しかしながら、上述した技術のように遮光膜を形成する場合には、遮光膜として機能する層に加えて、例えば遮光膜と他の層との間に形成される絶縁膜の層やパターニングのための保護膜の層などを設けるため、装置における層構造が複雑化してしまう。よって、製造工程の複雑化や製造コストの増大を招いてしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、簡易な構成で、トランジスタにおける効果的な遮光を実現可能な電気光学装置、及び該電気光学装置の製造方法、並びに該電気光学装置を備えた電子機器を提供することを課題とする。
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板と、該基板上において、互いに交差して延在するデータ線及び走査線と、前記データ線及び前記走査線の交差に対応して規定される画素毎に設けられた画素電極と、チャネル領域、前記データ線に電気的に接続されたデータ線側ソースドレイン領域、前記画素電極に電気的に接続された画素電極側ソースドレイン領域、前記チャネル領域及び前記データ線側ソースドレイン領域間に形成された第1の接合領域、前記チャネル領域及び前記画素電極側ソースドレイン領域間に形成された第2の接合領域、並びに前記画素電極側ソースドレイン領域の第2の接合領域に対向しない側に形成された容量下部電極を有する半導体層と、前記基板上で平面的に見て、前記半導体層における、前記チャネル領域を除くと共に前記容量下部電極を含む部分を覆うように設けられた容量絶縁膜と、前記容量絶縁膜の上層において、前記基板上で平面的に見て、前記半導体層における、前記チャネル領域及び前記容量下部電極を除くと共に前記第1の接合領域及び前記第2の接合領域を含む部分を覆うように設けられた部分絶縁膜と、前記容量絶縁膜を介して、前記容量下部電極と蓄積容量を構築する容量上部電極と、前記チャネル領域にゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極とを備える。
本発明の電気光学装置によれば、その動作時に、例えばデータ線から画素電極への画像信号の供給が制御されつつ走査線から走査信号が供給され、所謂アクティブマトリクス方式による画像表示が可能となる。尚、画像信号は、データ線及び画素電極間に電気的に接続されたスイッチング素子であるトランジスタが走査線から供給される走査信号に応じてオンオフされることによって、所定のタイミングでデータ線からトランジスタを介して画素電極に供給される。画素電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料からなる透明電極であり、データ線及び走査線の交差に対応して、基板上において表示領域となるべき領域にマトリクス状に複数設けられる。
上述したトランジスタは、チャネル領域、データ線側ソースドレイン領域、画素電極側ソースドレイン領域、チャネル領域及びデータ線側ソースドレイン領域間に形成された第1の接合領域(例えば、LDD領域)、チャネル領域及び画素電極側ソースドレイン領域間に形成された第2の接合領域(例えば、LDD領域)、並びに画素電極側ソースドレイン領域の第2の接合領域に対向しない側に形成された容量下部電極を有する半導体層と、チャネル領域に対向配置されたゲート電極と、半導体層及びゲート電極間に配置されたゲート絶縁膜とによって構築されている。
ここで本発明では特に、基板上で平面的に見て、半導体層におけるチャネル領域を除くと共に容量下部電極を含む部分を覆うように容量絶縁膜が設けられている。そして、この容量絶縁膜を介して容量下部電極と対向するように、容量上部電極が設けられている。即ち、容量下部電極及び容量上部電極は、容量絶縁膜を介して蓄積容量を構築している。このように蓄積容量を構築すれば、半導体層が容量下部電極を有している分、全体としての層の数を少なくして、同様の機能を有する装置を実現することができる。即ち、例えば半導体層と別層で蓄積容量を構築する場合と比較して、装置における層構造を簡易なものとすることが可能である。
本発明では更に、容量絶縁膜の上層において、基板上で平面的に見て、半導体層における、チャネル領域及び容量下部電極を除くと共に第1の接合領域及び第2の接合領域を含む部分を覆うように部分絶縁膜が設けられている。
仮に、ゲート電極を、第1及び第2の接合領域に対して、例えばゲート絶縁膜の膜厚程度まで近接させると、この電極部分又は配線部分が接合領域に対して、大なり小なりゲート電圧と同電位を印加する電極として機能してしまう。即ち、接合領域でも想定外のキャリア密度の変化が発生してしまう。このため、本来は、チャネル領域にゲート電圧が印加されてチャネルが形成されることが想定されている薄膜トランジスタにおける、リーク電流の発生、オンオフ閾値の変化等につながってしまう。
しかるに本発明では特に、部分絶縁膜が設けられているため、ゲート電極と第1及び第2の接合領域とが、上述したようなリーク電流の発生、オンオフ閾値の変化等を生ずるまでに近接されない。よって、トランジスタにおける動作不良を効果的に防止することが可能である。
ここで特に、部分絶縁膜は、例えば二酸化ケイ素(SiO2)等の酸化膜からなり、エッチング等によるパターニングによって成形される。そして、このようなパターニングの際に、上述した容量絶縁膜は、半導体層を保護するストッパ膜として機能する。即ち、エッチングの際等に、エッチングしようとする膜の下層に位置する膜を傷つけないようにするための保護膜として機能する。このため、例えば過度のエッチングによって、部分絶縁膜の下層側にある層が傷つき、断線やショート等が発生してしまうことを防止することができる。よって、容量絶縁膜が設けられていれば、上述したように蓄積容量を構築することに加えて、装置の信頼性を向上させることが可能である。言い換えれば、本発明は、部分絶縁膜を形成するためのストッパ膜を、蓄積容量として効率的に利用しているともいえる。
以上説明したように、本発明に係る電気光学装置によれば、半導体層において蓄積容量を構築することで、装置における層構造を簡易なものとすることが可能であり、加えて容量絶縁膜がストッパ膜として機能することで、装置の信頼性を向上させることが可能である。
本発明の電気光学装置の一態様では、前記ゲート電極は、遮光性の導電膜から形成されており、前記部分絶縁膜上には、前記ゲート電極から延在している又は分断されていると共に前記ゲート電極と同一の層からなる遮光層が形成されている。
この態様によれば、ゲート電極が遮光性の導電膜から形成されているため、ゲート電極によって、上層側から半導体層に入射しようとする光を遮光することが可能である。また、部分絶縁膜上には、ゲート電極から延在している又は分断されていると共にゲート電極と同一の層からなる遮光層が設けられているため、より効果的な遮光が可能となる。特に、部分絶縁膜の下層に形成されている第1及び第2の接合領域は、光が入射することにより光リーク電流が発生し易い。よって、遮光性を有するゲート電極及び遮光層を設けることで、光リーク電流の発生を効果的に防止することができる。即ち、光リーク電流による、画質の低下や装置の誤動作等を防止することができる。
尚、遮光層は、チャネル領域から見て部分絶縁膜を超えた遠方に位置する半導体層部分である、データ線側ソースドレイン領域或いは画素電極側ソースドレイン領域に対向する領域にも、形成されてよい。更に、遮光層は、部分絶縁膜上に形成されることなく、このようなデータ線側ソースドレイン領域或いは画素電極側ソースドレイン領域に対向する領域に形成されてもよい。このように遮光層を形成すれば、半導体層における遮光能力をより高めることができるため、上述した効果はより顕著に発揮される。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記部分絶縁膜は、前記基板上で平面的に見て、前記半導体層における、前記第1の接合領域に重なる領域に島状に設けられた第1絶縁膜及び前記第2の接合領域に重なる領域に島状に設けられた第2絶縁膜を有する。
この態様によれば、部分絶縁膜には、基板上で平面的に見て、半導体層における第1の接合領域に重なる領域に島状に設けられた第1絶縁膜が有されている。このため、ゲート電極は、第1の接合領域に対して第1絶縁膜を介して配置される。よって、ゲート電極が第1の接合領域に近接されることに起因する、トランジスタにおけるリーク電流の発生、オンオフ閾値の変化等を確実に防止することが可能である。
また、部分絶縁膜には、半導体層における第2の接合領域に重なる領域に島状に設けられた第2絶縁膜が有されている。このため、ゲート電極は、第2の接合領域に対して第2絶縁膜を介して配置される。よって、上述した第1絶縁膜の場合と同様に、トランジスタにおけるリーク電流の発生、オンオフ閾値の変化等を確実に防止することが可能である。
以上説明したように、本態様に係る電気光学装置によれば、トランジスタにおける動作不良が発生してしまうことを確実に防止することが可能である。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記部分絶縁膜は、前記基板上で平面的に見て、前記半導体層における、前記チャネル領域及び前記容量下部電極に重なる領域に開口が設けられている。
この態様によれば、部分絶縁膜には、基板上で平面的見て、半導体層におけるチャネル領域に重なる領域に開口が設けられている。このため、ゲート電極は部分絶縁膜を介さずにチャネル領域に対向配置される。即ち、ゲート電極はゲート絶縁膜を介してチャネル領域に対向配置される。
また部分絶縁膜には、基板上で平面的見て、半導体層における容量下部電極に重なる領域に開口が設けられている。このため、容量上部電極は部分絶縁膜を介さずに容量下部電極に対向配置される。即ち、容量上部電極は容量絶縁膜を介して容量下部電極に対向配置される。
以上の結果、本態様に係る電気光学装置によれば、確実にトランジスタ及び蓄積容量を構築することが可能である。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記チャネル領域は、前記データ線又は前記走査線の延在方向に沿ったチャネル長を有し、前記基板上で平面的に見て、前記データ線及び前記走査線が交差する交差部と重ならない領域に配置されている。
この態様によれば、チャネル領域は、データ線又は走査線の延在方向に沿ったチャネル長を有している。そして、チャネル領域は、基板上で平面的に見て、データ線及び走査線が交差する交差部と重ならないように配置されている。即ち、チャネル領域は、データ線及び走査線が互いに重なっている領域とは重ならないように配置されている。
基板上で平面的に見て、データ線に重なる位置及び走査線に重なる位置に一の蓄積容量を構築するためには、交差部において少なくとも部分的に蓄積容量が構築されることが要求される。よって、仮にチャネル領域が交差部に配置されると、交差部におけるスペースが確保できないため、上述したように蓄積容量を構築することが困難である。具体的には、例えば蓄積容量を構築する層が、交差部、データ線に重なる位置及び走査線に重なる位置以外の場所(即ち、開口領域等)に配置されてしまう。
しかるに本態様では特に、上述したように、チャネル領域が交差部と重ならないように配置されているため、交差部、データ線に重なる位置及び走査線に重なる位置に一の蓄積容量を構築することができる。即ち、容量上部電極及び容量下部電極が容量絶縁膜を介して対向配置される領域の面積を広く確保できるため、比較的大きな蓄積容量を構築することができる。よって、例えば電位保持特性を向上させることができるため、コントラストの向上及びフリッカの低減等が可能となる。
以上説明したように、本態様に係る電気光学装置によれば、蓄積容量が開口領域等に配置されることで画質が低下してしまうことを防止しつつ、比較的大きな蓄積容量を構築することが可能となる。従って、より高品質な画像を表示させることが可能である。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記容量上部電極及び前記ゲート電極は、相互から分断されている互いに同一の層を含んでなる。
この態様によれば、容量上部電極及びゲート電極が互いに同一の層を含んでなるので、容量上部電極及びゲート電極を同一の成膜工程によって形成できる。従って、装置構成及び製造工程の複雑化を防止することができる。また、容量上部電極及びゲート電極は相互から分断されているため、同一の層を含んでいても、夫々独立した電極として機能することができる。
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記容量絶縁膜は窒素化合物を含んでなる。
この態様によれば、容量絶縁膜が窒素化合物を含んでなるので、例えば成膜された容量絶縁膜の部分的な除去が、熱リン酸処理等によって容易に行える。具体的には、例えば容量絶縁膜における、半導体層のチャネル領域に重なる部分を除去する際に、周囲の半導体層や部分絶縁膜等を傷つけずに、容量絶縁膜のみを除去することが可能である。従って、製造工程をより簡易なものとすることができる。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を具備する。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、簡易な構成で高品質な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
本発明の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板上に互いに交差して延在するデータ線及び走査線を形成する配線形成工程と、前記データ線及び前記走査線の交差に対応して規定される画素毎に画素電極を形成する画素電極形成工程と、チャネル領域、前記データ線に電気的に接続されたデータ線側ソースドレイン領域、前記画素電極に電気的に接続された画素電極側ソースドレイン領域、前記チャネル領域及び前記データ線側ソースドレイン領域間に形成された第1の接合領域、前記チャネル領域及び前記画素電極側ソースドレイン領域間に形成された第2の接合領域、並びに前記画素電極側ソースドレイン領域の第2の接合領域に対向しない側に形成された容量下部電極を有する半導体層を形成する半導体層形成工程と、前記基板上で平面的に見て、前記半導体層における、前記チャネル領域を除くと共に前記容量下部電極を含む部分を覆うように容量絶縁膜を形成する容量絶縁膜形成工程と、前記容量絶縁膜の上層において、前記基板上で平面的に見て、前記半導体層における、前記チャネル領域及び前記容量下部電極を除くと共に前記第1の接合領域及び前記第2の接合領域を含む部分を覆うように部分絶縁膜を形成する部分絶縁膜形成工程と、前記容量絶縁膜を介して、前記容量下部電極と蓄積容量を構築する容量上部電極を形成する容量上部電極形成工程と、前記チャネル領域にゲート絶縁膜を介して対向するゲート電極を形成するゲート電極形成工程とを備える。
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、半導体層において蓄積容量を構築できるため、層構造が簡易である電気光学装置を製造することが可能である。また、部分絶縁膜形成工程等において、容量絶縁膜がストッパ膜として機能することで、信頼性の高い装置とすることも可能である。尚、本発明の電気光学装置の製造方法においても、上述した本発明の電気光学装置における各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
本発明の電気光学装置の製造方法の一態様では、前記容量絶縁膜形成工程は、前記容量下部電極を含む部分を覆うように前記容量絶縁膜を成膜する成膜工程と、前記基板上で平面的に見て、前記成膜された容量絶縁膜における前記チャネル領域に重なる部分を除去する除去工程とを備える。
この態様によれば、容量絶縁膜形成工程では、先ず成膜工程が行われ、容量下部電極を含む部分を覆うように容量絶縁膜が成膜される。容量絶縁膜は、典型的には、半導体層を全体的に覆うように成膜される。続いて、除去工程が行われ、基板上で平面的に見て、成膜された容量絶縁膜におけるチャネル領域に重なる部分が除去される。
上述した成膜工程及び除去工程を行うことで、より容易且つ確実に、半導体層におけるチャネル領域を除くと共に容量下部電極を含む部分を覆うように容量絶縁膜を形成できる。即ち、より好適に電気光学装置を製造することが可能である。
上述した容量絶縁膜形成工程が、成膜工程及び除去工程を備える態様では、前記除去工程は熱リン酸処理を含むように構成してもよい。
このように構成すれば、例えば容量絶縁膜が窒素化合物を含んでいる場合等に、より容易に、成膜された容量絶縁膜におけるチャネル領域に重なる部分を除去することができる。具体的には、周囲の半導体層や部分絶縁膜等を傷つけずに、容量絶縁膜のみを除去することが可能である。従って、より好適に電気光学装置を製造することが可能である。
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記部分絶縁膜形成工程は、前記容量絶縁膜の上層に絶縁膜を成膜する絶縁膜成膜工程と、前記絶縁膜を前記部分絶縁膜として成形する成形工程とを備え、前記容量絶縁膜は、前記成形工程において、前記半導体層を保護するストッパ膜として機能する。
この態様によれば、部分絶縁膜形成工程では、先ず絶縁膜成膜工程が行われ、容量絶縁膜の上層に絶縁膜が成膜される。絶縁膜は、典型的には、容量絶縁膜を全体的に覆うように成膜される。続いて、成形工程が行われ、例えばエッチング等により成膜された絶縁膜が部分絶縁膜として成形される。
ここで特に、成形工程において、容量絶縁膜は半導体層を保護するストッパ膜として機能する。即ち容量絶縁膜は、エッチング等の際に、絶縁膜の下層に形成された半導体層が傷つけられないように保護する保護膜として機能する。このため、例えば過度のエッチングによって、半導体層が傷つき、断線やショート等が発生してしまうことを防止することができる。従って、信頼性の高い電気光学装置を製造することが可能である。
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<電気光学装置>
本実施形態に係る電気光学装置について、図1から図6を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、本発明の「基板」の一例であるTFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。画素電極9a周辺の構成については後に詳述する。他方、対向基板20上には、格子状又はストライプ状の遮光膜23が形成された後に、その全面に亘って対向電極21が設けられており、更には最上層部分に配向膜が形成されている。対向電極21は、例えばITO膜などの透明導電膜からなる。
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
続いて、本実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、電気光学装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
TFT30のゲートには走査線11aが電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶装置は、所定のタイミングで、走査線11aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量に対して電気的に並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと電気的に並列してTFT30のドレインに接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に接続されている。この蓄積容量70については後に詳細に説明する。
続いて、本実施形態に係る電気光学装置の具体的な構成について、図4から図6を参照して詳細に説明する。ここに図4は、本実施形態に係る電気光学装置の層構造を示す断面図であり、図5は、ゲート電極の変形例を示す拡大断面図である。また図6は、本実施形態に係る電気光学装置のTFT周辺の構成を示す平面図である。尚、図4では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。図4は、特に基板上における各種導電層、半導体層及び層間絶縁膜の相対的な位置関係を示したものであり、実際の平面的なレイアウトを示している訳ではない。即ち、説明の便宜上、各部分やコンタクトホールが同一断面上に表れるように相対的な位置関係を仮想的な断面上で示したものであり、例えば特定の平面で切った断面図ではない。また図5では、説明の便宜上、ゲート電極周辺の部材のみを示し、他の部材については省略して図示しており、図6では、図4で示した構成要素のうち代表的なものの平面レイアウトの一例を示し、その他の構成要素については適宜省略して図示してある。図4で示した相対的な位置関係を有する各部分やコンタクトホールは、図6の平面レイアウトに限られるものではなく、他の各種平面レイアウトを採ることが可能である。
図4において、下TFTアレイ基板10上には、例えばタングステン(W)、チタン(Ti)、チタンナイトライド(TiN)等からなる走査線11aが形成されている。走査線11aは、遮光性を有する材料を用いることで、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクタ等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などの、戻り光のうちTFT30に進行する光を遮光する下側遮光膜としても機能する。
下地絶縁膜12は、例えばシリコン酸化膜等からなる。下地絶縁膜12は、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能を有する。
TFT30は、半導体層1aと、ゲート絶縁膜2と、ゲート電極3aとを含んで構成されている。
半導体層1aは、例えばポリシリコンを含んでおり、チャネル領域1a’、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eを含んでいる。即ち、TFT30はLDD構造を有している。尚、TFT30は、データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
ゲート電極3aは、例えば遮光性を有する導電性ポリシリコンからなり、半導体層1aにおけるチャネル領域1a’に対して、ゲート絶縁膜2を介して対向配置される。尚、ゲート電極3aは中継電極3bと電気的に接続されており、中継電極3bはコンタクトホール81によって走査線11aと電気的に接続されている。即ち、ゲート電極3aは、中継電極3b及びコンタクトホール81を介して走査線11aと電気的に接続されている。
またゲート電極3aは、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cと重なる領域にまで延在している。ここでゲート電極3aは、遮光性を有しているため、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対して上層側から入射しようとする光は、ゲート電極3aによって遮光される。即ち、ゲート電極3aは、半導体層1aに対する遮光膜としても機能する。このため、ゲート電極3aは、ゲート本来の機能を果たすことを条件として、例えば反射率が高い又は光吸収率が高いなど、遮光性に優れた不透明のポリシリコン膜、金属膜、金属シリサイド膜等の単一層又は多層から構成されているのが好ましい。但し、ゲート電極3aの材料に若干なりとも遮光能力(即ち、光反射能力又は光吸収能力)が備わっていれば、上述の如き独自の形状及び配置を有する限りにおいて、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対して入射しようとする光を遮光する機能は相応に得られる。
図5(a)に示すように、ゲート電極3aは、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cを乗り越えた位置まで延在され、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eの一部に、容量絶縁膜75及びゲート絶縁膜2を介して対向するように設けられてもよい。このように構成することで、例えば、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eの上層側から、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対して斜めに入射しようとする光を遮光することが可能となる。よって、より効果的に光リーク電流の発生を防止することができる。また図5(b)に示すように、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eにおいて、再び絶縁膜202上に形成されてもよい。このように構成した場合も、図5(a)で示した場合と同様に、効果的に光リーク電流の発生を防止することができる。
ここに、その詳細については後述するが、特に画素電極側LDD領域1cに光が照射された場合には、データ線側LDD領域1bに光が照射された場合と比較して、TFT30における光リーク電流が生じやすいと本願発明者は推察している。本実施形態では、上述したようにゲート電極3aの形状を変更することで、半導体層1aに形成される各種領域のうち画素電極側LDD領域1cに対する遮光性をいわばピンポイントで高めることができる。従って、各画素のTFT30の光リーク電流を効果的に低減できる。
上述した遮光性を有するゲート電極3aは、シリコン酸化膜等からなる絶縁膜202を介して、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対向配置される。より具体的には、例えば半導体層1a全体を覆うように成膜された絶縁膜202が、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cを局所的に覆うような島状の部分絶縁膜として成形され、その部分絶縁膜上にゲート電極3aが延在される。このため、チャネル領域1a’と対向配置される部分と比べると、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対向配置される部分の方が、ゲート電極3aと半導体層1aとの層間距離が大きくなっている。よって、ゲート電極3aが、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに電気的な影響を与えるまでに近接されない。従って、上述した遮光を実現しつつ、TFT30における動作不良を防止することが可能である。尚、この観点からは、絶縁膜202は夫々、例えば数十から数千nm程度の膜厚を有すると共にLDD領域とほぼ同一の輪郭或いは一回り大きい輪郭を有するように形成される。
本実施形態では更に、半導体層1aが、画素電極側ソースドレイン領域1eの画素電極側LDD領域1cに対向しない側に容量下部電極1fを有している。容量下部電極1fは、容量絶縁膜75を介して容量上部電極72と対向配置されることにより、蓄積容量70を構築している。
容量絶縁膜75は、例えばSiN(窒化シリコン)等の窒素化合物を含んでなり、チャネル領域1a’と重なる領域を除いて、半導体層1aを全体的に覆うように形成されている。容量絶縁膜75は、蓄積容量70を構成する絶縁膜としてだけでなく、例えば絶縁膜202をエッチング等によりパターニングする際のストッパ膜としても機能する。
容量上部電極75は、上述したゲート電極3aと同一層に、相互に分断されて形成されている。図に示すように、容量上部電極72は、コンタクトホール82を介して、第1中継層91と電気的に接続され得降り、第1中継層91は、コンタクトホール85を介して容量線300と電気的に接続されている。即ち、容量上部電極は、容量線300と電気的に接続されている。尚、その構成については図示を省略してあるが、容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続される。これにより、容量上部電極72は、固定電位に維持され、固定電位側容量電極として機能し得る。
蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
そして特に、上述したように、半導体層1aが容量下部電極1fを有することにより、半導体層1a及び容量下部電極1fを同一の成膜工程で形成できる。また、絶縁膜202を成形する際のストッパ膜を容量絶縁膜75とし、ゲート電極3a及び容量上部電極72を同一の成膜工程で形成できる。このため、別の成膜工程によって蓄積容量を構築する各層を形成せずに済む。即ち、蓄積容量70を構築する各層を、TFT30を構築する各層と併せて製造できるような構成にすることで、装置の構成をより簡易なものとすることができる。よって、製造工程の複雑化、製造期間及び製造コストの増加を防止することが可能である。
図6において、上述したTFT30及び蓄積容量70を構築する各層を平面的に見ると、半導体層1aにおけるチャネル層1a’は、データ線6a及び走査線11aが互いに重なる交差部Crとは、重ならないように配置されている。これによって、開口率(即ち、光が通過する開口領域の面積の割合)の低下を防止しつつ、比較的大きな蓄積容量70を構築することが可能となっている。
尚、交差部Crはデータ線6a及び走査線11aが重なっているため、遮光性に優れている。本実施形態では、チャネル領域1a’を、この交差部Crから敢えて外して配置しているが、チャネル領域1a’は上述したように、ゲート電極3a及び走査線11a等の遮光性を有する膜、更に図に示すように、チャネル領域1a’の側面に配置されたコンタクトホール81によって遮光されている。よって、光が入射することによる光リーク電流の発生を効果的に防止することが可能である。
図4に戻り、上述した各層の上層側においては、第1層間絶縁膜41を介して第2中継層92及びデータ線6aが形成されている。第2中継層92はコンタクトホール83を介して画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されており、データ線6aはコンタクトホール84を介してデータ線側ソースドレイン領域1dと電気的に接続されている。第2中継層92及びデータ線6a、並びにコンタクトホール83及び84の内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN層等との多層膜からなる。また、遮光性を有する材料から形成することで、半導体層に入射しようとする光を遮光する遮光部として機能することも可能である。
更に上層側には、第2層間絶縁膜42を介して第3中継層93が形成されている。第3中継層は、コンタクトホール86を介して第2中継層92と電気的に接続されている。そして、第3層間絶縁膜43及び第4層間絶縁膜44を介して画素電極9aが形成される。画素電極9aは、コンタクトホール87を介して第3中継層93と電気的に接続されている。即ち、画素電極9aはコンタクトホール83、86及び87を介して、画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されている。画素電極9aの上側表面には、図示しないラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜が設けられており、これにより、液晶層50(図2参照)における液晶分子の配向方向が決定される。
上述した画素部の構成は、各画素部に共通である。即ち、画像表示領域10a(図1参照)には、上述したTFT30及び蓄積容量70等の各構成が画素部毎に周期的に形成されている。
以上説明したように、本実施形態に係る電気光学装置によれば、TFT30及び蓄積容量70を、互いに同一層を含むようにして構築することで、装置における層構造を簡易なものとすることが可能である。またTFT30における遮光性能が高いため、光リーク電流の発生を効果的に防止することができる。即ち、光リーク電流による、画質の低下や装置の誤動作等を防止することができる。
<電気光学装置の製造方法>
次に、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法について、図7から図15を参照して説明する。ここに図7から図15は夫々、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法を、順を追って示す工程断面図である。尚、以下では説明の便宜上、本実施形態の効果をなすTFTアレイ基板上に構成される部分について詳細に説明し、他の部分については適宜説明を省略する。
図7において、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法では、先ずTFTアレイ基板10上に走査線11aが形成され、更に下地絶縁膜12を介して上層側に半導体層1aが形成される。半導体層1aは、例えば減圧CVD等によりアモルファスシリコン膜を形成し熱処理を施すことでポリシリコン膜を固相成長させ、或いは減圧CVD法等によりポリシリコン膜を直接形成することで形成される。そして、マスク等によって局所的に覆われた後に、異なる濃度のイオンが注入されることで、図に示すようなチャネル領域1a’、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eが形成される。また本実施形態では特に、画素電極側ソースドレイン領域1eの画素電極側LDD領域1cに対向しない側に容量下部電極1fが形成される。
図8において、半導体層1a上には、半導体層1aを全体的に覆うようにゲート酸化膜2が形成される。ゲート酸化膜2は、例えば熱酸化等を用いて形成される。
図9において、ゲート酸化膜2はエッチング等によって部分的に除去され、半導体層1aにおける容量下部電極1fが露出するように成形される。尚、この工程が省略されても(即ち、ゲート酸化膜2が容量下部電極1f上に残った状態でも)、後述する蓄積容量70は構築可能である。
図10において、ゲート酸化膜2及び容量下部電極1f上には容量絶縁膜75が形成される。容量絶縁膜75は、例えば減圧CVD法やプラズマCVD法等を用いて、SiN等の窒素化合物を材料として形成される。
図11において、容量絶縁膜75上には、絶縁膜202が形成される。絶縁膜202は、例えばSiO2を含んでおり、0.3〜0.4μm程度の厚さで形成される。より具体的には、ここでは例えば、常圧又は減圧CVD法等によりTEOS(テトラ・エチル・オルソ・シリケート)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて、NSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる絶縁膜202を形成ればよい。
図12において、絶縁膜202は、半導体層1aにおけるチャネル領域1a’に対向する部分がエッチング等によって除去される。即ち、チャネル領域1a’と重なる領域には、容量絶縁膜75が露出するように開口が設けられる。ここで特に、絶縁膜202をパターニングする際には、容量絶縁膜75が、ゲート酸化膜2及び半導体層1aを保護するストッパ膜として機能する。よって、例えばエッチング等の精度が低くバラツキが生じるような場合であっても、ゲート酸化膜2及び半導体層1aを傷つけずに絶縁膜202をパターニングすることが可能である。
図13において、開口において露出している容量絶縁膜75(即ち、チャネル領域1a’と重なる領域にある容量絶縁膜75)は、熱リン酸処理によって除去される。熱リン酸処理は、例えば摂氏120度から130度で、20分程度行われる。この熱リン酸処理では、窒素化合物を含む容量絶縁膜75が除去され、上述した絶縁膜202及びゲート酸化膜2は影響を受けず除去されない。よって、容量絶縁膜75のみを好適に除去することが可能である。
図14において、絶縁膜202は、容量下部電極1fと重なる部分もエッチング等によって除去される。即ち容量下部電極1fと重なる領域にも、容量絶縁膜75が露出するように開口が設けられる。また、このような絶縁膜202のパターニングの際にも、容量絶縁膜75が、半導体層1aを保護するストッパ膜として機能する。よって、半導体層1aを傷つけずに絶縁膜202をパターニングすることが可能である。
図15において、チャネル領域1a’と重なる領域に設けられた開口には、ゲート電極3aが形成される。ゲート電極3aは、例えば減圧CVD法等によりポリシリコン膜を堆積した後に、リン(P)を熱拡散して、このポリシリコン膜を導電化することにより形成される。このように、ゲート電極3aがチャネル領域1a’に対してゲート酸化膜2を介して対向配置するよう形成されることによって、TFT30が構築される。尚、ゲート電極3aは、同一層に形成された、図の右側における中継電極3aと電気的に接続するように形成される。中継電極3bは、コンタクトホール81を介して走査線11aと電気的に接続されている。よって、ゲート電極3aは走査線11aと電気的に接続される。
またゲート電極3aは、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cと重なる領域にまで延在している。ここでゲート電極3aが遮光性を有する材料を含んで形成されれば、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対して上層側から入射しようとする光は、ゲート電極3aによって遮光される。即ち、ゲート電極3aは、半導体層1aに対する遮光膜としても機能する。ゲート電極3aは、絶縁膜202を介してデータ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対向配置されるため、チャネル領域1a’と対向配置される部分と比べると、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに対向配置される部分の方が、ゲート電極3aと半導体層1aとの層間距離が大きくなっている。よって、ゲート電極3aが、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cに電気的な影響を与えるまでに近接されない。従って、上述した遮光を実現しつつ、TFT30における動作不良を防止することが可能である。
他方で、容量下部電極1fと重なる領域に設けられた開口には、ゲート電極3aと同一膜により容量上部電極72が形成される。よって、容量上部電極72は、下部容量電極1fに対して容量絶縁膜75を介して対向配置され、蓄積容量70が構築される。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
そして特に、上述したように、半導体層1aが容量下部電極1fを有することにより、半導体層1a及び容量下部電極1fを同一の成膜工程で形成できる。また、絶縁膜202を成形する際のストッパ膜を容量絶縁膜75とし、ゲート電極3a及び容量上部電極72を同一の成膜工程で形成できる。このため、別の成膜工程によって蓄積容量を構築する各層を形成せずに済む。即ち、蓄積容量70を構築する各層を、TFT30を構築する各層と併せて製造することができる。
以降においては、図4に示す各層が下層側から順に形成されていき、電気光学装置が製造される。
以上説明したように、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、TFT30における遮光性能が高く、光リーク電流の発生を効果的に防止することができる電気光学装置を製造することが可能である。即ち、光リーク電流による誤動作等が起き難い、信頼性の高い電気光学装置を製造することが可能である。また、TFT30及び蓄積容量70を、互いに同一層を含むようにして構築することで、比較的大きな蓄積容量を実現しつつ、装置における層構造を簡易なものとすることが可能である。従って、画質を低下させることなく製造工程を簡単化し、製造期間及び製造コスト等を低減させることが可能である。
ここで、上述したTFT30の動作時に、画素電極側LDD領域1cにおいて、データ線側LDD領域1bに比べて光リーク電流が相対的に発生しやすい理由について、図16から図21を参照して、詳細に説明する。
先ず、テスト用のTFTに光を照射した場合における、ドレイン電流の大きさを測定した測定結果について、図16を参照して説明する。ここに図16は、テスト用のTFTにおける光照射位置とドレイン電流との関係を示すグラフである。
図16において、データE1は、テスト用の単体のTFT、即ちTEG(Test Element Group)に対して、光スポット(約2.4umの可視光レーザ)をドレイン領域側からソース領域側へ順に走査しつつ照射した場合におけるドレイン電流の大きさを測定した結果を示している。TEGは、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域に加え、チャネル領域とソース領域との接合部に形成されたソース側接合領域、及びチャネル領域とドレイン領域との接合部に形成されたドレイン側接合領域を有している。
尚、図16の横軸は、光スポットが照射された光照射位置を示しており、チャネル領域とドレイン側接合領域との境界及びチャネル領域とソース側接合領域との境界、更にチャネル領域をゼロとしている。図16の縦軸は、ドレイン電流の大きさ(但し、所定の値で規格化された相対値)を示しており、ドレイン電流がドレイン領域からソース領域へ向かって流れている場合には、正の値(即ち、プラスの値)を示し、ドレイン電流がソース領域からドレイン領域へ向かって流れている場合には、負の値(即ち、マイナスの値)を示す。
図16において、データE1は、いずれの光照射位置でもプラスの値を示している。即ち、ドレイン電流が、ドレイン領域からソース領域へ向かって流れていることを示している。また、データE1は、ドレイン側接合領域内において、ソース側接合領域内におけるよりも大きな値を示している。即ち、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合には、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、ドレイン電流が大きくなることを示している。つまり、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合には、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、光リーク電流が大きくなることを示している。尚、ドレイン電流は、暗電流(或いはサブスレッショルドリーク、即ち、光を照射しない状態でも、TEGのオフ状態においてソース領域及びドレイン領域間に流れる漏れ電流)と光リーク電流(或いは光励起電流、即ち、光が照射されることによる電子の励起に起因して生じる電流、)とから構成されている。
次に、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合の方が、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、光リーク電流が大きくなるメカニズムについて、図17及び図18を参照して説明する。ここに図17は、ドレイン側接合領域において光励起が発生した場合におけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。図18は、ソース側接合領域において光励起が発生した場合におけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。尚、図17及び図18では、上述したTFT30が電気的に接続された画素電極9aにおける中間階調の表示を想定して、ソース電位(即ち、ソース領域の電位)を4.5V、ゲート電位(即ち、チャネル領域の電位)を0V、ドレイン電位(即ち、ドレイン領域の電位)を9.5Vとしている。図17及び図18の横軸は、TEGを構成する半導体層における各領域を示している。図17及び図18の縦軸は、電子のポテンシャル(フェルミレベル)を示している。電子は負の電荷を有するため、各領域における電位が高いほど、電子のポテンシャルは低くなり、各領域における電位が低いほど、電子のポテンシャルは高くなる。
図17は、チャネル領域及びドレイン領域間に形成されたドレイン側接合領域に光スポットが照射され、ドレイン側接合領域において光励起が生じる場合におけるキャリアの振舞いを示している。
図17において、光リーク電流は、2つの電流成分からなると推定できる。即ち、第1の電流成分として、光励起によって生じた電子の移動による電流成分がある。より具体的には、ドレイン側接合領域における光励起によって生じた電子(図中、「e」参照)が、ドレイン側接合領域からポテンシャルのより低いドレイン領域へ移動することにより生じる電流成分(この電流成分は、ドレイン領域からソース領域へ流れる)である。
第2の電流成分として、光励起によって生じたホール(即ち、正孔、図中、「h」参照)の移動による電流成分がある。より具体的には、ドレイン側接合領域における光励起によって生じたホールが、ドレイン側接合領域からポテンシャルのより低い(即ち、電子のポテンシャルとしてはより高い)チャネル領域へ移動することによって発生するバイポーラ効果に起因する電流成分である。つまり、チャネル領域へ移動したホールの正電荷によって、チャネル領域のポテンシャル(即ち、いわゆるベースポテンシャル)がポテンシャルLc1からポテンシャルLc2へと引き下げられるため、ソース領域からドレイン領域へと向かう電子が増大するという効果による電流成分(この電流成分は、ドレイン領域からソース領域へ流れる)である。よって、ドレイン側接合領域において光励起が生じる場合において、第1及び第2の電流成分はいずれもドレイン電流(言い換えれば、コレクタ電流)を増大させる方向(即ち、ドレイン領域からソース領域へ流れる方向)に発生する。
図18は、チャネル領域及びソース領域間に形成されたソース側接合領域に光スポットが照射され、ソース側接合領域において光励起が生じる場合にキャリアの振舞いを示している。
図18において、光リーク電流は、図17を参照して上述したドレイン側接合領域において光励起が生じる場合とは異なり、ホールがソース側接合領域からポテンシャルのより低い(即ち、電子のポテンシャルとしてはより高い)チャネル領域へ移動するバイポーラ効果に起因した第2の電流成分が支配的であると推定できる。即ち、ソース側接合領域における光励起によって生じた電子(図中、「e」参照)が、ソース側接合領域からポテンシャルのより低いソース領域へ移動することにより生じる第1の電流成分(この電流成分は、ソース領域からドレイン領域へ流れる)は、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分(この電流成分は、ドレイン領域からソース領域へ流れる)よりも少ないと推定できる。
図18において、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分(即ち、チャネル領域へ移動したホールの正電荷によって、ベースポテンシャルがポテンシャルLc1からポテンシャルLc3へと引き下げられるため、ソース領域からドレイン領域へと向かう電子が増大するという効果による電流成分)は、ドレイン領域からソース領域へと流れる。一方、上述した第1の電流成分は、ソース領域からドレイン領域へと流れる。即ち、第1の電流成分と第2の電流成分とは互いに反対方向に流れる。ここで、再び図16において、ソース側接合領域に光スポットを照射した場合には、ドレイン電流(データE1参照)は正の値を示している。即ち、この場合には、ドレイン電流はドレイン領域からソース領域へ向かって流れている。よって、第1の電流成分は、暗電流や第2の電流成分であるバイポーラ効果による電流成分を抑制するのみで、ドレイン電流の流れをソース領域からドレイン領域へ向かわせる程度までは大きくないといえる。
更に、チャネル領域及びソース領域間の電位差は、チャネル領域及びドレイン領域間の電位差よりも小さいため、ソース領域側の空乏化領域(即ち、ソース側接合領域)は、ドレイン領域側の空乏化領域(即ち、ドレイン側接合領域)よりも狭い。このため、ソース側接合領域に光スポットを照射した場合には、ドレイン側接合領域に光スポットを照射した場合と比較して、光励起の絶対量が少ない。
以上、図17及び図18を参照して説明したように、ドレイン側接合領域において光励起が生じる場合、第1及び第2の電流成分はいずれもドレイン電流を増大させる方向に発生する。一方、ソース側接合領域において光励起が生じる場合、第1の電流成分が第2の電流成分を抑制する。よって、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合の方が、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、ドレイン電流が大きくなる(即ち、光リーク電流が大きくなる)。
次に、画素電極側ソースドレイン領域がドレイン電位とされると共に画素電極側接合領域内に光スポットが照射された場合の方が、データ線側ソースドレイン領域がドレイン電位とされると共にデータ線側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、光リーク電流が大きくなるメカニズムについて、図19及び図20を参照して説明する。ここに図19は、データ線側ソースドレイン領域がドレイン電位とされる場合において、データ線側接合領域(言い換えれば、ドレイン側接合領域)において光励起が発生したときにおけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。図20は、画素電極側ソースドレイン領域がドレイン電位とされる場合において、画素電極側接合領域(言い換えれば、ドレイン側接合領域)において光励起が発生したときにおけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。
以下では、画素スイッチング用のTFTを含む画素部に電荷が保持され、光励起が生じた場合を考える。上述したようなTEGを想定した場合と異なる点は、画素スイッチング用のTFTの画素電極側は、フローティング状態になり得る点である。画素スイッチング用のTFTの画素電極側には、蓄積容量70の如き保持容量が接続される場合もあり、容量値が十分に大きければ、上述したTEGを用いた場合と同様に固定電極に近い状態となるが、容量が十分に大きくなければ、フローティング状態或いはこれに近い状態になる。尚、ここでは、容量値は十分には大きくないものと仮定する。
図19及び図20において、液晶装置では、いわゆる焼き付きを防止するために交流駆動が採用される。ここでは、中間階調の表示を想定して、画素電極に、7Vを基準電位として、4.5Vのマイナスフィールドの電荷と9.5Vのプラスフィールドの電荷とが交互に保持される場合を想定する。このため画素スイッチング用のTFTのソース及びドレインは、画素電極側ソースドレイン領域とデータ線側ソースドレイン領域との間で、固定ではなく変化する。即ち、図19に示すように、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域の電位がデータ線側ソースドレイン領域の電位よりも低くなる場合)には、画素電極側ソースドレイン領域は、ソースとなるのに対し、図20に示すように、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域の電位がデータ線側ソースドレイン領域の電位よりも高くなる場合)には、画素電極側ソースドレイン領域は、ドレインとなる。
図19において、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合には、画素電極側ソースドレイン領域が、ソース(或いはエミッタ)となり、データ線側ソースドレイン領域が、ドレイン(或いはコレクタ)となる。ドレイン側接合領域であるデータ線側接合領域において光励起が生じた場合、上述したように、光励起によって生じた電子の移動による第1の電流成分とバイポーラ効果に起因する第2の電流成分が発生する。ここで、バイポーラ効果に起因する第2の電流成分が生じると(即ち、ベースポテンシャルがポテンシャルLc1からポテンシャルLc2へと引き下げられ、ソースである画素電極側ソースドレイン領域からドレインであるデータ線側ソースドレイン領域へ電子が移動すると)、フローティング状態である画素電極側ソースドレイン領域から電子が抜き取られることになり、エミッタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルが、ポテンシャルLs1からポテンシャルLs2へと低下する(電位は、上昇する)。即ち、ドレイン側接合領域であるデータ線側接合領域において光励起が生じた場合、ベースポテンシャルが低下すると共にエミッタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルも低下する。言い換えれば、ドレイン側接合領域であるデータ線側接合領域において光励起が生じた場合、ベース電位の上昇に伴ってエミッタ電位も上昇する。このため、ドレイン電流(即ち、コレクタ電流)が、抑制されることになる。
一方、図20において、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合には、データ電極側ソースドレイン領域が、ソース(或いはエミッタ)となり、画素電極側ソースドレイン領域が、ドレイン(或いはコレクタ)となる。ドレイン側接合領域である画素電極側接合領域において光励起が生じた場合、上述したように、光励起によって生じた電子の移動による第1の電流成分とバイポーラ効果に起因する第2の電流成分が発生する。ここで、ソースとなるデータ線側ソースドレイン領域は、データ線と接続されているため、画素電極とは異なりフローティング状態ではなく、電位に変化は生じない。バイポーラ効果に起因する第2の電流成分が生じると(即ち、ベースポテンシャルがポテンシャルLc1からポテンシャルLc2へと引き下げられ、ソースであるデータ線側ソースドレイン領域からドレインである画素電極ソースドレイン領域へ電子が移動すると)、フローティング状態である画素電極側ソースドレイン領域へ電子が流れ込むことになり、コレクタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルが、ポテンシャルLd1からポテンシャルLd2へと上昇する(電位は、低下する)。しかし、コレクタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルの上昇は、上述したソースとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルの低下とは異なり、ドレイン電流を抑制する働きは殆どない。ドレイン電流(即ち、コレクタ電流)は、エミッタ電位に対するベース電位の大きさよって殆ど決まるため、コレクタ電位が低下してもドレイン電流を抑制する働きは殆ど生じない、言い換えれば、バイポーラトランジスタの飽和領域に入った状態である。
以上、図19及び図20を参照して説明したように、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)には、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分は殆ど抑制されないのに対し、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、データ側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)には、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分は、フローティング状態である画素電極側ソースドレイン領域の電位の上昇に起因して抑制される。つまり、画素電極側ソースドレイン領域がドレインとなる場合の方が、データ側ソースドレイン領域がドレインとなる場合よりも、光リーク電流に起因してドレイン電流が増加する。
ここで、図21は、画素スイッチング用のTFT全体に、比較的強い光を照射した際の画素電極電位の波形を示している。
図21において、データE2は、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(画素電極電位が電位V1とされる場合)における画素電極電位の変動Δ1は、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(画素電極電位が電位V2とされる場合)における画素電極電位の変動Δ2よりも大きいことを示している。即ち、画素電極において、プラスフィールドの電荷は、マイナスフィールドの電荷よりも保持されにくい(つまり、光リークが発生しやすい)ことを示している。これは、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)の方が、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、データ線側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)よりも光リーク電流が生じやすいという上述したメカニズムと一致している。
以上、図16から図21を参照して詳細に説明したように、画素スイッチング用のTFTにおけるドレイン側接合領域において光励起が生じる場合にドレイン電流が増加しやすい。更に、画素電極側ソースドレイン領域がドレインとなる場合においてドレイン電流が増加しやすい(逆に言えば、データ線側ソースドレイン領域がドレインとなる場合には、バイポーラ効果に起因した電流成分が抑制されている)。
従って、上述した本実施形態に係る電気光学装置及び電気光学装置の製造方法のように、画素電極側接合領域である画素電極側LDD領域1cにおける遮光性をピンポイントで高めることが可能であれば、高い開口率を維持しつつTFT30における光リーク電流を極めて効果的に低減できる。加えて、本実施形態に係る電気光学装置及び電気光学装置の製造方法においては、比較的大きな蓄積容量70を簡易な構成で実現できるため、装置の複雑化を抑制しつつ、高品質な画像を表示させることが可能である。
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図22は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
図22に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
尚、図22を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及び該電気光学装置の製造方法、並びに該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1a…半導体層、1a’…チャネル領域、1d…データ線側ソースドレイン領域、1e…画素電極側ソースドレイン領域、1b…データ線側LDD領域、1c…画素電極側LDD領域、1f…容量下部電極、2…ゲート絶縁膜、3a…ゲート電極、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、11a…走査線、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、70…蓄積容量、72…容量上部電極、75…容量絶縁膜