JP2008138104A - 芳香族炭化水素系イオン交換膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
炭化水素系高分子固体電解質膜の課題であった触媒電極との接合性の不足を改善するイオン交換膜を提供する。
【解決手段】 芳香族炭化水素系イオン交換膜の一方の表面の表面面配向度と他方の表面の表面面配向度との差が0.8以下であることを特徴とする芳香族炭化水素系イオン交換膜
であり、また、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマー溶媒溶液を、支持体上に流延した後、溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発を開始させ、溶媒の沸点の70℃以下までの温度で溶媒を除去させてイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーの自己支持性膜とした後、得られた膜を酸性液に接触させてイオン性基を酸型に変換することを特徴とする上記の芳香族炭化水素系イオン交換膜の製造方法。
【選択図】なし
Description
1.芳香族炭化水素系イオン交換膜の一方の表面の表面面配向度と他方の表面の表面面配向度との差が、0.8以下であることを特徴とする芳香族炭化水素系イオン交換膜。
2.表面面配向度が高い方の表面の表面面配向度が2.0以下である、上記1記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
3.カール度が5%以下である上記1又は2に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
4.芳香族炭化水素系イオン交換膜が、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを有し、イオン交換容量が0.3〜3.5meq/gである上記1〜3のいずれかに記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
5.イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーが、一般式(1)及び一般式(2)で示される構成単位を含むポリアリーレンエーテル系化合物である上記1に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
6.イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを溶媒に溶かした溶液を、支持体上に流延した後、前記溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発除去を開始し、次いで溶媒の沸点より100〜70℃低い温度で溶媒の蒸発除去を行いイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーの自己支持性膜とした後、得られた自己支持性膜のイオン性基を酸性液に接触させて酸型に変換することを特徴とする上記1に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜の製造方法。。
まず、本発明における芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーについて述べる。
本発明における芳香族炭化水素系のイオン性基含有ポリマーは、ポリマー主鎖に芳香族あるいは芳香環とエーテル結合、スルホン結合、イミド結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合、カーボネート結合及びケトン結合から選択される少なくとも1種以上の結合基を有する構造を持つ非フッ素系のイオン伝導性ポリマーであり、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、及びそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。
なお、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボシキル基などの官能基をポリマーに含むことで、ポリマーのイオン伝導性が発現される。この中で特に有効に作用する官能基は、スルホン酸基である。また、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。
一般式(2)中、Ar’は2価の芳香族基、Z’は2価の脂肪族基、エーテル結合、チオエーテル結合など芳香環をつなぐ各種結合様式より選択されるが、エーテル結合または/及びチオエーテル結合(OまたはS)が好ましく、その中でもエーテル結合がより好ましい。
また、一般式(1)及び(2)における脂肪族基としては、−C(CH3)2−基、−C(CF3)2−基、−CH2−基、シクロヘキシル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明においては、当該表裏面配向度差を0.8以下に制御することにより、芳香族炭化水素系イオン交換膜のカール度を5%以下にすることができるのみならず、膜と触媒電極とを接合した接合体は、燃料電池に用いて発電時の熱変形安定性及び膨潤変形安定性を大幅に向上させることができる。
カール量(mm)=(h1+h2+h3+h4)/4
カール度(%)=100×(カール量)/35.36
初期乾燥を溶媒の沸点より100℃以上低い温度で行うことにより、支持体に接触した表面の分子の面方向への配向が抑制されるとともに、膜の支持体側から膜の表面側への(厚み方向への)溶媒の移動がゆっくりであるため、分子の厚み方向への配向も抑制され、かつ膜の表面の塗工時の配向やひずみも緩和されるものと考えられる。
一方、高温で急激に乾燥すると、支持体に接触した表面の分子の面方向への配向が促進されるとともに、膜の支持体側から膜の表面側への(厚み方向への)溶媒の移動が速く、分子の厚み方向への配向も発生し、かつ膜の表面の塗工時の配向やひずみも緩和されず、膜中にひずみが保存されてしまうと考えられる。
また、キャストしたポリマー溶媒溶液から膜を得る方法も公知の方法を用いることができる。キャストしたポリマー溶媒溶液は、前記したように、乾燥温度、乾燥条件などを調整して、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には、最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどしてポリマーの凝固速度を調整することができる。
以下にイオン交換膜の評価方法を示す。なお評価するに際しては、特別な記載がない限り、厚みや重量を正確に測ることを目的とし、室温が20℃で湿度が30±5RH%にコントロールされた測定室内で評価を行った。なお測定に際してサンプルは、24時間以上、測定室内で静置したものを使用した。
表面面配向度は偏光ATRを用い、入射角45°、分解能4cm−1、積算回数128回で測定を行った。1490cm−1付近に現れるピーク(芳香環環振動)におけるMD方向の吸収係数(Kx)、TD方向の吸収係数(Ky)及び厚み方向の吸収係数(Kz)を芳香族炭化水素系イオン交換膜の表裏それぞれについて求め、次式により表面面配向度を算出した。
表面面配向度=(Kx+Ky)/(2×Kz)
また、本発明の芳香族炭化水素系イオン交換膜表裏の表面面配向度の差は次式に示すように、空気面側(A面)と支持体側(B面)との表面面配向度の差の絶対値により算出される。
表面面配向度の差=|A面の表面面配向度―B面の表面面配向度|
装置名;FT−IR(VARIAN社製、FTS−60A/896)
一回反射ATRアタッチメント;golden gate MKII(SPECAC社製)
IRE;ダイアモンド
入射角;45°
50mm×50mmの試験片をアルミナ・セラミック製の平板に設置し、100℃で10分間熱風処理した後の四隅のセラミック板からの距離(h1、h2、h3、h4:単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、次式からカール度を算出した。なお、用いたセラミック板自体のカール量は、0.1mm以下である。
カール量(mm)=(h1+h2+h3+h4)/4
カール度(%)=100×(カール量mm)/35.36mm
イオン交換膜の厚みは、マイクロメーター(Mitutoyo DIGIMATIC MICROMETER 最小読取値:0.001mm)を用いて測定することにより求めた。測定は10箇所行い、その平均値を厚みとした。
ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/c)で評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
イオン交換容量(IEC)としては、イオン交換膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5cm×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケーター中で30分間放置冷却した後、乾燥重量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム−超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉したまま、室温で24時間攪拌した。次いで、溶液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IECを求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
イオン伝導性σは次のようにして測定した。
自作測定用プローブ(ポリテトラフルロエチレン製)上で幅10mmの短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間の交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を10mmから40mmまで10mm間隔で変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした直線の勾配Dr[Ω/cm]から下記の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルして算出した。
σ[S/cm]=1/(膜幅[cm]×膜厚[cm]×Dr)
プロトン交換膜のメタノール透過速度及びメタノール透過係数は、以下の方法で測定した。
25℃に調整した5モルの濃度(5モル/リットル)のメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用)に24時間浸漬したプロトン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5モルの濃度のメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、プロトン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフにより測定することで算出した(プロトン交換膜の面積は、2.0cm2)。すなわち、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](mmol/L/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[mmol/m2/s]
=(Ct[mmol/L/s]× 0.1[L])/2×10−4[m2]
メタノール透過係数[mmol/m/s]
=メタノール透過速度[mmol/m2/s]×膜厚[m]
Pt/Ru触媒担持カーボン(田中貴金属工業社 TEC61E54)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt/Ru触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1になるように加えた。次いで撹拌してアノード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、ガス拡散層となるカーボンペーパー(東レ社製 TGPH−060)に白金の付着量が1.8mg/cm2になるようにアプリケーターを用いて均一に塗布・乾燥して、アノード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。また、Pt触媒担持カーボン(田中貴金属工業社 TEC10V40E)に少量の超純水及びイソプロピルアルコールを加えて湿らせた後、デュポン社製20%ナフィオン(登録商標)溶液(品番:SE−20192)を、Pt触媒担持カーボンとナフィオンの重量比が2.5:1となるように加え、撹拌してカソード用触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、撥水加工を施したカーボンペーパー(東レ社製 TGPH−060)に白金の付着量が1mg/cm2となるように塗布・乾燥して、カソード用電極触媒層付きカーボンペーパーを作製した。上記2種類の電極触媒層付きカーボンペーパーの間に、膜試料を、電極触媒層が膜試料に接するように挟み、ホットプレス法により加圧、加熱することにより、膜−電極接合体とした。
また100mA/cm2で300時間定電流連続放電試験を実施し、電流遮断法により抵抗値(mΩ・cm2)の経時変化を調査した。触媒電極と電解質膜接合体における抵抗値が増加する場合、触媒電極と電解質膜の間の接合性が低下したことを示す。発電後の外観からも接合状態を確認し、電解質膜と触媒電極との剥離が見られなかった場合は「○」、剥離が起こった場合を「×」とした。
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩720.6g、2,6−ジクロロベンゾニトリル585.9g、4,4’−ビフェノール885.0g、炭酸カリウム754.8g、N−メチル−2−ピロリドン5475.5gを入れて、窒素雰囲気下にて150℃で1時間撹拌した後、反応温度を200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約8時間)。放冷の後、水中にストランド状に沈殿させた。
得られたポリマーは、水中で40時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの対数粘度は1.40を示した。得られたポリマーを、N−メチル−2−ピロリドン(沸点:202℃)を溶媒として用い、ポリマー濃度が26.0重量%となるように溶液を調整した。
調整した溶液をステンレスベルト上にスキージ/ベルト間のギャップが300μmになるよう温度25℃で流延し、4つの熱風式乾燥ゾーンにて、80℃×10分、80℃×10分、80℃×10分、80℃×10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となった膜を支持体より剥離させゲル状膜を得た。その後、イオン性基の金属塩をプロトンに置換するため、60℃で2モル(モル/リットル)の濃度の硫酸に20分間浸漬し、水洗後80℃で12時間乾燥し、厚み55μmのイオン交換膜を得た。得られたイオン交換膜の物性値を表1に示す。
実施例1と同様の溶液をステンレスベルト上に流延した後に、4つの熱風式乾燥ゾーンの温度×時間を表1に示した通りにした以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
実施例1と同様の溶液をステンレスベルト上にスキージ/ベルト間のギャップが600μmになるよう温度25℃で流延した後に、4つの熱風式乾燥ゾーンの温度×時間を表1に示した通りにした以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜を得た。
これらの評価結果より、比較例では、初期の乾燥温度が120℃と高い状態からの乾燥となっており、その結果、表裏の面配向度の差が0.8以上となり、カール度も5%以上である。実施例、比較例共に単膜特性に顕著な違いは見られないが、触媒電極との接合後の発電特性では、明らかに比較例の乾燥条件で製造した膜は性能が劣っている。
したがって、本発明によれば、膜のカール度を5%未満とすることで触媒電極との接合性が改善され、膜と触媒電極との剥離による燃料電池の性能低下を回避できる優れたイオン交換膜が提供できることがわかる。
ロ・・・アルミナ・セラミック板
1、2、3、4・・・試験片の四隅
h1・・・膜の1の位置でのアルミナ・セラミック板からの距離
h4・・・膜の4の位置でのアルミナ・セラミック板からの距離
Claims (6)
- 芳香族炭化水素系イオン交換膜の一方の表面の表面面配向度と他方の表面の表面面配向度との差が、0.8以下であることを特徴とする芳香族炭化水素系イオン交換膜。
- 表面面配向度が高い方の表面の表面面配向度が2.0以下である請求項1記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
- カール度が5%以下である請求項1又は2に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
- 芳香族炭化水素系イオン交換膜が、イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを有し、イオン交換容量が0.3〜3.5meq/gである請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜。
- イオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーを溶媒に溶かした溶液を、支持体上に流延した後、前記溶媒の沸点より100℃以上低い温度で溶媒の蒸発除去を開始し、次いで溶媒の沸点より100〜70℃低い温度で溶媒の蒸発除去を行いイオン性基含有芳香族炭化水素系ポリマーの自己支持性膜とした後、得られた自己支持性膜のイオン性基を酸性液に接触させて酸型に変換することを特徴とする請求項1に記載の芳香族炭化水素系イオン交換膜の製造方法。
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2006
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