JP2008136112A - 信号処理装置、信号処理方法、プログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】4つのスピーカから出力される音声の周波数−振幅特性について、補正処理を実行する範囲として低周波数帯域内にch間差重視帯域を設け、1つの補正処理後のチャンネルの周波数−振幅特性に他のチャンネルの周波数−振幅特性を一致させるようにする。そして、補正処理に際しては、重み付けを設定するようにして、ch間差重視帯域内での周波数−振幅特性の差が優先的に小さくなるようにする。
【選択図】図10
Description
例えば、RchとLchの左右2つのスピーカから同時に音声信号が発せられた場合、ユーザに対しては2つのスピーカの中間位置に明確な音像が知覚されるのが理想的な姿である。ところが、左右のスピーカから同時に出力される音声について、その周波数−振幅特性が揃わずにばらつきが発生した場合、両スピーカの中間に位置しているユーザには、知覚される音像がぼやけて大きくなったりするなど、違和感のある音場感として知覚されてしまう。そのため、左右一対のスピーカから同時に出力される音声信号のレベルのばらつきを少なくすることが求められることになる。
つまり、それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し、設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段と、上記測定手段による測定結果に基づき、各チャンネルのオーディオ信号の周波数−振幅特性を補正するための演算処理を行う演算手段とを備えるようにされ、上記演算手段は、上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルの上記イコライザに設定されるべきパラメータを算出し、上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように上記対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する。
図1は、本発明の実施の形態としての信号処理装置を備えて構成されるAV(Audio Visual)アンプ1の内部構成について示している。
先ず、実施の形態のAVアンプ1は、周波数−振幅特性の補正など、各種音場補正を装置側で自動的に行う自動音場補正機能を有するように構成される。
また、音響特性の測定のために必要なマイクロフォンMが聴取位置P-lにセッティングされ、これがAVアンプ1と接続されている。
図1においては、図2に示した計6つのスピーカSP(SP-FC、SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL、SP-SB)を、説明の便宜上1つのスピーカSPとして示している。このスピーカSPは、図示するようにAVアンプ1における音声出力端子Toutに対して接続される。
また、図2に示したマイクロフォンMはマイク入力端子Tmに対し接続される。
つまり、端子t1が選択されることで音声入力端子Tinを介した外部からの音声入力が可能とされ、また端子t2が選択されることでマイク入力端子Tmを介したマイクロフォンMからの音声入力が可能とされる。
図示は省略しているが、このスイッチSWの切り替え制御は、音響特性の測定(この場合は特に周波数−振幅特性の測定)の際にマイクロフォンMからの音声入力が行われるようにして、後述するCPU9が行うようにされる。
DSP4は、入力音声信号について各種の音声信号処理を行う。例えば、音声信号処理としては、残響効果など各種音響効果を与えるための処理を行うようにされる。
なお、マイクロフォンMからの検出信号に基づき上記各種音響特性(特に周波数−振幅特性)を測定するための技術については既に周知であり、従ってここでの詳細な説明は省略する。
ここで、この場合のDSP4によるイコライザ機能は、MPF(Mid Presence Filter)と呼ばれるデジタルフィルタにより実現される。この場合はDSP4のソフトウエア処理により、各イコライザ素子(以下、EQ素子とも言う)としての機能が実現されるようになっている。
この図3に示されるように、MPFの構成要素としては遅延素子21、22、29、30、乗算器23、24、25、27、28、加算器26を挙げることができる。
図示するように音声信号は、乗算器23を介して加算器26に入力されると共に、遅延素子21と乗算器24を介しても加算器26に入力される。また遅延素子21を介した音声信号は遅延素子22→乗算器25を介しても加算器26に入力される。
また、加算器26の加算出力は、図示するように外部に出力されると共に、分岐して遅延素子29→乗算器27を介して加算器26に入力される。
DSP4では、このようなMPFとしてのデジタルフィルタ処理をプログラムに基づく数値計算を行って実現するようにされる。
なお、このようなMPFとしてのフィルタ構成は、いわゆる双2次フィルタ(Biquad filter)としても知られている。
CPU9は、図示するバス7を介した通信を行って各部の制御を行うようにされる。図示するようにしてバス7を介しては、上記ROM10、RAM11、及び表示制御部12、DSP4が接続される。
また、上記RAM11はCPU9のワーク領域として利用される。
この操作部8には、当該AVアンプ1の筐体外部に表出するようにして設けられた各種の操作子が備えられ、それらの操作に応じたコマンド信号をCPU9に供給する。CPU9は操作部8からのコマンド信号に応じた各種の制御動作を実行するようにされる。これによってAVアンプ1ではユーザの操作入力に応じた動作が実行されるようになっている。
また、操作部8としては、リモートコマンダから発せられた例えば赤外線信号等に依るコマンド信号を受信するコマンド受信部を備えるようにすることもできる。すなわち、このコマンド受信部として、上記リモートコマンダから操作に応じて発信されるコマンド信号を受信してこれをCPU9に供給するように構成するものである。
ユーザはこの操作子により各EQ素子ごとに設定されるべきパラメータ(中心周波数、ゲイン値、Q値)を指示入力することができる。CPU9は入力された値に応じた係数をDSP4に与えることで、それら指示入力値に応じたゲイン(ゲイン窓形状)がそれぞれ対応するイコライザ素子に設定されるようになっている。
先ず前提として、このように周波数−振幅特性について補正を行うにあたっては、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)に対応した4つのチャンネルのうちのある1つのチャンネルについての周波数−振幅特性について補正処理を行う。そして残りの他のチャンネルについては、補正処理を行ったチャンネルの周波数−振幅特性を目標特性として設定し、補正処理を実行するようにされる。
まず、最初のチャンネルの目標特性としては全周波数バンドにわたってフラットとなる特性が設定されているものとする。例えば、次の図4(a)に示されるような周波数−振幅特性が得られた場合には、最初の補正処理としては、理想的にはこれをフラットな特性とすべく、図4(b)に示されるようにして図4(a)の各バンドの振幅値を相殺するようなゲイン特性を設定するものである。
そして、残りの他のチャンネルの周波数−振幅特性については、最初の補正処理の結果得られた新たな周波数−振幅特性を目標特性として、チャンネル間の周波数−振幅特性の振幅値を相殺するようなゲイン特性を設定する。
このためにも、PEQを用いた音場補正処理としては、できる限り簡易なものとされて、処理時間の短縮化が図られることが要請される。
図5、図6は、本実施の形態としての最初の1つ目のチャンネルについての音場補正処理の手法について説明するための図である。なお、本実施の形態では、このような1つ目のチャンネルとしてはスピーカSP-FLのチャンネルを設定し、以降の説明ではこれをAchと呼ぶ。また、これらの図においては、縦軸をゲイン(dB)、横軸を周波数(Hz)とした場合の周波数−振幅特性Tksについて示している。
先ず、本例の場合、各チャンネルごとに備えられるPEQの素子数としては6つであるものとする。この場合、これら6つのイコライザ素子(EQ素子)については、EQ素子−A、EQ素子−B、EQ素子−C、EQ素子−D、EQ素子−E、EQ素子−Fと呼ぶ。
なお、図5、図6においては、各特性Tskをアナログ波形により示しており、DSP4において実際に保持されるデータそのものを示したものではない。
先ず、周波数−振幅特性の補正処理を行うにあたっては、先の図1において説明したように、DSP4による周波数−振幅特性の測定動作が行われる。本実施の形態では、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)から出力される音声の周波数−振幅特性を補正対象としているため、これらのスピーカSPのチャンネル全てについての周波数−振幅特性の測定動作を行う。
また、概念的には、このように測定された特性と目標特性とを比較した結果に基づき補正処理を行うとして理解すればよいが、実際においては、測定データそのものは、測定環境により細かな凸凹が出てしまう場合があり、そのままではデータとして扱いづらい場合がある。そこで、周波数−振幅特性の補正にあたっては、測定データに平滑化処理をかけたものを補正対象とするということが行われる。
実施の形態においても、補正を行うにあたって対象とする特性(以下、単に対象特性とも言う)としては、測定データについて平滑処理を施したものとしている。
図5に示す周波数−振幅特性Tks-1は、このように測定特性に対し平滑処理が施された特性を示してる。
例えば本実施の形態では、上記のようなスピーカ特性との関係から、予め調整を行うべき範囲を設定しておくようにされているものとする。例えば図示するように、この場合は最も低域側の5つ分の周波数ポイントの範囲と、最も高域側の5つ分の周波数ポイントの範囲とを除く周波数範囲が、調整対象周波数範囲Xとして予め設定されているものとする。
なお、以下では、目標特性からゲインが不足する部分については凹部、超過する部分については凸部とも呼ぶ。
この場合、各周波数ポイント間の間隔は一定幅とされているので、それら周波数ポイントごとに求めたゲイン差の値に対し、各周波数ポイント間の幅の値としての固定値をそれぞれ乗算し、それらを足し合わせたものを図中色つき部分で示した各エリアごとの面積として算出するようにされる。
確認のために述べておくと、このようにして目標特性からの差分面積(ゲイン差分量)が最も大きいエリアは、最も補正が必要なエリアであることになる。
すなわちこの場合、面積最大となるエリア1において、目標特性からのゲイン差が最大となる周波数ポイントとしては、図中「差分値最大」と示したゲイン差を有する周波数ポイントが選択される。
この場合、先に述べたようにして各EQ素子では、予め設定された各周波数ポイントのうちから中心周波数を選択設定するようにされている。つまりは、この場合、ゲイン差最大となる周波数ポイントと各EQ素子が中心周波数を設定可能な周波数ポイントとが必ず一致するようにされているので、特定されたゲイン差最大の周波数ポイントの周波数を、そのまま選択したEQ素子の中心周波数として決定するようにされる。
ここでは、先ずはEQ素子Aの中心周波数が、上記選択されたゲイン差最大の周波数ポイントの周波数に決定されたものとする。
具体的には、目標特性からのゲイン差を打ち消すべく、原則的には、選択したゲイン差最大の周波数ポイントにおけるゲイン差の値の反転値を、選択したEQ素子の中心周波数のゲイン値として決定するようにされる。
例えばこの場合において、上記した「差分値最大」と示した対象特性Tks-1のゲイン値が−15dBであったとし、目標特性とのゲイン差が−15dB−0dB=−15であったとすると、原則的には、選択したEQ素子−Aのゲイン値として、そのゲイン差の値「−15」の反転値である「+15」を決定するようにされるものである。
なお確認のために述べておくと、このようにして設定可能な範囲内で最大のゲイン値を決定する場合としても、対象特性Tks-1と目標特性とのゲイン差に基づく値に決定していることには変わりはない。このように選択したEQ素子のゲイン値を目標特性とのゲイン差に基づく値に決定すれば、目標特性とのゲイン差を打ち消すようにしてゲイン値を決定することができる。
そのために、先ずは図5(b)に示されるようにして、Q値の各候補値を試すようにされる。つまり、決定された中心周波数とゲイン値とを設定し、さらに予め定められたQの各候補値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性を算出し、その結果目標特性と最も近づく特性が得られるQ値を決定しようとするものである。
すなわち、この場合においては、選択したEQ素子−Aについて、中心周波数を上述の選択した周波数ポイントの周波数とし、ゲイン値を+9dBとした上で、予め定められたQ値についての各候補値を設定したときの周波数−振幅特性をそれぞれ算出する。なおこのとき、選択したEQ素子以外の他のEQ素子については、ゲイン値は0dBに設定したもとして特性算出を行う。
そして、これら算出された算出特性について、それぞれ目標特性との差分の総面積を算出し、算出した総面積値が最小となったQの候補値を割り出すようにされる。
図6(a)では、このようにして差分総面積を最小とするQ値が設定された場合での、選択したEQ素子(EQ素子−A)により得られるゲイン窓形状と、このQ値を設定したときの周波数−振幅特性Tks-2(図中破線による特性:算出特性とも呼ぶ)とを示している。また、図6(a)ではこの算出特性Tks-2との比較として、対象特性Tks-1を実線により示している。
なお、この場合もゲイン差分量の算出は、設定された調整対象周波数範囲X内を対象としてのみ行う。
すなわち、ゲイン値については、上記選択したゲイン差最大となる周波数ポイントでの算出特性と目標特性とのゲイン差に基づく値に決定する。具体的には、目標特性とのゲイン差(算出特性のゲイン値−目標特性のゲイン値)の反転値に決定する。
そして、Q値については、決定した中心周波数とそのゲイン値を設定し、各Q候補値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性をそれぞれ算出した結果に基づき、目標特性と最も近づく特性が得られたときの候補値に決定する。
確認のために述べておくと、この場合のQ値決定のための周波数−振幅特性の算出時には、既に各値を決定済みのEQ素子(この場合はEQ素子−A)については、決定済みの各値を設定したものとして全体の特性を算出するようにされる。
つまり、1つ目のEQ素子(この場合はEQ素子−A)について素子選択及び各値の決定を行った以降、2つ目以降のEQ素子については、
・既に各値を決定済みのEQ素子に対し、決定された中心周波数、ゲイン値、Q値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性(算出特性)について、目標特性との差分面積を算出して差分面積が最大となるエリアを特定した上で、そのエリアで目標特性からのゲイン差が最大となる周波数ポイントを選択し、
・このように選択したゲイン差最大の周波数ポイントの周波数に基づき、選択したEQ素子の中心周波数を決定し、
・また決定した中心周波数に設定されるべきゲイン値については、上記選択した周波数ポイントでの算出特性と目標特性とのゲイン差に基づく値に決定し、
・さらに、選択したEQ素子のQ値については、そのEQ素子に上記のようにして決定された中心周波数及びゲイン値を設定し、さらに予め定められた各候補値をそれぞれ設定したときに得られる周波数−振幅特性をそれぞれ算出した結果(この場合も既に各値を決定済みのEQ素子についてはその決定済みの各値をそれぞれ設定したものとして全体の特性を算出する)に基づき、目標特性と最も近づく特性が得られたときの候補値に決定する、
という処理を、繰り返し行うようにされる。
つまり、これによって周波数−振幅特性の補正のためのエフェクタとしてPEQが用いられる場合にも、適正に目標特性と一致するように各素子のパラメータを調整することができる。
このような手法が採られることで、用いられるEQ素子数が少ない場合にも、各素子による補正効率を重視して効率的に目標特性と一致するように補正を行うことができる。
先ず、先にも述べたように、左右のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差が大きい場合には、音像の歪みが発生する。
またここまででは、左右の特性の差に起因する音像の歪みのみを問題としてきが、本実施の形態のように5.1chの場合、前後一対のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差が大きくなることによっては、ユーザに与えられるべき臨場感が損なわれてしまうことになる。
そこで、これらの問題点を解消するために、Achの補正後特性を目標特性として、残りの3つのチャンネルの周波数−振幅特性を近づけるような補正処理を行う。
先ず、上記のようにしてAchの補正後特性を目標特性としてBchの周波数−振幅特性の補正を行うにあたっては、Bchのうちのある1つの対象とするチャンネルについて測定された周波数−振幅特性について、先に説明した調整対象周波数範囲Xに加え、さらに調整対象周波数範囲Xのうちの低周波数帯域を「ch間差重視帯域」として設定する。これまでも述べてきたように、左右のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差が大きな場合には、音像の歪みが発生してしまう。とりわけ、低周波数帯域での周波数−振幅特性の差が大きな場合に、音像の歪みが著しい。そこで、AchとBchの両スピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性の差を重点的に評価するためのch間差重視帯域を低周波数側に設定する。
まず、この場合の調整では、AchとBchの両周波数−振幅特性の差を小さくすることを目標とする。そのために、最初の手順として、エリア1〜エリア4と示されるように、目標特性であるAchに対して対象特性であるBchのゲイン(振幅)が不足する部分と、超過する部分とで分けたエリアごとに、目標特性とのゲイン差分量を算出する。
すなわち、先の対象特性Tks-1の補正処理においては、目標特性がゲイン0のフラットな特性であったため、ゲイン0の直線に対してゲインが超過する部分を凸部、ゲインが不足する部分を凹部としていたが、今回の補正演算処理においては、目標特性がAchの特性であり直線とはなっていない。そこで、AchとBchの両周波数−振幅特性の交点ごとにそれぞれ領域を分割する。
そして、各エリアごとの面積を算出し、各エリアの面積を小さくする、すなわちAchとBchの周波数−振幅特性の差を小さくすることを目標とする。なお、図7(a)では、エリア4が最大面積であることを示している。
この場合の例では、エリア1とエリア2がch間差重視帯域内に位置していることがわかる。図からもわかる通り、調整対象周波数範囲X内で一番エリア面積が大きいのは、エリア4である。従って、図7(a)で説明したように、最初に補正演算処理を実行する領域はエリア4であることになる。一方、図7(b)に示す処理において重み付けを設定した場合には、エリア4以外のch間差重視帯域内にあるエリアから優先的に補正することもできる。
図において、ch間差重視帯域内に位置しているエリア1の面積と、ch間差重視帯域以外のエリア4との面積を比較した場合、重み付けを設定していない場合には、エリア4の方が面積は大きくなっている。例えば、エリア4の面積が10、重み付けを設定する前のエリア1の面積が8であったとする。
ここで、エリア1に重み付けを設定した結果、エリア1の面積の方がエリア4よりも大きくなれば、エリア1の方が優先的に補正されることになる。例えば、重み付けを設定する際の係数が、一例として図に示しているように1.5であった場合、エリア1に重み付けを設定した結果のエリア面積(以下「評価面積」という)は12となる。そのため、エリア1(評価面積=12)の方がエリア4(面積=10)よりも大きくなり、その結果エリア1から優先的に補正されることとなる。従って、このようにch間差重視帯域に位置するエリアから優先的に補正演算処理が実行され、そのエリアでの両チャンネルの周波数−振幅特性の差を小さくすることが可能となる。
本実施の形態において、先ず注意すべき点は、1回目の補正演算処理では先に説明したような重み付けを設定することなしに補正を実行するという点である。すなわち、Achの補正後特性を目標特性として対象特性であるBchの補正演算処理を実行する場合、最初はch間差重視帯域を優先することなしに、調整対象周波数範囲X全域で一番大きなエリア面積から補正を実行する。そして、重み付け無しの補正演算処理を実行した結果、音像の歪みが改善されたかどうかを判断し、音像の歪みが改善されていれば、重み付けを設定することなしに、1回の補正演算処理で終了する。このようにして重み付けなしで補正することができれば、他の周波数帯域を犠牲にすることなく、補正することが可能となる。
そして、2回目の補正演算処理によっても音像の歪みが改善されなかった場合には、さらに3回目の補正演算処理でより大きな係数の重み付けを設定することとしている。これに伴い、評価面積も2回目よりさらに増加することになる。すなわち、1回目、2回目の補正演算処理でも音像の歪みが改善されなかったのであるから、3回目ではさらに係数を大きくして、評価面積を増加させ、ch間差重視帯域にあるエリアが他の周波数帯域にあるエリアよりも優先的に補正されやすくする。
図では、ch間差重視帯域について、周波数の低い側を補正優先度高領域、周波数の高い側を補正優先度低領域の2つの領域に分割している。
本実施の形態では、このような帯域分けを行った上で、ch間差重視帯域内でも重み付けの係数を変化させることとする。すなわち、ch間差重視帯域の中でより低周波側である方が音像の歪みに影響があるため、低周波数帯域である補正優先度高領域ほど重み付けの係数を大きくする。また、ch間差重視帯域内の補正優先度低領域についても、補正優先度高領域ほどではないものの、重み付けを設定することとする。すなわち、補正優先度低領域内に位置しているエリアについては、補正優先度高領域よりも小さい重み付けの係数を設定する。
補正優先度低領域でも、1回目の補正演算処理にあたっては重み付けを設定しないため、重み付けの係数は「1.0」である。そして、補正演算処理回数の増加とともに、重み付けの係数が大きくなることは補正優先度高領域と同様であるが、補正優先度低領域ではさらに、優先度が下がるにつれて、すなわち周波数が高くなるにつれて重み付けの係数も小さくなるように、重み付けを表す直線が傾くようにしている。
上記以外の領域では、重み付けを設定しない。そのため、補正優先度高、低領域以外、すなわちch間差重視帯域以外では、重み付けの係数は常に「1.0」のままである。
以上により、本実施の形態では、補正優先度高領域→補正優先度低領域の順に、周波数が高くなるにつれて、重み付けの数値が小さくなるようにしている。
さらに、本実施の形態では、調整対象周波数範囲Xの中の低周波数側にch間差重視帯域を設け、その範囲に位置する特性の差によって形成される差分面積に対して重み付けを設定する。このように重み付けを設定することにより、たとえ、PEQを用いて少ない素子により補正処理を行う場合であっても、低周波数帯域の差分面積を小さくするための補正処理を効率的に行うことができる。
なお、この図9に示される処理動作は図1に示したCPU9がROM10に格納されるプログラムに基づいて実行するものである。
また、この図を始めとし、後述する図11、12の処理動作が実行されるにあたっては、既にCPU9の指示に基づき、DSP4による4つのチャンネルについての周波数−振幅特性の測定が行われ、その結果に基づき得られた4つのチャンネルについての周波数−振幅特性の情報がCPU9に既に供給され、保持された状態にあるものとする。
また、ステップS105では、特定されたエリア内で目標特性からのゲイン差分値が最大となる周波数ポイント(fsp-Gmax)を選択する。
さらに、ステップS107では、ゲイン値を周波数ポイント(fsp-Gmax)における目標特性からの差分値に基づき決定する。つまり、周波数ポイント(fsp-Gmax)における対象特性のゲイン値と目標特性のゲイン値との差分値の反転値を、選択したEQ素子の上記中心周波数のゲイン値として決定する。
さらに、次のステップS111では、算出した総面積と選択したQ値とを対応づけて、例えばRAM11等に保持するようにされる。
ステップS112において、全Q値を未だ試してはいないとして否定結果が得られた場合は、ステップS113に進み、次Q候補値を選択した後、先のステップS109における周波数−振幅特性の算出処理に戻るようにされる。つまり、これらステップS112→ステップS113を経由する処理によって、全Q候補値を試すためのルーチンが形成される。
未だ全EQ素子についてのQ値が決定されていないとして否定結果が得られた場合は、ステップS116に進み、先ずは次EQ素子を選択するようにされる。すなわち、既に中心周波数、ゲイン値、Q値の各値を決定済みのEQ素子以外から1つのEQ素子を選択するようにされる。
この場合、先のステップS109の処理により、既に各決定値を反映した場合の周波数−振幅特性が算出されていることになるので、その情報を保持しておくものとすれば、その算出特性について、先のステップS103と同様にして凹部/凸部で分けたエリアごとに目標特性との差分面積を算出するようにされればよい。
ここで、図11のフローチャートにより、図10のステップS202としての音場補正処理のための処理動作について説明する。
次のステップS302では、回数Nに応じた重み付けを設定する。すなわち、先の図7で説明したように、ch間差重視帯域にある、AchとBch両周波数−振幅特性によって形成されたエリアについて、回数に応じた重み付けを設定する。
またステップS303では、設定範囲内で、対象特性と目標特性の面積を特性の交点で分けたエリア毎に算出する。すなわち、先にAchについて補正を行う場合にはフラットな特性を目標特性としたが、Bchについて補正を行う場合にはAchの補正後特性を目標特性としているため、必ずしもフラットとはなっていない。したがって、先のAchについて補正を行う場合のように凹部/凸部で分けられたエリアによってではなく、Achの補正後特性と目標特性であるBchの両特性の交点で分けたエリアを基準に面積の算出を行う。
そして、次のステップS304では、ch間差重視帯域内にあるエリアについて、ステップS303で算出したエリアの面積に対して重み付けを設定した面積を算出して、これを新たに評価面積とする。
ただし、ステップS318の処理については先のステップS117と異なり、この場合の目標特性はフラットな特性ではなくAchの補正後特性であるため、ステップS303と同様に、目標特性との差分の面積をそれぞれの特性の交点で分けたエリア毎に算出する。
ステップS202の音場補正処理として、上記説明した処理を行ったら、次のステップS203に進む。
ステップS203では、補正後特性を算出する。すなわち、上記ステップS202での音場補正処理によって得られた各EQ素子のパラメータをBchの各イコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を計算し、それをBchの補正後特性として算出する。
そして、ステップS204では、補正後特性と目標特性のch間差重視帯域での差分値Dを算出する。すなわち、上記ステップS203で算出したBchの補正後特性と、目標特性であるAchの両特性について、ch間差重視帯域の範囲の中での差分値Dを算出する。
次のステップS205では、上記算出した差分値Dが閾値thよりも小さいかどうかについての判別処理を行う。すなわち、ch間差重視帯域内での目標特性であるAchと補正後特性であるBchの両周波数−振幅特性の差分面積を小さくすることを目的としているため、差分値Dと予めCPUに設定された閾値thの比較を行い、差分値Dが閾値thよりも小さいか否かについて判別処理を行う。
図12(a)には、補正前のAch及びBchの周波数−振幅特性を示す。両チャンネルの周波数−振幅特性の差は、調整対象周波数範囲Xのみならず、それ以外の範囲でも大きなものとなっている。
一方、図12(b)には、補正後のAch及びBchの周波数−振幅特性を示す。両チャンネルの周波数−振幅特性の差は、補正前と比べて調整対象周波数範囲X全体において小さくなっており、特に補正優先度高領域の範囲内では、両チャンネルの特性の差は極めて小さなものとなっている。
このように、低周波数帯域に位置するch間差重視帯域、なかでも補正優先度高領域内での両チャンネルの差を小さくできることで、左右の両スピーカSPから出力される音声について、音像の歪みも良好に改善することができる。
例えば、本実施の形態では、4つのスピーカSP(SP-FR、SP-FL、SP-RR、SP-RL)のうちのある1つのスピーカSP-FLをAchとして、まずこのAchの周波数−振幅特性をフラットな特性に近づけるための補正を行い、その後に残りの3つのスピーカSP(SP-FR、SP-RR、SP-RL)から出力される音声の周波数−振幅特性を、Achの補正後特性に近づけるようにして補正処理を実行するものとした。
それ以外にも、Ach(スピーカSP-FL)の周波数−振幅特性をフラットな特性に近づけるための補正を行ったうえで、スピーカSP-FR及びスピーカSP-RLから出力される音声の周波数−振幅特性についてはAchの補正後特性に近づけ、残りのスピーカSP-RRから出力される音声の周波数−振幅特性のみをスピーカSP-RLのチャンネルの補正後特性に近づけることとしてもよい。
このようにすることによっても、左右、前後のスピーカSPから出力される音声の周波数−振幅特性をそれぞれ近づけるようにすることができ、音像の歪みの改善と、より臨場感を得ることができるという本実施の形態の効果は同様に得られることになる。
つまり、先ずは前側のスピーカSPについて、例えばスピーカSP-FRを所定の特性(例えばフラットな特性)に近づけるように補正処理し、スピーカSP-FLをスピーカSP-FRの補正後特性を目標特性として補正処理を行う。また、後側のスピーカSPについても、例えば同様にスピーカSP-RRを所定の特性に近づけるように補正処理を行った上で、スピーカSP-RLはスピーカSP-RRの補正後特性を目標特性として補正処理を行うようにする。
このように前側と後側とでそれぞれ独立して、一方のchは所定の特性を目標特性として補正処理を行い、他方のchはその補正後特性を目標特性として補正処理を行うようにした場合にも、実施の形態の場合と同様に左右のスピーカSPの周波数−振幅特性の差に起因する音像の歪みを改善することができる。
また、本実施の形態においては、補正演算処理の上限を3回としたが、回数についての制限は設けなくてもよい。また、1回目の補正処理から重み付けをすることとしてもよい。
Claims (6)
- それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し、設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、
上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、
上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段と、
上記測定手段による測定結果に基づき、各チャンネルのオーディオ信号の周波数−振幅特性を補正するための演算処理を行う演算手段とを備え、
上記演算手段は、
上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルの上記イコライザに設定されるべきパラメータを算出し、
上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように上記対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する、
ことを特徴とする信号処理装置。 - 上記イコライザはパラメトリックイコライザであって、上記設定されたパラメータに基づき中心周波数と、ゲイン値と、先鋭度とを変化させることができることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
- 上記演算手段は、上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記測定手段により測定された周波数−振幅特性の所定の周波数帯域を重視帯域としたうえで、上記重視帯域を優先して周波数−振幅特性を補正するための演算処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。
- 上記演算手段は、上記重視帯域内で、上記第1のチャンネルとそれ以外の他のチャンネルとの周波数−振幅特性の差が所定値以下であるかどうかについての評価を行い、上記周波数−振幅特性の差が所定値以下でない場合には、上記重視帯域での優先度を変化させて再度補正演算処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の信号処理装置。
- それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段とを備えた信号処理装置における信号処理方法として、
上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出し、
上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する手順を備えたことを特徴とする信号処理方法。 - それぞれが複数チャンネルのオーディオ信号に対応して設けられ、上記複数チャンネルのオーディオ信号のうち対応するチャンネルのオーディオ信号を入力し設定されたパラメータに基づき少なくともゲイン調整を行う複数のイコライザと、上記複数チャンネルごとの上記イコライザにより処理されたそれぞれのオーディオ信号を音声出力する複数の出力手段と、上記出力手段から出力されたオーディオ信号の周波数−振幅特性を測定する測定手段とを備えた信号処理装置において実行されるべきプログラムであって、
上記複数チャンネルのうち所定の第1のチャンネルについては、上記測定手段により測定された上記第1のチャンネルについての周波数−振幅特性が所定の目標特性と一致するように上記第1のチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出し、
上記第1のチャンネル以外の他のチャンネルについては、上記算出したパラメータを上記第1のチャンネルのイコライザに設定したときに得られる周波数−振幅特性を目標特性として算出した上で、この算出した目標特性と、上記測定手段により測定された対象とするチャンネルの周波数−振幅特性とが一致するように対象とするチャンネルのイコライザに設定されるべきパラメータを算出する手順を上記信号処理装置に実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
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