JP2009001851A - 容器用鋼板とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の容器用鋼板は、鋼板の少なくとも片面に、金属ジルコニウム量で0.1mg/m2〜9mg/m2のジルコニウムを含有するジルコニウム皮膜、リン量で0.1〜8mg/m2のリン酸を含有するリン酸皮膜、及び炭素量で0.05〜8mg/m2のフェノール樹脂を含有するフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも2種以上の皮膜を含む化成処理皮膜層を有し、この化成処理皮膜層中の任意の粒子の一端と他端とを結ぶ線分のうち最大の長さを有する線分である長径の長さをa(nm)、上記粒子の一端と他端とを結ぶ線分であり長径と直交する線分のうち最大の長さを有する線分である短径の長さをb(nm)としたとき、(a+b)/2≦200(nm)である。
【選択図】図2
Description
(1) 鋼板の少なくとも片面に、1種または2種以上のジルコニウム化合物から形成され金属ジルコニウム量で0.1mg/m2〜9mg/m2のジルコニウムを含有するジルコニウム皮膜、1種または2種以上のリン酸化合物で形成されリン量で0.1〜8mg/m2のリン酸を含有するリン酸皮膜、及び炭素量で0.05〜8mg/m2のフェノール樹脂を含有するフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも2種以上の皮膜を含む化成処理皮膜層を有し、前記化成処理皮膜層中の任意の粒子の一端と他端とを結ぶ線分のうち最大の長さを有する線分である長径の長さをa(nm)、前記粒子の一端と他端とを結ぶ線分であり前記長径と直交する線分のうち最大の長さを有する線分である短径の長さをb(nm)としたとき、(a+b)/2≦200(nm)であることを特徴とする、容器用鋼板。
(2) 前記化成処理皮膜層は、少なくとも前記ジルコニウム皮膜を含むことを特徴とする、(1)に記載の容器用鋼板。
(3) 前記化成処理皮膜層は、前記ジルコニウム皮膜、前記リン酸皮膜、及び前記フェノール樹脂皮膜を含むことを特徴とする、(1)に記載の容器用鋼板。
(4) 前記鋼板の少なくとも片面にニッケルめっき層を有し、前記化成処理皮膜層は、前記ニッケルめっき層上に設けられることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の容器用鋼板。
(5) 前記ニッケルめっき層は、金属ニッケル量で10mg/m2〜1000mg/m2のニッケルを含有することを特徴とする、(4)に記載の容器用鋼板。
本発明の容器用鋼板は、原板となる鋼板の少なくとも片面に、1種または2種以上のジルコニウム化合物から形成され金属ジルコニウム量で0.1mg/m2〜9mg/m2のジルコニウムを含有するジルコニウム皮膜、1種または2種以上のリン酸化合物で形成されリン量で0.1〜8mg/m2のリン酸を含有するリン酸皮膜、及び炭素量で0.05〜8mg/m2のフェノール樹脂を含有するフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも2種以上の皮膜を含む化成処理皮膜層を有するものである。以下、かかる本発明の容器用鋼板の構成について詳細に説明する。
本発明の容器用鋼板の原板となる鋼板としては、特に規制されるものではなく、通常、容器材料として使用される鋼板を用いることができる。また、この原板の製造方法、材質なども特に規制されるものではなく、通常の鋼片製造工程から熱間圧延、酸洗、冷間圧延、焼鈍、調質圧延等の各工程を経て製造され、鋼板表面に化成処理層やめっき層等の金属表面処理層が設けられていてもよい。表面処理層を付与する方法については、特に規制されるものではなく、例えば、電気めっき法、真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の方法を用いることができ、拡散層を付与するための加熱処理を組み合わせてもよい。
本実施形態に係る化成処理皮膜層は、上記のような鋼板またはニッケルめっき層上に形成される。化成処理皮膜層は、当該化成処理皮膜層を形成する成分として、例えば、Zr成分、リン酸成分およびフェノール樹脂成分のうち少なくとも2種以上を有する。
本発明の容器用鋼板は、上述したように、鋼板の少なくとも片面に化成処理皮膜層を有しているが、この化成処理皮膜層中に含まれる粒子(例えば、化成処理皮膜層がZr成分を含む皮膜である場合は、酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物の粒子)について、任意に選択した粒子の大きさが、図1に示すように、その粒子の一端a1と他端a2を結ぶ線分のうち最大の長さを有する線分(以下、「長径」という。)の長さをa(nm)、粒子の一端b1と他端b2を結ぶ線分であり長径と直交する線分のうち最大の長さを有する線分(以下、「短径」という。)の長さをb(nm)としたとき、[(a+b)/2]が200(nm)以下となることが必要である。
ジルコニウム皮膜は、耐食性と塗装またはラミネートフィルムとの密着性(以下、「塗装等密着性」という。)を確保するために形成される。ジルコニウム皮膜は、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム等の1種のジルコニウム化合物からなる皮膜、または、これら2種以上のジルコニウム化合物からなる複合皮膜として形成される。このようなジルコニウム皮膜は優れた耐食性と塗装等密着性を有しているが、本発明者らは、この理由を以下のように考えている。すなわち、耐食性については、ジルコニウム皮膜は、下記化学式1に示すように、ポリマー状のジルコニウム錯体による三次元架橋体を形成し、この架橋体が有するバリア性により耐食性を発揮するものと考えられる。また、密着性については、ジルコニウム皮膜の内部に存在する水酸基、あるいはリン酸基の水酸基と、鋼板等の金属表面に存在する水酸基とが脱水縮合することで、酸素原子を介して金属表面とジルコニウム皮膜とが共有結合することにより、密着性を発揮するものと考えられる。
また、上記化成処理皮膜層は、上述したように、1種または2種以上のリン酸化合物で形成されたリン酸皮膜を含んでいてもよい。
また、上記化成処理皮膜層は、上述したように、フェノール樹脂成分を含むフェノール樹脂皮膜を含んでいてもよい。
本発明に係る化成処理皮膜層中に含有される金属ジルコニウム量、リン量は、例えば、蛍光X線分析等の定量分析法により測定することが可能である。また、化成処理皮膜層中の炭素量は、例えば、ガスクロマトグラフィによる全炭素量測定法により測定した値から、鋼板中に含まれる炭素量をバックグラウンドとして差し引くことにより求めることが可能である。
以上、本発明に係る容器用鋼板の構成について説明したが、次に、かかる容器用鋼板を得るための製造方法について詳細に説明する。
陰極電解処理により上記化成処理皮膜層を形成するためには、上述した化成処理皮膜層に含まれるジルコニウム皮膜、リン酸皮膜、フェノール樹脂皮膜のうちの形成したい皮膜の種類に応じて、電解処理に用いる化成処理液中の成分を決めることが必要である。具体的には、ジルコニウム皮膜のみを含む化成処理皮膜層を形成したい場合には、化成処理液として、酸性溶液中にジルコニウムイオンを100ppm〜7500ppm含有させたものを用いればよく、ジルコニウム皮膜及びリン酸皮膜を含む化成処理皮膜層を形成したい場合には、化成処理液として、酸性溶液中にジルコニウムイオンを100ppm〜7500ppmとリン酸イオンを50ppm〜5000ppm含有させたものを用いればよく、ジルコニウム皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜を含む化成処理皮膜層を形成したい場合には、化成処理液として、酸性溶液中にジルコニウムイオンを100ppm〜7500ppmとリン酸イオンを50ppm〜5000ppmと質量平均分子量が5000程度である低分子量のフェノール樹脂を10ppm〜1500ppm含有させたものを用いればよい。
本発明の化成処理皮膜層を形成するための陰極電解処理は、例えば、図3に示す低温電解処理装置100を用い、化成処理液の温度(浴温)が10℃〜40℃という条件下で行われる(低温陰極電解処理)。本発明の一実施形態に係る低温電解処理装置100としては、例えば、所定の成分を含有する約10〜40℃の電解処理液102を含む容器104中に、2枚のアノード電極106を相対するように離隔して設け、それぞれのアノード電極106を整流器110の正極112側に接続したものを使用することが可能である。低温電解処理を行う場合には、処理を行いたい鋼板(電解処理鋼板)108を2枚のアノード電極106の間に配置し、電解処理鋼板を整流器110の負極114側に電気的に接続する。整流器110により電解密度を上記の範囲に保つことで、本実施形態に係る容器用鋼板を製造することが可能である。このように、40℃以下という低温で陰極電解処理を行うことにより、例えば図2の左図に示すように、形成された化成処理皮膜層中の任意の粒子の長径a(nm)と短径b(nm)の平均値[(a+b)/2]が200nm以下であるような、非常に細かい粒子により形成された緻密で均一な皮膜組織の形成が可能となる。また、化成処理液の温度が10℃未満では、皮膜の形成効率が悪いだけでなく、夏場など外気温が高い場合には冷却が必要となり経済的ではない。一方、化成処理液の温度が40℃超では、例えば図2の右図に示すように、形成される皮膜組織が不均一となりやすく、皮膜欠陥、皮膜割れ、マイクロクラック等が発生し、緻密な皮膜形成が困難となるため、腐食等の起点となる場合がある。
まず、以下に示す方法で、化成処理皮膜層を形成させる鋼板を作製した。
冷間圧延後、焼鈍及び調圧した厚さが0.17〜0.23mmの鋼基材(鋼板)を、脱脂及び酸洗した鋼板を作製した。
冷間圧延後、焼鈍及び調圧した厚さが0.17〜0.23mmの鋼基材(鋼板)を、脱脂及び酸洗した後、その両面に、ワット浴を使用してNiめっきを施し、Niめっき鋼板を作製した(A2)。また、冷間圧延した厚さが0.17〜0.23mmの鋼基材(鋼板)の両面に、ワット浴を使用してNiめっきを施した後、焼鈍を行ってNi拡散層を形成させ、更に、脱脂及び酸洗を行い、Niめっき鋼板を作製した(A3)。得られたNiめっき鋼板の金属ニッケルの付着量は、蛍光X線法にて測定した。なお、上記の(A2)および(A3)について、金属ニッケルの付着量の最低値、最適値および最高値は、それぞれ以下の表1の通りである。
次に、上述した(A1)、(A2)または(A3)の方法で作製した鋼板の表面(両面)に、以下に示す方法で、(B1)Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜、(B2)Zr皮膜及びリン酸皮膜、(B3)リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜、(B4)Zr皮膜及びフェノール樹脂皮膜を形成した。さらに、電解処理液中にタンニン酸を添加して、Zr皮膜およびリン酸皮膜からなる化成処理皮膜層を形成した(B5)。
次に、上述の方法で作製した各容器用鋼板を試験材とし、これら実施例及び比較例の試験材について、加工性、溶接性、フィルム密着性、塗料密着性、耐食性、耐錆性及び外観の各性能を評価した。以下、その具体的な評価方法及び評価基準について説明する。
実施例及び比較例の各試験材の一方の面に、エポキシ−フェノール樹脂を塗布した後、200℃の温度条件下で30分間保持することにより焼付を行った。そして、この樹脂を塗布した部分に鋼基材に達する深さのクロスカットを入れたものを、クエン酸(1.5質量%)−食塩(1.5質量%)の混合液からなる試験液に、45℃の温度条件下で72時間浸漬し、洗浄及び乾燥した後、テープ剥離試験を行い、クロスカット部における塗膜(エポキシ−フェノール樹脂膜)の下の腐食状況及び平板部の腐食状況で評価した。その結果、塗膜の下で腐食が認められなかったものを◎、塗膜の下に実用上問題ない程度の僅かな腐食が認められたものを○、塗膜の下に微小な腐食が認められたもの又は平板部に僅かな腐食が認められたものを△、塗膜の下に著しい腐食が認められたもの又は平板部に腐食が認められたものを×とした。
実施例及び比較例の各試験材に対して、湿度が90%の環境に2時間保持と、湿度が40%の環境に2時間保持とを繰り返し行うサイクル試験を2ヶ月間行い、錆の発生状況を評価した。その結果、発錆が全くなかったものを◎、実用上問題ない程度の極僅かな発錆があったものを○、僅かな発錆があったものを△、大部分で発錆していたものを×とした。
実施例及び比較例の各試験材の両面に、厚さが20μmのPETフィルムを200℃でラミネートした後、絞り加工及びしごき加工による製缶加工を段階的に行い、その成型性で評価した。その結果、破断、疵の発生が無く成型性が極めて良好であったものを○、破断、疵の発生が若干確認されたものを△、加工途中で破断が生じて加工不能となったものを×とした。
実施例及び比較例の各試験材を、ワイヤーシーム溶接機を使用し、溶接ワイヤースピード80m/分の条件で、電流を変更して溶接し、十分な溶接強度が得られる最小電流値(4000A以下)と、塵及び溶接スパッタ等の溶接欠陥が目立ち始める最大電流値(5000A以上)とからなる適正電流範囲の広さから総合的に評価した。その結果、同電流値範囲より広く溶接性が極めて良好であったものを○、前記範囲よりも狭いものを△、溶接不能であったものを×とした。
実施例及び比較例の各試験材の一方の面に、エポキシ−フェノール樹脂を塗布した後、200℃の温度条件下で30分間保持することにより焼付を行った。そして、この樹脂を塗布した部分に、鋼基材に達する深さの切込みを、1mm間隔で碁盤目状に形成した後、この部分に粘着テープを貼り付けて剥離する碁盤目剥離試験を実施した。その結果、剥離が全くなかったものを◎、実用上問題無い程度の極僅かな剥離があったものを○、僅かな剥離があったものを△、大部分が剥離したものを×とした。
実施例及び比較例の各試験材の両面に、厚さが20μmのPETフィルムを200℃でラミネートした後、絞りしごき加工を行って缶体を作製し、この缶体に対して、125℃で30分間のレトルト処理を行い、その際のフィルムの剥離状況で評価した。その結果、剥離が全くなかったものを◎、実用上問題が無い程度の極僅かな剥離が生じていたものを○、僅かな剥離が生じていたものを△、大部分で剥離が生じていたものを×とした。
実施例及び比較例の各試験材を目視で観察し、Zr皮膜、リン酸皮膜及びフェノール樹脂皮膜に発生したムラの状況で評価した。その結果、全くムラがなかったものを◎、実用上問題がない程度の極僅かなムラがあったものを○、僅かなムラが発生したものを△、著しくムラが発生していたものを×とした。
102 電解処理液
104 容器
106 アノード電極
108 電解処理鋼板
110 整流器
112 正極
114 負極
Claims (5)
- 鋼板の少なくとも片面に、1種または2種以上のジルコニウム化合物から形成され金属ジルコニウム量で0.1mg/m2〜9mg/m2のジルコニウムを含有するジルコニウム皮膜、1種または2種以上のリン酸化合物で形成されリン量で0.1〜8mg/m2のリン酸を含有するリン酸皮膜、及び炭素量で0.05〜8mg/m2のフェノール樹脂を含有するフェノール樹脂皮膜から選択された少なくとも2種以上の皮膜を含む化成処理皮膜層を有し、
前記化成処理皮膜層中の任意の粒子の一端と他端とを結ぶ線分のうち最大の長さを有する線分である長径の長さをa(nm)、前記粒子の一端と他端とを結ぶ線分であり前記長径と直交する線分のうち最大の長さを有する線分である短径の長さをb(nm)としたとき、(a+b)/2≦200(nm)であることを特徴とする、容器用鋼板。 - 前記化成処理皮膜層は、少なくとも前記ジルコニウム皮膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載の容器用鋼板。
- 前記化成処理皮膜層は、前記ジルコニウム皮膜、前記リン酸皮膜、及び前記フェノール樹脂皮膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載の容器用鋼板。
- 前記鋼板の少なくとも片面にニッケルめっき層を有し、
前記化成処理皮膜層は、前記ニッケルめっき層上に設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器用鋼板。 - 前記ニッケルめっき層は、金属ニッケル量で10mg/m2〜1000mg/m2のニッケルを含有することを特徴とする、請求項4に記載の容器用鋼板。
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