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JP2009012012A - パルスアーク溶接制御方法およびパルスアーク溶接装置 - Google Patents

パルスアーク溶接制御方法およびパルスアーク溶接装置 Download PDF

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JP2009012012A JP2007173680A JP2007173680A JP2009012012A JP 2009012012 A JP2009012012 A JP 2009012012A JP 2007173680 A JP2007173680 A JP 2007173680A JP 2007173680 A JP2007173680 A JP 2007173680A JP 2009012012 A JP2009012012 A JP 2009012012A
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Abstract

【課題】アルミなどの固有抵抗率の低い材質では、溶接始端部は定常溶接期間と同条件では入熱不足となり溶け込み不足が発生しまう。また、溶接終端部におけるクレータの発生を軽減することは、溶接電圧とワイヤ送給速度の制御により可能であるが、定常溶接期間の溶接電圧とワイヤ送給速度からエンド溶接期間の溶接終了点にかけてエンド溶接期間の溶接電圧とワイヤ送給速度になるように調整するだけではクレータ状態を安定して形成することができない可能性がある。
【解決手段】設定される溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質に応じて、スタート溶接期間およびエンド溶接期間では定常溶接期間とは異なるパルス電流波形により溶接を行うことで良好な溶接品質を実現することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、消耗電極である溶接ワイヤを送給しながらパルスアーク溶接を行うパルスアーク溶接制御方法およびパルスアーク溶接装置に関するものである。
従来のアーク溶接において、アルミをアーク溶接する場合、溶接のスタート期間では、被溶接部に供給する溶接電圧や溶接ワイヤ送給速度を、定常溶接時の設定レベルと同じ設定レベルで行っていた。また、溶接のエンド期間では、クレータ発生を抑制するクレータ処理を目的として、クレータ処理期間内に被溶接部に供給する溶接電圧を定常時の設定レベルからクレータ処理設定レベルまで減少させると共に、溶接ワイヤの送給速度を前記溶接電圧の変化に応じて減少させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平1−107968号公報
上記従来のアーク溶接においては、図12に示すように溶接始端部103では溶接電圧と溶接ワイヤ送給速度が定常溶接期間TNと同条件となっているので、被溶接物101としてアルミなどの固有抵抗率が低く熱伝導率が高い材質を溶接する場合、溶接始端部103の付近では入熱不足となり、溶け込み不足が発生してしまうことがある。そして、ビード幅が狭く、ビード高さが高く、溶け込みが浅いビード外観になってしまうことがある。
また、従来のアーク溶接において、溶接終端部におけるクレータ102の発生を軽減することは、溶接電圧Vとワイヤ送給速度WSの制御により可能である。しかし、定常溶接期間TNの溶接電圧V1とワイヤ送給速度WS1から、エンド期間の溶接終了点にかけて溶接電圧V2とワイヤ送給速度WS2になるように調整するだけでは、クレータ状態を安定して形成することができない場合がある。その理由としては、エンド期間において定常溶接期間TNと同じ溶接速度で溶接ワイヤを溶接方向に移動させる場合、溶接ワイヤを送給する速度をワイヤ送給速度WS1からワイヤ送給速度WS2に減速すると、溶接ワイヤの供給量が減少してビード幅が細くなり、クレータ状態を安定して形成することができないからである。
従って、従来のアーク溶接においては、溶接始端部から溶接終端部に至る全溶接長において溶接品質を確保できないおそれがある。
上記課題を解決するために、本発明のパルスアーク溶接制御方法は、アルミを主成分とする溶接ワイヤと被溶接物との間でアークを発生させて溶接を行うパルスアーク溶接制御方法であって、定常溶接期間になる前のスタート溶接期間では、平均溶接電流が前記定常溶接期間の平均溶接電流以上の大きさであり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも高いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接制御方法は、上記に加えて、スタート溶接期間内において、平均溶接電流を定常溶接期間の平均溶接電流よりも高い平均溶接電流から前記定常溶接期間の平均溶接電流に向かって低減するように制御し、溶接速度を前記定常溶接期間の溶接速度よりも低い溶接速度から前記定常溶接期間の溶接速度に向かって増加するように制御し、前記平均溶接電流の低減と前記溶接速度の増加とを同期させて溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接制御方法は、上記に加えて、鉄あるいはステンレスを主成分とする溶接ワイヤと被溶接物との間でアークを発生させて溶接を行うアーク溶接制御方法であって、定常溶接期間になる前のスタート溶接期間では、平均溶接電流が前記定常溶接期間の平均溶接電流以下の大きさであり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接制御方法は、上記に加えて、スタート溶接期間内において、平均溶接電流を定常溶接期間の平均溶接電流よりも低い平均溶接電流から前記定常溶接期間の平均溶接電流に向かって増加するように制御し、溶接速度を前記定常溶接期間の溶接速度よりも低い溶接速度から前記定常溶接期間の溶接速度に向かって増加するように制御し、前記平均溶接電流の増加と前記溶接速度の増加とを同期させて溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接制御方法は、上記に加えて、定常溶接期間の後のエンド溶接期間では、平均溶接電流が前記定常溶接期間の平均溶接電流以下の大きさであり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接制御方法は、上記に加えて、エンド溶接期間において、平均溶接電流を定常溶接期間の平均溶接電流から前記エンド溶接期間の溶接終了位置での平均溶接電流に向かって低減するように制御し、溶接速度を前記定常溶接期間の溶接速度から前記エンド溶接期間の溶接終了位置での溶接速度に向かって低減するように制御し、前記平均溶接電流の低減と前記溶接速度の低減とを同期させて溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接装置は、溶接ワイヤと被溶接物との間でアークを発生させて溶接を行うパルスアーク溶接装置であって、前記溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質を設定するための材質設定部と、前記材質設定部に設定された材質に基づいてスタート溶接期間と前記スタート溶接期間の後の定常溶接期間と前記定常溶接期間の後のエンド溶接期間でのそれぞれのパルス電流波形信号を出力するパルス波形制御部と、前記材質設定部に設定された材質と前記パルス波形制御部からの信号に基づいて前記スタート溶接期間と前記定常溶接期間と前記エンド溶接期間の各々の期間でのパルス電流波形と平均溶接電流と溶接速度を制御する信号を出力する溶接条件制御部と、パルス電流波形と平均溶接電流を制御するスイッチング素子と、前記溶接条件制御部からの信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する出力制御部と、前記溶接ワイヤを送給するための溶接トーチを保持するマニピュレータと、前記溶接条件制御部からの信号に基づいて前記マニピュレータの動作を制御することで溶接速度を制御するロボット制御部とを備え、設定される溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質に応じて、前記スタート溶接期間および前記エンド溶接期間では前記定常溶接期間とは異なるパルス電流波形により溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接装置は、上記に加えて、材質設定部により溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質としてアルミを主成分とする材質が設定された場合、スタート溶接期間では、平均溶接電流が定常溶接期間の平均溶接電流以上の大きさであり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも高いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接装置は、上記に加えて、材質設定部により溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質として鉄あるいはステンレスを主成分とする材質が設定された場合、スタート溶接期間では、平均溶接電流が定常溶接期間の平均溶接電流以下の大きさであり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うものである。
また、本発明のパルスアーク溶接装置は、上記に加えて、エンド溶接期間では、平均溶接電流が定常溶接期間の平均溶接電流以下の大きさであり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うものである。
本発明によれば、スタート溶接期間、定常溶接期間、エンド溶接期間において、溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質に応じたパルス波形電流により溶接を行うことで被溶接物への入熱を適切に行うことができ、溶接始端部から溶接終端部で良好な溶接品質を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図1から図11を用いて説明する。
なお、アルミなどの固有抵抗率が低く熱伝導率が高い材質に有効なパルスアーク溶接制御方法およびパルスアーク溶接装置について実施の形態1で説明し、アルミとは異なり固有抵抗率が高く熱伝導率が低い材質である鉄やステンレスに有効なパルスアーク溶接制御方法およびパルスアーク溶接装置について実施の形態2で説明する。
(実施の形態1)
アルミなどの固有抵抗率が低く熱伝導性が良い材質に有効なパルスアーク制御方法およびパルスアーク溶接装置について、以下、図1から図9を用いて説明する。
なお、本実施の形態においては、スタート溶接期間TSの後に定常溶接期間TNとなり、定常溶接期間TNの後にエンド期間TNとなる場合について説明する。また、定常溶接期間TNの間に繰り返されるパルス電流の波形を標準パルス波形と呼び、この標準パルス波形のピーク電流をIpとし、ベース電流をIbとする。
図1は、被溶接物への入熱の増加および溶け込みを深くさせるためのパルス波形の例を示す図である。図1(a)は標準パルス波形を示しており。図1(b)と図1(c)は図1(a)の標準パルス波形に比べて入熱の増加および溶け込み量を深くできるパルス波形の例を示している。図1(b)の波形は、図1(a)の波形に比べてピーク電流Ip2が高くピーク電流期間およびパルス幅PW2が短い波形の例である。また、図1(c)の波形は、図1(a)の波形に比べてピーク電流Ip2が高くピーク電流期間およびパルス幅PW3が短くベース電流Ib2が低い波形の例である。ここで、パルス幅については、PW1>PW2>PW3となっている。ピーク電流については、Ip<Ip2となっている。ベース電流については、Ib>Ib2となっている。
図1(b)と図1(c)に示すパルス波形は、定常溶接期間TNの間繰り返される図1(a)に示す標準パルス波形のピーク電流Ipより高いピーク電流Ip2を設定し、溶滴離脱状態が成立する、すなわち、1パルス1ドロップを実現するようにパルス幅PW2,PW3やピーク電流Ip2やベース電流Ib2を調整したものである。ここで、ピーク電流Ip2やベース電流Ib2やパルス幅PW2,PW3等は被溶接物や使用する溶接ワイヤ等の溶接条件によって異なるものであり、例えば、実験等により求めておくことができる。
なお、ピーク電流を高くすることにより、アーク力が強く、溶融プールの押し付け力が強くなるため、溶け込み量を深くすることができ、また被溶接物へ入熱を十分に入れることができる。
ここで、アルミを主成分とする被溶接物を溶接する場合、固有抵抗率が低く、熱伝導性が良く、熱が逃げやすい材質であるため、従来、溶接始端部付近はビード幅が狭く、ビード高さが高く、溶け込みが浅いビード形成状態であった。しかし、本実施の形態のアーク溶接制御方法のように、スタート溶接期間TSの間、図1(b)や図1(c)に示すような図1(a)に示す標準パルス波形よりもピーク電流が高いパルス波形を繰り返すことにより、溶接開始部で被溶接物に対して急峻に入熱を入れることができ、ビード幅が広く、ビード高さが低く、溶け込みが深いビード形成状態を確保することができる。
図2は、被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くさせるためのパルス波形の例を示す図である。図2(a)は標準パルス波形を示しており。図2(b)と図2(c)は図2(a)の標準パルス波形に比べて入熱の減少および溶け込み量を浅くできるパルス波形の例を示している。図2(b)の波形は、図2(a)の波形に比べてピーク電流が低くピーク電流期間およびパルス幅が長い波形である。また、図2(c)の波形は、図2(a)の波形に比べてピーク電流が低くてピーク電流期間が長くベース電流が高い波形である。
図2(b)と図2(c)に示すパルス波形は、定常溶接期間TNの間繰り返される図2(a)に示す標準パルス波形のピーク電流Ipより低いピーク電流Ip3を設定し、溶滴離脱状態が成立する、すなわち、1パルス1ドロップを実現するようにパルス幅PW4,PW5やピーク電流Ip3やベース電流Ib3を調整したものである。ここで、ピーク電流Ip3やベース電流Ib3やパルス幅PW4,PW5等は被溶接物や使用する溶接ワイヤ等の溶接条件によって異なるものであり、例えば、実験等により求めておくことができる。
なお、ピーク電流Ipを低くすることにより、アーク力は弱く、溶融プールの押し付け力が弱くなるため、溶け込み量を浅くすることができ、また被溶接物への入熱を抑えることができる。よって、アルミなどの固有抵抗率が低く熱伝導率が高い材質には、溶接終端部付近に有効なパルス波形である。
図3は、スタート溶接期間TSおよび定常溶接期間TNにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。なお、この溶接位置に対する変化は、時間変化と見ることもできる。また、溶接速度とは、例えば産業用ロボットに取り付けられた溶接トーチが溶接線方向に移動する速度である。図3において、スタート溶接期間TSでは、図1(b)や図1(c)に示す被溶接物への入熱の増加および溶け込みを深くできるパルス波形を設定した場合の平均溶接電流および溶接速度の一例であり、スタート溶接期間TSと定常溶接期間TNとで平均溶接電流と溶接速度が同じ場合の例を示している。なお、平均溶接電流と溶接電圧とは同期して変化するものである。
従来の溶接始端部付近では、被溶接物の材質がアルミの場合、固有抵抗率が低く、熱伝導性が良く、熱が逃げやすいため、ビード幅が狭く、ビード高さが高く、溶け込みが浅いビード形成状態であった。
そこで、スタート溶接期間TSに被溶接物への入熱の増加および溶け込みを深くできるパルス波形を設定して溶接することにより、溶接始端部に入熱を十分に入れることができ、ビード幅が広がり、ビード高さが低く、溶け込みが深くなり、溶接品質を向上させることができる。すなわち、溶接条件にもよるが、スタート溶接期間TSと定常溶接期間TNとで平均溶接電流が一定でも、スタート溶接期間TSにおけるパルス電流波形のピーク電流を定常溶接期間TNのパルス電流波形のピーク電流より高くすることで溶接品質を向上させることができる。
図4は、スタート溶接期間TSおよび定常溶接期間TNにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。図4では、スタート溶接期間TSにおいて、図1(b)や図1(c)で示した被溶接物への入熱の増加または溶け込みを深くできるパルス波形を設定したことに加えて、溶接開始時には定常溶接期間TNの平均溶接電流INと溶接速度SNよりも高い平均溶接電流ISと低い溶接速度SSで溶接を開始し、さらに、スタート溶接期間TSの開始位置である位置PSから定常溶接期間TNの開始位置である位置P1に向かって、平均溶接電流ISから平均溶接電流INになるように所定の傾きで低下させ、また、溶接速度SSから溶接速度SNになるように所定の傾きで増加させる制御を行っている。ここで、平均溶接電流の低下と溶接速度の増加は同期するように制御される。
なお、平均溶接電流を低下させるには、ピーク電流の低減、ピーク期間の短縮、ベース電流の低減等により実現することができる。また、平均溶接電流および溶接速度を所定の傾きで変化させているが、この所定の傾きは、例えば、溶接条件に基づき実験等により求めておくことができる。
そして、スタート溶接期間TSにおいてこのような制御を行うことで、図3を用いて説明した溶接制御方法よりも更に入熱制御が十分に行うことができ、溶接始端部のビード形成状態を更に良くすることができる。また、通常調整しないパルスパラメータを調整できることにより、入熱調整の幅が広がる、すなわち選択肢が増え、溶接品質を向上させることができる。
図5は、スタート溶接期間TSおよび定常溶接期間TNにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。図5では、スタート溶接期間TSにおいて図1(b)や図1(c)で示した被溶接物への入熱の増加および溶け込みを深くできるパルス波形を設定して溶接を行うことに加えて、溶接開始時には定常溶接期間TNの平均溶接電流INおよび溶接速度SNより高い平均溶接電流ISと低い溶接速度SSをスタート溶接期間TSの開始位置PSから一定時間TS2経過するまであるいは一定溶接長さを溶接した場合の位置P1になるまで継続する。そしてその後、位置P1から定常溶接期間TNの開始位置である位置P2に向かって、平均溶接電流ISから平均溶接電流INになるように所定の傾きで低下させ、また、溶接速度SSから溶接速度SNになるように所定の傾きで増加させる制御を行っている。
そして、スタート溶接期間TSにおいてこのような制御を行うことで、図4を用いて説明した溶接制御方法よりも更に入熱制御が十分に行うことができるので、溶接始端部のビード形成状態を更に良くすることができる。また、ビード形成状態や溶接状態に対して入熱調整の幅が広がるため、溶接品質を向上させることができる。
図6は、定常溶接期間TNおよびエンド溶接期間TEにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。なお、この溶接位置に対する変化は、時間変化と見ることもできる。また、溶接速度とは、例えば産業用ロボットに取り付けられた溶接トーチが溶接線方向に移動する速度である。図6において、エンド溶接期間TEでは、図2(b)や図2(c)に示す被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス波形を設定した場合の平均溶接電流および溶接速度の一例であり、定常溶接期間TNとエンド溶接期間TEとで平均溶接電流と溶接速度が同じ場合の例を示している。
そして、エンド溶接期間TEにおいて被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス波形を設定して溶接を行うことにより、被溶接物への入熱を減少させることができ、アーク力を低減できるので溶融プールへの押し付け力が低下し、掘れ込み状態を低減でき、溶接品質を向上させることができる。
図7は、定常溶接期間TNおよびエンド溶接期間TEにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化を示す図である。図7では、エンド溶接期間TEにおいて図2(b)や図2(c)で示した被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス波形を設定したことに加えて、定常溶接期間TNの終了位置でありエンド溶接期間TEの開始位置である位置P11からエンド溶接期間TEの終了位置である位置PEに向かって、平均溶接電流INから平均溶接電流IEになるように所定の傾きで低下させ、また、溶接速度SNから溶接速度SEになるように所定の傾きで低下させる制御を行っている。なお、平均溶接電流の低下と溶接速度の低下は同期するように制御せれる。
そして、エンド溶接期間TEにこのような制御を行うことで、図6を用いて説明した溶接制御方法よりも更に入熱制御が十分に行えるので、溶接終端部のビード形成状態を更に良くすることができる。また、ビード形成状態や溶接状態に対して入熱調整の幅が広がるため、溶接品質を向上させることができる。
図8は、定常溶接期間TNおよびエンド溶接期間TEにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。図8では、エンド溶接期間TEにおいて図2(b)や図2(c)で示した被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス波形を設定したことに加えて、定常溶接期間TNの終了位置でありエンド溶接期間TEの開始位置である位置P11からエンド溶接期間TEの途中の位置である位置P12に向かって、平均溶接電流INから平均溶接電流IEになるように所定の傾きで低下させ、また、溶接速度SNから溶接速度SEになるように所定の傾きで低下させ、その後、エンド溶接期間TEの途中の位置である位置P12からエンド溶接期間TEの終了位置PEまでは、平均溶接電流IEと溶接速度SEを一定に継続する制御を行っている。
そして、エンド溶接期間TEにおいてこのような制御を行うことで、図7を用いて説明した溶接制御方法よりも更に入熱制御が十分に行えるので、溶接終端部のビード形成状態を更に良くすることができる。また、ビード形成状態や溶接状態に対して入熱調整の幅が広がるため、溶接品質を向上させることができる。
上記において、図1から図8を用いて溶接電流や溶接速度の制御について説明したが、ここで、上記したアーク溶接制御方法を行うためのパルスアーク溶接装置の例について、図9を用いて説明する。
図9はパルスアーク溶接装置の概略構成を示す図であり、パルスアーク溶接装置は主に溶接機20とロボット21とから構成される。
溶接機20において、入力電源1からの電力は1次整流部2で整流され、スイッチング素子3により交流に変換され、トランス4により降圧され、2次整流部5およびDCL(インダクタ)6により整流され、溶接ワイヤ14と被溶接物17との間に印加され、溶接ワイヤ14と被溶接物17との間に溶接アーク16を発生させて溶接を行う。また、溶接機20は、スイッチング素子3を制御するための出力制御部7と、出力制御部7に制御信号を出力する溶接条件出力部8と、使用する溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物17の材質を設定するための材質設定部9と、ワイヤ送給装置13を制御するためのワイヤ送給制御部11と、パルス波形出力部18を備えている。なお、このパルス波形出力部18は、材質設定部9からの信号を受け予め材質毎に設定されており図示しない記憶部に記憶されているスタート期間TS、定常溶接期間TN、エンド期間TEのそれぞれの期間におけるピーク電流値やベース電流値やピーク期間などパルス電流波形に関する情報を選択して溶接条件出力部8に出力するものである。
また、ロボット21は、主にマニピュレータ12とロボット制御部10とから構成されている。そして、マニピュレータ12には、溶接ワイヤ14を被溶接物17に対して送給するためのワイヤ送給装置13と、溶接トーチ15が設けられている。
材質設定部9において溶接ワイヤ14の材質あるいは被溶接物17の材質が設定された場合、設定された材質に対応する信号を溶接条件出力部8およびにパルス波形出力部18に出力する。そして、材質設定部9からの信号およびパルス波形出力部18からの信号を受信した溶接条件出力部8は、この信号に基づいて予め材質毎に設定されている溶接スタート期間TSと定常溶接期間TNと溶接エンド期間TEにおけるパルス電流波形信号と平均溶接電流IEに関する信号を出力制御部7に出力する。そして、出力制御部7は、溶接条件出力部8からの信号に基づいてスイッチング素子3を制御することで、平均溶接電流IEおよびパルス電流の波形が制御される。
また、溶接条件出力部8は、材質設定部9からの信号に基づいて予め材質毎に設定されている溶接スタート期間TSにおける溶接速度を制御する信号と、定常溶接期間TNにおける溶接速度を制御する信号と、溶接エンド期間TEにおける溶接速度を制御する信号をロボット制御部10に出力する。そして、ロボット制御部10が溶接条件出力部8からの信号に基づいてマニピュレータ12を制御することで、被溶接物17の溶接方向に対する溶接速度、すなわち、溶接ワイヤ14の溶接方向に対する移動速度が制御される。
また、溶接条件出力部8は、溶接電流と一元関係にある溶接ワイヤ14の送給速度を制御する信号をワイヤ送給制御部11に出力し、ワイヤ送給制御部11は溶接条件出力部8からの信号に基づいてワイヤ送給装置13を制御することで溶接ワイヤ14の送給速度が制御される。
ここで、例えば、材質設定部9において、溶接ワイヤ14の材質あるいは被溶接物17の材質がアルミを主成分とする材質であることが設定されると、図1と図2および図3から図8を用いて説明した平均溶接電流、パルス電流の波形、溶接速度の制御が実行される。
なお、図9で示したアーク溶接装置を構成する各構成部は、各々単独に構成してもよいし、複数の構成部を複合して構成するようにしてもよい。
以上のように、本実施の形態のアーク溶接制御方法およびパルスアーク溶接制御装置によれば、例えば、重ねすみ肉や水平すみ肉溶接を行う際に、被溶接物17である母材の材質の固有抵抗率,熱伝導率に応じて、溶接スタート期間TSおよび/または溶接エンド期間TEにおいて、定常溶接期間TNのパルス波形の電流とは異なるパルス波形の電流や溶接速度でアーク溶接を行うことにより、溶接始端部から溶接終端部に至る全溶接長において均質な溶接品質を実現することができる。
(実施の形態2)
アルミとは異なり固有抵抗率が高く熱伝導率が低い材質である鉄やステンレスに有効なパルスアーク溶接制御方法について以下に説明する。なお、実施の形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施の形態1と異なる主な点は、スタート溶接期間TSにおける溶接電流であり、より詳しくは、パルス電流波形である。
図3は、スタート溶接期間TSおよび定常溶接期間TNにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。なお、この溶接位置に対する変化は、時間変化と見ることもできる。また、溶接速度とは、例えば産業用ロボットに取り付けられた溶接トーチが溶接線方向に移動する速度である。また、後述するようにスタート溶接期間TSにおけるパルス電流波形は実施の形態1とは異なるが平均溶接電流は実施の形態1と同じである場合について説明する。
図3において、スタート溶接期間TSでは、図2(b)や図2(c)に示す被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス電流波形を設定して溶接を行った場合の平均溶接電流および溶接速度の一例である。
従来の溶接始端部付近は、被溶接物への入熱が入り過ぎ、定常溶接期間TNの溶融金属が溶接始端部に引かれて溶接始端部付近のビード幅が広く、定常溶接期間TNのビードが細くなってしまうビード形成状態であった。
スタート溶接期間TSに被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス電流波形を設定して溶接することにより、溶接始端部付近の入熱を抑えることができ、定常溶接期間TNの溶融金属が引かれることを抑制し、溶接始端部付近から定常溶接期間TNまでビード幅を均質にすることができ、溶接品質を向上させることができる。
図10は、スタート溶接期間TSおよび定常溶接期間TNにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。図10では、スタート溶接期間TSにおいて図2(b)や図2(c)で示した被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス波形を設定したことに加えて、溶接開始時には定常溶接期間TNの平均溶接電流INおよび溶接速度SNより低い平均溶接電流IS2および低い溶接速度SSで溶接を開始し、さらに、スタート溶接期間TSの開始位置である位置PSから定常溶接期間TNの開始位置である位置P1に向かって、平均溶接電流IS2から平均溶接電流INになるように所定の傾きで増加させ、また、溶接速度SSから溶接速度SNになるように所定の傾きで増加させる制御を行っている。なお、平均溶接電流の増加と溶接速度の増加は同期するように制御される。
そして、スタート溶接期間TSにこのような制御を行うことで、図3を用いて説明した溶接制御方法よりも更に入熱制御が十分に行えるので、溶接始端部のビード形成状態を更に良くすることができる。また、ビード形成状態や溶接状態に対して入熱調整の幅が広がるため、溶接品質を向上させることができる。
図11は、スタート溶接期間TSおよび定常溶接期間TSにおける平均溶接電流と溶接速度の溶接位置に対する変化と溶接状態を示す図である。図11では、スタート溶接期間TSにおいて図2(b)や図2(c)で示した被溶接物への入熱の減少および溶け込みを浅くできるパルス波形を設定して溶接を行うことに加えて、溶接開始時には定常溶接期間TNの平均溶接電流INおよび溶接速度SNより低い平均溶接電流ISおよび溶接速度SSをスタート溶接期間TSの開始位置PSから一定時間TS1が経過するまであるいは一定溶接長さを溶接した場合の位置P1になるまで継続し、その後、位置P1から定常溶接期間TNの開始位置である位置P2に向かって、溶接電流IS2から溶接電流INになるように所定の傾きで増加させ、また、溶接速度SSから溶接速度SNになるように所定の傾きで増加させる制御を行っている。
そして、スタート溶接期間TSにこのような制御を行うことで、図10を用いて説明した溶接制御方法よりも更に入熱制御が十分に行えるので、溶接始端部のビード形成状態を更に良くすることができる。また、ビード形成状態や溶接状態に対して入熱調整の幅が広がるため、溶接品質を向上させることができる。
なお、アルミとは異なる固有抵抗率が高い材質である鉄やステンレスの溶接においても、溶接エンド期間に実施の形態1で説明したパルスアーク溶接制御方法を適用することで、実施の形態1と同様に溶接品質を向上させることができる。
また、本実施の形態のパルスアーク溶接制御を行うパルスアーク溶接装置の構成も図9を用いて説明した実施の形態1と同様であり、図示しない記憶部に固有抵抗率が高い材質である鉄やステンレスを溶接する際のパルス波形の情報を記憶させておくことで本実施の形態のパルスアーク溶接制御方法を実現することができる。
本発明の消耗電極を使用して重ね隅肉や水平すみ肉溶接を行う際のアーク溶接の制御方法について、溶接始端部での被溶接物への適正な入熱を確保すると共に溶接終端部での被溶接物への過度な入熱を防止して、溶接始端部から溶接終端部に至る重ね隅肉溶接や水平すみ肉の全領域に渡って均質な溶接品質を実現することができるアーク溶接の制御方法を提供することが可能となる。消耗電極である溶接ワイヤを連続的に送給しながらアーク溶接を行う溶接装置に有用である。
(a)本発明の実施の形態1における標準パルス波形を示す図(b)本発明の実施の形態1における入熱の増加および溶け込み量を深くできるパルス波形の例を示す図(c)本発明の実施の形態1における入熱の増加および溶け込み量を深くできるパルス波形の別の例を示す図 (a)本発明の実施の形態1および実施の形態2における標準パルス波形を示す図(b)本発明の実施の形態1および実施の形態2における入熱の減少および溶け込み量を浅くできるパルス波形の例を示す図(c)本発明の実施の形態1および実施の形態2における入熱の減少および溶け込み量を浅くできるパルス波形の別の例を示す図 本発明の実施の形態1および実施の形態2におけるスタート溶接期間と定常溶接期間の溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 本発明の実施の形態1におけるスタート溶接期間と定常溶接期間の溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 本発明の実施の形態1におけるスタート溶接期間と定常溶接期間の溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 本発明の実施の形態1および実施の形態2における定常溶接期間とエンド溶接期間における溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 本発明の実施の形態1における定常溶接期間とエンド溶接期間における溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 本発明の実施の形態1における定常溶接期間とエンド溶接期間における溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 本発明の実施の形態1および実施の形態2におけるパルスアーク溶接装置の概略構成を示す図 本発明の実施の形態2におけるスタート溶接期間と定常溶接期間の溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 本発明の実施の形態2におけるスタート溶接期間と定常溶接期間の溶接位置に対する溶接電流および溶接速度の変化と溶接状態を示す図 (a)従来のアーク溶接の溶接開始から溶接終了までの溶接電圧の変化を示す図(b)従来のアーク溶接の溶接開始から溶接終了までの溶接ワイヤ送給信号の変化を示す図(c)従来のアーク溶接の溶接状態を示す図(d)従来のアーク溶接の溶接状態を示す図
符号の説明
Ip ピーク電流
Ip2 ピーク電流(Ipよりも高い)
Ip3 ピーク電流(Ipよりも低い)
Ib ベース電流
Ib2 ベース電流(Ibよりも低い)
Ib3 ベース電流(Ibよりも高い)
PW1,PW2,PW3,PW4,PW5 パルス幅
PFRQ パルス周波数
TN 定常溶接期間
TS スタート溶接期間
TS2 一定時間
TE エンド溶接期間
IN 平均溶接電流(定常溶接期間)
IS 平均溶接電流(スタート溶接期間)
IE 平均溶接電流(エンド溶接期間)
SN 溶接速度(定常溶接期間)
SS 溶接速度(スタート溶接期間)
SE 溶接速度(エンド溶接期間)
P1,P2,P11,P12 位置
V1 溶接電圧(定常溶接期間)
V2 溶接電圧(エンド溶接期間)
WS1 ワイヤ送給速度(定常溶接期間)
WS2 ワイヤ送給速度(エンド溶接期間)
1 入力電源
2 1次整流部
3 スイッチング素子
4 トランス
5 2次整流部
6 DCL
7 出力制御部
8 溶接条件出力部
9 材質設定部
10 ロボット制御部
11 ワイヤ送給制御部
12 マニュピレータ
13 ワイヤ送給装置
14 溶接ワイヤ
15 溶接トーチ
16 溶接アーク
17 被溶接物
18 パルス波形出力部
20 溶接機
21 ロボット
101 被溶接物
102 溶接終端部(クレータ)
103 溶接始端部

Claims (10)

  1. アルミを主成分とする溶接ワイヤと被溶接物との間でアークを発生させて溶接を行うパルスアーク溶接制御方法であって、
    定常溶接期間になる前のスタート溶接期間では、平均溶接電流が前記定常溶接期間の平均溶接電流以上であり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも高いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うパルスアーク溶接制御方法。
  2. スタート溶接期間内において、平均溶接電流を定常溶接期間の平均溶接電流よりも高い平均溶接電流から前記定常溶接期間の平均溶接電流に向かって低減するように制御し、溶接速度を前記定常溶接期間の溶接速度よりも低い溶接速度から前記定常溶接期間の溶接速度に向かって増加するように制御し、前記平均溶接電流の低減と前記溶接速度の増加とを同期させて溶接を行う請求項1記載のパルスアーク溶接制御方法。
  3. 鉄あるいはステンレスを主成分とする溶接ワイヤと被溶接物との間でアークを発生させて溶接を行うアーク溶接制御方法であって、
    定常溶接期間になる前のスタート溶接期間では、平均溶接電流が前記定常溶接期間の平均溶接電流以下であり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行うパルスアーク溶接制御方法。
  4. スタート溶接期間内において、平均溶接電流を定常溶接期間の平均溶接電流よりも低い平均溶接電流から前記定常溶接期間の平均溶接電流に向かって増加するように制御し、溶接速度を前記定常溶接期間の溶接速度よりも低い溶接速度から前記定常溶接期間の溶接速度に向かって増加するように制御し、前記平均溶接電流の増加と前記溶接速度の増加とを同期させて溶接を行う請求項3記載のパルスアーク溶接制御方法。
  5. 定常溶接期間の後のエンド溶接期間では、平均溶接電流が前記定常溶接期間の平均溶接電流以下であり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行う請求項1から4のいずれか1項に記載のパルスアーク溶接制御方法。
  6. エンド溶接期間において、平均溶接電流を定常溶接期間の平均溶接電流から前記エンド溶接期間の溶接終了位置での平均溶接電流に向かって低減するように制御し、溶接速度を前記定常溶接期間の溶接速度から前記エンド溶接期間の溶接終了位置での溶接速度に向かって低減するように制御し、前記平均溶接電流の低減と前記溶接速度の低減とを同期させて溶接を行う請求項5記載のパルスアーク溶接制御方法。
  7. 溶接ワイヤと被溶接物との間でアークを発生させて溶接を行うパルスアーク溶接装置であって、
    前記溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質を設定するための材質設定部と、
    前記材質設定部に設定された材質に基づいてスタート溶接期間と前記スタート溶接期間の後の定常溶接期間と前記定常溶接期間の後のエンド溶接期間でのそれぞれのパルス電流波形信号を出力するパルス波形出力部と、
    前記材質設定部からの信号と前記パルス波形出力部からの信号を入力し、前記スタート溶接期間と前記定常溶接期間と前記エンド溶接期間の各々の期間でのパルス電流波形と平均溶接電流と溶接速度を制御する信号を出力する溶接条件出力部と、
    パルス電流波形と平均溶接電流を制御するスイッチング素子と、
    前記溶接条件出力部からの信号に基づいて前記スイッチング素子を制御する出力制御部と、
    前記溶接ワイヤを送給するための溶接トーチを保持するマニピュレータと、
    前記溶接条件出力部からの信号に基づいて前記マニピュレータの動作を制御することで溶接速度を制御するロボット制御部とを備え、
    設定される溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質に応じて、前記スタート溶接期間および前記エンド溶接期間では前記定常溶接期間とは異なるパルス電流波形により溶接を行うパルスアーク溶接装置。
  8. 材質設定部により溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質としてアルミを主成分とする材質が設定された場合、出力制御部が溶接条件出力部からの信号に基づいてスイッチング素子を制御することにより、スタート溶接期間では、平均溶接電流が定常溶接期間の平均溶接電流以上であり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも高いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行う請求項7記載のパルスアーク溶接装置。
  9. 材質設定部により溶接ワイヤの材質あるいは被溶接物の材質として鉄あるいはステンレスを主成分とする材質が設定された場合、出力制御部が溶接条件出力部からの信号に基づいてスイッチング素子を制御することにより、スタート溶接期間では、平均溶接電流が定常溶接期間の平均溶接電流以下であり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行う請求項7記載のパルスアーク溶接装置。
  10. エンド溶接期間では、平均溶接電流が定常溶接期間の平均溶接電流以下であり、かつ、前記定常溶接期間のパルス電流波形のピーク電流値よりも低いピーク電流値のパルス電流波形により溶接を行う請求項7から9のいずれか1項に記載のパルスアーク溶接装置。
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