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JP2008285693A - 耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents

耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板 Download PDF

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JP2008285693A JP2007129021A JP2007129021A JP2008285693A JP 2008285693 A JP2008285693 A JP 2008285693A JP 2007129021 A JP2007129021 A JP 2007129021A JP 2007129021 A JP2007129021 A JP 2007129021A JP 2008285693 A JP2008285693 A JP 2008285693A
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Abstract

【課題】 耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.02%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、P:0.04%以下、S :0.03%以下、Al:0.2%〜2.5%、N:0.02%以下、Cr:13〜25%、Ni:0.5%以下、V:0.5%以下、Nb:0.5超〜1.0%、Ti:3×([%C]+[%N])〜0.25%であり、残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする、耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。さらに、質量%で、B:0.0003〜0.0050%、Mo:0.3〜2.5%、Cu:0.1〜2.0%を含んでも良い。
【選択図】 図1

Description

本発明は、マフラー、エキゾーストマニホールド等の自動車排気系部材に用いられる耐熱疲労性に優れたフェライト系ステンレス鋼板に関するものである。
近年の環境問題の高まりから、自動車業界では、自動車の排気ガスの排出量を低減させる試みと排気ガスそのものを浄化する試みの両面から環境問題に対応する努力がなされている。前者の試みは、例えば、自動車エンジンの燃費向上であり、車体の軽量化の試みである。また、後者の試みは、例えばプラチナやロジウムなどの触媒を用いて排気ガス中の代表的な排出有害物質であるCO、HC、NOxを、COとHCは酸化してCOとHO(水)にし、NOxは窒素(N)に還元して無害化する試みである。なお、このような高温の腐食性ガスである排気ガスを通す自動車用排気系部材には、ステンレス鋼が、耐熱性(高温強度、耐酸化性)で優れているため、通常、用いられる材料となっている。そのなかでも最も高温にさらされる部材の1つであるエキゾーストマニホールドは、排気ガス浄化のための触媒反応の反応効率のために使用温度が高まり最高1000℃程度までの昇温、降温の繰り返しを受けるため、優れた耐熱性が必要とされている。
従来の自動車用排気系部材の材料としては、対応温度が950℃となる鋼種の開発が行われており、例えば、下記特許文献1には、Cr:18〜22%、Mo:1.0〜2.0%、Nb:0.1〜1.0%を含有するステンレス鋼の発明が開示されている。現在では、950℃対応のエキゾーストマニホールド材としては、SUS444(19%Cr−2%Mo)系などのフェライト系ステンレス鋼が用いられている。
フェライト系ステンレス鋼の優れた高温強度は、鋼に含有するNbとMoの固溶強化によるものと考えられている。ところが、長時間高温に曝されていると、固溶しているNb、Moが析出物として析出するため固溶量が減少し、その結果、高温強度の低下が起こる。そのため、高温強度と相関が高い耐熱疲労性も低下する。これを防止するために下記特許文献2において、NbとTiを複合添加することにより、Nbの析出を抑制する技術が開示されている。しかしながら、この技術を持ってしても、高温時効後の高温強度の低下、耐熱疲労性の低下は十分に抑制できていなかった。
また、下記非特許文献1では、Si量を14Cr−Mo−Nbフェライト系ステンレス鋼において、Siを0.9%から0.35%へ低減すると、固溶Moが増加して、高温強度が上昇することが報告されている。しかし、この高温強度は初期高温強度であり、耐熱疲労性については述べられていない。
下記特許文献3では、耐酸化スケール性に優れた自動車排気系部材フェライトステンレス鋼が開示されている。この鋼は、低Si化により耐酸化スケール性を向上させている。しかし、耐熱疲労性に関し述べられていない上、この鋼は、低Si、Al無添加であり、脱酸元素がほとんどないため、脱酸および成分的中が非常に困難である課題を抱えていた。
また、下記特許文献4では耐熱疲労性に優れたフェライトステンレス鋼として、Al添加鋼が開示されている。しかし、この鋼の想定使用温度は850℃以下である。このため、熱疲労試験として、試験片の変形を拘束した状態で50〜950℃の間で加熱冷却を繰り返す一種の加速試験と考えられる試験を実施している。ところが、この試験では950℃に保持する時間は30s/回であり、最高でも累計5.3時間950℃に置かれるのみである。このため、エンジン運転中に、950℃程度に累計で数百時間程度の長時間置かれる使用条件は考慮されておらず、最近のエンジン運転条件に対応する検討がなされていない。また、この発明では、高温強度向上に非常に有効であるAlだけでなく、Nbを0.5%超えて添加し、かつTiを最適量同時添加する検討がなされていない。したがって、排ガス温度が最高1000℃に達し、950℃程度に累計で長時間置かれる環境には、このままでは適用できない。さらに、室温引張り試験時の伸びが20.8%〜28.8%と低い値を示しており、最近、エンジンの高出力化・排気効率向上のために、複雑形状となっているエキゾーストマニホールド用材料としては冷間加工時の延性が、不十分であった。
特開平6−100990号公報 特許第3021656号公報 特許第3242007号公報 特開平3−72053号公報 CAMP−ISIJ Vol.16(2003)p544 平澤ら
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、エンジン運転中は、950℃程度に累計で長時間置かれる自動車排気系部材、特に、エキゾーストマニホールド用として有用な、耐熱疲労性に優れたフェライト系ステンレス鋼を提供することを課題とする。
フェライト系ステンレス鋼は、一般的に、オーステナイト系ステンレス鋼よりも、熱伝導率が高く、かつ熱膨張率が小さいため、同じ部材形状・寸法および温度変化条件であればその部材内に発生する熱応力が、フェライト系ステンレス鋼の場合の方が小さくなる。このため、熱応力低減による熱疲労寿命向上の観点からは、フェライト系ステンレス鋼は有利である。ところが、一方で、高温強度が高いほど、耐熱疲労性が高い側面もあり、650℃以上での高温強度の点では、一般的に、オーステナイト系ステンレス鋼の方が、フェライト系ステンレス鋼よりも優れている。
さらに、複雑形状のエキゾーストマニホールドの成型に必要な冷間加工性の点では、一般に、オーステナイト系ステンレス鋼の方が有利である。
このため、優れた熱疲労寿命が必要となる部材では、使用条件によっては、フェライト系ステンレス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼が競合関係となる。
本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼の優れた特性をそのまま活かした上で、これまで、フェライト系ステンレス鋼の欠点であった950℃付近での高温強度を、使用期間を通じて安定的に十分に向上させ、かつ、耐高温酸化性および冷間加工性にも優れる成分系を見出し、本発明にいたった。すなわち、エンジン運転中は、950℃程度に累計で長時間置かれる自動車排気系部材、特に、エキゾーストマニホールド用として有用な、耐熱疲労性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を発明したものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)質量%で、C :0.02%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.5%以下、P :0.04%以下、S :0.03%以下、Al:0.2%〜2.5%、N :0.02%以下、Cr:13〜25%、Ni:0.5%以下、V :0.5%以下、Nb:0.5超〜1.0%、Ti:3×([%C]+[%N])〜0.25%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする、耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
ここで、[%C]、[%N]はそれぞれ、質量%で表したC、Nの含有量を示す。
(2)さらに、質量%で、B:0.0003〜0.0050%、を含有することを特徴とする、(1)に記載の耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
(3)さらに、質量%で、Mo:0.3〜2.5%、を含有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
(4)さらに、質量%で、Cu:0.1〜2.0%、を含有することを特徴とする、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
本発明により、自動車排気系部材、特に、排ガス温度が最高で1000℃にも達し、950℃程度に累計で長時間置かれる使用条件下の高温対応エキゾーストマニホールド用として有用な耐熱疲労性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することができ、製造者のみならず本鋼板を利用する者にとっても多大な利益を得ることができ、工業的価値は極めて高い。
本発明を実施するための最良の形態と限定条件について詳細に説明する。
本発明者らは、自動車排気系部材、特に最高温度が1000℃程度に達し、950℃程度に累計で長時間置かれる使用条件のエキゾーストマニホールド用部材として、最適な特性を持つものを検討してきた。エキゾーストマニホールド材として要求される特性は、耐熱性(高温強度、耐熱疲労性、耐高温酸化性)と冷間加工性である。高温強度は、初期強度だけでなく、熱履歴を受けても、高温強度は低下しないほうが望ましい。ところが、耐熱フェライト系ステンレス鋼では、通常、固溶Nb、Moにより高温強度を担保しているため、高温環境に曝されていると、これらNb、Moが析出して、主として固溶量が減少し、その結果、高温強度が低下してしまう現象が避けられなかった。一方、冷間加工性はエギゾーストマニホールドとして必要な形に成型できることが必要である。
本発明者らは、エギゾーストマニホールド用途として最適な材料の検討を進めた結果、Cr−Mo−Nb−Tiフェライト系ステンレス鋼において、950℃程度の高温環境に曝された場合、
・ Ti含有により、Nb系炭窒化物の生成は抑制されるが、Nb、Moを含むラーフェス(Laves)相であるFe(Nb,Mo)の生成は抑制できないこと。
・ Moを含む場合、Nb、Moを含むラーフェス相Fe(Nb,Mo)の析出が顕著であること。
を明らかにした。
本発明者らは、Nb、Moと同様に900℃以上で高温強度向上効果を持つ元素を探索した結果、Alが非常に有用であることを見出し、さらに、Alはラーフェス相析出に関与しないため、高温環境に暴露されても強度が低下しにくいことを見出した。図1は17Cr−0.52Nb−0.1Ti系を基本にAlを添加した時の、950℃の0.2%耐力と950℃、200時間熱処理後の0.2%耐力を示したものである。Alを添加するほど耐力が向上するとともに、時効による耐力低下も小さく、耐熱疲労性に優れていることが分かる。
本発明者らは、以上の知見を基にさらに詳細な検討を進め、本発明を完成させた。
次に、本発明の各成分に関する限定理由を述べる。
Cは、加工性、耐食性を劣化させるため、できるだけ少ないほうが好ましい。そこで、本発明では、炭窒化物として固定して有害作用を除去するが、そのための固定元素であるTiの添加量をできるだけ少なくするため、Cの上限の含有量は0.02%以下とする。ただし、C量を0.002%未満にすることは精錬上過大なコスト負担を強いられることになるため、0.002%以上が好ましい。
Siは、耐酸化性を向上させる元素であり、耐熱ステンレス鋼には有用である。しかし、スケール剥離しやすくする作用も有し、特に、Tiと共存している場合にその作用が顕著であるため、添加量は1.5%以下とする。なお、Siは脱酸にも用いられるため、不可避的に0.05%以上含まれる。
Mnは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、耐酸化性を向上する元素であると考えられていて、特に、Siと共存する場合、Siによるスケール剥離を抑制する効果をもつ。しかし、1.5%を超えて添加すると、加工性を劣化させるため、その添加量は1.5%以下とする。なお、Mnは原料由来で、不可避的に0.1%以上含まれる。
Pは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、0.04%を越えて含有すると溶接性が低下するために、0.04%を上限とした。
Sは、鋼中に不可避的に含まれる成分であるが、0.03%を越えて含有するとMnSの形成量の増大により耐食性を低下させるので0.03%を上限とした。
Alは、本発明で重要な元素である。脱酸元素として有用であるだけでなく、固溶強化元素として非常に有用である。特に、高温においてその効果は顕著であり、900℃以上の高温においてもその効果を発揮する。0.2%未満では十分な強化効果を認められにくいため、0.2%以上の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると加工性を劣化させるため、その上限を2.5%とする。
Nは、鋼中に含まれる不可避的不純物であり、Cと同様に加工性の劣化、および溶接性が低下するため、できるだけ少ないことが好ましい。そこで、Nの許容量の上限を0.02%とした。しかし、0.005%未満にすることは精錬上過大なコスト負担を強いられることになるため、0.005%以上が好ましい。
Crは、保護性のあるCr皮膜を形成し耐酸化性を向上させる元素である。その耐酸化性の作用を発現することのできる下限Cr量は13%であるため、これを下限とした。また、25%を越えてCrを含有すると、加工性が低下するため、上限を25%とする。耐酸化性と加工性のバランスから、より好ましくは、16超〜23%である。
Niは、不可避的不純物であるが、耐食性を向上させる元素であるため、加工性を劣化させない0.5%程度までの含有は許容される。なお、Niは原料由来で、不可避的に0.01%以上含まれる。
Vも不可避的不純物であるが、加工性を劣化させない0.5%程度までの含有は許容される。なお、Vは原料由来で、不可避的に0.01%以上含まれる。
本発明におけるTiの役割は、(1)TiはNbよりC、Nと結びついて炭窒化物を形成しやすいため、高温強度に有効である高価なNbの消費を抑制できることである。Tiの添加量は、3×([%C]+[%N])%未満では、その効果が乏しく、0.25%を越えると、固溶Tiが増えて再結晶温度が上昇するために好ましくないため、3×([%C]+[%N])%以上0.25%以下とする。再結晶温度が最も低い範囲のTi添加量は、4×([%C]+[%N])%以上0.15%以下であり、この範囲がより好ましい。
Nbは、高温強度を確保するために必要な元素である。加えて、Tiとともに、C、Nを炭窒化物として、固定する機能がある。本願発明が想定する対応温度950℃では、Nb量が0.5%以下では、必要な高温強度が確保できない。しかし、1.0%を越えて添加すると加工性が劣化する。そのため、Nb量は0.5超〜1.0%とする。
さらに、C+N量が0.03%を超えると加工性が低下するため、この値を上限とした。本発明では、C、Nを炭窒化物として固定するために主にTiが消費されるが、NbもC、Nと炭窒化物を形成する。Nbは高温強度を高めるために固溶Nbとして必須であり、できるだけ、C+Nは低いほうが良く、0.015%以下がさらに好ましい。
以上に加えて、以下の元素を添加するとより一層の特性向上が図られる。
Bは粒界に偏析し、粒界を強化するため、耐熱疲労性を向上させる。0.0003%未満では、その効果が顕著ではなく、0.0050%を超えると靭性が低下するため、好ましい範囲は、0.0003〜0.0050%である。
Moは、ラーフェス相の析出を促進させる効果があるが、高温強度を確保するために有効な元素である。また、耐酸化性、耐食性を向上させる効果もある。しかし、伸びに代表される加工性は劣化する。よって、0.3〜2.5%の範囲で添加する。0.3%未満では充分な高温強度が得られず、2.0%超添加すると、加工性の劣化、および酸洗時のデスケール性の劣化が生じるからである。
Cuは高温強度の向上、耐食性(高温塩害も含む)の向上に効果ある元素である。0.1%未満であるとその効果が顕著でなく、2%を超えると熱延板靭性が劣化するため、0.1%以上2%以下とする。
以上の成分設計で、耐熱性(高温強度、耐酸化性)に優れ、かつ、耐熱疲労性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を得ることが可能となる。
本発明は、自動車の燃費向上、高出力化により、排ガス温度が1000℃にまで達しようとしてきている場合に対応する自動車排気系部材であり、そのため、950℃での性能が耐熱性の指標として最適である。また、自動車排気系部材としての強度特性の必要性から、高温強度として、950℃での0.2%耐力が15MPa以上であることが好ましい。 ここでの高温強度の測定はJIS G 0567に準拠して行うこととする。また、測定する試験片の方向は圧延方向(L方向)とする。
耐熱疲労性高温強度と熱疲労寿命は、正の相関があることがわかっているため、高温長時間暴露前後の試料の高温強度を測定し、その低下代で耐熱疲労性を簡便に評価できる。950℃で200時間暴露した後の0.2%耐力の低下が5MPa以下であれば、十分に熱疲労寿命が高く保たれ、エギゾーストマニホールド材として、良好な耐熱疲労性を持ち好適である。したがって、本発明では、950℃で200時間暴露した後の0.2%耐力の低下が5MPa以下であることを目標とした。
耐熱性の指標として重要な耐酸化性は、950℃、200時間の大気中連続酸化試験で酸化スケールの剥離量が0.5mg/cm以下であれば金属面が露出するような剥離状況に至らないため、実用上問題ない。スケール剥離のない場合がさらに好ましい。
なお、大気中酸化試験による酸化増量および剥離量の評価については、以下のようにして評価する。まず、板厚2mmの試験片を、1辺20mmの正方形とし、表面および側面を研磨し、#400仕上げとして準備する。次に、試験前に質量測定を行った試験片を、950℃に加熱した電気炉内に挿入する。200時間経過後、炉から取り出した試験片を、直ちに、予め空の状態で質量を測定したふた付の金属容器に収納し空冷する。この操作により、試験片表面に生成した高温酸化スケールが、試験片に付着したままの状態で収納できる。加熱冷却後の試験片質量について、まず金属容器ごと質量測定を行い、次に試験片を金属容器より取りだし、試験片のみの質量測定を行う。これらの質量測定結果から、酸化増量は、容器入り酸化試験片質量より酸化前試験片質量および空容器質量を差し引き、試験片表面積で除した単位面積当たりの値で評価する。また、冷却中に金属容器内で生じたスケール剥離量は、容器入り酸化後試験片質量より酸化後試験片質量および空容器質量を減じて、試験片表面積で除した単位面積当たりの値で評価する。
加工性に関しては、常温の伸びが指標として最適である。鋼板の圧延(L方向)方向の伸び値が30%以上であることが好ましい。常温の伸びの測定は、JIS Z 2241に準拠して行った。使用した試験片は全て、JIS Z 2201に定められている13B号試験片である。
本発明の製造条件は特に定めないが、以下の条件が好ましい。
本発明鋼は、脱酸元素を制限しているため、転炉精錬後のVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)またはAOD(Argon Oxygen Decarburization)等の二次精錬を十分に行うこと、または、真空溶解炉を用いて溶解することが好ましい。さらに、所望の成分のスラブまたはインゴットを、一般的なフェライト系ステンレス鋼の工業的製造工程である、熱延−熱延板焼鈍−冷延−焼鈍・酸洗の各工程を経て、製品とすることができる。必要に応じて、熱延板焼鈍を省略してもよいし、冷延と焼鈍・酸洗を繰り返してもよい。
以下、実施例で、本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示す化学成分を有する50kg鋼塊を真空溶解炉にて溶製し、1150℃から1280℃に加熱して熱延を行い、板厚5mmの熱延板を得た。このとき、熱延開始温度は、1100℃から1250℃、熱延終了温度は、800℃から900℃であった。その後、熱延板を900℃から1000℃に加熱して60s保持する熱延板焼鈍を行った。さらに、冷延を行って2mm厚の冷延板にした後、1050℃に加熱して、60s保持する最終焼鈍を行い、フッ酸を含む酸洗用水溶液にて酸洗を行って得た鋼板を供試鋼とした。
Figure 2008285693
これら供試鋼の熱処理前の常温引張試験と950℃での高温引張試験を行った。また、950℃、200時間大気中保持による耐酸化性試験を行った。さらに、供試鋼を950℃、200時間保持した後、950℃高温強度を測定し、0.2%耐力の低下量で、耐熱疲労性を評価した。
加工性の指標として、常温の伸びを測定した。常温の引張試験は、JIS Z 2241に準拠して行った。測定した試験片の方向は、圧延方向(L方向)であり、その全伸び値を、Elとした。使用した試験片はすべてJIS Z 2201に定められた13B号試験片である。
高温強度の指標は、950℃での0.2%PSとし、高温引張試験は、JIS G 0567に準拠して行った。測定した試験片の方向は圧延方向(L方向)である。
耐酸化性の指標は950℃大気中連続酸化試験での酸化増量とスケール剥離量とした。試験片の形状は、1片20mmの正方形で、表面および側面を研磨し、#400仕上げとした。酸化増量および剥離量の評価方法は以下のように行った。試験前に質量測定を行った試験片を、950℃に加熱した炉内に挿入し、200時間経過後、炉から取り出し、直ちに、予め空の状態で質量を測定したふた付の金属容器に収納し空冷する。まず、金属容器ごと質量測定を行い、次に試験片を金属容器より取りだし、試験片のみの質量測定を行った。これらの質量の測定結果から、酸化増量は、容器入り酸化試験片質量より酸化前試験片質量および空容器質量を減じて差し引き、試験片表面積で除した値で評価した。また、スケール剥離量は、容器入り酸化後試験片質量より酸化後試験片質量および空容器質量を減じて、試験片表面積で除した値で評価した。
測定結果から、酸化増量3mg/cm以下、スケール剥離量0.5mg/cm以下を合格とした。
全ての結果を表2に示す。
Figure 2008285693
A鋼からE鋼までは、17Cr−0.52Nb−0.1Ti鋼をベースに、Al量のみを変化させた供試鋼である。Al量が0.05%である比較例Aは、高温強度が低く、また、熱処理後の高温強度の低下代も大きく、好ましくない。これに対し、Al添加量を増加させた本発明例であるB、C、D鋼は、熱処理前の初期高温強度が15MPa以上の優れた値を示し、950℃、200時間熱処理後の高温強度の低下代も5MPa以下と小さく、また、耐酸化性も合格である。と高く、熱処理前後の差が4MPaしかなく、耐熱疲労性に優れていることを示している。また、常温伸びが30%以上あり、耐酸化性も合格であり、非常に優れた特性を示している。Al添加量が3%と多すぎる比較例Eは、常温伸びが30%以下となり、好ましくないことが分かる。
また、本発明例であるF鋼からM鋼は、常温伸び、初期強度、熱処理後の強度低下代、耐酸化性の全ての項目で優れた特性を示している。
これに対し、比較例である、N鋼からS鋼はこれらの項目で不合格となるものがあり、好ましくないことが明らかである。
以上の実施例により、本発明のフェライト系ステンレス鋼は、耐熱疲労性に優れており、自動車部材用ステンレス鋼板として好適であることが確認された。
17Cr−0.52Nb−0.1Ti系を基本にAlを添加した時の、950℃の0.2%耐力と950℃、200時間熱処理後の0.2%耐力を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C :0.02%以下、
    Si:1.5%以下、
    Mn:1.5%以下、
    P :0.04%以下、
    S :0.03%以下、
    Al:0.2%〜2.5%、
    N :0.02%以下、
    Cr:13〜25%、
    Ni:0.5%以下、
    V :0.5%以下、
    Nb:0.5超〜1.0%、
    Ti:3×([%C]+[%N])〜0.25%、を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする、耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
    ここで、[%C]、[%N]はそれぞれ、質量%で表したC、Nの含有量を示す。
  2. さらに、質量%で、
    B:0.0003〜0.0050%、を含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
  3. さらに、質量%で、
    Mo:0.3〜2.5%、を含有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
  4. さらに、質量%で、
    Cu:0.1〜2.0%、を含有することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の耐熱疲労性に優れた自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板。
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