上記した従来のキースイッチ装置において、キートップに設けられる複数の枢着部の各々は、各リンク部材の各腕部の支軸を回動自在に支持する軸受穴と、軸受穴に連通する切欠きとを備えた板状部材として、キートップの内面に突設される。それら枢着部の切欠きは、各リンク部材の支軸の太さに比べて小さい幅を有して、キートップの内面に略直交する方向へ互いに略平行に延設される。キースイッチ装置を組立てる際には、一対のリンク部材を組合せてベース上の所定位置に寝かせて配置した状態(すなわちキートップのストローク下限位置に対応する状態)で、キートップの各枢着部を対応の各リンク部材の支軸に上から押付け、支軸をまず枢着部の切欠きに圧入して枢着部を弾性変形させつつ、軸受穴にスナップ式に嵌入する。この構成により、キースイッチ装置の組立てが容易になるとともに、キートップの成形型の構造が簡略化される。
しかしこの構成では、成形後のキートップから型を脱離する際に、各枢着部の軸受穴を成形する型部分を、成形された各枢着部からその切欠きを通して強制的に引き抜くことになるので、リンク部材組付時と同様に各枢着部が弾性変形し、その影響で軸受穴の所定の形状及び寸法が型脱離後に微妙に変化してしまう場合がある。各枢着部の軸受穴にこのような変形が生じると、軸受穴と各リンク部材の支軸との間の不要な隙間により、キートップがその打鍵操作時に望ましくないがたつきを生じる傾向がある。キートップのがたつきは、リンク部材の案内によるキートップの平行移動に影響を及ぼし、結果としてメンブレンスイッチの接点の正確な閉成を困難にすることが懸念される。このような問題を解決するために、各枢着部の軸受穴を成形する型部分を軸線方向へ脱離可能な構成にすると、型の構造が複雑になり、製造コストが上昇する危惧がある。
また、キートップの各枢着部は、各リンク部材の一対の腕部の外側に位置して、各腕部の第2端領域から外方へ延設される支軸を枢支する。すなわち、一対の枢着部の間に対応のリンク部材の一対の腕部が配置される。したがって、各リンク部材の一対の腕部が成形誤差等により互いに接近する方向へ撓曲している場合には、キートップの各枢着部はこの撓曲を矯正できず、結果として各リンク部材の支軸を各枢着部の軸受穴に正確に嵌入することが困難になる場合がある。さらに、上記したようにキートップをリンク部材に組付ける際に、各枢着部から各支軸に加わる力によって一対の腕部が互いに接近する方向へ撓曲する傾向があり、やはり各リンク部材の支軸を各枢着部の軸受穴に正確に嵌入することが困難になる。また、キートップがその端縁を持ち上げる方向への外力を受けたときにも、同様に一対の腕部が互いに接近する方向へ撓曲する傾向があり、この場合にはリンク部材の支軸がキートップの枢着部から比較的容易に離脱してしまう危惧がある。
リンク部材の支軸がキートップの枢着部の軸受穴から容易に離脱することを防止するために、枢着部の切欠きを一層狭くすることが考えられる。しかしこの構成では、キートップをリンク部材に組付ける際に要する力が増大し、組付作業性が悪化することが懸念される。したがって、キートップをリンク部材に組付ける作業性を悪化させることなく、キートップからのリンク部材の容易な離脱を防止することが望まれている。
ところで、従来のキースイッチ装置においては、各リンク部材の一対の腕部の第1端領域が、ベースとメンブレンスイッチとの間に形成された一対の案内溝に沿って摺動するものが知られている。この場合、各リンク部材の第1端領域は、ベースとメンブレンスイッチとの双方に接触して摩擦抵抗を受けつつ摺動する。この構成において、各リンク部材の一対の腕部を相互に連結する連結部が、各腕部の第1端領域の摺動面と実質的同一の面上に外面を有する場合には、キートップの昇降動作中に、各リンク部材の連結部もメンブレンスイッチの上面に接触して摩擦抵抗を受けつつ摺動することになり、その影響で、キートップの円滑かつ正確な打鍵操作が妨げられる危惧がある。特に、ベース、リンク部材及びメンブレンスイッチが互いに異なる材料から形成される現状の構成では、このような摩擦抵抗による操作性悪化の問題が顕現する。
また、従来のキースイッチ装置においては一般に、メンブレンスイッチの下方に、例えば金属製の支持板やキーボードの樹脂製下部筐体等の支持構造が設けられる。支持構造は通常、キートップからドーム状作動部材を介してメンブレンスイッチに負荷される弾性力を受けるとともに、ドーム状作動部材がメンブレンスイッチの接点を閉じる際の押圧力を受けるように構成される。したがって、支持構造とメンブレンスイッチの特に接点近傍領域との間に塵埃が介在すると、キートップの打鍵操作により接点を正確かつ安定的に開閉させることが困難になる場合がある。このような問題を解決するために、キースイッチ又はキーボードの組立てをクリーンルーム内で行うことが考えられるが、製造コストを上昇させるので好ましくない。
したがって本発明の目的は、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、キートップの成形型の構造を複雑にすることなく、キートップに設けられるリンク枢着部の型脱離に起因する変形を抑制し、以てキートップの打鍵操作時に生じ得るがたつきを可及的に低減できるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、キートップに一対のリンク部材を正確かつ比較的容易に組付けることができるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、一対のリンク部材からのキートップの不用意な離脱を効果的に防止できるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、一対のリンク部材と他部材との間の摺動による摩擦抵抗を低減し、キートップの打鍵操作性を向上させることができるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、メンブレンスイッチとその支持構造との間に介在する塵埃に起因して、メンブレンスイッチの接点を正確かつ安定的に開閉させることが困難になる問題を、安価な構造で解決できるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記したようなキースイッチ装置を多数備え、組立作業性及び操作性に優れたキーボードを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともにベース及びキートップの双方に作用的に係合して、キートップをベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、一対のリンク部材の各々は、ベースに摺動自在に係合する第1端領域と、キートップに回動自在に係合する第2端領域とを備え、キートップは、一対のリンク部材の各々の第2端領域を回動自在に支持する複数の枢着部を備え、それら枢着部の各々が、リンク部材の第2端領域の回動軸線方向に離間した一対の軸受部材を有して、それら軸受部材の間に第2端領域を回動軸線方向へ実質的に挟持すること、を特徴とするキースイッチ装置を提供する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキースイッチ装置において、一対のリンク部材の各々は、第2端領域で回動軸線に沿って互いに反対側に同軸状に延設される一対の支軸を有し、キートップの枢着部の各々は、一対の軸受部材の各々が一対の支軸の各々を回動自在に支持するように作用するキースイッチ装置を提供する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のキースイッチ装置において、一対の軸受部材が、回動軸線を中心に互いに異なる側に配置されるキースイッチ装置を提供する。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のキースイッチ装置において、一対の軸受部材の各々が、一対の支軸の各々の外周面に摺動接触する実質的半円筒状の軸受面を有するキースイッチ装置を提供する。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、一対のリンク部材の各々が、互いに略平行に固定的に連結される一対の腕部を備え、それら腕部の末端領域が第2端領域を構成し、キートップが4個の枢着部を備え、それら枢着部の各々の一対の軸受部材が、リンク部材の腕部の各々の末端領域の回動軸線方向両側に配置されるキースイッチ装置を提供する。
請求項6に記載の発明は、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともにベース及びキートップの双方に作用的に係合して、キートップをベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、一対のリンク部材の各々は、ベースに摺動自在に係合する第1端領域と、キートップに回動自在に係合する第2端領域とを備え、第2端領域に、回動軸線に沿って支軸が延設されるとともに、支軸に、回動軸線に交差する方向へ延びる少なくとも1つのスリットが形成され、キートップは、一対のリンク部材の各々の支軸を回動自在に支持する軸受穴を有する複数の枢着部を備え、それら枢着部のそれぞれに、互いに略平行に延びてそれぞれの軸受穴に連通する切欠きが設けられ、キートップが昇降ストロークの下限位置にあるときに、リンク部材の各々の支軸に形成したスリットが、キートップの枢着部の各々に設けた切欠きに対し実質的平行に配置され、以て支軸が弾性変形しつつ切欠きを通過できるように構成されること、を特徴とするキースイッチ装置を提供する。
請求項7に記載の発明は、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともにベース及びキートップの双方に作用的に係合して、キートップをベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、一対のリンク部材の各々は、互いに略平行に延びる一対の腕部と、それら腕部を互いに固定的に連結する連結部とを備え、一対の腕部の各々が、リンク部材の第1端領域でベースに摺動自在に係合するとともに第2端領域でキートップに回動自在に係合し、連結部が、第1端領域の摺動動作に伴って移動する間、他部材に実質的に接触しない形状を有すること、を特徴とするキースイッチ装置を提供する。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のキースイッチ装置において、スイッチ機構が、接点を有してベースの下方に配置されるメンブレンスイッチと、キートップが下降する間にメンブレンスイッチを押圧して接点を閉じる作動部材とを備え、作動部材が、メンブレンスイッチ上に配置されるシート部材に連結され、リンク部材の各々が、腕部の各々でシート部材の表面上を摺動するとともに、連結部とシート部材との間に隙間が形成されるキースイッチ装置を提供する。
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載のキースイッチ装置において、スイッチ機構が、接点を有してベースの下方に配置されるメンブレンスイッチと、キートップが下降する間にメンブレンスイッチを押圧して接点を閉じる作動部材とを備え、リンク部材の各々が、腕部の各々でメンブレンスイッチの表面上を摺動するとともに、連結部とメンブレンスイッチとの間に隙間が形成されるキースイッチ装置を提供する。
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載のキースイッチ装置において、スイッチ機構が、接点を有してベースの下方に配置されるメンブレンスイッチと、キートップが下降する間にメンブレンスイッチを押圧して接点を閉じる作動部材とを備え、メンブレンスイッチの下方に支持板がさらに配置され、リンク部材の各々が、腕部の各々で支持板の表面上を摺動するとともに、連結部とメンブレンスイッチとの間に隙間が形成されるキースイッチ装置を提供する。
請求項11に記載の発明は、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、キートップをベース上で昇降方向へ案内支持する案内支持部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、スイッチ機構は、接点を有してベースの下方に配置されるメンブレンスイッチと、キートップの昇降動作に伴って弾性変形するとともにキートップが下降する間にメンブレンスイッチを押圧して接点を閉じる作動部材とを備え、メンブレンスイッチの下方に支持板がさらに配置され、支持板が、少なくともメンブレンスイッチの接点を支持するとともにメンブレンスイッチを介して作動部材を支持し、接点の近傍では支持板とメンブレンスイッチとの間に隙間が形成されること、を特徴とするキースイッチ装置を提供する。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載のキースイッチ装置を多数配列して構成されるキーボードを提供する。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、キートップの成形型の構造を複雑にすることなく、キートップに設けられるリンク枢着部の型脱離に起因する変形を抑制し、以てキートップの打鍵操作時に生じ得るがたつきを可及的に低減できるようになる。また、キートップに一対のリンク部材を正確かつ比較的容易に組付けることが可能になる。さらに、一対のリンク部材からのキートップの不用意な離脱を効果的に防止できる。
また本発明によれば、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、一対のリンク部材と他部材との間の摺動による摩擦抵抗を低減し、キートップの打鍵操作性を向上させることが可能になる。また、メンブレンスイッチとその支持構造との間に介在する塵埃に起因して、メンブレンスイッチの接点を正確かつ安定的に開閉させることが困難になる問題を、安価な構造で解決できる。さらに本発明によれば、組立作業性及び操作性に優れたキーボードが提供される。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は本発明の第1の実施形態によるキースイッチ装置10を分解斜視図で示す。キースイッチ装置10は、ベース12と、ベース12の主表面12a上に昇降方向へ移動可能に配置され、オペレータの手指で打鍵される操作面14aを有するキートップ14と、キートップ14をベース12上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材16と、キートップ14の昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構18とを備えて構成される。
ベース12は、キートップ14によって遮蔽される略矩形の中心開口部20を備える枠状部材である。ベース12には、中心開口部20を画成する一対の対向内周面12bに沿って、二組の摺動係合部22が左右方向ヘ互いに離間して設けられる。各摺動係合部22は、ベース12の主表面12a及び内周面12bから突出する壁部分を有してL字状に伸び、この壁部分の内側に、主表面12aに略平行に延びる案内溝22aが形成される。各組を成す2個の摺動係合部22は、各々の案内溝22aをベース12の一対の内周面12bに沿った対応位置に配置する。さらに、各組で対応する側の摺動係合部22は、ベース12の内周面12bに沿って左右方向へ整列配置される。各摺動係合部22には、一対のリンク部材16の各々がその後述する第1端領域で摺動自在に係合する。
キートップ14は、略矩形平面形状を有する皿状の部材であり、操作面14aの反対側の内面14bに、二組の枢着部24が互いに並置して形成される。各枢着部24は、キートップ14の内面14bから直立状に突設される一対の板状の軸受部材26、28から構成される。図2に明示するように、各組を成す2個の枢着部24は、キートップ14の内面14bの左右方向中央領域で、一対のリンク部材16の各々の後述する第2端領域に係合できる距離だけ互いに離れて配置され、各リンク部材16の第2端領域を回動自在に支持する。さらに、各組で対応する側の枢着部24は、キートップ14の内面14b上で左右方向へ整列配置される。キートップ14の各枢着部24の構成は、以下でさらに詳述する。
一対のリンク部材16は、互いに実質的同一の形状及び寸法を有し、それらの一端で互いに歯車状に連結されて側面視逆V字状に組合わされる。各リンク部材16は、互いに平行に延びる一対の腕部30、32と、それら腕部30、32を互いに連結する連結部34とを一体に備える。図示実施形態では、連結部34に隣接する両腕部30、32の基端領域が、リンク部材16の第1端領域を構成し、連結部34から離れた両腕部30、32の末端領域が、リンク部材16の第2端領域を構成する。図3に明示するように、各リンク部材16の第1端領域には、両腕部30、32の互いに離反する外側面から連結部34の反対側へ一対の支軸36がそれぞれ同軸状に突設される。また、各リンク部材16の第2端領域には、両腕部30、32の外側面から支軸36と同一側へ一対の支軸38が、かつ両腕部30、32の互いに対向する内側面から連結部34と同一側へ一対の支軸40が、それぞれ同軸状に突設される。さらに、各リンク部材16の一方の腕部30には、第2端領域の支軸38、40に隣接する先端面に1枚の歯42が設けられ、他方の腕部32には、同様に支軸38、40に隣接する先端面に2枚の歯44が設けられる。
一対のリンク部材16の各々は、各腕部30、32の基端領域に設けた支軸36を、ベース12の各摺動係合部22の案内溝22aに摺動自在に嵌入し、かつ各腕部30、32の末端領域に設けた支軸38、40を、キートップ14の各枢着部24の一対の軸受部材26、28に回動自在に係合させて、ベース12とキートップ14との間に配置される。このとき一対のリンク部材16は、それぞれの一方の腕部30の1枚の歯42と、それぞれの他方の腕部32の2枚の歯44とが噛み合わされ、それにより、両腕部30、32の支軸38、40が共有する回動軸線46(図3)を中心として、互いに連動して回動できるようになっている。
したがってキートップ14は、一対のリンク部材16がそれぞれの回動軸線46を中心に同期して反対方向へ揺動するとともに、それぞれの支軸36がベース12に沿って略水平方向へ摺動することにより、ベース12に対し略鉛直方向へ、操作面14aを主表面12aに略平行に配置した所定の略水平姿勢を保持しつつ平行移動する。キートップ14の打鍵ストロークの上限位置は、一対のリンク部材16の各支軸36の相互接近方向への摺動が、ベース12の各摺動係合部22の案内溝22aを画成する壁部分によって係止された時点で規定される。キートップ14がこの上限位置から下降するに従い、一対のリンク部材16の各支軸36は、キートップ14の昇降方向に略直交する相互離反方向へ摺動する。キートップ14が打鍵ストロークの下限位置に達すると、一対のリンク部材16はキートップ14の内面14b側に収容されるとともに、ベース12の中心開口部20に受容される(図3)。
スイッチ機構18は、一対の接点48を対向させて各々に担持する一対のシート基板50(一方の接点48及び一方のシート基板50のみ図1に示す)を有するメンブレンスイッチ52と、キートップ14とメンブレンスイッチ52との間に配置され、キートップ14の下降動作に伴い両接点48を閉じるように作用する作動部材54とから構成される。メンブレンスイッチ52の一対のシート基板50の間には、それらシート基板50を所定間隔に支持して両接点48を開状態に保持するスペーサ56(図5)が設置される。
メンブレンスイッチ52の両シート基板50は、いずれも周知のフレキシブル印刷回路板の構成を有し、そのフィルム基体の表面に、互いに短絡可能な接点48が設けられる。それらシート基板50は、ベース12の下で支持板58上に支持され、両接点48は、ベース12の中心開口部20の略中心に位置決めされる。作動部材54は、ゴム材料から一体成形されたドーム状部材であり、ドーム頂部54aをキートップ14側に向けた姿勢で、ベース12の中心開口部20内に配置される。作動部材54は、無負荷時にはドーム頂部54aを上側のシート基板50の上方に離隔して配置する。作動部材54のドーム頂部54aの内面には、シート基板50に向かって延びる柱状の押圧部(図示せず)が形成される。
一対のシート基板50に担持された接点48は、各シート基板50が本質的に有するこしにより、スペーサ56を介して通常は開状態に保持され、作動部材54の押圧部の下方に位置決めされる。作動部材54のドーム頂部54aにシート基板50に接近する方向への外力が加わると、作動部材54は弾性変形し、押圧部が上側のシート基板50を外面から押圧することにより、一対の接点48を閉じる。なお、図示実施形態では作動部材54は、その下端のドーム開口端54bで、ベース12と上側のシート基板50との間に配置される可撓性を有するシート部材60に固定的に連結される。或いは、シート部材60を用いずに、作動部材54を上側のシート基板50に直接連結することもできる。
キースイッチ装置10では、キートップ14に外力が加わらないときには、スイッチ機構18の作動部材54がドーム頂部54aの外面でキートップ14をベース12から鉛直上方へ離れた上限位置(図5)に付勢支持する。このときメンブレンスイッチ52は、一対の接点48が開いた状態にある。また、オペレータの打鍵操作によりキートップ14が押下げられたときには、作動部材54はキートップ14に上方への弾性付勢力を及ぼしつつ変形し、キートップ14が下限位置に達する直前に上側のシート基板50を外面から押圧して接点48を閉じる。キートップ14への押下げ力が解除されると、作動部材54が弾性的に復元し、キートップ14を上限位置へ復帰させるとともに、上側のシート基板50が復元して接点48が開く。
キースイッチ装置10においては、前述したようにキートップ14に、一対のリンク部材16の各々の第2端領域に形成した二組の支軸38、40を回動自在に支持する4個の枢着部24が設けられる。図2及び図4に示すように、各枢着部24を構成する一対の軸受部材26、28は、各リンク部材16の支軸38、40によって規定される第2端領域の回動軸線46方向に互いに離間して配置され、それら軸受部材26、28の間に各リンク部材16の腕部30、32の末端領域を回動軸線46方向へ実質的に挟持するようになっている。すなわち、各枢着部24の軸受部材26、28は、各リンク部材16の各腕部30、32の末端領域の外側面と内側面とにそれぞれ僅かな隙間を介して対向配置される。
各枢着部24の軸受部材26、28は、各リンク部材16の各腕部30、32に設けた支軸38、40をそれぞれ回動自在に支持する。図示実施形態では、それら軸受部材26、28は、リンク部材16の回動軸線46を中心に互いに異なる側に配置される。図5及び図6に示すように、各軸受部材26、28には、各腕部30、32に設けた支軸38、40の各々の外周面に摺動接触する実質的半円筒状の軸受面26a、28aが形成される。各組を成す2個の枢着部24の軸受部材26、28は、それぞれの軸受面26a、28aが共通の軸線46′(図2)に関して同一円周面上に配置される。したがって、各枢着部24にリンク部材16の各腕部30、32の支軸38、40を装着すると、軸受部材26、28がそれぞれの軸受面26a、28aの協働により、支軸38、40をその回動軸線46が軸線46′に合致した心出し状態に支持する。
各軸受部材26、28にはさらに、キートップ14の内面14bから離れた先端領域に、内面14bに略直交する方向へ延びて軸受面26a、28aに連通する導入面26b、28bが形成される。両軸受部材26、28の導入面26b、28bは、共通の軸線46′から幾分離れて配置され、互いに協働して、キートップ14の各枢着部24に対応の各リンク部材16の支軸38、40を嵌入する際の導入部として作用する。
上記構成を有するキースイッチ装置10では、キートップ14に設けられる各枢着部24の一対の軸受部材26、28が、それぞれの軸受面26a、28aの協働により、従来のキースイッチ装置におけるキートップの各枢着部の軸受穴と同様に作用して、各リンク部材16の各腕部30、32の支軸38、40を回動自在に支持する。さらに、各枢着部24の軸受部材26、28の導入面26b、28bは、互いに協働して、従来のキースイッチ装置におけるキートップの各枢着部の切欠きと同様に作用する。すなわち、キースイッチ装置10の組立工程において、キートップ14を一対のリンク部材16に組付ける際には、両リンク部材16を組合せてベース12上の所定位置に寝かせて配置した図3の状態(すなわちキートップ14のストローク下限位置に対応する状態)で、キートップ14の各枢着部24の軸受部材26、28を対応の各リンク部材16の各腕部30、32の支軸38、40に上から押付け、支軸30、32をまず軸受部材26、28の導入面26b、28bの間に圧入して軸受部材26、28を弾性変形させつつ、軸受面26a、28a内にスナップ式に嵌入する。このようにキースイッチ装置10は、従来のキースイッチ装置と同等の組立ての容易さを発揮できる。
しかも、キートップ14の成形工程においては、中子を有しない一般的単純構造の型(図示せず)により、各枢着部24の軸受部材26、28を成形した後、キートップ14を型から脱離する際に、軸受部材26、28の軸受面26a、28aを成形する型部分を、成形された各軸受部材26、28からそれらの導入面26b、28bを通して強制的に引き抜くことができる。この場合、各枢着部24の軸受部材26、28に個別かつ分散的に応力が加わるので、各軸受部材26、28の軸受面26a、28aの型脱離後の変形を、従来のキースイッチ装置におけるキートップの各枢着部の軸受穴が被る変形に比べて、可及的に抑制することができる。その結果、キースイッチ装置10の組立完了後、各枢着部24の軸受部材26、28の軸受面26a、28aと各リンク部材16の支軸38、40との間の不要な隙間が削減される。したがってキースイッチ装置10によれば、キートップ14の成形型の構成に起因する製造コストの上昇を回避しつつ、キートップ14の打鍵操作時に生じ得る望ましくないがたつきを可及的に排除でき、以て、打鍵操作による正確な接点開閉動作を実現できる。
さらに、キートップ14の各枢着部24を構成する一対の軸受部材26、28は、各リンク部材16の各腕部30、32の末端領域の回動軸線方向両側に配置されて各腕部30、32を実質的に挟持するので、各リンク部材16の一対の腕部30、32が成形誤差等により互いに接近又は離反する方向へ撓曲している場合であっても、上記したように各リンク部材16にキートップ14を組付ける間に各枢着部24がこの撓曲を矯正し、結果として各リンク部材16の支軸38、40を各枢着部24の軸受部材26、28の軸受面26a、28aに正確に嵌入することが可能になる。また、各リンク部材16にキートップ14を組付ける際に各枢着部24から各支軸38、40に押圧力が負荷されたときや、組付後にキートップ14にベース12から離れる上方への外力が負荷されたときにも、各リンク部材16の一対の腕部30、32は互いに接近又は離反する方向への撓曲を軸受部材26、28により阻止されるので、キートップ14に各リンク部材16を正確かつ比較的容易に組付けることができるとともに、各リンク部材16からのキートップ14の不用意な離脱を効果的に防止することができる。
特にキースイッチ装置10では、キートップ14の各枢着部24の軸受部材26、28が、実質的半円筒状の軸受面26a、28aによって、各リンク部材16の各腕部30、32の支軸38、40を半分ずつ支持する構成としたので、キートップ14を両リンク部材16に組付ける際には、従来のキースイッチ装置におけるキートップの各枢着部を弾性変形させると同等の力によって、各枢着部24の軸受部材26、28を分散的応力負荷により個別に弾性変形させることができる。したがって、キートップ14を両リンク部材16に組付ける際に要する力の増加を抑制し、以て組付作業性の悪化を効果的に防止することができる。なお、キートップ14の各枢着部24は、型脱離に起因する各軸受部材26、28の軸受面26a、28aの変形を可及的に防止できるとともに、キートップ組付時の力の増加を可及的に抑制できることを前提に、軸受部材26、28のそれぞれが、各リンク部材16の各腕部30、32の支軸38、40の半分以上を支持できる軸受面26a、28aを有する構成にすることもできる。
図7は、本発明の第2の実施形態によるキースイッチ装置70を示す。キースイッチ装置70は、キートップ72及び一対のリンク部材74の構成以外は、図1に示すキースイッチ装置10と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。すなわちキースイッチ装置70は、ベース12と、ベース12の主表面12a上に昇降方向へ移動可能に配置され、オペレータの手指で打鍵される操作面72aを有するキートップ72と、キートップ72をベース12上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材74と、キートップ72の昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構18と、スイッチ機構18の下方に配置される支持板58とを備えて構成される。
キースイッチ装置70のキートップ72は、従来のキースイッチ装置におけるキートップと実質的同一の構成を有する。したがって、キートップ72の内面72bには、二組の枢着部76が左右方向へ互いに並置して形成される。各枢着部76は、キートップ72の内面72bから直立状に突設される板状片からなり、板厚方向へ貫通する軸受穴76aと、内面72bに略直交する方向へ延びて軸受穴76aに連通する切欠き76bとを備える。各組を成す2個の枢着部76は、キートップ72の内面72bの左右方向中央領域で、一対のリンク部材74の各々の後述する第2端領域に係合できる距離だけ互いに離れて配置され、各リンク部材74の第2端領域を回動自在に支持する。さらに、各組で対応する側の枢着部76は、キートップ72の内面72b上で左右方向へ整列配置される。
一対のリンク部材74は、従来のキースイッチ装置におけるリンク部材に類似した構成を有する。すなわち両リンク部材74は、互いに実質的同一の形状及び寸法を有し、それらの一端で互いに歯車状に連結されて側面視逆V字状に組合わされる。各リンク部材74は、互いに平行に延びる一対の腕部78、80と、それら腕部78、80を互いに連結する連結部82とを一体に備える。図示実施形態では、連結部82に隣接する両腕部78、80の基端領域が、リンク部材74の第1端領域を構成し、連結部82から離れた両腕部78、80の末端領域が、リンク部材74の第2端領域を構成する。各リンク部材74の第1端領域には、両腕部78、80の互いに離反する外側面から連結部82の反対側へ一対の支軸84がそれぞれ同軸状に突設される。また、各リンク部材74の第2端領域には、両腕部78、80の外側面から支軸84と同一側へ一対の支軸86がそれぞれ同軸状に突設される。さらに、各リンク部材74の一方の腕部78には、第2端領域の支軸86に隣接する先端面に1枚の歯88が設けられ、他方の腕部80には、同様に支軸86に隣接する先端面に2枚の歯90が設けられる。
一対のリンク部材74の各々は、各腕部78、80の基端領域に設けた支軸84を、ベース12の各摺動係合部22の案内溝22aに摺動自在に嵌入し、かつ各腕部78、80の末端領域に設けた支軸86を、キートップ72の各枢着部76の軸受穴76aに回動自在に嵌入して、ベース12とキートップ72との間に配置される。このとき一対のリンク部材74は、それぞれの一方の腕部78の1枚の歯88と、それぞれの他方の腕部80の2枚の歯90とが噛み合わされ、それにより、両腕部78、80の支軸86が共有する回動軸線92(図8)を中心として、互いに連動して回動できるようになっている。
図8及び図9に拡大して示すように、キースイッチ装置70では、各リンク部材74の第2端領域に設けた一対の支軸86の各々に、回動軸線92に直交する方向へ直線状に延びる1つのスリット94が形成される。各支軸86のスリット94は、キートップ72が昇降ストロークの下限位置にあるときに、キートップ72の各枢着部76に設けた切欠き76bに対し実質的平行に配置されるように、各支軸86の軸線方向端面上で位置決めされる(図8)。また、キートップ72が昇降ストロークの下限位置から上方へ移動する間、各支軸86のスリット94は、キートップ72に対するリンク部材74の傾斜角度に対応して、各枢着部76の切欠き76bに対し傾斜する(図9)。各支軸86の軸線方向端面からのスリット94の深さは、スリット94によって分割形成される支軸86の半体部分86aが、支軸86の外周面に径方向内方へ向けて加わる外力により、互いに接近する方向へ比較的容易に弾性変形できるような範囲で選定される。
キースイッチ装置70の組立工程において、キートップ72を一対のリンク部材74に組付ける際には、両リンク部材74を組合せてベース12上の所定位置に寝かせて配置した状態(すなわちキートップ72のストローク下限位置に対応する状態)で、キートップ72の各枢着部76を対応のリンク部材74の各支軸86に上から押付け、支軸86をまず切欠き76bに圧入して枢着部76を弾性変形させつつ、軸受穴76aにスナップ式に嵌入する。このとき、各支軸86のスリット94が各枢着部76の切欠き76bに実質的平行に配置されているので、支軸86は、切欠き76bを通過する間に両半体部分86aが互いに接近する方向への外力を受けて比較的容易に弾性変形する。それにより、切欠き76bを押し広げる方向への支軸86の外径が縮小され、結果として、支軸86を従来よりも小さな力で枢着部76の軸受穴76aに嵌入できる。
他方、組立てられたキースイッチ装置70において、キートップ72が例えばその端縁を持ち上げるような上方への外力を受けるときには、キートップ72は作動部材54の付勢によりストローク下限位置から上方へ移動し、それにより各支軸86のスリット94が各枢着部76の切欠き76bに対して傾斜配置される。したがって、そのような外力が各枢着部76を介して各支軸86に負荷されたとしても、支軸86の各半体部分86aは、枢着部76の切欠き76bの通過を容易にするような変形を実質的に生じない。その結果、リンク部材74の支軸86はキートップ72の枢着部76の軸受穴76a内に安定的に保持される。このように、キースイッチ装置70によれば、キートップ72を両リンク部材74に組付ける作業性を悪化させることなく、キートップ72からのリンク部材74の容易な離脱を防止することができる。
図10は、本発明の第3の実施形態によるキースイッチ装置100を示す。キースイッチ装置100は、一対のリンク部材102の構成以外は、図7に示すキースイッチ装置70と実質的同一の構成を有するので、対応する構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。すなわちキースイッチ装置100は、ベース12と、ベース12の主表面12a上に昇降方向へ移動可能に配置されるキートップ72と、キートップ72をベース12上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材102と、キートップ72の昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構18と、スイッチ機構18の下方に配置される支持板58とを備えて構成される。
キースイッチ装置100の一対のリンク部材102は、従来のキースイッチ装置におけるリンク部材に類似した構成を有する。すなわち両リンク部材102は、互いに実質的同一の形状及び寸法を有し、それらの一端で互いに歯車状に連結されて側面視逆V字状に組合わされる。各リンク部材102は、互いに平行に延びる一対の腕部104、106と、それら腕部104、106を互いに連結する連結部108とを一体に備える。図示実施形態では、連結部108に隣接する両腕部104、106の基端領域が、リンク部材102の第1端領域を構成し、連結部108から離れた両腕部104、106の末端領域が、リンク部材102の第2端領域を構成する。各リンク部材102の第1端領域には、両腕部104、106の互いに離反する外側面から連結部108の反対側へ一対の支軸110がそれぞれ同軸状に突設される。また、各リンク部材102の第2端領域には、両腕部104、106の外側面から支軸110と同一側へ一対の支軸112がそれぞれ同軸状に突設される。さらに、各リンク部材102の一方の腕部104には、第2端領域の支軸112に隣接する先端面に1枚の歯114が設けられ、他方の腕部106には、同様に支軸112に隣接する先端面に2枚の歯116が設けられる。
一対のリンク部材102の各々は、各腕部104、106の基端領域に設けた支軸110を、ベース12の各摺動係合部22の案内溝22aに摺動自在に嵌入し、かつ各腕部104、106の末端領域に設けた支軸112を、キートップ72の各枢着部76の軸受穴76aに回動自在に嵌入して、ベース12とキートップ72との間に配置される。このとき一対のリンク部材102は、それぞれの一方の腕部104の1枚の歯114と、それぞれの他方の腕部106の2枚の歯116とが噛み合わされ、それにより、両腕部104、106の支軸112が共有する回動軸線118(図11)を中心として、互いに連動して回動できるようになっている。
キースイッチ装置100では、各リンク部材102の連結部108は、各腕部104、106の末端領域に設けた支軸112の摺動動作に従ってベース12に沿って移動する間、他部材に実質的に接触しない形状を有する。すなわち図11に示すように、各リンク部材102の連結部108は、両腕部104、106の支軸110の周辺部分の外表面に対し、段差を介して落ち込んで広がる外表面108aを有する。その結果、キートップ72の昇降動作に対応して各リンク部材102の支軸110がベース12の各摺動係合部22の案内溝22a内で移動する間、リンク部材102の第1端領域は、支軸110の周辺部分の外表面が、ベース12と作動部材54を連結したシート部材60とに接触して摩擦抵抗を受けつつ摺動する一方で、連結部108とシート部材60との間には、連結部108の外表面108aの形状に起因して隙間が形成される。したがってキースイッチ装置100によれば、キートップ72の昇降動作中に、一対のリンク部材102とそれらを担持するシート部材60との間の摺動による摩擦抵抗が軽減され、以て、キートップ72を円滑かつ正確に打鍵操作できるようになる。
なお、図示しないが、シート部材60を用いずに、作動部材54を上側のシート基板50に直接連結する構成においては、キートップ72の昇降動作中、リンク部材102の両支軸110の周辺部分の外表面が、ベース12とメンブレンスイッチ52の上側のシート基板50とに接触して摩擦抵抗を受けつつ摺動する一方で、リンク部材102の連結部108はシート基板50に接触しない。したがって同様に、キートップ72の昇降動作中に、一対のリンク部材102とそれらを担持するメンブレンスイッチ52との間の摺動による摩擦抵抗が軽減され、以て、キートップ72を円滑かつ正確に打鍵操作できるようになる。また、図示しないが、各リンク部材の第1端領域の下に、ベース12の一部分が延設される構成においても、ベース12のそのような延長部分に接触しない連結部108を有するリンク部材102を採用することにより、キートップ72の打鍵操作性を向上させることができる。
キースイッチ装置100のリンク部材102は、上記した形状の連結部108に限らず、例えば図12に変形例として示すアーチ状の連結部108′を採用することができる。また、図13に示すように、リンク部材102の第1端領域から第2端領域側へ幾分偏移した位置に、連結部108″を形成することもできる。いずれの場合も、連結部108′、108″は、各腕部104、106の支軸112に伴いベース12に沿って移動する間、メンブレンスイッチ52やシート部材60等の他部材に実質的に接触せず、それにより各リンク部材102と他部材との間の摺動による摩擦抵抗を軽減して、キートップ72の打鍵操作性を向上させるように作用する。
図14は、キースイッチ装置100のさらに他の変形例を示す。この変形例では、メンブレンスイッチ52及びシート部材60の各々に、図13に示すような連結部108″を有するリンク部材102の第1端領域の支軸110が摺動する位置に、それぞれ貫通穴120、122が形成されている。したがってこの変形例では、キートップ72の昇降動作中に、各リンク部材102の第1端領域に設けた一対の支軸110は、シート部材60の貫通穴122及びメンブレンスイッチ52の貫通穴120を通って、それらの下にある支持板58の表面上を摺動する。そしてその間、各リンク部材102の連結部108″は、シート部材60に非接触に移動し、それにより各リンク部材102とシート部材60との間の摺動による摩擦抵抗を軽減する。
なお、上記した各実施形態によるキースイッチ装置10、70、100で例示した本発明の構成は、その一構成要件である一対のリンク部材を上記したギアリンク構造のリンク部材16、74、102に限定するものではなく、他の様々な構造のリンク部材を備えるキースイッチ装置に適用できるものである。そのような他の一対のリンク部材としては、側面視X字状に組合わされて交点で互いに回動可能に連結されるもの(例えば実開平5−66832号公報参照)、側面視X字状に組合わされて交点で互いに摺動可能に連結されるもの(例えば特開平9−27235号公報参照)等が挙げられる。
図15は、本発明の第4の実施形態によるキースイッチ装置130を示す。キースイッチ装置130は、ベース132と、ベース132の主表面132a上に昇降方向へ移動可能に配置され、オペレータの手指で打鍵される操作面134aを有するキートップ134と、キートップ134をベース132上で昇降方向へ案内支持する案内支持部材136と、キートップ134の昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構138と、スイッチ機構138の下方に配置される支持板140とを備えて構成される。ベース132、キートップ134及びスイッチ機構138は、基本的には図1のキースイッチ装置10におけるベース12、キートップ14及びスイッチ機構18と同様の構成を有する。
ベース132は、その主表面132aから突出して中心開口部142を画成する中空のスリーブ144を一体に備える。またキートップ134は、操作面134aの反対側の内面に、ベース132のスリーブ144に摺動可能に受容される柱状のスライダ146が設置される。スリーブ144とスライダ146とは、互いに協働して案内支持部材136として機能する。スイッチ機構138は、一対の接点148を対向させて各々に担持する一対のシート基板150を有するメンブレンスイッチ152と、キートップ134とメンブレンスイッチ152との間に配置され、キートップ134の下降動作に伴い両接点148を閉じるように作用するドーム状の作動部材154とから構成される。メンブレンスイッチ152の一対のシート基板150の間には、それらシート基板150を所定間隔に支持して両接点148を開状態に保持するスペーサ156が設置される。また作動部材154は、その下端のドーム開口端154bで、上側のシート基板150に直接連結される。
キースイッチ装置130では、キートップ134に外力が加わらないときには、スイッチ機構138の作動部材154がドーム頂部154aの外面で、スライダ146を介してキートップ134をベース132から鉛直上方へ離れた図示の上限位置に付勢支持する。このときメンブレンスイッチ152は、一対の接点148が開いた状態にある。また、オペレータの打鍵操作によりキートップ134が押下げられたときには、作動部材154はスライダ146を介してキートップ134に上方への弾性付勢力を及ぼしつつ変形し、キートップ134が下限位置に達する直前に上側のシート基板150を外面から押圧して接点148を閉じる。キートップ134への押下げ力が解除されると、作動部材154が弾性的に復元し、キートップ134を上限位置へ復帰させるとともに、上側のシート基板150が復元して接点148が開く。
支持板140は、メンブレンスイッチ152の下側のシート基板150の外面に当接されて、キースイッチ装置130の支持構造体を構成する。下側のシート基板150に対向する側の支持板140の表面には、メンブレンスイッチ152の一対の接点148及び作動部材154のドーム開口端154bに対応する位置に、それら接点148及びドーム開口端154bを固定的に支持可能な形状及び寸法を有する複数の突起部分158が形成される。それにより、少なくとも作動部材154のドーム開口端154bの内側における接点148の近傍領域では、支持板140とメンブレンスイッチ152との間に隙間160が形成されている。なお図示実施形態では、作動部材154のドーム開口端154bの外側領域でも、支持板140とメンブレンスイッチ152との間に同様に隙間160が形成される。しかしこの外側領域は、塵埃の存在が接点開閉動作に不都合な影響を及ぼさないことが予測される場合には、隙間160を排除して支持板140をメンブレンスイッチ152に当接させる構成としてもよい。
上記構成を有するキースイッチ装置130では、支持板140はその複数の突起部分158で、キートップ134の打鍵操作時にキートップ134から作動部材154を介してメンブレンスイッチ152に負荷される弾性力を受けるとともに、作動部材154がメンブレンスイッチ152の接点148を閉じる際の押圧力を受けることができる。しかも、接点148の近傍領域では支持板140とメンブレンスイッチ152との間に隙間160が形成されているので、この隙間160の範囲内で支持板140の表面に塵埃が付着している場合にも、塵埃が接点148の正確かつ安定的な開閉動作に影響を及ぼすことは回避される。したがってキースイッチ装置130は、クリーンルーム等の高価な設備を使用せず、通常の組立工程で組み立てることができ、そのときに、メンブレンスイッチ152の接点148の開閉動作に不都合な影響を及ぼすような塵埃がメンブレンスイッチ152とその支持構造との間に介在する確率を低減することができる。
なお、キースイッチ装置130の支持板140は、キースイッチ装置130を組み込むキーボードの樹脂製下部筐体の上に設置される金属製部材から構成できるが、キーボードの構造に対応して、そのような金属製支持板を排除して、キーボードの樹脂製下部筐体自体を支持板140として構成することもできる。また、キースイッチ装置130の一構成要件である案内支持部材136として、上記構造の代わりに、図1で示すような一対のリンク部材16や、前述した他の様々な構成のリンク部材を備える構成とすることもできる。
図16は、例として図1のキースイッチ装置10を多数備えた本発明の実施形態によるキーボード170を示す。キーボード170は、様々な形状のキートップ14を有するキースイッチ装置10を多数、所定の配列で備えて構成される。キーボード170では、キースイッチ装置10におけるベース12、メンブレンスイッチ52(シート基板50及びスペーサ56)、作動部材54を固定したシート部材60並びに支持板58がいずれも、キーボード170に組み込まれる全てのキースイッチ装置10に対して共通する大判のベース12′、メンブレンスイッチ52′、シート部材60′及び支持板58′として形成される。また、前述した他の実施形態によるキースイッチ装置70、100、130を多数配列して、同様にキーボードを構成することができる。このようなキーボードは、組立作業性及び操作性に非常に優れたものとなる。