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JP2009071005A - 波長変換部材及びその製造方法、並びに、波長変換部材を用いた発光デバイス - Google Patents

波長変換部材及びその製造方法、並びに、波長変換部材を用いた発光デバイス Download PDF

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Takahiro Igarashi
崇裕 五十嵐
Tsuneo Kusuki
常夫 楠木
Takamasa Izawa
孝昌 伊澤
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Abstract

【課題】耐湿性を向上させる波長変換部材及びその製造方法、並びに、波長変換部材を用いた発光デバイスを提供すること。
【解決手段】波長変換部材6において、蛍光体が透明樹脂中に分散された蛍光体層1は第1透明基板2に接合され第2透明基板3との間に挟持され、蛍光体層の外周部は透明接着剤4により包囲され、第1及び第2透明基板間、第2透明基板と蛍光体層の間は透明接着剤により接合される。蛍光体が分散された透明樹脂を第1透明基板に塗布して硬化させ第1透明基板に接合する蛍光体層1を形成し、蛍光体層の面に透明接着剤を滴下し、第1及び第2透明基板の間に蛍光体層が挟持され、蛍光体層の外周部が透明接着剤により包囲されるように、透明接着剤を200℃以下で加熱硬化させ、第1及び第2透明基板を接合することにより、波長変換部材を作成する。第1及び第2透明基板として耐湿性の大きい環状ポリオレフィン系樹脂が使用される。
【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光体の耐湿性の向上に関し、特に、蛍光体の粒子が封止された波長変換部材及びその製造方法、並びに、波長変化部材を発光素子と組合せた発光デバイスに関する。
蛍光体の粒子が封止された波長変換部材を発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子と組み合わせて、半導体発光素子からの光によって蛍光体を発光させる発光装置は、小型に構成することができ消費電力が少なく、各種用途に使用される表示装置や照明装置の光源として開発が行われている。
蛍光体を封止するための材料として各種の樹脂が知られているが、例えば、硫化物からなる蛍光体は、水分と反応して加水分解することがあり、波長変換部材が多湿下で使用される場合、水分が封止樹脂を透過しこの透過した水分によって蛍光体が変質又は分解し、発光効率の低下を生じる。また、発光素子から出射される光によって封止樹脂の光学的特性や化学的特性が劣化し、封止樹脂の光透過率の劣化を生じる。
蛍光体を封止するための材料としてガラスを使用する場合には、ガラス中に蛍光体粒子を分散させるために、ガラスを溶融状態とするために高温にする必要があり、高温で発光効率が低下する蛍光体に適用することはできない。
以下、蛍光体の封止に関する従来技術の具体例について説明する。
「放射線画像変換パネルの製造方法」と題する特許文献1には以下の記載がある。
特許文献1の発明の放射線画像変換パネルの製造方法は、支持体と保護層との間に輝尽性蛍光体層が設けられ、当該輝尽性蛍光体層が封着部材により支持体と保護層との間に封止された構造の放射線画像変換パネルの製造方法において、前記封着部材による封止の際には、支持体、保護層及び封着部材を、放射線画像変換パネルの使用時の上限温度の近傍温度に保持した状態で、当該封着部材を硬化させることを特徴とする。
前記封着部材による封止の際には、支持体、保護層及び封着部材を、放射線画像変換パネルの使用時の上限温度の近傍温度に保持した状態で、当該封着部材を硬化させるので、剥離や割れを伴わずに長期間安定に使用できる放射線画像変換パネルを製造することができる。以下、特許文献1の発明を具体的に説明する。
図9は、特許文献1に記載の図1であり、特許文献1の発明の製造方法によって得られる放射線画像変換パネルの一例を示す断面図である。支持体102と保護層203との間に輝尽性蛍光体層101が配置され、この輝尽性蛍光体層101を外部からの物理的又は化学的刺激から保護するために、支持体102と保護層103の周縁部が封着部材によって封着され、輝尽性蛍光体層101が封止されている。
「発光装置」と題する特許文献2には以下の記載がある。
特許文献2の発明の目的は、耐湿性、耐光性に優れ、LED素子の発光に基づく外部放射効率を低下させることなく均一な波長変換性を容易に得ることのできる発光装置を提供することにある。特許文献2の発明は、この記目的を達成するため、所定の波長の光を放射する発光素子部と、前記所定の波長の光によって励起される蛍光体を透明な不透湿性の材料で層状に包囲して形成される波長変換部とを有することを特徴とする発光装置を提供する。
蛍光体を層状に包囲する不透湿性の材料としてはガラスを用いることが好ましい。このガラスとしては、低温での成形性が容易な低融点ガラスを用いることができる。
波長変換部は、発光素子部を包囲して密封すると共に蛍光体を発光素子部の周囲に薄膜状に配置することが好ましい。また、波長変換部は、発光素子部から所望の配光特性に応じて光を放射させる光学形状を有するように形成することもできる。また、波長変換部は、第1のガラスの表面に薄膜状に形成された蛍光体を第2のガラスで挟み込んで熱融着させることにより一体化することが可能である。
このような構成によれば、発光素子部から放射される光による封止材の劣化や、吸湿による蛍光体の分解又は変質が防止されることにより、波長変換性の劣化が生じなくなる。
波長変換部は、屈折率n=1.5の透明な低融点ガラスを使用し、2枚の低融点ガラスの間に薄膜状の蛍光体層を配置し、2枚のガラス材を熱融着して蛍光体層と共に一体化させることによって形成されている。
図10(a)から図10(e)は、特許文献2に記載の図2(a)から図2(e)であり、波長変換部の製造工程を示す工程図であり、図10(a)は準備工程におけるガラスシートの側面図、図10(b)は印刷工程におけるガラスシートの側面図、図10(c)は接合準備工程におけるガラスシートの側面図、図10(d)は、接合工程におけるガラスシートの側面図、図10(e)は波長変換部の平面図である。
(1)準備工程
図10(a)は、準備工程におけるガラスシートの側面図である。先ず、シート状の低融点ガラスからなるガラスシート201を用意する。このガラスシート201は、長尺方向に複数のLED素子3を配置することが可能な長さを有して形成されている。
(2)印刷工程
図10(b)は、印刷工程におけるガラスシートの側面図である。増粘材として約1%のニトロセルロースを含むn−酢酸ブチルに蛍光体200を溶解した蛍光体溶液を作成し、この溶液をガラスシート201の表面にLED素子の配置間隔に応じたピッチでスクリーン印刷して薄膜状に付着させる。次に、蛍光体溶液を印刷されたガラスシート201を加熱処理して溶剤分を除去することにより蛍光体層202Aを形成する。なお、加熱処理を減圧雰囲気中で行うようにしても良い。
(3)接合準備工程
図10(c)は、接合準備工程におけるガラスシートの側面図である。ガラスシート201と同じ低融点ガラスで形成されたガラスシート203を用意し、印刷工程で形成されたガラスシート203の蛍光体層202Aを挟み込むようにして配置する。なお、ガラスシート201及び203は同一の形状であることが好ましいが、異なる形状を有していても良い。
(4)接合工程
図10(d)は、接合工程におけるガラスシートの側面図である。蛍光体層202Aを挟み込んだガラスシート201及び203を減圧雰囲気中で加熱プレスすることによって熱融着させる。蛍光体層202Aは、熱融着されたガラスシート201及び203の境界部分に位置するように層状に設けられる。
図10(e)は、波長変換部の平面図である。波長変換部204は、スクリーン印刷で形成された形状の蛍光体層202Aをガラスシート201及び203に挟み込んで形成されている。なお、同図においては蛍光体層202Aを正方形としているが、この形状はスクリーン印刷が可能な種々の形状に変更が可能であり、例えば、円形状に形成することもできる。
特開平4−359199号公報(段落0006〜0008、図1) 特開2005−11953号公報(段落0011〜0027、図2)
蛍光体の耐湿性を向上させるために、特許文献2に記載の方法ではガラスを軟化点まで上昇させ融着させ、蛍光体をガラスで層状に挟んでいるが、具体的なガラスの種類やプロセス温度については記載されていない。ガラスとして低融点ガラスを用いると、低融点ガラスは融点を下げるためにPbやBiの金属を含む場合が多く着色していることが多く、光の透過を妨げるため任意の低融点ガラスを使用することができない。
また、蛍光体の種類によっては、ガラスの軟化点の温度において劣化する。例えば、融点の低い市販のガラスの軟化点は温度624度である(以下、明細書において示す温度は摂氏温度である。)。後述するように、600度でSrGa24:Euを焼成すると18%も低下する。また、化学的に安定であるCaAlSiN3:EuやCa2Si58:Euも後述するように、600度で焼成すると各々75%、97%低下する。即ち、特許文献2に記載の方法では、ガラスの選択によっては、ガラスを融着させるための温度上昇だけで蛍光体が熱劣化してしまうので、任意の蛍光体に適応することは不可能である。
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、加熱によって劣化しやすい蛍光体に対しても適用することができ、蛍光体の耐湿性を向上させることができ信頼性の高い波長変換部材及びその製造方法、並びに、波長変換部材を用いた発光デバイスを提供することにある。
即ち、本発明は、第1の透明基板と、第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板の間に挟持された、蛍光体が透明樹脂中に分散された蛍光体層と、前記蛍光体層の外周部を包囲する透明接着剤とを有し、前記第1の透明基板と前記蛍光体層とが前記透明樹脂によって接合され、前記第2の透明基板と前記蛍光体層とが前記透明接着剤によって接合され、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とが前記透明接着剤によって接合された、波長変換部材(第1の構成による波長変換部材)に係るものである。
また、本発明は、環状ポリオレフィン系樹脂からなる第1の透明基板と、前記環状ポリオレフィン系樹脂からなる第2の透明基板と、前記第1及び第2の透明基板の間に挟持された、蛍光体が透明樹脂中に分散された蛍光体層と、前記蛍光体層の外周部を包囲する透明接着剤とを有し、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とが前記透明接着剤によって接合された、波長変換部材(第2の構成による波長変換部材)に係るものである。
また、本発明は、蛍光体が分散された透明樹脂を第1の透明基板に塗布して硬化させ、前記第1の透明基板に接合する蛍光体層を形成する第1の工程と、前記蛍光体層の上面に透明接着剤を滴下する第2の工程と、滴下された前記透明接着剤に第2の透明基板を接触させて、前記第2の透明基板を前記蛍光体層に圧接して前記透明接着剤を展延させ、前記蛍光体層の外周部が前記透明接着剤によって包囲されるように前記透明接着剤を加熱硬化させ、前記透明接着剤によって、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板の間をそれぞれ接合する第3の工程とを有する、波長変換部材の製造方法(第1の構成による波長変換部材の製造方法)に係るものである。
また、本発明は、蛍光体が分散された透明樹脂を環状ポリオレフィン系樹脂からなる第1の透明基板に塗布して硬化させ、前記第1の透明基板に接合する蛍光体層を形成する第1の工程と、前記蛍光体層の上面に透明接着剤を滴下する第2の工程と、前記環状ポリオレフィン系樹脂からなる第2の透明基板と前記第1の透明基板との間に前記蛍光体層が挟持され、前記蛍光体層の外周部が前記透明接着剤によって包囲されるように前記透明接着剤を加熱硬化させ、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とを接合する第3の工程とを有する波長変換部材の製造方法(第2の構成による波長変換部材の製造方法)に係るものである。
また、本発明は、前記波長変換部材を有する発光デバイスに係るものである。
本発明の第1の構成による波長変換部材によれば、前記蛍光体が分散された前記透明樹脂によって前記第1の透明基板に接合された前記蛍光体層が前記第1及び第2の透明基板の間に挟持され、前記蛍光体層の外周部が前記透明接着剤によって包囲され、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板の間が前記透明接着剤によってそれぞれ接合され、前記蛍光体は前記透明樹脂、前記透明接着剤、前記第1及び第2の透明基板によって封止されているので、耐湿性が大きい前記第1及び第2の透明基板及び前記透明接着剤を使用することによって、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、加熱によって劣化しやすい前記蛍光体に対しても適用することができる波長変換部材を提供することができる。前記透明接着の層と前記第2の透明基板との接合界面を浸透する水分は、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間に存在する前記透明接着剤の層を透過し、次に、前記蛍光体層の前記透明樹脂を透過して前記蛍光体に到達するので、前記透明接着剤の層が、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間に形成されていない構成の波長変換部材に比較して、前記蛍光体の耐湿性を格段に向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を実現することができる。
また、本発明の第2の構成による波長変換部材によれば、前記第1及び第2の透明基板は前記環状ポリオレフィン系樹脂からなり、前記透明樹脂中に前記蛍光体が分散された前記蛍光体層は前記第1及び第2の透明基板の間に挟持され、前記蛍光体層の外周部は前記透明接着剤によって包囲され、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とが前記透明接着剤によって接合され、前記蛍光体は前記透明樹脂、前記透明接着剤、前記第1及び第2の透明基板によって封止されているので、前記環状ポリオレフィン系樹脂及び前記透明接着剤の耐湿性が大きいため、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、加熱によって劣化しやすい前記蛍光体に対しても適用することができ、信頼性の高い波長変換部材を実現することができる。
また、本発明の第1の構成による波長変換部材の製造方法によれば、前記蛍光体が分散された透明樹脂を第1の透明基板に塗布して硬化させ、前記第1の透明基板に接合する蛍光体層を形成する第1の工程と、前記蛍光体層の上面に透明接着剤を滴下する第2の工程と、滴下された前記透明接着剤に第2の透明基板を接触させて、前記第2の透明基板を前記蛍光体層に圧接して前記透明接着剤を展延させ、前記蛍光体層の外周部が前記透明接着剤によって包囲されるように前記透明接着剤を加熱硬化させ、前記透明接着剤によって、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板の間をそれぞれ接合する第3の工程とを有するので、前記蛍光体は前記透明樹脂、前記透明接着剤、前記第1及び第2の透明基板によって封止されており、耐湿性の大きい前記第1及び第2の透明基板及び前記透明接着剤を使用することによって、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、加熱によって劣化しやすい前記蛍光体に対しても適用することができる波長変換部材の製造方法を提供することができる。この製造方法による波長変換部材では、前記前記第2の透明基板と前記蛍光体層は前記透明接着剤によって接合されており、前記透明接着剤の層と前記第2の透明基板との接合界面を浸透する水分は、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間に存在する前記透明接着剤の層を透過し、次に、前記蛍光体層の前記透明樹脂を透過して前記蛍光体に到達するので、前記透明接着剤の層が、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間に形成されていない構成の波長変換部材に比較して、前記蛍光体の耐湿性を格段に向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を製造することができる。
また、本発明の第2の構成による波長変換部材の製造方法によれば、前記蛍光体が分散された透明樹脂を環状ポリオレフィン系樹脂からなる第1の透明基板に塗布して硬化させ、前記第1の透明基板に接合する蛍光体層を形成する第1の工程と、前記蛍光体層の上面に透明接着剤を滴下する第2の工程と、前記環状ポリオレフィン系樹脂からなる第2の透明基板と前記第1の透明基板との間に前記蛍光体層が挟持され、前記蛍光体層の外周部が前記透明接着剤によって包囲されるように前記透明接着剤を加熱硬化させ、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とを接合する第3の工程とを有するので、前記蛍光体は前記透明樹脂、前記透明接着剤、前記第1及び第2の透明基板によって封止されており、前記環状ポリオレフィン系樹脂及び前記透明接着剤の耐湿性が大きいため、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、加熱によって劣化しやすい前記蛍光体に対しても適用することができ、信頼性の高い波長変換部材を製造することができる。
また、本発明の発光デバイスによれば、前記波長変換部材を有しているので、前記波長変換部材を半導体発光素子等による励起光と組み合わせて、一般用途に使用される照明装置、LCD用バックライト等に使用される照明装置、各種用途に用いられる表示装置に使用される照明装置等の光源とされる発光デバイスを構成することができ、耐湿性を向上させることができ、信頼性の高い発光デバイスを実現することができる。
本発明の上記第1及び第2の構成による波長変換部材では、前記第1及び第2の透明基板の耐湿性は前記透明接着剤よりも大きい構成とするのがよい。この構成によれば、前記蛍光体層を挟持する前記第1及び第2の透明基板の耐湿性は前記透明接着剤の耐湿性よりも大きいので、前記第1及び第2の透明基板の面積が最も大きな平面部からの水分の透過を抑制することができ、前記蛍光体層中の前記蛍光体が水分の影響を受けにくくすることができ、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を実現することができる。
また、前記透明樹脂と前記透明接着剤が異なる材料からなり、前記透明接着剤の耐湿性は前記透明樹脂よりも大きい構成とするのがよい。この構成によれば、水分は、前記蛍光体層の外周部に対向した部分の前記透明接着剤を透過し、次に、前記蛍光体層の前記透明樹脂を透過していくので、前記蛍光体層中の前記蛍光体が水分の影響を受けにくくすることができ、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を実現することができる。
本発明の上記第1及び第2の構成による波長変換部材の製造方法では、耐湿性が前記透明接着剤よりも大きい前記第1及び第2の透明基板が使用される構成とするのがよい。この構成による波長変換部材によれば、前記蛍光体層を挟持する前記第1及び第2の透明基板の耐湿性は前記透明接着剤の耐湿性よりも大きいので、前記第1及び第2の透明基板の面積が最も大きな平面部からの水分の透過を抑制することができ、前記蛍光体層中の前記蛍光体が水分の影響を受けにくくすることができ、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を実現することができる。
また、耐湿性が前記透明樹脂よりも大きく、前記透明樹脂と異なる材料からなる前記透明接着剤が使用される構成とするのがよい。この構成による波長変換部材によれば、水分は、前記蛍光体層の外周部に対向した部分の前記透明接着剤を透過し、次に、前記蛍光体層の前記透明樹脂を透過していくので、前記蛍光体層中の前記蛍光体が水分の影響を受けにくくすることができ、前記蛍光体の耐湿性を向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を製造することができる。
また、前記第3の工程において、前記透明接着剤を200度以下で加熱硬化させる構成とするのがよい。この構成によれば、前記透明接着剤の加熱硬化処理における前記蛍光体の熱劣化を抑制することができ、200度以下の加熱では、多種類の蛍光体は加熱によって輝度劣化を生じることはないので、輝度特性の劣化を生じることがない信頼性の高い波長変換部材を製造することができる。
実施の形態
本発明による波長変換部材は、耐湿性の大きい透明樹脂に分散された蛍光体を耐湿性の大きい下部透明シート(基板)の面に塗布し硬化させ蛍光体層を形成し、その蛍光体層を上部透明シート(基板)で覆う際に、高温プロセスを使用しないで、下部及び上部透明シートの材料とは異なる透明接着剤を用いて、上部透明シートと蛍光体層の間を接着し、更に、蛍光体層の外周部に透明接着剤を密着させて、蛍光体層が立体的に少なくとも2種類以上の透明材料で囲まれ封止された構成とする。透明接着剤として、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の耐湿性の大きいものを使用する。下部及び上部透明シートとして、200度以下では、光学的特性や化学的特性の劣化等を生じない、例えば、透明ガラス基板、透明な樹脂基板を使用する。
本発明による波長変換部材は、湿度に対して劣化が大きい蛍光体であってもこれを立体的に複数種類の透明材料で挟むことにより、蛍光体の耐湿性を大幅に向上させることができ、色域輝度の改善効果が期待される硫化物系蛍光体を使用した波長変換部材に好適に適用することができる。
本発明による波長変換部材では、耐湿性の大きい透明な透明シート及び接着剤によって、蛍光体が分散され硬化された蛍光体層を3方向から立体的に囲むことにより、耐湿性を向上させることができ、加熱により劣化しやすい蛍光体にも適用することができ、任意の蛍光体に適用することができる。
本発明による波長変換部材では、特に、下部及び上部透明シートとして、透明な非晶質な熱可塑性樹脂である後述する環状ポリオレフィン系樹脂が使用され、蛍光体が分散された透明樹脂によって下部透明シートに接合された蛍光体層が下部及び上部透明シートの間に挟持され、蛍光体層の外周部が透明接着剤によって包囲され、上部透明シートと蛍光体層の間、下部透明シートと上部透明シートの間が透明接着剤によってそれぞれ接合され、蛍光体が透明樹脂、透明接着剤、下部及び上部透明シートによって封止されるように構成するのが望ましい。
下部及び上部透明シートとして耐湿性が大きい環状ポリオレフィン系樹脂、耐湿性が大きい透明接着剤を使用することによって、蛍光体の耐湿性を向上させることができ、加熱によって劣化しやすい蛍光体に対しても適用することができる波長変換部材を可能とすることができる。透明接着の層と上部透明シートとの接合界面を浸透する水分は、上部透明シートと蛍光体層の間に存在する透明接着剤の層を透過し、次に、蛍光体層の透明樹脂を透過して蛍光体に到達するので、透明接着剤の層が上部透明シートと蛍光体層の間に形成されていない構成の波長変換部材に比較して、蛍光体の耐湿性を格段に向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を可能とすることができる。
本発明による波長変換部材は半導体発光素子と組み合わせて、一般用途の照明装置、LCD用バックライト等に使用される照明装置、各種用途の表示装置に使用される照明装置等の光源とされる発光デバイスに適用することができる。
以下、図面を参照しながら本発明による実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態による波長変換部材6の構成を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は図1(A)のA−A部における断面図である。
図1に示すように蛍光体の粒子が封止された波長変換部材6は、下部透明シート(第1の透明基板)2(以下、下部シート2と略記する。)及び上部透明シート(第2の透明基板)3(以下、上部シート3と略記する。)、蛍光体層1、透明接着剤4から構成され、蛍光体層1は、蛍光体粒子が透明樹脂(例えば、透明なシリコーン樹脂)中に分散され硬化されて形成されている。下部シート2及び上部シート3の間に配置される蛍光体層1の周囲は透明接着剤(例えば、エポキシ樹脂)4によって密接して囲まれており、下部シート2及び上部シート3は接着剤4によって接合されている。図1に示す例では、下部シート2の面に形成される蛍光体層1の形状は円形であるが、この形状は任意の形状でもよいことは言うまでもない。
外部から水分に暴露される波長変換部材6に関して、一般的に、(蛍光体層1に垂直な方向の面が対向する下部シート2及び上部シート3の面の面積)>(透明接着剤4を挟んで対向する下部シート2及び上部シート3の面の面積)>(蛍光体層1に平行な方向の面が対向する透明接着剤4の面積)であるので、波長変換部材6における蛍光体の耐湿性を向上させるためには、(下部シート2及び上部シート3の耐湿性)>(透明接着剤4の耐湿性)>(透明樹脂の耐湿性)を満たすように、下部シート2及び上部シート3、透明接着剤4、透明樹脂の材質を選定するのが望ましい。また、透明接着剤4の蛍光体層1に平行な方向の長さは、できるだけ大きな値とすることが望ましい。
図2は、本発明の実施の形態による波長変換部材6の製造方法を説明する図であり、図3は、下部シート面2への蛍光体層1の形成工程を説明する平面図及び断面図、図4は、上部シート3、下部シート2及び接着剤4による蛍光体層1の封止工程を説明する断面図である。
図2に示すように、波長変換部材6の製造方法は、蛍光体粒子が分散された透明なシリコーン樹脂を下部シート2の面に塗布して硬化させ蛍光体層1を形成する工程(図3を参照。)と、蛍光体層1の上面に接着剤4を滴下する工程と、滴下された接着剤4に上部シート3を接触させて、上部シート3を蛍光体層1の面に圧接して、接着剤4を展延させて、蛍光体層1の外周部が接着剤4によって密接して包囲されるように、上部シート3と下部シート2の間を所定の距離に保持した状態で、接着剤4を200度以下で加熱硬化させ、上部シート3と下部シート2の間に蛍光体層1を封止する工程(図4を参照。)から構成される。
図3に示すように、下部シート2の面に蛍光体層1を形成する工程では、透明樹脂として透明シリコーン系樹脂を使用しこれに蛍光体を所定の重量比で分散させた分散物を、下部シート2の面に印刷法により所定の厚さtで塗布し、所定の温度、時間の硬化条件でシリコーン系樹脂を加熱硬化させ蛍光体層1を形成する。
図4に示すように、上部シート3と下部シート2の間に蛍光体層1を封止する工程では、透明接着剤4として耐湿性の大きい透明エポキシ系樹脂を使用しこれを厚さtの蛍光体層1の上面に滴下する。次に、滴下された接着剤4に上部シート3を接触させて、上部シート3を蛍光体層1に圧接して接着剤4を展延させて、接着剤4が蛍光体層1の外周部に密着しこの外周部を包囲するようにして、上部シート3と下部シート2の間を所定の距離に保持した状態で、接着剤4を所定の温度、時間の硬化条件で加熱硬化させ、上部シート3と下部シート2を接合して、上部シート3と下部シート2の間に蛍光体層1を封止する。
なお、上記所定の距離は、蛍光体層1の厚さを上記のt(μm)とするとき、例えば、(t+(2〜3))(μm)として、上部シート3と蛍光体層1の間に接着剤4の層が存在するようにする。蛍光体層1の表面には、一般に、凹凸が存在しているので、上部シート3と蛍光体層1を単に密着させるように圧接しても、上部シート3と蛍光体層1の間に接着剤4の層が存在する。
以上のようにして、蛍光体層1が透明樹脂によって下部シート2に密着して接合され、下部シート2及び上部シート3が接着剤4によって接合され、且つ、蛍光体層1の外周部が接着剤4によって密着され包囲され、蛍光体層1が接着剤4によって上部シート3に接合され、蛍光体層1が内部に封止された波長変換部材6を作成することができる。この波長変換部材6では、蛍光体の粒子は、蛍光体層1の透明樹脂中に分散され封止され、更に、蛍光体層1は、接着剤4、下部シート2及び上部シート3によって封止されている。
本実施の形態では、上部シート3と蛍光体層1の間に接着剤4の層が存在するので、波長変換部材6の透明接着剤4の層と上部シート3との接合界面を浸透する水分は、上部透明シート3と蛍光体層1の間に存在する透明接着剤4の層を透過し、次に、蛍光体層1の透明樹脂を透過して蛍光体に到達するので、透明接着剤4の層が、上部シート3と蛍光体層1の間に形成されていない構成の波長変換部材に比較すると、蛍光体層1中の蛍光体の耐湿性を格段に向上させることができる。
なお、図1〜図3において、蛍光体層1の外周部に形成される接着剤4の層の幅(下部及び上部シート2、3の間における幅)を可能な限り長くして、接着剤4の層を透過していく水分の透過長を増大させて、蛍光体層1に水分が到達し難くすることができるので、蛍光体層1中の蛍光体の耐湿性を更に向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を実現することができる。
また、図1〜図3において、蛍光体が分散された分散物が塗布される下部シート2の面の側で、蛍光体層1が形成されない外周部の領域及びこれに対向する上部シート3の外周部の領域を粗面化処理しておくことによって、接着剤4の下部及び上部シート2、3に対する接触面積を増大させ下部及び上部シート2、3の接合強度を大きくすると共に、接着剤4の層とした下部及び上部シート2、3の接合界面の面積を大きくし、蛍光体層1に到達するまでの水分の浸透長を増大させて、蛍光体層1に水分が浸透し難くすることができるので、蛍光体層1中の蛍光体の耐湿性を更に向上させることができ、信頼性の高い波長変換部材を実現することができる。
作成された波長変換部材6では、蛍光体層1がシリコーン樹脂によって下部シート2に接合され、且つ、蛍光体層1の外周部が接着剤4と密着し、且つ、蛍光体層1が接着剤4を介して上部シート3に接合して、水分が滞留する空間が存在しないように、蛍光体層1が内部に封止されている。即ち、蛍光体の粒子は、透明なシリコーン樹脂に封止され、更に、蛍光体層1は、接着剤4、下部シート2及び上部シート3によって封止されている。
蛍光体層1を形成するために蛍光体を分散させる樹脂は、透明であり耐湿性の大きいものであればよく、シリコーン樹脂の他に、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等を使用することもできる。
下部シート2及び上部シート3は、透明であり耐湿性の大きいものであればよく、透明ガラスの他に、各種の透明樹脂を使用することができ、下部シート2と部シート3を異なる材料で構成することもできる。樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、アクリル(PMMA)樹脂、フッ素樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂等を使用することができる。蛍光体を紫外線によって励起させる場合には、下部シート2及び上部シート3を、紫外線によって劣化して光透過率が低下を生じない材料によって構成することが望ましい。
上記のPE、PP、PMP等のポリオレフィン系樹脂の他に、主鎖に脂環構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂を使用することができる。例えば、エチレン・テトラシクロドデセン・コポリマー(E/TD)(エチレンと環状オレフィンの一種であるテトラシクロドデセンを共重合したポリマー(シクロオレフィンコポリマー))(「アペル(登録商標)」(三井化学))、ノルボルネンとエチレンを共重合したシクロオレフィンコポリマー(「TOPAS(登録商標)」(Ticona(チコナ)社))、エステル置換テトラシクロドデセンモノマーのメタセシス開環重合に引き続いて主鎖二重結合の完全な水素化により合成されるシクロオレフィンポリマー(ノルボルネン系樹脂)(「ARTON(登録商標)」(JSR))、ノルボルネン系モノマーを開環メタセシス開環重合した後、重合体中の二重結合を水素化して得られる開環メタセシス開環重合体水素化ポリマー(シクロオレフィンポリマー(ノルボルネン系樹脂))(「ZEONEX(登録商標)」(日本ゼオン)、「ZEONOR(登録商標)」(日本ゼオン))等の非晶質樹脂を使用することができる。
また、ポリエチレンテレテレフタレートとして非晶質ポリエステル樹脂を使用することができ、フッ素系樹脂として、非晶質透明なペルフルオロエーテル系樹脂である4−ビニルオキシ−1−ブテン(「サイトップ(登録商標)」(旭硝子))、テトラフルオロエチレンーパーフルオロジオキソールコポリマー(TFE/PDD)(三井・デュポンフロロケミカル)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等を使用することができる。
なお、下部及び上部透明シートとして使用される樹脂、蛍光体を分散させた蛍光体層の形成に使用される樹脂、下部及び上部透明シートの接合用に使用される樹脂の耐湿性は、吸水率(例えば、JIS K7209に準拠して測定する。)、透湿度(例えば、JIS Z2080に準拠して測定する。)によって評価されるものであり、蛍光体の耐湿性を確保するために、下部及び上部透明シートは、例えば、吸水率0.1%(23度水中×24h)以下、透湿度5g/m2・24h(フィルム厚さ100μm、40度・90%RH)以下を有することが好ましい。特に、「ZEONEX」、「ZEONOR」、「アペル」、「TOPAS」の環状ポリオレフィン系樹脂の耐湿性(透湿度は約1g/m2・24h、吸水率は約0.01%である。)は非常に良好であり、次いで、PE、PPの耐湿性(透湿度は約3〜5g/m2・24h、吸水率は約0.01%である。)が良好であり、これらの樹脂シートを使用することがより好ましい。
下部シート2と部シート3を接合する透明接着剤4は、透明であり耐湿性の大きいものであればよく、エポキシ樹脂の他に、アクリル樹脂等も使用することができる。エポキシ樹脂の吸水率はシリコーン樹脂よりも小さく、耐湿性に優れているので、透明接着剤4として好適である。
波長変換部材6に使用される蛍光体の耐湿性や紫外線等に対する耐光性を向上させるために、下部シート2及び上部シート3の片面又は両面に無機物層をスパッタリング等によって形成してもよい。例えば、上述した樹脂によるシート(例えば、PP、PE、PMP等のポリオレフィン系樹脂シート、PETシート、環状ポリオレフィン系樹脂シート等)の片面又は両面に、SiO2、Si34、Al23、SIOxy、ITO(インジウム・錫酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、AZO(アンチモンドープ・亜鉛酸化物)、GZO(ガリウムドープ・亜鉛酸化物)を形成することによって、蛍光体の耐湿性、耐光性を向上させることができる。
なお、熱可塑性を有する下部シート2及び上部シート3の片面又は/及びに無機物層をスパッタリング等によって形成し、下部シート2の面に蛍光体層1を形成した後に、接着剤4を使用せずに、加熱融着(ヒートシール)によって、下部シート2及び上部シート3の無機物質層が形成されていない部分を接合して、蛍光体の耐湿性、耐光性を向上させるようにして、波長変換部材の信頼性を高めることもできる。
また、熱可塑性を有する下部シート2及び上部シート3を使用して、下部シート2の面に蛍光体層1を形成した後に、接着剤4を使用せずに、加熱融着によって、下部シート2及び上部シート3を接合した後に、下部シート2及び/又は上部シート3の外側の面に無機物層をスパッタリング等によって形成することによって、蛍光体の耐湿性、耐光性を向上させるようにして、波長変換部材の信頼性を高めることもできる。
図5は、本発明の実施の形態による波長変換部材6を用いた発光デバイス8の構成を説明する断面図であり、図5(A)は、半導体発光素子12と波長変換部材6を組み合わせて構成された発光デバイス8a、図5(B)は、複数の半導体発光素子12と波長変換部材6を組み合わせて構成された発光デバイス8b、図5(C)は、図5(A)の発光デバイス8aの構成を変形した発光デバイス8cの構成を説明する断面図である。
図5(A)に示すように、発光デバイス8aは、基板10、半導体発光素子12、封止樹脂13、波長変換部材6を備えており、基板10には、枠体14によって構成されたすり鉢状の凹部11、半導体発光素子12の電極部(図示せず)と電気的に接続する配線部(図示せず)が形成されている。
半導体発光素子12は、例えば、GaN系化合物半導体からなる素子であり、基板10の凹部11の底部面の中央部分に搭載されている。半導体発光素子12の電極部(図示せず)は、例えば、ワイヤボンディング等によって、基板10の配線部(図示せず)に接続されている。半導体発光素子12は、サファイヤ基板上に形成されたGaN系の半導体層によって構成されたLED(Light Emitting Diode)チップ又はLD(Laser diode)であり、青色光を出射する発光素子である。
封止樹脂13は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等、透光性を有する耐湿性が大きい低透湿性の樹脂であり、基板10の凹部11の内部に充填され、半導体発光素子12を封止している。波長変換部材6は、半導体発光素子12からの光の出射方向に配置されている。波長変換部材6の面積が凹部11の開口部の面積よりも大であり、波長変換部材6の外側縁部が、凹部11の開口部の縁部で枠体14に接着剤等で接着固定されている。
先述のように、長変換部材6は、蛍光体層1、透明な下部及び上部シート2、3の間に、透明接着剤(エポキシ樹脂)4によって封止された蛍光体層1を有しており、蛍光体層1は、シリコーン樹脂とこれに分散された蛍光体から構成されている。
蛍光体層1を構成する蛍光体として、例えば、YAG系の黄色の蛍光を出射する蛍光体を用いれば、半導体発光素子12から出射された青色光は、封止樹脂13を透過して波長変換部材6に到達し、波長変換部材6に到達した青色光によって、YAG系蛍光体が励起されて黄色光を出射するので、半導体発光素子12から出射された青色光と、YAG系蛍光体から出射された黄色光との組み合わせによって、白色光が波長変換部材6から外部に出射されることになる。
発光デバイスの構成として、青色光を出射する半導体発光素子12と、黄色以外の蛍光を出射する蛍光体との組合せによって白色光を出射する白色照明装置、或いは、紫外光を出射する半導体発光素子12と、この紫外光によって励起されて所望の色の蛍光を出射する蛍光体との組合せによって白色光を出射する白色照明装置が可能であることは言うまでもない。このような白色照明装置は、使用される環境条件に大きく左右されることなく安定した輝度を有し、各種の用途の照明として使用することができる。
図5(A)に示す構成において、図5(B)に示すように、1次元又は2次元に配列される複数個の半導体発光素子12を、基板10の凹部11の底部面に搭載される構成とすることもできる。このような構成によれば、複数個の半導体発光素子12の駆動を同期させることによって、波長変換部材6を構成する蛍光体の励起発光による光照射面積の大きな照射装置としての発光デバイスを実現することができる。
図5(B)に示す構成において、1次元又は2次元に配列される複数個の半導体発光素子12のそれぞれを画素の配列に対応させて、各半導体発光素子12の駆動を制御して発光させこの発光を略垂直方向から波長変換部材6に照射させる構成とすることよって、所望の文字情報、所望の画像情報を、波長変換部材6を構成する蛍光体の励起発光によって表示させることができる表示面積の大きな表示装置としての発光デバイスを実現することができる。
図5(C)に示すように、図5(A)の発光デバイス8aの構成を変形することもでき、図5(C)に示す発光デバイス8cでは、波長変換部材6が、枠体14によって構成されたすり鉢状の凹部11の内部に、半導体発光素子12と共に封止樹脂13によって封止され、更に、波長変換部材6が封止樹脂13aによって封止された構成を示している。図5(C)に示す構成によれば、より薄型であり、耐湿性に優れた発光デバイスを実現することができる。
図5(C)に示す構成を変形して、図5(B)に示す構成と同様に、複数個の半導体発光素子12を、基板10の凹部11の底部面に搭載される構成とすることもできる。
図5(B)、図5(C)の変形例における発光デバイスに使用される波長変換部材6を構成する下部シート2及び上部シート3として、薄く変形可能な樹脂板を使用し、径が数十μmm以下の半導体発光素子12を薄く変形可能な基板10に搭載することによって、耐湿性が向上され信頼性が高く、変形可能なフレキシブルな照明装置としての発光デバイス、或いは、表示装置としての発光デバイスを実現することができる。
以下、各種蛍光体の加熱劣化、及び、本発明による波長変換部材における蛍光体の耐湿性について説明する。
実施例
<各種蛍光体の加熱劣化>
(1)約600度の加熱プロセスによって、蛍光体をガラスシートの間に封止することを想定して、蛍光体の加熱による劣化を調べた。SrGa24:Eu、CaAlSiN3:Eu、Ca2Si58:Euの各蛍光体を焼成(600度、1時間)した後における、波長450nmの光励起による発光強度はそれぞれ、焼成前における発光強度の18%、75%、97%であり、CaAlSiN3:Eu、Ca2Si58:Euの加熱劣化は非常に大きく、蛍光体の熱劣化を考慮すると、約600度の加熱プロセスを必要とする蛍光体の封止は実用的なものではない。
(2)接着剤4の硬化温度における蛍光体の劣化
市販されているエポキシ樹脂系接着剤やシリコーン樹脂系接着剤の硬化条件は、使用される硬化剤の種類や使用の用途によっても異なるが、本発明による波長変換部材を形成するには、樹脂の硬化物に十分な耐湿性、耐熱性を保持させるために、接着剤の硬化温度を約150度〜200度とするのが好ましい。
そこで、一般的に使用される蛍光体(硫化物蛍光体、CRT用蛍光体、ランプ用蛍光体)を加熱処理(200度、2時間の焼成)した後における、波長450nmの光励起による発光強度の劣化を評価した。評価した結果、下記の蛍光体に関しては、発光強度の劣化は見られず、発光強度の劣化率は0%であった。
CaAlSiN3:Eu、Ca2Si58:Eu、SrGa24:Eu、CaS:Eu、SrS:Eu、Y3All512:Ce、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Ag,Al、Y22S:Eu、Y23:Eu、YVO4:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mn、LaPO4:Ce,Tb。
本発明による波長変換部材は、ガラスの軟化点よりはるかに低い200度以下の温度で透明接着剤を硬化させることによって、透明ガラスシートを接合させて蛍光体を封止するので、蛍光体の加熱によって生じる劣化がない。また、ガラスではなく耐湿性が大きく透湿性、吸水性の小さい、PP、PE、PMP等のポリオレフィン系樹脂シート、環状ポリオレフィン系樹脂シート等の樹脂シートを、透明接着剤によって200度以下の硬化温度で接合させて蛍光体を封止するので、蛍光体を劣化させることがない。
<波長変換部材の耐湿性(蛍光体の耐湿性)>
図6は、本発明の実施例による波長変換部材の耐湿性の評価結果例を説明する図である。
図7は、本発明の実施例による波長変換部材の耐湿性の評価におけるサンプル−2の構成を説明する図であり、図7(A)は平面図、図7(B)は図7(A)のA−A部における断面図である。
図8は、本発明の実施例による波長変換部材の耐湿性の評価における比較例(蛍光体単体)の構成を説明する図であり、図8(A)は平面図、図8(B)は図8(A)のA−A部における断面図である。先ず、波長変換部材6のサンプル−1の作成について説明する。
波長変換部材6のサンプル−1では、下部及び上部シート2、3として、広く使用されている市販のパイレックス(登録商標)ガラスを使用した。使用したガラスは、図3に示すような径φ8mm、厚さ0.1mmの円形である。
透明シリコーン系樹脂(信越シリコーン、品番KJR−632)にCaS:Eu蛍光体を10wt%で分散させた分散物を、図3に示すように、下部シート2の面に印刷法により塗布し、150度、2時間の条件でシリコーン系樹脂を加熱硬化させ蛍光体層1を形成した。下部シート2として、ガラスを使用した。蛍光体層1は、図3に示すように径をφ6mmとし、厚さをt=約50μmとした。蛍光体を分散させた樹脂をシリコーン樹脂にした理由は、シリコーン樹脂は、熱、光に対して劣化し難いという特長を有するからである。なお、CaS:Eu蛍光体は、硫化物であり耐湿性は非常に悪い。
次に、図4に示すように、厚さtの蛍光体層1の上面に接着剤4として、耐湿性の大きい透明エポキシ系樹脂(日東電工、品番NT8080)を滴下して、滴下された接着剤4に上部シート3を接触させて、蛍光体層1の外周部が接着剤4にて密着し包囲されるように、上部シート3を蛍光体層1の面に圧接して、上部シート3と下部シート2の間を所定の距離に保持した状態で、接着剤4を加熱硬化させ、上部シート3と下部シート2の間に蛍光体層1を封止する。上部シート3を蛍光体層1の面に圧接した状態で、透明エポキシ系樹脂を、135度、2時間の条件で加熱硬化させた。
以上のようにして、蛍光体層1と下部シート2が密着して透明樹脂によって接合され、蛍光体層1の外周部に接着剤4が密着し、蛍光体層1と上部シート3が密着して接着剤4によって接合され、上部シート3と下部シート2が接着剤4によって接合され、蛍光体層1が内部に封止された波長変換部材6の評価用サンプルを作成した。この波長変換部材6では、蛍光体の粒子は、透明なシリコーン樹脂に分散され封止され、更に、蛍光体層1は、接着剤4、下部シート2及び上部シート3によって封止されている。
図7に示すサンプル−2(波長変換部材6a)は以下のようにして作成した。サンプル−2の作成と上述したサンプル−1の作成の相違点は以下の点にある。
上述したサンプル−1の作成では、接着剤4として透明エポキシ系樹脂を使用したが、波長変換部材6aの作成では、透明エポキシ系樹脂に代えて、蛍光体粒子を分散させるのに用いた上述の透明シリコーン系樹脂を、接着剤4aとして使用した。なお、波長変換部材6aの各部の寸法は、上述のサンプル−1と同じとした。
図8に示す比較例(蛍光体単体)は以下のようにして作成した。
比較例は、上述のサンプル−1の作成工程において、透明シリコーン系樹脂に蛍光体を分散させた分散物を、下部シート2の面に印刷法により塗布し、150度、2時間の条件でシリコーン系樹脂を加熱硬化させ蛍光体層1を形成した段階で得られたものであり、形成された蛍光体層1を蛍光体単体5とした。なお、蛍光体単体5の厚さt、径φは、上述のサンプル−1における蛍光体層1の値と同じとした。
次に、サンプル−1、サンプル−2、及び、比較例の耐湿性の試験とその評価結果について説明する。
上述の各サンプルを、60度、90%RHに設定された高温高湿槽に入れて高温高湿に曝し、波長450nmの光で励起させた時の各サンプルの発光強度の経時変化を測定して、図6に示す耐湿性の評価結果例を得た。図6の縦軸は、高温高湿に曝す前の蛍光体の発光強度を100とする相対発光強度(%)を示し、横軸は高温高湿に曝した時間(高温高湿暴露時間)である。
図6に示すように、比較例の相対発光強度は高温高湿暴露時間と共に急激に低下していき、約400時間経過後に約55%に飽和する傾向を示す。比較例の相対発光強度は高温高湿暴露時間と共に低下していき、約400時間経過後において飽和する傾向を示していないが、600時間の高温高湿暴露後において略60%に低下している。一方、サンプル−1の相対発光強度は、600時間の高温高湿暴露後においても、略100%であり殆んど低下がなく、サンプル−2、及び、比較例に比べて耐湿性がはるかに優れており、500時間経過後において80%以上の相対発光強度を保持させるという目標を完全に満足し、蛍光体の耐湿性が確保されていることが明らかとなった。
以上説明したように、本発明によれば、蛍光体の耐湿性を向上させることができる波長変換部材及びその製造方法、並びに、波長変換部材を用いた発光デバイスを提供することができ、加熱劣化しやすい蛍光体を使用した発光変換部材に好適であり、各種の蛍光体に適用することができ、波長変換部材及びこれを用いた発光デバイスの耐湿性を確保して信頼性を向上させることができる。本発明は、無機エレクトロルミネッセンス(EL)材料の封止に適用することもできる。
以上、本発明を実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、使用される蛍光体の種類、形成される蛍光体層の厚さ、面積等は必要に応じて任意に変更可能である。また、複数種類の蛍光体を混合して透明樹脂に分散させて蛍光体層を形成して波長変換部材を形成することができることは言うまでもない。
本発明によれば、加熱劣化しやすい蛍光体に好適であり蛍光体の耐湿性を向上させることができ信頼性の高い波長変換部材及びその製造方法、並びに、葉著変換部材を用いた発光デバイスを提供することができる。
本発明の実施の形態による波長変換部材の構成を説明する図である。 同上、波長変換部材の製造方法を説明する図である。 同上、波長変換部材の製造方法を説明する図である。 同上、波長変換部材の製造方法を説明する図である。 同上、波長変換部材を用いた発光デバイスの構成を説明する図である。 本発明の実施例による波長変換部材の耐湿性の評価結果例を説明する図である。 同上、波長変換部材の耐湿性の評価におけるサンプル−2の構成を説明する図である。 同上、波長変換部材の耐湿性の評価における比較例(蛍光体単体)の構成を説明する図である。 従来技術における、放射線画像変換パネルの一例を示す断面図である。 同上、波長変換部の製造工程を示す工程図である。
符号の説明
1…蛍光体層、2…下部シート、3…上部シート、4、4a…接着剤、5…蛍光体単体、
6、6a…波長変換部材、8a、8b、8c…発光デバイス、10…基板、11…凹部、
12…半導体発光素子、13、13a…封止樹脂、14…枠体

Claims (15)

  1. 第1の透明基板と、
    第2の透明基板と、
    前記第1及び第2の透明基板の間に挟持された、蛍光体が透明樹脂中に分散された蛍
    光体層と、
    前記蛍光体層の外周部を包囲する透明接着剤と
    を有し、前記第1の透明基板と前記蛍光体層とが前記透明樹脂によって接合され、前記第2の透明基板と前記蛍光体層とが前記透明接着剤によって接合され、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とが前記透明接着剤によって接合された、波長変換部材。
  2. 前記第1及び第2の透明基板の耐湿性は前記透明接着剤よりも大きい、請求項1に記載の波長変換部材。
  3. 前記透明樹脂と前記透明接着剤が異なる材料からなり、前記透明接着剤の耐湿性は前記透明樹脂よりも大きい、請求項1に記載の波長変換部材。
  4. 環状ポリオレフィン系樹脂からなる第1の透明基板と、
    前記環状ポリオレフィン系樹脂からなる第2の透明基板と、
    前記第1及び第2の透明基板の間に挟持された、蛍光体が透明樹脂中に分散された蛍
    光体層と、
    前記蛍光体層の外周部を包囲する透明接着剤と
    を有し、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板とが前記透明接着剤によって接合された、波長変換部材。
  5. 前記第1及び第2の透明基板の耐湿性は前記透明接着剤よりも大きい、請求項4に記載の波長変換部材。
  6. 前記透明樹脂と前記透明接着剤が異なる材料からなり、前記透明接着剤の耐湿性は前記透明樹脂よりも大きい、請求項4に記載の波長変換部材。
  7. 蛍光体が分散された透明樹脂を第1の透明基板に塗布して硬化させ、前記第1の透明
    基板に接合する蛍光体層を形成する第1の工程と、
    前記蛍光体層の上面に透明接着剤を滴下する第2の工程と、
    滴下された前記透明接着剤に第2の透明基板を接触させて、前記第2の透明基板を前
    記蛍光体層に圧接して前記透明接着剤を展延させ、前記蛍光体層の外周部が前記透明接
    着剤によって包囲されるように前記透明接着剤を加熱硬化させ、前記透明接着剤によっ
    て、前記第2の透明基板と前記蛍光体層の間、前記第1の透明基板と前記第2の透明基
    板の間をそれぞれ接合する第3の工程と
    を有する、波長変換部材の製造方法。
  8. 耐湿性が前記透明接着剤よりも大きい前記第1及び第2の透明基板が使用される、請求項7に記載の波長変換部材の製造方法。
  9. 耐湿性が前記透明樹脂よりも大きく、前記透明樹脂と異なる材料からなる前記透明接着剤が使用される、請求項7に記載の波長変換部材の製造方法。
  10. 前記第3の工程において、前記透明接着剤を200℃以下で加熱硬化させる、請求項7に記載の波長変換部材の製造方法。
  11. 蛍光体が分散された透明樹脂を環状ポリオレフィン系樹脂からなる第1の透明基板に
    塗布して硬化させ、前記第1の透明基板に接合する蛍光体層を形成する第1の工程と、
    前記蛍光体層の上面に透明接着剤を滴下する第2の工程と、
    前記環状ポリオレフィン系樹脂からなる第2の透明基板と前記第1の透明基板との間
    に前記蛍光体層が挟持され、前記蛍光体層の外周部が前記透明接着剤によって包囲され
    るように前記透明接着剤を加熱硬化させ、前記第1の透明基板と前記第2の透明基板と
    を接合する第3の工程と
    を有する波長変換部材の製造方法。
  12. 耐湿性が前記透明接着剤よりも大きい前記第1及び第2の透明基板が使用される、請求項11に記載の波長変換部材の製造方法。
  13. 耐湿性が前記透明樹脂よりも大きく、前記透明樹脂と異なる材料からなる前記透明接着剤が使用される、請求項11に記載の波長変換部材の製造方法。
  14. 前記第3の工程において、前記透明接着剤を200℃以下で加熱硬化させる、請求項11に記載の波長変換部材の製造方法。
  15. 請求項1から請求項6の何れか1項に記載の波長変換部材を有する発光デバイス。
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