JP2009178906A - インクジェット記録ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】i線露光によりインク吐出口の形成を行う場合でも、下地による反射の影響がなく、安定したパターン形状が可能であり、反射防止膜が残らないインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】複数のインク吐出エネルギー発生素子を有する基板と、インク吐出エネルギー発生素子上に液滴を保持するためのインク流路と、i線露光にて形成したインクを吐出するためのインク吐出口とを有するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、反射防止膜を形成する工程と、i線露光によりインク吐出口形成後、前記反射防止膜を、反射防止膜を選択的に除去可能な方法で除去する工程を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】複数のインク吐出エネルギー発生素子を有する基板と、インク吐出エネルギー発生素子上に液滴を保持するためのインク流路と、i線露光にて形成したインクを吐出するためのインク吐出口とを有するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、反射防止膜を形成する工程と、i線露光によりインク吐出口形成後、前記反射防止膜を、反射防止膜を選択的に除去可能な方法で除去する工程を有することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、インクジェット記録ヘッドを高精度に製造する製造方法に関するものである。
インクジェット記録ヘッドは、エネルギー発生素子の機能を利用して、紙や樹脂シートなどの被記録媒体上にインクを吐出させて、文字、記号、図形などの記録を行う。
前記エネルギー発生素子に発熱抵抗素子を用いる場合、熱エネルギーの作用を受けた液体が加熱されて気泡を発生し、気泡発生に基づく作用力によって、基板部先端のインク吐出口から液滴が吐出される。前記液滴が被記録部材に付着することで、情報の記録が行われる。
このようなインクジェット記録ヘッドは、液体を吐出するために設けられたインク吐出部、インク流路、熱エネルギーを発生する手段である熱変換体としての発熱抵抗素子、該発熱抵抗素子をインクから保護する上部保護層、蓄熱するための下部層を具備している。
従来の前記インクジェット記録ヘッドの製造方法として、特許文献1記載の製造方法が挙げられる。具体的には、溶解可能な樹脂にてインク流路パターンを形成する工程と、常温にて固体状のエポキシ樹脂を含む被覆樹脂を塗布する工程と、インク吐出口を形成する工程と、前記溶解可能な樹脂を溶出する工程を有する製造方法である。前記製造方法により作製されたインクジェット記録ヘッドは、発熱抵抗素子とインク吐出口間の距離(OH)を高い精度で短くかつ再現よく設定することができ、これにより高品位記録が可能となる。
また、絶縁層膜と耐キャビテーション層としてのTa膜とが積層した発熱抵抗素子を有する基板と、インク吐出部材である被覆樹脂とをポリエーテルアミド樹脂からなる密着層を介して接合する製造方法が挙げられる(特許文献2)。密着層の存在によりTa膜と被覆樹脂との密着力が向上し、剥離を防ぐ効果が得られる。
図6(A)〜(G)は、従来のインクジェット記録ヘッドの基本的な製造工程を示した断面模式図である。
図6(A)に示されているシリコン基板1は結晶方位100のシリコン基板を使用し、発熱抵抗素子等のインク吐出エネルギー発生素子3が複数個配置されている。インク吐出エネルギー発生素子上には、絶縁層膜4と、耐キャビテーション層5として、Ta膜が設けられている。またシリコン基板1の裏面はSiO2膜6で全面覆われている。
まず、図6(B)に示すように前記シリコン基板1の表面に、ポリエーテルアミド樹脂(密着層)7、裏面にポリエーテルアミド樹脂8をそれぞれ塗布し、ベークにより硬化させる。その後、ポリエーテルアミド樹脂(密着層)7をパターニングするため、ポジ型レジストをスピンコート等により塗布、露光、現像し、ポリエーテルアミド樹脂7をドライエッチング等によりパターニングし、前記ポジ型レジストを剥離する。同様の工程をポリエーテルアミド樹脂8についても行い、パターニングする。
そして図6(C)に示すように表面にインク流路となる型材料10(ポジ型レジスト)をパターニングする。
次に図6(D)に示すように、型材料上に被覆感光性樹脂12をスピンコート等により形成する。前記被覆感光性樹脂上には撥水材13がドライフィルムのラミネート等により形成される。インク吐出口14は、被覆感光性樹脂12及び撥水材13を紫外線やDeepUV光等による露光、現像を行ってパターニングする。
次に図6(E)に示すように、型材料10及び被覆感光性樹脂12等が形成されている前記シリコン基板1の表面及び側面をスピンコート等により保護材15で覆う。前記シリコン基板1の裏面に形成されているSiO2膜6は、前記ポリエーテルアミド樹脂8をマスクとしてウェットエッチングによりパターニングされ、異方性エッチングの開始面となるSi面11が露出する。
次に図6(F)に示すように、前記シリコン基板1にインク供給口16を設ける。このインク供給口16は、シリコン基板1を化学的にエッチング、例えばTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)等の強アルカリ溶液による異方性エッチングにより形成する。そして裏面から異方性エッチングを行っていくと表面の犠牲層2に到達し、インク供給口16が形成される。
次に図6(G)に示すように、ポリエーテルアミド樹脂8及び保護材15を除去する。更に型材料10を、前記インク吐出口14及び前記インク供給口16から溶出させ、絶縁層膜4等を除去することにより、インク流路(発泡室)17が形成される。
近年では、インクジェット記録ヘッドを用いた画像形成において、高速化や高品質化が求められているため、インクジェット記録ヘッドのインク吐出口の数が多くなると共に、インク吐出口寸法が数μmから数十μmと極めて小さくなっている。
しかし、より高度なインク吐出口形状を形成するためにi線ステッパーを用いてi線露光した場合(i線:波長365nm)、下地からの反射光の影響によりインク吐出口が所望のパターン形状とは異なり、歪んだ形状になる。
インク吐出口の変形を抑制する方法として、下地からの反射光を減衰させる反射防止膜を成膜する方法が考えられる。例えば、特許文献3には、i線露光における反射防止膜としてN/Si組成比を0.50〜0.85とした窒化シリコン膜を200nm以下で成膜し、パターン膜からの反射光を光吸収と光干渉とで相乗的に減衰させる方法が示されている。
特開平6―286149号公報
特開平11―348290号公報
特開平7―37799号公報
特許文献3を参考にして、耐キャビテーション層上にSiN等の反射防止膜を設けることで、反射光による影響を緩和することはできる。しかし、省エネルギー等の観点から、インク吐出エネルギー発生素子部分に耐キャビテーション層以外の余分な膜を残さない製造方法が望まれる。
本発明は、i線露光によりインク吐出口の形成を行う場合でも、下地による反射の影響がなく、安定したパターン形状が可能であり、反射防止膜が残存しないインクジェット記録ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明におけるインクジェット記録ヘッドの製造方法は、複数のインク吐出エネルギー発生素子を有する基板と、インク吐出エネルギー発生素子上に液滴を保持するためのインク流路と、i線露光にて形成したインクを吐出するためのインク吐出口とを有するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、下記(1)から(6)の工程を含むことを特徴とする。
(1)前記インク吐出エネルギー発生素子を有する基板上に反射防止膜を形成する工程
(2)前記反射防止膜上にインク流路となる型材料を形成する工程
(3)前記型材料周面にインク吐出部材となる被覆感光性樹脂を塗布する工程
(4)基板面に対して垂直方向から前記被覆感光性樹脂にi線露光し、現像を行い、インク吐出口を形成する工程
(5)前記型材料を、型材料を選択的に除去可能な方法で除去する工程
(6)前記反射防止膜を、反射防止膜を選択的に除去可能な方法で除去する工程。
(2)前記反射防止膜上にインク流路となる型材料を形成する工程
(3)前記型材料周面にインク吐出部材となる被覆感光性樹脂を塗布する工程
(4)基板面に対して垂直方向から前記被覆感光性樹脂にi線露光し、現像を行い、インク吐出口を形成する工程
(5)前記型材料を、型材料を選択的に除去可能な方法で除去する工程
(6)前記反射防止膜を、反射防止膜を選択的に除去可能な方法で除去する工程。
i線露光によりインク吐出口の形成を行う場合でも、下地の反射の影響を緩和し、安定したパターン形状が可能になる。さらに、反射防止膜を除去することで、省エネルギー対策にも有効である。
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図2は本実施形態において製造したインクジェット記録ヘッドの断面図の一例である。また図3は本発明を実施するためのインクジェット記録ヘッドの模式的斜視図である。なお、図2は、図3のA−A’を破断して示す断面図である。
本発明のインクジェット記録ヘッドは、図3に示すようにインク吐出エネルギー発生素子3が所定のピッチで2列並んで形成されたシリコン基板1を有している。
シリコン基板1は、シリコン単結晶体であることが好ましく、基板の貫通孔の穿設を異方性エッチングにより行う場合は、結晶方位100のシリコン単結晶体であることが好ましい。基板の貫通孔の穿設をドライエッチング、エキシマレーザーにより行う場合は、結晶方位110のシリコン単結晶体などであってもよい。シリコン基板の表裏は、それぞれシリコン酸化膜の熱酸化膜により被覆されていてもよく、シリコン基板の表面に設けられる熱酸化膜には、熱酸化膜が除去されたメンブレン部が設けられていてもよい。
本発明におけるインク吐出エネルギー発生素子3は、インク液小滴を吐出させるための吐出エネルギーがインクに与えられ、インク液滴がインク吐出口14から吐出可能なものであれば、特に限定はされない。例えば、インク吐出エネルギー発生素子3として発熱抵抗素子が用いられる場合、該発熱抵抗素子が近傍のインクを加熱することにより、インクに状態変化を生起させ吐出エネルギーを発生する。
前記インク吐出エネルギー発生素子上には、図2に示すように電気的絶縁性を持たせるためのSiO2等からなる絶縁層膜4、インクによる腐食を抑制するTa等からなる耐キャビテーション膜5が形成されている。
さらに、シリコン基板上にはポリエーテルアミド樹脂からなる密着層7が形成されている。密着層7の存在により、Taからなる耐キャビテーション膜5と被覆感光性樹脂12との密着力が向上し、剥離を防ぐ効果が得られる。ポリエーテルアミド樹脂としては、「HIMAL」(商品名、日立化成工業(株)製)等を用いることができる。
前記密着層7上部には、被覆感光性樹脂12により、各インク吐出エネルギー発生素子3の上方に開口するインク吐出口14及びインク吐出エネルギー発生素子上に液滴を保持するためのインク流路(発泡室)17が形成されている。
本発明に用いる被覆感光性樹脂12は、感光性樹脂と光重合開始剤を含有する感光性材料であることがパターニング精度の観点から好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、エポキシ樹脂等を含むネガ型感光性樹脂等を用いることができる。
なお、インク吐出口14とインク吐出エネルギー発生素子3間の距離(OH)18は、インク吐出特性に影響を与える。
また、SiO2膜6をマスクとしてシリコン基板1の異方性エッチングによって形成されたインク供給口16が、インク吐出エネルギー発生素子3の2つの列の間に開口している。
インク供給口16を介してインク流路17内に充填されたインクに、インク吐出エネルギー発生素子3により発生する圧力を加えることによって、インク吐出口14からインク液滴を吐出させ、被記録媒体に付着させることにより記録を行う。
本発明のインクジェット記録ヘッドは、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、更には各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。また、本発明のインクジェット記録ヘッドを用いることによって、紙、糸、繊維、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックなど種々の被記録媒体に記録を行うことができる。なお、本発明において「記録」とは、文字や図形などの意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を付与することも意味する。
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1におけるインクジェット記録ヘッドを作成するための工程を、図1により説明する。
実施例1におけるインクジェット記録ヘッドを作成するための工程を、図1により説明する。
図1(A)〜(I)は、図3のA−A’断面図であり、本発明のインクジェット記録ヘッドの基本的な製造工程を示す断面模式図である。
図1(A)に示されるシリコン基板上には、発熱抵抗体等のインク吐出エネルギー発生素子3が複数個配置されている。インク吐出エネルギー発生素子上には、絶縁層膜4と、耐キャビテーション層5が設けられている。絶縁層膜4は、SiO2からなる。また、耐キャビテーション層5にはTa膜が用いられている。また前記シリコン基板1の裏面はSiO2膜6で全面覆われている。さらに、アルカリ性の溶液によってインク供給口16を形成する際に必要となる犠牲層2がシリコン基板1に設けてある。
犠牲層2はアルカリ溶液でエッチングすることができ、ポリシリコンやエッチング速度の速いアルミ、アルミシリコン、アルミ銅、アルミシリコン銅などで形成される。インク吐出エネルギー発生素子3の配線やインク吐出エネルギー発生素子3を駆動するための半導体素子は不図示である。
まず、図1(B)に示すように、反射防止膜9を形成した。反射防止膜としてはSiNを用いることが好ましい。本実施例では反射防止膜としてSiN膜を用いた。
また、前記SiN膜の波長633nmにおける屈折率nが2.05<nの範囲にあることが好ましい。SiN膜の波長633nmにおける屈折率nはSiN膜の組成比(N/Si)と相関があることが知られている(特許文献3)。波長633nmにおける屈折率nが前記範囲にあるSiN膜は、i線露光によるインク吐出口形成時に下地からの反射光をより低減することができるため、インク吐出口の変形を抑制できる。本実施例で用いたSiN膜の波長633nmにおける屈折率nは2.05であった。
なお、SiN膜はプラズマCVD、常温CVD等にて形成することができる。本実施例では常温CVDによりSiN膜の形成を行った。
また、シリコン基板1の裏面にポリエーテルアミド樹脂層8をスピンコートにより塗布し、ベークにより硬化させた。前記ポリエーテルアミド樹脂には「HIMAL」(商品名、日立化成工業(株)製)を用いた。その後、裏面のポリエーテルアミド樹脂層8にインク供給口16を形成するために、ポジ型レジストであるi線レジストをパターニングし、前記ポジ型レジストを剥離した。
次に、図1(C)に示すように、前記反射防止膜上に溶解可能な樹脂であるポジ型感光性樹脂を塗布した。本実施例では、ポジ型レジスト(商品名:「ODUR」、東京応化工業社製)をスピンコートにより塗布した。その後、紫外線やDeepUV等による露光、および現像を行ってインク流路17となる型材料10を形成した。
また、型材料10をマスクとして反射防止膜9をエッチングし、型材料下のみに反射防止膜9を残した。反射防止膜9のエッチングは、ドライエッチングにより行った。
次に、図1(D)に示すように、前記型材料周面にインク吐出部材となる被覆感光性樹脂12をスピンコートにより塗布した。被覆感光性樹脂としては、「CR」(商品名、ネガ型レジスト)を用いた。前記被覆感光性樹脂上には撥水材13をドライフィルムのラミネートにより形成した。インク吐出口14は、被覆感光性樹脂12を、i線ステッパーを用いて、基板面に対して垂直方向からi線露光を行い、現像を行うことにより形成した。
次に、図1(E)に示すように、型材料10及び、被覆感光性樹脂12等がパターン形成されている前記シリコン基板1の表面及び側面を保護材15でスピンコート等により覆った。前記保護材15は、装置搬送等のキズ防止の保護材であり、また異方性エッチングを行う際に使用する強アルカリ溶液に十分耐えうる材料であれば特に限定されない。保護材15により、異方性エッチングを行うことによる前記撥水材13等の劣化防止を可能とする。
また、前記シリコン基板1の裏面のSiO2膜6を、前記ポリエーテルアミド樹脂層8をマスクとしてウェットエッチングによりパターニングして、異方性エッチングの開始面となるSi面11を露出した。
次に、図1(F)に示すように、シリコン基板1を強アルカリ溶液により化学的にエッチングを行った。本実施例では強アルカリ溶液としてTMAHを用いた。シリコン基板1の結晶方位が100のため、表面の犠牲層2に到達し、インク供給口16が形成された。
次に、図1(G)に示すように、ポリエーテルアミド樹脂8、絶縁層膜4等をエッチングで除去した。前記エッチングは、ドライエッチングにより行った。
次に、図1(H)に示すように、前記保護材15の除去を行い、型材料10を前記インク供給口16から溶出させ除去を行なった。型材料10の除去は、型材料を選択的に除去可能な方法で行う必要があり、DeepUV光による全面露光を行った後、現像、乾燥を行えばよく、必要に応じて現像の際、超音波浸漬を行えば十分である。
次に、図1(I)に示すように、型材料除去後の空間に露出した反射防止膜9を、エッチングで反射防止膜9を選択的に除去することで、インク流路(発泡室)17を形成した。反射防止膜9のエッチングは、ウェットエッチングにより行った。
その後、インク吐出部が形成されたシリコン基板1をダイシングソーにより切断分離、チップ化し、インク吐出エネルギー発生素子3を駆動させるための電気的接合を行った。さらに、インク供給のためのチップタンク部材を接続して、インクジェット記録ヘッドが完成した。
[実施例2]
実施例2では図2のインクジェット記録ヘッドを作成するための工程を図4により説明する。なお、各材料について特に記載がない場合は実施例1と同様の材料を用いた。
実施例2では図2のインクジェット記録ヘッドを作成するための工程を図4により説明する。なお、各材料について特に記載がない場合は実施例1と同様の材料を用いた。
図4(A)〜(J)は、図3のA−A’断面図であり、本発明のインクジェット記録ヘッドの基本的な製造工程を示すための断面模式図である。
図4(A)に示されるシリコン基板上には、発熱抵抗体等のインク吐出エネルギー発生素子3が複数個配置されている。インク吐出エネルギー発生素子上には、絶縁層膜4と、耐キャビテーション層5が設けられている。また前記シリコン基板1の裏面はSiO2膜6で全面覆われている。さらに、アルカリ性の溶液によってインク供給口16を形成する際に必要となる犠牲層2がシリコン基板1に設けてある。
まず、図4(B)に示すように、耐キャビテーション層5と被覆感光性樹脂12との接合面にポリエーテルアミド樹脂からなる密着層7と、シリコン基板1の裏面にポリエーテルアミド樹脂層8をスピンコートにより塗布し、ベークにより硬化させた。その後、実施例1同様に、裏面のポリエーテルアミド樹脂層8にインク供給口16を形成するために、ポジ型レジストをスピンコートにより塗布、露光、現像し、ドライエッチングによりパターニングし、前記ポジ型レジストを剥離した。この裏面はパターニングにする時に表面を保護して行ってもよい。同様にして、密着層7を形成した。
次に、図4(C)に示すように、SiNからなる反射防止膜9を形成した。インクジェット記録ヘッド上に密着層が存在する場合、常温CVDにて反射防止膜となるSiN膜を成膜することが好ましい。
次に、図4(D)に示すように、実施例1同様に溶解可能な樹脂であるポジ型レジストをスピンコートにより塗布、紫外線やDeepUV等による露光、現像を行ってインク流路となる型材料10を形成した。
また、型材料10をマスクとして反射防止膜9をエッチングし、型材料下のみに反射防止膜9を残した。反射防止膜9のエッチングは、ウェットエッチングにより行った。
次に、図4(E)に示すように、実施例1同様に被覆感光性樹脂12をスピンコートにより塗布した。前記被覆感光性樹脂上には撥水材13をドライフィルムのラミネートにより形成した。
インク吐出口14は、実施例1同様に被覆感光性樹脂12を、i線ステッパーを用いてi線露光、現像を行うことにより形成した。
次に、図4(F)に示すように、実施例1同様に型材料10及び、被覆感光性樹脂12等がパターン形成されている前記シリコン基板1の表面及び側面を保護材15でスピンコートにより覆った。
また、前記シリコン基板1の裏面のSiO2膜6を、実施例1同様に前記ポリエーテルアミド樹脂層8をマスクとしてウェットエッチングによりパターニングして、異方性エッチングの開始面となるSi面11を露出した。
次に、図4(G)に示すように、実施例1同様にシリコン基板1をTMAHにより化学的にエッチングを行った。これにより、表面の犠牲層2に到達し、インク供給口16を形成した。
次に、図4(H)に示すように、実施例1同様にポリエーテルアミド樹脂8、絶縁層膜4等をエッチングで除去した。
次に、図4(I)に示すように、実施例1と同様に前記保護材15の除去を行い、型材料10を前記インク供給口16から溶出させ除去を行った。型材料10の除去は、DeepUV光による全面露光を行った後、現像、乾燥を行えばよく、必要に応じて現像の際、超音波浸漬を行えば十分である。
次に図4(J)に示すように、型材料除去後の空間に露出した反射防止膜9を、エッチングで反射防止膜9を選択的に除去することで、インク流路(発泡室)17を形成した。反射防止膜9のエッチングは、ウェットエッチングを用いた。
その後、インク吐出部が形成されたシリコン基板1をダイシングソーにより切断分離、チップ化し、インク吐出エネルギー発生素子3を駆動させるための電気的接合を行った。さらに、インク供給のためのチップタンク部材を接続して、インクジェット記録ヘッドが完成した。
[実施例3]
実施例3では図2のインクジェット記録ヘッドを作成するための工程を図5により説明する。なお、各材料について特に記載がない場合は実施例1と同様の材料を用いた。
実施例3では図2のインクジェット記録ヘッドを作成するための工程を図5により説明する。なお、各材料について特に記載がない場合は実施例1と同様の材料を用いた。
図5(A)〜(H)は、図3のA−A’断面図であり、本発明のインクジェット記録ヘッドの基本的な製造工程を示すための断面模式図である。
図5(A)に示されるシリコン基板上には、発熱抵抗体等のインク吐出エネルギー発生素子3が複数個配置されている。インク吐出エネルギー発生素子上には、絶縁層膜4と、耐キャビテーション層5が設けられている。また前記シリコン基板1の裏面はSiO2膜6で全面覆われている。そして、アルカリ性の溶液によってインク供給口16を形成する際に必要となる犠牲層2がシリコン基板1に設けてある。
まず、図5(B)に示すようにシリコン基板1の表面にポリエーテルアミド樹脂からなる密着層7と、裏面にポリエーテルアミド樹脂層8をスピンコートにより塗布し、ベークにより硬化させる。その後、実施例1と同様に裏面のポリエーテルアミド樹脂層8にインク供給口16を形成するために、ポジ型レジストをスピンコートにより塗布、露光、現像し、ドライエッチングによりパターニングし、前記ポジ型レジストを剥離した。この裏面はパターニングにする時に表面を保護して行ってもよい。
次に、図5(C)に示すようにインク流路17の側壁となる被膜感光性樹脂12をスピンコートにより塗布、紫外線やDeepUV等による露光、現像を行って流路側壁を形成した。また、被覆感光性樹脂12をスピンコートで塗布する際、ポリエーテルアミド層7を溶解しないように、被覆感光性樹脂12を溶解する溶媒を選択した。
また、ドライエッチングにより、ポリエーテルアミド樹脂(密着層)7をエッチングし、流路側壁と同一形状となるように形成した。
次に、図5(D)に示すように、実施例1同様に常温CVDによりSiN膜の反射防止膜9を形成した。
次に、図5(E)に示すようにインク流路となるインク流路側壁内部に型材料10をスピンコートにより塗布しベークした。前記型材料10は、後述する化学的機械研磨(CMP)を行う際、流路側壁倒れを防止する役割もある。なお、型材料10をスピンコートで塗布する際、ポリエーテルアミド層7、被覆感光性樹脂12を溶解しないように溶媒を選択した。
次に、図5(F)に示すように、化学的機械研磨(CMP)により、型材料10の上面から、流路側壁の上面が露出するまで研磨し洗浄した。研磨で発生するスクラッチ(微小キズ)やディシング(凹凸)を防止又は抑制するために、研磨条件(圧力、回転数、研磨液(アルミナ、シリカなど))のチューニングを行い、最適条件で行った。
次に、図5(G)に示すように、前記型材料及び前記インク流路側壁上に被覆感光性樹脂12をスピンコートにより塗布した。塗布は、前記インク流路17の側壁となる被膜感光性樹脂12の塗布方法と同様の方法にて行った。さらに、前記被覆感光性樹脂上に撥水材13をドライフィルムのラミネートにより形成した。
また、被覆感光性樹脂12を、実施例1同様にi線ステッパーを用いて露光、現像を行うことにより、インク吐出口14を形成した。
次に、図5(H)に示すように、実施例1同様に型材料10及び、被覆感光性樹脂12等がパターン形成されている前記シリコン基板1の表面及び側面を保護材15でスピンコートにより覆った。
また、前記シリコン基板1の裏面のSiO2膜6を、実施例1同様に前記ポリエーテルアミド樹脂層8をマスクとしてウェットエッチングによりパターニングされ、異方性エッチングの開始面となるSi面11を露出した。
次に、図5(I)に示すように、実施例1同様にシリコン基板1をTMAHにより化学的にエッチングを行った。これにより、表面の犠牲層2に到達し、インク供給口16を形成した。
次に、図5(J)に示すように、実施例1同様にポリエーテルアミド樹脂8、絶縁層膜4等をエッチングで除去した。
次に、図5(K)に示すように、実施例1と同様に前記保護材15の除去を行い、型材料10を前記インク供給口16から溶出させ除去を行なった。型材料10の除去は、DeepUV光による全面露光を行った後、現像、乾燥を行えばよく、必要に応じて現像の際、超音波浸漬を行えば十分である。
次に、図5(L)に示すように、型材料除去後の空間に露出した反射防止膜9を、エッチングで反射防止膜9を選択的に除去することで、インク流路(発泡室)17を形成した。反射防止膜9のエッチングは、ウェットエッチングやドライエッチングを用いることができる。
その後、インク吐出部が形成されたシリコン基板1をダイシングソーにより切断分離、チップ化し、インク吐出エネルギー発生素子3を駆動させるための電気的接合を行った。さらに、インク供給のためのチップタンク部材を接続して、インクジェット記録ヘッドが完成した。
1 シリコン基板
2 犠牲層
3 インク吐出エネルギー発生素子
4 絶縁層膜
5 耐キャビテーション膜
6 SiO2膜
7 ポリエーテルアミド樹脂(密着層)
8 ポリエーテルアミド樹脂
9 反射防止膜
10 型材料
11 Si面
12 被覆感光性樹脂
13 撥水材
14 インク吐出口
15 保護材
16 インク供給口
17 インク流路(発泡室)
18 OH
2 犠牲層
3 インク吐出エネルギー発生素子
4 絶縁層膜
5 耐キャビテーション膜
6 SiO2膜
7 ポリエーテルアミド樹脂(密着層)
8 ポリエーテルアミド樹脂
9 反射防止膜
10 型材料
11 Si面
12 被覆感光性樹脂
13 撥水材
14 インク吐出口
15 保護材
16 インク供給口
17 インク流路(発泡室)
18 OH
Claims (9)
- 複数のインク吐出エネルギー発生素子を有する基板と、
インク吐出エネルギー発生素子上に液滴を保持するためのインク流路と、
i線露光にて形成したインクを吐出するためのインク吐出口とを有するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、
下記(1)から(6)の工程を含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
(1)前記インク吐出エネルギー発生素子を有する基板上に反射防止膜を形成する工程
(2)前記反射防止膜上にインク流路となる型材料を形成する工程
(3)前記型材料周面にインク吐出部材となる被覆感光性樹脂を塗布する工程
(4)基板面に対して垂直方向から前記被覆感光性樹脂にi線露光し、現像を行い、インク吐出口を形成する工程
(5)前記型材料を、型材料を選択的に除去可能な方法で除去する工程
(6)前記型材料除去後の空間に露出した反射防止膜を、反射防止膜を選択的に除去可能な方法で除去する工程 - 前記工程(2)と工程(3)の間に、前記型材料をマスクとして、前記反射防止膜をエッチングし、型材料下のみに反射防止膜を残す工程を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記基板が少なくとも前記被覆感光性樹脂との接合面において、ポリエーテルアミド樹脂からなる密着層を形成した基板であることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 複数のインク吐出エネルギー発生素子を有する基板と、
インク吐出エネルギー発生素子上に液滴を保持するためのインク流路と、
i線露光にて形成したインクを吐出するためのインク吐出口を有するインクジェット記録ヘッドの製造方法において、
下記(a)から(i)の工程を含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
(a)ポリエーテルアミド樹脂からなる密着層を形成した基板に、インク流路となるインク流路側壁を、被覆感光性樹脂を用いて形成する工程
(b)前記密着層を前記インク流路側壁と同一形状に形成する工程
(c)前記インク流路側壁及び密着層を形成した基板上に反射防止膜を形成する工程
(d)前記インク流路側壁で囲まれる内部に型材料を形成する工程
(e)前記型材料の上面から研磨し、前記インク流路側壁の上面を露出させる工程
(f)前記被覆感光性樹脂を用いて、前記型材料及び前記インク流路側壁上にインク流路を形成する工程
(g)基板面に対して垂直方向から前記被覆感光性樹脂にi線露光し、現像を行い、インク吐出口を形成する工程
(h)前記型材料を、型材料を除去する工程
(i)前記反射防止膜を、反射防止膜を選択的に除去可能な方法で除去する工程 - 前記反射防止膜がSiN膜であり、前記型材料がポジ型感光性樹脂からなり、前記被覆感光性樹脂がネガ型感光性樹脂からなる請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記反射防止膜を選択的に除去可能な方法で除去する工程が、エッチングにより除去する工程であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 前記型材料を選択的に除去可能な方法で除去する工程が、エッチングにより除去する工程であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 請求項3又は4に記載のポリエーテルアミド樹脂からなる密着層を形成した基板に、反射防止膜を形成する工程が、SiN膜を常温CVDにて成膜する工程であることを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
- 請求項5又は8に記載のSiN膜が、波長633nmにおいて屈折率nが2.05<nの範囲にあることを特徴とするインクジェット記録ヘッドの製造方法。
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