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JP2008208470A - 紙又は板紙 - Google Patents

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JP2008208470A JP2007043356A JP2007043356A JP2008208470A JP 2008208470 A JP2008208470 A JP 2008208470A JP 2007043356 A JP2007043356 A JP 2007043356A JP 2007043356 A JP2007043356 A JP 2007043356A JP 2008208470 A JP2008208470 A JP 2008208470A
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Abstract

【課題】濃色であっても、摩擦による色落ちがなく、かつ防滑性にも優れる染料及び/又は顔料によって色付けされた紙又は板紙を提供する。
【解決手段】染料及び/又は顔料によって色付けされた紙又は板紙において、基紙の少なくとも片面に、少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含む塗工液を塗布する。
【選択図】なし

Description

本発明は、染料及び/又は顔料によって色付けされた紙又は板紙に関し、特に濃色でありながら色落ちし難く、さらに防滑性にも優れる紙又は板紙に関する。
従来から、ポスター、チラシ、包装紙、包装用箱の美粧性を高めて目立つようにするため、染料及び/又は顔料で濃く色付けされた紙又は板紙が用いられることがある。色調が濃い紙又は板紙ほど、加工時、輸送時、保管時等に、紙又は板紙と人の衣服が擦れたり、あるいは紙又は板紙同士が擦れることなどによる摩擦で、紙又は板紙が色落ちし、色素が衣服に付着したり、他の紙に付着するという問題があった。
そこで、このような色落ちを防止するために、OPニスを印刷して、紙又は板紙の染色堅牢度(耐摩耗性)を向上させる方法が知られている。
ところが、このOPニスを印刷する方法では、紙又は板紙の表面に被膜を作るため、表面が固化してしまい、紙の風合いを損ねてしまうという問題があった。また、紙又は板紙を折り曲げて加工する際に罫線割れや表面割れが発生するという問題もあった。
また、繊維製品の染色堅牢度を向上させる方法として、例えば特許文献1に示されるように、メチルハイドロジエンポリシロキサン乳化物を表面に付与した後、低温プラズマ処理する方法が知られている。なお、以下では、単に「繊維」というときは、衣料品等に用いる繊維を指し、紙・パルプで用いる繊維を言う場合は「パルプ繊維」などと言う。
しかし、この方法は、繊維製品等において採用できる方法であって、低温プラズマ処理が必要であったり、生産速度の速い紙又は板紙の製造工程には実用上適用できないという問題がある。
また、パルプ繊維からなるシート状物において、水に対して堅牢な着色を得る方法として、例えば特許文献2に示されるように、ポリアミドアミン・エポキシ系湿潤強力剤を内添して抄紙したシート表面にカチオン性直接染料を塗布し、乾燥した後、タンニン酸の水溶液を塗布し、熱風乾燥して定着させる方法も知られている。しかしながら、この方法は、耐水堅牢度を向上させるための方法であって、摩擦により、色素が衣服に付着したり、他の紙又は板紙に付着するという問題を解決できるものではなかった。
そこで、本発明者らは、上記従来の問題点に鑑み、特願2005−321054で、濃色でありながら、摩擦による色落ちがなく、衣類や他の紙を汚すことがない紙又は板紙を提案した。
この技術により、濃色でありながら、摩擦による色落ちがない紙又は板紙を得ることができたが、この品質を維持しながら、紙又は板紙の表面の防滑性(滑り難さ)を高めたいとの更なる要望がある。
すなわち、近年、各種包装ラインの自動化、輸送ラインのパレット化などによる物流の効率化が進んでいるが、その際、紙容器、段ボールケースなどが滑ると荷崩れが発生し、非常に危険であると共に、運送の効率低下などの原因となっている。
防滑性を付与する方法としては、粘着性を有するタイプの防滑剤を塗工し、その粘着力によって滑りを防止する方法、あるいは非粘着タイプの防滑剤で紙の表面に凹凸のある皮膜を形成させて、この凹凸が物理的にかみ合って滑り防止を行う方法が代表的である。なお、この他にも、紙容器、段ボールケースなどに防滑性を付与する方法として、従来より、抄紙時に防滑剤を塗布、塗工する方法、印刷時に防滑剤を塗工する方法、コルゲートマシンにて段ボールシート製造時に防滑剤を塗工する方法など種々の方法が提案され、実用化されている。
しかし、粘着タイプの防滑剤を用いると、防滑効果が高くなればなるほど、紙又は板紙表面の摩擦抵抗が大幅に向上することとなり、色落ちしやすくなる。また、輸送中にほこりやゴミなどが付着してしまい、紙又は板紙が汚損するなどの別の問題を生じてしまう。さらに、粘着タイプの防滑剤は熱に弱いため、紙又は板紙の表面に防滑剤を塗工した後、コルゲートマシンにて段ボールに貼り合わせた場合において、防滑剤がコルゲートマシンの熱板にとられて汚損するという問題も生じやすくなる。
また、非粘着タイプの防滑剤は、粘着タイプの防滑剤と比べると、耐熱性は高いものの、防滑効果が低い。従って、防滑効果を高めるために添加量、塗布量を増加させる必要があるが、防滑剤を増加させると、やはり色落ちしやすくなるという問題を生じる。
すなわち、色落ちしにくさ(色落ち)と滑りにくさ(防滑性)とは相反する性質であり、この両者を満足させる技術は、発明者の知る限り開示されていない。
特開平5−140874号公報 特開平8−209551号公報
本願発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、濃色であっても、摩擦による色落ちがなく、かつ防滑性にも優れる染料及び/又は顔料によって色付けされた紙又は板紙を提供することである。
本発明の上記目的は、染料及び/又は顔料によって色付けされた紙又は板紙において、基紙の少なくとも片面に、少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含む塗工液が塗布されていることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって達成される。
また、本発明の上記目的は、前記塗工液が、固形分で片面当り0.2〜5.0g/m塗布されていることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって、効果的に達成される。
また、本発明の上記目的は、JIS−L0849に規定する染色堅牢度試験による耐摩耗性が、JIS−L0805に規定する汚染用グレースケールを使用して、3級以上であり、かつ、JIS−P8147に規定する傾斜法による滑り角度が12度以上であることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって、効果的に達成される。
さらにまた、本発明の上記目的は、JIS−Z8722、及びJIS−Z8730に基づく明度L値が60以下であることを特徴とする紙又は板紙を提供することによって、より効果的に達成される。
本発明に係る染料及び/又は顔料によって色付けされた紙又は板紙は、基紙の少なくとも片面に、少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含む塗工液を塗布したので、染色堅牢度を向上させると同時に、防滑性を向上させることができる。従って、濃色の紙又は板紙であっても、摩擦による色落ちがないと共に、防滑性にも優れ、特に輸送時等における荷崩れの発生を防止することができる。
また、塗工液の塗布量を、固形分で片面当り0.2〜5.0g/mとすることにより、染色堅牢度及び防滑性をより向上させることができると共に、染色堅牢度及び防滑性のバランスにより優れるものとなる。
また、JIS−L0849に規定する染色堅牢度試験による耐摩耗性が、JIS−L0805に規定する汚染用グレースケールを使用して、3級以上であり、かつ、JIS−P8147に規定する傾斜法による滑り角度が12度以上であるので、染色堅牢度及び防滑性に優れる。
さらにまた、紙又は板紙が、JIS−Z8722、及びJIS−Z8730に基づく明度L値が60以下の濃色であると、色落ち防止効果をより発揮することができる。
以下、本発明に係る紙又は板紙について、詳細に説明する。
本発明に係る染料及び/又は顔料により色付けされる紙又は板紙(以下、「本紙又は板紙」と言う。)の基紙は、単層又は複数層の紙層を抄き合わせて構成されている。原料は、広葉樹、針葉樹の樹種を問わず、晒クラフトパルプ、未晒クラフトパルプ等のバージンパルプと、上質古紙など種々の古紙パルプとを適宜配合したものを原料とすることができる。
色付けのための染料としては、アニオン性直接染料やカチオン性直接染料とともに、色が美しく、色濃度が大である塩基性染料を用いることができる。これらの染料の添加順序は、初期の段階でアニオン性直接染料を添加し、硫酸バンドを添加してPH調整を行った後、塩基性染料とそれに必要な定着剤を添加し、インレットに近い場所で高速染着性を有し、吸尽性が高く、耐水堅牢度や日光堅牢度が良好なカチオン性直接染料を添加するのが好適である。さらに、顔料を添加することで一層濃色でかつ一層耐候性の高い着色を実現できる。なお、顔料としては公知の種々のものを用いることができる。
また、本紙又は板紙の抄造においては、JIS−P8140に準じて測定された吸水度が接触時間120秒で15〜150g/mと、好ましくは30〜100g/mとなるように調整される。吸水度が15g/m未満では、後工程の塗布工程で、後述する塗工液を均一に塗布することができず、色落ち防止効果にむらが生じる。一方、150g/mを超えると、塗工液が基紙の内部に浸透してしまって塗布による効果が低下してしまう。なお、吸水度の調整は、酸性ロジンサイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルキルケテンダイマーなど公知のサイズ剤により行われる。
以上のようにして色付けされて抄造された本紙又は板紙の基紙の少なくとも一方の表面(少なくとも片面)に、抄紙機のドライヤー後の塗布工程で、少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含む塗工液を塗布・塗工する。これにより、本紙又は板紙の染色堅牢度を向上させることができる。従って、濃色に色付けされた紙又は板紙であっても、摩擦による色落ちの発生を防止することができるので、衣類や他の紙などに色移りすることがなくなる。また、OPニスを用いた場合のように表面の固化が生じないため、本紙又は板紙を折り曲げて加工する際の表面割れや罫線割れなども発生しない。
また、ドライヤー後の塗布工程で、基紙の少なくとも片面に塗工液を塗布することにより、内添する方法と比べて、薬品の歩留まりが向上する。
スルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物として、「ボルテックスRF」(明成化学工業株式会社製)が好適に用いられる。この薬品は、スルホン酸エステル化合物からなる特殊高分子化合物とポリエチレンワックスとの水系乳化体からなるものである。
また、本紙又は板紙の基紙に塗布される塗工液には、バインダも含有させる。これにより、本紙又は板紙の染色堅牢度を効果的に高めることができるとともに、耐摩耗性(染色堅牢度)を高めることができる。
さらに、上述した少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物は、経時劣化や熱劣化によって、耐摩耗効果が低減する場合があるが、バインダも含有させることにより、この耐摩耗効果の低減を防止でき、染色堅牢度を向上させることができる。従って、例えば本紙又は板紙がコルゲータで貼合される際に熱を受けても、高分子化合物の耐摩耗効果の低減を防止し、染色堅牢度3級以上を維持することができるので、紙又は板紙の色落ちを防止することができる。
バインダとしては、例えば酢酸ビニル、アクリル、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(SBR)、澱粉、ポリアクリルアマイド(PAM)、ポリアクリルアミド系樹脂(PAA)等の公知の種々のものを用いることができる。
しかしながら、本紙又は板紙に塗布される塗工液には、上述したように少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含むため、バインダの種類、性状によっては、染色堅牢度を効果的に向上させることができない場合がある。
また、本紙又は板紙は、断熱性、保温性を要する紙容器、段ボール容器等の容器等に加工することを前提としている。このため、本紙又は板紙が容器等に加工される際に、罫線部(折り曲げ部)に強い折り曲げの力が加わるが、この場合であっても、塗布層が割れないこと、すなわち罫線割れが発生しないことや、加工された容器等の輸送、保管時等における擦れによる紙剥け、破れ等の発生がないこと等の表面強度が要求される。この場合においても、バインダの種類、性状によっては、罫線割れの問題、表面強度の低下を招くおそれがある。
さらに、硬度の高いバインダは、染色堅牢度及び表面強度の向上効果には優れるものの、罫線割れが発生しやすくなる。
従って、染色堅牢度、罫線割れの防止、表面強度などを効率的にバランスよく得るために、種々のバインダの中でも、特にポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド系樹脂(PAA)、澱粉が好適に用いられる。
さらにこの中でも、ガラス転移温度が−50〜30℃、より好ましくは−30〜20℃であると、乾燥後の本紙又は板紙の表面強度をさらに向上させることができるとともに、加工・製函・貼合適性にも優れるものとなる。
なお、塗工液は、スルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダとが、固形分比率で1:0.5〜1:7、より好ましくは1:1〜1:5で混合されているのが好適である。バインダの混合比率がこの範囲より少なくても多くても、染色堅牢度が低下し、色落ちしやすくなる。
また、本紙又は板紙の基紙に塗布される塗工液には、少なくともシリカを含有する防滑剤を含有させる。すなわち、本発明は、色落ちがないことと、防滑性(滑りにくさ)に優れるという相反する性質の両者を満足させることを目的としている。従って、塗工液中に平均粒径が0.01〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜1μmであるシリカを含有する防滑剤を含有させる。これにより、染色堅牢度を向上させながらも、防滑性も向上させることができる。
平均粒径が5μmを超えると、防滑性は向上するものの、耐摩耗性(染色堅牢度)が低下してしまい、色落ちが発生しやすくなる。一方、平均粒径が0.01μm未満であると、塗工液の塗布量を増加させても本願発明の所望とする防滑性を得ることが難しくなる。
防滑剤としては、少なくともシリカを含有する粒子を用いるが、さらに、シリカとアクリル酸エステルの複合粒子、あるいは、シリカとアクリル酸エステルとスチレンの複合粒子が好適に用いられる。具体的には、例えばニチゴー・モビニール株式会社製のモビニール8020、モビニール8030、モビニール8021、モビニール8055Aなどが好適に用いられる。
この防滑剤は、塗工液中に、固形分で0.5〜10質量%、好ましくは2〜7質量%含有される。防滑剤の含有量が0.5質量%未満であると、塗工液の塗布量を増やしても本願発明の所望とする防滑性を得ることが難しくなる。一方、防滑剤の含有量が10質量%を超えると、防滑性を向上させることはできるものの、耐摩耗性が低下し、色落ちが発生してしまう。
さらに、本発明で使用する防滑剤は、アニオン性であることが好ましい。アニオン性の防滑剤は、上述したスルホン酸エステル化合物からなる高分子化合物との相溶性が良く、また、凝集等のトラブルが少なく、塗工液での発泡が少なく、さらに機械的安定性も良い。
なお、カチオン性の防滑剤を使用した場合には、塗工液の調整時に凝集物が発生しやすく、塗工液の均一な塗布ができない場合がある。さらに、この凝集物により、粕汚れなどの品質トラブルや、粕による断紙などの操業トラブルを招くこともある。
このイオン性の点においても、前記した例えばニチゴー・モビニール株式会社製のモビニール8020、モビニール8030、モビニール8021、モビニール8055は、いずれもアニオン性であり、好適である。
さらに、本紙又は板紙は、容器等に加工することを前提とするため、罫線割れの問題や、表面強度の低下の問題が発生しないことが要求される。
このため、上述した種々の防滑剤の中でも、ガラス転移温度が−50〜30℃、より好ましくは−30〜20℃のものであると、乾燥後の本紙又は板紙の表面強度をさらに向上させることができるとともに、加工・製函・貼合適性にも優れるものとなる。
このガラス転移温度の点においては、前記した例えばニチゴー・モビニール株式会社製のモビニール8020(−22℃)、モビニール8030(17℃)が好適である。
なお、本紙又は板紙の基紙の表面に塗布される塗工液は、上述したように少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とが含まれていれば、その他、例えば顔料、染料、耐水化剤、消泡剤等の公知の種々の添加剤が含有されていても良い。
上述した少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含む塗工液の塗布量は、固形分で片面当り0.2〜5.0g/m、好ましくは0.3〜3.0g/mである。塗布量が0.2g/m未満では、耐摩耗性を向上させることができず、接触した衣類や他の紙に色が移ってしまう場合がある。逆に、5.0g/mを超えると、塗布量を増やしても品質は向上しないばかりか、製造工程における乾燥性が悪化したり、コストアップの要因になる。
前記のような防滑剤を用いることにより、少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物による染色堅牢度の向上効果を阻害することなく、防滑性を向上させることが可能となったのである。
なお、塗工液を塗布する方法としては、カレンダー塗工、バーコーター、ロッドコーター、エアナイフ、ゲートロールコーター、2ロールサイズプレスなどの公知の塗布手段により基紙の表面に塗布することができる。また、グラビア印刷機、フレキソ印刷機等の公知の印刷手段により印刷することもできる。これらの中でも特に、塗工液の塗布量を任意に変更でき、しかも均一に塗布でき、被膜形成しやすいロッドコーターが好ましいが、カレンダー塗工も既存設備を流用しやすい、被膜形成しやすい、塗工液濃度の変更による塗布量調整が容易である、などの点で好ましい。
以上のように少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含む塗工液を、基紙の少なくとも片面に塗布した後、ドライヤーで乾燥し、カレンダーパートで平滑化処理を施すことにより、本紙又は板紙が完成する。
なお、本紙又は板紙の抄紙方法については、特に限定されるものではないので、酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法のいずれであってもよい。また、抄紙機も特に限定されるものではなく、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等、公知の種々の抄紙機を使用することができる。
上述したようにして形成された本紙又は板紙は、JIS−L0849に規定する染色堅牢度試験による耐摩耗性(染色堅牢度)が、JIS−L0805に規定する汚染用グレースケールを使用して、3級以上であり、かつ、JIS−P8147に規定する傾斜法による滑り角度が12度以上である。
また、特に、染料及び/又は顔料によって色付けされた本紙又は板紙の、JIS−Z8722、及びJIS−Z8730に基づく明度L値が60以下の濃色であると、濃色であるだけに色落ちし易いので本発明による効果がより発揮される。
本発明に係る紙又は板紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の重量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎない。従って、本願発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲において、適宜選択可能であることはいうまでもない。
本発明に係る31種類の板紙(これを「実施例1」ないし「実施例31」とする)を表1に示す構成で作製し、これらの実施例1ないし実施例31と比較検討するために、7種類の色板紙(これを「比較例1」ないし「比較例7」とする)を、表2に示す構成で作製した。
以下に、各試料の製造条件を示す。なお、特に断りのない限り、表層、中層(3層)及び裏層の各層の原料配合、濾水度、薬品添加条件などは同一とする。
Figure 2008208470
Figure 2008208470
(実施例1)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、フリーネス450mlCSF)40質量%と上質古紙パルプ(フリーネス350mlCSF)60質量%とを配合して表層(第1層)用の原料スラリーを調整し、この表層用原料スラリーに、次の着色剤と定着剤とサイズ剤とを添加した。着色剤の添加量は、JIS−Z8722に基づく表層面の色相が(L,a,b)=(58.0,34.0,0.6)となるように調整した。
アニオン性直接染料:「TOAレッド2BP」(東亜化成株式会社製)
「カルタバイオレット3B70」
(クラリアントジャパン株式会社製)
定着剤 :硫酸バンド4.0%
サイズ剤 :酸性ロジンサイズ剤0.4%
また、地券古紙パルプを100%用いて、中層、裏層(第2層〜第5層)用の原料スラリーを調整し、この裏層用の原料スラリーに、次のサイズ剤と定着剤を添加した。
サイズ剤 :酸性ロジンサイズ剤0.25%
定着剤 :硫酸バンド4.0%
これらの原料スラリーを用い、円網5層抄紙機にて表層及び3層の中層と裏層の紙層を抄き合わせ、坪量が170g/m、吸水度が接触時間120秒で100g/mの5層構造の色板紙を抄紙し、次にプレドライヤー後の塗布パートで、以下の塗工液を、着色した表面層に固形分で1.0g/mの塗布量で塗布し、アフタードライヤーで乾燥した。その後、マシンカレンダーにてカレンダー処理を行って色付けされた板紙を作製した。
塗工液の調整
(1)バインダとして、ポリビニルアルコール「ポバールS−71」(株式会社クラレ)を用い、濃度が2%となるように調整する。
(2)水溶性高分子として、スルホン酸エステル化合物を含む「ボルテックスRF」(明成化学工業株式会社製)を用い、水溶性高分子とバインダとの固形分比率が1:1.5となるように混合して混合液を作製する。
(3)前記混合液に防滑剤として「モビニール8020」(ニチゴー・モビニール株式会社製)を固形分として5質量%混合し、塗工液を調整した。
(実施例2〜7)
塗工液の塗布量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(実施例8〜13)
塗工液中における防滑剤の固形分含有量を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(実施例14〜17)
防滑剤の粒径を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(実施例18〜19)
バインダを表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。なお、表中の「PAA」とは、ポリアクリルアミド系樹脂で、ハリマ化成株式会社製の「ハリコートG−50」を用い、澱粉としては、日本食品化工株式会社製の酸化澱粉「MS3800」を用いた。
(実施例20〜21)
水溶性高分子とバインダとの混合比率及び防滑剤の含有量を、表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(実施例22〜23)
水溶性高分子とバインダとの混合比率を表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(実施例24〜28)
吸水度を、表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(実施例29〜31)
防滑剤を表1のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。なお、コロイダルシリカとしては、株式会社ADEKA製の「アデライト AT−30A(登録商標)」を用い、超微紛合成非晶質シリカとしては、徳山曹達株式会社製の「ファインシール X−37」を用い、超微紛合成非晶質シリカとしては、徳山曹達株式会社製の「ファインシール X−37」を用い、シリカ−アクリル酸エステル−スチレン複合物としては、明成化学工業株式会社製の「モビニール8055A」を用いた。
(比較例1)
防滑剤を含有しなかったこと以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(比較例2)
バインダ及び防滑剤を含有しなかったこと以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(比較例3)
水溶性高分子及び防滑剤を含有しなかったこと以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(比較例4)
塗工液を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。
(比較例5)
防滑剤を表2のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。なお、スチレン系ポリマーとしては、星光PMC株式会社製の「AT3802」を用いた。
(比較例6)
防滑剤の種類、及び平均粒径を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。なお、活性アルミナとしては、大和化学工業株式会社製の「スリップナインK−33」を用いた。
(比較例7)
水溶性高分子を表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして得た色板紙。なお、変性ワックスとしては、星光PMC株式会社製の「WR3922」を用いた。
なお、表1及び表2中の「固形分比率」とは、塗工液中に含まれる水溶性高分子:バインダの比率を表している。
また、「粒径(μm)」とは、防滑剤の平均粒子径である。
「含有量(質量%)」とは、塗工液中における防滑剤の固形分含有量である。
「吸水度(g/m)」とは、JIS−P8140に準じて測定された、接触時間が120秒のときの吸水度である。
これらの全実施例及び比較例について、品質評価を行った結果は表3に示すとおりであった。なお、この品質評価は、JIS−P8111に準拠して温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
表3中の「明度」とは、JIS−Z8722、及びJIS−Z8730に基づいて測定した明度L値の値である。
また、「滑り角度(度)」とは、防滑性の効果を評価するもので、JIS−P8147に規定する傾斜法による滑り角度の値である。
さらにまた、「染色堅牢度(級)」とは、耐摩耗性を示し、色落ちしているか否かを評価するもので、JIS−L0849に準拠して摩擦に対する染色堅牢度試験を行い、JIS−L0805に基づいた汚染用グレースケールを使用して着色の等級を測定した値である。
Figure 2008208470
表3から分かるように、本発明に係る色紙又は色板紙、すなわち実施例1ないし実施例31に係る色板紙は、濃色であっても、色落ちがなく、また防滑性にも優れることが分かる。

Claims (4)

  1. 染料及び/又は顔料によって色付けされた紙又は板紙において、
    基紙の少なくとも片面に、少なくともスルホン酸エステル化合物を含む高分子化合物とバインダと少なくともシリカを含有する防滑剤とを含む塗工液が塗布されていることを特徴とする紙又は板紙。
  2. 前記塗工液が、固形分で片面当り0.2〜5.0g/m塗布されていることを特徴とする請求項1記載の紙又は板紙。
  3. JIS−L0849に規定する染色堅牢度試験による耐摩耗性が、JIS−L0805に規定する汚染用グレースケールを使用して、3級以上であり、かつ、JIS−P8147に規定する傾斜法による滑り角度が12度以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紙又は板紙。
  4. JIS−Z8722、及びJIS−Z8730に基づく明度L値が60以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の紙又は板紙。
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