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JP3651684B1 - イオン交換膜 - Google Patents

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JP3651684B1
JP3651684B1 JP2004053388A JP2004053388A JP3651684B1 JP 3651684 B1 JP3651684 B1 JP 3651684B1 JP 2004053388 A JP2004053388 A JP 2004053388A JP 2004053388 A JP2004053388 A JP 2004053388A JP 3651684 B1 JP3651684 B1 JP 3651684B1
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Abstract

【課題】メタノール等の高濃度の燃料を使用時に劣化が少なく、信頼性に優れたイオン交換膜、及びそれを使用した高性能な燃料電池を供給する。
【解決手段】スルホン酸基を含有する芳香族炭化水素系化合物からなり、80℃の5mol/lメタノール水溶液に20時間浸漬する前後で測定したメタノール透過係数の差が20%以下であることを特徴とするイオン交換膜であり、80℃以上の溶媒に含浸する処理を施すことにより、メタノール透過係数を安定化させ達成した。

Description

本発明はイオン交換膜に関係し、詳しくは、燃料電池に使用される、特に液体燃料透過速度の経時変化が少ないイオン交換膜に関するものでる。
環境調和型のエネルギーデバイスとして、燃料電池が注目されている。燃料電池はイオン交換膜を固体電解質として使用し、それに接合した電極上で、水の電気分解の逆反応を起こすことにより発電するシステムである。これに用いられるイオン交換膜は、カチオン交換膜としてプロトン伝導性を有するともに化学的、熱的、電気化学的および力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとしては、主に米デュポン社製の非パーフルオロカーボンスルホン酸系しかしながら、ナフィオン(商品名)膜をメタノール等の液体有機燃料を燃料とする燃料電池において使用する場合、例えばメタノールがイオン交換膜を透過して空気極側に流れ込んでしまうクロスオーバーという問題が顕著である。このクロスオーバーが生じると、液体燃料と酸化剤がカソードで直接反応してしまい、電力が低下してしまうという問題や、液体燃料がカソード側から外部に漏れ出すといった問題が発生するため、クロスオーバーの小さなイオン交換膜の開発が望まれている。また、パーフルオロカーボンスルホン酸膜の別な問題として、高コストが指摘されており、燃料電池の実用化には、これらの問題を解決しうるイオン交換膜が必要である。
このような欠点を克服するため、非フッ素系芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入した高分子イオン交換膜が種々検討されている。ポリマー骨格としては、耐熱性や化学的安定性を考慮すると、芳香族ポリアリーレンエーテルケトン類や芳香族ポリアリーレンエーテルスルホン類などの、芳香族ポリアリーレンエーテル化合物を有望な構造としてとらえることができ、ポリアリールエーテルスルホンをスルホン化したもの(例えば、非特許文献1参照。)、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したもの(例えば、特許文献1参照。)、スルホン化ポリスチレン等が報告されている。しかしながら、これらポリマーのスルホン化反応により芳香環上に導入されたスルホン酸基は一般に熱により脱離しやすい傾向にあり、これを改善する方法として電子吸引性芳香環上にスルホン酸基を導入したモノマーを用いて重合することで、熱的に安定性の高いスルホン化ポリアリールエーテルスルホン系化合物が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
このようなイオン交換膜を、液体燃料を使用するタイプの燃料電池であるダイレクトメタノール型燃料電池に応用した例として、比較的良好なイオン伝導性と、比較的良好な初期発電特性を有する燃料電池を得たという報告がなされている(非特許文献2)。しかしながら運転を重ねると、イオン交換膜のモルフォロジーが変化し、メタノールの透過性が増加するため、メタノールのクロスリークによる電圧低下を引き起こすので、電池の性能が低下するという問題を有していた。また、発電性能の低下は、そのまま燃料電池を搭載するデバイスの性能低下や不安定化につながるため避けなければならない。なお、イオン交換膜のモルフォロジーがダイレクトメタノール型燃料電池の性能に影響するという報告は、例えば非特許文献3で示されている。
特開平6−93114号公報(第15−17頁) 米国特許出願公開第2002/0091225号明細書(第1−2頁) ジャーナル・オブ・メンブラン・サイエンス(Journal of Membrane Science)、(オランダ)1993年、83巻、P.211−220 AIChE Fuel Cell Technology:Opportunities and Challenges,558(2002) The Electrochemical Society 203rd Meeting−Paris,Abs No.1169
本発明は、ダイレクトメタノール型燃料電池を始めとする液体燃料を使用するタイプの燃料電池に使用するのに適した、液体燃料透過性が変化しにくいイオン交換膜であり、燃料電池とした場合、長期間安定に運転できる。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、イオン交換膜のモルフォロジーが変化しにくい、安定性に優れるイオン交換膜を提供できることを見出した。
すなわち本発明は、液体燃料を使用する燃料電池用のスルホン酸基を含有する芳香族炭化水素系化合物、つまり非パーフルオロカーボンスルホン酸系芳香族炭化水素のイオン交換膜であって、該イオン交換膜を80℃の5mol/lメタノール水溶液に20時間浸漬した前後で測定したメタノール透過係数の差が20%以下であることを特徴とする、メタノール透過抑制性能の安定性に優れるイオン交換膜である。
本発明における、スルホン酸基を含有する芳香族炭化水素系化合物,非パーフルオロカーボンスルホン酸系芳香族炭化水素とは、「ナフィオン(登録商標)」に代表される主鎖の水素が全てフッソに置換された材料を除く芳香族系材料であり、部分フッ化物であってもかまわないものである。
また、上記のイオン交換膜であって、80℃以上の溶媒に含浸する処理を施したことを特徴とするイオン交換膜である。
また、上記のイオン交換膜であって、水および/またはアルコールを含む液に含浸する処理を施したことを特徴とするイオン交換膜である。
また、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とするイオン交換膜である。
Figure 0003651684
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 0003651684
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
また、上記のイオン交換膜の製造方法である。
また、上記のイオン交換膜を使用したイオン交換膜・電極接合体である。
また、上記のイオン交換膜・電極接合体を使用した燃料電池に関するものである。
本発明は、液体燃料中でモルフォロジーの変化が少ないことを特徴とするイオン交換であり、本発明によるイオン交換膜は、液体燃料を使用する燃料電池の性能安定性を向上する。
液体燃料を使用するタイプの燃料電池である、例えばダイレクトメタノール型燃料電池を連続間運転する場合、初期性能は良好であっても性能は経時的に変化し、特に発電開始から数十時間の範囲で電池性能が変化しやすいという現象を観察した。このような性能変化の発生は、燃料電池を組み込むデバイスでの制御をより複雑なものとするため好ましくなく、改善が求められる。性能が変化する原因として、触媒被毒のような電極内に存在する材料の物性変化の影響も考えられるが、本発明者らはイオン交換膜に主眼を置いた検討を行った結果、発電環境下にさらされたイオン交換膜は、膜のモルフォロジーがその発電環境下で平衡となるよう変化することに一因があることを見出した。
そのため本発明は、上記問題を解決するものであり、特に物性変化の少ないイオン交換膜を使用することを特徴としている。物性変化の有無を観察する手法として鋭意検討を行った結果、80℃の5mol/lメタノール水溶液に20時間浸漬した前後でメタノール透過係数を比較すれば良いことを見出した。メタノール透過係数の変化が少ないイオン交換膜を使用した燃料電池程、連続発電下における電池性能の変化が小さい。またイオン交換膜としては、膜のモルフォロジーの変化が少ないことを特徴としている。
本発明者らは、80℃の5mol/lメタノール水溶液に20時間浸漬した前後でメタノール透過係数を比較した場合、その差が20%以下であるイオン交換膜を発明し、そのイオン交換膜を使用した燃料電池は発電時に優れた性能安定性を示した。また、より性能安定性に優れるイオン交換膜として、メタノール透過係数の差が10%以下であるイオン交換膜を発明し、さらなる性能安定性を実現した。メタノール透過係数の差が20%よりも大きいイオン交換膜によると、電池性能の変化が大きく、制御の難しい燃料電池となってしまう。
イオン交換膜において特にモルフォロジーが変化しやすい箇所が存在するため前述の問題が発生することから、膜の欠点のみを安定化する手法により、イオン交換膜の安定性を高める手法を発明した。具体的には、80℃以上の溶媒に含浸する処理を施したことを特徴とするイオン交換膜である。80℃以上の溶媒中で予めイオン交換膜を浸漬処理することによって膜の欠点を取り除くことが可能である。すなわち、イオン交換膜中で形態変化が起こる箇所を燃料電池に組み込む前に除去することによって、燃料電池内部ではイオン交換膜の形態変化が起こりにくいため、電池性能が初期状態から安定し、非常に制御しやすい燃料電池となる。なお、より好ましくは90℃以上の溶媒中での処理であり、処理時間を短縮することができる。なお溶媒としては特に制限されるものではないが、極性を有する溶媒中で処理を行うことが好ましく、例えば、水、アルコール、エチレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを含む溶媒が良好な例の一部としてあげられる。溶媒中で処理を行った後溶媒を除去する必要があるため、沸点が200℃以上の成分を主成分とする溶媒中で処理すると、後の工程が複雑になるためあまり好ましくない。また、液体燃料としては、水やアルコールを含む溶液が主体(または発電時の化学反応で形成される)であることから、使用する溶媒としては、特に水および/またはアルコールを含む溶媒を使用することが好ましい。
このような処理を施すイオン交換膜は、塩型のイオン交換膜であっても、酸型のイオン交換膜であっても良く特に限定されるものではない。ただし、酸型のイオン交換膜を使用する場合、一部の溶媒を加水分解するといった可能性があるので注意する必要がある。
なお最終的に燃料電池用のイオン交換膜とする場合は、酸型のものが好ましいので、塩型のイオン交換膜として処理した場合には、硫酸水溶液や塩酸水溶液やリン酸水溶液といった酸性溶液に浸漬することで酸型のイオン交換膜へ変換した後、余分な酸成分を水洗除去することが好ましい。酸型への変換に使用する酸性溶液の濃度や温度は、目的に応じて決めることが可能である。より高濃度の酸や高温の溶液を使用する程、変換速度や変換効率は高くなる傾向にある。また水洗に使用する水として、プロトン以外のカチオンを含むものは、酸型になったイオン交換膜を再び塩型に戻す可能性があるため、管理する必要があり、こちらも目的に応じて決めることが可能である。また保存形態として、溶媒を含んだ形で保存しても問題はないが、乾燥させた状態で保存することもできる。
以下、本発明のイオン交換膜およびイオン交換膜を作製するためのポリマーについて説明する。
イオン交換膜に用いるポリマーの種類としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(トリフルオロスチレン)スルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリビニルスルホン酸成分の少なくとも1種を含むアイオノマーが挙げられる。さらに、芳香族系のポリマーとして、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。ただしナフィオン等に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーは、ポリマー自体が液体燃料をクロスリークしやすいので好ましくない。
上記酸性基を含有するポリマーのうち、芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、上記ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種にイオン交換性官能基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基含有ジアミンを用いて酸性化含有ポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することにより酸性基含有ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られたポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。
なお本発明におけるイオン交換膜を形成するためのポリマーは、スルホン酸基含有ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物であることがより好ましい。
さらに、これらのポリアリーレンエーテル系化合物のうち、下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むものが特に好ましく、本発明の処理と併用した場合、特に優れている。
Figure 0003651684
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
Figure 0003651684
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
上記一般式(2)で示される構成成分は、下記一般式(3)で示される構成成分であることが好ましい。
Figure 0003651684
ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
また、本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーにおいては上記一般式(1)および一般式(2)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(1)または一般式(2)で示される以外の構造単位は50重量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーの特性を活かした組成物とすることができる。
本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーとしては、スルホン酸基含有量が0.3〜3.5meq/gの範囲にあることが好ましい。0.3meq/gよりも少ない場合には、イオン交換膜として使用したときに十分なイオン伝導性を示さない傾向があり、3.5meq/gよりも大きい場合にはイオン交換膜を高温高湿条件においた場合に膜膨潤が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。なお、スルホン酸基含有量はポリマー組成より計算することができる。より好ましくは1.0〜3.0meq/gである。
さらに本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーとしては、下記一般式(4)とともに一般式(5)で示される構成成分を含むものが特に好ましい。ビフェニレン構造を有していることにより高温高湿条件での寸法安定性に優れるとともに、強靱性も高いものとなる。
Figure 0003651684
Figure 0003651684
ただし、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーは、下記一般式(6)および一般式(7)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により重合することができる。一般式(6)で表される化合物の具体例としては、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルケトン、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(7)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
Figure 0003651684
Figure 0003651684
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Zは塩素またはフッ素を示す。本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリルおよび2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好なイオン伝導性、耐熱性、加工性および寸法安定性を達成することができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより硬いものとしていると考えられている。
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(6)、(7)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、4,4'−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4'−ジフルオロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
また、上述の一般式(1)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)で表される構成成分中のAr'は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(6)、(7)で表される化合物とともに使用される芳香族ジオール成分モノマーより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4'−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーを芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(6)および一般式(7)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
また、本発明のスルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーは、ポリマー対数粘度が0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、イオン交換膜として成形したときに、膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
なお、必要に応じて、本発明のイオン交換膜を形成するためのポリマーは、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、ラジカル防止剤などの各種添加剤や、イオン交換膜の特性をコントロールするための貴金属、無機化合物や無機―有機のハイブリッド化合物、イオン性液体、などを含んでいても良い。また、可能な範囲で複数のものが混在していても良い。
以上に示したポリマーを、押し出し、圧延またはキャストなど任意の方法でイオン交換膜とすることができる。中でも適当な溶媒に溶解した溶液から成形することが好ましい。この溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50重量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1重量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50重量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。イオン交換膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から上記のように溶媒を除去してイオン交換膜を得ることができる。溶媒の除去は、乾燥によることがイオン交換膜の均一性の観点からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2500μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとイオン交換膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、2500μmよりも厚いと不均一なイオン交換膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げたりすることができる。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。本発明のイオン交換膜は目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、イオン伝導性の面からはできるだけ薄いことが好ましい。具体的には5〜300μmであることが好ましく、25〜250μmであることがさらに好ましい。イオン交換膜の厚みが5μmより薄いとイオン交換膜の取扱が困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、300μmよりも厚いとイオン交換膜の電気抵抗値が高くなり燃料電池の発電性能が低下する傾向にある。また本発明においては、イオン交換膜として記載したが、中空糸状に加工することも好ましい形であり、加工に際しては公知の処方を利用できる。
以上のようにして得たイオン交換膜に対して、前述した溶媒中での処理を施すことによって、膜の特性を改良し、より優れたイオン交換膜を提供することが可能となる。
最終的に得られたイオン交換膜を使用する場合、膜中のイオン性官能基は金属塩になっているものを含んでいても良いが、適当な酸処理により酸型のものに変換した形が好ましい。この際、イオン交換膜のイオン伝導率は1.0x10−3S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導率が1.0x10−3S/cm以上である場合には、そのイオン交換膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0x10−3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
本発明の効果として、液体燃料透過性が変化しにくくなる。すなわち、本発明のイオン交換膜においては、80℃の5mol/lメタノール水溶液に20時間浸漬した前後でメタノール透過係数を比較した場合、その差が20%以下であるイオン交換膜となり、10%以下にすることも可能である。
なお、液体燃料のクロスリークを防ぐ意味では、メタノール透過速度として、0.1〜4.0mmol/m2/sの範囲にあることが好ましく、より好適には、2.0mmol/m2/sよりも小さいことが望ましい。
また、上述した本発明のイオン交換膜に電極を設置することによって、本発明のイオン交換膜と電極との接合体を得ることができる。触媒の種類や電極の構成や電極に使用されるガス拡散層の種類や接合方法などは特に限定されるものではなく、公知のものが使用でき、また公知の技術を組み合わせたものも使用できる。電極に使用する触媒としては耐酸性と触媒活性の観点から適宜選出できるが、白金族系金属およびこれらの合金や酸化物が特に好ましい。例えばカソードに白金または白金系合金,アノードに白金または白金系合金や白金とルテニウムの合金を使用すると高効率発電に適している。複数の種類の触媒を使用していても良く、分布があっても良い。電極中の空孔率や、電極中に触媒と一緒に混在させるイオン伝導性樹脂の種類・量なども特に制限されるものではない。また疎水性化合物の含浸などに代表されるガス拡散性をコントロールするための手法なども好適に利用できる。電極を膜に接合する技術としては、膜―電極間に大きな抵抗が生じないようにすることが重要であり、また膜の膨潤収縮や、ガス発生の機械的な力によって剥離や電極触媒の剥落が生じないようにすることも重要である。この接合体の作製方法としては、従来から燃料電池または、水電解における電極−膜接合方法の公知技術として知られている手法、例えば触媒担持カーボンとイオン交換樹脂およびポリテトラフルオロエチレン等の撥水性を有する材料を混合してあらかじめ電極を作製し、これを膜に熱圧着する手法や、前記混合物を膜にスプレーやインクジェット等で直接析出させる方法などが好適に用いられる。また、化学めっきによる、例えば白金族のアンミン錯イオンのように金属イオンをカチオン型にした溶液に膜を浸漬してイオン交換(吸着)させてから、膜を還元剤溶液に接触させて、膜表面近傍の金属イオンを還元させると同時に膜内部の金属イオンを表面に拡散させ、強固な金属析出層を膜表面に形成させる方法などが上げられる。後者については、さらに化学めっき浴を用いて活性な金属析出層の上に所定の金属種および量をめっき成長させる方法もある。
また上記のイオン交換膜・電極接合体を燃料電池に組み込むことによって良好な性能を有する燃料電池を提供できる。燃料電池に使用されるセパレータの種類や、燃料や酸化ガスの流速・供給方法・流路の構造などや、運転方法、運転条件、温度分布、燃料電池の制御方法などは特に限定されるものではない。
本発明のイオン交換膜は、液体燃料透過抑止能やその安定性に優れる。その特性を生かして、液体燃料を使用する、例えばダイレクトメタノール型燃料電池の高分子固体イオン交換膜として利用することができ、そうして作製した燃料電池は優れた性能を示す。
以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
評価法・測定法
<イオン交換膜の膜厚>
イオン交換膜の厚みは、マイクロメーター(Mitutoyo 標準マイクロメーター 0−25mm 0.01mm)を用いて測定することにより求めた。測定は5×5cmの大きさのサンプルに対して20箇所測定し、その平均値を膜厚とした。なお測定は、室温が20℃で湿度が30±5RH%にコントロールされた測定室内で評価を行った。サンプルは、24時間以上、測定室内で静置したものを使用した。
<イオン交換容量(酸型)>
イオン交換容量(IEC)としては、イオン交換膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケータ中で30分間放置冷却した後、乾燥重量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム-超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉状態で、室温で24時間攪拌した。次いで、その溶液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IEC(酸型)を求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
<膨潤率>
膨潤率は、サンプル(5×5cm)の正確な乾燥重量(Ws)と、サンプルを70℃の超純水に2時間浸漬した後取り出し、サンプル表面に存在する余分な水滴をキムワイプ(商品名)を用いてふき取り、直ぐに測定した重量(Wl)から、下記式を用いて求めた。
膨潤率(%)=(Wl−Ws)/Ws×100(%)
<イオン伝導率>
イオン伝導率σは次のようにして測定した。自作測定用プローブ(ポリテトラフルロエチレン製)上で幅10mmの短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間の10kHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を10mmから40mmまで10mm間隔で変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした直線の勾配Dr[Ω/cm]から下記の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルして算出した。
σ[S/cm]=1/(膜幅×膜厚[cm]×Dr)
<メタノール透過速度およびメタノール透過係数>
イオン交換膜の液体燃料透過速度はメタノール透過速度およびメタノール透過係数として、以下の方法で測定した。25℃に調整した5モル/リットルのメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用。)に24時間浸漬したイオン交換膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの5モル/リットルのメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、イオン交換膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフを用いて測定することで算出した(イオン交換膜の面積は、2.0cm2)。なお具体的には、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](mmol/L/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[mmol/m2/s]=(Ct[mmol/L/s]× 0.1[L])/2×10−4[m2]
メタノール透過係数[mmol/m/s]=メタノール透過速度[mmol/m2/s]×膜厚[m]
<メタノール透過係数の安定性>
80℃の5mol/lメタノール水溶液にサンプルを20時間浸漬し、浸漬の前後でメタノール透過係数を測定して、下記式によりメタノール透過係数を比較することで求めた。サンプルとしては厚み約150μmのものを使用した(サンプルの厚みは限定されない。適宜変更評価することが可能である。)。数値としては、低い方が性能変化の少なく優れたイオン交換膜であると言える。
メタノール透過係数の安定性[%]=(浸漬後のメタノール透過係数―浸漬前のメタノール透過係数)/浸漬前のメタノール透過係数×100(%)
<発電特性>
デュポン社製20%ナフィオン(商品名)溶液に、市販の54%白金/ルテニウム触媒担持カーボン(田中貴金属工業株式会社 燃料電池用触媒)と、少量の超純水およびイソプロパノールを、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ製カーボンペーパーTGPH−060(疎水化処理品)に白金の付着量が1.8mg/cm2になるように均一に塗布・乾燥して、アノード用の電極触媒層付きガス拡散層を作製した。また、同様の手法で、白金/ルテニウム触媒担持カーボンに替えて市販の40%白金触媒担持カーボンを用いて、疎水化したカーボンペーパー上に電極触媒層を形成することで、カソード用の電極触媒層付きガス拡散層を作製した(0.9mg−白金/cm2)。上記2種類の電極触媒層付きガス拡散層の間に、イオン交換膜を、電極触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレス法により135℃、2MPaにて3分間加圧、加熱することにより、イオン交換膜・電極接合体を作製した。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んでセル温度60℃で、アノードおよびカソードにそれぞれ60℃の5mol/lのメタノール水溶液と空気を供給しながら、電流密度0.1A/cm2で放電試験を行った際の電圧を調べた。測定は、運転開始後、3時間後および50時間後に測定した。
実施例1
モル比で1.00:2.01:3.01:3.37となるように、3,3'−ジスルホ
−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニト
リル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムの混合物を調整し、その混合物15gを
モリキュラーシーブ3.50gと共に100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。溶媒としてはNMPを使用した。150℃で一時間撹拌した後、反応温度を190−195℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約6時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰させた超純水中で1時間洗浄した後、乾燥した。ポリマーの26%NMP溶液を調整した。流延法によってポリマー溶液を薄く引き延ばし、90℃次いで150℃で5時間乾燥することフィルムを作製した。次いで、2mol/lの硫酸水溶液中に2時間浸漬し、水洗5回後、枠に固定した状態で室温で乾燥し、グリーンフィルムを得た。このグリーンフィルムを90℃の15%メタノール水溶液(密閉系)で10時間処理した後、水洗・乾燥することで実施例1のイオン交換膜を作製した。
実施例2
実施例1のグリーンフィルムを80℃の水中で10時間処理したことを除いて実施例1の手法により実施例2のイオン交換膜を作製した。
比較例1
実施例1のグリーンフィルムを80℃の水中で10時間処理したことを除いて実施例1の手法により実施例2のイオン交換膜を作製した。
実施例2
実施例1のグリーンフィルムを105℃の水中(加圧系)で1時間処理したことを除いて実施例1の手法により実施例3のイオン交換膜を作製した。
実施例3
実施例1において、2,6−ジクロロベンゾニトリルの変わりに4,4'−ジクロロジフェニルスルホンを用いたことを除いて、実施例1の手法により実施例4のイオン交換膜を作製した。
比較例2
実施例1において、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムのモル比を1.00:1:50:2.50:3.02となるように仕込んだこと、およびグリーンフィルムをメタノール水溶液で処理しなかったことを除いて、実施例1の手法で比較例1のイオン交換膜を得た。
比較例3
グリーンフィルムをメタノール水溶液で処理しなかったことを除いて実施例4の手法で比較例2のイオン交換膜を作製した。
実施例1、2、3、比較例1、2、3、の物性評価結果を表1に示す。
Figure 0003651684
実施例1、2のイオン交換膜と比較例1のイオン交換膜はイオン伝導率・膨潤率・メタノール透過速度というイオン交換膜として重要な物性の点で、ほぼ同様の特性を有しており、燃料電池に組込み発電性能を評価した場合、初期性能としても類似した性能を示した。しかしながら、連続運転を行うと実施例の膜を使用した電池の性能はほとんど変化しないのに対して、比較例2のイオン交換膜を用いた電池の性能は著しく低下した。燃料電池を分解して調査したが、特に電極剥離といった接合体由来の欠点は観察されなかった。イオン交換膜の安定性の指標となるメタノール透過係数の安定性の点で比較例2の膜は劣っており、そのためメタノールのクロスオーバー量が経時的に増加していくことに起因して性能が低下したものと考えられる。同様にメタノール透過係数の安定性が低い比較例3のイオン交換膜でも著しい性能低下が認められたのに比べて、メタノール透過系数の安定性に優れる実施例のイオン交換膜は優れた性能の安定性を示し、本発明のイオン交換膜は、燃料電池とした際に、より制御しやすく良好な燃料電池となることを見出した。なお、イオン交換膜の基礎的物性との関係に由来すると推定されるが、実施例1、2で示したポリマーの方が、実施例3のポリマーに比べて良好な特性を示した。

Claims (7)

  1. ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテル系化合物の少なくとも1種が共重合されたスルホン酸基を含有する芳香族炭化水素系化合物からなり、アルコール水溶液に含浸する処理を施したことを特徴とする、80℃の5mol/lメタノール水溶液に20時間浸漬する前後で測定したメタノール透過係数の差が20%以下であるイオン交換膜。
  2. 80℃以上の溶媒に含浸する処理を施したことを特徴とする請求項1の範囲のイオン交換膜。
  3. 水およびアルコール水溶液に含浸する処理を施したことを特徴とする、請求項2の範囲のイオン交換膜。
  4. 下記一般式(1)とともに一般式(2)で示される構成成分を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかの範囲のイオン交換膜。
    Figure 0003651684
    ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは1価のカチオン種を示す。
    Figure 0003651684
    ただし、Ar'は2価の芳香族基を示す。
  5. 請求項1乃至4のいずれかの範囲のイオン交換膜の製造方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかの範囲のイオン交換膜を使用したイオン交換膜・電極接合体。
  7. 請求項6の範囲のイオン交換膜・電極接合体を使用した燃料電池。
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