JP2008282506A - 再生信号処理回路、再生信号処理方法及び光ディスクドライブ - Google Patents
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Abstract
【課題】従来よりも高速動作可能な直流成分除去手段を用いることによりPLL及びヴィタビ復号器の性能劣化を抑制可能なリードチャネル及びドライブを提供する。
【解決手段】再生信号の微分を用いてエッジの位置を特定し、そのエッジの中点のレベルから直流成分を検出する。また、再生信号の微係数からエッジの位置を同定する際に微係数の極大極小値の絶対値を制限することにより長マーク又はスペース信号で偽エッジを検出するのを防ぐ。また、PLLの状態及び直流成分の大きさによって内部の動作を制御する。
【選択図】図8
【解決手段】再生信号の微分を用いてエッジの位置を特定し、そのエッジの中点のレベルから直流成分を検出する。また、再生信号の微係数からエッジの位置を同定する際に微係数の極大極小値の絶対値を制限することにより長マーク又はスペース信号で偽エッジを検出するのを防ぐ。また、PLLの状態及び直流成分の大きさによって内部の動作を制御する。
【選択図】図8
Description
本発明は、光ディスクドライブや磁気ディスクドライブなどのリードチャネルに関する。
DVDやBlu-ray Disc(以下BD)などの規格に準拠している光ディスク装置及びディスクの際立った特徴の一つは記録媒体が可換であり、異なる機種間相互でディスクを交換して記録及び再生が可能なことである。しかし、現実には記録したディスクの表面に傷や汚れが付いてしまい、極めて再生が困難な状況が出現することがある。尚、本発明の適用範囲はBDに限定されないが、以下に於ける説明ではBDを前提とし、また、用語もBDで使用されるものを基本とする。
図2に極めて基本的なリードチャネルの構成例を示す。尚、本明細書中では、アナログイコライザーやPLL(phase locked loop)などを含め、アナログ再生信号からビット列に復号するまでの再生信号処理系をリードチャネルと呼ぶことにする。また、本明細書中ではアナログ再生信号をAD(analog to digital)変換してから信号処理を行うヴィタビ復号系を前提とする。よって、本明細書中では、専らAD変換後のデジタル信号を再生信号と呼ぶものとする。ただし、当業者であればAD変換前のアナログ信号とデジタル信号を混同する恐れはないので簡潔のために文脈上明らかな場合はどちらも単に再生信号と呼ぶこととする。
アナログ再生信号は、アナログ等化器1で等化された後に、AD変換器2でデジタル信号へ変換される。この際のサンプリングのタイミングは、チャネルクロックで決定される。その後、位相比較器6でチャネルクロックとの位相比較を行う。位相誤差信号は、ループフィルタ9で平滑化され、DA変換器11でアナログ信号に変換された後に、VCO(voltage controlled oscillator)10の制御電圧信号として入力される。VCOは、この入力電圧信号によって指示された周波数で発振し、これをチャネルクロックとして用いる。即ち、AD変換器を初めとし、位相比較器、ループフィルタ、DA変換器、ヴィタビ復号器7の各要素の駆動クロックとなる。この閉ループがPLLを構成していて、チャネルクロックを再生信号のクロックに同期させる働きがあること及び、その動作の詳細に関しては当業者には周知であるので詳述はしない。また、ヴィタビ復号器に関してもその動作の詳細は本発明には直接的に関係しないので、ここでは詳述しない。
図3は、位相比較の原理を説明する図である。位相比較は、エッジ(再生信号が0レベルを交差する箇所)、即ち、マークとスペースの境界に対応する点を用いて行う。チャネルクロックは、エッジに同期している。一方、AD変換のタイミングは、エッジを基準としたクロックタイミングからT/2(T:チャネルクロック周期)ずらしている。以下に於いては、簡単のために、チャネルクロック時刻nT(n:整数)のT/2後にサンプリングされた再生信号をx(n)と表記することにする。図3でチャネルクロックとエッジの位相が完全に同期している場合のエッジとサンプル点をそれぞれ破線と白抜きの円で示す。エッジは、時刻nTにある。この時のエッジを挟む2つのサンプル点の値をそれぞれx(n-1), x(n)とする。また、エッジ付近で再生信号は、直線的であると仮定する。この時、x(n)=-x(n-1)となっている。一方、同じエッジがチャネルクロックに対して位相がΔT遅れている場合を実線と黒塗りの円で示す。エッジは、チャネルクロック時刻(n-1)TとnTの間にあるものとし、それぞれに於けるサンプル点の値をx(n-1), x(n)とする。明らかにx(n)≠-x(n-1)である。エッジの直線性を仮定すると、式(1)の関係にあることは自明である。
即ち、再生信号をチャネルクロックでサンプリングし、エッジを判別し、エッジを挟む2点の再生信号レベルの差から位相誤差を検出することが出来る。
このようにして信号のレベルから位相誤差を求める場合、再生信号に不要な直流成分が重畳されていると正しく位相誤差を求めることが出来なくなる。その様子を図4を用いて説明する。不要な直流成分がなく、かつ、再生信号とチャネルクロックの位相が完全に同期している場合のエッジとサンプル点をそれぞれ破線と白抜きの円で示す。一方、再生信号とチャネルクロックの位相が同期した状態で直流成分がΔx重畳されている状態のエッジとサンプル点をそれぞれ実線と黒塗りの円で示す。再生信号とチャネルクロックの同期が取れている状態であっても直流成分が重畳されていると式(1)の定義によって位相比較を行うと誤った位相誤差値を出力してしまうことになる。このため、再生信号の直流成分は、位相比較器に入力する前に高域通過フィルタを用いて除去する。しかし、その状態でも再生信号にはパターンに依存した直流成分変動などが残留している。パターンに依存する直流成分変動は、光ディスクに記録されるビット列は、一定以上の区間で積分した場合に”0”と”1”の出現確率が等しくなる変調符号を用いて変調されていることを用いてDFB(duty feedback)スライサーを用いて除去する。DFBスライサーは、当業者には良く知られた技術であるので詳述しない。
次に、JFB(jitter feedback)直流補償器の説明をする。直流成分が0、かつ、PLLが完全にロックした状態では、位相誤差が0、即ち、エッジの中点が0レベルに一致し、反対に、PLLがロックした状態で再生信号に直流変動を生じた場合、エッジの中点は0レベルから外れる。従って、エッジの中点レベルを積分することにより直流レベルを得ることが出来る。この方式では、直流成分を検出するのにエッジを用いるのでPLLがロックしていることが前提となる。
PRML(partial response most-likely)復号法は、連続する複数時刻の再生信号と目標信号を比較しながら、最も確からしいビット列に復号するものである。ML(most-likely)復号法の1つであるヴィタビ復号法は回路規模が大幅に削減できるため広く実用化されている。高速化、大容量化に対応するために、光ディスクの再生手段としてもPRML法が応用されるようになって来た。目標信号は、不要な直流成分が皆無であることを前提としているので、再生信号を目標信号と比較する際に再生信号に直流成分が重畳されていると復号性能を劣化させる。
再生時に於いては、欠陥や汚れがある場合等、状態の悪いディスクでも極力リードエラーを起こさないような工夫をしている。例えば、再生信号が殆ど遮蔽してしまうようなディスク表面上の汚れが存在する場合には、特許文献1に記載されているような欠陥検出技術を用いることにより、その影響を最小限に留めることが可能である。同様の手法は、光ディスク一般に用いられていることは当業者間では公知の事実である。その概要は、図5に示したように再生信号のトップエンベロープを監視し、その振幅が一定時間以上、閾値以下である場合に欠陥検出信号を出力する回路である。そして、欠陥検出信号が出力されている間、トラッキングやフォーカシングなどの制御をホールドし、再生信号処理系のPLLもホールドするなどしてこれらの欠陥に起因する好ましくない動作を防止することにより、その影響を最小限に留めるものである。
ディスク上の欠陥などの局所的要因とは別に、2層ディスクの層間干渉などのようにディスク構造に起因するなどしてディスク上の極めて広範囲において再生性能を劣化させる現象も存在する。図6に、層間干渉によって撹乱された再生信号の例を示す。これは、書き換え可能な2層のBlu-rayディスクのL1層、即ち、表面に近い側の層を再生した場合の例である。層間干渉により、本来ほぼ平坦であるべき上下の包絡線が共に大きな外乱を受けていることが解る。L1層再生時は、当該層に再生光が合焦されている。再生光の一部は、L1層を透過し、L0層にて反射され、その一部は光ヘッドのフォトディテクターにまで達する。フォトディテクター上にL0, L1両層からの光が同時に到達するために、両光による干渉が起こる。そして、一般にL0層とL1層の間隔はディスク上の位置毎に僅かに異なる。この様な状況下でディスクを再生するとフォトディテクター上に於けるL0, L1両層からの光による干渉パターンは時間と共に変化する。その結果、図6に示すような再生信号の撹乱を生じる。図6に示すような信号の乱れがあると、欠陥の場合と同様にその箇所に記録されている信号を正しく復号することが出来ずにバーストエラーとなる。図6に示す例では、数100バイトの長さのバーストエラーとなる。これは、Blu-ray Discシステムのエラー訂正符号の能力からすれば再生には全く支障を来たすことの無い長さである。しかし、ディスクの接線方向で層間隔の変化が大きな領域を再生する場合、フォトディテクター上での干渉の状況もより急激に変化するので、図6に示したような信号の乱れが出現する頻度が高くなり、1つのrecording unit block(RUB)中に複数回出現するようになる。この様な状況下では、リードエラーを起こす確率は無視できなくなる。尚、同様の再生信号攪乱を生じさせる要因としては、指紋やトラックデビエーションなどがある。
2層ディスクの層間干渉などによって乱された再生信号の特徴は、局所的な直流成分の変動を伴うことである。この時、直流成分が変動している区間は、BD1Xの場合で時間にして数10μs程度と短いのが特徴である。前述のように再生信号に直流成分が重畳されると、PLL及びヴィタビ復号器の性能を劣化させる。再生信号から不要な直流成分を除去する手段としては、前述のようにDFBスライサーがある。しかし、DFBスライサーは、”0”と”1”の出現確率が等しくなっていることを用いているので、統計的な揺らぎを排除するためには十分に長い積分時間を必要とする。即ち、DFBスライサーでは、層間干渉などによる直流成分変動に対応することは出来ない。
JFB直流補償器は、特許文献3にあるようにPLLがロックした状態で再生信号に直流変動を生じた場合、エッジの中点は0レベルから外れる事を利用し、エッジの中点レベルを積分することにより直流レベルを得ている。この方式では、直流成分を検出するのにエッジを用いるのでPLLがロックしていることが前提となる。従って、本方式単独での直流成分変動補償は困難である。また、重畳された直流成分の振幅が非常に大きい場合、0レベルを挟む2点が本来のエッジの位置からずれてしまうために誤った結果を得てしまうという問題点を有する。本発明で特に対象としている2層ディスクの層間干渉などによる直流成分変動は、上述のようにDFBスライサーの動作速度と比較して速い現象で、かつ、その振幅も再生信号振幅の数10%もあるので、疑似エッジを検出してしまう状況に陥りやすい。
一方、ヴィタビ復号器も再生信号のレベルに合わせて適応的にヴィタビ復号器の目標信号レベル(ターゲットレベル)を追従させることにより再生信号の直流成分変動に対応することが出来る。この技術については、特許文献2に記されている。この技術では、ヴィタビ復号を行う際に用いるターゲットレベルを再生信号に対して追従させているので、欠陥検出機構で検出できない短い欠陥などの影響を受けにくくする必要がある。従って、ターゲットの追従速度を決定する積分器の積分時間は、微小な欠陥などに過度に反応しないだけの長さにする必要がある。よって、適応ヴィタビ復号器も層間干渉のような局所的直流成分変動に対応するのには不適である。
本発明が解決しようとしている課題は、再生信号に重畳されている層間干渉のような局所直流成分変動を低減し、PLL及びヴィタビ復号器の性能劣化を抑制可能なリードチャネルを提供することである。
本発明による再生チャネルは、局所的な直流成分を検出する手段を有する。また、再生信号の微係数から再生信号のエッジ位置を同定し、ある区間長中に出現するエッジの数を計数し、それを用いて平均直流振幅を算出する。再生信号の微係数からエッジの位置を同定する際に、長マーク又はスペース信号で偽エッジを検出するのを防ぐ手段を有する。また、PLLの状態を観測する手段を有し、PLLの状態に応じて直流成分検出器の動作を制御する。また、直流成分振幅の大きさによって再生チャネル中の各要素の動作を制御する。
本発明により、2層ディスクの層間干渉やディスク表面上の指紋などに起因する再生信号の局所直流成分変動に対し性能劣化を少なくすることが可能となり、より再生信頼性の高い光ディスクドライブを提供することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態は、光ディスクドライブを対象にしている。しかし、簡単のため、図示及び説明は本発明が直接対象としている部分に限り、その他の部分は省いている。
図1に本発明の一実施例を示す。図1は、アナログ再生信号をビット列までに復号する光ディスクドライブの再生信号処理系の概略図である。また、BDを前提としている。
ピックアップから出力されたアナログ再生信号は、高域通過フィルタ12によりピックアップ出力に含まれる直流成分をほぼ除去される。その後、アナログ等化器1により波形等化を行った後にAD変換器2でデジタル信号に変換される。このときのサンプリングは、チャネルクロックに同期して行われる。次に、DFBスライサー3にて再生信号のアシンメトリの影響及びデータパターンに依存して変動する直流成分を除去する。DFBスライサー出力は、直流成分検出器8に入力される。直流成分検出器は、再生信号に残留している直流成分の振幅を検出する。その構成と動作は後述する。検出された直流成分は、再生信号から減算器5を用いて差し引く。これにより、直流成分検出器の動作が十分に速ければ位相比較及び復号前の再生信号から直流変動成分は除去されている。直流成分が除去された再生信号は、位相比較器6に入力されチャネルクロック信号との位相を比較する。位相比較器の出力は、ループフィルタ9を通り、DA変換器11に入力される。DA変換器でデジタル信号からアナログ電圧信号に変換される。これがVCO10に対する周波数指示信号となる。VCOは、この周波数指示信号で指定される周波数で発振する。また、直流成分が除去された再生信号は、ヴィタビ復号器7にも入力され、ビット列へと復号される。
次に、直流成分検出器の説明をする。直流成分検出は、直流成分が0、かつ、PLLがロックした状態では、位相誤差が0、即ち、エッジの中点が0レベルに一致し、反対に、PLLがロックした状態で再生信号に局所的な直流変動を生じた場合、エッジの中点は0レベルから外れることを応用して行う。直流成分を検出するのにエッジを用いるので常にエッジを判別できる必要がある。通常、再生信号の連続する2点の値の符号が互いに異なることを持ってエッジとして判別している。しかし、重畳された直流成分の振幅が大きい場合には、本来のエッジを挟む2点が共に同符号となってしまい、また、本来エッジで無い隣接する2点の符号が異なるという状況を生じる。この様な場合こそ位相比較及びヴィタビ復号に与える悪影響が大きい。
そこで、本実施例では、この様な場合でも本来のエッジの位置を判別するために微分エッジ判別方式を用いている。これは、再生信号の時間微分係数がエッジに於いて極大若しくは極小となることを用いるものである。図7は、本方式を説明する図である。前述の通り、再生信号をx(n)で表す。また、x(n)の離散的時間微分を式(2)で示すy(n)で表す。尚、以下に於いては特に断らない限り、単に再生信号の微分信号とはy(n)を指すものとする。
図7中の例のように、x(i-1)とx(i)の間にエッジがあるとするとy(i)が極大又は極小となる。再生信号に直流変動成分が重畳された場合でも、その時間変化率がチャネルクロックに比べて十分に遅ければ時間微分を行うために本来のエッジの位置を判別することが出来ることは自明である。このエッジに於ける直流成分の瞬時値d(n)は、式(3)のようにエッジを挟む両点の平均値となる。
y(n)が極大又は極小であるかを判別するためには、連続する3時刻のy(n-1), y(n), y(n+1)の値を比較する必要がある。
微分エッジ判別によりエッジを判別し、直流成分の瞬時値を得たとしても、この値をそのまま再生信号から差し引くと問題を生じる可能性がある。即ち、再生信号とチャネルクロックの間に位相差を生じた場合にも直流成分の瞬時値は有限の値を取るので、これを再生信号から差し引くことは正しくない。この問題を回避するために、本実施例では瞬時直流成分の移動平均を求め、これを再生信号から差し引いている。
図8に、以上の原理に基づく直流成分検出器の構成を示す。図8中の信号時刻表記は、時刻iに於ける微分エッジ判定と瞬時直流成分検出を行う瞬間であるものとして記してあるので、必要な遅延を考慮すると直流成分検出器の入力の表記はx(i+1)となる。DFBスライサー出力が入力信号となっている。ここでは、これを単に再生信号と呼ぶことにする。再生信号は、まず、2系統に分岐される。第1の系統は、直流成分の振幅を演算するもので、2つの1T遅延器4でx(i)及びx(i-1)を求め、加算器14と乗算器15を用いてそれらの平均値、即ち、直流成分振幅候補c(i)を求める。候補と記したのは、本来的にエッジと判定されない限りは振幅値として扱わないためである。
もう一方の系統は、微分エッジ判定を行う。まず、減算器5を用いてx(i+1)と直流振幅演算時に使用したx(i)から再生信号の微分信号y(i+1)を求める。これを元に、1T遅延器4を用いてy(i), y(i-1)を得る。y(i+1), y(i), y(i-1)は、極大極小判定器19に入力され、y(i)が極大又は極小であるか否かを判定する。y(i)極大極小の判定結果p(i)は、y(i)が極大又は極小である時に真であるとする。y(i)極大極小の判定結果p(i)は、直流成分振幅候補c(i)と共に判定器16に入力され、p(i)が真である場合に判定器16は、当該エッジの瞬時直流成分dを移動平均器17へと出力する。移動平均器17で行う移動平均演算は、通常の移動平均では不都合である。これは、エッジの出現頻度がチャネルクロックの数分の1であり、かつ、不等間隔で出現するからである。このため、Lで指定された平均する時間長内に出現したエッジの数をカウンター18で計測し、この区間内での各エッジでの瞬時直流振幅の和をエッジ出現数Nで除することにより平均直流振幅を求めている。
再生信号がチャネルクロックと位相差を生じている場合、それが直流成分検出に与える影響は隣接するエッジ同士ではその符号が異なる。従って、上記の様に平均を取ることにより、再生信号にチャネルクロックとの位相差が生じている場合でも直流成分検出への影響を抑えることを可能にしている。
平均区間長Lの長さは、長い方が雑音などの影響を受けにくくなる。しかし、Lを長くしすぎるとDFBスライサー出力から直流成分を差し引く際に、DFBスライサー出力と遅延差が大きくなり過ぎることによる演算誤差を生じるという副作用を生じる。BDで層間干渉を対象とする場合には、Lの長さは100から1000Tが適当である。
尚、図1では、直流成分を差し引いた結果をそのままヴィタビ復号器に入力しているが、ヴィタビ復号器の直前に適応等化器を挿入することにより復号性能を向上できることは自明である。
BDでは、最短符号の2T符号と4T以上の符号が隣接しあう箇所では符号間干渉の影響により微分エッジ判定を誤る確率が高くなる。これを低減するには、微分エッジ判定の前に符号間干渉を軽減するような等化を行えばよい。これを実現した時の構成を図9に示す。DFBスライサーの直前にFIR(finite impulse response)等化器20を挿入し、符号間干渉が少なくなるように等化を行っている。この場合のFIR等化器の等化特性を図10に示す。また、この例では、ヴィタビ復号器7の直前に適応等化器21を挿入することにより復号性能を高めている。
図9に示した構成の効果を図11に示す。使用したディスクは、1面記録容量が25ギガバイトのBD2層ディスクである。図11は、当該ディスク上で層間干渉の影響が現れている箇所の再生信号波形を信号処理シミュレータで処理した結果を表示している。上側(a)の波形は、従来のチャネルの結果であり、時刻A付近からD付近までの間で再生信号が乱されている。即ち、時刻AからBでは、急激な振幅減少に続き、大きな正の直流成分が重畳されていて、上側包絡線が処理範囲を越えている期間もある。時刻BからC付近までは、今度は負の直流成分が重畳されていて、その振幅は再生信号振幅のおよそ20%もある。時刻C付近からD付近までは小さいながら再び正の直流成分が重畳されている。図11の下側(b)の波形は、図9に示した系で処理した場合である。尚、どちらの波形も共に適応等化器へ入力する直前のものである。また、この信号処理シミュレータは、エラー訂正符号を解読し、エラー箇所を表示する機能を有している。エラー箇所を連続線で表示するため、バーストエラー箇所では、(b)の時刻AからBのように塗りつぶされて表示される。(a)でエラーが表示されていないのは層間干渉の影響が著しく、リードエラーを起こしたためにエラー訂正処理時に得られるはずのエラー箇所の情報を取得できなかったためである。
(a)及び(b)の時刻BからCの区間を比較すると、明らかに(b)では(a)に見られる負の直流成分がほぼ解消されていて、エラーも生じていない。時刻CからDの区間に関しても同様である。区間A−Bに関しては、振幅減少と処理範囲を超える直流成分が重畳されたことから改善効果は得られていない。
また、検出した直流成分をフィードバック方式で再生信号から差し引く構成でも同様の効果を得ることが出来る。図12に示した例では、AD変換器2の出力から直流成分検出器8及びDFB回路22の出力を差し引くためにDFBスライサーのループと並列になるフィードバックループを構成している。ここで、DFB回路とは、DFBスライサーを構成する要素の内、加算器(減算器)以外の回路部分すべてのことを指している。
再生信号中の長スペース又はマークは、図13に示すようにそれぞれの中央部分が凹んだり出っ張ったりしていることがある。これらは、ディスク上のマーク形状や等化条件によって出現することがある。このような形状があると、再生信号の微分信号はマークやスペースの中央付近で極大又は極小を示してしまうためにエッジを誤判定してしまうことがある。ただし、これらの凹みなどは、その形状が緩やかであるので微係数の絶対値は小さい。従って、絶対値の小さな極大及び極小を無視することによりエッジの誤判定を回避できる。これを実現した直流成分検出器の構成を図14に示す。
これは、図8に示した直流成分検出器に上記機能を付加した構成になっている。即ち、予めエッジ判定からはずす極大及び極小値を定めておき、その絶対値hを絶対値比較器24に設定しておく。絶対値比較器24のもう一方の入力には、エッジ判定の対象となる点の再生信号の微分y(i)を入力する。絶対値比較器24の出力は論理信号で、両者の絶対値を比較し、y(i)がhよりも大きい場合に「真」を出力する。この出力は、論理積回路25の一方の端子に入力される。論理積回路25のもう一方の端子には、極大極小判定器19の出力を入力する。論理積回路25の出力がエッジの判定結果である。その他の動作は、図8の例と同様である。
直流成分検出にはPLLがロック状態にある必要がある。従って、PLLのロック状態によって自動的に直流成分検出器の動作をする必要がある。また、図11の例のように、重畳された直流変動成分の振幅が著しく大きく、直流成分を補償しきれない場合がある。この様な場合、再生チャネルの各要素の動作を一時的に抑止することにより性能劣化を少なくすることが可能である。
PLLのロック状態によって自動的に直流成分検出器の動作を自動的に制御し、また、規定値よりも大きな直流成分検出時に再生チャネルの一部要素の動作を抑止する機能を付加した場合の構成を図15に示す。図15は、図9に示す構成を基本にしているが、本実施例の内容は、図1及び図12の構成に対しても同様に適用可能である。
PLLのロック状態は、PLLロックモニター23によって監視される。PLLのロック状態を観測する回路は、当業者には公知であるので、ここではその構成及び動作に関しては詳述しない。PLLロックモニターは、PLLがロックしているか否かを判定し、その出力で直流成分検出器8の動作を制御する。即ち、PLLがロック状態にあれば直流成分検出動作を有効にし、再生信号からの直流成分補償を行い、ロックしていない場合には直流成分検出動作を抑止し、直流成分検出器8の出力を0とする。
直流成分検出器8は、予め指定された規定値よりも大きな直流成分を検出した場合、その値が規定値を越えている間、抑止信号を出力する。抑止信号は、位相比較器6、適応等化器21、ヴィタビ復号器7の各要素に入力される。位相比較器6は、抑止信号を受信している間、その出力を全て0とする。これにより、VCO10の発振周波数はその間固定される。これにより極端な直流成分のために補償が十分に出来ないために誤った位相比較を行うことを避けることが出来る。
適応等化器21は、抑止信号を受信している間、適応動作を抑止し、抑止信号を受信する直前のタップ係数を維持し続ける。これにより、異常な係数学習を防止することが出来る。また、この例では、ヴィタビ復号器7は、適応ヴィタビ方式を用いているので、適応等化器の場合と同様に異常なターゲット学習を防止するために抑止信号を受信している間、適応動作を抑止する。
図16に、本発明に基づいて実現した光ディスクドライブの構成概略を示す。図16には、本発明に関連して説明する必要のある部分のみを示し、他の部分は図示を省略している。同様に、各部の詳細に関しても、当業者なら容易に理解可能な部分に関しては説明を省略する。
まず、動作の概要を説明する。光ディスク101に記録されている情報は、ピックアップ102により光学的に読み出され電気信号(再生信号)に変換される。再生信号は、AFE(analog front end)−IC103で一定の振幅に増幅され、また、内蔵されているアナログ等化器で等化された後に、DSP(digital signal processor)104中のリードチャネルデジタル部105に入力される。上記実施例で説明したように、再生信号は、リードチャネルデジタル部に於いてビット列へと復号される。なお、本実施例では光ディスクドライブのアナログ回路の大部分を集積したAFE−ICとデジタル回路の大部分を集積したDSPという2種類のLSIを用いる構成になっている。この様にLSIを組み合わせる構成は、光ディスクドライブでは一般的であり、その場合、通常、アナログ等化器は、AFE−IC内に集積される。ここで、リードチャネルデジタル部は、図17に示すように、図1に示したリードチャネルの内、AD変換器より後の、主にデジタル回路から構成される部分のことである。
復号されたビット列は、ECC(error correction code)デコーダ106によって符号訂正処理を行い、ユーザデータを取り出す。取り出されたユーザデータは、インターフェース回路107を介してドライブの外部へと出力される。再生信号の局所的な直流成分変動に対応できるリードチャネルを用いたことにより、2層ディスクや指紋が付着したディスクの再生性能が向上している。
図18は、図15に示した型のリードチャネルを用いた光ディスクドライブの構成概略図である。動作の概要を説明する。光ディスク101に記録されている情報は、ピックアップ102により光学的に読み出され電気信号(再生信号)に変換される。再生信号は、AFE−IC103で一定の振幅に増幅され、また、内蔵されているアナログ等化器で等化された後に、DSP104中のモニター付きリードチャネルデジタル部109に入力される。上記実施例で説明したように、再生信号は、モニター付きリードチャネルデジタル部に於いてビット列へと復号される。ここで、モニター付きリードチャネルデジタル部は、図15に示すように、図1に示したリードチャネルの内、AD変換器より後の、主にデジタル回路から構成される部分のことである。
復号されたビット列は、ECCデコーダ106によって符号訂正処理を行い、ユーザデータを取り出す。取り出されたユーザデータは、インターフェース回路107を介してドライブの外部へと出力される。
本例で使用されているリードチャネルの特徴は、図15の説明で述べたように、PLLのロック状態を判定する信号と一定以上の振幅の直流成分を検出している間に直流成分検出器から出力される抑止信号という2種類の信号が提供されていることである。これらの信号は、前述のように、通常、リードチャネル内で各要素の動作を制御するのに用いられる。本例では、これらの信号は、ファームウェア108からの参照を可能としている。これにより、ファームウェア108は、再生中に発生した問題を知ることができる。本例では、あるブロックを再生中にリードエラーが起きた場合、PLLロック状態信号をモニターすることにより当該ブロックを再生中にPLLがアンロック状態に陥ったか否かを調べる。該当する場合、ファームウェア108は、PLLの時定数を一時的に増減するようにDSPにPLLパラメータを設定し、アンロック状態の回避を試みる。
図8のように直流成分検出器中で微分エッジ判定を用いて求められた瞬時の直流成分の値は、再生信号に含まれる雑音の影響により誤差を含む。また、符号間干渉の影響によるエッジの誤判定により誤った値である可能性も有る。これらの影響を軽減するために、直流成分検出器では、微分エッジ判定により求めた瞬時の直流成分を移動平均や積分を用いて平均直流成分を求めている。この様にして求められた平均直流成分は、当然、再生信号に対して遅延を生じる。平均化の効果を上げるためには平均化の対象期間を長くする必要がある。しかし、この遅延量が大きいと求められた直流成分を再生信号から差し引いても十分な効果を期待できないことは明らかである。
図19は、上記の問題点を回避可能な直流成分検出器の構成概略を示したものである。平均の直流成分値を求めるまでの構成は、図8と同じである。図8の構成と異なるのは、図19では移動平均器出力を更に外挿器201へと入力し、直流成分検出器の最終出力が外挿器の出力となっている点である。外挿器は、過去の値を元に、外挿演算により、入力された最新の時刻より先の時刻に於ける値を推定するものである。外挿器は、信号処理回路では広く用いられているものであるから、その構成などはここでは詳述しない。今の場合、遅延の主な原因は、平均化処理であるから平均化時間Lだけ先の時刻の値を求めることにより、先に述べた平均直流成分の再生信号に対する遅延をほぼ解消することが出来る。
本発明は、主に光ディスクドライブに使用するリードチャネルに関する。特に、2層以上の記録層を有するBD及びHDDVD媒体を再生するドライブに有効である。光ディスクドライブ以外にも、同様の課題を有する信号を再生するチャネルを有する垂直磁気記録ドライブなどにも応用可能である。
1:アナログ等化器、2:AD変換器、3:DFBスライサー、4:1T遅延器、5:減算器、6:位相比較器、7:ヴィタビ復号器、8:直流成分検出器、9:ループフィルタ、10:VCO、11:DA変換器、12:高域通過フィルタ、14:加算器、15:乗算器、16:判定器、17:移動平均器、18:カウンター、19:極大極小判定器、20:FIR等化器、21:適応等化器、22:DFB回路、23:PLLロックモニター、24:絶対値比較器、25:論理積回路、101:ディスク、102:ピックアップ、103:アナログフロントエンドIC、104:DSP、105:リードチャネルデジタル部、106:ECCデコーダ、107:インターフェース回路、108:ファームウェア、109:モニター付きリードチャネルデジタル部、201:外挿器
Claims (16)
- アナログ再生信号をデジタル再生信号に変換するAD変換器と、
前記デジタル再生信号を処理するDFBスライサーと、
前記DFBスライサーの出力に残留している直流成分を検出する直流成分検出器と、
前記DFBスライサーの出力から前記直流成分検出器の出力を減じる減算器と、
前記減算器の出力とチャネルクロック信号との位相を比較する位相比較器と、
前記位相比較器の出力が入力されるループフィルタと、
前記ループフィルタの出力をアナログ電圧信号に変換するDA変換器と、
前記DA変換器から供給されるアナログ電圧信号に指示された周波数で発振し前記チャネルクロック信号を発生するVCOと、
前記減算器の出力が入力されるヴィタビ復号器と
を有することを特徴とする再生信号処理回路。 - 請求項1に記載の再生信号処理回路において、
前記直流成分検出器は、
再生信号の時間差分により前記再生信号の微分信号を求める手段と、
前記微分信号の極大又は極小時刻を判定する手段と、
前記微分信号の極大又は極小時刻に基づいて判定された前記デジタル再生信号のエッジにおける前記デジタル再生信号の瞬時値を求める手段と、
前記デジタル再生信号のエッジにおける前記デジタル再生信号の瞬時値の平均値を平均直流成分値として求める手段とを有し、
前記平均直流成分値を出力することを特徴とする再生信号処理回路。 - 請求項1に記載の再生信号処理回路において、
前記直流成分検出器は、
再生信号の時間差分により前記再生信号の微分信号を求める手段と、
前記微分信号の極大又は極小時刻を判定する手段と、
前記微分信号の極大又は極小時刻に基づいて判定された前記デジタル再生信号のエッジにおける前記デジタル再生信号の瞬時値を求める手段と、
指定時間内における前記微分信号の極大又は極小の出現回数を計数する手段と、
前記指定時間内における前記デジタル再生信号のエッジにおける前記デジタル再生信号の瞬時値の和と前記極大又は極小の出現回数から平均直流成分値を求める手段とを有し、
前記平均直流成分値を出力することを特徴とする再生信号処理回路。 - 請求項1に記載の再生信号処理回路において、絶対値比較器を有し、絶対値が前記絶対値比較器に予め設定された絶対値より小さい前記微分信号の極大又は極小を無視することを特徴とする再生信号処理回路。
- 請求項1に記載の再生信号処理回路において、前記直流成分検出器の出力をAD変換器出力へ負帰還させることを特徴とする再生信号処理回路。
- 請求項1に記載の再生信号処理回路において、前記AD変換器と前記DFBスライサーとの間にFIRイコライザーを挿入したことを特徴とする再生信号処理回路。
- 請求項1に記載の再生信号処理回路において、PLLロックモニターと、前記PLLロックモニターの出力によって前記直流成分検出器の動作を制御する手段と、前記直流成分検出器で検出した直流成分の値に応じて当該再生信号処理回路中の各要素の動作を制御する手段とを有することを特徴とする再生信号処理回路。
- 請求項1に記載の再生信号処理回路において、前記平均直流成分値を求める手段の出力を外挿器に入力し、該外挿器出力を前記減算器を用いて前記再生信号から減ずることを特徴とする再生信号処理回路。
- アナログ再生信号をデジタル再生信号に変換する工程と、
前記デジタル再生信号をDFBスライサーで処理する工程と、
前記DFBスライサーの出力に残留している直流成分を検出する工程と、
前記DFBスライサーの出力から前記直流成分を減算する工程と、
前記減算後の信号とチャネルクロック信号との位相を比較する工程と、
前記位相比較結果をもとに前記チャネルクロック信号を発生する工程と、
前記減算後の信号を復号する工程とを有し、
前記直流成分を検出する工程では、前記デジタル再生信号の微分信号が極大又は極小となる時刻に基づいて判定された前記デジタル再生信号のエッジにおける前記デジタル再生信号の瞬時値の平均値を求め、それを前記直流成分とすることを特徴とする再生信号処理方法。 - 請求項9に記載の再生信号処理方法において、絶対値が予め設定された絶対値より小さい前記微分信号の極大又は極小を無視することを特徴とする再生信号処理方法。
- 請求項9に記載の再生信号処理方法において、PLLのロック状態を監視し、ロックしていなければ前記直流成分を0とすることを特徴とする再生信号処理方法。
- 請求項9に記載の再生信号処理方法において、前記検出された直流成分が予め定められた値より大きいとき、前記減算後の信号とチャネルクロック信号との位相差を0とし、前記復号工程における学習を行わないことを特徴とする再生信号処理方法。
- 光ディスクに記録された情報を光学的に読み出して再生信号に変換するピックアップと、前記再生信号を処理する再生信号処理回路とを含み、
前記再生信号処理回路は、AD変換器とDFBスライサーと位相比較器とループフィルタとDA変換器とVCOとから構成されるデジタルPLLと、前記DFBスライサーの出力に残留している直流成分を検出する直流成分検出器と、前記DFBスライサーの出力から前記直流成分検出器の出力を減じる減算手段と、前記減算手段の出力が入力されるヴィタビ復号器とを有し、
前記直流成分検出器は、前記再生信号の時間差分により前記再生信号の微分信号を求める手段と、前記微分信号の極大又は極小時刻を判定する手段と、前記微分信号の極大又は極小時刻に基づいて判定された前記再生信号のエッジにおける前記再生信号の瞬時値を求める手段と、前記再生信号のエッジにおける前記再生信号の瞬時値の平均直流成分値を求める手段とを有することを特徴とする光ディスクドライブ。 - 請求項13に記載の光ディスクドライブにおいて、前記直流成分検出器は、指定時間内における前記微分信号の極大又は極小の出現回数を計数し、前記指定時間内における前記再生信号のエッジにおける前記再生信号の瞬時値と前記微分信号の極大又は極小の出現回数から前記平均直流成分値を求めることを特徴とする光ディスクドライブ。
- 請求項13に記載の光ディスクドライブにおいて、絶対値比較器を有し、絶対値が前記絶対値比較器に予め設定された絶対値より小さい前記微分信号の極大又は極小を無視することを特徴とする光ディスクドライブ。
- 請求項13に記載の光ディスクドライブにおいて、前記再生信号処理回路中に設けられたPLLロックモニターと、前記PLLロックモニター出力によって前記直流成分検出器の動作を制御する手段と、前記直流成分検出器で検出した直流成分の値に応じて前記再生信号処理回路中の各要素の動作を制御する手段とを有することを特徴とする光ディスクドライブ。
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