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JP2009165369A - 起泡性乳化油脂組成物及びその製造法 - Google Patents

起泡性乳化油脂組成物及びその製造法 Download PDF

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JP2009165369A JP2008004835A JP2008004835A JP2009165369A JP 2009165369 A JP2009165369 A JP 2009165369A JP 2008004835 A JP2008004835 A JP 2008004835A JP 2008004835 A JP2008004835 A JP 2008004835A JP 2009165369 A JP2009165369 A JP 2009165369A
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Abstract

【課題】 ケーキ類を製造する際の焼成時に生焼けや釜落ちがなく、ボリュームが大きく、「ソフト」で「弾力」のある食感、「口溶け」感、「しっとり」した食感を全て満足させるケーキを製造できる起泡性乳化油脂組成物を提供すること。
【解決手段】 蛋白質、糖質及び水から成る第一相と油脂(第二相)の乳化物に、乳化剤、ヒドロキシ化合物及び糖類からなる第三相を乳化混合し、冷却して得られることを特徴とするペースト状の乳化油脂組成物、または起泡性水中油型乳化油脂組成物であって、油相の表面を液晶状態の乳化剤が覆っていることを特徴とするケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物を用いてケーキを製造すること。
【選択図】 なし

Description

本発明は、スポンジケーキ、バタースポンジ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スイスロール、ブッセ、バウムクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、蒸しケーキ等(以下「ケーキ類」という)の製造において、ボリュームが大きく、「ソフト」で「弾力」があり、「口溶け」がよく且つ、「しっとり」感のある食感の良いケーキを製造するためのケーキ用起泡性乳化油脂組成物に関するものである。
スポンジケーキの基本は、小麦粉、砂糖、全卵(中味)が等量の三等割であったが、近年、消費者の嗜好の高級化から「ソフト」で「弾力」があり、「口溶け」がよく且つ、「しっとり」した食感のケーキが求められている。しかし、ソフトで口溶けをよくするために卵、油脂の含量を多くすると弾力がなくなったり、反対に弾力を出すために水分を減じたりすると、ぱさついて口溶けが悪くなる等の問題がある。また、食感をソフトにするために比重を下げ、比容積の軽いケーキを作るとソフト感はでるが、総じてしっとり感がなくなり、ぱさつきやすい等の問題が生じる。そのためにこれらのケーキの安定的な製造は困難で、安定的な製造を行う手段としては、油脂を含まない起泡用乳化剤組成物、もしくは起泡性O/W乳化油脂によってケーキの生地を作った後で、液状の油脂を手早く混合する方法がある。しかし、この技術も生産性が悪く、またケーキの比重がバラツキ易く、一定の品質の製品を得る事が難しい。またケーキ配合組成中の卵量が増加すると、油脂を含むケーキでは特に、焼成中の生地の流動によって起こる生地気泡の部分的消泡により、焼成後のケーキ内相に芯が出来易くなる。さらに卵や油脂の多いケーキや比重の軽いケーキは、釜落ちや生焼けという現象が起こりやすく且つ、ぱさつきやすいという問題がある。このため、卵、油脂の含量を多くした比重の軽いケーキを、容易に安定的に製造することは困難で、特に厚みをもったこの種のケーキの製造は極めて困難だった。これらの欠点を改良したものとして、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルを含むポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、乳蛋白とを含有する食品用水中油型起泡剤組成物(特許文献1)が提案されているが、ボリュームやソフト感やしっとり感の改良は十分とは言えず、卵や油脂の含量を多くした配合では、釜落ちや生焼けという問題が生じる。また、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖不飽和脂肪酸エステル、さらに加工澱粉、増粘多糖類あるいは蛋白質を配合したケーキ用起泡性乳化油脂組成物(特許文献2)が提案されているが、ボリュームやソフト感やしっとり感の改良は十分とは言えず、また加工澱粉は均一に分散されない場合があり、生地の起泡性を低下させる等の問題を生じる。
一方、ケーキ用の起泡性乳化油脂組成物の製造法としては、一般的な方法として、加熱した水相に、ほぼ同温度に加熱した油相を加えて、エマルジョン粒子が10μm程度以下のほぼ均一になるまで乳化を行った後、冷却して得る方法(特許文献3、特許文献4、特許文献5)や、D相と呼ばれる水溶性多価アルコール、又は水溶性多価アルコールと水を含んだ界面活性剤溶液を作製後、これに油脂を分散させることによりO/D(Dは界面活性剤)エマルジョンを作り、ここに水を添加することによって微細なO/Wエマルジョンとする方法(特許文献6)、更には、油相に水相の一部を添加して攪拌し、一旦油中水型に乳化した後、残りの水相を添加攪拌して水中油型に転相させ、均質化して水相に分散している油滴粒子の70重量%以上が、粒径0.5〜50μmにする方法(特許文献1)などが提案されているが、油相の表面に存在する液晶状態の乳化剤に着目したものはなく、何れにしてもボリュームの大きさ、「ソフト」で「弾力」のある食感、「口溶け」感、「しっとり」感を全て満足できるケーキは得られていない。
特開2004−16187号公報 特開平10−99009号公報 特開平5−336884号公報 特開平7−289143号公報 特開平11−225670号公報 特開2004−141156号公報
ケーキ類を製造する際の焼成時に生焼けや釜落ちがなく、ボリュームが大きく、「ソフト」で「弾力」のある食感、「口溶け」感、「しっとり」した食感を全て満足させるケーキを製造できる起泡性乳化油脂組成物を提供すること。
上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、蛋白質、糖質及び水から成る第一相と油脂(第二相)の乳化物に、特定量で特定の乳化剤、ヒドロキシ化合物及び糖類からなる第三相を特定の温度で乳化混合し、特定の冷却温度で冷却して得られるペースト状の起泡性乳化油脂組成物とすることで、ボリュームが大きく、「ソフト」で「弾力」があり、「口溶け」がよく且つ、「しっとり」した食感の良いケーキが製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第一は、起泡性水中油型乳化油脂組成物であって、油相の表面を液晶状態の乳化剤が覆っていることを特徴とするケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。好ましい実施態様は、乳化剤が、乳化油脂組成物全体中3〜30重量%のグリセリン脂肪酸エステルと2〜20重量%のショ糖脂肪酸エステルを主成分とする上記記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。より好ましくは、乳化油脂組成物全体中、油相が5〜45重量%である上記記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物、更に好ましくは、水相に、蛋白質、糖質及び水を含有する上記記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物、特に好ましくは、蛋白質が、カゼイン、カゼインナトリウム、乳清蛋白質濃縮物(WPC)の乳蛋白質、或いは全卵を酵素処理したもの、卵黄を酵素処理し加糖してペースト状にした卵蛋白質からなる群より選ばれる少なくとも1種である上記記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物、極めて好ましくは、油相に、プロピレングリコール脂肪酸エステル0.5〜10重量%を含有する上記記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物、最も好ましくは、粒径10μm以上の油滴粒子が、画像面積全体の30%以上であり、且つ粒径10μm以上の油滴粒子の表面を覆っている液晶状態の乳化剤の厚みが、油滴径を100%とした時の1%以上であることを特徴とする上記記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物、に関する。本発明の第二は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法であって、乳化油脂組成物全体中、蛋白質、糖質及び水を主成分とする第一相が10〜65重量%、油脂を主成分とする第二相が5〜45重量%、乳化剤、ヒドロキシ化合物及び糖類を主成分とする第三相が30〜80重量%であり、第三相の乳化剤が乳化油脂組成物全体中、グリセリン脂肪酸エステル3〜30重量%、ショ糖脂肪酸エステル2〜20重量部を主成分とし、まず第一相の成分と第二相の成分を50〜80℃で水中油型に乳化してから、70〜90℃の第三相の成分に添加して撹拌混合することで乳化し、その後25〜50℃まで冷却することを特徴とするケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法に関する。本発明の第三は、上記記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物を用いた食品に関する。
本発明のケーキ用起泡性乳化油脂組成物を、ケーキ類を製造する際に使用することで、焼成時の生焼けや釜落ちがなく、またボリュームが大きく、「ソフト」で「弾力」のある食感、「口溶け」感、「しっとり」した食感を全て満足させるケーキ類を得ることができる。
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物は、油相の表面を液晶状態の乳化剤が覆っていることが特徴であり、粒径10μm以上の油滴粒子の占める面積割合が、該ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物を撮影した画像面積全体の30%以上であり、且つ粒径10μm以上の油滴粒子の表面を覆っている液晶状態の乳化剤の厚みが、油滴粒径に対する割合で1%以上であることが望ましい。なお、本発明のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物中には、本発明の効果を損なわない限り、増粘剤、澱粉類、有機酸塩類、香料、着色料などを適宜使用してもよい。
上記のようなケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物は、たとえば、蛋白質、糖質及び水を主成分とする特定量の第一相の成分と、油脂を主成分とする特定量の第二相の成分を50〜80℃で水中油型に乳化したものを、70〜90℃に維持した乳化剤、ヒドロキシ化合物及び糖類からなる特定量の第三相に添加して撹拌混合することでさらに全体を乳化し、その後25〜50℃まで冷却することで得られる。
本発明の第一相で使用される蛋白質は、乳蛋白質、小麦蛋白質、血液蛋白質、卵蛋白質、およびこれらの酵素処理分解物あるいは酸処理分解物から選ばれる少なくとも1種であり、例えば、乳蛋白質としては、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、カゼインナトリウム、酸カゼイン、脱脂乳を限外濾過(UF)処理して乳糖と乳性ミネラルを除去し、濃縮、粉末化したトータルミルクプロテイン、あるいはこれらの乳蛋白質を酵素処理したもの、小麦蛋白質としては、グルテン、グリアジン、グルテニン、血液蛋白質としては、血漿蛋白質、卵蛋白質としては、卵黄、卵白由来の蛋白質などが挙げられる。このうち、酸カゼイン、カゼインナトリウム、WPC等の乳蛋白質、あるいは全卵を酵素処理したもの、卵黄を酵素処理してから加糖してペースト状にしたもの等の卵蛋白質が好適である。これらの蛋白質は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%である。蛋白質の添加量が0.1重量%より少ないと乳化性が悪い場合があり、一方、5重量%より多いと起泡性が逆に低下してしまう場合がある。
本発明の第一相及び第三相で使用される糖質としては、ショ糖、果糖、葡萄糖、麦芽糖、乳糖、オリゴ糖、及びその液糖類、コーンシロップ等の分解糖化液糖類、ソルビトール等の糖アルコール及びその液糖類が挙げられ、特に、麦芽糖、乳糖、オリゴ糖及びこれらに水素添加処理を施した還元糖から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらに糖濃度(重量換算)が40〜90%、好ましくは50〜80%が好適である。これらの糖質は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、第一相では3〜50重量部が好ましく、より好ましくは5〜40重量%、第三相では10〜60重量%が好ましく、より好ましくは15〜45重量%である。添加量がこの範囲を外れると十分な乳化性が得られない場合がある。
本発明の第二相で使用される油脂は、食用であれば特に限定はなく、通常マーガリンやショートニングに使用される常温で固体状を呈する油脂であっても良いが、常温で液状の油脂が好ましく、例えば、大豆油、菜種油、コーン油等が好適に使用できる。この食用油脂の添加量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中5〜45重量%が好ましい。添加量が5重量%より少ないとソフト感が劣る場合があり、一方、45重量%より多いと組成物の乳化安定性が悪くなり、油分離を生じる場合がある。
本発明の第三相で使用される乳化剤は、食品で用いられる乳化剤であれば特に限定はなく、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。本発明の乳化剤において、グリセリン脂肪酸エステルは必須であり、その合計使用量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中3〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。添加量が3重量%未満では十分な起泡性が得られない場合があり、30重量部%を超えると起泡性乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなり、油分離を生じる場合がある。また本発明の乳化剤においてショ糖脂肪酸エステルは必須であり、その合計使用量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中2〜20重量%が好ましく、より好ましくは3〜5重量%である。添加量が2重量%より少ないと、グリセリン脂肪酸エステルの起泡力を維持することができず、保存中に起泡力が大きく低下してしまう場合がある。一方、20重量%より多いと、ケーキの風味を悪化する場合がある。
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセライド、モノグリセライド有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等からから選ばれる少なくとも1種を用い得る。前記モノグリセライドの構成脂肪酸は、炭素数16〜22の飽和脂肪酸を主要成分とするグリセリンモノ脂肪酸エステルであって、モノグリセライドの含有量が乳化剤全体の80重量%以上であることが好ましい。その上で特に、構成脂肪酸が炭素数22(ベヘン酸)のモノグリセライドを、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5〜5重量%含有させることで、起泡性と生地安定性を好適に向上することができる。また、前記モノグリセライド有機酸エステルの有機酸は、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、酢酸、ジアセチル酒石酸またはこれらの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。モノグリセライド有機酸エステルは、卵や油脂の含量を多くした配合で釜落ちや生焼けを防止する効果があるため、その添加量はケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.3〜5重量%である。添加量が5重量%より多いと、ケーキの食感を損ねたり、風味も悪化する場合がある。
前記ショ糖脂肪酸エステルは、炭素原子数16〜22の飽和脂肪酸とショ糖とのモノエステル、ジエステル、ポリエステルからなる混合物であって、そのHLB値は7〜16が好ましく、これらのショ糖脂肪酸エステルはHLBが7〜16のものを単独で用いることも、平均したHLBが7〜16になるように高・低のHLBのものを組み合わせて用いても構わない。構成脂肪酸が炭素数22(ベヘン酸)のショ糖脂肪酸エステルの添加量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.05重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%であり、その範囲であれば卵や油脂の含量を多くした配合で起こりやすい釜落ちや生焼けを防止することができる。また、これらのショ糖脂肪酸エステルは、本発明の効果を損なわない限り、構成脂肪酸として少量の不飽和脂肪酸を含有し得る。
前記ソルビタン脂肪酸モノエステルとは、炭素原子数16〜22の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸とソルビタン、ソルビトール、ソルバイドとのモノエステル、ジエステル、ポリエステルの何れかである。ソルビタン脂肪酸エステルの添加量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。添加量が10重量%より多いと、ケーキの食感を損ねたり、風味も悪化する場合がある。
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルとは、炭素原子数16〜22の飽和脂肪酸のプロピレングリコールエステルであって、モノエステル純度(含量)が80重量%以上の蒸溜品であることが好ましい。プロピレングリコール脂肪酸エステルの添加量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。添加量が10重量%より多いと、ケーキの食感を損ねたり、風味も悪化する場合がある。プロピレングリコール脂肪酸エステルは、使用する一部もしくは全量を、油脂を主成分とする第二相に添加しても良い。
前記レシチンとは、大豆や卵黄由来もしくはこれらをホスフォリパーゼA2などの酵素処理あるいは分画したものであって、リン脂質の含量が50%以上のものが好ましい。特に、大豆リン脂質が安価であり好ましい。レシチンの添加量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、0〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2重量%である。添加量が5重量%より多いと、レシチン特有の臭いと風味が付与されてしまう場合がある。
前記プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンのうち少なくとも1種以上を使用することで、起泡性、分散性、乳化性を向上することができる。
本発明の第三相で使用されるヒドロシキ化合物は、分子内に1個以上の水酸基を有する水溶性アルコールで、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1.3−フチレンクリコール、1.4−7’チレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールもしくはそれ以上のポリアルキレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリンもしくはそれ以上のポリグリセリンなどが挙げられ、それらの内少なくとも1種を用いることができ、特に、エタノール、グリセリン、プロピレングリコールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらのヒドロキシ化合物の添加量は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.2〜10重量%である。添加量が0.1重量%より少ないと乳化性が悪い場合があり、一方、20重量%より多いと風味が悪化する場合がある。
本発明で使用される水は、飲用可能なものであれば特に制限はなく、例えば、蒸留水、イオン交換樹脂処理水、逆浸透膜(RO)処理水又は限外ろ過膜(UF)処理水等の精製水、水道水、地下水あるいは涌水等の天然水又はアルカリイオン水等が挙げられる。これらの水は、ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物全体中、45重量%以下が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。添加量が45重量%より多いと乳化性が低下してしまう場合がある。
尚、上記のような本発明におけるケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物中には、上記の各種配合物の他、乳化を安定させる目的で増粘剤として、例えば、キサンタンガム、グアーガム、カラギーナン、寒天、ゼラチン、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アルギン酸類、ペクチン、セルロースおよびその誘導体など、澱粉類として、例えば、澱粉を酸またはアルカリ処理したもの、燐酸架橋やヒドロキシプロピルエーテル化などの化学的処理をしたもの、アミラーゼ等による酵素処理したもの、デキストリン類、レジスタントスターチ、難消化性デキストリンなどの加工澱粉を使用しても差し支えない。また、起泡性を更に高めるためにクエン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、酒石酸水素カリウム等の有機酸塩類を使用することも可能である。さらに、香料、着色料も適宜使用できる。
本発明の製造方法は、特に限定はないが、以下に例示する。まず、蛋白質を水に溶解後、糖類を加え、必要に応じて増粘剤、澱粉類、有機酸塩類を加えて混合し、良く攪拌しながら70〜90℃に加熱後、50〜80℃に温調して第一相とする。一方、油脂を、必要に応じてプロピレングリコール脂肪酸エステル、着色料、香料を加えて混合してから、第一相と同温度まで加温して第二相とする。次いで、第一相と第二相を混合して、乳化機を用いて乳化液とする。この際、第一相に第二相をゆっくりと加え、水中油型の乳化液とすることが好ましい。該乳化液の油相の平均粒子径は、10〜80μm以下が好ましく、より好ましくは15〜50μmである。なお、油相の平均粒子径は、顕微鏡観察(KEYENCE社製、デジタルマイクロスコープVHX)で得られた画像を元に、ScionImage(NIH社製画像解析ソフト)を用いて測定した。乳化機は、上記のような粒子径のものが得られるならば、特に制限なく利用することができ、例えば、ホモジナイザー、ディスパーサー、ホモミキサーなどの乳化機を用いることで得ることができる。乳化の際の回転数は2000〜20000rpmが好ましく、より好ましくは3000〜15000rpmであり、乳化時間は1〜10分間が好ましく、より好ましくは2〜8分間である。前記配合で、上記乳化条件であれば、第一相に第二相を混合してなる乳化液の平均粒子径を容易に上記の範囲にできる。また別に、乳化剤に、ヒドロキシ化合物を加えて、乳化剤が溶解する温度、即ち70〜90℃に加熱して全体を融解した後、同温度に温調した糖類を加えて良く攪拌して第三相とする。この第三相に第一相に第二相を混合してなる乳化液を50〜80℃でゆっくり加えて混合した後、プロペラ型、タービン型、又は櫂型の攪拌機などで攪拌し、平均油相粒子径が好ましくは10〜60μm以下、より好ましくは20〜50μmになるまで乳化を行う。その際の回転数は20〜1000rpmが好ましく、より好ましくは50〜200rpmであり、乳化時間は3〜60分間が好ましく、より好ましくは5〜20分間である。三相合わせて得られた乳化物は、バッチ式の場合はプラネタリーミキサー、コンビミックスなどの攪拌混捏機を用いて攪拌しながら25〜50℃まで冷却するか、連続式の場合はプレート式熱交換器を用い25〜50℃まで冷却もしくはボテーター、パーフェクター、コンビネーターなどの掻き取式熱交換器に通し25〜50℃まで急冷可塑化して、ペースト状の乳化油脂組成物を得る。その後、必要に応じてテンパリングすることにより、本発明のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物を得ることができる。冷却温度が25℃より低いと、乳化油脂組成物の可塑性がなくなりケーキ作製時の生地への分散が悪くなるため効果を十分に発揮することができない場合がある。一方、50℃より高いと乳化油脂組成物の乳化安定性が悪くなる場合がある。
なお、乳化油脂組成物100重量部中、第一相が10〜65重量部、第二相が5〜45重量部、第三相が30〜80重量部の割合で乳化混合することが、本発明の効果さらには、乳化油脂としての必要特性である起泡性、分散性、乳化安定性を発揮する上で好ましい。
本発明のケーキ用起泡性水中油型油脂乳化物の製法は、上記のように、蛋白質、糖質及び水を主成分とする第一相と油脂を主成分とする第二相を混合してなる乳化物を、乳化剤、ヒドロキシ化合物及び糖類を主成分とする第三相に混合して乳化し、冷却する方法を採用した。その結果、第一相と第二相を混合して水中油型油脂乳化物とした時点で乳化剤や糖類が存在しないことに起因して、水相に油相を添加して水中油型に乳化する方法のように、乳化中に急激な粘度上昇が生じて粒径が不均一となったり、乳化安定性が悪くなる虞がなくなるため、乳化物の安定性を高め、起泡性能のバラツキを小さくすることができる。
上記のように作製したケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物は、油相の表面を液晶状態の乳化剤が覆っていることが特徴で、乳化剤が融解した状態の第三相に第一相と第二相を混合してなる乳化物を加えることで油相の表面を液晶状態の乳化剤で覆うことができる。このことは、該ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物を偏光顕微鏡や微分干渉顕微鏡で観察してみると、液晶状態の乳化剤が覆っていない乳化物に較べて、本発明のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物は、油相粒径が大きく、且つ油相の表面に分厚い液晶状態の乳化剤が存在していることからわかる。
本発明のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物は、小麦粉を主体にした食品に適用できるが、主としてケーキ類において有利に使用できる。ここで、「ケーキ類」とは、主原料としての小麦粉に、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等)、水、卵(全卵、卵黄、卵白、卵代替物など)、乳製品、食塩、糖類などを添加し、更に必要に応じて、親水性乳化剤、調味料(グルタミン酸類、核酸類)、化学膨張剤、フレーバー等を添加混捏し、焼成したものを言う。これらの例としては、スポンジケーキ、バタースポンジ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スイスロール、ブッセ、バウムクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、蒸しケーキなどを挙げることができる。
本発明のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物の使用量は、その生地配合、使用する機械等により異なるが、通常小麦粉100重量部に対して、5〜80重量部が好ましく、より好ましくは、10〜50重量部の範囲である。添加量が5重量部より少ないと効果がない場合があり、一方、80重量部%より多いと風味が悪化する場合がある。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
<使用した原材料(*付数字は、表中の数字と同一)>
*1:乳清蛋白質濃縮物(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製「ミルプロLG」)
*2:オリゴトース(三菱化学フーズ(株)製「オリゴトース」)
*3:キサンタンガム(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製「サンエース」)
*4:プロピレングリコール脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製「リケマールPS−100」)
*5:モノグリセライド(理研ビタミン(株)製「エマルジーMS」)
*6:ベヘン酸系反応モノグリセライド(理研ビタミン(株)製「ポエムB−200」)
*7:クエン酸モノグリセライド(理研ビタミン(株)製「ポエムK−30」)
*8:コハク酸モノグリセライド(理研ビタミン(株)製「ポエムB−10」)
*9:ポリグリセリン脂肪酸エステル(阪本薬品工業(株)製「SYグリスターMS−5S」)
*10:ソルビタン脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製「S−60V」)
*11:ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)製「リョートーエステルS−1170」)
*12:ショ糖ベヘン酸エステル(第一工業製薬(株)製「DKエステルB−30」)
*13:レシチン(日清オイリオグループ(株)製「レシチンDX」)
*14:酵素分解レシチン(理研ビタミン(株)製「レシマールEL」)
*15:ソルビトール(日研化成(株)製「ソルビトールF」)
*18:薄力粉(日清製粉(株)製「バイオレット」)
*19:全卵(キューピー(株)製「殺菌液卵」)
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*24:スポンジ用油脂((株)カネカ製「マリパート」)
<平均油相粒子径の測定及び粒径10μm以上の油滴粒子の割合>
油相の平均粒子径は、顕微鏡観察(KEYENCE社製、デジタルマイクロスコープVHX)で得られたケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物の画像(倍率:500)を基に、画像解析ソフト(NIH社製、Scion Image)を用いて算出した。
<粒径10μm以上の油滴粒子の表面を覆っている液晶状態の乳化剤の厚みの油滴径に対する割合の測定>
顕微鏡観察(KEYENCE社製、デジタルマイクロスコープVHX)で得られた画像(倍率:500)を基に、粒径10μm以上の油滴粒子の表面を覆っている液晶状態の乳化剤の厚みを計測し、油滴径に対する割合を計算した。
(実施例1)
表1に示す配合に従って、全量を100重量部とし、起泡性乳化油脂組成物を製造した。すなわち、乳清蛋白質濃縮物を水に溶解後、オリゴトースとキサンタンガムを加えて攪拌し、75℃で10分間加熱して、第一相を調製した。この第一相をホモミキサー(T.K.ホモミキサーMARKII、プライミクス社製)で攪拌しながら、そこへ75℃に加熱したコーン油(第二相)をゆっくりと添加し、4000rpmで2分間保持して乳化液を得た。一方、コンビミックス(T.K.コンビミックス3M−5型)に乳化剤を投入し混合後、エタノールを加えて75℃まで加熱して溶解したところに、別に準備した同温度のソルビトールと水の混合液を添加し、アンカーミキサーを用いて60rpmで10分間攪拌して第三相を調製した。この第三相に、先に調製した乳化液をゆっくりと添加し、真空下で10分間乳化(アンカーミキサー60rpm、ホモディスパー2000rpm)した後、冷却ジャケットを5℃に設定し、アンカーミキサーのみを用いて100rpmで攪拌しながら品温が45℃になるまで冷却して、乳化物1を得た。得られた乳化物1の平均油滴粒子径は、表1にまとめた。
Figure 2009165369
(実施例2〜4、6、7
表1に示す配合に従って各配合量を変え、実施例1と同様の方法にて乳化物2〜4、6、7を得た。得られた乳化物2〜4、6、7の平均油相粒子径は、表1にまとめた。
(実施例5、12、13)
表1に示す配合に従って各配合量を変え、第一相に添加する第二相を、75℃に加熱したコーン油にプロピレングリコール脂肪酸エステルを溶解することで調整した以外は、実施例1と同様の方法にて乳化物5、12、13を得た。得られた乳化物5、12、13の平均油相粒子径は、表1にまとめた。
(実施例8)
表1に示す配合に従って各配合量を変え、第一相と第二相を混合してなる乳化液と第三相との混合条件を、真空下で10分間乳化(アンカーミキサー60rpm、ホモディスパー2000rpm、ホモミキサー4000rpmのみ5分間)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて乳化物8を得た。得られた乳化物8の平均油相粒子径は、表1にまとめた。
(実施例9)
表1に示す配合に従って各配合量を変え、第一相と第二相を混合してなる乳化液と第三相との混合条件を、真空下で10分間乳化(アンカーミキサー60rpm、ホモディスパー2000rpmのみ5分間)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて乳化物9を得た。得られた乳化物9の平均油相粒子径は、表1にまとめた。
(実施例10)
表1に示す配合に従って各配合量を変え、第一相と第二相を混合してなる乳化液と第三相との混合乳化物の冷却条件をコンビミックスからコンビネーターに替えた以外は、実施例1と同様の方法にて乳化物10を得た。得られた乳化物10の平均油相粒子径は、表1にまとめた。
(実施例11)
表1に示す配合に従って各配合量を変え、第一相と第二相を混合してなる乳化液と第三相との混合乳化物の冷却温度を35℃に替えた以外は、実施例10と同様の方法にて乳化物11を得た。得られた乳化物11の平均油相粒子径は、表1にまとめた。
(比較例1)
実施例1と同じ配合組成において、製造法を変えて乳化油脂組成物を作製した。すなわち、コンビミックスに、水、ソルビトール、オリゴトースを混合したところに、ショ糖脂肪酸エステル、乳清蛋白質濃縮物、キサンタンガム、エタノールを加え、アンカーミキサー60rpm及びホモディスパー2000rpmで攪拌しながら75℃まで加温し10分間保持して水相とした。一方、コーン油にモノグリセライドとプロピレングリコール脂肪酸エステルを加え混合し、75℃まで加温溶解して、油相とした。上記水相に油相を攪拌しながらゆっくりと投入し、真空下で10分間乳化(アンカーミキサー60rpm、ホモディスパー2000rpm、ホモミキサー4000rpm)した後、アンカーミキサー100rpmのみで攪拌しながら品温が47℃になるまで冷却して、乳化物14を得た。得られた乳化物14の平均油相粒子径は、表2にまとめた。
Figure 2009165369
(比較例2)
水相と油相の乳化条件(アンカーミキサー60rpm、ホモディスパー2000rpmのみ7分間)を変えた以外は比較例1と同様にして、油相の平均粒子径が異なる乳化物15を得た。得られた乳化物15の平均油相粒子径は、表2にまとめた。
(比較例3)
実施例3において、第一〜三相の混合方法を変えて、乳化物16を得た。すなわち、コンビミックス(T.K.コンビミックス3M−5型)を用い、第三相に第一相を添加し75℃で5分間混合(アンカーミキサー60rpm)し、さらに第二相を添加して75℃で10分間乳化(アンカーミキサー60rpm、ホモディスパー2000rpm)した後、アンカーミキサー100rpmのみで攪拌しながら品温が45℃になるまで冷却して、乳化物16を得た。得られた乳化物16の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
Figure 2009165369
(比較例4)
実施例3において、第一〜三相の混合方法を変えて、ペースト状の乳化油脂組成物を得た。すなわち、コンビミックス(T.K.コンビミックス3M−5型)を用い、第三相に第二相を添加し75℃で10分間乳化(アンカーミキサー60rpm、ホモディスパー2000rpm)し、さらに第一相を添加して75℃で10分間乳化(アンカーミキサー60rpm)した後、アンカーミキサー100rpmのみで攪拌しながら品温が45℃になるまで冷却して、乳化物17を得た。得られた乳化物17の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
(比較例5)
実施例4において、第三相の乳化剤配合を変えた(プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンの合計量を1.5重量部とし、減少分はソルビトールを添加した)以外は、実施例4と同様の方法で乳化物18を得た。得られた乳化物18の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
(比較例6)
実施例6において、第一相と第二相を混合し、調整してなる乳化液を第三相に添加した後の冷却温度を20℃に変更した以外は、実施例7と同様の方法で乳化物19を得た。得られた乳化物19の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
(比較例7)
実施例8において、ホモミキサー4000rpmでの乳化時間を5分から10分に変えた以外は、実施例8と同様の方法にて、油相の平均粒子径が異なる乳化物20を得た。得られた乳化物20の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
(比較例8)
実施例9において、ホモディスパー2000rpmでの乳化時間を5分から3分に変えた以外は、実施例9と同様の方法にて、油相の平均粒子径が異なる乳化21を得た。得られた乳化物21の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
(比較例9)
実施例10において、エタノールを使用しない(減少分はソルビトールを添加した)以外は、実施例10と同様の方法で乳化物22を得た。得られた乳化物22の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
(比較例10、11)
実施例11において、乳清蛋白質濃縮物量を変更(増減分はオリゴトース量(比較例10)或いはオリゴトース量及びコーン油量(比較例11)で調整)した以外は、実施例11と同様の方法で乳化物23(比較例10)、乳化物24(比較例11)を得た。得られた乳化物23、24の平均油相粒子径は、表3にまとめた。
<ケーキ比容積測定法>
実施例・比較例で作製したケーキは、レーザー式容積測定装置(株式会社アステック社製)を用いて測定した。
<ケーキの外観評価>
実施例・比較例で作製したケーキを10人の熟練したパネラーが目視で観察し、良否を5段階で評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:表面が平らで滑らかである、4点:表面は平らであるが荒れが少しある、3点:表面に多少の凹凸が見られる、2点:釜落ちが少しあり、表面に少し荒れがある、1点:釜落ちが激しく、表面に荒れがある。
<ケーキの内相評価>
実施例・比較例で作製したケーキを垂直方向と水平方向にスライスして、その内相を10人の熟練したパネラーが目視で良否を評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:気泡が均一で丸い、4点:気泡がやや不均一で丸い、3点:気泡がやや不均一でやや変形している、2点:気泡が不均一でやや変形している、1点:気泡が不均一で、変形している。
<ケーキ芯発生有無の評価>
実施例・比較例で作製したケーキを垂直方向と水平方向にスライスして、芯発生の有無を10人の熟練したパネラーが目視で良否を評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:芯の発生なし、4点:中心部分底部に僅かに芯が発生している、3点:中心部底全体に僅かに芯が発生している、2点:中心部分全体的に芯が少し発生している、1点:中心部分全体に芯が発生している。
<ケーキ官能評価法(風味)>
実施例・比較例で作製したケーキを10人の熟練したパネラーに試食してもらい、その風味を評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:大変好ましい、4点:好ましい、3点:普通、2点:やや悪い、1点:悪い。
<ケーキ評価法(食感:弾力)>
実施例・比較例で作製したケーキを10人の熟練したパネラーに試食してもらい、その弾力を評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:感じられ非常に良好、4点:感じられ良好、3点:普通、2点:少なくやや悪い、1点:ネチャツキがあり悪い。
<ケーキ評価法(食感:ソフト感>
実施例・比較例で作製したケーキを10人の熟練したパネラーに食べてもらい、そのソフト感を評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:感じられ非常に良好、4点:感じられ良好、3点:普通、2点:少なくやや悪い、1点:感じられず、悪い。
<ケーキ評価法(食感:口溶け)>
実施例・比較例で作製したケーキを10人の熟練したパネラーに試食してもらい、その口溶けを評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:感じられ非常に良好、4点:感じられ良好、3点:普通、2点:少なくやや悪い、1点:ネチャツキがあり悪い。
<ケーキ評価法(食感:しっとり感)>
実施例・比較例で作製したケーキを10人の熟練したパネラーに試食してもらい、そのしっとり感を評価した結果を平均化し、評価点とした。評価基準は、以下の通りであった。5点:強く感じられ非常に良好、4点:感じがあり良好、3点:普通、2点:少しパサツキが感じられて悪い、1点:パサツキが感じられ非常に悪い。
(実施例14〜18、比較例12〜16)
実施例1〜5および比較例1〜5で得られた乳化物1〜5、14〜18を用いて、表4の配合に従い、以下のようにしてスポンジケーキを作製し、評価した。評価結果は、表4にまとめた。
20コート縦型ミキサー(関東混合機工業株式会社製)の中に全卵、上白糖、マーガリン、乳化物を入れ、ワイヤーホイッパーで低速にて60秒間攪拌し、軽く混合した。これに薄力粉とベーキングパウダーを篩に通したものを加え、低速で30秒間混合し、次いで高速で、生地比重が0.46となるまで起泡し、生地を調製した。得られた生地は焼き型(6号デコ台型、直径18cm、高さ6cm)に330g流し込み、180℃で約30分間、オーブンで焼成してケーキを作製した。得られたケーキはポリエチレン製袋に密封して室温にて2日間保存した後、ケーキを評価した。
Figure 2009165369
[実施例14〜15、比較例12〜13の比較による製造方法の比較]
実施例14及び15を使用したスポンジケーキは、ボリュームがあり、生焼けや釜落ちのない良好な外観、内相であった。また、食感もふっくらした弾力があり、且つソフト感があり、口溶けがよく、しっとり感があり、風味の良好なケーキであった。特に、モノグリセリドの一部をクエン酸モノグリセリドに替えた実施例15は、ボリュームが大きく、外観が優れていた。一方、製造法を従来の一般的な方法である、加熱した水相にほぼ同温度に加熱した油相を加えた乳化した比較例14〜15では、ボリューム、食感共に実施例には遥かに劣っており、共にやや粉っぽい風味であり、特に油相の平均粒子径が小さい比較例1は総じて悪かった。
[実施例16、比較例14〜15の比較による製造方法の比較]
実施例16を使用したスポンジケーキは、ボリュームがあり、生焼けや釜落ちのない良好な外観、内相であり、食感もふっくらした弾力とソフト感があり、口溶けがよく、しっとり感のあるケーキであった。一方、第一〜三相の混合順番を変えた製造法では、共に乳化油脂組成物の乳化安定性が悪く、油の分離が見られた。これらは、ケーキ評価においても外観、内相、食感いずれも総じて悪かった。
[実施例17〜18、比較例16の比較による乳化剤の比較]
実施例17〜18を使用したスポンジケーキは、外観、内相が良好で、食感も弾力、ソフト感、口溶け、しっとり感のあるケーキであった。特に、プロピレングリコール脂肪酸エステスの一部を油脂に添加した実施例18は、外観、弾力とソフト感が優れていた。一方、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンを添加しなかった比較例16では、ボリュームも小さく、食感も悪かった。
(実施例19〜24、比較例17〜22)
実施例6〜11、比較例6〜11で得られた乳化物6〜11、19〜24を用いて、表5の配合に従い、実施例14と同様にしてスポンジケーキを作製し、評価した。評価結果は、表5にまとめた。
Figure 2009165369
[実施例19〜20、比較例17の比較による冷却温度の比較]
実施例19〜20を使用したスポンジケーキは、外観、内相が良好で、食感も弾力、ソフト感、口溶け、しっとり感があるケーキであった。特に、モノグリセリドの一部をベヘン酸系反応モノグリセリドに替えた実施例20では、規定の比重になるまでの時間が2分と、実施例19に比べて15秒早く、ケーキ評価においても、ボリュームが大きく、外観が優れていた。一方、冷却温度が20℃であった比較例19では、内相が悪く、食感もソフト感としっとり感に欠け、ネチャツキが感じられた。
[実施例21〜22、比較例18〜19の比較による油相径の比較]
実施例21及び22を使用したスポンジケーキは、外観、内相が良好で、食感も弾力、ソフト感、口溶け、しっとり感のあるケーキであった。一方、油相径の小さい比較例18では、ボリュームがやや小さく、しっとり感に欠けていた。また、油相径が大きい比較例19では油脂乳化組成物の乳化安定性が悪く、油の分離が見られ、ケーキ評価も総じて悪かった。
[実施例23、比較例20の比較によるエタノール有無の比較]
実施例23を使用したスポンジケーキは、外観、内相が良好で、弾力、ソフト感、口溶け、しっとり感のある食感のケーキであった。一方、エタノールなしの比較例20では、ボリュームがやや小さく、食感が総じて悪かった。特に、焼成1日目のケーキを−20℃で30日間冷凍後、室温で解凍したものは、実施例21では焼成直後の食感を維持していたが、比較例20では食感にべたつき感が感じられ、その差は歴然としていた。
[実施例24、比較例21〜22の比較による蛋白質量の比較]
実施例24を使用したスポンジケーキは、外観、内相が良好で、食感も弾力、ソフト感、口溶け、しっとり感のあるケーキであった。一方、蛋白質量の少ない比較例21では、乳化性が悪く乳化油脂組成物中にダマが発生した。また、ケーキではボリュームがあるものの、しっとり感に欠けており、総じて悪かった。また、蛋白質量の多い比較例22では、起泡性が悪く、ケーキバッターの比重はホイップ時間を延長しても0.55までしか下がらなかった。ケーキ評価ではボリュームが小さく、ソフト感と口溶けが劣っていた。
(実施例25〜33)
実施例12、13で得られた乳化物12、13を用いて、表6の配合に従い、実施例14と同様にしてスポンジケーキを作製し、評価した。評価結果は、表6にまとめた。
Figure 2009165369
[実施例25〜33の比較によるスポンジケーキ配合の比較]
いずれのスポンジケーキもボリュームがあり、生焼けや釜落ちのない良好な外観、内相であった。また、食感もふっくらした弾力があり、且つソフト感があり、口溶けがよく、しっとり感のあるケーキであった。ケーキバッターの比重を下げたケーキにおいても(実施例29)、パサツキはなく、しっとり感のあるケーキが作製できた。さらに、水分や糖分量が多いもの(実施例27、31、32)はソフト感としっとり感が、また油脂の多いもの(実施例33)は口どけが良好であり、幅広い配合組成の範囲で良好なケーキができることが確認できた。さらに、ショ糖脂肪酸エステルの一部をベヘン酸系反応モノグリセリドに変えた乳化物13(実施例26)は、ショ糖ステアリン酸エステルのみの乳化物12(実施例25)に比べ、卵の含量を多くした配合においても、ボリュームが大きく、スポンジケーキの表面がフラットで外観の良好なケーキを得ることができた。

Claims (9)

  1. 起泡性水中油型乳化油脂組成物であって、油相の表面を液晶状態の乳化剤が覆っていることを特徴とするケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  2. 乳化剤が、乳化油脂組成物全体中3〜30重量%のグリセリン脂肪酸エステルと2〜20重量%のショ糖脂肪酸エステルを主成分とする請求項1に記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  3. 乳化油脂組成物全体中、油相が5〜45重量%である請求項1又は2に記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  4. 水相に、蛋白質、糖質及び水を含有する請求項1〜3何れかに記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  5. 蛋白質が、カゼイン、カゼインナトリウム、乳清蛋白質濃縮物(WPC)の乳蛋白質、或いは全卵を酵素処理したもの、卵黄を酵素処理し加糖してペースト状にした卵蛋白質からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4何れかに記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  6. 油相に、プロピレングリコール脂肪酸エステル0.5〜10重量%を含有する請求項1〜5何れかに記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  7. 粒径10μm以上の油滴粒子が、画像面積全体の30%以上であり、且つ粒径10μm以上の油滴粒子の表面を覆っている液晶状態の乳化剤の厚みが、油滴径を100%とした時の1%以上であることを特徴とする請求項1〜6何れかに記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物。
  8. ケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法であって、乳化油脂組成物全体中、蛋白質、糖質及び水を主成分とする第一相が10〜65重量%、油脂を主成分とする第二相が5〜45重量%、乳化剤、ヒドロキシ化合物及び糖類を主成分とする第三相が30〜80重量%であり、第三相の乳化剤が乳化油脂組成物全体中、グリセリン脂肪酸エステル3〜30重量%、ショ糖脂肪酸エステル2〜20重量部を主成分とし、まず第一相の成分と第二相の成分を50〜80℃で水中油型に乳化してから、70〜90℃の第三相の成分に添加して撹拌混合することで乳化し、その後25〜50℃まで冷却することを特徴とするケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法。
  9. 請求項1〜7何れかに記載のケーキ用起泡性水中油型乳化油脂組成物を用いた食品。
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