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JP2008232716A - 磁性粒子及びその製造方法 - Google Patents

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JP2008232716A JP2007070509A JP2007070509A JP2008232716A JP 2008232716 A JP2008232716 A JP 2008232716A JP 2007070509 A JP2007070509 A JP 2007070509A JP 2007070509 A JP2007070509 A JP 2007070509A JP 2008232716 A JP2008232716 A JP 2008232716A
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Yoshinori Ogawa
美紀 小川
Kazumichi Nakahama
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Abstract

【課題】検体液中に存在する標的物質を検出するセンサの、反応効率、感度、精度の向上を可能とする磁性粒子、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による磁性粒子は基体表面近傍に位置する磁性粒子の有無および数を検知することにより検体液中の標的物質の有無および濃度を検出する標的物質検出に用いる磁性粒子であって、刺激応答性高分子が備えられる表面領域と、検体液中の標的物質を認識し捕捉する捕捉体成分を備える表面領域と、を有することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、検体液中の標的物質の検出に使用する磁性粒子及びその製造方法に関するものである。本発明は、特に、生体由来の物質又はその類似物質の特異的な分子認識能を利用した、いわゆるバイオセンサーに好適に応用できる。
バイオセンサーは生体や生体分子の持つ、優れた分子認識能を活用した計測デバイスである。生体内には、互いに親和性のある物質の組み合わせとして、例えば酵素−基質、抗原−抗体、DNA−DNA等がある。バイオセンサーはこれらの組み合わせの一方を基体に固定または担持し、用いることによって、もう一方の物質を選択的に計測できるという原理を利用している。近年では、バイオセンサーは医療分野のみならず、環境や食料品等への幅広い応用が期待され、その使用領域を広げるためにも、あらゆる場所に設置あるいは持ち運び可能な小型、軽量、高感度、高効率なバイオセンサーが望まれている。
現在、このような生体分子間相互作用を検出する方法のひとつとして、磁性粒子を利用した磁気検出法の研究が盛んに進められている。
図1に従来の磁性粒子を用いた固相分析法の一例を示す。図1に示される方法では、まず、基体表面に標的物質の一方の領域(抗原抗体反応の場合はエピトープと呼ばれる)を特異的に認識し捕捉することができる第一の捕捉体成分(抗原抗体反応の場合は一次抗体と呼ばれる)を固定する。次に、標的物質を含む検体液を接触せしめる。この操作により標的物質が第一の捕捉体成分に特異的に捕捉される。続いて、第一の捕捉体成分により特異的に捕捉された標的物質の他方の領域を特異的に認識し、捕捉することができる第二の捕捉体成分(抗原抗体反応の場合は二次抗体と呼ばれる)を有する磁性粒子を液中に投入する。この操作により、第二の捕捉体成分は、基体表面に固定化された第一の捕捉体成分に特異的に捕捉された標的物質に捕捉され、結果的に図1のように、標的物質を介して磁性粒子が基体表面に固定化される。
また、あらかじめ標的物質を含む検体液中に第二の捕捉体成分を有する磁性粒子を加え、“標的物質−第二の捕捉体成分”複合体を形成させる方法もある。その複合体を基体上に固定化された第一の捕捉体成分と接触させることによって、結果的に図1のように標的物質を介して磁性粒子を基体表面に固定化することも可能である。
検出素子表面に固定化された磁性粒子の数を何らかの手法で測定する事で、目的とする標的物質の数、濃度を計算することが可能となる。このような磁気検出の手法には、SQUID(超電導量子干渉計)により検出する方法、半導体ホール素子により磁場を検知する方法、磁気抵抗効果素子を用いて磁気信号を検知する方法等が提案されている。
さらに、上述のような磁性粒子を使用した固相反応(基体上の反応)に対して、反応の高速化を目的としている。例えば特許文献1では、磁性体を貼付した生体高分子に磁気吸引力を作用させ、溶液中のターゲット生体分子と基板上のプローブ生体分子との結合を行う発明が開示されている。
一方、刺激応答性高分子を有する小粒径の磁性微粒子を使い、刺激により凝集させて回収する方法が公知である。例えば特許文献2では、刺激応答性高分子と磁性粒子の剥離を減少させることを目的とし、磁性粒子と刺激応答性高分子とが、多価アルコールまたは多価アルコール誘導体を介して固定されることを特徴とする発明が開示されている。
特開2003−159057号公報 特開2005−82538号公報
特許文献1のように、磁気吸引力を利用して磁性粒子を基体表面に近づけて反応の高速化を図るためには、磁性粒子は大きい方が好ましい。しかし、上述のような磁気検出の手法を利用したバイオセンサー、特に、検体液中であらかじめ“標的物質−第二の捕捉体成分”複合体を形成させる方法を用いる場合は、検体液中での複合体形成反応の効率を上げるためには、磁性粒子は小さい方がよい。
特許文献2に開示されている刺激応答性高分子を使用すれば、反応時には小粒径の磁性粒子を用い、磁気吸引時には凝集させた大粒径の磁性粒子とすることができる。しかしながら、凝集数を制御することができないため、測定値にバラツキが発生する可能性がある。また、プローブ生体分子が刺激応答性高分子を介して磁性微粒子に固定されているため、凝集時にプローブが刺激応答性高分子内に隠れてしまい反応効率が下がるという課題があった。
本発明は、基体表面近傍に位置する磁性粒子の有無および数を検知することにより検体液中の標的物質の有無および濃度を検出する標的物質検出に用いる磁性粒子であって、刺激応答性高分子が備えられる表面領域と、該検体液中の標的物質を認識し捕捉する捕捉体制分を備える表面領域と、を有することを特徴とする。前記刺激応答性高分子は、熱応答性高分子であることが好ましい。さらには、前記刺激応答性高分子がアクリルアミド誘導体を含むことが好ましい。また、前記刺激応答性高分子が磁性粒子表面の一部の領域に形成された刺激応答性高分子形成層を介して備えられていることが好ましく、前記刺激応答性高分子形成層は金属を含むことが好ましい。また、前記捕捉体成分が前記磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に形成された捕捉体成分形成層を介して備えられていることが好ましく、特に前記捕捉体成分形成層が活性エステル基を有することが好ましい。
また、本発明は、基体表面近傍に位置する磁性粒子の有無および数を検知することにより検体液中の標的物質の有無および濃度を検出する標的物質検出に用いる磁性粒子の製造方法であって、基板上に磁性粒子を担持する工程と、前記磁性粒子の表面の一部に刺激応答性高分子形成層を形成する工程と、前記刺激応答性高分子形成層を介して磁性粒子に刺激応答性高分子を固定化する工程と、前記基板から磁性粒子を分離する工程と、前記磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分を備える工程とを含むことを特徴とする。また、前記捕捉体成分を備える工程が、前記磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分形成層を形成し、前記捕捉体成分形成層を介して磁性微粒子に捕捉体成分を固定化することを特徴とする。尚、刺激応答性高分子形成層を形成する工程が、磁性粒子の表面の一部に金属を蒸着することであることが好ましい。
本発明により、検体液中に存在する標的物質を検出するセンサの反応効率、感度、精度の向上を可能とする磁性粒子、及びその製造方法を提供することができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について、詳細に説明する。
本発明による磁性粒子は、基体表面近傍に位置する磁性粒子の有無および数を検知することにより検体液中の標的物質の有無および濃度を検出する標的物質検出に用いる磁性粒子であって、刺激応答性高分子が備えられる表面領域と、前記検体液中の標的物質を認識して捕捉する捕捉体成分を備える表面領域と、を有することを特徴とする。
また、本発明による磁性粒子の製造方法は、検体液中の標的物質の有無、濃度を検出する標的物質検出に用いる磁性粒子の製造方法であって、基板上に磁性粒子を担持する工程と、前記磁性粒子の表面の一部に刺激応答性高分子形成層を形成する工程と、前記刺激応答性高分子形成層を介して磁性粒子に刺激応答性高分子を固定化する工程と、前記基板から磁性粒子を分離する工程と、前記磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分を備える工程と、を含むことを特徴とする。
本発明は、磁性粒子の表面の一部の領域に刺激応答性高分子を固定化することで、凝集数が制御可能となり、センサに使用する際、精度の向上を可能とするものである。また、刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分を備えることで、凝集時にも捕捉体成分により捕捉された生体分子が外側に配置されるため、二次反応時の反応効率が高く、感度も高くすることが可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(磁性粒子)
本発明に用いる磁性粒子は、捕捉体成分を担持し、磁力により吸引可能なものであれば、通常用いられる常磁性、超常磁性を示す磁性微粒子、磁性ビーズ等如何なるものも用いる事ができる。例えば、フェライトは、マグネタイト(Fe34)、マグヘマイト(γ−Fe23)、及びこれらのFeの一部をLi、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Ta、Wの少なくとも一つで置換した複合体から選択することが可能である。
また、このような金属酸化物系の微粒子とスチレン系、デキストラン系、アクリルアミド系等のポリマーとの混合物、およびそれらのポリマーを微粒子に被覆した被覆物もまた、磁性粒子として一般的に利用される。すなわち、これらの混合物および被覆物もまた本発明に利用可能である。
上記磁性粒子の大きさは、検出素子の形状、大きさまたは用途によって適宜選択することが可能である。検体液中で分散性を維持し、検体液中の一次反応の反応効率を上げるという点から、上記磁性粒子の大きさは1nmから1000nm、より好ましくは10nmから500nmである。
(刺激応答性高分子)
一般的に、刺激応答性高分子とは、光照射、電場印加、温度変化、pH変化、化学物質の添加など、刺激の付与(環境変化)に応じて形状や物性を著しく変えるという性質を持った高分子を示す。中でも、本発明における刺激応答性高分子は、検体液中で分散している状態では外部磁力による吸引が困難な磁性粒子に対して、特定の刺激を与えることで磁性粒子どうしを凝集させ、吸引可能とするものである。刺激には、熱、pH、塩濃度、光、電気等が挙げられるが、温度変化によって、高分子が脱水和するまたは高分子間の相互作用が変化することにより、凝集、分散を制御することが可能である熱応答性高分子は本発明に好適に用いることが可能である。熱応答性高分子とは、例えば、ある温度以下では水に溶解し、その温度以上になると不溶となる可逆的な相転移を起こすものである。つまり、上限臨界共溶温度または下限臨界共溶温度を有する高分子であり、これらの温度を境に、磁性粒子の凝集および分散を制御することが可能である。なお、上限臨界共溶温度(UCST;upper critical solition temperature)とは、それ以上の温度では溶解性を示し、それ以下の温度では難溶性となる境界温度である。また、下限臨界共溶温度(LCST;lower critical solition temperature)とは、それ以下の温度では溶解性を示し、それ以上の温度では難溶性となる境界温度である。
下限臨界溶解温度を有するポリマーとしては、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が利用できる。また、これらの重合体及びこれらのうち2種以上の単量体からなる共重合体も利用できる。
また、上限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N'−メタクロイルトリメチレンアミド、アクロイルグリシンアミド、アクロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクロイルニペコタミド及びアクロイルメチルウラシル等が利用できる。また、これらの重合体及びこれらのうち2種以上の単量体からなる共重合体も利用できる。
このような高分子としては、N置換アクリルアミド誘導体の重合体であるpoly(N置換アクリルアミド)を用いることが好ましく、例えばPoly−N−イソプロピルアクリルアミド(poly−NIPAM)が好ましく用いられる。poly−NIPAMの下限臨界共溶温度(LCST)は32℃付近にあり、生体環境に近い温度で分散、凝集を制御することが可能であり、後に説明する捕捉体成分の活性を維持することが可能となる。但し、これ以外の物質であっても同様の効果が期待できる範囲において適用可能である。
図2は本発明による磁性粒子を模式的に示したものであり、刺激応答性高分子は例えば磁性粒子の表面の一部に備えられる。このように刺激応答性高分子を備えると、例えば、図3のように凝集時に磁性粒子の凝集数を実質的に一定に制御することが可能となる。磁性粒子の形状および大きさに対して、刺激応答性高分子を備える領域の形状および大きさ等を適宜制御することで、凝集数の増減を制御することも可能である。
刺激応答性高分子は、図1(a)および(c)のように、磁性粒子の表面の捕捉体成分が備えられていない領域に直接固定化されてもよい。
(刺激応答性高分子形成層)
刺激応答性高分子形成層とは、後に刺激応答性高分子を固定化する際の足場となる層であり、磁性粒子表面に形成される。よって、刺激応答性高分子は、図2(b)および(d)のように磁性粒子表面の一部の領域に形成された刺激応答性高分子形成層を介して磁性粒子表面に備えられていてもよい。このような構成は、後に説明する製造方法においても簡便であり、また、刺激応答性高分子が磁性粒子から剥離しにくくなることから、耐久性の観点からも好ましい。同様に、製法上及び耐久性の観点から、刺激応答性高分子形成層は金属を含むことが好ましい。特に、金属として金、銀、銅等を用いる場合は、チオール基やアミノ基を介して刺激応答性高分子を刺激応答性形成層に固定化することが可能となり、簡便である。
(捕捉体成分)
本発明において使用する捕捉体成分は、検体液中の標的物質の選択に係わる物質であり、例えば、該標的物質と選択的に直接反応する物質(いわゆるレセプター)である。本発明に使用される捕捉体成分には、抗体、抗原、遺伝子、糖鎖、酵素、触媒、呈色試薬などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の検出対象は、直接捕捉体成分が反応する標的物質である必要は無く、間接的に測定できるものでもよい。例えば、検出対象に特異的に存在する標的物質を検出することで測定が可能となる。つまり、検出対象は生体物質に限定されず、またそのサイズも限定されない。好ましくは、標的物質は、糖、蛋白質、アミノ酸、抗体、抗原や疑似抗原、ビタミン、遺伝子などの生物に含有される生体物質、及びその関連物質や人工的に合成された擬似生体物質である。
本発明において、図2のように、磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分が備えられる。上記領域に捕捉体成分を備えることによって、例えば図3のように、凝集時にも捕捉体成分を外側に配置することが可能となる。図4のように、磁性粒子表面の捕捉体成分と標的物質の反応(一次反応)を行った後に、凝集させ、磁力で基体表面に吸引し、基体表面の第二の捕捉体成分との反応(二次反応)を行えば、この二次反応時の反応効率そして感度も高くすることが可能となる。
捕捉体成分は、図1(a)および(b)のように、磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に直接固定化されてもよい。
(捕捉体成分形成層)
捕捉体成分形成層とは、後に捕捉体成分を固定化する際の足場となる層であり、磁性粒子表面に形成される。よって、捕捉体成分は、図1(c)および(d)のように、磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に形成された捕捉体成分形成層を介して磁性粒子表面に備えられていてもよい。このような構成は、捕捉体成分の固定化が容易であり、耐久性の観点からも好ましい。捕捉体成分形成層は、捕捉体成分が有する官能基と結合可能な官能基を有するものであることが好ましい。例えば、捕捉体成分が抗体等である場合は、活性エステル基を有するポリマーを捕捉体成分形成層に好適に用いることができる。
(製造方法)
次に、本発明による磁性粒子の製造方法について説明する。例えば、以下の工程(A)から工程(E)を行うことにより、磁性粒子を作製することが出来る。
<工程(A):基板上に磁性粒子を担持する工程>
本工程では基板上に磁性粒子を担持する。図5(a)のように単粒子膜状に担持することが好ましい。例えば、表面を疎水処理した磁性粒子を有機溶媒に分散させ、この分散液を水面に展開し、水面の浮遊物を基板上に掬い上げ、乾燥することで、基板上に磁性粒子からなる単粒子膜を形成することが可能である。基板は、このように磁性粒子を担持可能であれば、ガラス基板、シリコン基板等如何なるものも使用可能である。
<工程(B):磁性粒子の表面の一部に刺激応答性高分子形成層を形成する工程>
本工程では、基板上に単粒子膜状に担持した磁性粒子上面に、選択的に、刺激応答性高分子形成層となる材料を付加することで、図5(b)のように、磁性粒子の表面の一部に刺激応答性高分子形成層を形成する。例えば、基板上面から金属蒸着を行うことで、磁性粒子表面の一部に金属層を形成することが可能である。その他、スパッタリング、電着、無電解めっき、転写による材料塗布等、磁性粒子の表面の一部に刺激応答性高分子形成層を形成することができるのであれば、方法はこれに限らない。
<工程(C):刺激応答性高分子形成層を介して磁性粒子に刺激応答性高分子を固定化する工程>
本工程では、図5(c)のように刺激応答性高分子形成層上に選択的に刺激応答性高分子を固定化する。例えば、刺激応答性高分子形成層が金、銀、銅等を含む場合は、チオール基、ジスルフィド基やアミノ基を有する刺激応答性高分子を付与すれば、刺激応答性高分子形成層上に選択的に刺激応答性高分子を固定化することが可能である。また、刺激応答性高分子形成層が酸化ケイ素や酸化チタン等を含む場合は、シラノール基を有する刺激応答性高分子を用いればよい。なお、前記シラノール基は、刺激応答性高分子が有するハロゲン基やアルコキシ基より、反応中に生成されるものでもよい。また、刺激応答性高分子形成層が酸化アルミニウム等金属酸化物を含む場合は、カルボキシル基を有する刺激応答性高分子を用いてもよい。
<工程(D):基板から磁性粒子を分離する工程>
本工程では、図5(d)のように基板から磁性粒子を分離する。例えば、溶液に基板ごと磁性粒子を浸漬し、超音波処理を行うことで、容易に分離することが可能である。
<工程(E):磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分を備える工程>
捕捉体成分は、例えば、共有結合、イオン結合、吸着などによって、磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に備えられる。捕捉体を磁性粒子表面に備えるための方法は、捕捉体がその機能を保持して良好に備えられる方法であれば特に限定されず、磁性粒子表面に直接固定化されてもよい。また、磁性粒子表面にいったん図5(e)のように捕捉体成分形成層を形成し、この捕捉体成分形成層を介して、捕捉体成分が固定化されてもよい。前述のように、捕捉体成分形成層は捕捉体成分が有する官能基と結合可能な官能基を有するものであることが好ましく、活性エステル基を有するスチレン系ポリマー等が好適に用いられる。そして、このようなポリマーは吸着反応により容易に固定化することが可能である。例えば、透析法を利用することが可能である。まず、前記ポリマーが可溶である溶媒に、前記ポリマーを溶解し、さらに磁性粒子を分散させる。透析法により、前記ポリマーが不溶または難溶である溶媒に交換することで、ポリマーを吸着させて捕捉体成分を形成することが可能である。また、捕捉体成分として抗体を使用する場合は、活性エステル基を有するポリマーを捕捉体成分形成層として磁性粒子に固定化すれば、後に抗体のアミノ基を反応させ、容易に抗体を固定化することが可能となる。
以上の工程(A)から工程(E)を経ることで、本発明による磁性粒子を作製することが可能となる。
(検出方式)
本発明の磁性粒子を用いた検出方式は、基体表面近傍に位置する磁性粒子の有無、数を検知する事により、検体液中の標的物質の有無および濃度を検出する方法であれば、如何なる方法でもよい。中でも、磁界効果を利用する方式が好ましく、特に、磁気抵抗効果素子、ホール効果素子、超電導量子干渉計素子を好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有する磁性粒子が得られる範囲で自由に変えることができる。
(実施例1)
本実施例は、アクリルアミド誘導体を含む温度応答性高分子を表面の一部に備え、前記温度応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分として、前立腺特異抗原(PSA)を捕捉する二次抗体を備える磁性粒子を作製する例である。
(温度応答性高分子の合成)
N−イソプロピルアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、トルエンを4つ口フラスコに秤量し、窒素バブリングにより4つ口フラスコ内の酸素を窒素に置換する。次に、4つ口フラスコ内にアゾビスイソブチルニトリルのトルエン溶液を注入し、60℃で4時間重合する。重合終了後、4つ口フラスコ内の溶液を大量のジエチルエーテルに添加し、濾過精製によって重合生成物を精製する。
減圧乾燥させた重合生成物を蒸留水に溶解させ、ジチオトレイトールとNaOH水溶液を加えてpH9に調製した後、60℃で24時間反応させることでポリマー1を合成する。ポリマー1はN−イソプロピルアクリルアミド部位由来の温度応答性と、ジチオトレイトール由来のチオール基を有することを特徴とする。蒸留水を用いた透析によりポリマー1を精製した後、凍結乾燥して保存する。
(活性エステル基を有するポリマーの合成)
スチレン、アクリル酸、N−ヒドロキシスクシンイミドメタクリレート、トルエンを4つ口フラスコに秤量し、窒素バブリングにより4つ口フラスコ内の酸素を窒素に置換する。次に、4つ口フラスコ内にアゾビスイソブチルニトリルのトルエン溶液を注入し、60℃で4時間重合してポリマー2を合成する。重合終了後、4つ口フラスコ内の溶液を大量のメタノールに添加し、濾過精製によってポリマー2を精製する。ポリマー2はN−ヒドロキシスクシンイミドメタクリレート由来の活性エステル基を有することを特徴とする。
(磁性粒子の作製)
蒸留水にマグネタイト1(平均粒子径90nm)とオレイン酸を加え、70℃で1時間、110℃で1時間、超音波処理しながら攪拌してスラリーを形成させる。次に、スラリーの固形分を濾過精製した後、減圧乾燥することで疎水化マグネタイトの粉末を得る。疎水化マグネタイトをマグネタイト2とする。
マグネタイト2をクロロホルムに分散させて分散液1とする。分散液1を水面に展開して30分間静置した後、水面の浮遊物をガラス基板に掬い上げ、次いで、減圧乾燥することによってガラス基板上にマグネタイト2からなる単粒子膜を形成させる。
Au蒸着により単粒子膜の表面にAu超微粒子を堆積させて刺激応答性高分子形成層を形成する。次いで刺激応答性高分子形成層が形成された単粒子膜を、ポリマー1を溶解させた水溶液に浸漬し、刺激応答性高分子形成層表面にポリマー1を結合させ、粒子膜2を形成させる。
ポリマー2を溶解させたトルエン溶液に、減圧乾燥により乾燥させた粒子膜2を浸漬し、超音波処理によって粒子膜2を個々の粒子として分散させて分散液2とする。分散液2に分散させた粒子をマグネタイト3とする。次いで透析法により分散液2のトルエンをメタノールに交換し、その過程においてポリマー2をマグネタイト3に吸着させてポリマー2からなる捕捉体成分形成層を有するマグネタイト4を形成させる。
マグネタイト4は、粒子半球にポリマー1由来の温度応答性部位を有し、もう一方の半球にポリマー2由来の活性エステル基を有する。
次に、前記活性エステル基と抗体のアミノ基を反応させ、捕捉体成分としてPSAを捕捉する二次抗体を固定化する。
以上の操作により、温度応答性高分子と、PSAを捕捉する二次抗体を備えたマグネタイトからなる磁性粒子を作製することができる。このようにして作製される磁性粒子は、小粒径であり、水中で優れた分散性を有していることが確認できる。
(実施例2)
本実施例は、実施例1で作製した磁性粒子を使用してPSAの検出を行う例である。バイオセンサーの検出方式として、磁気抵抗効果素子を使用する。
(検出素子への一次抗体の固定)
バイオセンサーの検出部上に形成されるAu膜の表面に一次抗体を担持するために、Au膜の表面は、まず親水化処理が施され、アミノシランカップリング剤処理する。更に、一次抗体を固定化するためのグルタルアルデヒド等架橋剤を用いて、前記アミノシランカップリング剤由来のアミノ基とペプチド鎖間を化学結合させてPSAを捕捉する一次抗体をバイオセンサーの検出部に固定する。
上述のバイオセンサーと実施例1において作製される磁性粒子とを用い、以下の操作により、前立腺癌のマーカーとして知られているPSAの検出を行うことができる。
抗原(標的物質)であるPSAを含むリン酸緩衝液に磁性粒子を混合し、一次反応を行う。反応温度は、実施例1で作製する温度応答性高分子の下限臨界共溶温度以下の30℃である。次に、溶液の温度を下限臨界共溶温度以上の35℃に上げて磁性粒子を凝集させる。次に、溶液に上記バイオセンサーの検出部を浸し、続いて外部磁石により磁力を印加して、バイオセンサー検出部表面に凝集した磁性粒子を引き寄せ、検出部表面に備えられた一次抗体と二次反応を行う。未反応のPSAおよび磁性粒子をリン酸緩衝液で洗浄する。
上記操作によって、抗原が一次抗体、二次抗体により捕捉され、結果として図4に示すように凝集した磁性粒子がバイオセンサーの検出領域に固定される。検体液中に抗原が存在しない場合には、磁性粒子はバイオセンサーの検出部上に固定されないので、磁性粒子の有無を検出することによって抗原の検出が可能である。また、固定された磁性粒子の数を検出することによって、検体液中に含まれる抗原の量を間接的に知ることも可能である。
本実施例のように、分散性の高い小粒径の磁性粒子を用いることで、一次反応を短時間で行うことが可能となる。そして、磁性粒子表面に刺激応答性高分子を備え、刺激により凝集させることで、外部磁石によるセンサ素子表面への吸引も可能となり、二次反応を短時間化することも可能である。さらには、磁性粒子表面の一部の領域に刺激応答性高分子を固定化することで、凝集数を実質的に一定に制御することが可能となり、バイオセンサーにおける測定値のバラツキを低減することが可能となる。また、刺激応答性高分子が備えられていない領域に二次抗体を備えることで、凝集時にも二次抗体及び、二次抗体に捕捉された抗原が外側に配置されるため、二次反応時の反応効率が高く、感度も高くすることが可能である。
従来の磁性粒子を用いた固相分析法の一例を示す模式図である。 本発明による磁性粒子を示す模式図である。 本発明により磁性粒子の凝集の様子を示す模式図である。 本発明による磁性粒子を用いた標的物質検出を示す模式図である。 本発明における磁性粒子の製造工程を示す模式図である。

Claims (10)

  1. 基体表面近傍に位置する磁性粒子の有無および数を検知することにより検体液中の標的物質の有無および濃度を検出する標的物質検出に用いる磁性粒子であって、
    刺激応答性高分子が備えられる表面領域と、
    該検体液中の標的物質を認識して捕捉する捕捉体成分を備える表面領域と、
    を有することを特徴とする磁性粒子。
  2. 前記刺激応答性高分子が熱応答性高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の磁性粒子。
  3. 前記刺激応答性高分子がアクリルアミド誘導体を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の磁性粒子。
  4. 前記刺激応答性高分子が、前記磁性粒子表面に形成された刺激応答性高分子形成層を介して備えられていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性粒子。
  5. 前記刺激応答性高分子形成層が金属を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の磁性粒子。
  6. 前記捕捉体成分が、前記磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に形成された捕捉体成分形成層を介して備えられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の磁性粒子。
  7. 前記捕捉体成分形成層が活性エステル基を有することを特徴とする請求項6に記載の磁性粒子。
  8. 基体表面近傍に位置する磁性粒子の有無および数を検知することにより検体液中の標的物質の有無および濃度を検出する標的物質検出に用いる磁性粒子の製造方法であって、
    基板上に磁性粒子を担持する工程と、
    前記磁性粒子の表面の一部に刺激応答性高分子形成層を形成する工程と、
    前記刺激応答性高分子形成層を介して磁性粒子に刺激応答性高分子を固定化する工程と、
    前記基板から磁性粒子を分離する工程と、
    前記磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分を備える工程と、
    を含むことを特徴とする磁性粒子の製造方法。
  9. 前記捕捉体成分を備える工程が、前記磁性粒子の表面の刺激応答性高分子が備えられていない領域に捕捉体成分形成層を形成し、前記捕捉体成分形成層を介して磁性微粒子に捕捉体成分を固定化することを特徴とする請求項8に記載の磁性粒子の製造方法。
  10. 前記刺激応答性高分子形成層を形成する工程が、磁性粒子の表面の一部に金属を蒸着することであることを特徴とする、請求項8または9に記載の磁性粒子の製造方法。
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