以下では、本発明の各実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、それぞれ、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに、図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に、対向基板の側から見た液晶装置の概略的な平面図であり、図2は、図1のH−H’断面図である。
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置は、対向配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20とから構成されている。TFTアレイ基板10は例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板等の透明基板である。対向基板20も例えばTFTアレイ基板10と同様の材料からなる透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、例えばシール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材56が散布されている。本実施形態に係る液晶装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
TFTアレイ基板10上における、画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域には、データ線駆動回路101及びサンプリング回路7、走査線駆動回路104、外部回路接続端子102がそれぞれ形成される。
TFTアレイ基板10上における周辺領域において、シール領域より外周側に、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が、TFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、TFTアレイ基板10上の周辺領域のうちシール領域より内側に位置する領域には、TFTアレイ基板10の一辺に沿う画像表示領域10aの一辺に沿って且つ額縁遮光膜53に覆われるようにしてサンプリング回路7が配置される。
走査線駆動回路104は、TFTアレイ基板10の一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間を電気的に接続するため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
また、TFTアレイ基板10上の周辺領域において、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、上下導通端子106が配置されると共に、このTFTアレイ基板10及び対向基板20間には上下導通材が上下導通端子106に対応して該端子106に電気的に接続されて設けられる。
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。画像表示領域10aには、画素スイッチング用TFTや走査線、データ線等の配線の上層に画素電極9aがマトリクス状に設けられている。画素電極9a上には、配向膜16が形成されている。尚、本実施形態では、画素スイッチング素子はTFTのほか、各種トランジスタ或いはTFD等により構成されてもよい。
他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば遮光性金属膜等から形成されており、対向基板20上の画像表示領域10a内で、例えば格子状等にパターニングされている。そして、遮光膜23上(図2中遮光膜23より下側)に、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向して例えばベタ状に形成され、更に対向電極21上(図2中対向電極21より下側)には配向膜22が形成されている。
液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。そして、液晶装置の駆動時、夫々に電圧が印加されることで、画素電極9aと対向電極21との間には液晶保持容量が形成される。
尚、ここでは図示しないが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104の他に、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等が形成されていてもよい。
次に、本実施形態に係る液晶装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る液晶装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、液晶装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
TFT30のゲートには走査線11aが電気的に接続されており、本実施形態に係る液晶装置は、所定のタイミングで、走査線11aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として液晶装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量に対して電気的に並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと電気的に並列してTFT30のドレインに電気的に接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に電気的に接続されている。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。尚、蓄積容量70は、後述するように、TFT30へ入射する光を遮る内蔵遮光膜としても機能する。
次に、上述の動作を実現する画素部の具体的な構成について、図1から図3に加えて図4から図11を参照して説明する。ここに図4は、画素部の平面図であって、図5は、トランジスタの構成に着目してその構成を示す平面図である。また図6は、図4のA−A’線断面図であり、図7は、図5のC−C’断面図である。更に図8、図9及び図10は夫々、本実施形態に係る液晶装置の変形例を示す平面図であり、図11は、図4のB−B’線断面図である。
尚、図4から図11では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。この点については、後述の該当する各図について同様である。図4から図11では、図1又は図2を参照して説明した構成中、TFTアレイ基板側の構成のみについて説明するが、説明の便宜上、これらの図では画素電極9aより上側に位置する部分の図示を省略している。また、図5では、トランジスタに着目して、その構成をより詳細に示すと共に、非開口領域におけるトランジスタに対するデータ線や走査線、蓄積容量を構成する各種膜の配置関係についても概略的に示してある。
図4において、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられている。そして、画素電極9aの縦横の境界にそれぞれ沿ってデータ線6a及び走査線11aが設けられている。走査線11aは、図4中X方向に沿って延びており、データ線6aは、走査線11aと交差するように、図4中Y方向に沿って延びている。走査線11a及びデータ線6aが互いに交差する個所の各々には、図5に拡大して示すような、画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
上述した走査線11a、データ線6a及びTFT30、並びに蓄積容量70、下側遮光膜110、中継層93は、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、画素電極9aに対応する各画素の開口領域99a(即ち、各画素において、表示に実際に寄与する光が透過又は反射される領域)を囲む非開口領域99b内に配置されている。即ち、これらの走査線11a、データ線6a、TFT30、蓄積容量70、下側遮光膜110及び中継層93は、表示の妨げとならないように、各画素の開口領域99aではなく、非開口領域99b内に配置されている。
非開口領域99bは、例えば、TFTアレイ基板10側のデータ線6aや走査線11a、或いは蓄積容量70を構成する導電膜の少なくとも一部が遮光性を有する遮光膜により規定され、このような遮光膜により各画素に入射される光を遮光可能な領域として、TFTアレイ基板10側において規定される。より具体的には、非開口領域99bは、Y方向に沿う第1領域99ba及びX方向に沿う第2領域99bbを含む。また、好ましくは、図2を参照して説明したように、対向基板20側において形成された遮光膜23によっても、TFTアレイ基板10側の遮光膜と共に非開口領域99bが規定される。
以下では、図6に示されている画素部の構成要素を、下層側から順に説明する。
図6において、下側遮光膜110は、TFTアレイ基板10上に配置され、例えばタングステン(W)、チタン(Ti)、チタンナイトライド(TiN)等の高融点金属材料等の遮光性の導電材料からなる。また下側遮光膜110は、図4又は図5に示すように、例えば走査線11aの延在方向(即ち、X方向)に沿って形成されている、即ち、各走査線11aに対応して画像表示領域10aにストライプ状に形成されている。このような下側遮光膜110によれば、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクタ等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などの、戻り光のうちTFT30に進行する光を遮光することができる。
下地絶縁膜12は、例えばシリコン酸化膜等からなる。下地絶縁膜12は、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用のTFT30の特性変化を防止する機能を有する。
図4から図6において、TFT30は、半導体層1a、ゲート電極3aを含んで構成されている。
半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、図4中Y方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域1a’、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c、並びにデータ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eからなる。即ち、TFT30はLDD構造を有している。尚、データ線側LDD領域1bは、本発明の「第1の接合領域」の一例であり、画素電極側LDD領域1cは、本発明の「第2の接合領域」の一例である。
データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、チャネル領域1a’を基準として、Y方向に沿ってほぼミラー対称に形成されている。即ち、データ線側LDD領域1bは、チャネル領域1a’及びデータ線側ソースドレイン領域1d間に形成されている。画素電極側LDD領域1cは、チャネル領域1a’及び画素電極側ソースドレイン領域1e間に形成されている。データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、例えばイオンインプランテーション法等の不純物打ち込みによって半導体層1aに不純物を打ち込んでなる不純物領域である。データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cはそれぞれ、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eよりも不純物の少ない低濃度な不純物領域として形成される。このような不純物領域によれば、TFT30の非動作時において、ソース領域及びドレイン領域に流れるオフ電流を低減し、且つTFT30の動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
走査線11aは、半導体層1aよりも上層側に、例えばシリコン酸化膜等からなる絶縁膜202を介して配置される。走査線11aは、例えば導電性ポリシリコンからなり、X方向に延在するように形成される。ここで、走査線11aには、その一部としてゲート電極3aが形成されている。ゲート電極3aは、絶縁膜202において平面的に見てチャネル領域1a’に重なる部分に開口された開口部202h内に設けられている。また、ゲート電極3aは遮光性を有しており、図4及び図5に示すように、画素電極側LDD領域1cの両脇を囲うように形成される。よって、画素電極側LDD領域1cに対して両脇から入射する光は、ゲート電極3aによって遮光される。このため、ゲート電極3aは、ゲート本来の機能を果たすことを条件として、例えば反射率が高い又は光吸収率が高いなど、遮光性に優れた不透明のポリシリコン膜、金属膜、金属シリサイド膜等の単一層又は多層から構成されているのが好ましい。但し、ゲート電極3aの材料に若干なりとも遮光能力(即ち、光反射能力又は光吸収能力)が備わっていれば、上述の如き独自の形状及び配置を有する限りにおいて、上述の如き画素電極側LDD領域1cに対して斜めに入射する光を遮光する機能は相応に得られる。
図7において、図5のC−C’線に沿う断面部分について、開口部202h内に着目すると、ゲート電極3aは、開口部202h内にゲート絶縁膜2を介してチャネル領域1a'と重なるように形成されている。このように形成すれば、ゲート電極3aにゲート電圧を印加することで、チャネル領域1a’に流れる電流を制御することが可能となる。
図4から図6に戻り、ゲート電極3aと同一層における、画素電極側ソースドレイン領域1eと対向する部分には、ゲート電極3aと同様にゲート絶縁膜2を介して、本発明の「遮光膜」の一例である画素電極側遮光膜31aが配置されている。ゲート電極3a及び画素電極側遮光膜31aは、同一の成膜工程によって形成される。このため、ゲート電極3aを遮光性能に優れた材料から形成しておけば、これと同一層からなる画素電極側遮光膜31aにおける遮光性能も同様に得られるので便利である。
画素電極側遮光膜31aは、図4及び図5に示すように、平面的に見て画素電極側ソースドレイン領域1eを部分的に覆うように形成されている。従って、画素電極側ソースドレイン領域1eに対して、それよりも上層側から入射する光や、画素電極側LDD領域1cに対して、画素電極側ソースドレイン領域1e側から斜めに入射する光等を画素電極側遮光膜31aによって遮光することが可能となる。
また、画素電極側遮光膜31aは、コンタクトホール83を介して、画素電極9aと電気的に接続されている。よって、画素電極側遮光膜31aは、画素電極側ソースドレイン領域1eと同電位となる。従って、画素電極側遮光膜31aに生じる電界が、画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的な影響を与えて、TFT30に動作不良が生じるのを防止することが可能となる。このような理由から、例えば画素電極側遮光膜31a及び画素電極側ソースドレイン領域1e間には、ゲート絶縁膜2のような絶縁膜が設けられず、直接対向するように配置されてもよい。尚、図4から図6に示すように、画素電極側遮光膜31aを、画素電極側LDD領域1cからY方向に所定距離(即ち、画素電極側遮光膜31aに生じる電界が画素電極側LDD領域1cに影響を及ぼさないような距離)隔てた位置に配置することで、より効果的に動作不良の発生を防止することができる。
図5において、画素電極側LDD領域1cは、非開口領域99bにおいて第1領域99ba及び第2領域99bbが互いに交差する交差領域99crに配置されている。交差領域99crにおいては、画素電極側LDD領域1cに対してそれよりも上層側から入射する光のうち、図5において矢印Pyで示す進行方向に沿って進行する光は第1領域99baによって遮光することが可能であり、図5において矢印Pxで示す進行方向に沿って進行する光は第2領域99bbによって遮光することが可能である。尚、図5において、矢印Pyは、Y方向に沿って進行する成分を有する光の進行方向の一例を示し、矢印Pxは、X方向に沿って進行する成分を有する光の進行方向の一例を示したものである。
従って、交差領域99crでは、ゲート電極3a及び画素電極側遮光膜31aに加えて、第1領域99ba及び第2領域99bbによって、画素電極側LDD領域1cに対して進行する光を遮光することができる。よって、本実施形態のように、画素電極側LDD領域1cに画素電極側遮光膜31aが重ならないように配置している場合であっても、画素電極側LDD領域1cに入射される光を効果的に低減することが可能となる。
本実施形態では、画素電極側遮光膜31aが画素電極9aに電気的に接続されているため、画素電極側遮光膜31aをゲート電極3aに接触するように配置することができない。このため、図4及び図5に示すように、ゲート電極3a及び画素電極側遮光膜31a間には間隙が生じ、そこから入射するような光に対しては遮光性能が低くなってしまう。しかしながら、本実施形態では、上述したように、画素電極側LDD領域1cを遮光性能の高い交差領域99crに配置しているため、効果的に画素電極側LDD領域1cの遮光が行える。
ここに、その詳細については後述するが、特に画素電極側LDD領域1cに光が照射された場合には、データ線側LDD領域1bに光が照射された場合と比較して、TFT30における光リーク電流が生じやすいと本願発明者は推察している。本実施形態では、半導体層1aに形成される各種領域のうち画素電極側LDD領域1cに対する遮光性をいわばピンポイントで高めることができる。従って、各画素のTFT30の光リーク電流を効果的に低減できる。
また、本実施形態では、画素電極側LDD領域1cに対して交差領域99crとは別に遮光領域を設けなくても、ピンポイントで画素電極側LDD領域1cに対する遮光性を高めることができる。よって、このようなピンポイントに遮光性を高めるための領域を設けることで、各画素の非開口領域99bの配置面積が広くなり、開口領域99aがより小さくなるのを防止することが可能となる。その結果、各画素を微細化しても、ピンポイントに遮光性を向上させ且つ開口率もより向上させることができる。
上述した画素電極側遮光膜31aの構成は、あくまで一例であり、例えば以下に示すような構成をとることも可能である。
図8において、画素電極側遮光膜31aにおけるゲート電極3a側の端部には、ゲート電極3aとの間隙を小さくするような突起部が設けられている。これにより、ゲート電極3a及び画素電極側遮光膜31a間の間隙が小さくなるため、画素電極側LDD領域1cに入射する光をより効果的に遮光することが可能となる。
図9において、画素電極側遮光膜31aが画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的な影響を与えないという利点を生かして、画素電極側遮光膜31aが画素電極側ソースドレイン領域1e全体を覆うように構成することもできる。このように、画素電極側遮光膜31aは、ゲート電極3aと電気的に接続されない範囲で、ゲート電極3aに近接するように配置することができる。ただし、トランジスタ30の動作時に画素電極側遮光膜31aに生じる電界が、画素電極側LDD領域1cに電気的な影響を与えないように、画素電極側LDD領域1cに重ならない範囲でゲート電極3aに近接するように配置させる。以上のように構成することで、ゲート電極3a及び画素電極側遮光膜31a間の間隙を極めて小さくすることができ、画素電極側LDD領域1cに対して、より効果的な遮光を行うことが可能である。
図10に示すように、画素電極側LDD領域1cの両脇を、ゲート電極3aに代えて画素電極側遮光膜31aが囲うようにしてもよい。このように構成した場合であっても、上述した構成と同様に、画素電極側LDD領域1cに入射する光を効果的に遮光することができる。
以上説明したように、本実施形態では入射する光の角度等によって、画素電極側遮光膜31aの形状を変化させることにより、画素電極側LDD領域1cに入射する光をより効果的に遮光することが可能である。
図6において、TFTアレイ基板10上のTFT30よりも層間絶縁膜41を介して上層側には、蓄積容量70が設けられている。
蓄積容量70は、下部容量電極71と上部容量電極300が誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
上部容量電極は、容量線300の一部として形成されている。その構成については図示を省略してあるが、容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続される。これにより、上部容量電極300は、固定電位に維持され、固定電位側容量電極として機能し得る。上部容量電極300は、例えばAl(アルミニウム)、Ag(銀)等の金属又は合金を含んだ非透明な金属膜から形成されており、TFT30を遮光する上側遮光膜(内蔵遮光膜)としても機能する。尚、上部容量電極300は、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等から構成されていてもよい。
図4又は図6において、下部容量電極71は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9aに電気的に接続された画素電位側容量電極である。より具体的には、下部容量電極71は、コンタクトホール83(図4及び図6参照)を介して画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されると共に、コンタクトホール84(図4及び図11参照)を介して中継層93に電気的に接続されている。更に、中継層93は、コンタクトホール85(図4及び図11参照)を介して画素電極9aに電気的に接続されている。即ち、下部容量電極71は、中継層93と共に画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9a間の電気的な接続を中継する。下部容量電極71は、例えば導電性のポリシリコン、或いは例えばAl(アルミニウム)等の金属又は合金を含んだ非透明な金属膜から形成されている。
ここに、下部容量電極71は、好ましくは画素電位側容量電極としての機能の他、上側遮光膜としての上部容量電極300とTFT30との間に配置される、光吸収層或いは遮光膜としての機能も有する。従って、交差領域99crにおいて、画素電極側LDD領域1cに対してそれよりも上層側から入射する光について、上部容量電極300及び下部容量電極71の各々によっても、遮光することが可能である。
誘電体膜75は、例えばHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、或いは窒化シリコン膜等から構成された単層構造、或いは多層構造を有している。
図6及び図11において、TFTアレイ基板10上の蓄積容量70よりも層間絶縁膜42を介して上層側には、データ線6a及び中継層93が設けられている。
データ線6aは、半導体層1aのデータ線側ソースドレイン領域1dに、絶縁膜202、層間絶縁膜41、誘電体膜75及び層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール81を介して電気的に接続されている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN層等との多層膜からなる。データ線6aは、TFT30を遮光する機能も有している。
図4又は図5に示すように、データ線6aは、交差領域99crにおいて、ゲート電極3aと重なるように形成される。よって、交差領域99crにおいて、画素電極側LDD領域1cに対してそれよりも上層側から入射する光について、データ線6aによっても遮光することが可能となる。
図4及び図11において、中継層93は、層間絶縁膜42上においてデータ線6a(図6参照)と同層に形成されている。データ線6a及び中継層93は、例えば金属膜等の導電材料で構成される薄膜を層間絶縁膜42上に薄膜形成法を用いて形成しておき、当該薄膜を部分的に除去、即ちパターニングすることによって相互に離間させた状態で形成される。従って、データ線6a及び中継層93を同一工程で形成できるため、装置の製造プロセスを簡便にできる。
図6及び図11において、画素電極9aは、データ線6aよりも層間絶縁膜43を介して上層側に形成されている。画素電極9aは、下部容量電極71、コンタクトホール83、84及び85、並びに中継層93を介して半導体層1aの画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的に接続されている。コンタクトホール85は、層間絶縁層43を貫通するように形成された孔部の内壁にITO等の画素電極9aを構成する導電材料が成膜されることによって形成されている。画素電極9aの上側表面には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。
以上に説明した画素部の構成は、各画素部に共通である。画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されている。
よって、以上説明したような本実施形態の液晶装置では、その動作時において、TFT30の光リーク電流の発生に起因する、表示不良の発生を防止、或いは発生しても表示上、表示不良と視認されない程度に低減することが可能となる。また、TFT30の動作不良や開口率の低下を防止しつつ容易に各画素を精細化することもできる。その結果、本実施形態では、液晶装置において高品質な画像を表示することができる。
ここで、上述したTFT30の動作時に、画素電極側LDD領域1cにおいて、データ線側LDD領域1bに比べて光リーク電流が相対的に発生しやすい理由について、図12から図17を参照して、詳細に説明する。
先ず、テスト用のTFTに光を照射した場合における、ドレイン電流の大きさを測定した測定結果について、図12を参照して説明する。ここに図12は、テスト用のTFTにおける光照射位置とドレイン電流との関係を示すグラフである。
図12において、データE1は、テスト用の単体のTFT、即ちTEG(Test Element Group)に対して、光スポット(約2.4umの可視光レーザ)をドレイン領域側からソース領域側へ順に走査しつつ照射した場合におけるドレイン電流の大きさを測定した結果を示している。TEGは、チャネル領域、ソース領域及びドレイン領域に加え、チャネル領域とソース領域との接合部に形成されたソース側接合領域、及びチャネル領域とドレイン領域との接合部に形成されたドレイン側接合領域を有している。
尚、図12の横軸は、光スポットが照射された光照射位置を示しており、チャネル領域とドレイン側接合領域との境界及びチャネル領域とソース側接合領域との境界、更にチャネル領域をゼロとしている。図12の縦軸は、ドレイン電流の大きさ(但し、所定の値で規格化された相対値)を示しており、ドレイン電流がドレイン領域からソース領域へ向かって流れている場合には、正の値(即ち、プラスの値)を示し、ドレイン電流がソース領域からドレイン領域へ向かって流れている場合には、負の値(即ち、マイナスの値)を示す。
図12において、データE1は、いずれの光照射位置でもプラスの値を示している。即ち、ドレイン電流が、ドレイン領域からソース領域へ向かって流れていることを示している。また、データE1は、ドレイン側接合領域内において、ソース側接合領域内におけるよりも大きな値を示している。即ち、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合には、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、ドレイン電流が大きくなることを示している。つまり、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合には、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、光リーク電流が大きくなることを示している。尚、ドレイン電流は、暗電流(或いはサブスレッショルドリーク、即ち、光を照射しない状態でも、TEGのオフ状態においてソース領域及びドレイン領域間に流れる漏れ電流)と光リーク電流(或いは光励起電流、即ち、光が照射されることによる電子の励起に起因して生じる電流、)とから構成されている。
次に、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合の方が、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、光リーク電流が大きくなるメカニズムについて、図13及び図14を参照して説明する。ここに図13は、ドレイン側接合領域において光励起が発生した場合におけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。図14は、ソース側接合領域において光励起が発生した場合におけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。尚、図13及び図14では、上述したTFT30が電気的に接続された画素電極9aにおける中間階調の表示を想定して、ソース電位(即ち、ソース領域の電位)を4.5V、ゲート電位(即ち、チャネル領域の電位)を0V、ドレイン電位(即ち、ドレイン領域の電位)を9.5Vとしている。図13及び図14の横軸は、TEGを構成する半導体層における各領域を示している。図13及び図14の縦軸は、電子のポテンシャル(フェルミレベル)を示している。電子は負の電荷を有するため、各領域における電位が高いほど、電子のポテンシャルは低くなり、各領域における電位が低いほど、電子のポテンシャルは高くなる。
図13は、チャネル領域及びドレイン領域間に形成されたドレイン側接合領域に光スポットが照射され、ドレイン側接合領域において光励起が生じる場合におけるキャリアの振舞いを示している。
図13において、光リーク電流は、2つの電流成分からなると推定できる。
即ち、第1の電流成分として、光励起によって生じた電子の移動による電流成分がある。より具体的には、ドレイン側接合領域における光励起によって生じた電子(図中、「e」参照)が、ドレイン側接合領域からポテンシャルのより低いドレイン領域へ移動することにより生じる電流成分(この電流成分は、ドレイン領域からソース領域へ流れる)である。
第2の電流成分として、光励起によって生じたホール(即ち、正孔、図中、「h」参照)の移動による電流成分がある。より具体的には、ドレイン側接合領域における光励起によって生じたホールが、ドレイン側接合領域からポテンシャルのより低い(即ち、電子のポテンシャルとしてはより高い)チャネル領域へ移動することによって発生するバイポーラ効果に起因する電流成分である。つまり、チャネル領域へ移動したホールの正電荷によって、チャネル領域のポテンシャル(即ち、いわゆるベースポテンシャル)がポテンシャルLc1からポテンシャルLc2へと引き下げられるため、ソース領域からドレイン領域へと向かう電子が増大するという効果による電流成分(この電流成分は、ドレイン領域からソース領域へ流れる)である。よって、ドレイン側接合領域において光励起が生じる場合において、第1及び第2の電流成分はいずれもドレイン電流(言い換えれば、コレクタ電流)を増大させる方向(即ち、ドレイン領域からソース領域へ流れる方向)に発生する。
図14は、チャネル領域及びソース領域間に形成されたソース側接合領域に光スポットが照射され、ソース側接合領域において光励起が生じる場合にキャリアの振舞いを示している。
図14において、光リーク電流は、図13を参照して上述したドレイン側接合領域において光励起が生じる場合とは異なり、ホールがソース側接合領域からポテンシャルのより低い(即ち、電子のポテンシャルとしてはより高い)チャネル領域へ移動するバイポーラ効果に起因した第2の電流成分が支配的であると推定できる。即ち、ソース側接合領域における光励起によって生じた電子(図中、「e」参照)が、ソース側接合領域からポテンシャルのより低いソース領域へ移動することにより生じる第1の電流成分(この電流成分は、ソース領域からドレイン領域へ流れる)は、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分(この電流成分は、ドレイン領域からソース領域へ流れる)よりも少ないと推定できる。
図14において、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分(即ち、チャネル領域へ移動したホールの正電荷によって、ベースポテンシャルがポテンシャルLc1からポテンシャルLc3へと引き下げられるため、ソース領域からドレイン領域へと向かう電子が増大するという効果による電流成分)は、ドレイン領域からソース領域へと流れる。一方、上述した第1の電流成分は、ソース領域からドレイン領域へと流れる。即ち、第1の電流成分と第2の電流成分とは互いに反対方向に流れる。ここで、再び図12において、ソース側接合領域に光スポットを照射した場合には、ドレイン電流(データE1参照)は正の値を示している。即ち、この場合には、ドレイン電流はドレイン領域からソース領域へ向かって流れている。よって、第1の電流成分は、暗電流や第2の電流成分であるバイポーラ効果による電流成分を抑制するのみで、ドレイン電流の流れをソース領域からドレイン領域へ向かわせる程度までは大きくないといえる。
更に、チャネル領域及びソース領域間の電位差は、チャネル領域及びドレイン領域間の電位差よりも小さいため、ソース領域側の空乏化領域(即ち、ソース側接合領域)は、ドレイン領域側の空乏化領域(即ち、ドレイン側接合領域)よりも狭い。このため、ソース側接合領域に光スポットを照射した場合には、ドレイン側接合領域に光スポットを照射した場合と比較して、光励起の絶対量が少ない。
以上、図13及び図14を参照して説明したように、ドレイン側接合領域において光励起が生じる場合、第1及び第2の電流成分はいずれもドレイン電流を増大させる方向に発生する。一方、ソース側接合領域において光励起が生じる場合、第1の電流成分が第2の電流成分を抑制する。よって、ドレイン側接合領域内に光スポットが照射された場合の方が、ソース側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、ドレイン電流が大きくなる(即ち、光リーク電流が大きくなる)。
次に、画素電極側ソースドレイン領域がドレイン電位とされると共に画素電極側接合領域内に光スポットが照射された場合の方が、データ線側ソースドレイン領域がドレイン電位とされると共にデータ線側接合領域内に光スポットが照射された場合よりも、光リーク電流が大きくなるメカニズムについて、図15及び図16を参照して説明する。ここに図15は、データ線側ソースドレイン領域がドレイン電位とされる場合において、データ線側接合領域(言い換えれば、ドレイン側接合領域)において光励起が発生したときにおけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。図16は、画素電極側ソースドレイン領域がドレイン電位とされる場合において、画素電極側接合領域(言い換えれば、ドレイン側接合領域)において光励起が発生したときにおけるキャリアの振る舞いを示す概念図である。
以下では、画素スイッチング用のTFTを含む画素部に電荷が保持され、光励起が生じた場合を考える。上述したようなTEGを想定した場合と異なる点は、画素スイッチング用のTFTの画素電極側は、フローティング状態になり得る点である。画素スイッチング用のTFTの画素電極側には、蓄積容量70の如き保持容量が接続される場合もあり、容量値が十分に大きければ、上述したTEGを用いた場合と同様に固定電極に近い状態となるが、容量が十分に大きくなければ、フローティング状態或いはこれに近い状態になる。尚、ここでは、容量値は十分には大きくないものと仮定する。
図15及び図16において、液晶装置では、いわゆる焼き付きを防止するために交流駆動が採用される。ここでは、中間階調の表示を想定して、画素電極に、7Vを基準電位として、4.5Vのマイナスフィールドの電荷と9.5Vのプラスフィールドの電荷とが交互に保持される場合を想定する。このため画素スイッチング用のTFTのソース及びドレインは、画素電極側ソースドレイン領域とデータ線側ソースドレイン領域との間で、固定ではなく変化する。即ち、図15に示すように、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域の電位がデータ線側ソースドレイン領域の電位よりも低くなる場合)には、画素電極側ソースドレイン領域は、ソースとなるのに対し、図16に示すように、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域の電位がデータ線側ソースドレイン領域の電位よりも高くなる場合)には、画素電極側ソースドレイン領域は、ドレインとなる。
図15において、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合には、画素電極側ソースドレイン領域が、ソース(或いはエミッタ)となり、データ線側ソースドレイン領域が、ドレイン(或いはコレクタ)となる。ドレイン側接合領域であるデータ線側接合領域において光励起が生じた場合、上述したように、光励起によって生じた電子の移動による第1の電流成分とバイポーラ効果に起因する第2の電流成分が発生する。ここで、バイポーラ効果に起因する第2の電流成分が生じると(即ち、ベースポテンシャルがポテンシャルLc1からポテンシャルLc2へと引き下げられ、ソースである画素電極側ソースドレイン領域からドレインであるデータ線側ソースドレイン領域へ電子が移動すると)、フローティング状態である画素電極側ソースドレイン領域から電子が抜き取られることになり、エミッタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルが、ポテンシャルLs1からポテンシャルLs2へと低下する(電位は、上昇する)。即ち、ドレイン側接合領域であるデータ線側接合領域において光励起が生じた場合、ベースポテンシャルが低下すると共にエミッタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルも低下する。言い換えれば、ドレイン側接合領域であるデータ線側接合領域において光励起が生じた場合、ベース電位の上昇に伴ってエミッタ電位も上昇する。このため、ドレイン電流(即ち、コレクタ電流)が、抑制されることになる。
一方、図16において、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合には、データ電極側ソースドレイン領域が、ソース(或いはエミッタ)となり、画素電極側ソースドレイン領域が、ドレイン(或いはコレクタ)となる。ドレイン側接合領域である画素電極側接合領域において光励起が生じた場合、上述したように、光励起によって生じた電子の移動による第1の電流成分とバイポーラ効果に起因する第2の電流成分が発生する。ここで、ソースとなるデータ線側ソースドレイン領域は、データ線と接続されているため、画素電極とは異なりフローティング状態ではなく、電位に変化は生じない。バイポーラ効果に起因する第2の電流成分が生じると(即ち、ベースポテンシャルがポテンシャルLc1からポテンシャルLc2へと引き下げられ、ソースであるデータ線側ソースドレイン領域からドレインである画素電極ソースドレイン領域へ電子が移動すると)、フローティング状態である画素電極側ソースドレイン領域へ電子が流れ込むことになり、コレクタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルが、ポテンシャルLd1からポテンシャルLd2へと上昇する(電位は、低下する)。しかし、コレクタとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルの上昇は、上述したソースとしての画素電極側ソースドレイン領域のポテンシャルの低下とは異なり、ドレイン電流を抑制する働きは殆どない。ドレイン電流(即ち、コレクタ電流)は、エミッタ電位に対するベース電位の大きさよって殆ど決まるため、コレクタ電位が低下してもドレイン電流を抑制する働きは殆ど生じない、言い換えれば、バイポーラトランジスタの飽和領域に入った状態である。
以上、図15及び図16を参照して説明したように、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)には、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分は殆ど抑制されないのに対し、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、データ側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)には、バイポーラ効果に起因した第2の電流成分は、フローティング状態である画素電極側ソースドレイン領域の電位の上昇に起因して抑制される。つまり、画素電極側ソースドレイン領域がドレインとなる場合の方が、データ側ソースドレイン領域がドレインとなる場合よりも、光リーク電流に起因してドレイン電流が増加する。
ここで、図17は、画素スイッチング用のTFT全体に、比較的強い光を照射した際の画素電極電位の波形を示している。
図17において、データE2は、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(画素電極電位が電位V1とされる場合)における画素電極電位の変動Δ1は、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(画素電極電位が電位V2とされる場合)における画素電極電位の変動Δ2よりも大きいことを示している。即ち、画素電極において、プラスフィールドの電荷は、マイナスフィールドの電荷よりも保持されにくい(つまり、光リークが発生しやすい)ことを示している。これは、画素電極にプラスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、画素電極側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)の方が、画素電極にマイナスフィールドの電荷が保持される場合(即ち、データ線側ソースドレイン領域が、ドレインとなる場合)よりも光リーク電流が生じやすいという上述したメカニズムと一致している。
以上、図12から図17を参照して詳細に説明したように、画素スイッチング用のTFTにおけるドレイン側接合領域において光励起が生じる場合にドレイン電流が増加しやすい。更に、画素電極側ソースドレイン領域がドレインとなる場合においてドレイン電流が増加しやすい(逆に言えば、データ線側ソースドレイン領域がドレインとなる場合には、バイポーラ効果に起因した電流成分が抑制されている)。よって、本実施形態に係る液晶装置のように、画素電極側接合領域である画素電極側LDD領域1cに対する遮光性を、データ線側接合領域であるデータ線側LDD領域1bに対する遮光性よりも高めることで、高い開口率を維持しつつTFT30における光リーク電流を極めて効果的に低減できる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る液晶装置について図18及び図19を参照して説明する。ここに図18は、第2実施形態に係る液晶装置の画素部の構成を、トランジスタの構成に着目して示す平面図である。図19は、図18のD−D’線断面図である。また、図18及び図19では、第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付している。尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、トランジスタ30の構成が大きく異なり、その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、トランジスタ30を中心に液晶装置の構成を説明し、その他の第1実施形態と重複する構成については適宜説明を省略する。
図18において、第2実施形態に係る液晶装置のトランジスタ30は、第1実施形態の縦型トランジスタに対して、横型のトランジスタである。即ち、第2実施形態におけるトランジスタ30では、半導体層1aが走査線11aに沿った方向(即ち、図中のX方向)に延在するように配置されている。
更に走査線11aが、TFTアレイ基板10及び下地絶縁膜12間に配置されている。走査線11aは遮光性を有しており、第1実施形態における下側遮光膜110と同様の機能も備える。
即ち、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクタ等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などの、戻り光のうちTFT30に進行する光を遮光することができる。
走査線11aは、半導体層1aの両脇を通るように設けられたコンタクトホール86を介して、半導体層1aの上層側に配置されたゲート電極3aと電気的に接続される。よって、走査信号をゲート電極3aに伝達し、トランジスタ30を確実に動作させることができる。
図19において、半導体層1aの上層には、保護膜205が設けられている。保護膜205は、例えば保護膜205より上層側に設けられた層(例えば、絶縁膜202)をエッチングする際などに、保護膜205より下層側に設けられた層(例えば、半導体層1a)が傷ついてしまうことを防止する。
チャネル領域1a’とゲート電極3aとが対向配置される部分においては、保護膜205はエッチング等により除去され、ゲート絶縁膜2が形成される。この際、ゲート電極3aと画素電極側遮光膜31aとは、同一層でありながらも、基板10に垂直をなす上下方向で互いに異なる高さに配置される。即ち、画素電極側遮光膜31aは、ゲート絶縁膜2と保護膜205との厚さの差分だけゲート電極3aより高い位置に配置される。このように、画素電極側遮光膜31aの高さを変化させることにより、入射する光の角度に応じた遮光が可能となる。尚、画素電極側遮光膜31aの高さは、上述したように画素電極側遮光膜31aの下層の膜の膜厚を変化させる他、膜の数を増減させて変化させることも可能である。即ち、半導体層1a及び画素電極側遮光膜31a間に複数の絶縁膜等が形成されるようにしてもよい。
以上説明したように、横型のトランジスタを用いる場合であっても、画素電極側遮光膜31aを設けることにより、上述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図20は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
図20に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
尚、図20を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1a…半導体層、1a’…チャネル領域、1b…データ線側LDD領域、1c…画素電極側LDD領域、1d…データ線側ソースドレイン領域、1e…画素電極側ソースドレイン領域、2…ゲート絶縁膜、3a…ゲート電極、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、11a…走査線、30…TFT、31a…画素電極側遮光膜、99a…開口領域、99b…非開口領域、99ba…第1領域、99bb…第2領域、99cr…交差領域、202…絶縁膜、202h…開口部