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JP2008238566A - 繊維強化樹脂構造体の製造方法、及び繊維強化樹脂構造体 - Google Patents

繊維強化樹脂構造体の製造方法、及び繊維強化樹脂構造体 Download PDF

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JP2008238566A
JP2008238566A JP2007082018A JP2007082018A JP2008238566A JP 2008238566 A JP2008238566 A JP 2008238566A JP 2007082018 A JP2007082018 A JP 2007082018A JP 2007082018 A JP2007082018 A JP 2007082018A JP 2008238566 A JP2008238566 A JP 2008238566A
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Takao Tsukimori
隆雄 月森
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Abstract

【課題】コア材の周囲にボイドの無い状態で繊維強化樹脂層を形成することができ、複雑な最終形状にも追従できる繊維強化樹脂構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂構造体の製造方法は、膨張性を有した中空体11の周囲にコア材12を配置する工程と、配置されたコア材12の周囲に未硬化の樹脂15aと強化繊維15bとを有するプリプレグ15を積層して被覆する工程と、プリプレグ15が積層、被覆されたコア材12を成形型1のキャビティ4内に配置し、成形型1のキャビティ4内において中空体11を膨張させて、成形型1とコア材12の間において未硬化の樹脂15a及び強化繊維15bを加圧する工程と、加圧された未硬化の樹脂及び強化繊維を加熱して硬化させコア材12の周囲に繊維強化樹脂層16を成形する工程とを、少なくとも含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維強化樹脂構造体の製造方法と、繊維強化樹脂構造体に係り、特に、成形型を用いてプリプレグを加圧して成形する繊維強化樹脂構造体の製造方法と、繊維強化樹脂構造体に関する。
従来の繊維強化樹脂構造体、いわゆるFRP構造体は、強化繊維と樹脂とを少なくとも含む繊維強化樹脂を有する構造体である。該構造体は、機械強度を維持しつつ、軽量化を図るべき箇所に使用されるものである。このようなFRP構造体の繊維強化樹脂は、強化繊維に樹脂を含浸させることにより、少なくともFRP構造体の表面に成形される。
たとえば、このようなFRP構造体は、多面体(たとえば四角柱)状のコア材の表面に、強化繊維と樹脂(プリプレグ)を配置した状態で、成形型内に配置し、該コア材を含むプリプレグを加圧及び加熱によるプレス成形を利用して、繊維強化樹脂層としてコア材に一体成形することにより製造される。
また別の方法としては、前記FRP構造体の製造方法として、中空体と、該中空体の周囲に配置されたFRP層とを有するFRP構造体の製造方法が提案されている。該製造方法では、発泡液を中に有した中空体の少なくとも一面に強化繊維基材を配置後、成形型内に配置し、全体をバッグ基材で覆った後、バッグ基材で覆われた型内部を真空状態にし、樹脂を注入して樹脂を強化繊維基材の面方向に拡散させつつ厚み方向に含浸することにより成形している(例えば、特許文献1参照)。そして、このような成形方法によれば、前記FRP層は、型内を真空状態にし、かつ中空体内に発泡液を用いることにより、強化繊維基材に樹脂を効率良く含浸させることができる。
特開2000−79649号公報
しかし、前記プレス成形による方法では、FRP構造体が直方体等の角部を有する形状の場合、あるいはFRP構造体の最終形状が複雑な形状の場合、角部や複雑な形状に追従することが難しく、加圧を均一にFRP構造体へ加えることができず、品質が低下するおそれがあった。そのため、均一加圧ができるような構造に、FRP構造体の形状は制約され、成形型の形状は複雑なものになってしまう。
また、特許文献1に記載の前記製造方法は、真空引きを利用して強化繊維内の脱気をすると共に樹脂を型内に注入することにより成形を行っている。また、該成形時には、発泡液を発泡させて、該発泡による均一な加圧力により強化繊維基材に樹脂を均一に含浸させようとしている。しかし、強化繊維基材の形状は複雑であり、前記真空引きを行った場合であっても、前記中空体の形状を確保した状態で、強化繊維内の樹脂を完全に脱気することは難しい。さらに、一端、樹脂が含浸した状態の強化繊維内のガスを、前記発泡による加圧力で脱気することは難しい。その結果、強化繊維基材に樹脂が均一に含浸されず、ボイドが残留することがあり、良好な成形物を得ることができないおそれがあった。
本発明は、前記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、コア材の周囲に未硬化の樹脂と強化繊維とを有するプリプレグを配置し、プリプレグを加圧してコア材の周囲にボイドの無い状態で繊維強化樹脂層を成形することができ、複雑な最終形状にも追従できる繊維強化樹脂構造体の製造方法と、繊維強化樹脂構造体を提供することにある。
前記目的を達成すべく、本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法は、膨張性を有した中空体の周囲にコア材を配置する工程と、配置されたコア材の周囲に未硬化の樹脂と強化繊維とを有するプリプレグを積層して被覆する工程と、プリプレグが積層、被覆されたコア材を成形型のキャビティ内に配置する工程と、成形型のキャビティ内において中空体を膨張させて、成形型とコア材の間において未硬化の樹脂及び強化繊維を加圧する工程と、加圧された未硬化の樹脂及び強化繊維を加熱して硬化させコア材の周囲に繊維強化樹脂層を成形する工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
本発明の繊維強化樹脂構造体の製造方法によれば、中空体の周囲にコア材を配置し、コア材の周囲にプリプレグを積層して被覆し、プリプレグが積層、被覆されたコア材を成形型のキャビティ内に配置し、キャビティ内において中空体を膨張させて、成形型とコア材の間において未硬化の樹脂及び強化繊維を加圧すると、コア材の中空部が膨張してコア材を介して、プリプレグを成形型の内面に押し付ける。このため、プリプレグの未硬化の樹脂と強化繊維との間の空気が押し出され、ボイドが残留することを防止できる。また、中空体は等方性をもって膨張しようとするので、コア材を介してコア材周りのプリプレグを均一に加圧する。このような均一な加圧により、これまでのプレス成形のように均一加圧を考慮すべく成形型の形状を制限する必要なはいので、所望の形状の繊維強化樹脂構造体を得ることができる。
また、本発明にいう「膨張性を有した中空体」とは、減圧、加熱等をすることにより中空体の体積が膨張する中空体をいい、中空体に熱膨張可能な気体、液体、又は固体等を封入してもよく、外部から、中空体を膨張させるように、気体、液体、又は固体を強制的に送り込むように構成されていてもよい。
また、本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法の好ましい具体的な態様としては、前記コア材を配置する工程において、コア材として、複数のコア片から構成されたコア材を用いることを特徴としている。この製造方法によれば、中空体が膨張したとき複数のコア片から構成されるコア材によりプリプレグが均一に加圧され、プリプレグの未硬化の樹脂が強化繊維に含浸してコア材と一体化され、ボイドが除去された繊維強化樹脂層が成形される。さらに、成形型が複雑な形状でも、該形状に追従しやすくなり、品質の高い成形品を製造することができる。
さらに、前記コア材として、中空体の周囲にコア材を配置したときに中空多面体が形成されるコア材を用い、該コア材を構成する複数のコア片の各コア片として、中空多面体の各稜に沿って複数に分割されるコア片を用いることが好ましい。この製造方法によれば、中空体の周囲に配置されたコア材の各コア片は、少なくとも中空体と接触する面と、プリプレグを加圧する面とを備えており、しかも、この加圧面は中空多面体の各稜まで延在しており、中空多面体を被覆するプリプレグのすべての領域をコア材の外周面で加圧することができるため、均一に加圧することができ、ボイドの残留を防止することが可能となる。さらに、繊維強化樹脂構造体の最終形状が複雑であっても、その最終形状となるように繊維強化樹脂構造体を正確に成形することができ、品質を高めることができる。
また、前記膨張性を有した中空体として、内部に気体が密封された中空体を用い、加圧工程において、未硬化の樹脂及び強化繊維の加圧を、キャビティ内を減圧及び/又は加熱することにより行うことが好ましい。このように構成された製造方法によれば、キャビティ内を減圧及び/又は加熱すると、中空体の内部に密封された気体が膨張し、コア材を介してプリプレグの樹脂及び強化繊維を加圧し、キャビティ内面にプリプレグを押し付けた状態で加熱して硬化させ繊維強化樹脂層を成形するため、成形される繊維強化樹脂構造体の最終形状が複雑な場合でも正確に成形することができる。
さらに、前記膨張性を有した中空体として、内部に、少なくとも加熱により膨張する膨張剤が封入された中空体を用い、前記加圧工程において、未硬化の樹脂及び強化繊維の加圧を、キャビティ内を膨張剤が膨張可能な温度領域まで加熱することにより行うことが好ましい。膨張剤としては、重曹等を好適に用いることができる。このように構成された製造方法によれば、中空体内部に封入された膨張剤を膨張可能な温度まで加熱して膨張させ、コア材を外方に加圧することでプリプレグをキャビティ内面に押し付けるように加圧することができ、複雑な最終形状でも正確に成形することができる。
また、前記未硬化の樹脂は、熱硬化性樹脂からなり、中空体の膨張を熱硬化性樹脂の硬化温度より低い加熱温度条件で行うことが好ましい。このように構成された製造方法によれば、熱硬化性樹脂の硬化温度より低い温度で中空体が膨張するため、プリプレグが硬化する前の、柔らかい未硬化の状態でコア材により加圧され、複雑な形状でも追従できて精度のよい成形品を製造できる。
本発明に係る繊維強化樹脂構造体は、膨張性を有した中空体と、中空体の周囲に、成形された繊維強化樹脂層とを備え、繊維強化樹脂構造体の中空体と繊維強化樹脂層との間には、さらに膨張性を有したコア材が形成されており、繊維強化樹脂層は、中空体及びコア材が膨張した状態で、加熱により硬化した樹脂と強化繊維とを有することを特徴としている。
このように構成された繊維強化樹脂構造体によれば、成形時に中空体が膨張した状態、すなわちコア材が樹脂と強化繊維とを加圧した状態で、樹脂を硬化させ、コア材と繊維強化樹脂層を一体化するような成形方法で製造することができる。このような製造方法により繊維強化樹脂構造体は製造できるのでコア材と繊維強化樹脂層との間、あるいは樹脂と強化繊維との間にボイド、いわゆる空泡が残留し難く、繊維強化樹脂構造体の強度を高めることができる。また、製造時に、中空体を等方性をもって膨張させることが可能であるので、コア材は複雑な形状のキャビティに対しても追従できるので、成形される製品形状は制約を受け難い。さらに、コア材を繊維強化樹脂構造体に設けることにより、コア材が繊維強化樹脂構造体の基本骨格となるため、所望の最終形状に、繊維強化樹脂構造体を成形しやすくなる。
本発明の繊維強化樹脂構造体の製造方法、及び繊維強化樹脂構造体は、コア材の内部に位置する中空体が膨張した状態で、コア材と繊維強化樹脂層が一体化されて繊維強化樹脂構造体が形成されるため、コア材と繊維強化樹脂層との間、あるいは樹脂と強化繊維との間にボイドが残留することが少なく、複雑な最終形状にも追従して高品質の繊維強化樹脂構造体を成形して製造することができる。
以下、本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法と、繊維強化樹脂構造体の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る繊維強化樹脂構造体(FRP構造体)の製造方法で使用される成形型の断面図を含む製造装置の構成図、図2は、図1の成形型を用いて成形された繊維強化樹脂構造体の断面図である。
先ず、本実施形態の繊維強化樹脂構造体をプレス成形で成形する成形型について図1を参照して説明する。成形型1は上型2と下型3とから構成され、下型3のキャビティ4内に上型2の突部が進入してキャビティ内の容積を縮小させることができるように、下型3に対して上型2が移動可能に嵌合されている。そして、上型2と下型3との嵌合部分は、移動中を含めて気密が保たれている。この構成により、キャビティ4内は密閉された空間となっている。そして、キャビティ4の内周面は、製造される繊維強化樹脂構造体の最終形状に沿うような形状に形成されている。
キャビティ4内は成形品の収容スペースであり、本実施形態ではキャビティ内に、中空体を内装するコア材やプリプレグ等を収容する。そして、成形型1は、上型2を嵌合させて収容スペースであるキャビティを密閉し、上型2を下降させてキャビティ4内において後述するプリプレグを加圧したあと、プリプレグを硬化させ樹脂成形品を成形することができるように構成されている。成形型1は、下型3の側面にキャビティ4内に連通するパイプ5が接続され、このパイプには開閉弁6を介して真空ポンプ等の減圧装置7が接続されている。この構成により、成形型1はキャビティ4内の空気を吸引して減圧状態、あるいは真空状態とすることができる構成となっている。なお、開閉弁は必ずしも必要でなく、減圧装置を直接パイプに接続してもよい。
前記のように構成された成形型1を用いて繊維強化樹脂構造体を成形する製造方法について以下に説明する。この実施形態で成形される繊維強化樹脂構造体10は、膨張性を有した中空体11の周囲にコア材12を配置し、芯となるコア材12の周囲に未硬化の樹脂15aと強化繊維15bとを有するプリプレグ15を配置し、コア材12を膨張させてプリプレグ15を加圧したあと硬化させて繊維強化樹脂層16を形成し、コア材12と繊維強化樹脂層16を一体化させて成形したものである。すなわち、コア材12の外周全面をプリプレグ15で被覆し、プリプレグ15を加圧すると共に硬化させて繊維強化樹脂層16をコア材12の外周に形成し、繊維強化樹脂構造体10を成形する。
本実施形態の製造方法では、第1の工程として、膨張性を有した中空体11の周囲に、コア材12を配置する。繊維強化樹脂構造体10の芯となる中空体11と、コア材12について説明する。中空体11は、ナイロン等の軟質な樹脂で形成された風船状のバルーンが使用される。中空体11の内部には大気圧以上の気体、例えば空気が封入されており、しぼんだ状態でなく、膨張した状態でコア材12の内部に内蔵されている。封入される気体としては、空気の他に、窒素、あるいは不活性ガス等の安定したガスが好ましい。
コア材12は、可撓性を有し膨張可能な多孔質の樹脂、例えば発泡樹脂から形成され、その外形は、成形される繊維強化樹脂構造体10の最終形状となるように形成されている。可撓性を有するコア材12は、中空体11と共に膨張(拡大)可能であり、コア材12は、中空体11の周囲に配置される。この実施形態のコア材12は、内部が密閉空間である直方体状の中空体11の周囲に、例えば発泡樹脂層を所定の厚みで形成し、中空体11とコア材12とが一体化されて形成されている。
つぎに、第2の工程として、中空体11の周囲に配置されたコア材12の周囲に、未硬化の樹脂15aと強化繊維15bとを有するプリプレグ15を積層して被覆する。プリプレグ15は、未硬化の熱硬化性樹脂からなる樹脂15aと、カーボンファイバ等の強化繊維15bとを積層した構造となっている。プリプレグ15は強化繊維15bに樹脂15aが予め含浸されたものでも、含浸されず積層されたものでもよい。なお、本実施形態では、強化繊維15bを二層(図1の破線部参照)有しているが、これらの層数は特に限定されるものではない。また、本実施形態では、予めは強化繊維15bと樹脂15aとを積層したプリプレグ15を使用したが、コア材の表面に、強化繊維とフィルム状の樹脂を順次積層させてもよい。
このあと、第3の工程として、プリプレグ15が積層、被覆されたコア材12を、成形型1のキャビティ4内に配置する。そして、キャビティの上部開口に上型2の突部を嵌合させ、矢印xのように下方に加圧する。このように、下型3に上型2を被せて嵌合させ、型締めすることでキャビティ4内は密閉空間となる。
ついで、第4の工程として、成形型1のキャビティ4内において中空体11を膨張させて、成形型1とコア材12の間において未硬化の樹脂15aと、強化繊維15bとを加圧する。具体的には、パイプ5の開閉弁6を開いた状態で減圧装置7を作動させると、キャビティ4内の空気は吸引され、キャビティ4内は減圧状態となる。この結果、コア材12の内部の中空体11は膨張し、コア材12を内側から外方に向けて矢印yのように均等に押圧する。これにより、未硬化の樹脂15aと強化繊維15bとを有するプリプレグ15は、コア材12により下型3の内周面、及び上型2の下端面に均等に押圧され、プリプレグ15を外周に向けて加圧する。なお、中空体11の膨張時には、上型2の位置は固定されているか、上型2を下型3に向かって加圧する。
このあと、第5の工程として、前記の工程で加圧された未硬化の樹脂15aと強化繊維15bとを加熱して硬化させ、コア材12の周囲に繊維強化樹脂層16を成形する。図示していないヒーター等の加熱装置でキャビティ4内を熱硬化温度以上に加熱すると、未硬化の樹脂15aと強化繊維15bはコア材12に密着して一体化されて硬化し、繊維強化樹脂層16が成形される。
このようにしてコア材12の周囲に、中空体11が膨張した状態で繊維強化樹脂層16が一体化され成形されるため、コア材12と繊維強化樹脂層16との間や、樹脂15aと強化繊維15bとの間にボイドが残留せず、コア材12の最終形状を忠実に再現した繊維強化樹脂構造体10が成形される。また、繊維強化樹脂構造体10にはボイドの残留ほとんどなく、たとえ残留していても、中空体11の膨張による均一加圧によりボイドは分散されるので、繊維強化樹脂層16とコア材12とが均一な強度を確保しつつ一体化されるため、繊維強化樹脂構造体10の強度が向上する。
さらに、繊維強化樹脂構造体10は、中空体11を膨張させることによりコア材12を膨張させてプリプレグ15を加圧して成形されるので、縦壁、横壁に略等しい均一の圧力が樹脂15aと強化繊維15bとに加わり、ボイドの残留を防止でき、内部応力を均一に保つことができる。これにより、長期間に亘って、クラック等の発生しない高品質な繊維強化樹脂構造体10を成形することができる。
つぎに、本発明の他の実施形態を図3、図4に基づき詳細に説明する。図3は本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法の他の実施形態で使用される成形型の断面図を含む製造装置の構成図、図4は図3の製造方法で用いられるコア材を分解した状態の斜視図である。なお、この実施形態は前記した実施形態に対し、成形型は内部のキャビティ内を減圧する真空ポンプ等の減圧装置がなく、コア材の内部に位置する中空体を膨張させる加熱装置を備えており、中空体内の気体や膨張剤が加熱され膨張してコア材を拡張して加圧することを特徴としている。また、プリプレグを加圧するコア材が分割され、複数のコア片から構成されていることを特徴としている。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
図3において、本実施形態の成形型1Aは、前記の実施形態の減圧装置の代わりに成形型のキャビティ内を加熱する加熱装置8と、この加熱装置に電力を供給する電源9とを備えている。加熱装置8は、下型3のキャビティ4の下方に水平方向に形成された横穴内に挿入されている。加熱装置8はプリプレグ15を構成する熱硬化性樹脂の樹脂15aの硬化温度以上の加熱ができるように構成されている。加熱装置8が電源9により通電されると、下型3が加熱されて温度が上昇し、キャビティ4内に収容された中空体21が膨張し、コア材22を介してプリプレグ15を加圧するように構成されている。
図4に示すように、繊維強化樹脂構造体20の芯となるコア材22は、複数個に分割されて構成される。すなわち、中空体21は直方体状をしており、中空体21の周囲に配置されたコア材22は中空多面体として直方体に形成され、直方体の6面に沿って配置される6個のコア片22a〜22fに分割されている。各コア片は直方体の各稜で複数に分割され、直方体の1面に相当する長方形を底面とした四角錐台状に形成されており、四角錐台のそれぞれの傾斜片の先端が対接して、組み合わされたコア材22の直方体の各稜を形成するように構成されている。前記の四角錐台の内側の小さい四角形は中空体21と接触し、小さい四角形と対向する外側の大きい四角形にプリプレグ15が被覆される。
この実施形態において、成形型1Aを用いて繊維強化樹脂構造体20を成形するときは、膨張性を有した中空体21の周囲に、分割されたコア片22a〜22fを配置する。そして、分割されたコア片を中空体21の周囲に配置した後、前記の実施形態と同様に、コア材22の周囲に未硬化の樹脂15aと強化繊維15bとを有するプリプレグ15を積層して被覆し、プリプレグ15が積層、被覆されたコア材22を成形型1Aのキャビティ4内に配置し、その後に、成形型1Aのキャビティ4内を加熱装置8で加熱し中空体21を膨張させる。中空体21を膨張させる工程の加熱温度は、プリプレグ15の樹脂15aを構成する熱硬化性樹脂の硬化温度より低く設定され、膨張後は前記硬化温度以上に設定し、プリプレグ15を硬化させて繊維強化樹脂層16を成形する。
この実施形態では、コア材22は複数のコア片から構成され、コア材22を用いて繊維強化樹脂構造体20を成形すると、内部の中空体21の膨張に伴ってコア材22を構成する複数のコア片22a〜22fは、それぞれの面方向と直角の方向に自由に移動することができる。また、複数のコア片は、中空多面体の各稜に沿って分割され、すべてのコア片の外周面は中空多面体の各稜まで延在しており、中空多面体の外周面でプリプレグのすべての領域を均一に加圧することができる。この結果、コア材の最終形状が複雑な場合でも、より忠実に形状を再現することができると共に、ボイドの残留をより少なくすることができ、繊維強化樹脂構造体20の強度をより向上させることができる。
さらに、本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法で使用される中空体、コア材、及びプリプレグの他の実施形態を図5に基づいて説明する。この実施形態は、繊維強化樹脂構造体の芯となる中空体、コア材、及びプリプレグが2個に分割されて構成されることを特徴としている。なお、2個に限られるものでなく、3個以上の複数個から構成されるものでもよいことは勿論である。
図5において、本発明の製造方法で成形される繊維強化樹脂構造体30は、2つの中空体31,31のそれぞれの周囲に、コア材32,32が配置され、中空体を内蔵するコア材を芯として構成される。中空体31はナイロン等のバルーンで構成される。コア材32は発泡樹脂等で構成される。そして、中空体31を内部に備えるコア材32の周囲に、樹脂36と強化繊維37とから構成されるプリプレグ35を積層し、それぞれのコア材32,32の表面をプリプレグ35,35で被覆する。
ついで、プリプレグで被覆したコア材32,32を2つ並べて、図示していない成形型のキャビティ内に配置する。この後の工程は、前記の実施形態と同様であり、成形型のキャビティ内を減圧装置を用いて減圧する、あるいは加熱装置を用いて加熱することで中空体31,31内の気体を膨張させ、未硬化の樹脂36と強化繊維37を有するプリプレグ35を加圧し、プリプレグ35を硬化させて2つのコア材32,32の周囲に繊維強化樹脂層38を成形し、繊維強化樹脂構造体30を成形する。なお、減圧装置と加熱装置を併用して中空体の内部の気体を膨張させてもよい。
このように成形された繊維強化樹脂構造体30では、芯となるコア材32,32は2つ並んでいるため繊維強化樹脂層38の縦壁部38a,38b,38cが3面に形成され、中央に位置する縦壁部38bが補強となって強度が向上する効果を有する。特に、曲げやねじれに強い高剛性の繊維強化樹脂構造体30を成形することができる。
本発明のさらに他の実施形態として、コア材の内部に位置する中空体の密閉空間に予め膨張剤を封入してもよい。この膨張剤は、少なくとも加熱により膨張するものであり、一例として重曹が好適である。膨張剤は中空体の内部に気体と共に封入するようにしてもよい。さらに、膨張剤として、中空体の密閉空間に、加熱すると昇華する充填剤等を封入し、中空体を膨張させるように構成してもよい。
この実施形態では、前記の膨張剤が封入された中空体を用い、中空体を膨張させて未硬化の樹脂と強化繊維の加圧を行う加圧工程において、キャビティ内を加熱して膨張剤を膨張させて行うものである。中空体の密閉空間に予め膨張剤を封入し、加熱装置を作動させて中空体を加熱すると、中空体内部で膨張剤が膨張し、キャビティ内で中空体が膨張する。これにより、成形型とコア材との間において、プリプレグの未硬化の樹脂と強化繊維をコア材が加圧する。そして、加圧された未硬化の樹脂と強化繊維とを加熱してコア材の周囲に繊維強化樹脂層を成形することができる。この実施形態では、気体で中空体を膨張させず、固体あるいは粉体の膨張剤を使用できるため保守管理が容易となり、例えば気体と膨張剤を併用することで膨張圧力を高めて複雑な最終形状でも、より正確に成形することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、プリプレグを構成する強化繊維としてカーボンファイバの例を示したが、これに限られるものでなく、グラスファイバやセラミックファイバ等の他の強化繊維を用いることもできる。
また、プリプレグを構成する強化繊維は、織布、不織布や、繊維がランダムに配列されたもの等、適宜のものを用いることができる。中空体として直方体状の形状のものを示したが、球状等、適宜の形状のものを用いることができ、コア材を加圧できれば、その形状は問われない。
前記した第1の実施形態では、成形型はキャビティ内を減圧する真空ポンプ等の減圧装置を備えているが、前記した第2の実施形態で示される加熱装置を併用し、キャビティ内を減圧すると共に、加熱装置で中空体を加熱して中空体を膨張させるように構成してもよい。このように、減圧装置と加熱装置の両方を備えるように構成することで、中空体の膨張圧力を高めることができ、直角のコーナー部や複雑な最終形状でも正確に成形することができる。
本発明の繊維強化樹脂構造体は最終形状が複雑な場合でも精度良く成形することができ、ボイドの少ない品質の高い成形品とすることができ、本発明の活用例として、自動車や二輪車等の各種の精密成形品の用途のほか、電気部品や玩具等の各種の成形品にも適用できる。
本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法の一実施形態で使用される成形型の断面図を含む製造装置の構成図。 図1の成形型を用いて成形された繊維強化樹脂構造体の断面図。 本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法の他の実施形態で使用される成形型の断面図を含む製造装置の構成図。 図3の繊維強化樹脂構造体の製造方法で用いられるコア材を分解した状態の斜視図。 本発明に係る繊維強化樹脂構造体の製造方法で使用される中空体、コア材、及びプリプレグの他の実施形態の断面図。
符号の説明
1,1A:成形型、2:上型、3:下型、4:キャビティ、7:減圧装置、8:加熱装置、10,20,30:繊維強化樹脂構造体(FRP構造体)、11,21,31:中空体、12,22,32:コア材、15,35:プリプレグ、15a,36:樹脂、15b,37:強化繊維、16,38:繊維強化樹脂層、22a〜22f:コア材の複数のコア片

Claims (7)

  1. 膨張性を有した中空体の周囲にコア材を配置する工程と、
    前記配置されたコア材の周囲に未硬化の樹脂と強化繊維とを有するプリプレグを積層して被覆する工程と、
    前記プリプレグが積層、被覆されたコア材を成形型のキャビティ内に配置する工程と、
    前記成形型のキャビティ内において前記中空体を膨張させて、成形型と前記コア材の間において前記未硬化の樹脂及び前記強化繊維を加圧する工程と、
    前記加圧された前記未硬化の樹脂及び前記強化繊維を加熱して硬化させ前記コア材の周囲に繊維強化樹脂を成形する工程と、
    を少なくとも含むことを特徴とする繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  2. 前記コア材を配置する工程において、前記コア材として、複数のコア片から構成されたコア材を用いることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  3. 前記コア材として、前記中空体の周囲に前記コア材を配置したときに中空多面体が形成されるコア材を用い、該コア材を構成する前記複数のコア片の各コア片として、前記中空多面体の各稜に沿って複数に分割されるコア片を用いることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  4. 前記膨張性を有した中空体として、内部に気体が密封された中空体を用い、前記加圧工程において、前記未硬化の樹脂及び前記強化繊維の加圧を、前記キャビティ内を減圧及び/又は加熱することにより行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  5. 前記膨張性を有した中空体として、内部に、少なくとも加熱により膨張する膨張剤が封入された中空体を用い、前記加圧工程において、前記未硬化の樹脂及び前記強化繊維の加圧を、前記キャビティ内を前記膨張剤が膨張可能な温度領域まで加熱することにより行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  6. 前記未硬化の樹脂は、熱硬化性樹脂からなり、前記中空体の前記膨張を前記熱硬化性樹脂の硬化温度より低い加熱温度条件で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
  7. 膨張性を有した中空体と、該中空体の周囲に、成形された繊維強化樹脂層とを備える繊維強化樹脂構造体であって、
    前記繊維強化樹脂構造体の前記中空体と前記繊維強化樹脂層との間には、さらに膨張性を有したコア材が形成されており、
    前記繊維強化樹脂層は、前記中空体及び前記コア材が膨張した状態で、加熱により硬化した樹脂と強化繊維とを有することを特徴とする繊維強化樹脂構造体。
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