試薬設置部と測定部を別にもつ分析チップの場合、試薬の溶解時点で凝集体が発生すると測定部へ達する粒子数が減少することがある。粒子数が減少していれば、その後の測定によって正確な測定値が算出できない恐れがある一方で、粒子の減少量から標的物質の量を推定することも可能と考えられる。
また、粒子の減少数により標的物質定量が出来ない場合でも、この粒子をさらに高感度な測定系に移すことは容易に行えるため、微量の標的検出も可能と考えられる。そのため、標的が高濃度存在する場合には、高感度測定前の粒子数変化により定量測定を行い、標的が低濃度であれば、高感度測定により定量測定を行うという2つの測定手法の選択を容易に行うことができる。逆に、粒子数による高感度測定可否判断を事前に行うとも言える。
前述したように、従来の分析チップにおいては、ラテックス凝集反応の未反応粒子を計測することが行われておらず、その利点を充分に生かしきれていないという課題があった。
本発明は前記従来の課題を解決するものであり、抗体等を担持させた粒子を含む分析試薬を用いて試料液中の特定物質を分析するセンサーチップにおいて、標的が高濃度あるいは低濃度の場合に2つの測定手法を選択し、広い濃度幅で測定値を算出するための測定方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、抗体等を担時させた粒子をフィルターに含浸させることで、粒子を含む試薬の溶解とともに発生した凝集体を捕捉することに着眼し、本発明を完成させた。すなわち前記課題は、以下の本発明のセンサーチップとそれを用いた標的物質検出法により解決される。
(1)本発明は、少なくとも2つの基板と、前記基板間に配置されるスペーサーと、前記基板と前記スペーサーにより構成される空間を保持し、
前記空間には、検体点着部とフィルター設置部と、検出部を含むセンサーチップであり、
前記不溶性担体粒子には、標的認識分子が化学的または物理的に結合されており、
前記多孔質フィルターには、上記不溶性担体粒子が担時されていることを特徴とするセンサーチップである。
前記空間には、検体点着部とフィルター設置部と、検出部を含むセンサーチップであり、
前記不溶性担体粒子には、標的認識分子が化学的または物理的に結合されており、
前記多孔質フィルターには、上記不溶性担体粒子が担時されていることを特徴とするセンサーチップである。
また、本発明は本発明による検体中標的物質を検出する方法は、(1)記載のセンサーチップにより、
a)検体を検体点着部に点着する工程
b)検体がフィルター設置部に設置されたフィルターに達し、不溶性担体と混合する工程
c)検体と一部の不溶性担体が検出部へ流出する工程
d)検出部で不溶性担体の個数を計測する工程
を含む標的物質検出法。
a)検体を検体点着部に点着する工程
b)検体がフィルター設置部に設置されたフィルターに達し、不溶性担体と混合する工程
c)検体と一部の不溶性担体が検出部へ流出する工程
d)検出部で不溶性担体の個数を計測する工程
を含む標的物質検出法。
(2)本発明による検体中標的物質を検出する方法は、(1)記載のセンサーチップにより、
a)検体を検体点着部に点着する工程
b)検体がフィルター設置部に設置されたフィルターに達し、不溶性担体と混合する工程
c)検体と一部の不溶性担体が検出部へ流出する工程
d)検出部で不溶性担体の個数を計測する工程
e)検出部でパルスイムノアッセイにより不溶性担体の凝集体個数を計測する工程
を含む、標的物質検出法である。
a)検体を検体点着部に点着する工程
b)検体がフィルター設置部に設置されたフィルターに達し、不溶性担体と混合する工程
c)検体と一部の不溶性担体が検出部へ流出する工程
d)検出部で不溶性担体の個数を計測する工程
e)検出部でパルスイムノアッセイにより不溶性担体の凝集体個数を計測する工程
を含む、標的物質検出法である。
本発明は、抗体等を担時させた粒子をフィルターに含浸させ、粒子を含む試薬の溶解とともに発生した凝集体をフィルターに捕捉し、フィルターから流出する粒子数を計測することで、標的物質の定量を行う。あるいは低濃度で流出粒子数が少ない場合には第2の測定手法を選択することで、広い濃度幅で測定値を算出することを可能とするものである。
本発明のセンサーチップは、少なくとも2つの基板と、前記基板間に配置されるスペーサーと、前記基板と前記スペーサーにより構成される空間を保持し、
前記空間には、検体点着部とフィルター設置部と、検出部を含むセンサーチップであり、
前記不溶性担体粒子には、標的認識分子が化学的または物理的に結合されており、
前記多孔質フィルターには、上記不溶性担体粒子が担時されていることを特徴とするセンサーチップである。本発明のセンサーチップの分析対象は液体試料であり、より詳しくは液体試料中に存在する特定物質である。液体試料は特に限定されないが、その例には生体から採取した血液等が含まれる。
前記空間には、検体点着部とフィルター設置部と、検出部を含むセンサーチップであり、
前記不溶性担体粒子には、標的認識分子が化学的または物理的に結合されており、
前記多孔質フィルターには、上記不溶性担体粒子が担時されていることを特徴とするセンサーチップである。本発明のセンサーチップの分析対象は液体試料であり、より詳しくは液体試料中に存在する特定物質である。液体試料は特に限定されないが、その例には生体から採取した血液等が含まれる。
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明のセンサーチップの第一の態様を示す分解斜視図である。図中、11はセンサーチップであり、親水性上基板33、基板3、親水性下基板333、フィルター固定用スペーサー4、フィルター厚み調節用スペーサー44、検出部スペーサー、多孔質フィルター2を含む。親水性上基板33には、空気孔8が形成されている。
図1は、本発明のセンサーチップの第一の態様を示す分解斜視図である。図中、11はセンサーチップであり、親水性上基板33、基板3、親水性下基板333、フィルター固定用スペーサー4、フィルター厚み調節用スペーサー44、検出部スペーサー、多孔質フィルター2を含む。親水性上基板33には、空気孔8が形成されている。
図2は、本発明のセンサーチップの第一の態様を示すセンサー断面図である。図1の分解斜視図により構成されるセンサーチップと同一である。センサーチップ11は親水性上基板33と基板3との間に、スペーサー444により中空構造となり、ここに検出部7が形成されている。親水性上基板33と親水性下基板333とフィルター固定用スペーサー4との間には、フィルター設置部6が形成され、多孔質フィルター2の一部がフィルター固定用スペーサー4に接するように設置されている。多孔質フィルター2には、不溶性担体粒子1が担時されている。親水性上基板33と親水性下基板333の間には、スペーサー444、基板3、フィルター厚み調節用スペーサー44、フィルター固定用スペーサー4により空洞が形成され、ここに検体点着部5が形成されている。
以下に図面を参照し本発明について詳細に説明する。
前記の通り、本発明のセンサーチップは液体試料を充填するための空間を有する。当該空間の内壁面には検体点着部、フィルター設置部、検出部が設けられる。センサーチップは単に「チップ」とも呼ばれる。チップの形状には制限はないが、直方体であることが好ましい。
検体点着部はチップの一端に設けられることが好ましい。空間の形状は制限されないが例えば直方体であることが好ましい。液体試料は当該空間に毛細管現象によって充填される。毛細管現象は液体試料を導入する空間の形状に影響を受けることが知られている。このため本液体試料チップの前記空間は、断面が四角形である場合、断面の幅が0.5〜5mm、高さが5〜500μmであることが好ましい。当該空間の内壁を形成する材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリカーボネート等のポリマーフィルムが好ましい。上記材料は、表面性質が親水性であればよく、界面活性剤で処理されていてもよい。界面活性剤には公知のものが用いられる。また、スペーサーは、両面粘着性であればよく、例えば、ポリエステルフィルムの両面がアクリル系粘着剤で処理された両面粘着テープなど、汎用の両面テープを用いることができる。
フィルター設置部は検体点着部に接するように設けられていることが好ましい。多孔質フィルター2の形状には制限はないが、直方体や立方体、三角柱が使用しうる。好ましくは三角柱である。多孔質フィルター2は、その孔径が、不溶性担体粒子1の一粒子の直径よりも大きく、複数粒子による会合体の、一端から一端を結ぶ最短距離の最大値よりも小さいことが好ましい。ここで、複数粒子による会合体とは、2つ以上の不溶性担体1がこれら粒子間の接点において、疎水相互作用、静電相互作用、水素結合、ファンデルワールス力などの力により結合した状態の粒子のことを示す。不溶性担体粒子1は、直径0.5μm〜5μmを用いることが好ましく、したがって、多孔質フィルター2の孔径は、1μm〜25μmであることが好ましい。また、不溶性担体粒子1はさらに好ましくは1μm〜2.5μmであることが好ましく、そのときの多孔質フィルター2の孔径は2μm〜5μmであることが好ましい。特に、不溶性担体粒子1が3つの会合体までは流出し、それ以上粒子数による会合体を捕捉する形態が好ましい。
不溶性単体粒子(単に「粒子」ともいう。)には、市販の生化学用ビーズを用いることができるが、好ましくはラテックスである。粒子の直径に関しては、(2)フィルター設置部で述べたので、ここでは省略する。粒子表面には、液体試料中の特定成分に特異的に結合する物質が担持されている。
「液体試料中の特定成分に特異的に結合する物質」とは、液体試料中の特定成分(分析対象物)の特定部位を認識して当該部位に結合できる物質をいう。このような物質の例には抗体、抗原、受容体、酵素、核酸、ペプチドなどの生体高分子が含まれる。本発明においては、「液体試料中の特定成分に特異的に結合する物質」は「抗体」であることが好ましい。抗体には公知のものを用いることができる。その例には抗アルブミン抗体、抗HCG抗体、抗IgA抗体、抗IgM抗体、抗IgE抗体、抗IgD抗体、抗AFP抗体、抗DNT抗体、抗プロスタグランジン抗体、抗ヒト凝固ファクター抗体、抗CRP抗体、抗HBs抗体、抗ヒト成長ホルモン抗体、抗ステロイドホルモン抗体等が含まれる。抗原の例にはアルブミン、HCG、IgA、IgM、IgE、IgD、AFP、DNT、プロスタグランジン、ヒト凝固ファクター、CRP、HBs、ヒト成長ホルモン、ステロイドホルモン等が含まれる。
「粒子表面に粒子に液体試料中の特定成分に特異的に結合する物質を担持する」とは、粒子表面に化学的あるいは物理的に前記物質を結合させることをいう。例えば、前記物質と粒子を、シランカップリング剤等を用いて化学的に結合して得ることができる。本粒子を含む試薬、粒子を含む多孔質フィルターは、「液体試料中の特定成分に特異的に結合する物質」の保存性を高めるために他の試薬を含んでいてもよい。このような試薬の例には糖類等が含まれる。また、本粒子を含む試薬、粒子を含む多孔質フィルターには、測定に適した条件に調節するための緩衝液成分を含んでいても良い。これら粒子と試薬を含む多孔質フィルターは、乾燥状態にある。これにより分析試薬の保存安定性を高めることもできるからである。
本発明のセンサーチップの検出部は、親水性上基板33と基板3との間に、スペーサー444により中空構造となっている。当該空間の内壁を形成する材料は(1)検体点着部での記載とほぼ同様であり、相違点のみ述べる。親水性上基板33は、あるいは親水性上基板33と基板3の両方は、内部空間に存在する粒子像を顕微鏡で観察できる程度に透明性が高いものを用いる。また、スペーサー444の厚みは、不溶性担体粒子直径の3〜5倍が好ましい。これにより粒子像の観察を容易に行うことができる。
次に本発明の実施の形態1によるセンサーチップを用いた、検体中標的物質を検出する方法を述べる。
検体を検体点着部に点着すると、検体は毛細管力により内部に浸透し、フィルター設置部に到達する。フィルターには不溶性担体粒子とその他試薬が乾燥状態で含まれており、検体がフィルターに到達し、浸透するに従い、粒子及び試薬が検体中に溶解する。粒子表面には抗体が担時されているため、抗体と結合する標的物質が検体内に存在すれば抗体との結合反応を起こす。標的物質がその分子内に複数の抗体認識部位を持っていれば、標的物質1分子に対して複数の抗体が結合する。そのため、標的物質を介在して複数の抗体担粒子が結合する。粒子はフィルター内に含浸されているため、粒子が複数結合した会合体は、フィルター内から外に流出しづらくなる。検体は毛細管力により、フィルターを通過し検出部に至るが、会合体はフィルターに留まり、粒子単体は検体とともに検出部に至る。検出部まで至る粒子数を計測することで、フィルター内で発生した粒子会合体量、ひいては検体内の標的物質濃度を計測する。本発明において、標的物質は抗体に対する抗原である。
(実施の形態2)
図3は、本発明のセンサーチップの第2の態様を示す分解斜視図である。主な構成は実施の形態1と同様であり、相違点のみを記載する。基板3には一対の平行電極対9が形成されており、この平行電極対9は検出部となるチップ内部空間にその一部が露出している。電極の作製は、スパッタリングや蒸着を用いることができ、電極素材には、金や銀などを用いることができる。
図3は、本発明のセンサーチップの第2の態様を示す分解斜視図である。主な構成は実施の形態1と同様であり、相違点のみを記載する。基板3には一対の平行電極対9が形成されており、この平行電極対9は検出部となるチップ内部空間にその一部が露出している。電極の作製は、スパッタリングや蒸着を用いることができ、電極素材には、金や銀などを用いることができる。
図4には、本発明のセンサーチップの第2の態様を示すセンサー断面図を示す。基板3に形成されたそれぞれの平行電極の検体点着部と反対側の一端は、外部に露出しており、電源装置との接続を行うことができる。
次に本発明の実施の形態2によるセンサーチップを用いた、検体中標的物質を検出する方法を述べる。
検体を検体点着部に点着すると、検体は毛細管力により内部に浸透し、フィルター設置部に到達する。フィルターには体粒子とその他試薬が乾燥状態で含まれており、検体がフィルターに到達し、浸透するに従い、粒子及び試薬が検体中に溶解する。粒子表面には抗体が担時されているため、抗体と結合する抗原が検体内に存在すれば抗体との結合反応を起こす。抗原がその分子内に複数の抗体認識部位を持っていれば、抗原1分子に対して複数の抗体が結合する。そのため、抗原を介在して複数の粒子が結合する。粒子はフィルター内に含浸されているため、粒子が複数結合した会合体は、フィルター内から外に出づらくなる。しかし、抗原濃度が低ければ、粒子は会合体を形成する間もなくフィルターから流出し、粒子単体は検体とともに検出部に至る。検出部まで至った粒子数を計測し、粒子数が充分に多ければ、検出部で不溶性担体の個数を計測する工程、すなわちパルスイムノアッセイを行い、抗原濃度を計測する。粒子数が充分に多い条件とは、例えば1分間で全粒子の80%以上が2つ以上の会合体を形成するための粒子間距離を実現する数、といった測定要件によって測定項目に合わせて決定することもできる。逆に、粒子数の不足によるパルスイムノアッセイの測定エラーを検知する手法とすることもできる。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明する。
(実施例1)
ワットマンジャパン(株)より購入した、厚み0.37mmのフィルター(Fusion5、最大孔径11μm)を、体積1.25m2となるようにせん断した。
ワットマンジャパン(株)より購入した、厚み0.37mmのフィルター(Fusion5、最大孔径11μm)を、体積1.25m2となるようにせん断した。
Bangs Laboratories, Inc.製の2μmのポリスチレン粒子に、マウス由来抗ヒトCRP(環状AMP受容タンパク質)モノクローナル抗体を担持した。この粒子0.4%(w/w)を、5%トレハロースを含む0.02Mグリシン緩衝液(pH8.6)に分散させた。この分散液1.25μLを前記せん断したフィルターに滴下し、シリカゲル存在下、ガラスデシケーター内で一晩以上乾燥を行った。
この粒子を含むフィルターをスライドガラスに載せ、様々な濃度のCRPを含む液1.25μmを滴下し、60秒後放置した。その後、カバーガラスをフィルターの一端に接するようにおき、フィルターの他端に緩衝液をさらに1.25μm添加してフィルター内の粒子をカバーガラスの方へ押し流した。このスライドガラス上に観察できる粒子数を顕微鏡により観察した。顕微鏡の一視野は0.2mm×0.3mmであり、その視野内に見られる粒子数を計測した。その結果を図5に示す。フィルターから開放された粒子数は、抗原濃度に依存して減少を示すことが確認された。
(実施例2)
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレートで親水性上基板33と親水性下基板333を作製し、また、厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート製の基板3を作製した。厚み0.01mmの面粘着シールでスペーサー4を、厚み0.1mmの両面粘着シールを2枚重ねてフィルター厚み調節用スペーサー44とした。検出部スペーサー444は、厚み0.01mm、検出部の幅が0.8mmとなる形状とした。平行電極対9は電極間が0.5mmとし、検出部には一方0.15mmずつの電極が露出することになる。フィルター設置部は、基板3の0.1mmと、フィルター厚み調節用スペーサー44の0.2mmと0.01mmのスペーサー4からなり、厚さは計0.31mmとなる。フィルター設置部形状は、せん断したフィルター形状に合わせて構成した。これらを用いて親水性上基板33のみを除き、チップを作製した。
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレートで親水性上基板33と親水性下基板333を作製し、また、厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート製の基板3を作製した。厚み0.01mmの面粘着シールでスペーサー4を、厚み0.1mmの両面粘着シールを2枚重ねてフィルター厚み調節用スペーサー44とした。検出部スペーサー444は、厚み0.01mm、検出部の幅が0.8mmとなる形状とした。平行電極対9は電極間が0.5mmとし、検出部には一方0.15mmずつの電極が露出することになる。フィルター設置部は、基板3の0.1mmと、フィルター厚み調節用スペーサー44の0.2mmと0.01mmのスペーサー4からなり、厚さは計0.31mmとなる。フィルター設置部形状は、せん断したフィルター形状に合わせて構成した。これらを用いて親水性上基板33のみを除き、チップを作製した。
ワットマンジャパン(株)より購入した、厚み0.37mmのフィルター(Fusion5、最大孔径11μm)を、体積1.25m2となるようにせん断した。これをフィルター設置部6に合わせて設置し、スペーサー4により固定した。
Bangs Laboratories, Inc.製の2μmのポリスチレン粒子に、マウス由来抗ヒトCRP(環状AMP受容タンパク質)モノクローナル抗体を担持した。この粒子0.4%(w/w)を含む粒子分散液を前記せん断したフィルターに滴下し、シリカゲル存在下、ガラスデシケーター内で一晩以上乾燥を行った後、親水性上基板を載せてセンサーチップを完成した。このチップに、様々な濃度のCRPを含む液を検体点着部5が満たされるように点着し、粒子を検体とともに検出部に送った。検出部に送られた粒子数を、顕微鏡の一視野あたり粒子数として計測した。その結果を図6に示す。また、パルスイムノアッセイにより、標的物質濃度を計測した結果を図7に示す。フィルターから開放された粒子数は、抗原濃度に依存して減少する傾向が見られ、パルスイムノアッセイの結果から、抗原濃度依存的な凝集率増加が見られた。これら結果を組み合わは、本発明による2手法による抗原定量を示す。
本発明は、抗体等を担時させた粒子をフィルターに含浸させ、粒子を含む試薬の溶解とともに発生した凝集体をフィルターに捕捉し、フィルターから流出する粒子数を計測することで、標的物質の定量を行う。あるいは低濃度で流出粒子数が少ない場合には第2の測定手法を選択することで、広い濃度幅で測定値を算出することを可能とするもので、液体試料中の特定物質の分析、特に免疫学的反応を用いた分析装置等に有用である。
1 不溶性単体粒子
11 センサーチップ
2 多孔質フィルター
3 基板
33 親水性上基板
333 親水性下基板
4 フィルター固定用スペーサー
44 フィルター厚み調節用スペーサー
444 検出部スペーサー
5 検体点着部
6 フィルター設置部
7 検出部
8 空気孔
9 平行電極対
11 センサーチップ
2 多孔質フィルター
3 基板
33 親水性上基板
333 親水性下基板
4 フィルター固定用スペーサー
44 フィルター厚み調節用スペーサー
444 検出部スペーサー
5 検体点着部
6 フィルター設置部
7 検出部
8 空気孔
9 平行電極対
Claims (8)
- 少なくとも、不溶性担体粒子と、多孔質フィルターと、
少なくとも2つの基板と、前記基板間に配置されるスペーサーと、前記基板と前記スペーサーにより構成される空間を保持し、
前記空間は、検体点着部とフィルター設置部と、検出部とを含むセンサーチップがあり
前記不溶性担体粒子は標的認識分子が化学的または物理的に結合されており、
前記多孔質フィルターは上記不溶性担体粒子が担時されていることを特徴とするセンサーチップ。 - 前記多孔質フィルターの孔径は前記不溶性担体粒子の一粒子の直径よりも大きく、
前記不溶性担体粒子の複数粒子による会合体の、一端から一端を結ぶ最短距離の最大値よりも小さいことを特徴とする請求項1記載のセンサーチップ。 - 前記多孔質フィルターの孔径は1μm〜25μm、より好ましくは2μm〜5μmである請求項1記載のセンサーチップ。
- 前記不溶性担体粒子の直径は0.5μm〜5μmである請求項1記載のセンサーチップ。
- 不溶性担体が担時されている前記多孔質フィルターは乾燥下にあることを特徴とする請求項1記載のセンサーチップ。
- 前記検出部を構成する空間内は少なくとも1対の平行電極を含む請求項1記載のセンサーチップ。
- 請求項1記載のセンサーチップにより、検体中標的物質を検出する方法であって、
a)検体を検体点着部に点着する工程
b)検体がフィルター設置部に設置されたフィルターに達し、不溶性担体と混合する工程
c)検体と一部の不溶性担体が検出部へ流出する工程
d)検出部で不溶性担体の個数を計測する工程
からなる標的物質検出法。 - 請求項1記載のセンサーチップにより、検体中標的物質を検出する方法であって、
a)検体を検体点着部に点着する工程
b)検体がフィルター設置部に設置されたフィルターに達し、不溶性担体と混合する工程
c)検体と一部の不溶性担体が検出部へ流出する工程
d)検出部で不溶性担体の個数を計測する工程
e)検出部でパルスイムノアッセイにより不溶性担体の凝集体個数を計測する工程
からなる標的物質検出法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007293936A JP2009121861A (ja) | 2007-11-13 | 2007-11-13 | センサーチップとそれを用いた標的物質検出法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007293936A JP2009121861A (ja) | 2007-11-13 | 2007-11-13 | センサーチップとそれを用いた標的物質検出法 |
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JP2009121861A true JP2009121861A (ja) | 2009-06-04 |
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ID=40814177
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2007293936A Pending JP2009121861A (ja) | 2007-11-13 | 2007-11-13 | センサーチップとそれを用いた標的物質検出法 |
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2007
- 2007-11-13 JP JP2007293936A patent/JP2009121861A/ja active Pending
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